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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172625
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ビン振分方法及びビン振分装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20241205BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20241205BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B65G1/137 F
B65G1/04 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090466
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 吉成
(72)【発明者】
【氏名】島本 武史
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
【Fターム(参考)】
3F022EE04
3F022EE05
3F022EE09
3F022FF01
3F022JJ07
3F022LL07
3F022MM13
3F022MM15
3F022MM36
3F022MM43
3F022PP02
3F022PP03
3F022QQ17
3F522AA01
3F522BB01
3F522BB24
3F522BB27
3F522BB35
3F522BB36
3F522CC01
3F522CC06
3F522FF02
3F522FF27
3F522GG17
3F522GG23
3F522GG24
3F522GG25
3F522GG27
3F522GG33
3F522GG44
3F522HH40
3F522JJ02
3F522JJ04
3F522LL15
3F522LL31
3F522LL57
(57)【要約】
【課題】複数のピッキングロボットを用いて物品を保管ビンから出庫ビンへ移動させるピッキング作業を行う場合に、ピッキング作業の効率を向上できるビン振分方法を提供する。
【解決手段】ピッキングロボットによるピッキング作業の対象物を格納可能なビンを振り分けるビン振分方法であって、対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データを取得するステップと、対象物毎且つピッキングロボット毎のピッキング作業に関する評価指標を取得するステップと、ピッキング指示データと評価指標とに基づいて、複数のピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対してビンを振り分けるステップと、を含む。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピッキングロボットによるピッキング作業の対象物を格納可能なビンを振り分けるビン振分方法であって、
前記対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データを取得するステップと、
前記対象物毎且つ前記ピッキングロボット毎の前記ピッキング作業に関する評価指標を取得するステップと、
前記ピッキング指示データと前記評価指標とに基づいて、前記複数のピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対して前記ビンを振り分けるステップと、
を含むビン振分方法。
【請求項2】
前記評価指標は、
前記対象物毎且つ前記ピッキングロボット毎のピッキング作業の成功率を示す成功率情報と、
前記対象物毎且つ前記ピッキングロボット毎のピッキング作業に要する時間であるタクトタイムを示すタクト情報と、含む、
請求項1に記載のビン振分方法。
【請求項3】
前記ピッキングロボット毎に、前記ピッキングロボットの構成に関するロボット構成情報を取得するステップと、
前記対象物毎に、前記対象物に関する対象物情報を取得するステップと、を更に含み、
前記評価指標を取得するステップは、前記ロボット構成情報と前記対象物情報に基づいて、シミュレーションによって前記評価指標を算出するステップを含む、
請求項1又は2に記載のビン振分方法。
【請求項4】
前記ビンを振り分けるステップは、
前記成功率情報と前記タクト情報とに基づいて、前記ピッキング指示データで指示された前記対象物をピッキングする前記ピッキングロボットの優先順位を決定するステップと、
前記優先順位に基づいて、前記第1のピッキングロボットを決定するステップと、を含む、
請求項2に記載のビン振分方法。
【請求項5】
前記ピッキングロボット毎に、前記対象物をピッキングすべきタスク量に関するタスク量情報を取得するステップ、を更に含み、
前記ビンを振り分けるステップは、
前記ピッキングロボットの前記優先順位と前記タスク量情報とに基づいて、前記第1のピッキングロボットを決定するステップを含む、
請求項4に記載のビン振分方法。
【請求項6】
前記ビンを振り分けるステップは、
前記ピッキングロボット毎に、前記成功率情報に基づいて、前記対象物をピッキング可能であるか否かを判定するステップと、
前記対象物をピッキング可能なピッキングロボットが存在しない場合、前記対象物を作業者がピッキングするための作業領域に対してビンを振り分けるステップと、を含む、
請求項2に記載のビン振分方法。
【請求項7】
前記ビンを振り分けるステップは、
前記第1のピッキングロボットによる前記対象物のピッキングに所定回数失敗したか否かを判定し、
前記所定回数失敗したと判定された場合、前記対象物を作業者がピッキングするための作業領域に対してビンを振り分けるステップと、を含む、
請求項1又は2に記載のビン振分方法。
【請求項8】
前記第1のピッキングロボットの位置に前記ビンを搬送するよう搬送ロボットに指示するステップ、を更に含む、
請求項1又は2に記載のビン振分方法。
【請求項9】
前記ビンは、前記ピッキング作業の前の前記対象物が保管された保管ビンを含む、
請求項1に記載のビン振分方法。
【請求項10】
前記ビンは、前記ピッキング作業の後の前記対象物が格納される出庫ビンを含む、
請求項1に記載のビン振分方法。
【請求項11】
プロセッサを備え、ピッキングロボットによるピッキング作業の対象物を格納可能なビンを振り分けるビン振分装置であって、
前記プロセッサは、
前記対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データと、前記対象物毎且つ前記ピッキングロボット毎の前記ピッキング作業に関する評価指標と、を取得し、
