(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172618
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】配列決定によるCRISPRヌクレアーゼオフターゲット検出(CROFT-Seq)
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6809 20180101AFI20241205BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20241205BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20241205BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241205BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
C12Q1/6809 Z
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090453
(22)【出願日】2023-05-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516314125
【氏名又は名称】ヴィリニュス・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Vilnius University
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミンダウガス ザレンバ
(72)【発明者】
【氏名】パウリウス トリウシス
(72)【発明者】
【氏名】タウトヴィダス カルヴェリス
(72)【発明者】
【氏名】ギエドリウス サスナウスカス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シンクナス
(72)【発明者】
【氏名】アルギルダス グリバウスカス
(72)【発明者】
【氏名】アルーナス シランスカス
(72)【発明者】
【氏名】エヴェリナ ザゴルスカイテ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA12
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR62
4B063QR90
4B063QS25
4B063QS36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CRISPR-Cas9ヌクレアーゼによってヒトゲノムDNA試料から生じたin vitro二本鎖切断(DSB)を検出する方法を提供する。
【解決手段】DNAにおける二本鎖切断を検出するための方法であって、前記方法が、切断DNA末端にアダプターをライゲーションする段階;ライゲーションされたDNAをストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに捕捉する段階;前記ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに結合していない非ビオチン化DNA鎖を除去することが可能な薬剤を添加する段階;PCRライブラリーの増幅及び配列決定における使用に適合性の非ビオチン化鎖合成プライマーを使用して相補鎖を合成する段階;前記PCRライブラリーを増幅し、プールし、精製する段階;及び前記PCRライブラリーを配列決定する段階を備える、方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAにおける二本鎖切断を検出するための方法であって、前記DNAの切断がプログラム可能なヌクレアーゼによって誘導され、前記方法が、
切断DNA末端にアダプターをライゲーションする段階、ここで、アダプターは、前記ライゲーションされたDNAを精製するためのビオチンを含む;
ライゲーションされていない前記アダプターを、エキソヌクレアーゼIを用いて除去するのに十分な条件下で、前記ライゲーションされたDNAをインキュベートする段階;
ライゲーションされたDNAをストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに捕捉する段階;
前記ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに結合していない非ビオチン化DNA鎖を除去することが可能な薬剤(例えばNaOH)を添加する段階;
PCRライブラリーの増幅及び配列決定における使用に適合性の非ビオチン化鎖合成プライマーを使用して相補鎖を合成する段階;
前記PCRライブラリーを増幅し、プールし、精製する段階;及び
前記PCRライブラリーを配列決定する段階
を備える、方法。
【請求項2】
前記DNAが、dsDNA:合成ゲノムDNA、目的の細胞型由来のgDNA、又はプラスミドDNAのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNAが、細菌、哺乳動物、植物、酵母又は真菌細胞から単離される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
二本鎖切断誘導物質が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子(TALEN)、及びCRISPR-Cas RNAガイドヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
二本鎖切断誘導物質が、Cas9エンドヌクレアーゼ及びシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
二本鎖切断誘導物質が、操作Cas9バリアント及びシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アダプターが、次世代シーケンシングプライマー配列又はランダム化DNAバーコードを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非ビオチン化鎖合成プライマーが、次世代シーケンシングプライマー配列、ランダム化DNAバーコード又は固有分子識別子(UMI)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
DNAにおける二本鎖切断を検出するための方法であって、前記DNAの切断がプログラム可能なヌクレアーゼによって誘導され、前記方法が、
切断DNA末端にアダプターをライゲーションする段階、ここで、アダプターは、前記ライゲーションされたDNAを精製するためのビオチンを含む;
ライゲーションされていない前記アダプターを、エキソヌクレアーゼIを用いて除去するのに十分な条件下で、前記ライゲーションされたDNAをインキュベートする段階;
DNAを約100~500bpの平均長に断片化するのに必要な条件下で、DNase Iを用いてDNAを断片化する段階;
ライゲーションされたDNAをストレプトアビジン磁気ビーズに捕捉する段階;
非ビオチン化DNA鎖を除去することが可能な薬剤(例えばNaOH)を添加する段階;
約10~50ntの平均長のポリC尾部を生成するのに必要な条件下で、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)を用いて3'DNA末端にポリC尾部を付加する段階;
PCRライブラリーの増幅及び配列決定における使用に適合性の非ビオチン化鎖合成プライマーを使用して相補鎖を合成する段階;
前記PCRライブラリーを増幅し、プールし、精製する段階;及び
前記PCRライブラリーを配列決定する段階
を備える、方法。
【請求項10】
前記DNAが、dsDNA:合成ゲノムDNA、目的の細胞型由来のgDNA、又はプラスミドDNAのうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記DNAが、細菌、哺乳動物、植物、酵母又は真菌細胞から単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
二本鎖切断誘導物質が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子(TALEN)、及びCRISPR-Cas RNAガイドヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二本鎖切断誘導物質が、Cas9エンドヌクレアーゼ及びシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
