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  • 特開-支持部材の寿命判定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172604
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】支持部材の寿命判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20241205BHJP
【FI】
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090436
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AC05
2G024BA12
2G024BA21
2G024CA09
2G024CA12
2G024DA09
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】支持部材の耐用寿命を正確に判定する。
【解決手段】支持部材に掛かるトルクと、回転数と、トルクが掛かっている時間とを検出する負荷検出部9aと、トルクと回転数と時間とに基づいて、トルクと回転数と時間とのいずれかの値の増大に伴って増大する摩耗パラメータを算出する摩耗パラメータ算出部9bと、摩耗パラメータに基づいて、摩耗パラメータの増大に伴って増大する加速倍率を算出する加速倍率算出部9cと、トルクと加速倍率とから求まる値を当該値の大きさに応じて区分した区分領域に振り分けるとともに、区分領域ごとで値の振り分け数を累積して累積値を求める累積部9dと、区分領域ごとに予め定められている上限値と区分領域ごとの累積値とから上限値と累積値との関係を示す関係値を算出する関係値算出部9eと、予め定めた寿命値と関係値とに基づいて支持部材の寿命を判定する判定部9fとを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材を支持する支持部材の耐用寿命を判定する寿命判定装置であって、
前記支持部材に掛かるトルクと、回転数と、前記トルクが掛かっている時間とを検出する負荷検出部と、
前記トルクと前記回転数と前記時間とに基づいて、前記トルクと前記回転数と前記時間とのいずれかの値の増大に伴って増大する摩耗パラメータを算出する摩耗パラメータ算出部と、
前記摩耗パラメータに基づいて、前記摩耗パラメータの増大に伴って増大する加速倍率を算出する加速倍率算出部と、
前記トルクと前記加速倍率とから求まる値を当該値の大きさに応じて区分した区分領域に振り分けるとともに、前記区分領域ごとで前記値の振り分け数を累積して累積値を求める累積部と、
前記区分領域ごとに予め定められている上限値と前記区分領域ごとの前記累積値とから前記上限値と前記累積値との関係を示す関係値を算出する関係値算出部と、
予め定めた寿命値と前記関係値とに基づいて前記支持部材の寿命を判定する判定部と
を備えていることを特徴とする寿命判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材を支持する軸受などの支持部材の耐用寿命を判定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玉軸受けやコロ軸受けなどの支持部材は、転がり接触による接触面での疲労だけでなく、ラジアル方向やスラスト方向の荷重を受けることによる疲労が生じ、それらの疲労の進行によって耐用寿命が尽き、交換あるいは廃棄することになる。その疲労の要因は様々であり、特許文献1には、疲労の要因である負荷状態を診断する方法が記載されている。特許文献1に記載された方法は、軸受に異常な負荷状態が生じた場合でも、渦電流センサを用いて軸受鋼中の疲労による残留オーステナイトの減少量を測定することで当該負荷状態の数値診断(判断)を可能にする軸受負荷状態診断方法である。