(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172599
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ステープラ
(51)【国際特許分類】
B27F 7/19 20060101AFI20241205BHJP
B25C 5/04 20060101ALI20241205BHJP
B25C 5/15 20060101ALI20241205BHJP
B27F 7/36 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B27F7/19
B25C5/04
B25C5/15
B27F7/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090421
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 拓志
(72)【発明者】
【氏名】亀田 太志
【テーマコード(参考)】
3C054
3C068
【Fターム(参考)】
3C054CA00
3C054CB01
3C054CC06
3C054CD05
3C054CE12
3C068AA05
3C068BB01
3C068CC06
3C068EE12
3C068FF06
3C068HH01
(57)【要約】
【課題】針シートがフェースプレートに接することで発生する音を抑制できるステープラを提供する。
【解決手段】ステープラ1Aは、針10を成型するフォーミングプレート2と、フォーミングプレート2で成型された針10を打ち出すドライバプレート3と、複数の針10が連結された針シート11を送る送り部4と、送り部4で送られる針シート11が接するフェースプレート5とを備え、フォーミングプレート2は、線状に延伸する成型前の針10の長手方向に沿った一方の端部から規定の長さの範囲を第1の方向に向けて曲げる第1成型部21と、針10の長手方向に沿った他方の端部から規定の長さの範囲を第1の方向に向けて曲げる第2成型部22とを備え、第1成型部21と第2成型部22が、針シート11の送り経路から退避するタイミングが異なる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状に延伸する複数の針を前記針の軸方向と直交する方向に連結してなる針シートのうちの先頭針を、前記針の連結方向から見てコ字状に成型するフォーミングプレートと、
前記連結方向において前記先頭針と対向する位置に設けられるフェースプレートと、
前記先頭針が成型された後、前記針シートを前記連結方向に送って成型後の前記針の直後に位置する線状の針を前記フェースプレートに当接させる送り部と
を備え、
前記フォーミングプレートは、前記コ字状の一部をなす前記針の一方の脚部を成型する第1成型部と、前記コ字状の他の一部をなす他方の脚部を成型する第2成型部とを有し、
前記第1成型部は、前記フェースプレートと対向する位置に挿抜可能に構成され、前記フェースプレートと対向する位置に挿入されることで前記先頭針の一部を折り曲げて前記一方の脚部を成型し、成型後に前記対向する位置から退避するように構成され、
前記第2成型部は、前記フェースプレートと対向する位置に挿抜可能に構成され、前記フェースプレートと対向する位置に挿入されることで前記先頭針の他の一部を折り曲げて前記他方の脚部を成型し、成型後、前記第1成型部が前記対向する位置から退避した後に前記対向する位置から退避するように構成される
ステープラ。
【請求項2】
前記第2成型部は、前記挿抜方向に沿った長さが、前記第1成型部の前記挿抜方向における長さよりも長く形成される
請求項1に記載のステープラ。
【請求項3】
前記フォーミングプレートは、前記対向する面に沿って回動可能に支持され、前記脚部を成型した後、前記第1成型部が前記第2成型部よりも先に退避するように回動する
請求項1に記載のステープラ。
【請求項4】
前記第1成型部と前記第2成型部は、先端部がそれぞれ外方に向けて挿入方向に傾斜する傾斜面を有し、
前記第1成型部の前記傾斜面は、前記第2成型部の前記傾斜面とは傾斜角度が異なる
請求項2に記載のステープラ。
【請求項5】
前記第1成型部の前記傾斜面の前記挿抜方向における後端位置は、前記第2成型部の前記傾斜面の前記挿抜方向における後端位置と同じまたは略同じ位置に設定される
請求項4に記載のステープラ。
【請求項6】
前記フォーミングプレートで前記コ字状に成型された針のクラウン部を押し込んで前記針を打ち出すドライバプレートを備え、
