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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172609
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20241205BHJP
   B60K 23/00 20060101ALI20241205BHJP
   B60K 23/08 20060101ALI20241205BHJP
   B60K 17/348 20060101ALI20241205BHJP
   G07C 5/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16H57/04 Z
B60K23/00 K
B60K23/08 Z
B60K17/348 A
G07C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090442
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】河村 智博
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
【テーマコード(参考)】
3D036
3D043
3E138
3J063
【Fターム(参考)】
3D036GA11
3D036GB05
3D036GH03
3D036GH08
3D036GJ12
3D043AA07
3D043AB11
3D043EA02
3D043EB12
3E138AA06
3E138BA09
3E138BA12
3E138BA20
3E138CB03
3E138CC01
3E138DA02
3E138DA07
3E138HA06
3E138MA05
3E138MB12
3E138MC04
3J063AA13
3J063AC16
3J063BA11
3J063BA15
3J063BA20
3J063BB11
3J063BB37
3J063CB53
3J063XD03
3J063XD72
3J063XE44
3J063XJ07
3J063XJ08
(57)【要約】
【課題】作業車両の前輪のメンテナンス時期を管理可能にすること。
【解決手段】走行車体(1a)の前輪(2,2)が回転している状態であると判定する判定手段(205)と、前輪(2,2)の回転に基づく稼働時間を積算する積算手段(206)と、稼働時間が予め定められた値に達した場合に管理者に報知する報知手段(207)と、を有する制御部(200)と、を備えることで、前輪(2,2)の回転に基づく稼働時間を積算して、稼働時間が予め定められた値に達した場合に管理者に報知でき、作業車両の前輪のメンテナンス時期を管理できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1a)と、
前記走行車体(1a)の前輪(2,2)が回転している状態であると判定する判定手段(205)と、前記前輪(2,2)の回転に基づく稼働時間を積算する積算手段(206)と、前記稼働時間が予め定められた値に達した場合に管理者に報知する報知手段(207)と、を有する制御部(200)と、
を備えたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記走行車体(1a)のエンジン(E)が駆動中で、且つ、前記走行車体(1a)の前進と後進と中立とを切り替える前後進レバー(L1)が中立以外に操作されている場合に、前記稼働時間の積算を行う前記積算手段(206)、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行車体(1a)の後輪(3,3)の回転に基づいて車速を算出する車速算出手段(202)と、
前記車速算出手段(202)が車速を算出している場合に前記稼働時間の積算を行う前記積算手段(206)と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記走行車体(1a)の位置を計測する測位手段(203)と、
前記後輪(3,3)のみを駆動する二輪駆動と、前記前輪(2,2)と前記後輪(3,3)とを駆動する四輪駆動とを切り替える駆動切替手段(SW1)と、