前記ピッキング指示データと前記評価指標とに基づいて、複数の前記ピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対して前記ビンを振り分ける、
ビン振分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビン振分方法及びビン振分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピッキング手段にピッキング処理を割り当てる情報処理方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の情報処理方法は、外部装置から取得するオーダーリストに基づいて、自動搬送車が搬送する棚から物品をピッキングするピッキング作業のピッキング作業リストを生成し、過去のピッキング作業に関連する作業ログに基づいて、ピッキング手段毎にピッキング作業リストに含まれるピッキング作業を処理する処理能力を算出し、処理能力に基づいて、生成されたピッキング作業リストに含まれるピッキング作業をピッキング手段毎に割り付ける。ピッキング手段は、作業者又はロボットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-017393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数のピッキングロボットを用いて物品を保管ビンから出庫ビンへ移動させるピッキング作業を行う場合に、ピッキング作業の効率を向上できるビン振分方法及びビン振分装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ピッキングロボットによるピッキング作業の対象物を格納可能なビンを振り分けるビン振分方法であって、前記対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データを取得するステップと、対象物毎且つピッキングロボット毎の前記ピッキング作業に関する評価指標を取得するステップと、前記ピッキング指示データと前記評価指標とに基づいて、前記複数のピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対して前記ビンを振り分けるステップと、を含むビン振分方法である。
【0006】
本開示の一態様は、プロセッサを備え、ピッキングロボットによるピッキング作業の対象物を格納可能なビンを振り分けるビン振分装置であって、前記プロセッサは、前記対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データと、対象物毎且つピッキングロボット毎の前記ピッキング作業に関する評価指標と、を取得し、前記ピッキング指示データと前記評価指標とに基づいて、複数のピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対して前記ビンを振り分ける、ビン振分装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数のピッキングロボットを用いて物品を保管ビンから出庫ビンへ移動させるピッキング作業を行う場合に、ピッキング作業の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る倉庫管理システムの外観例を示す模式図
図2】倉庫内の環境の一例を示す図
図3】作業者が配置されたピッキングステーションの一例を示す図
図4】直交ロボットであるピッキングロボットが配置されたピッキングステーションの一例を示す図
図5】多関節ロボットであるピッキングロボットが配置されたピッキングステーションの一例を示す図
図6】ビンの構成例を示す図
図7】ビンとビンを搬送する搬送ロボットとの一例を示す図
図8】カメラの配置イメージを示す図
図9】上位管理装置の構成例を示すブロック図
図10】ロボットコントロールシステムの構成例を示すブロック図
図11】ピッキング指示データの一例を示す図
図12】ロボット構成情報の一例を示す図
図13】対象物情報の一例を示す図
図14】ピッキング成功率情報の一例を示す図
図15】タクトタイム情報の一例を示す図
図16】ピッキング結果データの一例を示す図
図17】保管ビン座標と出庫ビン座標との一例を示す図
図18】上位管理装置の動作例を示すフローチャート
図19】振分処理の詳細の一例を示すフローチャート
図20】ピッキング作業時のビンの移動例を示す図
図21】第2の実施形態の上位管理装置の構成例を示すブロック図
図22】第2の実施形態のロボットコントロールシステムの構成例を示すブロック図
図23】更新されたピッキング指示データI1Aを示す図
図24】保管ビンと出庫ビンとの配置関係に応じたXY方向のハンドの移動時間のイメージを示す図
図25】Z方向のハンドの移動速度のイメージを示す図
図26】重量に応じた対象物の移動のイメージを示す図
図27】上位管理装置の動作例を示すフローチャート
図28】出庫ビン及び保管ビンの内部を上方から見た図
図29】ビン配置領域に保管ビン及び出庫ビンを配置する配置パターンの一例を示す図
図30】ピッキング時のハンドと対象物の動きの流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
(第1の実施形態を得るに至った経緯)
特許文献1の情報処理方法では、ピッキング手段が棚から物品をピッキングしてトレイに投入するが、商品を保管する保管ビンからピッキングして商品を出庫する出庫ビンに格納することについては想定されていない。また、ピッキング手段としてピッキングロボットが想定されているが、ピッキングロボットが複数存在することは意図されていない。そのため、例えば、各ピッキングロボットが商品の特性毎にピッキングの得意及び不得意を有する場合に、複数のピッキングロボットのうちのどのピッキングロボットの付近に保管ビンを移動させるかについては考慮されていない。
【0011】
第1の実施形態では、複数のピッキングロボットを用いて物品を保管ビンから出庫ビンへ移動させるピッキング作業を行う場合に、ピッキング作業の効率を向上できるビン振分方法及びビン振分装置について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
<倉庫管理システムの構成>
図1は、第1の実施形態における倉庫管理システム5の構成例を示す図である。倉庫管理システム5は、倉庫管理装置10と、上位管理装置20と、ロボットコントロールシステム30と、ロボット装置40と、カメラ60と、を備える。ロボット装置40は、搬送ロボット40Cと、ピッキングロボット40Pと、を含む。