前記ドライバプレートは、前記クラウン部を押し込む際の針の送り経路に対して挿抜可能に構成され、前記送り経路に挿入されることで前記クラウン部に当接し前記針を打ち出し、打ち出し後に前記送り経路から退避するように構成され、
前記第1成型部と前記第2成型部は、前記ドライバプレートが前記送り経路から退避した後に、前記対向する位置から退避するように構成される
請求項1に記載のステープラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針で用紙束を綴じるステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
直線形ステープル(線状の針)が並列に接着された連結形ステープル(針シート)を、前端板(フェースプレート)の方向に押圧するステープルプッシャ(送り部)と、線状の針を門形(コ字状)に成型するフォーミングプレートと、フォーミングプレートと連動して昇降し、フォーミングプレートで成型された針を打ち出すドライバを備えたステープラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなステープラでは、フォーミングプレートが下降することで、針の送り経路にフォーミングプレートが突出し、針を成型する。また、フォーミングプレートが上昇することで、フォーミングプレートにおいて直線状の針の一方の側を成型する部位と他方の側を成型する部位の両側が、針の送り経路から同時に退避し、針シートが送られることで、成型された針がドライバによる打ち出し可能位置に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
針を成型したフォーミングプレートが針シートの送り経路から退避すると、送り部で送られる針シートのうち、成型後の針の直後に位置する直線状の針がフェースプレートに当接し衝突音が発生する。このとき、フォーミングプレートにおいて直線状の針の一方の側を成型する部位と他方の側を成型する部位の両側が、針の送り経路から同時に退避し、かつ針シートがステープルプッシャによりフェースプレートの方向に押圧されるので、成型後の針の直後に位置する直線状の針の両端部側、すなわち成型後の針の直後に位置する直線状の針のうち、成型前の針の一方の側と他方の側に相当する部分の両方で衝突音が発生する。
【0006】
そこで、針シートがフェースプレートに接することで発生する音を抑制できるステープラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、線状に延伸する複数の針を針の軸方向と直交する方向に連結してなる針シートのうちの先頭針を、針の連結方向から見てコ字状に成型するフォーミングプレートと、連結方向において先頭針と対向する位置に設けられるフェースプレートと、先頭針が成型された後、針シートを連結方向に送って成型後の針の直後に位置する線状の針をフェースプレートに当接させる送り部とを備え、フォーミングプレートは、コ字状の一部をなす針の一方の脚部を成型する第1成型部と、コ字状の他の一部をなす他方の脚部を成型する第2成型部とを有し、第1成型部は、フェースプレートと対向する位置に挿抜可能に構成され、フェースプレートと対向する位置に挿入されることで先頭針の一部を折り曲げて一方の脚部を成型し、成型後に対向する位置から退避するように構成され、第2成型部は、フェースプレートと対向する位置に挿抜可能に構成され、フェースプレートと対向する位置に挿入されることで先頭針の他の一部を折り曲げて他方の脚部を成型し、成型後、第1成型部が対向する位置から退避した後に対向する位置から退避するように構成されるステープラである。
【0008】
第1成型部は、フェースプレートと対向する位置に挿入されることで先頭針の一部を折り曲げて一方の脚部を成型し、成型後にフェースプレートと対向する位置から退避する。第2成型部は、フェースプレートと対向する位置に挿入されることで先頭針の他の一部を折り曲げて他方の脚部を成型し、成型後、第1成型部がフェースプレートと対向する位置から退避した後にフェースプレートと対向する位置から退避する。
【発明の効果】
【0009】
