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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172603
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子制御式レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/20 20060101AFI20241205BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090432
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸倫
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
【テーマコード(参考)】
3H062
5H316
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA16
3H062BB33
3H062CC01
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH02
5H316AA01
5H316BB05
5H316DD13
5H316DD20
5H316EE07
5H316EE12
5H316FF05
5H316GG03
5H316HH12
5H316JJ13
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】電子制御式レギュレータについて、電動モータの種類・レイアウトを変更することなく様々な圧力用途に対応しながら良好な調圧を行えるようにする。
【解決手段】ボディ10A内を高圧室2A、吐出圧室3A、圧力制御室4A、大気圧室5Aに区画し、弁体22を有する弁軸21Aと、弁体22が密着する弁座23と、電動モータ30の駆動で弁軸21Aを往復動作させて流体圧力を調整する吐出圧調整手段とからなる調圧弁20Aを備え、導入した高圧流体を設定圧力に調整して吐出する電子制御式レギュレータ1Aにおいて、高圧室2Aと吐出圧室3Aとの境界になる弁座23のシート径Ds、高圧室2Aと大気圧室5Aとの境界になる大気圧室側シール部材であるOリング72のシール径Dh、吐出圧室3Aと圧力制御室4Aとの境界になる圧力制御室側シール部材であるOリング71のシール径Doの3つを、略同一にした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口および吐出口を形成したボディの内部に、弁体が長手方向中途位置の外周部に同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能な弁軸と、前記弁体が密着可能なシート面を有する弁座と、電子制御された電動モータの駆動により前記弁軸を往復動作させて前記弁体と前記弁座の距離を変化させることで流体の圧力を調整する吐出圧調整手段と、からなる調圧弁を備えており、前記導入口から導入された高圧流体を前記調圧弁により減圧・調整しながら吐出圧室側で設定圧力の減圧流体として前記吐出口から吐出する電子制御式レギュレータにおいて、
前記ボディの内部は、前記導入口と連通した高圧室と、前記吐出口と連通した吐出圧室と、前記電動モータが収容された圧力制御室と、大気と連通した大気圧室と、に区画されており、
前記弁軸の基端側は、大気と連通した連通孔を有するシリンダ状の支持穴に挿入した状態で支持されており、
前記高圧室と前記吐出圧室との境界になる前記弁座のシート径と、
前記高圧室と前記大気圧室との境界になる大気圧室側シール部材のシール径と、
前記吐出圧室と前記圧力制御室との境界になる圧力制御室側シール部材のシール径とが、略同一とされていることを特徴とする電子制御式レギュレータ。
【請求項2】
前記弁軸の先端側は、前記電動モータの駆動により軸線方向に往復動作する運動軸に挿入した状態で接続されており、前記運動軸の外周に前記圧力制御室側シール部材が装着されている、ことを特徴とする請求項1に記載の電子制御式レギュレータ。
【請求項3】
前記弁軸における前記大気圧室側シール部材との接触部の外径と、前記運動軸における前記調圧制御室側シール部材との接触部の外径とが同一径に形成されている、ことを特徴とする請求項2記載の電子制御式レギュレータ。
【請求項4】
前記吐出圧調整手段は、
前記弁軸に同軸的に付設されて軸線方向に移動可能かつ回動不能に配置された円柱状の運動軸の外周面に形成された台形雄ネジと、
前記運動軸に外嵌されて前記電動モータの駆動により回転する円筒状部材の内周面に形成されて前記台形雄ネジに噛合する台形雌ネジと、