【0013】
倉庫管理装置10は、倉庫内の物流を円滑化するための装置であり、Warehouse Management System(WMS)とも呼ばれる。倉庫管理装置10は、在庫などの物品を管理する。倉庫管理装置10は、在庫管理機能及び入出庫管理機能を有する。倉庫管理装置10は、在庫管理機能では、現在保管している在庫の状態に関する情報を管理する。在庫の状態に関する情報は、例えば、物品の保管場所、入荷日、数量、消費期限、色、サイズ、等を含む。倉庫管理装置10は、入出庫管理機能では、物品の入出庫の記録を管理する。倉庫管理装置10は、入出庫スケジュールの管理や入出庫の実績の記録が可能である。また、倉庫管理装置10は、物品のピッキングリスト及び伝票等の作成など、入出庫に伴う作業を円滑化する機能も有する。
【0014】
上位管理装置20は、倉庫運用管理装置(Warehouse Execution System:WES)として動作し、倉庫管理と倉庫制御の機能を有する。上位管理装置20は、倉庫管理装置10とロボットコントロールシステム30との間の中間的存在である。また、上位管理装置20は、物品の在庫管理、入庫、又はピッキング等の現場の作業データをリアルタイムに把握可能である。つまり、上位管理装置20は、倉庫内における人、物品、又は設備等を総合的に制御するための装置である。
【0015】
上位管理装置20は、作業の管理機能と設備の制御機能とを有する。上位管理装置20は、作業の管理機能では、ロボット装置40又は作業者の作業状況を見える化し、リアルタイムでの進捗把握を実現する。また、作業者が所持する端末(例えばウェアラブル端末、音声端末)又は作業領域に設置された端末(例えばディスプレイ)に所定の指示を送信可能である。また、上位管理装置20は、設備の制御機能では、倉庫内の各種機器(例えばロボット装置40又はカメラ60)を制御可能である。
【0016】
なお、倉庫管理装置10と上位管理装置20とは、一体であり、一方が他方の機能を有してもよい。
【0017】
ロボットコントロールシステム30は、倉庫制御装置(Warehouse Control System:WCS)として動作する。ロボットコントロールシステム30は、倉庫内の各種機器(例えばロボット装置40又はカメラ60)をリアルタイムに制御することで、最適なスケジュールでの入出庫を可能にする。ロボットコントロールシステム30は、機器の動作をリアルタイムで監視し、機器に対して所定の指示情報を送信可能である。
【0018】
ロボット装置40は、倉庫内での各種作業の自動化に寄与する。ロボット装置40は、複数の搬送ロボット40Cと、複数のピッキングロボット40Pと、を含む。
【0019】
搬送ロボット40Cは、倉庫内で管理される各種の物品が格納されるビン70を搬送する。ビン70は、入庫された物品が保管される保管ビン71と、出庫される物品が格納される出庫ビン72と、を含む。なお、ビン70が無人搬送車(Automated Guided Vehicle:AGV)であり、ビン70自体が搬送ロボット40Cとして動作してもよく、つまりビン70が自走可能であってもよい。
【0020】
ピッキングロボット40Pは、ロボットコントロールシステム30からの指示に応じて、保管ビン71に保管された各種の物品をピッキングし、出庫ビン72に移動して格納する。ピッキングロボット40Pは、アームとハンドとを有する。アームは、ビン70の内部の所定の位置にアプローチ可能である。ビン70内の物品をピッキング可能である。ハンドは、アームの先端に付いている。ピッキングロボット40Pは、種類の異なる複数のピッキングロボット40PA,40PB,40PCを含んでよい。
【0021】
ピッキングロボット40PAは、直交吸着ロボットである。直交吸着ロボットは、例えば水平面に沿う直交する2方向(例えばX方向及びY方向)と水平面に垂直な1方向(Z方向)にアームを移動可能であり、物品をハンドに吸着してピッキングする。ピッキングロボット40PAは、ロボットコントロールシステム30により、カメラ60により撮像された撮像画像に基づいて、物品の面を認識可能である。ピッキングロボット40PAは、例えば、箱形状の物品のピッキングが得意である。ここでの得意とは、例えば、後述するピッキング成功率が高い、又は、タクトタイムが短いことである。
【0022】
ピッキングロボット40PBは、直交二指ロボットである。直交二指ロボットは、上述のX方向とY方向とZ方向とにロボットアームを移動可能であり、ハンドの二指を用いて物品をピッキングする。ピッキングロボット40PBは、ロボットコントロールシステム30により、カメラ60による撮像された画像に基づいて、物品の形状を認識可能である。ピッキングロボット40Pは、例えば、重量の重い物品のピッキングが得意である。
【0023】
ピッキングロボット40PCは、多関節ロボットである。多関節ロボットは、アームに複数の関節としての複数の回転機構を有し、回転機構が回転することで様々な方向にアプローチ可能である。ピッキングロボット40PCは、ハンドの二指を用いて物品をピッキングする。ピッキングロボット40PCは、ロボットコントロールシステム30により、カメラ60により撮像された画像に基づいて、物品の3次元形状を認識可能である。ピッキングロボット40PCは、例えば、形状が異形な物品のピッキングが得意である。
なお、それぞれのロボット装置40の得意なものはあくまで一例であり、ロボットの種類、サイズ、ハンドの形状等、様々な要素により、得意なものは異なる。
【0024】
よって、ピッキングロボット40Pの種類毎に、ピッキング可能な物品とピッキング不可能な物品とがある。それぞれの種類のピッキングロボット40Pは、他の種類のピッキングロボット40Pのピッキング可否に関する特性を補い合うことができる。例えば、ある物品1は、ピッキングロボット40PA、ピッキングロボット40PB及びピッキングロボット40PCによってピッキング可能である。ある物品2は、ピッキングロボット40PA及びピッキングロボット40PBによってピッキング可能である。ある物品3は、ピッキングロボット40PB及びピッキングロボット40PCによってピッキング可能である。ある物品4は、ピッキングロボット40PC及びピッキングロボット40PAによってピッキング可能である。
【0025】
図1において、倉庫管理装置10は、ピッキングリストを基にピッキング指示データを生成して、上位管理装置20に送信する。上位管理装置20は、ロボット構成データベース(ロボット構成DB)20D1と対象物データベース(対象物DB)20D2とを備える。ロボット構成データベース20D1は、ロボットの構成に関するロボット構成情報を保持する。対象物データベース20D2は、対象物に関する対象物情報を保持する。上位管理装置20は、倉庫管理装置10からのピッキング指示データと、ピッキング作業に関する評価指標に基づいて、ビン70を、複数のピッキングロボット40Pのうちのいずれかのピッキングロボット40Pに振り分ける振分機能を有する。また、上位管理装置20は、ロボットコントロールシステム30を介してロボット装置40の動作を制御し、カメラ60の動作を制御する。