第2成型部は、第1成型部がフェースプレートと対向する位置から退避した後にフェースプレートと対向する位置から退避することで、成型後の針の直後に位置する針の軸方向に沿った一方の端部側がフェースプレートに当接した後、他方の端部側がフェースプレートに当接する。すなわち、フェースプレートに一方の端部側に当接して音が発生するタイミングと、他方の端部側が当接して音が発生するタイミングが異なる。これにより、針の軸方向に沿った一方の端部側と他方の端部側が同じタイミングでフェースプレートに当接して音が発生する場合と比較して、発生する音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】第1の実施の形態のステープラの一例を示す側面図である。
【
図1B】第1の実施の形態のステープラの一例を示す斜視図である。
【
図1C】第1の実施の形態のステープラの一例を示す正面図である。
【
図1D】第1の実施の形態のステープラの一例を示す側断面図である。
【
図2A】フォーミングプレートの一例を示す正面図である。
【
図2B】フォーミングプレートの一例を示す側面図である。
【
図3A】フォーミングプレート及びドライバプレートと、針の寸法の関係を示す正面図である。
【
図3B】フォーミングプレート及びドライバプレートと、針の寸法の関係を示す上面図である。
【
図3C】フォーミングプレートと、針の寸法の関係を示す側面図である。
【
図4A】第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す正面図である。
【
図4B】第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す正面図である。
【
図4C】第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す正面図である。
【
図5A】第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す上面断面図である。
【
図5B】第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す上面断面図である。
【
図5C】第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す上面断面図である。
【
図6A】フォーミングプレートの変形例を示す正面図である。
【
図6B】フォーミングプレートの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明のステープラの実施の形態について説明する。
【0012】
<本実施の形態のステープラの構成例>
図1Aは、第1の実施の形態のステープラの一例を示す側面図、
図1Bは、第1の実施の形態のステープラの一例を示す斜視図、
図1Cは、第1の実施の形態のステープラの一例を示す正面図、
図1Dは、第1の実施の形態のステープラの一例を示す側断面図である。
【0013】
ステープラ1Aは、針10を成型するフォーミングプレート2と、フォーミングプレート2で成型された針10を打ち出すドライバプレート3を備える。また、ステープラ1Aは、複数の針10が連結された針シート11を送る送り部4と、送り部4で送られる針シート11が接するフェースプレート5を備える。さらに、ステープラ1Aは、ドライバによって打ち出された針10の一方の脚部である第1の針足10b及び他方の脚部である第2の針足10cを曲げる曲げ部7を備える。フォーミングプレート2は、線状に延伸する複数の針10が針10の軸方向と直交する方向に連結してなる針シート11のうちの先頭の針10を、針10の連結方向から見てコ字状(U字状または門形)に成型する。フェースプレート5は、針10の連結方向において先頭の針10と対向する位置に設けられる。フェースプレート5が対向する先頭の針10は、フォーミングプレート2により成型される前の針10である。フェースプレート5は、成型される前の先頭の針10と対向する位置に少なくとも設けられる。送り部4は、先頭の針10が成型された後、針シート11を針10の連結方向に送り、成型後の針10の直後に位置する線状の針10をフェースプレート5に当接させる。
【0014】
針10は、フォーミングプレート2により成型されることで、針クラウン10aの一方の端部に、矢印A1で示す第1の方向に曲げられた第1の針足(脚部)10bが形成され、針クラウン10aの他方の端部に、第1の方向に曲げられた第2の針足(脚部)10cが形成される。成型後の針10の以上のような形態をコ字状と称す。
【0015】
成型前の針10は、線状に延伸する軸方向が長手方向となり、軸方向と直交する方向が短手方向となる。
【0016】