を組合せた送りネジ機構である、ことを特徴とする請求項1記載の電子制御式レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料等の高圧の流体を所定圧力に減圧・調整しながら吐出するレギュレータに関し、殊に、吐出する流体の圧力を電子制御で調整する電子制御式レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の流体を所定の圧力に減圧して送出するレギュレータとしては、例えば特許第3594507号公報(特許文献1)に記載されているガス燃料用のものが周知である。このレギュレータは、弁体を同軸的に設けた弁軸と中央を弁孔が貫通して前記弁体が密着するシート面を有したドーナツ状のシート部とを備え、ボディ内に流入したCNG等の高圧流体が、開弁状態で弁体と軸線方向に往復摺動可能に設けた弁軸を、その弁体がシート面に所定圧力で密着して押圧されるように調圧バネで付勢した構造とされており、高圧のガス燃料を所定圧力に減圧・調整しながら吐出する構造となっている。
【0003】
しかし、このような従来のレギュレータの減圧構造では、レギュレータによる流体の吐出圧は機械的に調圧バネの荷重に依存するため、指定された吐出圧ごとに調圧バネを予め用意する必要がある。また、車両の燃料供給システムで使用するレギュレータにおいては、その調圧バネを指定されたセット高さに予め固定しておくことから、エンジン要求流量が多い場合には圧力降下が大きくなり、要求流量が少ない場合には圧力降下が小さくなるため、機械的に吐出圧範囲と流量範囲が限られてしまうという問題があった。
【0004】
一方、実開昭59-160842号公報(特許文献2)には、1次側ダイヤフラム室と2次側ダイヤフラム室を備えたLPG用レギュレータにおいて、1次側ダイヤフラム室内の調圧バネの付勢力を調節する付勢力調節手段として1次側ダイヤフラム室内に設けた圧力センサからの出力信号に対応しながらパルス制御されるステッピングモータを備えた調圧機構が提案されている。
【0005】
このように、電子制御されるステッピングモータを備えた調圧機構により、1次側ダイヤフラム室内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなった場合は、調圧バネの付勢力を弱くし、1次側ダイヤフラム室内の圧力が予め設定した圧力よりも低くなった場合は調圧バネの付勢力を強くして、1次側ダイヤフラム室内の圧力を所望の圧力に維持することを可能としている。
【0006】
しかしながら、このレギュレータにおいて所望する圧力に調節して維持できるのは1次側ダイヤフラム室内だけであり、2次側ダイヤフラム室から吐出する燃料の圧力はその室内に配設された調圧バネに依存するため、1種類のレギュレータで様々な吐出圧力に設定することは依然として困難であり、また、吐出圧範囲と流量範囲が機械的に限られるという問題も解決されてはいない。
【0007】
これに対し、本願発明者・出願人らは、先行して出願した特願2022-88066において、図4に示すような電動モータの電子制御によるレギュレータを提案した。この電子制御式レギュレータ1Bは、円柱状のボディ10Bの内部に、高圧流体を導入する流体導入路11の導入口から調圧弁20Bの弁部分までを構成する高圧室2Bと、その弁部分から減圧流体を吐出する流体送出路12の吐出口までを構成する吐出圧室3Bと、調圧弁20Bを操作しながら吐出する流体の圧力を所定圧力に減圧・調整する吐出圧調整手段を内部に配した圧力制御室4Bとを備えている。
【0008】
そして、その吐出圧調整手段が電動モータ30の駆動により作動しながら、基端側に調圧バネ25を設けた弁軸21Bを軸線方向に移動させて弁体22と弁座23との間の距離を変更する弁軸移動構造を構成しており、減圧流体の圧力を検出する圧力センサの値に基づいて前記電動モータ30でその弁軸移動構造を作動させて、減圧流体の圧力が設定圧力を維持するように前記調圧弁20Bの開閉を行うようになっている。
【0009】
このように、前記弁軸21Bの基端側に配置した調圧バネ25のみで吐出圧力を調整するのではなく、センサで検出した吐出圧力を基に前記電動モータ30を駆動制御しながら前記弁軸21Bに設けた前記弁体22の開閉動作を行うようにして、設定した吐出圧力を維持する方式を採用したことで、要求流量の変動に柔軟に対応可能としながら、設定された様々な吐出圧力を自動的に維持する機能を発揮するものとしている。
【0010】
ところが、このような構成の電子制御式レギュレータ1Bにおいては、前記調圧弁20Bに付加される圧力荷重の関係から、前記高圧室2Bや前記吐出圧室3Bの設定範囲によって前記電動モータ30に対する要求トルクが異なることから、様々な各圧力用途に応じた電動モータを準備・レイアウトする必要が生じるため、製品の製造・供給におけるコストの高騰に繋がりやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3594507号公報