二本鎖切断誘導物質が、操作Cas9バリアント及びシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アダプターが、次世代シーケンシングプライマー配列又はランダム化DNAバーコードを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記非ビオチン化鎖合成プライマーが、次世代シーケンシングプライマー配列、ランダム化DNAバーコード又は固有分子識別子(UMI)を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、CRISPR-Cas9等のゲノム編集ヌクレアーゼによって生じた二本鎖切断を検出するためのin vitro法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム編集技術の首尾よい開発は、プログラム可能なヌクレアーゼ(CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ等)を使用して誘導された二本鎖切断(double strand break:DSB)を検出及び定量する基礎研究のためだけでなく、特にCas9に基づく技術をゲノム編集及び操作にとってより安全なものにするための臨床応用のためにも重要である。これらのヌクレアーゼは、標的部位に類似しているDNA部位を切断し、結果として、細胞死又は癌細胞への形質転換を引き起こす染色体再配列又は変異をもたらす傾向がある。DSB検出のための最新技術の方法は、適切なレベルの感度を欠いており、実験的に複雑で、長期に及び、費用がかかる。ゲノム編集技術をより安全なものにするために、選択されたヌクレアーゼの特異性及び適切性を評価するための、DSB検出のための高感度かつより使いやすいin vitro法を利用することが極めて重要である。
【0003】
本明細書において、本発明者らは、簡素で低予算の実験室及び企業により好適な、急速で費用効率が高く、かつ使いやすい方法(配列決定によるCRISPRヌクレアーゼオフターゲット検出(CRISPR nuclease off-target detection by sequencing)、又はCROFT-seq)を提示する。先行文献(Young et al.(2019)Scientific reports)にはCLEAVE-Seq法が記載されているが、類似した段階:dsDNA末端の脱リン酸化、Cas9リボ核タンパク質(ribonucleoprotein:RNP)複合体によるDNA切断、ビオチン化アダプターライゲーション、ストレプトアビジンビーズを用いるアフィニティ精製、非ビオチン化DNA鎖の合成、DNAライブラリー増幅がCROFT-seqに含まれる。しかしながら、CROFT-seqでは、固有のビオチン化アダプター設計及び方法段階条件及び組成のために、DSB検出は、CLEAVE-seq及び他のin vitro法と比較してより容易、より迅速かつより安価である。本発明の詳細な利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかとなるだろう。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において提供される教示は、CRISPR-Cas9等のゲノム編集ヌクレアーゼを使用して生じたDSBの検出のための、高感度で、急速でかつ費用効率が高い、バイアスのないin vitro法(代替的な段階のバリエーションを含む)の開発及び改善に基づいている。
【0005】
dsDNAにおける、プログラム可能なヌクレアーゼ(例えばCRISPR-Cas9)によって誘導された、二本鎖切断の検出のための方法であって;切断DNA末端にアダプターをライゲーションし(ここで、アダプターは、前記ライゲーションされたDNAを精製するためのビオチンを含む)、ライゲーションされていない前記アダプターを、エキソヌクレアーゼIを用いて除去するのに十分な条件下で、試料をインキュベートし;任意選択で、DNAを約100~500bpの平均長に断片化するのに必要な条件下で、DNase Iを用いてDNAを断片化し;ライゲーションされたDNAをストレプトアビジン磁気ビーズに捕捉し;非ビオチン化DNA鎖を除去することが可能な薬剤(例えばNaOH)を添加し;任意選択で、約10~50ntの平均長のポリC尾部を生成するのに必要な条件下で、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)を用いて3'DNA末端にポリC尾部を付加し;PCRライブラリー増幅及び配列決定における使用に適合性の非ビオチン化鎖合成プライマーを使用して相補鎖を合成し;前記ライブラリーを増幅し、プールし、精製し;それらのライブラリーを配列決定する、方法が本明細書において提供される。
【0006】
いくつかの実施形態において、方法は、dsDNA:合成ゲノムDNA、目的の細胞型由来のgDNA、プラスミドDNAを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、DSB誘導物質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子(TALEN)、CRISPR-Cas RNAガイドヌクレアーゼからなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態において、DSB誘導物質は、Cas9エンドヌクレアーゼ及びシングルガイドRNA(single-guide RNA:sgRNA)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0009】
いくつかの実施形態において、DSB誘導物質は、操作Cas9バリアント及びシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記アダプターは、次世代シーケンシングプライマー配列、ランダム化DNAバーコードを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記非ビオチン化鎖合成プライマーは、次世代シーケンシングプライマー配列、ランダム化DNAバーコード又は固有分子識別子(unique molecular identifier:UMI)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記DNAは、哺乳動物、細菌、植物、酵母又は真菌細胞(例えば、gDNA)から単離される。
【0013】
いくつかの実施形態において、DNAは合成である。
【0014】
本明細書で提供される方法は、ゲノム編集ヌクレアーゼによって誘導された二本鎖切断を検出する能力を改善する。また、これは、他のin vitro及びin vivoオフターゲット検出法に対する利点を有する。例えば、本方法はin vitroであり、in vivo法と異なり、オフターゲット検出は、クロマチン状態又は操作ヌクレアーゼ及びその成分の細胞へのトランスフェクション及び発現に依存しない。更に、本方法は、磁気ビーズを用いる連続ライブラリー精製段階を必要としない。
【0015】
本明細書で特定の用語及び参考文献と共に記載される方法は、本発明の関連分野の当業者によって理解されるだろう。当技術分野で公知の方法及び材料の詳細に関する形態の様々な変更は、ここにおいて、方法の範囲から逸脱することなく行うことができる。例えば、特定のCas9ヌクレアーゼを使用する、以下に記載される例が存在してもよく、種々の生物由来の他のCas9ヌクレアーゼが適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】CROFT-Seqバージョン1を使用したFANCFオフターゲット検出の選択された結果を示す。
【
図4】CROFT-Seqバージョン2を使用したFANCFオフターゲット検出の選択された結果を示す。
【
図5】CROFT-Seqバージョン1を使用したVEGFA1オフターゲット検出の選択された結果を示す。
【
図6】CROFT-Seqバージョン2を使用したVEGFA1オフターゲット検出の選択された結果を示す。
【
図7】CROFT-Seqバージョン1を使用したXRCC5オフターゲット検出の選択された結果を示す。
【
図8】CROFT-Seqバージョン2を使用したXRCC5オフターゲット検出の選択された結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
CRISPR-Cas9等のプログラム可能なゲノム編集ヌクレアーゼは、個別化医療における大きな可能性を有し、科学界に広範囲にわたる関心をもたらした。これらの酵素は、正確な遺伝子変異をゲノムDNAに急速かつ的確に与える。これは、誘導されたDNA切断を真核細胞が相同組換えによって的確に修復できるために可能である。しかしながら、種々のオフターゲット部位において意図されない切断が起こる場合があり、低頻度切断でさえ、不要な、又は有害でさえある遺伝子変異を引き起こし得る。今日まで、様々な細胞培養に基づく方法及び無細胞方法が、ゲノム編集ヌクレアーゼによって生じたオフターゲット切断部位を検出するために開発されている。細胞培養に基づく方法は、例えば、遺伝子編集前後の全ゲノムを配列決定するWGS(whole genome sequencing、全ゲノム配列決定)、二本鎖オリゴヌクレオチド(double strand oligonucleotide:dsODN)のDSBへの組み込みに依存するGUIDE-Seq(genome-wide unbiased identification of DSBs enabled by sequencing、配列決定によって可能となった、ゲノムワイドな、バイアスのないDSB同定)、ビオチン化アダプターによってin situでDSBを捕捉するBLESS(breaks labeling,enrichment on streptavidin and next generation sequencing、ストレプトアビジン及び次世代シーケンシングによる切断標識、濃縮)、IDLVのDSBへの組み込みに依存するIDLV(integrase defective lentiviral vector、インテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター)、及びDNA修復タンパク質MRE11を利用して、in vivoにおいてDSBを同定するDISCOVER-Seq(discovery of in situ Cas off-targets and verification by sequencing、in situのCasオフターゲットの発見及び配列決定による確認)である(Guo et al.(2023)Front Bioeng Biotechnol)。これらの方法は、細胞におけるオフターゲット事象を直接的に示すことができるが、高い偽陰性率、dsODNの低い組み込み、低感度を含むいくつかの制限があり、試料調製時にのみDSBを検出し、クロマチン状況に依存し、かつ高額である。