具体的には、特許文献1に記載の方法は、コイルに励磁電流を流して、鋼製回転軌道輪の軌道面内部もしくは鋼製固定軌道輪の軌道面内部または鋼製転動体の転動面内部に渦電流を誘導し、その渦電流によってコイルに生じるインピーダンスの変化を渦電流センサで検出して、熱処理された前記回転軌道輪の軌道面もしくは前記固定軌道輪の軌道面または前記転動体の転動面の疲労進行に伴う鋼中の組織変化による残留オーステナイトの減少量を測定し、その測定結果から前記回転軌道輪の軌道面もしくは前記固定軌道輪の軌道面または前記転動体の転動面の疲労傾向を把握し、当該把握した疲労傾向情報に前記回転軌道輪の軌道面ならびに前記固定軌道輪の軌道面および前記転動体の転動面に係る機械的な接触理論を突き合わせて軸受の負荷状態を診断する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-198246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、ミスアライメントによる偏荷重分布や、エッジロード分布、あるいは複列の軸受の各列間の荷重分担崩れ度合い、さらには異常アキシャル荷重負荷分布など、軸受の負荷状態を数値化してその診断を行うことができる。しかしながら、特許文献1の方法では、疲労した転がり軸受について、その疲労の原因となった負荷の状態を診断することができるが、疲労の進行の程度すなわち寿命を判定すること、あるいは寿命の到来を予測することはできない。
【0005】
なお、軸受の寿命を計算式で求めることが知られている。しかしながら、その計算式は、軸受の使用状態を予め想定した場合のものであり、実際の使用状態が想定されたものと異なっていれば、軸受の寿命は、計算式で求めたものとは異なることになる。そのため、計算式で求まる寿命は、安全を見込んで短めにするのが一般的であり、その結果、未だ使用を継続できる軸受を交換もしくは廃棄することになり、その点で無駄が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、実際の使用状態を反映させて、使用を継続できる残り時間や寿命の到来などのいわゆる寿命を判定することのできる支持部材の寿命判定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、回転部材を支持する支持部材の耐用寿命を判定する支持部材の寿命判定装置であって、前記支持部材に掛かるトルクと、回転数と、前記トルクが掛かっている時間とを検出する負荷検出部と、前記トルクと前記回転数と前記時間とに基づいて、前記トルクと前記回転数と前記時間とのいずれかの値の増大に伴って増大する摩耗パラメータを算出する摩耗パラメータ算出部と、前記摩耗パラメータに基づいて、前記摩耗パラメータの増大に伴って増大する加速倍率を算出する加速倍率算出部と、前記トルクと前記加速倍率とから求まる値を当該値の大きさに応じて区分した区分領域に振り分けるとともに、前記区分領域ごとで前記値の振り分け数を累積して累積値を求める累積部と、前記区分領域ごとに予め定められている上限値と前記区分領域ごとの前記累積値とから前記上限値と前記累積値との関係を示す関係値を算出する関係値算出部と、予め定めた寿命値と前記関係値とに基づいて前記支持部材の寿命を判定する判定部とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷検出部によって、支持部材に掛かるトルク、回転数ならびにそのトルクが掛かっている時間を検出し、その検出値に基づいて摩耗パラメータを算出する。その摩耗パラメータは、トルクや回転数あるいは上記の時間が大きい値であるほど、大きい値となり、支持部材の実際の使用状態を反映することになる。その摩耗パラメータに基づいて加速倍率を算出し、その加速倍率とトルクとから求まる値を、予め定めた区分領域ごとに振り分け、それぞれの区分領域で、上記の値の振り分け数を累積した累積値を求める。すなわち、区分領域ごとに、加速倍率とトルクとから求まる状態の値の頻度を求める。累積値が大きいほど、寿命が短くなるから、各区分領域に累積値の上限値を予め定めてあり、その上限値と累積値との比率などの関係値を求める。その関係値は、一例として、累積値が上限値に近づいた程度を表すことになる。その関係値と予め定めてある寿命値とを対比するなど、両者に基づいて支持部材の寿命を判定する。したがって、寿命の判定に最終的に使用する上記の関係値は、支持部材の実際の使用状態を反映した摩耗パラメータに基づいており、さらには使用することにより進行した摩耗あるいは疲労を反映している加速倍率に基づいているから、支持部材の実際の使用の状況に基づいた寿命の判定を行うことができる。言い換えれば、支持部材の実際の状態に基づいて、正確な寿命判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】転がり軸受の一例を示す模式的な断面図である。