前記車速算出手段(202)が前記後輪(3,3)の回転を検知し且つ前記測位手段(203)が前記走行車体(1a)の移動を検知しない場合において、前記駆動切替手段(SW1)が二輪駆動に設定されている場合には前記稼働時間の積算を行わず、前記駆動切替手段(SW1)が四輪駆動に設定されている場合には前記稼働時間の積算を行う前記積算手段(206)と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや苗移植機、芝刈り機等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタや苗移植機等の作業車両において、作業車両のメンテナンスの時期を判別する技術として、作業機の作動油の油温を検出して、油温の単位時間当たりの上昇量が所定値以上であり、且つ、PTOスイッチが入状態である時間を積算し、積算時間が所定時間に達すると、作業機のメンテナンスを促す技術が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-83422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来の技術では、作動油の経時的な劣化度合いに応じてメンテナンス時期(交換)を判断していた。作業車両には、作動油ではなく、潤滑油が使用されている部分がある。例えば、前輪の軸のギアの部分には潤滑油が使用されており、経時的に潤滑油が劣化するが、前輪の軸の潤滑油のオイルの交換時期については、従来検出されておらず、おおざっぱに作業車両の総稼働時間等からオイル交換が行われていた。したがって、オイルの交換時期が早すぎて無駄なオイル交換が発生したり、交換時期が遅すぎてギアの効率が低下した状態で作業が行われたりする問題があった。
なお、トラクタ等の作業車両において、後輪は、トランスミッションケースと一体で作動油が使用されることが一般的であり、エンジンの作動中は常に作動油が循環している構成が多い。したがって、作動油の注油は行われるが、後輪軸の部分についてオイルの劣化によるメンテナンスが行われることはほとんどない。
【0005】
本発明は、作業車両の前輪のメンテナンス時期を管理可能にすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車体(1a)と、前記走行車体(1a)の前輪(2,2)が回転している状態であると判定する判定手段(205)と、前記前輪(2,2)の回転に基づく稼働時間を積算する積算手段(206)と、前記稼働時間が予め定められた値に達した場合に管理者に報知する報知手段(207)と、を有する制御部(200)と、を備えたことを特徴とする作業車両である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記走行車体(1a)のエンジン(E)が駆動中で、且つ、前記走行車体(1a)の前進と後進と中立とを切り替える前後進レバー(L1)が中立以外に操作されている場合に、前記稼働時間の積算を行う前記積算手段(206)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記走行車体(1a)の後輪(3,3)の回転に基づいて車速を算出する車速算出手段(202)と、前記車速算出手段(202)が車速を算出している場合に前記稼働時間の積算を行う前記積算手段(206)とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記走行車体(1a)の位置を計測する測位手段(203)と、前記後輪(3,3)のみを駆動する二輪駆動と、前記前輪(2,2)と前記後輪(3,3)とを駆動する四輪駆動とを切り替える駆動切替手段(SW1)と、前記車速算出手段(202)が前記後輪(3,3)の回転を検知し且つ前記測位手段(203)が前記走行車体(1a)の移動を検知しない場合において、前記駆動切替手段(SW1)が二輪駆動に設定されている場合には前記稼働時間の積算を行わず、前記駆動切替手段(SW1)が四輪駆動に設定されている場合には前記稼働時間の積算を行う前記積算手段(206)と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、前輪(2,2)の回転に基づく稼働時間を積算して、稼働時間が予め定められた値に達した場合に管理者に報知されることで、作業車両の前輪のメンテナンス時期を管理できる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、エンジン(E)が駆動中で且つ前後進レバー(L1)が中立以外に操作されている場合に、稼働時間を積算することで、前輪(2,2)の稼働状況を精度よく積算でき、メンテナンス時期を適切に管理できる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、後輪(3,3)の回転に基づいて車速を算出している場合に稼働時間の積算を行うことで、エンジン(E)等が停止した状態で坂道で移動した場合でも前輪(2,2)の回転を積算できる。よって、前輪(2,2)の稼働状況を精度よく積算でき、メンテナンス時期を適切に管理できる。
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、スリップの発生時に、二輪駆動と四輪駆動の状況に応じて、前輪(2,2)の稼働状況を精度よく積算でき、メンテナンス時期を適切に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機としてロータリ耕耘機が装着された状態の説明図である。