【0018】
他方、無細胞方法は、精製されたゲノムDNAを使用し、細胞トランスフェクション効率、クロマチン構造、DNA修復機構を含む、細胞に基づく制限に依存せず、ヌクレアーゼ、ゲノムDNA濃度及び切断時間を変更することが容易であるため、細胞に基づく方法に対する利点を有する。今日までに、多くの記載されている無細胞ゲノムワイドオフターゲット同定アッセイ、例えば、全ての遊離DNA末端への配列決定用アダプターライゲーションに依存するDigenome-Seq(digested genome sequencing、消化ゲノム配列決定)、修復されたDNA末端を、ビオチン化アダプターを用いて捕捉するSITE-Seq(selective enrichment and identification of tagged genomic DNA ends by sequencing、配列決定によるタグ付きゲノムDNA末端の選択的濃縮及び同定)、ゲノムDNAの環状化に依存するCIRCLE-Seq(circularization for in vitro reporting of cleavage effects by sequencing、配列決定による切断作用のin vitro報告のための環状化)、PCR増幅段階を伴わないDNAへの配列決定用アダプターライゲーションに依存するRGEN-Seq(PCR-free next-generation sequencing method、PCRフリー次世代シーケンシング法)、及びヌクレアーゼを用いたDNA切断及び平滑末端アダプターライゲーション前の遊離DNA末端の脱リン酸化に依存するCLEAVE-Seqが存在する(Guo et al.(2023)Front Bioeng Biotechnol)。これらの方法は、細胞に基づく方法よりも遥かに多くの潜在的なオフターゲット部位を検出することができるが、いくつかの制限が存在する。例えば、Digenome-Seqは、高いバックグラウンドのランダム剪断DNAが配列決定されるため、試料1つ当たり大量のリード(4億超のリード)を必要とする。SITE-Seq、CIRCLE-Seq、RGEN-Seq及びCLEAVE-Seqは、感度が不十分で、低い検証率を示す。にもかかわらず、これらの方法は、労働集約的であり、時間がかかり、かつ高額である。また、これらの方法は、通例、DNA剪断及び磁気ビーズを用いる多くのDNA精製段階を必要とする。
【0019】
CRISPR/Cas9ヌクレアーゼによってヒトゲノムDNAに誘導されたオフターゲット部位の高感度検出を実現する、2つのバージョンを有する新規無細胞方法であるCROFT-Seq(配列決定によるCRISPRヌクレアーゼオフターゲット検出)が本明細書に記載される(
図2)。CLEAVE-Seq法(Young et al.(2019)Sci Rep 9,6729、2019年5月10日に出願された米国特許出願公開第20210147909A1号)と同様に、CROFT-Seqは、ヌクレアーゼ酵素を用いる消化前の、後にアダプターライゲーションを妨げるランダム切断DNA末端の脱リン酸化に基づく。これは、リン酸を含有する遊離DNA末端を著しく減少させるホスファターゼを用いてゲノムDNAを処理することによって達成される。次いで、DNAは、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ等のゲノム編集ヌクレアーゼを用いて処理され、大半の場合、5'リン酸基を有する平滑末端の末端を有する切断産物が生じる(Gasiunas et al.(2012)Proc Natl Acad Sci USA 109(39):E2579-86、Jinek et al.(2012)Science 337(6096):816-21)。次いで、切断産物は、非リン酸化アダプター(一方が平滑末端であり、他方が5'ビオチンを有する粘着末端である)に選択的にライゲーションされ得る。その後、ライゲーションされていないアダプターは、ライゲーションされていないアダプターのDNA鎖が分離し、一本鎖DNAエキソヌクレアーゼを用いて除去される最適な条件で除去される。これは、他のin vitroオフターゲット検出法において一般的な磁気ビーズを使用するアダプター除去のあらゆる必要性を排除する。これはまた、残留しているライゲーションされていないアダプターから生じ得る高いバックグラウンドノイズを除去する。あるいは、CROFT-Seqバージョン2では、アダプター除去中に、ライゲーションされたDNAは、必要とされる条件下において、デオキシリボヌクレアーゼを用いて100~500bpの断片にされ得、これは更なる段階のために必要である。次の段階では、ビオチン化アダプターを有するライゲーションされたDNA切断産物は、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを使用して精製される。磁気ビーズへのDNA固定化は、非常に最小限のDNA喪失で、更なる適用のための任意の望ましいバッファー組成への変更を容易に可能にする。CIRCLE-Seq又はSITE-Seq等の他のin vitro法は、バッファー組成を変更するために連続ビーズ精製段階を使用するが、この場合、DNAは著しく喪失し、また、これは時間がかかる(Young et al.(2019)Sci Rep 9,6729、Cameron et al.(2017)Nat Methods 14,600-606)。次の段階では、非ビオチン化DNA鎖は、DNA鎖を分離するために必要な条件下で(すなわち、NaOHを用いて)除去される。これは、不要かつ更なる段階において干渉し得るDNAの除去を可能にする。あるいは、CROFT-Seqバージョン2では、相補鎖除去後、10~50nt長のポリC尾部が末端デオキシヌクレオチド転移酵素によってssDNAの3'末端に付加される。次いで、CROFT-Seqの両方のバージョン由来の固定化ssDNAは、T4 DNAポリメラーゼによる非ビオチン化鎖合成のために使用される。加えて、CROFT-Seqバージョン1では、非ビオチン化鎖合成プライマーは、PCR重複の正確なバイオインフォマティクス的同定を可能にする固有分子識別子(UMI)として使用され得る12Nヌクレオチド配列(ここで、NはA、G、C又はTである)を含有する。次いで、結果として得られたDNAは、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズから放出され、ハイスループット配列決定のためにPCRによって増幅される。DNAにおける二本鎖切断を検出するための方法であって、前記DNAの切断がプログラム可能なヌクレアーゼによって誘導され、前記方法が、
切断DNA末端にアダプターをライゲーションする段階、ここで、アダプターは、前記ライゲーションされたDNAを精製するためのビオチンを含む;
ライゲーションされていない前記アダプターを、エキソヌクレアーゼIを用いて除去するのに十分な条件下で、前記ライゲーションされたDNAをインキュベートする段階;
ライゲーションされたDNAをストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに捕捉する段階;
前記ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに結合していない非ビオチン化DNA鎖を除去することが可能な薬剤(例えばNaOH)を添加する段階;
PCRライブラリー増幅及び配列決定における使用に適合性の非ビオチン化鎖合成プライマーを使用して相補鎖を合成する段階;
前記PCRライブラリーを増幅し、プールし、精製する段階;及び
前記PCRライブラリーを配列決定する段階
を備える、方法。
【0020】
SpCas9を使用したCROFT-Seqの検証結果は、CROFT-Seqによって同定された上位5%のオフターゲット部位(リード数が、リストの最上位のオフターゲット部位のリード数の5%閾値を超えるオフターゲットを含む)の20%超がin vivoにおいても編集されたことを示した(
図3~8)。しかしながら、検証されたオフターゲット部位は、in vitro CROFT-Seqを用いて同定されたオフターゲット部位のリード数と常に相関するわけではなかった。種々の遺伝子位置は、クロマチンアクセシビリティ、DNA修復、又は細胞における種々の濃度のCas9及びsgRNA等の様々な因子による影響を受けるため、この現象は、他のin vitro CIRCLE-Seq又はSITE-Seqオフターゲット法においても観察される。しかしながら、特異的DSBヌクレアーゼ又はsgRNAの検証率は、将来のゲノム編集に対するそれらの適切性を示し得る。
【0021】