図2】摩耗パラメータに基づいて加速倍率を求めるマップの一例を示す図である。
図3】影響係数を振り分ける区分領域ごとの上限値を説明するための線図である。
図4】コントローラの機能的構成を説明するためのブロック図である。
図5】各区分ごとの累積値を模式的に示す図である。
図6】関係値と負荷上限値とを示す棒グラフである。
図7】コントローラで実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を実施した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0011】
本発明で耐用寿命を判定する支持部材は、トルクを受けて回転する回転部材を支持する部材であり、ボールベアリングやローラベアリングなどの転がり軸受や、滑り軸受がその例である。図1に転がり軸受(以下、単に軸受と記す。)1の一例を模式的に示してある。共にリング状をなすインナーレース2とアウターレース3とが同心円上に配置され、そのインナーレース2の外周面とアウターレース3の内周面との間に複数の転動体(例えばボール)4が円周方向に等間隔に配置されている。そのボール4が自転かつ公転することにより、インナーレース2とアウターレース3とが相対的に回転し、各レース2,3とボール4との接触が転がり接触であることにより摩擦が低減されている。
【0012】
この軸受1は、ケーシング5に形成されている円筒状の所定の箇所に嵌め込まれて回転部材としてのシャフト6を回転可能に支持している。すなわちアウターレース3はその外周面をケーシング5に密着させた状態でケーシング5に嵌め込まれ、ケーシング5の端面に取り付けた例えばカバー7によってアウターレース3を軸線方向に押すことにより軸受1はケーシング5に固定されている。一方、シャフト6は、インナーレース2の内周面に密着した状態で軸受1に差し込まれており、そのシャフト6に軸線方向に一方側から嵌め込んだナット8によってインナーレース2を軸線方向に押すことにより、シャフト6と軸受1とが連結されている。
【0013】
シャフト6は、一方で、図示しない所定の駆動側部材に連結され、他方で、図示しない所定の出力側部材に連結されていて、これら駆動側部材と出力側部材との間でトルクを伝達する。その場合、軸受1には、シャフト6が伝達するトルクや回転数などに応じたラジアル方向やスラスト方向の荷重が作用し、インナーレース2およびアウターレース3とボール4との接触面の摩耗や疲労が進行し、使用を継続できなくなるまでの耐用寿命が次第に短くなる。
【0014】
本発明の実施形態における寿命判定装置は、軸受1の耐用寿命(以下、単に寿命と記すことがある。)を判定するように構成されており、その判定を行うためのコントローラ9を備えている。コントローラ9は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、入力されたデータならびに予め記憶しているデータなどを使用して、予め記憶しているプログラムに従って演算を行うことにより、軸受1の寿命を判定するように構成されている。
【0015】
コントローラ9に入力されるデータの例を挙げると、シャフト6ならびに軸受1に掛かっているトルク、シャフト6(インナーレース2)の回転数、シャフト6ならびに軸受1が入力されたトルクで回転している時間などである。ここで、トルクは所定のトルクセンサ10で検出したデータであってよく、あるいはシャフト6を回転させるエンジンやモータなどの駆動力源(図示せず)が出力するトルクから求めたデータであってもよい。また同様に、回転数は所定の回転数センサ11で検出したデータであってもよく、あるいは駆動力源の回転数から求めたデータであってもよい。さらに、シャフト6が回転している時間は、シャフト6が回転し始めることによりカウントを開始し、かつシャフト6が停止することによりカウントを停止するタイマ12のカウントデータであってよい。
【0016】
また、コントローラ9が予め記憶しているデータの例を挙げると、摩耗パラメータから加速倍率を求めるためのデータがコントローラ9に予め入力されている。ここで、摩耗パラメータは軸受1に掛かる負荷を示すパラメータであって、シャフト6のトルクと回転数と回転の継続時間(単に時間と記すことがある。)との積であり、したがってトルクと回転数と時間とのいずれかが増大することに伴って増大する値である。時間は、車両が走行することによって次第に大きい値となるから、摩耗パラメータは走行距離に応じて増大する。その摩耗パラメータに応じて加速倍率を設定してあり、その一例を図2に示してある。図2に示すように、走行距離が長くなると摩耗パラメータは、走行距離および走行時の負荷の掛かり方によって次第に増大する。その摩耗パラメータの大きさに応じて加速倍率Kを実験やシミュレーションなどに基づいて予め設定してある。図2に示す例では、摩耗パラメータmが「m1」になるまでは、加速倍率Kを「K0」とし、摩耗パラメータmが「m1~m2」では加速倍率Kを「K1(>K0)」とし、以下同様に、摩耗パラメータmが増大するのに従って加速倍率Kを大きい値に設定してある。