図2図2は実施の形態のトラクタの説明図であり、作業機としてプラウが装着された状態の説明図である。
図3図3は実施の形態のトラクタの説明図であり、作業機としてバケットが装着された状態の説明図である。
図4図4は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機としてロータリ耕耘機が装着された状態の説明図である。
図1において、本発明の作業車両の一例としての耕耘用のトラクタ1は、走行車体1aの前後部に前輪2,2と後輪3,3とを備え、走行車体前部のエンジンルーム4内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース5内の変速装置によって適宜減速して、これらを前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム4はボンネット6で覆う構成である。また、トラクタ1の機体後部には、トラクタ1の後方の地面(圃場)を耕耘する耕耘機18などの作業機を装着し、リアPTO軸21で動力が伝達されて作業機を駆動する構成としている。
なお、本明細書ではトラクタ1の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0014】
走行車体1aの上部には、キャビン7が支持されている。キャビン7の内部では、トランスミッションケース5の上部位置に運転座席8が配置され、この運転座席8の前方には、ステアリングハンドル10や、駐車ブレーキ(図示せず)等が配置されている。また、運転座席8の前方には、速度メータ(図示せず)等の表示パネルや、操作用の各種スイッチ(図示せず)などが配置されている。運転座席8の前方下部には、ブレーキペダル12や、前進ペダルや後進ペダルを有するアクセルペダル13等の走行操作具が配置されている。また、キャビン7の天井部には、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)用の人工衛星からの信号を受信するGNSS受信機(図示せず)が設置されている。
【0015】
図1において、トランスミッションケース5の後部上方には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機の一例としての耕耘機18が連結されている。
【0016】
油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダ14aに作動油が供給されるとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介して作業機(耕耘機)18が上昇する。反対に油圧シリンダ14a内の作動油が油圧タンクを兼ねるトランスミッションケース5内に排出されると、リフトアーム15,15は下降する。
【0017】
図2は実施の形態のトラクタの説明図であり、作業機としてプラウが装着された状態の説明図である。
図3は実施の形態のトラクタの説明図であり、作業機としてバケットが装着された状態の説明図である。
なお、走行車体1aの後部に装着される作業機としては、農作業用のロータリ耕耘機18に限定されず、図2に示すようにプラウ18′を使用する場合や、播種機、苗移植機、肥料散布機、薬剤散布機等の作業機を使用することも可能である。また、図3に示すように、走行車体1aの前部にバケット18″のような作業機を装着することも可能である。
【0018】
(作業車両の制御部の説明)
図4は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
実施の形態のトラクタ1は、各機能を制御する制御部200を有する。制御部200は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部200は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部200は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部200は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部200は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部200は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0019】
制御部200には、前後進センサSN1や後輪回転数センサSN2、GNSS受信機SN3、駆動切替スイッチSW1、その他の図示しない各種センサ等の信号入力要素から信号が入力される。
前後進センサSN1は、作業者が走行車体1aの前進と後進と中立とを切り替える前後進レバーL1の操作位置が、「前進」であるか、「後進」であるか、「中立」であるかを検知する。
後輪回転数センサSN2は、後輪3,3の回転数を検出する。
GNSS受信機SN3は、GNSS用の人工衛星からの信号(測位用の信号)を受信する。