【特許文献2】実開昭59-160842号公報
【特許文献3】特願2022-88066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、電子制御式レギュレータについて、電動モータの種類・レイアウトを変更することなく様々な圧力用途に対応しながら良好な調圧を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明は、導入口および吐出口を形成したボディの内部に、弁体が長手方向中途位置の外周部に同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能な弁軸と、前記弁体が密着可能なシート面を有する弁座と、電子制御された電動モータの駆動により前記弁軸を往復動作させて前記弁体と前記弁座の距離を変化させることで流体の圧力を調整する吐出圧調整手段と、からなる調圧弁を備えており、前記導入口から導入された高圧流体を前記調圧弁により減圧・調整しながら吐出圧室側で設定圧力の減圧流体として前記吐出口から吐出する電子制御式レギュレータにおいて、前記ボディの内部は、前記導入口と連通した高圧室と、前記吐出口と連通した吐出圧室と、前記電動モータが収容された圧力制御室と、大気と連通した大気圧室と、に区画されており、前記弁軸の基端側は、大気と連通した連通孔を有するシリンダ状の支持穴に挿入した状態で支持されており、前記高圧室と前記吐出圧室との境界になる前記弁座のシート径と、前記高圧室と前記大気圧室との境界になる大気圧室側シール部材のシール径と、前記吐出圧室と前記圧力制御室との境界になる圧力制御室側シール部材のシール径とが、略同一とされていることを特徴とする。
【0014】
このように、弁軸の基端側を支持する支持穴に大気側への通路を設け、高圧室と吐出圧室とを隔てる弁座のシート径と、大気圧室と高圧室とを隔てる大気圧室側シール部材のシール径と、吐出圧室と圧力制御室とを隔てる圧力制御室側シール部材のシール径とを、ほぼ同径に揃えたことにより、調圧弁に付加される各圧力荷重をそれぞれバランスさせることが可能となるため、電動モータの種類・レイアウトを変更することなく、1つのレギュレータで様々な圧力用途に対応しながら良好な調圧機能を発揮するものとなる。
【0015】
本発明において、前記弁軸の先端側は、前記電動モータの駆動により軸線方向に往復動作する運動軸に挿入した状態で接続されており、前記運動軸の外周に前記圧力制御室側シール部材が装着されている場合、圧力制御室側で運動軸に連結する部分が弁座のシート径よりも細い弁軸であっても、運動軸の外周側をシールする構成を採用したことにより、他のシート径・シール径に一致させやすいものとなる。
【0016】
加えて、前記弁軸における前記大気圧室側シール部材との接触部の外径と、前記運動軸における前記圧力制御室側シール部材との接触部の外径とが同一径に形成されている場合、容易に2つのシール径を一致させた構造とすることができるため特に望ましい。
【0017】
本発明において、前記吐出圧調整手段は、前記弁軸に同軸的に付設されて軸線方向に移動可能かつ回動不能に配置された円柱状の運動軸の外周面に形成された台形雄ネジと、前記運動軸に外嵌されて前記電動モータの駆動により回転する円筒状部材の内周面に形成されて前記台形雄ネジに噛合する台形雌ネジと、を組合せた送りネジ機構である場合、レギュレータ全体としてサイズを抑えつつも弁軸を開弁位置又は閉弁位置に短時間で移動させて正確に停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
高圧室と吐出圧室とを隔てるシート径、大気圧室と高圧室とを隔てるシール径、吐出圧室と圧力制御室とを隔てるシール径、の三つを略同径に揃えた本発明によると、電動モータの種類・レイアウトを変更することなく様々な圧力用途に対応しながら良好な調圧を行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における実施の形態である電子制御式レギュレータの閉弁状態を示す縦断面図。
図2図1の電子制御式レギュレータの開弁状態を示す縦断面図。
図3図1の電子制御式レギュレータを配置した燃料供給システムの機能ブロック図。
図4】出願人が先行して出願した電子制御式レギュレータを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明における第1実施の形態である電子制御式レギュレータ1Aの開弁時の状態を示し、図2は閉弁時の状態を示している。この電子制御式レギュレータ1Aは、主にガス燃料等の供給システム等において、高圧の流体であるガス燃料を所定圧力に減圧しながら送出する減圧手段として使用することを想定したものである。