成型前の針10は、長手方向の一方の端部から所定の長さ範囲が、フォーミングプレート2により成型されて第1の針足10bとなる。成型前の針10において、第1の針足10bとなる範囲を第1の針足形成部10dと称す。また、成型前の針10は、長手方向の他方の端部から所定の長さ範囲が、フォーミングプレート2により成型されて第2の針足10cとなる。成型前の針10において、第2の針足10cとなる範囲を第2の針足形成部10eと称す。
【0017】
針シート11は、成型前の針10が、軸方向と直交する短手方向に沿って複数本並べられ、分離可能に接着等で連結される。
【0018】
ステープラ1Aには、複数の針シート11が積層される形態で収容された図示しないカートリッジが、着脱可能に装填される。
【0019】
図2Aは、フォーミングプレートの一例を示す正面図、
図2Bは、フォーミングプレートの一例を示す側面図である。
【0020】
フォーミングプレート2は、矢印F1(
図1B)で示す針シート11の送り方向と略直交する矢印A1で示す第1の方向及び第1の方向と反対方向である矢印A2で示す第2の方向に移動可能に支持される。第1の方向は、上述したように、第1の針足10b及び第2の針足10cが針クラウン10aに対して曲げられる方向である。
【0021】
フォーミングプレート2は、針10の第1の針足10bを成型する第1成型部21と、第2の針足10cを成型する第2成型部22と、第1成型部21と第2成型部22と連結する連結部23を備える。
【0022】
また、フォーミングプレート2は、矢印A1で示す第1の方向に移動させる力を受ける第1の作用部24と、矢印A2で示す第2の方向に移動させる力を受ける第2の作用部25を備える。
【0023】
第1成型部21は、フォーミングプレート2が第1の方向及び第2の方向に移動することで、フェースプレート5と対向する位置に挿抜可能に構成される。フェースプレート5が第1の方向及び第2の方向に沿って延伸する形状である場合、第1成型部21は、第1の方向に移動することで、成型される前の針10と対向する部位のフェースプレート5と対向する位置に挿入される。第1成型部21は、フェースプレート5と対向する位置に挿入されることで、先頭の針10の一部を折り曲げて第1の針足10bを成型し、針10の成型後に第2の方向に移動することで、フェースプレート5と対向する位置から退避するように構成される。第2成型部22は、フォーミングプレート2が第1の方向及び第2の方向に移動することで、フェースプレート5と対向する位置に挿抜可能に構成される。フェースプレート5が第1の方向及び第2の方向に沿って延伸する形状である場合、第2成型部22は、第1の方向に移動することで、成型される前の針10と対向する部位のフェースプレート5と対向する位置に挿入される。第2成型部22は、フェースプレート5と対向する位置に挿入されることで、先頭の針10の他の一部を折り曲げて第2の針足10cを成型し、針10の成型後に第2の方向に移動することで、フェースプレート5と対向する位置から退避するように構成される。これにより、フォーミングプレート2は、第1の方向に移動することで、第1成型部21と第2成型部22が、送り部4で送られる針シート11の送り経路に突出する。また、フォーミングプレート2は、第2の方向に移動することで、第1成型部21と第2成型部22が、針シート11の送り経路から退避する。
【0024】
フォーミングプレート2は、第1成型部21と第2成型部22が、針クラウン10aの外幅L0(
図1C)に合わせた間隔を開けて、連結部23から第1の方向に突出する。針クラウン10aの外幅L0とは、針10の第1の針足10bの外側から、第2の針足10cの外側までの長さである。
【0025】
第1成型部21は、第2成型部22と対向する側と反対側の外側の端部に、第1の方向に最も突出した第1の先端部21aが形成される。また、第1成型部21は、第2成型部22と対向する内側の端部に、第1の先端部21aから第2の方向に後退した第1の後端部21bが形成される。
【0026】
第2成型部22は、第1成型部21と対向する側と反対側の外側の端部に、第1の方向に最も突出した第2の先端部22aが形成される。また、第2成型部22は、第1成型部21と対向する内側の端部に、第2の先端部22aから第2の方向に後退した第2の後端部22bが形成される。
【0027】
第2成型部22は、フェースプレート5と対向する位置に挿抜される挿抜方向に沿った長さが、第1成型部21の同挿抜方向おける長さより長く構成される。本実施の形態では、第1成型部21の挿抜方向に沿った長さは、第2の作用部25から第1の先端部21aまでの第1の方向に沿った長さである。第2成型部22の挿抜方向に沿った長さは、第2の作用部25から第2の先端部22aまでの第1の方向に沿った長さである。