【0017】
一方、軸受1の耐久性に対する影響は、トルクが大きいほど大きくなる。また、長期に亘って使用して摩耗パラメータmが大きくなっている場合には耐久性に対する影響が大きいと考えられる。そこで、トルクと加速倍率とから決まる値(以下、仮に影響係数と称す。)Tを設定する。この影響係数Tは、一例として、トルクと加速倍率との積であってよく、その値が大きいほど、軸受1の寿命が低下しやすくなる。この影響係数Tの算定の根拠となるトルクは不連続に変化するが、本発明では、これを複数に区分し、各区分領域に入る影響係数Tの数(回数もしくは頻度)を累積する。それらの各区分領域に入る影響係数Tによる寿命に対する影響は、影響係数Tが大きいほど大きく、したがって各区分領域に入る影響係数Tの数(影響係数Tの元となるトルクおよび加速倍率)の上限値は、影響係数Tが小さい区分領域での上限値よりも影響係数Tが大きい区分領域での上限値の方が小さくなる。図3には、影響係数Tの上限値Nyを影響係数Tの区分領域に対応させて示してある。なお、これらの上限値Nyは実験やシミュレーションによって予め定めておくことができる。
【0018】
図3では横軸に影響係数Tの区分領域を採ってあり、影響係数TがT1~T2(>T1)を区分A、T2~T3(>T2)を区分B、T3~T4(>T3)を区分C、T4~T5(>T4)を区分D、T5~T6(>T5)を区分E(以下、同様)としてある。区分Aでは影響係数Tの値が小さいから、区分Aにおける上限値Ny1が最も大きい値に設定してあり、以下、区分Bから順に、それぞれの上限値Ny2,Ny3・・・Ny5を次第に小さくなる値に設定してある。コントローラ9はこのように設定した区分領域およびそれぞれの上限値を予め記憶している。
【0019】
さらに、コントローラ9は、軸受1の寿命を判定するための基準値となる負荷上限値Dbrg_limを予め記憶している。この負荷上限値Dbrg_limが本発明における寿命値に相当し、これは、後に具体的に説明するように、上記の各区分A.B・・・での累積値と上限値との関係で決まる値(関係値)を評価するためのものである。したがって、負荷上限値Dbrg_limは、耐久性に優れた軸受1ほど大きい値になる。
【0020】
コントローラ9は、上述した各データを使用して演算を行い、軸受1の実際の使用状態あるいは負荷の掛かり方に基づいて寿命の判定を行う。その判定のために、コントローラ9は、以下の機能的構成を備えている。図4はその機能的構成をブロック図で示しており、軸受1(あるいはシャフト6)に掛かっているトルクならびに回転数および回転している時間を検出する負荷検出部9aを備えている。これらの検出は、前述したトルクセンサ10や回転数センサ11ならびにタイマ12などからのデータに基づいて行うことができる。これらの入力されたデータに基づいて上述した摩耗パラメータmを算出する摩耗パラメータ算出部9bを備えている。この摩耗パラメータ算出部9bでは、トルクおよび回転数ならびに時間の積を摩耗パラメータmとして算出する。
【0021】
その摩耗パラメータmに基づいて加速倍率Kを求める加速倍率算出部9cを備えている。前述したように、コントローラ9は、前述した図2に示す摩耗パラメータmを加速倍率Kに関係づけたデータを予め保持しており、加速倍率算出部9cは、摩耗パラメータmが算出される都度、その時点の加速倍率Kを算出する。
【0022】
さらに、コントローラ9は累積部9dを備えている。累積部9dは、いわゆる負荷や疲労の蓄積状態を数値化するためのものであり、上記の加速倍率Kとトルクとに基づいて影響係数Tを算出する。具体的には加速倍率Kとトルクとの積を算出する。その影響係数Tを上述した区分A,B,C・・・に振り分け、影響係数Tが振り分けられる都度、その区分A,B,C・・・における累積値を「回転速度×サンプリング周期」から求められる回数分、頻度として加算(インクリメント)する。すなわち、各区分A,B,C・・・に振り分けられる影響係数Tすなわち負荷状態が発生する回数をカウントする。各区分A,B,C・・・ごとの累積値H1,H2,H3,H4・・・を図5に模式的に示してある。