CROFT-Seq法は、CROFT-Seq段階のそれぞれに対して試験及び最適化されている、公知の組成を有する個々の酵素、試薬及びバッファーを使用する。これは、専売かつ開示されていない組成を有する市販のキットと比較して、試料1つ当たりの価格及び方法全体を実行するための時間を著しく減少させる。また、方法は、CIRCLE-Seq(Young et al.(2019)Sci Rep 9,6729)又はSITE-Seq(Cameron et al.(2017)Nat Methods 14,600-606)のような磁気ビーズを用いるDNAライブラリー精製段階を必要とせず、それを自動化に非常に好適なものにする。治療の観点では、CROFT-Seqは、およそ10倍多い検出されたオフターゲット部位のリードを生成するため、CIRCLE-Seq又はSITE-Seq等の他の高感度のin vitroオフターゲット検出法よりも優れている。更に、CROFT-Seqは、わずか10ngのヒトゲノムDNAを使用して実行することができ、これにより、CROFT-Seqは、DNA単離物が非常に低い収量をもたらす場合に様々な細胞及び組織においてオフターゲット部位を検出するための効果的な手段となる。低費用、時間効率がよいこと、高感度及び快適な自動化の可能性は、CROFT-Seqを、ゲノム編集ヌクレアーゼのオフターゲット部位を同定する強力かつ魅力的な手段にする。
【0022】
「ゲノム編集ヌクレアーゼ」という用語は、本明細書で使用する場合、生物のゲノムにおける標的配列中に二本鎖切断を生じる任意の組成物を指す。ゲノム編集ヌクレアーゼは、これらに限定されないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Kim et al.(1996),Proc Natl Acad Sci USA 93(3):1156-60)、メガヌクレアーゼ(米国特許出願第2332号及びBB1990号)、TALEN(Christian et al.(2010)Genetics 186(2):757-61)、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ(Hsu et al.(2014)Cell 157,1262-1278)等のエンドヌクレアーゼを含むタンパク質であり得る。
【0023】
配列番号1は、FANCF遺伝子における標的化部位であるSpCas9 sgRNA RNAの配列である。
5'-GGAAUCCCUUCUGCAGCACC+Synthego EZスキャフォールド-3'
【0024】
配列番号2は、VEGFA1遺伝子における標的化部位であるSpCas9 sgRNA RNAの配列である。
5'-GGGUGGGGGGAGUUUGCUCC+Synthego EZスキャフォールド-3'
【0025】
配列番号3は、XRCC5遺伝子における標的化部位であるSpCas9 sgRNA RNAの配列である。
5'-GGUGGACAAGCGGCAGAUAG+Synthego EZスキャフォールド-3'
【0026】
配列番号4は、アダプターのビオチン化上鎖DNA配列の配列である。
5'-ビオチン-ACACGACGCTCTTCCGATCT-3'
【0027】
配列番号5は、アダプターの下鎖DNAの配列である。
5'-AGATCGGAAGAGG-3'
【0028】
配列番号6は、3'末端に12N(NはA、G、C又はTのいずれかである)ヌクレオチドを含有する、非ビオチン化鎖合成のためのNNNオリゴヌクレオチドの配列である。
5'-CTTGGCACCCGAGAATTCCANNNNNNNNNNNN-3'
【0029】
配列番号7は、3'末端に12Gヌクレオチド及び1H(HはA、C又はTのいずれかである)ヌクレオチドを含有する、非ビオチン化鎖合成のためのGGGオリゴヌクレオチドの配列である。
5'-CTTGGCACCCGAGAATTCCAGGGGGGGGGGGGH-3'
【0030】
配列番号8は、qPCRのためのフォワードDNA鎖オリゴヌクレオチドの配列である。NはA、C又はTのいずれかである。
5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3'
【0031】
配列番号9は、qPCRのためのリバースDNA鎖オリゴヌクレオチドの配列である。
5'-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATGTGACTGGAGTTCCTTGGCACCCGAGAATTCCA-3'
【0032】
配列番号10は、8N(NはA、G、C又はTのいずれかである)ヌクレオチドを含有するフォワードDNA鎖インデックスオリゴヌクレオチドの配列である。
5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACNNNNNNNNACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3'
【0033】
配列番号11は、8N(NはA、G、C又はTのいずれかである)ヌクレオチドを含有するリバースDNA鎖インデックスオリゴヌクレオチドの配列である。
5'-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATNNNNNNNNGTGACTGGAGTTCCTTGGCACCCGAGAATTCCA-3'
(本発明の実施形態)
【0034】
例示の目的でのみ提供され、本発明の範囲を限定することを全く意図していない以下の例に本発明を更に記載する。
【0035】
以下の例では、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9をDSB剤として利用した。
【0036】
(細胞培養及びトランスフェクション)
野生型HEK293T細胞(ATCC)を、10%FBS(Sigma)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、高グルコース、ピルビン酸ナトリウム及びGlutaMAX(Thermo Fisher Scientific)を含有するDMEM培地において、37℃及び5%CO2で培養した。全ての細胞を80%未満の集密度に維持した。細胞を、トランスフェクションの1日前に、12ウェルプレートに、1ウェル当たり、500μLの培養培地中およそ250,000個播種した。全てのトランスフェクションは、3.6μL/1.4μg/180μL(TurboFectトランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)/Cas9のみ又はCas9及びsgRNAをコードするプラスミド/DMEM培地の容量)で実行した。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの3日後に回収した。ゲノムDNAを、GeneJETゲノムDNA精製キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて精製し、Qubit4.0蛍光光度計(Thermo Fisher Scientific)によって定量した。
【0037】
(CROFT-Seqライブラリー調製(概略))
FANCF、VEGFA1及びXRCC5 sgRNAを用いるか又はsgRNAを用いないCROFT-Seq(バージョン1及び2)実験を、HEK293T細胞由来の精製したゲノムDNA又は市販のヒトゲノムDNA(roche)に対して実行した。ゲノムDNAを、感熱性アルカリホスファターゼ(Thermo Fisher Scientific)を用いて処理した。in vitro切断反応を、100nMのSpCas9、100nMの市販のsgRNA及び1μgのヒトゲノムDNAを含有する40μlの反応容量中で実行した。消化産物を、ビオチン化アダプターにライゲーションし、エキソヌクレアーゼI(Thermo Fisher Scientific)及び加えてDNase I(Thermo Fisher Scientific)(CROFT-Seqバージョン2の場合のみ)を用いて処理した。ライゲーションされたDNA産物を、ストレプトアビジンコーティングMyOne C1磁気ビーズ(Thermo Fisher Scientific)に固定化した。相補的なDNA鎖を、NaOHを用いて除去し、加えてポリC尾部を、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(Thermo Fisher Scientific)を用いてDNAの3'末端に付加した(CROFT-Seqバージョン2の場合のみ)。非ビオチン化DNA鎖を、DNAオリゴヌクレオチド及びT4 DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific)を使用して合成した。次いで、DNAを磁気ビーズから切り離し、Phusion Plus DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific)を使用してPCRによって増幅した。完成したライブラリーを、バイオアナライザー2100(Agilent)によって定量し、100bpのペアエンドリードを用いてIllumina NextSeq550又は2000プラットフォーム上で配列決定した。CROFT-Seqライブラリー構築の詳細なプロトコルは、実施例6で提供される。
【0038】
(rhAmpSeqディープシーケンシング)