【0028】
そして、第1成型部21の第2の作用部25から第1の先端部21aまでの第1の方向に沿った長さL1より、第2成型部22の第2の作用部25から第2の先端部22aまでの第1の方向に沿った長さL2が長く構成される。これにより、第2成型部22は、フォーミングプレート2が第2の方向に移動すると、第1成型部21の第1の先端部21aがフェースプレート5と対向する位置から退避した後に、第2の先端部22aがフェースプレート5と対向する位置から退避するように構成される。
【0029】
また、フォーミングプレート2は、第1成型部21の第1の後端部21bまでの長さL11と、第2成型部22の第2の後端部22bまでの長さL12が等しく構成される。
【0030】
第1成型部21の第1の後端部21bまでの長さL11は、第1の作用部24から第1の後端部21bまでの第1の方向に沿った長さである。また、第2成型部22の第2の後端部22bまでの長さL12は、第1の作用部24から第2の後端部22bまでの第1の方向に沿った長さである。
【0031】
第1成型部21は、第1の先端部21aと第1の後端部21bを結ぶ先端部である第1の先端面21cが、内側から外方に向けて挿入方向に傾斜する。第1の先端面21cは、第1成型部21の傾斜面をなす。第2成型部22は、第2の先端部22aと第2の後端部22bを結ぶ先端部である第2の先端面22cが、内側から外方に向けて挿入方向に傾斜する。第2の先端面22cは、第2成型部22の傾斜面をなす。第1成型部21の傾斜面は、第2成型部22の傾斜面とは傾斜角度が異なる。すなわち、フォーミングプレート2は、第1成型部21の第1の先端部21aと第1の後端部21bを結ぶ第1の先端面21cの傾斜角α1より、第2成型部22の第2の先端部22aと第2の後端部22bを結ぶ第2の先端面22cの傾斜角α2が大きく構成される。また、第1成型部21の傾斜面の挿抜方向における後端位置である第1の後端部21bは、第2成型部22の傾斜面の挿抜方向における後端位置であると第2の後端部22bと同じまたは略同じ位置に設定される。
【0032】
フォーミングプレート2は、第1成型部21が形成される側の一方の側部と、第2成型部22が形成される側の他方の側部に、第1の方向及び第2の方向に沿って延伸する長穴部26が形成される。第1の作用部24は、長穴部26において、第1の方向の端部の面で構成される。第2の作用部25は、長穴部26において、第2の方向の端部の面で構成される。
【0033】
次に、
図1B、
図1C及び
図1Dを参照して、ドライバプレート3、送り部4及びフェースプレート5について説明する。
【0034】
ドライバプレート3は、フォーミングプレート2に対し、矢印F1で示す針シート11の送り方向の下流側に設けられる。ドライバプレート3は、フォーミングプレート2に対し、針10の短手方向の幅の1本分の隙間を開けて設けられる。ドライバプレート3は、針シート11の送り方向と略直交する第1の方向及び第1の方向と反対方向である第2の方向に、フォーミングプレート2と独立して移動可能に支持される。ドライバプレート3は、針クラウン10aを含む針シート11の送り経路に対して挿抜可能に構成され、針シート11の送り経路に挿入されることで針クラウン10aに当接して針10を打ち出し、打ち出し後に針シート11の送り経路から退避するように構成される。
【0035】
ドライバプレート3は、第1の方向に移動させる力及び第2の方向に移動させる力を受ける作用部31を備える。作用部31は、半円形と四角形を組み合わせた形状の穴で構成される。
【0036】
ステープラ1Aは、フォーミングプレート2及びドライバプレート3を第1の方向及び第2の方向に移動させるシャフト6を備える。シャフト6は伝達部材の一例で、モータやギアなどで構成される図示しない駆動部により駆動され、第1の方向及び第2の方向に移動する。シャフト6は、フォーミングプレート2の長穴部26と、ドライバプレート3の作用部31に挿入される。
【0037】
ドライバプレート3の作用部31は、シャフト6の直径と略等しい直径の半円形の部位と、この半円形の部位とつながる四角形の部位を組み合わせた形状の穴で構成される。これにより、ドライバプレート3は、シャフト6の第1の方向及び第2の方向の移動に追従する。
【0038】