【0026】
<倉庫内の環境>
図2は、倉庫50内の環境の一例を示す図である。
【0027】
倉庫50は、例えば自動倉庫である。倉庫50内には、ビン70を収容する収容棚51が配置されている。収容棚51は、平面的又は空間的に仕切られており、多数のビン70を収容可能である。搬送ロボット40Cは、例えば上位管理装置20から搬送指示を受けて、収容棚51に収容されたビン70を、複数のピッキングステーションPSのうちのいずれかのピッキングステーションPSに搬送する。収容棚51には、保管ビン71が収容されており、保管ビン71が収容棚51から所定のタイミングで所定のピッキングステーションPSに搬送されてよい。出庫ビン72は、例えば収容棚51の周辺又は出庫ステーション等にあり、所定のタイミングで所定のピッキングステーションPSに搬送されてよい。保管ビン71と出庫ビン72とは、上位管理装置20の振分機能によって振り分けられたピッキングステーションに搬送される。
【0028】
各ピッキングステーションPSには、ピッキング作業を行うピッキングロボット40P又は作業者45が配置される。ピッキングステーションPS0は、人によるピッキング作業が行われるピッキングステーションである。ピッキングステーションPS1は、ピッキングロボット40Pによるピッキング作業が行われるピッキングステーションである。なお、ピッキングステーションPSは、3つ以上設けられてもよい。また、ピッキングロボット40P用のピッキングステーションPS1が複数設けられてもよい。
【0029】
ピッキングステーションPSでのピッキング作業が終了すると、搬送ロボット40Cは、例えば上位管理装置20から搬送指示を受けて、出庫ビン72を所定の位置(例えば出庫ステーション)に搬送する。出庫ステーションは、例えば、対象物の検査や配送用の箱詰めが行われる空間的な領域である。
【0030】
ピッキング作業とは、保管ビン71から対象物をピックアップ(ピッキング)し、対象物80を出庫ビン72へ移動させて、出庫ビン72へ配置(プレース)する作業であるつまり、ピッキング作業は、ピックアンドプレースの作業である。
【0031】
<ピッキングステーションの構成>
図3は、作業者45が配置されたピッキングステーションPS0の一例を示す図である。図4は、直交ロボットであるピッキングロボット40PA又はピッキングロボット40PBが配置されたピッキングステーションPS1(PS11)の一例を示す図である。図5は、多関節ロボットであるピッキングロボット40PCが配置されたピッキングステーションPS1(PS12)の一例である。
【0032】
図4及び図5に示すように、ピッキングロボット40Pが配置されるピッキングステーションPS1(PS11,PS12)では、ピッキングロボットの中心部の周囲にX方向及びY方向に2つずつ(つまり2×2の形状で)4つのビン70が配置される。4つのビン70は、少なくとも1つの保管ビン71と少なくとも1つの出庫ビン72とを含む。このように複数のビン70が2×2の形状で配置されることで、倉庫管理システム5は、1つのビン70を入れ替える際にも他のビン70を用いたピッキング作業を実行できるので、効率よくピッキング作業を実行でき、全体のタクトタイムを短縮できる。なお、2×2の形状に限らず、例えば2×3、3×2、3×3、などの形状で配置されることで、ピッキングロボット40Pの周囲により多くのビン70が同時に配置可能であってもよい。
【0033】
<ビンの構成>
図6は、ビン70の構成例を示す図である。ビン70は略直方体形状を呈しており、上方から物品を出し入れすることが可能である。よって、ピッキングロボット40P及び作業者45は、ビン70の上方からビン70の内部へ物品の出し入れを行う。また、図7は、ビン70とビン70を搬送する搬送ロボット40Cの一例を示す図である。図7において、搬送ロボット40Cが、ビン70を押す、又は引くような形で、ビン70を移動させているが、搬送ロボット40Cの上にビン70を載せて、ビン70を移動させてもよい。なお、搬送ロボット40Cは、保管ビン搬送用と出庫ビン搬送用とで異なる搬送ロボット40Cが使用されてもよいし、同じ搬送ロボット40Cが使用されてもよい。
【0034】
<カメラの配置>
図8は、カメラ60の配置イメージを示す図である。カメラ60は、ビン70の内部を撮像可能に配置される。カメラ60は、例えばビン70内の状態を認識するために用いられる。カメラ60は、例えばカメラ60Aのように、ピッキングステーションPSに設置され、ピッキングロボット40Pの内部又は近傍の外部に設置されてよい。また、カメラ60は、例えばカメラ60Bのように、ピッキングステーションPSの外部に配置されてもよい。カメラ60に撮像された撮像画像G1には、例えば保管ビン71や出庫ビン72に格納された物品が映り込んでおり、どのように物品が配置されているかが把握可能である。また、カメラ60Aに撮像された撮像画像G1には、保管ビン71や出庫ビン72の有無が映り込むので、撮像画像G1を基に保管ビン71や出庫ビン72が搬送先のピッキングステーションPSに到着したか否かが判別可能である。なお、カメラ60は、カメラ60Aのように1つだけ設けられてもよいし、カメラ60Bのように複数設けられてもよい。
【0035】
<上位管理装置の構成>
図9は、上位管理装置20の構成例を示すブロック図である。上位管理装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、入力デバイス23と、通信デバイス24と、入出力インタフェース25と、を備える。
【0036】
プロセッサ21は、例えばCentral Processing Unit(CPU)又はDigital Signal Processor(DSP)を用いて構成されてよい。プロセッサ21は、各種集積回路(例えばLarge Scale Integration(LSI)又はField Programmable Gate Array(FPGA)を用いて構成されてもよい。プロセッサ21は、メモリ22に保持されたプログラムを実行することで、各種機能を実現する。プロセッサ21は、上位管理装置20の各部を統括的に制御し、各種処理を行う。プロセッサ21による処理は、例えばクラウドでの処理であってもよい。
【0037】