HEK293T細胞に、上に記載したようなCas9及びsgRNAを発現するプラスミドをトランスフェクトした。各sgRNAに関するオフターゲットリストをCROFT-Seqによって同定し、最上位のオフターゲット部位リード深度から計算した上位5%のオフターゲットを検証のために選択した(
図3~8)。合計で212のオフターゲット部位(オンターゲット部位を含む)を、3つの標的部位(FANCF、VEGFA1及びXRCC5)に対して選択した。PCR rhAmpSeqプライマーを全212の部位に対して首尾よく設計し、Integrated DNA technologies(IDT)に注文した。製造業者のプロトコルに従って、rhAmpSeq PCRライブラリーを、rhAmpSeq CRISPRライブラリーキット(IDT)を使用して、25ngの精製されたHEK293TゲノムDNA重複から増幅した。結果として得られたPCR産物を、異なるsgRNAを使用したトランスフェクションに対応する異なるライブラリーにプールし、Ampure XP磁気ビーズ(Agencourt)を用いて精製した。結果として得られたrhAmpSeqライブラリーを、Agilent Bioanalyzer2100(Agilent)を用いて定量及び解析し、NextSeq 2000配列決定装置において300000超の平均リード深度で配列決定した。配列決定データは、rhAmpSeq CRISPR解析ツール(https://eu.idtdna.com/pages/tools/rhampseq-crispr-analysis-tool)を用いて解析する。
【0039】
(CROFT-Seqデータ解析)
解析は、初期データとして使用した両端リードを用いて開始した。残留アダプター配列及び低品質リードの除去を、デフォルトパラメータ及び方法において特定された適切なアダプターペアを利用するAdapter Removalを使用して実行した。不純物を除去したリードを、BWA-MEMを使用してゲノムに対してアラインメントし、続いてSamtoolsを用いて選別及び索引付けを行った。アラインメントファイル作成及び操作を、デフォルトオプションを使用して実行した。各切断部位検索実験に対して、3つの標的及び3つの対照試料が存在した。初めに、6つの試料のそれぞれを、「find-cleavage-patterns.jl」スクリプト(https://github.com/agrybauskas/croft-seq-analysis)を使用して独立的に解析した。このスクリプトは、4bp長のリーディングフレームを利用して、アラインメントしたR1リードにおけるリード開始位置を検索する。リーディングフレーム範囲内のリード開始点の数が20よりも多いか又はそれに等しい場合、その領域を更なる解析に含める。含められた領域のそれぞれから、フォワード及びリバースリード方向の存在、又は存在しない場合は、最も多いリード開始点を有する位置に基づいて、切断位置を選択する。その後、Needleman-Wunschアルゴリズム(パッケージ「BioJulia/BioAlignments.jl」において得られる)を使用して、選択した切断位置から標的配列を検索し、配列に最良の潜在的なアラインメント位置をBEDフォーマットファイルに記録する。6つの試料全てを個々に解析した後、「combine-cleavage-patterns.jl」スクリプトを使用して結果を組み合わせた。標的及び対照試料は別々に組み合わせた。この組み合わせプロセスの目的は、同定された切断部位がそのそれぞれの試料群において一貫して見出されるかどうかを判定することであった。標的及び対照試料の両方について、3つの試料全てに正確な切断位置が存在する場合、切断部位が見出されると考えられる。組み合わせた後、対照試料に見出された切断部位を標的試料から除外した。組み合わせ段階と同じスクリプトを使用して演繹プロセスを実行した。潜在的なオン/オフターゲット領域の最終的なリストは、BEDフォーマットファイルで出力する。
【0040】
(実施例1.二本鎖切断の同定及び特性評価のための方法(CROFT-Seq))
この実施例において、本発明者らは、ヒトゲノムDNAにおけるCRISPR/Cas9ヌクレアーゼの切断部位を見出すための詳細なin vitro CROFT-Seq(バージョン1及び2)アッセイを記載する。別段の指示がない場合、この実施例の各段階はCROFT-Seqバージョン1及び2の両方で実行される。単離及び精製したHEK293T(細胞培養及びトランスフェクションを参照されたい)又は市販のヒトゲノムDNA(Roche)等のDNA試料を、sgRNA RNP複合体を伴うか又は伴わないCas9エンドヌクレアーゼを用いて切断した。他の実施形態において、異なる操作されたCas9エンドヌクレアーゼを使用してゲノムDNAを切断してもよい。
【0041】
(1.FastAPを用いるゲノムDNAの処理)
0.01~1μgのヒトゲノムDNAを、20μlの1×FastAPバッファー(10mM Tris-HCl(37℃でpH8.0)、5mM MgCl2、100mM KCl、0.02%(v/v)Triton X-100及び0.1mg/ml BSA)中2単位の感熱性アルカリホスファターゼ(Thermo Fisher Scientific)を用いて37℃で10分間処理し、続いて80℃で10分間酵素を不活性化した。ホスファターゼの添加は、アダプターがライゲーションし得るランダム切断DNA末端におけるリン酸の存在を低減させる。
【0042】
(2.RNP複合体を用いるFastAP処理gDNAの消化)
Cas9及び種々のシングルガイドRNA(sgRNA)(配列番号1~3)を1:2のモル比で、1×SBバッファー(10mM Tris-HCl(37℃でpH7.5)、100mM NaCl及び1mM DTT)中で混合することによって、触媒的に活性なCas9-sgRNA複合体をin vitroで構築し、37℃で30分間プレインキュベートした。最終RNP濃度は20~2000nMで変動した。一態様において、Cas9及びsgRNAの相対濃度は、Cas9が200nM及びsgRNAが400nMであった。
【0043】
それぞれのRNP複合体(20μl)を、脱リン酸化ヒトgDNAの反応20μlと混合した。反応を37℃で60分間インキュベートし、続いて80℃で20分間酵素を不活性化した。
【0044】
(3.アダプターライゲーション)
Cas9を用いたDNA切断後、大半の場合、平滑末端の末端を有する産物が生じる(Gasiunas et al.(2012)Proc Natl Acad Sci USA 109(39):E2579-86、Jinek et al.(2012)Science 337(6096):816-21)。この実施例では、非リン酸化アダプター(一方が平滑末端であり、他方が5'ビオチンを有する粘着末端である)を使用して、切断産物の平滑末端化末端に選択的にライゲーションする。
【0045】
20μMのビオチン化アダプター上鎖(配列番号4)を20μMのアダプター下鎖(配列番号5)と混合して、アダプターを0.2×バッファーG(Thermo Fisher Scientific)中で構築した。反応混合物を95℃で5分間インキュベートすることによってアダプターオリゴをアニーリングし、25℃までゆっくりと(-0.1℃/5秒)冷却した。
【0046】
アダプターライゲーション反応を以下の通りに調製した:40μlの切断されたgDNAを40μlの2×ライゲーション反応ミックス(50mM Tris-HCl(37℃でpH8.0)、20mM MgCl2、1mM ATP、2mM DTT、10%(w/v)PEG4000、200nMアダプター、及び20U T4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher Scientific))と混合した。ライゲーション反応を22℃で15分間インキュベートし、続いて80℃で10分間酵素を不活性化した。
【0047】
(4.アダプター除去)
CROFT-Seqバージョン1の場合、アダプターを、1μlのエキソヌクレアーゼI(20U)をライゲーション反応ミックスに添加することによって除去し、37℃で15分間インキュベートした。反応を、30mM EDTAを添加することによって停止した。
【0048】
CROFT-Seqバージョン2の場合、ライゲーションされていないアダプターを、1μlのエキソヌクレアーゼI(20U)をライゲーション反応ミックスに添加することによって除去し、37℃で20分間インキュベートした。次いで、0.001U DNase Iを添加し、37℃で更に10分間インキュベートした。反応を、30mM EDTAを添加することによって停止した。
【0049】
(5.ストレプトアビジンビーズを用いるアフィニティ精製)
この段階では、ビオチン化アダプターを有するライゲーションされたDNA切断産物を、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを使用して精製した。
【0050】
結合及びビーズ洗浄のための、Tween(登録商標)20を含有する及び含有しない2×結合及び洗浄(B&W)バッファーを以下の通りに調製した:10mM Tris-HCl(37℃でpH8.0)、2M NaCl、1mM EDTA、及び必要な場合、0.1%(v/v)Tween(登録商標)20。
【0051】
ストレプトアビジンコーティングMyOne C1磁気ビーズ(Thermo Fisher Scientific)を4℃の保管庫から取り出し、穏やかな反転によって混合した。1容量(反応当たり5μl)のMyOne C1 Dynabeads(登録商標)を、1容量(5μl)のTween(登録商標)20含有2×B&Wバッファーと混合した。洗浄したビーズ混合物を磁気スタンドに置き、およそ1分間ペレット化した。上清を除去した。洗浄したビーズを85μlのTween(登録商標)20含有2×B&Wバッファーに再懸濁し、そこに85μlのアダプターライゲーションDNA(アダプター除去段階後)を添加した。