これに対し、フォーミングプレート2の長穴部26は、第1の方向及び第2の方向に沿った長手方向の長さが、シャフト6の直径より長く構成される。これにより、フォーミングプレート2は、第1の方向に移動するシャフト6が第1の作用部24に接すると、ドライバプレート3と連動して第1の方向に移動する。また、フォーミングプレート2は、第2の方向に移動するシャフト6が第2の作用部25に接すると、ドライバプレート3と連動して第2の方向に移動する。更に、フォーミングプレート2は、シャフト6が第1の作用部24または第2の作用部25のいずれにも接しない状態では、ドライバプレート3と連動せず、停止した状態となる。
【0039】
送り部4は、針シート11と係合する爪部40が矢印F1方向に移動することで、針シート11を矢印F1方向に送る。送り部4は、図示しないバネなどの付勢部材で付勢される構成でもよいし、モータやギアなどで構成される図示しない駆動部に駆動される構成でもよい。
【0040】
フェースプレート5は、フォーミングプレート2及びドライバプレート3に対し、矢印F1で示す針シート11の送り方向の下流側に設けられる。フェースプレート5は、送り部4による針シート11の送り経路を塞ぎ、成型前の針10の第1の針足形成部10d及び第2の針足形成部10eが接する。
【0041】
図3Aは、フォーミングプレート及びドライバプレートと、針の寸法の関係を示す正面図、
図3Bは、フォーミングプレート及びドライバプレートと、針の寸法の関係を示す上面図、
図3Cは、フォーミングプレートと、針の寸法の関係を示す側面図である。
【0042】
図3Aに示す針10の厚さL20は、本例では約0.35mmである。これに対し、第1成型部21の第1の先端部21aに対し、第2成型部22の第2の先端部22aが第1の方向に突出する長さL22は、約0.5mmである。この寸法差は、第1成型部21が針シート11の送り経路から退避するタイミングで、第2成型部22が針シート11の送り経路に残るために設定される。
【0043】
また、第1成型部21の第1の先端部21aに対し、ドライバプレート3が第2の方向に後退する長さL21は、約1mmである。この寸法差は、第1成型部21が針シート11の送り経路から退避するタイミングの前に、ドライバプレート3が針シート11の送り経路から退避するために設定される。
【0044】
図3B、
図3Cに示す針10の幅L30は、本例では約0.5mmである。これに対し、フォーミングプレート2の第1成型部21及び第2成型部22の厚さL31は、約0.5mmである。この寸法は、フォーミングプレート2で1本の針10を成型するためである。また、ドライバプレート3の厚さL32は、約0.5mmである。この寸法は、ドライバプレート3で1本の針10を打ち出すためである。さらに、フォーミングプレート2の第1成型部21及び第2成型部22は、第1の方向に向けて矢印F2で示す後側が細くなるテーパ状であり、先端部27の厚さL33は、約0.4mmである。この寸法は、成型する針10の後ろの成型前の針10に、フォーミングプレート2が引っかからないようにするためである。
【0045】
<本実施の形態のステープラの構成例>
図4A、
図4B及び
図4Cは、第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す正面図である。また、
図5A、
図5B及び
図5Cは、第1の実施の形態のステープラの動作の一例を示す上面断面図である。
【0046】
ドライバプレート3は、シャフト6が図示しない駆動部に駆動されて第1の方向に移動すると、ドライバプレート3を第1の方向に移動させる力を作用部31で受ける。ドライバプレート3の移動経路に、針シート11の先頭に位置する成型された針10が位置している状態で、ドライバプレート3が第1の方向に移動すると、成型された針10が打ち出される。
【0047】
フォーミングプレート2は、第1の方向に移動するシャフト6が第1の作用部24に接すると、ドライバプレート3と連動して第1の方向に移動する。
【0048】
フォーミングプレート2は、第1成型部21の第1の先端部21aまでの長さL1より、第2成型部22の第2の先端部22aまでの長さL2が長く構成される。フォーミングプレート2は、待機位置から第1の方向に移動すると、第1成型部21と第2成型部22の長さの差から、まず、第2成型部22が成型前の針10の第2の針足形成部10eに接する。この状態から、フォーミングプレート2が第1の方向に移動すると、針10の第2の針足形成部10eが、第1の方向に向けて曲げられる。
【0049】
フォーミングプレート2は、針10の第2の針足形成部10eが、第1の方向に向けて所定量曲げられる位置まで、第1の方向に移動すると、第1成型部21が成型前の針10の第1の針足形成部10dに接する。この状態から、フォーミングプレート2が第1の方向に移動すると、針10の第2の針足形成部10eに加え、第1の針足形成部10dが、第1の方向に向けて曲げられる。