【0022】
金属製で円柱状に形成されたボディ10Aの内部は、高圧流体を導入する導入口11から調圧弁20Aの弁部分までの高圧部を構成している高圧室2Aと、調圧弁20Aの弁部分から減圧・調整された流体を吐出する吐出口12までの吐出圧部を構成している吐出圧室3Aと、吐出する流体の圧力を調整して維持するための吐出圧調整手段を備えている圧力制御室4Aと、大気圧と等しい圧力に保たれている大気圧室5Aと、に区画されている。
【0023】
前記調圧弁20Aは、傘状の弁体22が長手方向中途位置の外周部に同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能な軸状部材からなる弁軸21Aと、前記弁体22が密着可能なシート面24を有するとともに中心に弁孔を形成したドーナツ状の弁座23と、前記弁軸21Aを往復動作させて前記弁体22と前記弁座23との距離を変化させることで吐出圧力を調整する吐出圧調整手段とからなる。
【0024】
前記吐出圧調整手段は、巻線32を巻回した状態で支持しているステータ31および磁石34を配設したロータ33を備えた前記電動モータ30と、前記電動モータ30を駆動制御するドライバ40と、先端側の連結穴51に前記弁軸21Aの基端側を挿入して前記弁軸21Aと同軸的に連結された運動軸50Aとで構成されており、その下側に配置された前記弁軸21Aの前記弁体22を、前記ドライバ40により制御された電動モータ30の駆動により、前記弁座23の前記シート面24に対し前記弁体22が密着した閉弁位置(図2)と、離間した開弁位置(図1)との間で軸線方向に往復摺動させて開口部面積を変化させながら、吐出する減圧流体の圧力が設定圧力と等しくなるように自動的に調整を行うようになっている。
【0025】
前記吐出圧調整手段は、前記吐出口12に連通孔13で接続された圧力センサ設置部14内で減圧流体の圧力を検出している圧力センサ(図示せず)の値に基づいて、前記電動モータ30で弁軸移動構造を動作させながら吐出する減圧流体の圧力を設定圧力に維持するように前記調圧弁20Aの開閉を行うものである。
【0026】
尚、圧力センサの設置箇所は、前記圧力センサ設置部14内に限られるものではなく、前記吐出口12と直列または並列に配置されて吐出圧力を検出することが可能であればよく、減圧流体が送出される経路上において任意の箇所に設置することができる。
【0027】
図1に示したように、初期状態において、前記弁軸21Aは基端側にあたる前記大気圧室5A内に配置した調圧バネ25で押し上げられており、前記弁座23のシート面24に前記弁体22が密着しながら閉弁している。
【0028】
本実施の形態の電子制御式レギュレータ1Aにおいて、その弁軸移動構造は、前記弁軸21Aの先端側に連結された円柱状の運動軸50Aの外周面に形成してなる台形雄ネジ52と、前記電動モータ30の一部を構成している円筒状の部材であるロータ31の内周面に形成されて前記台形雄ネジ52に噛合する台形雌ネジ35との組合せからなる送りネジ機構であって、前記電動モータ30の駆動により前記ロータ31の内周面側と一体とされた前記台形雌ネジ35が前記台形雄ネジ52の周囲を回動する構成となっている。
【0029】
そして、前記運動軸50Aは、前記連結穴51と逆側の端部において内周面に平面部分を形成した挿入穴53が形成されており、前記ボディ10Aに基端62を固定して先端63の外周面に平面部分64を形成した回り止め軸60が、前記挿入穴53に対して軸線方向に摺動自在に挿入されており、互いの平面部分が密着することで運動軸50Aにおける回転動作を規制して軸線方向の直線動作に変換することによって、前記連結穴51により連結した前記弁軸21Aを移動させる構造である。
【0030】
図3の機能ブロック図に示すように、本実施の形態の電子制御式レギュレータ1Aは、燃料供給システムの燃料供給路の途中に配設されており、図示しない電子制御手段が、圧力センサで検出した圧力(Po)が指令した目標圧力(Pref)よりも低い場合は前記ドライバ40により前記電動モータ30をバルブ開方向に作動させ、検知した圧力(Po)が指令した目標圧力(Pref)よりも高い場合は、前記ドライバ40により前記電動モータ30をバルブ閉方向に作動させる制御を実行するものである。
【0031】
このように、前記弁軸21Aの基端に配置された調圧バネ25だけで吐出圧力を調整するのではなく、圧力センサで検出している吐出圧力のデータを基に前記電動モータ30を駆動制御しながら、前記弁軸21Aに設けた前記弁体22の開閉や開弁位置の調整を行うことにより、設定した吐出圧力に調整・維持する方式を採用したものであり、要求流量の変動に柔軟に対応可能としながら、設定された様々な吐出圧力を自動的に維持可能なものとしている。
【0032】