駆動切替手段の一例としての駆動切替スイッチSW1は、作業者の入力により、後輪3,3のみを駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪2,2と後輪3,3とを駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替える。
【0020】
制御部200は、油圧シリンダ14aや前後進クラッチCL1、駆動切替クラッチCL2、その他の図示しない被制御要素に対して制御信号を出力する。
前後進クラッチCL1は、前後進レバーL1の操作に応じて、エンジンEから各車輪2,3に前進(正回転)用の駆動の伝達と、後進(逆回転)用の駆動の伝達と、中立用の駆動の非伝達と、を切り替える。
駆動切替クラッチCL2は、駆動切替スイッチSW1の入力に応じ、2WD時には前輪2,2への駆動の伝達を切り(非伝達とし)、4WD時には前輪2,2への駆動の伝達を行う。
【0021】
実施の形態の制御部200は、以下の機能手段(プログラムモジュール)を有する。
前後進判別手段201は、前後進センサSN1の検知結果に基づいて、前後進レバーL1の操作位置が「前進」であるか、「後進」であるか、「中立」であるかを検知する。すなわち、走行車体1aが前進または後進して前輪2,2が回転する状況であるのか、中立で前輪2,2が回転しない状況であるのかを判別する。
【0022】
車速算出手段202は、走行車体1aの車速を算出する。実施の形態の車速算出手段202は、後輪回転数センサSN2の検知結果に基づいて、後輪3,3の単位時間当たりの回転速度から車速を算出する。実施の形態の車速算出手段202は、後輪3,3が回転していない状態では、車速がゼロであると算出する。
測位手段203は、GNSS受信機SN3の受信する測位信号に基づいて、走行車体1aの位置を計測する。
駆動切替判別手段204は、駆動切替スイッチSW1での入力に基づいて、二輪駆動であるか四輪駆動であるかを判別する。
【0023】
判定手段205は、走行車体1aの前輪2,2が回転している状態であるか否かを判定する。
実施の形態の判定手段205は、走行車体1aのエンジンEが駆動中で且つ前後進レバーL1が中立以外(すなわち、「前進」または「後進」)に操作されている場合に、走行車体1aの前輪2,2が回転している状態であると判定する。
また、実施の形態の判定手段205は、車速算出手段202が車速を算出している場合には、走行車体1aの前輪2,2が回転している状態であると判定する。
【0024】
なお、実施の形態の判定手段205は、車速算出手段202が車速を算出している場合(すなわち、後輪3,3の回転を検知している場合)であっても、測位手段203が走行車体1aの移動を検知しない場合(例えば、1秒以上位置情報の変化がない場合)には、駆動切替スイッチSW1が二輪駆動に設定されている場合には、後輪3,3のみがスリップして、空転している状態であると推定し、前輪2,2が回転していない状態であると判定する。
一方、実施の形態の判定手段205は、車速算出手段202が車速を算出している場合(すなわち、後輪3,3の回転を検知している場合)であり、且つ、測位手段203が走行車体1aの移動を検知しない場合であって、駆動切替スイッチSW1が四輪駆動に設定されている場合には、後輪3,3と前輪2,2の四輪がスリップして、空転している状態であると推定し、前輪2,2が回転している状態であると判定する。
【0025】
積算手段206は、前輪2,2の回転に基づく稼働時間を積算する。なお、実施の形態の積算手段206は、稼働時間を積算する場合を例示したが、これに限定されない。すなわち、直接的に時間を積算する場合に限定されず、稼働時間に関連するパラメータ、すなわち、前輪2,2の累積回転数やエンジンEの累積回転数、累積走行距離(非スリップ状態)等、を積算することで、間接的に稼働時間を積算する構成とすることも可能である。実施の形態の積算手段206は、判定手段205において走行車体1aの前輪2,2が回転している状態であると判定された場合に、前輪2,2の回転に基づく稼働時間を積算する。
【0026】
報知手段207は、積算手段206で積算された稼働時間が、予め定められた値に達した場合に、管理者に報知する。実施の形態の報知手段207は、前輪2,2の軸のオイルの経時的な劣化に基づくオイル交換時期について、予め実験等で値(閾値)を導出しておき、累積の稼働時間が閾値に達した場合に、トラクタ1の管理者である搭乗者(利用者、運転手)に報知を行う。閾値は、一例として50時間とすることが可能である。
報知は、実施の形態では表示パネルへの表示で行うが、これに限定されない。例えば、ランプの点灯やブザーの鳴動、音声案内等で報知することも可能である。また、表示パネルではなく、通信回線でトラクタ1と接続された端末(スマートフォンやタブレット端末等)やサーバーにメンテナンス時期であることを報知することで、管理者である端末ユーザーやサーバー管理者に報知する構成とすることも可能である。したがって、トラクタ1はユーザーが搭乗して操作する乗用型である場合を例示したが、これに限定されず、自律走行可能な作業車両にも適用可能である。