【0050】
このように、フォーミングプレート2の第1成型部21と第2成型部22の長さの差から、針10の第1の針足形成部10dと、第2の針足形成部10eを曲げ始めるタイミングをずらすことができ、フォーミングプレート2に掛かる負荷を分散できる。
【0051】
フォーミングプレート2は、第1の方向に成型位置まで移動すると、第1成型部21及び第2成型部22が、針シート11の送り経路に突出する。これにより、フォーミングプレート2は、第1成型部21がフェースプレート5と成型前の針10の第1の針足形成部10dとの間に入り、第2成型部22がフェースプレート5と成型前の針10の第2の針足形成部10eとの間に入る。
【0052】
また、フォーミングプレート2は、第1成型部21の第1の後端部21bまでの長さL11と、第2成型部22の第2の後端部22bまでの長さL12が等しく構成される。これにより、針クラウン10aに対して第1の針足10bが曲げ終わるタイミングと、針クラウン10aに対して第2の針足10cが曲げ終わるタイミングが揃い、フォーミング形状の対称性が保たれる。
【0053】
ドライバプレート3は、シャフト6が図示しない駆動部で駆動されて第2の方向に移動すると、ドライバプレート3を第2の方向に移動させる力を作用部31で受ける。ドライバプレート3が第2の方向に移動すると、図示しない用紙に打ち込まれた針10から離れる。
【0054】
フォーミングプレート2は、第2の方向に移動するシャフト6が第2の作用部25に接すると、ドライバプレート3と連動して第2の方向に移動する。
【0055】
フォーミングプレート2は、成型位置から第2の方向に所定量移動すると、ドライバプレート3が針シート11の送り経路から退避するタイミングより後で、第1成型部21と第2成型部22が成型される前の針10と対向する部位のフェースプレート5と対向する位置から退避する。フォーミングプレート2は、第1成型部21と第2成型部22の長さの差から、まず、第1成型部21が、針シート11の送り経路から退避する。フォーミングプレート2は、第1成型部21が針シート11の送り経路から退避するタイミングで、第2成型部22が針シート11の送り経路に残る。
【0056】
この状態で、針シート11が送り部4で矢印F1方向に送られると、成型前の針10の第1の針足形成部10dがフェースプレート5に近づく。または、成型前の針10の第1の針足形成部10dがフェースプレート5に接するように構成しても良い。接するようにした場合には、第1の針足形成部10dがフェースプレート5に接する際の音(衝突音)が発生する。一方、成型前の針10の第2の針足形成部10eは、フォーミングプレート2の第2成型部22に接した状態が保持される。
【0057】
フォーミングプレート2は、第2の方向に待機位置まで移動すると、第2成型部22が、針シート11の送り経路から退避する。
【0058】
この状態で、針シート11が送り部4で矢印F1方向に送られると、成型後の針10の直後に位置する成型前の針10の第2の針足形成部10eがフェースプレート5に接する。これにより、第2の針足形成部10eがフェースプレート5に接する際の音(衝突音)が発生する。成型前の針10の第2の針足形成部10eがフェースプレート5に接するタイミングで、成型前の針10の第1の針足形成部10dが先にフェースプレート5に接している場合、成型前の針10の第1の針足形成部10dは、フェースプレート5に接した状態が保持され、音(衝突音)の発生が抑制される。これにより、音の発生するタイミングが分散する。また、成型前の針10の第1の針足形成部10dが、成型前の針10の第2の針足形成部10eより先にフェースプレート5に近づいている場合、成型前の針10の第2の針足形成部10eがフェースプレート5に接するタイミングより前に、成型前の針10の第1の針足形成部10dがフェースプレート5に接する。これにより、音の発生するタイミングが分散する。なお、針シート11の先頭に位置する成型後の針10の針クラウン10aに関しても、第1の針足10bに近い側が先にフェースプレート5に接した後、第2の針足10cに近い側がフェースプレート5に接する。
【0059】
このように、音の発生するタイミングが分散することで、成型前の針10の第1の針足形成部10dと第2の針足形成部10eがフェースプレート5に同じタイミングで接して音が発生する場合と比較して、音(衝突音)の発生を抑制できる。
【0060】
図6A及び