【0052】
ビーズ/DNA混合物を室温(約22℃)で15分間インキュベートした。試料を適合性磁気スタンドに置いた。ビーズを1分間ペレット化し、上清を除去した。ビーズを、50μlのTween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを添加することによって1回目の洗浄に供し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。混合試料を磁気スタンドに戻し、1分間ペレット化し、上清を除去した。2回目のビーズ洗浄を、Tween(登録商標)20を含有しない1×B&Wバッファーを用いて、1回目の洗浄と同様に実行した。3回目のビーズ洗浄を、miliQ H2Oを用いて、1回目の洗浄と同様に実行した。固定化された、ライゲーションされたDNA断片を有する洗浄したビーズを、相補鎖除去段階において更に処理した。
【0053】
(6.相補鎖除去)
0.125M NaOH溶液を以下の通りに調製した:必要な量のNaOH(Roth)をmiliQ水に溶解した。
【0054】
CROFT-Seqバージョン1の場合、固定化された、ライゲーションされたDNA断片を有する洗浄したビーズを、40μlの0.125M NaOH溶液に再懸濁し、混合し、室温で10分間インキュベートした。試料を適合性磁気スタンドに置いた。ビーズを1分間ペレット化し、上清を除去した。ビーズを、40μlの0.125M NaOH溶液を添加することによって1回目の洗浄に供し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。混合試料を磁気スタンドに戻し、1分間ペレット化し、上清を除去した。2回目のビーズ洗浄を、Tween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを用いて、1回目の洗浄と同様に実行した。3回目のビーズ洗浄を、1×T4 DNAポリメラーゼバッファーを用いて、1回目の洗浄と同様に実行した。洗浄したビーズを、磁気スタンドから取り出し、30μlの1×T4 DNAポリメラーゼバッファーに再懸濁し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。
【0055】
CROFT-Seqバージョン2の場合、相補鎖除去、1回目及び2回目のビーズ洗浄を、CROFT-Seqバージョン1について記載したように実行した。3回目のビーズ洗浄を、1×FastAPバッファーを添加することによって実行し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。混合試料を磁気スタンドに戻し、1分間ペレット化し、上清を除去した。洗浄したビーズを、磁気スタンドから取り出し、30μlの1×FastAPバッファーに再懸濁した。ここで、追加の段階6.1(ポリC尾部付加)を実行した。30μlの洗浄したビーズ溶液を、1μlの10×FastAPバッファー、2μlの10mM dCTP及び6.5μlのmiliQ H2Oと混合した。反応を、0.5μlのTdT(10U)(Thermo Fisher Scientific)を用いて開始し、37℃で15分間インキュベートした。試料を適合性磁気スタンドに置いた。ビーズを1分間ペレット化し、上清を除去した。ビーズを、50μlのTween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを添加することによって1回目の洗浄に供し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。混合試料を磁気スタンドに戻し、1分間ペレット化し、上清を除去した。2回目のビーズ洗浄を、Tween(登録商標)20を含有しない1×B&Wバッファーを用いて、1回目の洗浄と同様に実行した。3回目のビーズ洗浄を、1×T4 DNAポリメラーゼバッファーを用いて、1回目の洗浄と同様に実行した。洗浄したビーズを、磁気スタンドから取り出し、30μlの1×T4 DNAポリメラーゼバッファーに再懸濁し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。
【0056】
(7.非ビオチン化鎖の合成)
50%(w/v)PEG8000溶液を以下の通りに調製した:必要な量のPEG8000(Roth)をmiliQ H2Oに溶解した。
【0057】
段階6からの再懸濁したビーズ(30μl)を、4μlの5×T4 DNAポリメラーゼバッファー、8μlの50%(w/v)PEG8000、1.25μlの10μM NNNオリゴヌクレオチド(配列番号6)(CROFT-Seqバージョン1の場合)又は1.25μlの10μM GGGオリゴヌクレオチド(配列番号7)(CROFT-Seqバージョン2の場合)、及び2.3μlのmiliQ H2Oと混合した。
【0058】
ボルテックスすることによって反応ミックスを混合し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いる遠心分離によってビーズを回収した。反応をサーモサイクラー(Eppendorf)において98℃で1分間インキュベートし、25℃までゆっくりと(-0.5℃/秒)冷却した。反応を25℃で30分間更にインキュベートした。次いで、3.5μlの10mM dNTPミックス(Thermo Fisher Scientific)を各試料に添加し、ピペッティングによって混合した。反応を、1μlのT4 DNAポリメラーゼ(5U)(Thermo Fisher Scientific)を各反応に添加することによって開始し、ピペッティングによって混合し、25℃で15分間インキュベートした。
【0059】
(8.DNA放出)
直前の段階からの試料を適合性磁気スタンドに置いた。ビーズを1分間ペレット化し、上清を除去した。ビーズを、50μlのTween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを添加することによって1回目の洗浄に供し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。混合試料を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化し、上清を除去した。2回目のビーズ洗浄を、Tween(登録商標)20を含有しない1×B&Wバッファーを用いて同様に実行した。3回目のビーズ洗浄を、miliQ H2Oを用いて同様に実行した。洗浄したビーズを、磁気スタンドから取り出し、40μlのmiliQ H2Oに再懸濁した。反応をサーモサイクラー(Eppendorf)において70℃で5分間インキュベートして、ビーズからDNAを放出した。次いで、反応を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化した。DNAを含む上清を新しいチューブに移し、ビーズを廃棄した。
【0060】
(実施例2.qPCR)
この実施例では、DNA放出段階由来のDNA断片を増幅して、ライブラリー増幅及びバーコード化のためのサイクル数を決定した。サイクル数は、以下の通りに決定する:最初に、蛍光がプラトーに達した最大の蛍光値を決定した。次いで、最大の蛍光の50%に達するサイクル数を計算した。ライブラリー増幅及びインデックスPCRについて、対応するサイクル数を使用する。
【0061】
15μlの定量ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative polymerase chain reaction:qPCR)を以下の通りに構築した:8.5μlの上清(DNA放出段階由来)、3μlの5×Phusion Plusバッファー(Thermo Fisher Scientific)、0.75μlの10μM qPCRフォワードプライマー(配列番号8)、0.75μlの10μM qPCRリバースプライマー(配列番号9)、0.3μlの10mM dNTPミックス(Thermo Fisher Scientific)、0.15μlの100×SYBR Green I溶液(Thermo Fisher Scientific)、0.15μlのPhusion Plus DNAポリメラーゼ(0.3U)(Thermo Fisher Scientific)、及び1.4μlのmiliQ H2O。qPCR反応混合物を、以下のプログラムを有するMIC qPCRサイクラー(Biomolecular Systems)に入れた:
1.98℃で30秒間
2.98℃で10秒間
3.60℃で10秒間
4.72℃で30秒間
段階2~4を合計で40回繰り返した
5.72℃で2分間
【0062】
(実施例3.ライブラリー増幅及びバーコード化)
3μMのインデックスプライマーミックスを以下の通りに調製した:1.5μlの100μMインデックス用フォワードプライマー(配列番号10)、1.5μlの100μMインデックス用リバースプライマー(配列番号11)、47μlのmiliQ H2O。種々のインデックス配列を有するプライマーミックスを、96ウェルプレートに等分し、ライブラリーバーコード化のために使用した。
【0063】