プロセッサ21は、対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データを取得する。プロセッサ21は、対象物毎且つピッキングロボット毎のピッキング作業に関する評価指標を取得する。評価指標は、例えば、対象物毎且つピッキングロボット毎のピッキング作業の成功率を示すピッキング成功率と、対象物毎且つピッキングロボット毎のピッキング作業に要する時間であるタクトタイムと、を含む。プロセッサ21は、ピッキング指示データと評価指標とに基づいて、複数のピッキングロボット40Pのうちのいずれかのピッキングロボット40Pに対してビン70を振り分ける。このようにして、プロセッサ21は、ピッキングロボット40Pによるピッキング作業の対象物を格納可能なビン70を振り分ける。
【0038】
メモリ22は、一次記憶装置(例えばRandom Access Memory(以下、「RAM」と称する)又はRead Only Memory(以下、「ROM」と称する))を含む。メモリ22は、二次記憶装置(例えばHard Disk Drive(以下、「HDD」と称する)又はSolid State Drive(以下、「SSD」と称する))又は三次記憶装置(例えば光ディスク又はSDカード)等を含んでよい。また、メモリ22は、外部記憶媒体でもよく、上位管理装置20に対して着脱可能であってもよい。メモリ22は、各種データ、情報、プログラム又はログ等を記憶する。メモリ22は、ロボット構成データベース20D1と、対象物データベース20D2と、を有する。
【0039】
メモリ22は、例えば、ピッキング指示データ、ロボット構成情報、対象物情報、後述するピッキング成功率情報、後述するタクトタイム情報、及び後述するピッキング結果データを記憶する。メモリ22は、例えばロボット構成情報及び対象物情報を予め記憶している。メモリ22は、例えば算出結果として得られたピッキング成功率情報及びタクトタイム情報や外部装置から得られたピッキング結果データを記憶してもよい。
【0040】
入力デバイス23は、各種ボタン、キー、キーボード、タッチパネル、マイクロホン、又はその他の入力デバイスを含んでよい。入力デバイス23は、各種データ又は情報等の入力を受け付ける。入力デバイス23は、例えば上位管理装置20を管理する管理者により操作される。
【0041】
通信デバイス24は、有線又は無線による通信方式に従って、各種データ又は情報等を通信する。通信デバイス24は、ネットワークNTに通信可能に接続されてよい。通信デバイス24による通信方式は、(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、携帯電話網、又は電力線通信等の通信方式を含んでよい。通信デバイス24は、外部装置(例えば倉庫管理装置10、ロボットコントロールシステム30)と通信する。通信デバイス24は、例えば、ピッキング指示データを倉庫管理装置10から受信する。通信デバイス24は、例えばピッキング指示データをロボットコントロールシステム30へ送信し、ピッキング結果データをロボットコントロールシステム30から受信する。
【0042】
入出力インタフェース25は、プロセッサ21、メモリ22、入力デバイス23、及び通信デバイス24の間で情報やデータの入出力を行う。
【0043】
<ロボットコントロールシステムの構成>
図10は、ロボットコントロールシステム30の構成例を示すブロック図である。ロボットコントロールシステム30は、プロセッサ31と、メモリ32と、入力デバイス33と、通信デバイス34と、入出力インタフェース35と、を備える。
【0044】
プロセッサ31は、例えばCPU又はDSPを用いて構成されてよい。プロセッサ31は、各種集積回路(例えばLSI又はFPGA)を用いて構成されてもよい。プロセッサ31は、メモリ32に保持されたプログラムを実行することで、各種機能を実現する。プロセッサ31は、ロボットコントロールシステム30の各部を統括的に制御し、各種処理を行う。
【0045】
プロセッサ31は、通信デバイス34を介して、倉庫内の設備又は機器(例えば、搬送ロボット40C、ピッキングロボット40P、カメラ60)の動作を制御する。例えば、プロセッサ31は、搬送ロボット40Cの走行を制御することで、搬送ロボット40Cによるビン70の搬送を制御してよい。プロセッサ31は、ピッキングロボット40Pのアーム及びハンドの動作を制御することで、ピッキングロボット40Pによるピッキング作業を制御してよい。プロセッサ31は、上位管理装置20からのピッキング指示データに基づいて、ピッキング作業を制御してよい。
【0046】
プロセッサ31は、入力デバイス33又は通信デバイス34を介して、各種情報を取得する。例えば、プロセッサ31は、カメラ60により撮像された撮像画像、センサにより検出された検出情報、を取得する。プロセッサは、取得された撮像画像又は検出情報等に基づいて、各種事象を検出してよい。例えば、プロセッサ31は、各ピッキングステーションPSへのビン70の到着の有無、ピッキングステーションにおけるビン70が配置された座標、ビン70の内部に格納された物品に関する情報(例えば物品の有無、形状、重量、材質、サイズ)を認識してよい。プロセッサ31は、認識された情報に基づいて、ピッキング結果データのうちの少なくとも一部を生成してよい。
【0047】
メモリ32は、一次記憶装置(例えばRAM又はROMを含む。メモリ32は、二次記憶装置(例えばHDD又はSSD)又は三次記憶装置(例えば光ディスク又はSDカード)等を含んでよい。また、メモリ32は、外部記憶媒体でもよく、ロボットコントロールシステム30に対して着脱可能であってもよい。メモリ32は、各種データ、情報又はプログラム等を記憶する。
【0048】
入力デバイス33は、各種ボタン、キー、キーボード、タッチパネル、マイクロホン、センサ、又はその他の入力デバイスを含んでよい。入力デバイス33は、各種データ又は情報等の入力を受け付ける。入力デバイス33は、例えばロボットコントロールシステム30を管理する管理者又は作業者45により操作されてよい。センサは、例えば、ピッキングロボット40P毎に、ピッキングロボット40Pの内部又は周辺に設けられてもよい。センサは、例えば、搬送ロボット40C毎に、搬送ロボット40Cの内部又は周辺に設けられてもよい。
【0049】
通信デバイス34は、有線又は無線による通信方式に従って、各種データ又は情報等を通信する。通信デバイス34による通信方式は、LAN、WAN、携帯電話網、又は電力線通信等の通信方式を含んでよい。通信デバイス34は、外部装置(例えば上位管理装置20)と通信する。
【0050】