【0023】
こうして算出される累積値H1,H2,H3,H4・・・に基づいて、軸受1の疲労あるいは寿命の進行を評価するための関係値を求める関係値算出部9eが設けられている。この関係値は、要は、寿命に影響する負荷の蓄積の状態を示すものであり、各区分A,B,C・・・に設定してある上限値Nyと累積値とから求める。例えば上限値Nyに対する累積値の比率あるいは差などであってよい。ここで説明している実施形態では、各区分A,B,C・・・での上限値Ny1,Ny2,Ny3・・・に対する累積値の比率の総和を関係値Dbrgとしている。
Dbrg=H1/Ny1+H2/Ny2+H3/Ny3+H4/Ny4+H5/Ny5・・・
【0024】
この関係値Dbrgは、軸受1に蓄積した負荷あるいは疲労を示しており、これが負荷上限値Dbrg_limに達すると、軸受1の耐用寿命が尽きたことになる。そこで、コントローラ9には、これら関係値Dbrgと負荷上限値Dbrg_limとに基づいて、軸受1の寿命を判定する判定部9fが設けられている。その判定の仕方は必要に応じて種々可能であり、例えば図6に示すように、関係値Dbrgと負荷上限値Dbrg_limとの差を判定値とすることができる。これに替えて、関係値Dbrgの負荷上限値Dbrg_limに対する比率を判定値とすることもできる。
【0025】
判定の結果を告知部13に出力する出力部9gが設けられている。その告知部13は、判定の結果を例えば図6に示す棒グラフとして表示する表示部であってよく、あるいは関係値Dbrgと負荷上限値Dbrg_limとの差や比率を表示する数値表示部であってもよい。
【0026】
上述したコントローラ9で実行する寿命判定の手順をフローチャートで示せば図7のとおりである。図7に示すルーチンは、車両に搭載されている軸受1の寿命判定を行うためのものであり、車両にレディースイッチがオンになっている状態で、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。したがって、負荷としてのトルクや回転数は、所定の短時間をサンプリング周期としてサンプリング周期ごとに検出あるいは読み込まれる。先ず、前述したトルクと回転数と軸受1が回転している時間とを検出する負荷検出が行われる(ステップS1)。
【0027】
ついで、これらの入力データに基づいて摩耗パラメータmが算出される(ステップS2)。摩耗パラメータmは、一例としてトルクと回転数と上記の時間との積として算出される。
【0028】
算出された摩耗パラメータmと予め用意してある図2に示すいわゆるマップとに基づいて加速倍率Kが求められる(ステップS3)。
【0029】
その加速倍率Kとトルクとから影響係数Tを算出するとともに、その影響係数Tをその値の大きさに応じて上述した各区分A,B,C・・・に振り分け、かつ各区分A,B,C・・・でのそれぞれに振り分けられた影響係数Tの数をインクリメントする(ステップS4)。すなわち、前述した累積値H1,H2,H3・・・を算出する。
【0030】
そして、その累積値H1,H2,H3・・・と各区分A,B,C・・・ごとに設定してある上限値Ny1,Ny2,Ny3・・・とに基づいて前述した関係値Dbrgが算出される(ステップS5)。その関係値Dbrgと負荷上限値Dbrg_limとに基づいて軸受1の寿命の判定が行われる(ステップS6)。その後、リターンする。
【0031】
したがって、本発明に係る寿命判定装置によれば、軸受1が回転している際のトルクならびに回転数および時間に基づいて、加速倍率Kや関係値Dbrgなどを求めて寿命の判定を行うので、寿命の判定に軸受1の実際の動作状態を反映させることができる。そのため、本発明の寿命判定装置によれば、支持部材の耐用寿命を正確に判定することが可能になる。
【符号の説明】
【0032】
1 軸受
2 インナーレース
3 アウターレース
4 ボール
5 ケーシング
6 シャフト
7 カバー
8 ナット
9 コントローラ
9a 負荷検出部
9b 摩耗パラメータ算出部
9c 加速倍率算出部
9d 累積部
9e 関係値算出部
9f 判定部
9g 出力部
10 トルクセンサ
11 回転数センサ
12 タイマ
13 告知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7