30μlのインデックスPCR反応を以下の通りに構築した:17μlの上清(DNA放出段階由来)、6μlの5×Phusion Plusバッファー(Thermo Fisher Scientific)、5μlの3μMインデックス用プライマーミックス(配列番号10~11)、0.6μlの10mM dNTPミックス(Thermo Fisher Scientific)、0.3μlのPhusion Plus DNAポリメラーゼ(0.6U)(Thermo Fisher Scientific)、及び1.1μlのmiliQ H2O。インデックスPCR反応混合物を、以下のプログラムを有するサーマルサイクラー(Eppendorf)に入れた:
1.98℃で30秒間
2.98℃で10秒間
3.60℃で10秒間
4.72℃で30秒間
段階2~4をN回繰り返した(サイクル数は実施例5で決定する)
5.72℃で2分間
6.4℃で保持
インデックスPCR段階由来の試料を、合計で180~420μlの別々のプールにプールした。
【0064】
(実施例4.ライブラリープール不純物除去)
この実施例では、磁気ビーズ付き精製モジュール(Lexogen)を使用して、プールした試料の不純物を室温で除去した。
【0065】
磁気ビーズ付き精製モジュールを4℃の保管庫から取り出し、室温で30分間平衡化させてから使用した。モジュールの精製ビーズ(Purification bead:PB)を再懸濁した後、それらを反応に添加した。1倍容量の精製ビーズ(PB)を、1倍容量のプールした試料に添加し、ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、混合し、遠心分離によって回収した。反応混合物を5分間インキュベートした。次いで、反応を磁気スタンドに置き、1~2分間、又は上清が透明になるまでビーズを集めた。上清を除去した。ビーズを、1倍容量の溶出バッファー(elution buffer:EB)に再懸濁し、磁気スタンドから取り出し、2分間インキュベートした。1倍容量の精製溶液(purification solution:PS)を再懸濁したビーズに添加して、ライブラリーを再沈殿させた。ミニ遠心分離/ボルテックス装置(Biosan)を用いて、徹底的に混合し、遠心分離によって回収した。反応を5分間インキュベートした。次いで、反応を磁気スタンドに戻し、1~2分間、又は上清が透明になるまでビーズを集めた。上清を除去し、ビーズを、新たに調製した500μlの80%エタノールを用いて30秒間2回洗浄した。チューブを磁気スタンドに静置し、5~10分間、微量のエタノールを蒸発させた。反応を磁気スタンドから取り出し、ビーズを50又は100μlの容量のmiliQ H2Oに再懸濁し、2分間インキュベートした。反応を磁気スタンドに戻し、1~2分間、又は上清が透明になるまでビーズを集めた。上清を新しいチューブに移し、任意選択で、ライブラリー定量及び配列決定前に-20℃で保管した。
【0066】
(実施例5.ライブラリー定量及び品質管理)
ライブラリー定量を、Qubit4.0蛍光光度計(Invitrogen)及びQubit dsDNA HSアッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を用いて実行した。ライブラリー品質管理のために、1μlのライブラリー(実施例4の)をAgilent Bioanalyzer High Sensitivity DNAチップに搭載し、Agilent Bioanalyzer2100を用いて解析した。
【0067】
(実施例6.CROFT-Seq法のプロトコル)
この実施例では、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼによって生じた二本鎖切断の同定及び特性評価に対するin vitroアッセイのための2つのバージョンのCROFT-Seqプロトコル(v1及びv2)を記載する。
【0068】
(CROFT-Seqプロトコルv1(プロトコルv2の追加の段階も示す))
(アダプターのアニーリング)
アダプター(20μM)を、その上鎖(配列番号4)及び下鎖(配列番号5)(1:1の比)を0.2×バッファーG中でアニーリングすることによって調製した。
アニーリングプログラム:95℃で5分間、25℃までゆっくりと(-0.1℃/5秒)冷却、4℃で保持。
【0069】
(RNP複合体の構築)
Cas9及びsgRNA(Cas9:sgRNAは1:2のモル比)を1×SBバッファー中で混合することによって、2×RNP複合体をin vitroで構築した。
インキュベーションプログラム:37℃で30分間、4℃で保持。
【0070】
(1.FastAPを用いるゲノムDNAの処理)
ヒトゲノムDNAを以下の通りに脱リン酸化した。より多くの実験を計画した場合、マスターミックスを調製し、そこから15μlを個々のPCRチューブに分注した。
【表1】
インキュベーションプログラム:37℃で10分間、次いで80℃で10分間、4℃で保持。
【0071】
(2.RNP複合体を用いるFastAP処理gDNAの消化)
20μlのRNP複合体(2×)を20μlのFastAP処理gDNAと混合した。
【表2】
インキュベーションプログラム:37℃で60分間、次いで80℃で20分間、4℃で保持。
【0072】
(3.アダプターライゲーション)
切断したgDNA断片をビオチン化アダプターに以下の通りにライゲーションした。より多くの実験を計画した場合、マスターミックスを調製し、そこから36μlを個々のPCRチューブに分注した。
【表3】
インキュベーションプログラム:22℃で15分間、次いで80℃で10分間、4℃で保持。
【0073】
(4.アダプター除去)
ライゲーションされていないアダプターを以下の通りに除去した。
【表4】
インキュベーションプログラム:37℃で15分間、次いで5.2μlの0.5M EDTAを(合計約30mMのEDTAまで)添加。
プロトコルv2の場合:
【表5】
インキュベーションプログラム:37℃で20分間。次いで、以下に示す通りに進む。
【表6】
インキュベーションプログラム:37℃で10分間、次いで5.2μlの0.5M EDTAを(合計約30mMのEDTAまで)添加。
【0074】
(5.ストレプトアビジンビーズを用いるアフィニティ精製)
DNA断片を、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ(Dynabeads MyOneストレプトアビジンC1)を用いて固定化及び精製した。
1.Dynabeadsを用いるアフィニティ精製手順のための、Tween(登録商標)20を含有する及び含有しない2×結合及び洗浄(B&W)バッファーを調製する:0.1%Tween(登録商標)20を含有する及び含有しない、10mM Tris-HCl(25℃でpH8.0)、2M NaCl、1mM EDTA。
2.Dynabeadsを4℃の保管庫から取り出し、チューブを穏やかに反転させることよって混合する。
3.1容量(反応当たり5μl)のDynabeadsを、1容量(5μl)のTween(登録商標)20含有2×B&Wバッファーと混合する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。
4.Dynabead混合物を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化する。上清を除去する。
5.Dynabeadsを85μlのTween(登録商標)20含有2×B&Wバッファーに再懸濁する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。
6.85μlの調製したDynabeadsを85μlのエキソヌクレアーゼI処理DNA(段階4の)と混合する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。室温(約22℃)で15分間インキュベートする。
7.インキュベーション後、試料を適合性磁気スタンドに置く。ビーズを1分間ペレット化する。上清を除去する。
8.ビーズを、50μlのTween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを用いて洗浄する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。試料を磁気スタンドに戻し、1分間ペレット化する。上清を除去する。
9.Tween(登録商標)20を含有しない1×B&Wを使用し、次いでmiliQ H2Oを使用して段階8を繰り返す。
10.相補鎖除去(段階6)に進む。
【0075】
(6.相補鎖除去)
非ビオチン化DNA鎖(相補鎖)を、NaOHを使用して除去した。
1.洗浄したビーズ(段階5の)を40μlの0.125M NaOH溶液に再懸濁する。試料を磁気スタンドから取り出し、ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。室温(約22℃)で10分間インキュベートする。
2.ビーズ混合物を磁気スタンドに戻し、1分間ペレット化する。ビーズを、40μlの0.125M NaOH溶液を用いて洗浄する。試料を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化する。上清を除去する。
3.Tween(登録商標)20含有1×B&Wを使用し、次いで1×T4 DNAポリメラーゼバッファーを使用して段階2を繰り返す。
4.ビーズを30μlの1×T4 DNAポリメラーゼバッファーに再懸濁する。試料を磁気スタンドから取り出し、ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。