通信デバイス34は、有線又は無線により、カメラ60、ピッキングロボット40P、及び搬送ロボット40C等と通信可能に接続される。通信デバイス34は、カメラ60に撮像指示を送り、カメラ60からカメラ60により撮像された撮像画像を取得する。通信デバイス34は、各ピッキングロボット40Pに対して、ロボットアーム又はハンド等が動作するための動作指示を送る。通信デバイス34は、各ピッキングロボット40Pから、ロボットアーム又はハンド等の位置、角度、又は姿勢等の情報を取得する。通信デバイス34は、搬送ロボット40Cに対してビン70の搬送指示を送り、搬送ロボット40Cから現在位置等の情報を取得する。また、通信デバイス34は、ネットワークNTに接続され、例えば倉庫管理装置10にネットワークNTを介して通信可能に接続される。また、通信デバイス34は、ネットワークNTを介して、カメラ60、ピッキングロボット40P、及び搬送ロボット40Cと通信可能に接続されてもよい。
【0051】
入出力インタフェース35は、プロセッサ31、メモリ32、入力デバイス33、及び通信デバイス34の間で情報やデータの入出力を行う。
【0052】
なお、ロボットコントロールシステム30は、1つだけ設けられてもよいし、複数設けられてもよいし、ロボット装置40等の倉庫内の設備に対して1つずつ設けられてもよい。
【0053】
<上位管理装置が扱う情報の詳細>
次に、上位管理装置が扱う情報の詳細について説明する。
【0054】
図11は、ピッキング指示データI1の一例を示す図である。ピッキング指示データI1は、倉庫管理装置10から指示されるピッキングに関する指示情報である。ピッキング指示データI1は、タスク(作業)IDと、タスクタイプと、保管ビンIDと、出庫ビンIDと、時刻と、の情報を含む。タスクIDは、それぞれ重複しないID(識別情報)である。タスクタイプは、ロボット装置40又は作業者45が行う作業内容を示す情報である。この作業内容は、ピッキング対象の対象物ID、対象物毎のピッキング数、等の情報を含む。保管ビンIDは、収容棚51から運搬される保管ビン71のIDである。出庫ビンIDは、出庫ビンのIDである。時刻の情報は、ピッキング指示データが発行されたデータ発行時刻である。
【0055】
図12は、ロボット構成情報I2の一例を示す図である。ロボット構成情報I2は、ロボット構成データベース20D1に保持される。ロボット構成情報I2は、構造タイプIDと、ハンドタイプIDと、ロボット設置座標と、の情報を含む。構造タイプIDは、ピッキングロボット40Pの構造の種類(例えば直交ロボット、垂直多関節ロボット、その他の構造の種類)を示す情報である。ハンドタイプIDは、ハンドの種類(例えば吸着、二指、多指、その他のハンドの種類)を示す情報である。ロボット設置座標の情報は、ピッキングロボットが設置された位置を示す情報であり、X座標及びY座標によって示され、例えば(X,Y)=(12,3)のように示される。
【0056】
図13は、対象物情報I3の一例を示す図である。対象物情報I3は、対象物データベース20D2に保持される。対象物情報I3は、対象物80の形状と、対象物80の材質と、対象物80の重量と、対象物80のサイズと、の情報を保持する。対象物80の形状は、例えば、箱、円筒又は袋などの形状である。対象物80の材質は、例えば、紙、金属、プラスチックなどの材質である。
【0057】
図14は、ピッキング成功率情報I4の一例を示す図である。ピッキング成功率情報I4は、対象物カテゴリ毎、且つ、ロボットID毎のピッキング成功率の情報を含む。ピッキング成功率は、対象物のピッキング作業に成功した又は成功する確率を示す。ピッキング成功率は、対象物カテゴリ毎且つロボットID毎に予めメモリ22に記憶されていてもよい。ピッキング成功率は、プロセッサ21により対象物カテゴリ毎且つロボットID毎に算出され、メモリ22に算出結果として記憶されてもよい。ロボットIDは、ピッキングロボット40Pの種類を示す識別情報である。ピッキングロボットの種類は、例えばハンドタイプによって定まってもよいし、ハンドタイプと構造タイプとを組みあわせて定まってもよい。対象物カテゴリは、ピッキング作業に影響を及ぼし得る対象物80の特性(例えば形状、自室、重量、サイズ)に応じて区分されたものである。対象物カテゴリは、対象物毎に定まるので、ピッキング成功率は、対象物毎且つピッキングロボット40P毎に定まると言える。なお、対象物カテゴリは、特性によってカテゴリ分けせず、対象物1つ1つの種類毎にカテゴリ分けしてもよい。
【0058】
図14では、ロボットID(例えばID1,ID2,ID3)と対象物カテゴリ(例えばA,B,C,D)とに基づくピッキング成功率の情報が格納されている。ロボットID1は、例えば吸着タイプであることを示す。ロボットID2は、例えば2指タイプであることを示す。ロボットID3は、例えば3指タイプであることを示す。また、図14でのピッキング成功率情報I4は、ピッキング作業が実際に行われる場合の予測値として使用可能である。
【0059】
図15は、タクトタイム情報I5の一例を示す図である。タクトタイム情報I5は、対象物カテゴリ毎、且つ、ロボットID毎のタクトタイムの情報を含む。タクトタイムは、対象物カテゴリ毎且つロボットID毎に予めメモリ22に記憶されていてもよい。タクトタイムは、プロセッサ21により対象物カテゴリ毎且つロボットID毎に算出され、メモリ22に算出結果として記憶されてもよい。対象物カテゴリは、対象物毎に定まるので、タクトタイムは、対象物毎且つピッキングロボット40P毎に定まると言える。
【0060】
図15のタクトタイムは、ピッキング作業に要した時間である。ここでのタクトタイムは、保管ビン71から所定の対象物80をピックアップ(ピッキング)を開始した時点から、対象物80を移動させて出庫ビン72への配置(プレース)が完了するまでの時点までの時間であってよい。つまり、1つの対象物の保管ビン71から出庫ビン72への移し替えに要する時間であってよい。また、ここでのタクトタイムは、ピッキング指示データで指示された全ての対象物80について、保管ビン71から最初の対象物80をピックアップした時点から、出庫ビン72への最後の対象物の配置が完了するまでの時点までの時間であってもよい。つまり1つの出庫ビン72への配置の開始から完了までの時間であってもよい。また、ここでのタクトタイムは、ピッキング指示データを取得してから、ピッキング指示データで指定された出庫ビン72への最後の対象物の配置が完了するまでの時点までの時間であってもよい。この場合、タクトタイムにビン70の移動時間が含まれてもよい。
【0061】
図15では、ロボットID(例えば1,2,3)と対象物カテゴリ(例えばA,B,C,D)とに基づくタクトタイムの情報が格納されている。また、図15でのタクトタイム情報I5は、ピッキング作業が実際に行われる場合の予測値として使用可能である。
【0062】