このような構成・機能を有した本実施の形態の吐出圧調整手段については、図4に示した、出願人が先行して出願した電子制御レギュレータ1Bと共通している。しかし、前記電子制御式レギュレータ1Bにおいても、調圧弁20Bに付加される圧力荷重の関係から、高圧室2Bや吐出圧室3Bの設定範囲によっては前記電動モータ30に対する要求トルクが異なる場合があるため、様々な各圧力用途に応じた電動モータを準備・レイアウトする必要が生じて、様々なコストの高騰に繋がってしまうという問題があった。
【0033】
そこで、本実施の形態の電子制御式レギュレータ1Aにおいては、前記ボディ10Aにおける前記弁軸21Aの基端側に位置する部分に、シリンダ状の支持穴15を設け、前記弁軸21Aの基端側を前記支持穴15に挿入するとともに連通孔16で大気側と連通させて大気圧室5Aを形成するものとし、且つ、前記弁軸21Aの基端側は、圧力制御室室4Aに収容された前記電動モータ30の駆動により軸方向に往復動する運動軸50Aに接続した構成としている。
【0034】
そして、前記高圧室2Aと前記吐出圧室3Aとの境界になる前記弁座23のシート径(シール径)と、前記高圧室2Aと前記大気圧室5Aとの境界になる大気圧室側シール部材である前記Oリング72のシール径と、前記吐出圧室3Aと前記圧力制御室4Aとの境界になる圧力制御室側シール部材である前記Oリング71のシール径とを、略同一のサイズに揃えたものとしており、この点が本発明における最大の特徴部分となっている。
【0035】
前記Oリング71は前記運動軸50Aの外周に装着されており、前記Oリング72は前記弁軸21Aの外周に装着されている。そして、前記運動軸50Aにおける前記Oリング71との接触部の外径と、前記弁軸21Aにおける前記Oリング72との接触部の外径は、同一径に形成されている。
【0036】
以上の構成による作用及び原理について詳細に説明すると、前記Oリング72により前記高圧室2Aと前記大気圧室5Aとの間で気密を維持する部分のシール径をDh、前記Oリング71により前記吐出圧室3Aと前記圧力制御室4Aとの間の気密を保持する部分のシール径をDo、前記調圧弁20Aの前記弁軸21Aがストロークした際に前記弁座23の前記シート面24と接触して前記高圧室2Aと前記吐出圧室3Aとの間の気密を保持する部分のシート径をDsとして、前記高圧室2Aの圧力をPin、前記吐出圧室3Aの圧力をPout、大気圧をPabsとしたとき、前記調圧弁20Aに付加される荷重Fは以下の数式で表すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、Dh≒Ds≒Doとしたとき、前記調圧弁20Aに付加される荷重Fは限りなくゼロとなり、前記電動モータ30の要求トルクは前記調圧弁20A周辺の機械部品によって決定付けされるため、使用する燃料供給圧や吐出圧範囲がどのような値であっても、前記電動モータ30の仕様やレイアウトを変更することなく、そのままの構成で対応可能としながら良好な調圧機能を発揮することができる。
【0039】
このように、上述した電子制御式レギュレータ1Aは、その調圧弁20Aの駆動部分が関わる前記弁座23のシート径・前記Oリング72のシール径・前記Oリング71のシール径の3つの部位について、総て同等の径に揃えたことにより、前記調圧弁20Aに付加される圧力荷重をバランスさせることを可能として、どのような圧力用途であっても同一仕様の電動モータで対応可能としながら良好な調圧機能を発揮できるようになった。
【0040】
尚、上述したDh、Ds、Doの値は同一であることが理想であるが、これらを完全に一致させた製品を実際に作成することは困難であるところ、前記弁座23のシート径を基準とした場合にこれに対する他の2つの径の誤差を10%未満に納めることが本発明の作用・効果を確保する点で好ましい。
【0041】
以上、述べたように、電子制御式レギュレータについて、本発明により電動モータの種類・レイアウトを変更することなく、様々な圧力用途に対応しながら良好な調圧を行えるようになった。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B 電子制御式レギュレータ、2A,2B 高圧室、3A,3B 吐出圧室、4A,4B 圧力制御室、5A 大気圧室、10A,10B ボディ、11 流体導入路、12 流体送出路、13 連通孔、14 圧力センサ設置部、15 支持穴、16 連通孔、20A,20B 調圧弁、21A,21B 弁軸、22 弁体、23 弁座、24 シート面、25 調圧バネ、30 電動モータ、31 ステータ、32 巻線、33 ロータ、34 磁石、35 台形雌ネジ、40 ドライバ、50A,50B 運動軸、51 連結穴、52 台形雄ネジ、53 挿入穴、60 回り止め軸、61 基端、62 先端、63 平面部分、71,72 Oリング
図1
図2
図3
図4