なお、表示パネルへの表示は、表示切替ボタンの入力がされた場合には、管理者が確認したとみなして、表示を終了する構成とすることも可能である。
【0027】
(実施の形態の作用)
前記構成を備えた実施の形態のトラクタ1では、前輪が回転している状態での稼働時間が積算され、稼働時間が閾値に達すると、メンテナンス時期であることが管理者に報知される。したがって、前輪の稼働状況を検知しない従来に比べて、実際の前輪2,2の稼働状況に応じてメンテナンス時期を報知することが可能である。よって、トラクタ1の管理者が適切なメンテナンス時期にメンテナンスを行うことが可能である。
特に、実施の形態のトラクタ1では、前後進レバーL1の入力状況に応じて、前進時だけでなく後進時も前輪2,2が回転していると判定する。したがって、前輪2,2の稼働状況を精度よく検知可能である。
【0028】
また、実施の形態のトラクタ1では、後輪3,3の回転を後輪回転数センサSN2で検知して、前輪2,2の稼働状況を検知している。ここで、クラッチが繋がっていないときやエンジンEが停止しているときでも、トラクタ1が坂道を自重で下って移動することがある。すなわち、前後進レバーL1が「中立」であったり、エンジンEが停止していたりしても、前輪2,2が回転することがある。実施の形態のトラクタ1では、後輪回転数センサSN2で回転を検知すると前輪2,2の稼働時間を積算しており、エンジンEの停止時等で前輪2,2の回転を検知しない場合に比べて、前輪2,2の稼働状況をより精度よく検知可能である。
【0029】
さらに、実施の形態のトラクタ1では、後輪3,3の回転を検知しても、測位手段203で位置の移動が検知されない場合には、車輪2,3がスリップしていると判定する。このとき、2WDでは、駆動輪である後輪3,3のみがスリップ(空転)していて、従動輪である前輪2,2は回転していないとして前輪2,2の稼働時間の積算は行わない。一方、4WDでは、前輪2,2も駆動輪であり、前輪2,2もスリップ状態であるとして、前輪2,2の稼働時間の積算を行う。よって、スリップの判定を行わない場合に比べて、前輪2,2の稼働状況をより精度よく検知可能である。なお、トラクタ1の作業機として、牽引負荷の大きなプラウ18′や、バケット18″を使用した場合は、スリップが発生しやすく、このような作業機を使用した場合でも前輪2,2の稼働状況を精度よく検知可能である。
【0030】
なお、スリップを判定した場合には、トラクタ1を停車させたり、油圧シリンダ14aを作動させて作業機18,18′,18″を上昇させて、負荷を軽減して、スリップを解消できる可能性のある状況にすることが望ましい。他にも、トラクタ1を停車後、作業機18,18′,18″を上昇させた後に、トラクタ1を所定距離(例えば、3m)後進させ、その後、スリップした場所に勢いをつけて再突入させる構成とすることも可能である。再突入時、作業機18,18′,18″の高さ(耕深深さ)を所定値(例えば、20mm)上昇させた状態とすることで、負荷が低減した状態でスリップした位置に再突入して、スリップせずに作業が行われる可能性を高めることが望ましい。なお、再突入後、スリップした場所を通過した後は、耕深深さを元の値に戻すことが望ましい。
【0031】
また、実施の形態のトラクタ1では、前輪2,2の稼働状況を検知する場合に、前輪2,2の回転を直接計測するセンサ類を使用せず、既存のトラクタ1に設置されている前後進センサSN1や後輪回転数センサSN2やGNSS受信機SN3、駆動切替スイッチSW1等を使用して稼働時間の積算を行っている。したがって、前輪2,2の回転を直接計測する専用の部品を追加する必要がなく、コスト上昇が抑制されている。なお、前輪2,2の回転を直接計測するセンサを設置する構成とすることも可能である。
なお、トラクタ1とサーバとを接続して営農管理を行う構成では、スリップが発生した場所を記憶して、次回以降の作業でスリップ対策を行うことも望ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 トラクタ
1a 走行車体
2 前輪
3 後輪
4 エンジンルーム
5 トランスミッションケース
6 ボンネット
7 キャビン
8 運転座席
10 ステアリングハンドル
12 ブレーキペダル
13 アクセルペダル
14 油圧シリンダケース
14a 油圧シリンダ
15 リフトアーム
16 ロワーリンク
17 リフトロッド
18 作業機、耕耘機
200 制御部
201 前後進判別手段
202 車速算出手段
203 測位手段
204 駆動切替判別手段
205 判定手段
206 積算手段
207 報知手段
CL1 前後進クラッチ
CL2 駆動切替クラッチ
E エンジン
L1 前後進レバー
SN1 前後進センサ
SN2 後輪回転数センサ
SN3 GNSS受信機
SW1 駆動切替スイッチ
図1
図2
図3
図4