対象物カテゴリとして、箱形状を有し且つ軽量であるというカテゴリがあり、薬が入った箱などの物品が属する。また、対象物カテゴリとして、箱形状を有し且つ重量があるというカテゴリがあり、例えば飲料水のペットボトルが入った段ボールなどの物品が属する。また、対象物カテゴリとして、袋形状を有し且つ軽量であるというカテゴリがあり、タオルなどの物品が属する。また、対象物カテゴリとして、袋形状を有し且つ重量があるというカテゴリがあり、砂糖が入った袋などの物品が属する。また、対象物カテゴリとして、異形な形状を有するというカテゴリがあり、凸凹形状を有する袋などの物品が属する。
【0063】
例えば、対象物が箱形状などの単純な形状を有する場合、撮像画像に基づく物体認識が簡単で認識速度が高速になり、ハンドによる把持も容易などの事情があり、タクトタイムが短くなる傾向がある。また、対象物が異形形状を有する場合、撮像画像に基づく物体認識が難しく認識速度が低速になり、アームによるアプローチやハンドによる把持も慎重に行う必要があるなどの事情があり、タクトタイムが長くなる傾向がある。
【0064】
図16は、ピッキング結果データI6の一例を示す図である。ピッキング結果データI6は、ピッキング作業を実施した結果として得られるデータである。ピッキング結果データI6は、タスクIDと、ステータス、保管ビンIDと、出庫ビンIDと、保管ビン座標と、出庫ビン座標と、ロボットIDと、ビン移動時間と、タクトタイムと、時刻と、の情報を含む。ここでの保管ビンIDは、収容棚51から運搬された保管ビン71のIDである。ここでの出庫ビンIDは、収容棚51から運搬された出庫ビン72のIDである。ここでの保管ビン座標は、保管ビン71が搬送先のピッキングステーションPSに到着して配置された位置の座標である。ここでの出庫ビン座標は、出庫ビン72が搬送先のピッキングステーションPSに到着して配置された位置の座標である。ここでのロボットIDは、対象物80のピッキング作業を実施したピッキングロボット40PのIDである。ここでのビン移動時間は、ピッキング指示データI1の受信時点からビン70の移動完了時点まで要した時間である。ここでのタクトタイムは、ピッキング作業(ピックアンドプレース)に要した実所要時間であり、つまりタクトタイムの実測値である。時刻の情報は、ピッキング結果データI6を発行した時刻を示す情報である。
【0065】
ピッキング結果データI6は、ロボットコントロールシステム30により導出(例えば検出又は算出)され、上位管理装置20に送信され、つまりピッキング指示データに対する結果の情報としてフィードバックされる。上位管理装置20は、ロボットコントロールシステム30からピッキング結果データI6を取得し、ピッキング結果データI6をメモリ22に記憶する。また、上位管理装置20は、プロセッサ21が、フィードバックされたピッキング結果データI6に基づいて、ピッキング成功率情報及びタクトタイム情報を更新してもよい。
【0066】
図17は、保管ビン座標と出庫ビン座標との一例を示す図である。図17では、例えば、ピッキングステーションPS12に配置されたピッキングロボット40PCの周辺に3個の保管ビン71と1個の出庫ビン72とが配置されている。3個の保管ビン71の保管ビン座標は、それぞれ、(X,Y)=(20,2)、(20,3)、(21,3)である。1個の出庫ビン72の出庫ビン座標は、(X,Y)=(21,2)である。
【0067】
<倉庫管理システムの動作>
図18は、上位管理装置20の動作例を示すフローチャートである。
【0068】
通信デバイス24は、倉庫管理装置10からピッキング指示データを受信する(S11)。プロセッサ21は、ピッキング指示データとロボット構成情報と対象物情報とに基づいて、対象物カテゴリ毎且つピッキングロボット毎のピッキング成功率及びタクトタイムを算出する(S12)。例えば、プロセッサ21は、シミュレーションによって、ピッキング指示データで指示された対象物をピッキング作業した場合のピッキング成功率とタクトタイムとを算出する。なお、ピッキング成功率及びタクトタイムは、毎回算出するのではなく、メモリ22に記録されたデータを利用してもよい。
【0069】
ロボットコントロールシステム30は、ピッキングロボット40P毎にピッキング作業に関する情報を管理している。プロセッサ31は、例えば、入力デバイス33としてセンサ等を用いて、ピッキングロボット40P毎のタスク量を認識する。タスク量は、例えば、ピッキングロボット40Pが実施すべきタスクの量(例えばピッキングが必要な対象物の個数)である。例えば、ロボットコントロールシステム30は、ピッキングロボット40P毎に、ピッキングロボット40Pに対して作業指示された対象物の個数と、ピッキングロボット40Pのセンサの検出情報やカメラ60による撮像画像を基に導出されたピッキング済みの対象物の個数と、を基に、残りの対象物の個数を認識可能である。プロセッサ31は、通信デバイス34を介して、ピッキングロボット40P毎のタスク量の情報を上位管理装置20に送信する。上位管理装置20のプロセッサ21は、通信デバイス24を介して、ピッキングロボット40P毎のタスク量の情報を取得する。なお、上位管理装置20のプロセッサ21自身が、ピッキングロボット40P毎のタスク量を認識してもよい。
【0070】
プロセッサ21は、ステップS12で得られたピッキング成功率及びタクトタイムと、タスク量と、に基づいて、ビン70の搬送先を複数のピッキングロボット40Pのうちのいずれかのピッキングロボット40Pに振り分ける振分処理を実行する(S13)。振分処理は、ピッキング指示データで指示された対象物80のピッキング作業を行うピッキングロボット40Pを決定する処理と同義である。振分処理の詳細については後述する。
【0071】
プロセッサ21は、ピッキング指示データで指示された対象物が保管された保管ビン71を振分先のピッキングロボット40Pに配置するよう、搬送ロボット40Cに指示する(S14)。この場合、プロセッサ21は、保管ビンIDを基に、保管ビン71の収納位置からピッキング作業の目的の配置位置までの搬送を指示してよい。ここでの保管ビン71の目的の配置位置は、振分先のピッキングロボット40Pが配置されたピッキングステーションPSであり、このピッキングロボット40Pの周辺である。
【0072】
プロセッサ21は、ピッキング指示データで指示された対象物80を出庫する出庫ビン72を振分先のピッキングロボット40Pに配置するよう、搬送ロボット40Cに指示する(S14)。この場合、プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、出庫ビンIDを基に、出庫ビン72の収納位置からピッキング作業の目的の配置位置までの搬送を指示する。ここでの出庫ビン72の目的の配置位置は、振分先のピッキングロボット40Pが配置されたピッキングステーションPSであり、このピッキングロボット40Pの周辺である。なお、ステップS13及びステップS14では、保管ビン71及び出庫ビン72は同じピッキングステーションPSに搬送される。