図6Bは、フォーミングプレートの変形例を示す正面図である。フォーミングプレート2Bは、矢印A1で示す第1の方向及び第1の方向と反対方向である矢印A2で示す第2の方向に移動可能に支持される。
【0061】
フォーミングプレート2Bは、
図1Bなどに示す針10の第1の針足10bを成型する第1成型部21と、第2の針足10cを成型する第2成型部22と、第1成型部21と第2成型部22と連結する連結部23を備える。
【0062】
また、フォーミングプレート2Bは、矢印A1で示す第1の方向に移動させる力を受ける第1の作用部24a、24bと、矢印A2で示す第2の方向に移動させる力を受ける第2の作用部25a、25bを備える。
【0063】
フォーミングプレート2Bは、第1成型部21と第2成型部22が対称な形状であり、第1成型部21の第1の後端部21bから第1の先端部21aまでの突出長さと、第2成型部22の第2の後端部22bから第2の先端部22aまでの突出長さが等しく構成される。
【0064】
また、フォーミングプレート2Bは、第1成型部21が設けられる側の第1の作用部24aから、第1成型部21の第1の先端部21aまでの長さL21と、第2成型部22が設けられる側の第1の作用部24bから、第2成型部22の第2の先端部22aまでの長さL22が等しく構成される。
【0065】
これに対し、フォーミングプレート2Bは、第1成型部21が設けられる側の第2の作用部25aから、第1成型部21の第1の先端部21aまでの長さL1より、第2成型部22が設けられる側の第2の作用部25bから、第2成型部22の第2の先端部22aまでの長さL2が長く構成される。
【0066】
フォーミングプレート2Bは、シャフト6が第1の方向に移動すると、第1成型部21が設けられる側の第1の作用部24aと、第2成型部22が設けられる側の第1の作用部24bに、略同じタイミングでシャフト6が接する。この状態から、シャフト6がさらに第1の方向に移動すると、第1成型部21と第2成型部22が、
図6A、
図6Bでは図示しない針に略同じタイミングで接する。この状態から、フォーミングプレート2Bが第1の方向に成型位置まで移動すると、針が成型される。
【0067】
フォーミングプレート2Bは、シャフト6が第2の方向に移動すると、まず、第1成型部21が設けられる側の第2の作用部25aにシャフト6が接する。この状態から、シャフト6がさらに第2の方向に移動すると、フォーミングプレート2Bは、第1成型部21が設けられる側が第2の方向に移動する。これにより、フォーミングプレート2Bは、
図1Aなどに示すフェースプレートに沿って回動可能に支持されることになり、第1成型部21の第1の先端部21aが、第2成型部22の第2の先端部22aより第2の方向に位置する向きに傾斜する。
【0068】
フォーミングプレート2Bは、シャフト6がさらに第2の方向に移動すると、第2成型部22が設けられる側の第2の作用部25bにシャフト6が接する。この状態から、シャフト6がさらに第2の方向に移動すると、フォーミングプレート2Bは、第1成型部21が第2成型部22より第2の方向に位置する方向に傾斜した状態で、第2の方向に移動する。
【0069】
これにより、フォーミングプレート2Bが成型位置から第2の方向に移動すると、第2成型部22が針シートの送り経路から退避するタイミングと、第1成型部21が針シートの送り経路から退避するタイミングがずれる。よって、針の長手方向に沿った一方の端部側が
図1Aなどに示すフェースプレートに接して音が発生するタイミングと、針の長手方向に沿った他方の端部側がフェースプレートに接して音が発生するタイミングを異ならせることができる。したがって、針の長手方向に沿った一方の端部側と他方の端部側が同じタイミングでフェースプレートに接して音が発生する場合と比較して、音が大きくなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0070】
1A・・・ステープラ、2、2B・・・フォーミングプレート、21・・・第1成型部、21a・・・第1の先端部、21b・・・第1の後端部、22・・・第2成型部、22a・・・第2の先端部、22b・・・第2の後端部、23・・・連結部、24、24a、24b・・・第1の作用部、25、25a、25b・・・第2の作用部、26・・・長穴部、3・・・ドライバプレート、4・・・送り部、5・・・フェースプレート、6・・・シャフト、10・・・針、10a・・・針クラウン、10b・・・第1の針足(一方の脚部)、10c・・・第2の針足(他方の脚部)、10d・・・第1の針足形成部、10e・・・第2の針足形成部、11・・・針シート