【0076】
プロトコルv2の場合:洗浄及び再懸濁(段階3及び4)のために、1×T4 DNAポリメラーゼバッファーを使用する代わりに1×FastAPバッファーを使用する。段階6.1に進む。
【0077】
(プロトコルv2の場合の追加の段階)
(6.1ポリC付加)
ポリC尾部をDNAの3'末端に以下の通りに付加した。より多くの実験を計画した場合、マスターミックスを調製し、そこから9.5μlを個々のPCRチューブに分注した。
【表7】
インキュベーションプログラム:37℃で15分間。次いで、以下に示すビーズ洗浄及び再懸濁に進む。
1.ビーズ混合物を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化する。ビーズを、40μlのTween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを用いて洗浄する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。試料を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化する。上清を除去する。
2.Tween(登録商標)20を含有しない1×B&Wを使用し、次いで1×T4 DNAポリメラーゼバッファーを使用して段階1を繰り返す。
3.ビーズを30μlの1×T4 DNAポリメラーゼバッファーに再懸濁する。試料を磁気スタンドから取り出し、ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。
【0078】
(7.非ビオチン化鎖合成)
非ビオチン化DNA鎖を以下の通りに合成した。より多くの実験を計画した場合、マスターミックスを調製し、そこから15.55μlを個々のPCRチューブに分注した。
【表8】
インキュベーションプログラム:98℃で1分間、次いで25℃までゆっくりと(-0.5℃/秒)冷却する。反応を25℃で30分間更にインキュベートした。次いで、以下に示す通りに進む。
【表9】
インキュベーションプログラム:25℃で15分間。段階8に進む。
【0079】
(8.DNA放出)
DNAを磁気ビーズから以下の通りに放出した。
1.ビーズ混合物を磁気スタンドに置き、1分間ペレット化する。ビーズを、50μlのTween(登録商標)20含有1×B&Wバッファーを用いて洗浄する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。試料を磁気スタンドに入れ、1分間ペレット化する。上清を除去する。
2.Tween(登録商標)20を含有しない1×B&Wを使用し、次いでmiliQ H2Oを使用して段階1を繰り返す。
3.ビーズを40μlのmiliQ H2Oに再懸濁する。試料を磁気スタンドから取り出し、ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。70℃で5分間インキュベートする。
4.インキュベーション後、試料を磁気スタンドに戻す。ビーズを1分間ペレット化する。上清を新しいチューブに回収する。
【0080】
(9.qPCR)
ライブラリー増幅及びバーコード化のために必要とされるサイクル数を以下の通りに決定した。より多くの実験を計画した場合、マスターミックスを調製し、そこから6.5μlを個々のqPCRチューブに分注した。
【表10】
qPCRプログラム:98℃で30秒間、(98℃で10秒間、60℃で10秒間、72℃で30秒間)を40サイクル、72℃で2分間。
【0081】
(10.ライブラリー増幅及びバーコード化)
反応を以下の通りに増幅及びバーコード化した。より多くの実験を計画した場合、マスターミックスを調製し、そこから8μlを個々のPCRチューブに分注した。
【表11】
PCRプログラム:98℃で30秒間、(98℃で10秒間、60℃で10秒間、72℃で30秒間)をNサイクル(段階9で決定)、72℃で2分間、4℃で保持。PCR後、試料を、合計で180~420μlの別々のプールにプールした。
【0082】
(11.ライブラリープール不純物除去)
磁気ビーズ付き精製モジュール(Lexogen)を使用して、室温(約22℃)でDNAプールを精製した。
1.磁気ビーズ付き精製モジュールを4℃の保管庫から取り出し、室温で30分間平衡化させる。
2.モジュールの精製ビーズ(PB)を、チューブを穏やかに反転させることよって再懸濁する。
3.1倍容量の精製ビーズ(PB)を、1倍容量のプールした試料と混合する。ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。5分間インキュベートする。
4.インキュベーション後、試料を適合性磁気スタンドに置く。ビーズを1~2分間ペレット化する。上清を除去する。
5.ビーズを1倍容量の溶出バッファー(EB)に再懸濁する。試料を磁気スタンドから取り出し、ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。2分間インキュベートする。
6.1倍容量の精製溶液(PS)を添加し、ボルテックス及び遠心沈殿によって混合する。5分間インキュベートする。
7.試料を磁気スタンドに戻す。ビーズを1~2分間集める。上清を除去する。
8.ビーズを、新たに調製した500μlの80%エタノールを用いて30秒間2回洗浄する。上清を除去する。
9.チューブを磁気スタンドに静置し、5~10分間、微量のエタノールを蒸発させる。
10.チューブを磁気スタンドから取り出し、ビーズを50又は100μlの容量のmiliQ H2Oに再懸濁する。2分間インキュベートする。
11.再懸濁したビーズを磁気スタンドに戻し、ビーズを1~2分間集める。上清を新しいチューブに回収する。
【0083】
(12.ライブラリー定量及び品質管理)
ライブラリーを、Qubit dsDNA HSアッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を製造業者の指示に従って使用して定量する。加えて、ライブラリー品質管理を以下の通りに実行する。1μlのライブラリー(段階11の)をAgilent Bioanalyzer High Sensitivity DNAチップに搭載し、Agilent Bioanalyzer2100を用いて、製造業者の指示に従って解析した。
【0084】
(実施例7.ヒト細胞においてCROFT-Seqによって同定されたオフターゲット部位のin vivo検証)
ヒトゲノム編集に最も的確なCas9ガイドRNA RNP複合体を選択するためには、in vitroオフターゲット同定法によって同定されたオフターゲット部位が、細胞においてこれらのCas9/gRNA複合体によって実際に編集されるかどうかを知ることが重要である。したがって、この実施例では、本発明者らは、新規in vitro CROFT-Seq法によって同定されたオフターゲット部位のin vivo検証を記載する。in vitro CIRCLE-Seq及びin vivo GUIDE-Seq法の両方によって同定された大半のオフターゲット部位が多くのリード数を有することはこれまでに示された(Young et al.(2019)Sci Rep 9,6729、2019年5月10日に出願された米国特許出願公開第20210147909A1号)。これは、in vivoで編集されるオフターゲット部位が、多くの場合、in vitroにおいても効率的に切断されることを示唆する。その点で、本発明者らは、リード数に従って上位5%のリスト(リード数が、リストの最上位のオフターゲット部位のリード数の5%閾値を超えるオフターゲットを含む)に含まれる、これらの同定されたオフターゲット部位を検証することを選択した(
図3~8)。これらのオフターゲット部位の大半は、CROFT-Seq v1及びv2法の両方に含まれる。
【0085】
CROFT-Seq v1及びv2によって同定された、選択したオフターゲット部位がヒト細胞において切断され得るかどうかを判定するために、本発明者らは、rhAmpSeq技術(https://www.idtdna.com/pages/products/crispr-genome-editing/rhampseq-crispr-analysis-system)を使用してディープ標的シーケンシングを実行した。rhAmpSeq法を使用して、本発明者らは、CROFT-Seq v1及びv2の両方によって見出された、FANCF、VEGFA1及びXRCC5 sgRNAに対する合計で207のオフターゲット部位を検証した(
図3~8)。そこでは、編集された細胞の百分率を、2つの陽性反応(SpCas9及びsgRNAを用いて処理した細胞)及び2つの陰性反応(SpCas9のみを用いて処理した細胞)の間の平均インデル頻度の差によって推定した。標的ディープシーケンシングは、同定された207のオフターゲット部位のうち47(22.7%)が細胞において0.1%超のインデル頻度で編集されていることを明らかにした。ディープ次世代シーケンシングのエラー率はおよそ0.1%であるため、0.1%未満のインデル頻度は検証が困難である。細胞におけるゲノム編集は、クロマチンアクセシビリティ、DNA修復及び他の細胞に関連する因子による影響を受けるため、他のin vitro CIRCLE-Seq又はSITE-Seqオフターゲット法においても観察されるように、ここで同定されたインデル頻度は、リード数と常に相関するわけではない。
【配列表】
【外国語明細書】