【0073】
プロセッサ21は、保管ビン71及び出庫ビン72の上記の所定の配置位置への搬送が完了したか否かを判定する(S15)。この場合、プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、搬送ロボット40Cの所定の配置位置へ到着したことを示す到着情報を受信することで、保管ビン71及び出庫ビン72の上記の所定の配置位置への搬送が完了したことを認識してもよい。また、プロセッサ21は、通信デバイス24を介してカメラ60から撮像画像を取得し、撮像画像に基づいて所定の配置位置への搬送が完了していることを認識してもよい。
【0074】
保管ビン71及び出庫ビン72の所定の配置位置への搬送が完了していない場合(ステップS15のNo)、プロセッサ21は、ステップS15の処理を再度実行する。つまり、プロセッサ21は、保管ビン71及び出庫ビン72の所定の配置位置への搬送が完了するまで待機する。
【0075】
保管ビン71及び出庫ビン72の所定の配置位置への搬送が完了した場合(ステップS15のYes)、プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、搬送先のピッキングステーションPSに配置されたピッキングロボット40Pに、保管ビン71から出庫ビン72への対象物80のピッキング作業を行うよう指示する(S16)。
【0076】
なお、ステップS14の時点で、プロセッサ21は、通信デバイス24及びロボットコントロールシステム30を介して、搬送先(振分先)のピッキングロボット40Pに、ピッキング作業の指示を送っていてもよい。
【0077】
この場合、ロボットコントロールシステム30は、プロセッサ31が、通信デバイス34を介して、搬送ロボット40Cからの搬送完了の通知情報、入力デバイス33としてのセンサによる搬送ロボット40Cの搬送完了を検出した検出情報(つまりピッキングロボット40Pの周辺で保管ビン71又は出庫ビン72を検出した情報)を取得してよい。プロセッサ31は、取得された情報を基に、ピッキングロボット40Pによる保管ビン71からの対象物のピッキングのタイミングを判別する。そして、通信デバイス34が、搬送先のピッキングロボット40Pに、ピッキングのタイミングを通知してよい。これにより、ピッキングロボット40Pは、早期にピッキング作業の指示が行われていた場合でも、適切なタイミングで対象物をピッキングできる。
【0078】
搬送先のピッキングロボット40Pは、上位管理装置20からのピッキング作業の指示に従った対象物のピッキング作業を行う。ピッキング作業の様子は、カメラ60により撮像される。ロボットコントロールシステム30のプロセッサ31は、カメラ60により撮像された画像に基づいて、ピッキングロボット40Pがピッキング作業に成功したか否か判定する(S17)。例えば、プロセッサ31は、カメラ60による撮像画像の画像認識の結果、保管ビン71の内部に保管されていた対象物が出庫ビン72の内部に移動して格納されていたことを認識した場合、ピッキング作業に成功したと判定する。通信デバイス34は、ピッキング作業の成否を示すピッキング成否情報を含むピッキング結果データを、上位管理装置20に送信する。そして、上位管理装置20のプロセッサ21は、通信デバイス24を介してピッキング結果データを受信することで、ピッキング作業に成功したか否かを判定してもよい。
【0079】
また、ロボットコントロールシステム30が、センサを用いて搬送先のピッキングロボット40Pによるピッキング作業が完了したことを検出し、この検出情報を上位管理装置20に送信してもよい。そして、上位管理装置20のプロセッサ21は、通信デバイス24を介してピッキング作業完了情報を受信することで、ピッキング作業に成功したと判定してもよい。
【0080】
対象物のピッキング作業に成功したと判定された場合(ステップS17のYes)、プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、保管ビン71及び出庫ビン72を指定の位置に搬送するよう搬送ロボット40Cに指示する(S18)。ここでの保管ビン71についての指定の位置は、例えば収容棚51におけるいずれかの位置である。ここでの出庫ビン72についての指定の位置は、例えば出庫ステーションにおけるいずれかの位置である。
【0081】
一方、対象物のピッキング作業に失敗したと判定された場合(ステップS17のNo)、プロセッサ21は、N回失敗するまでステップ16に進む。つまり、ステップS16において、プロセッサ21は、対象物のピッキング作業を最大N回繰り返す。対象物のピッキング作業にN回失敗した場合(ステップS17のN回目のNo)、プロセッサ21は、人の作業領域であるピッキングステーションPS0に、ピッキング作業に失敗した対象物が保管された保管ビン71と、この対象物が移し替えて格納される出庫ビン72と、を搬送するよう、通信デバイス24を介して搬送ロボット40Cに指示する(S19)。
【0082】
対象物のピッキング作業にN回失敗する場合としては、例えば、ステップS13の振分処理における後述するピッキング指標値の導出シミュレーションの結果が誤っていることが考えられる。
【0083】
ステップS19の後、ピッキングステーションPS0において作業者45により対象物のピッキング作業が行われる。この際、プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、作業者45の作業領域(ピッキングステーションPS0)に設置されたディスプレイ等にピッキング作業の作業指示を送信する。このディスプレイは、ピッキング作業の作業指示を受信して表示する。これにより、作業者45は、対象物のピッキング作業に関する詳細情報を確認できる。
【0084】
図19は、図18のステップS13における振分処理の詳細の一例を示すフローチャートである。
【0085】
上位管理装置20のプロセッサ21は、ステップS11で得られたピッキング成功率とタクトタイムとに基づいて、ビン70を振り分けるピッキングロボット40Pの優先順位を決定する。この場合、プロセッサ21は、タクトタイムをピッキング成功率で除した値であるピッキング指標値(=タクトタイム/ピッキング成功率)が小さい程、優先順位が高くなるように、優先順位を決定してよい。プロセッサ21は、ピッキングロボット40Pの優先順位とタスク量とに基づいて、ビン70を振り分けるピッキングロボット40Pを決定してよい。よって、プロセッサ21は、振分予定の(例えば優先順位の高い)ピッキングロボット40Pのタスク量が大量である場合、同じ又は同様の対象物をピッキング可能な他のピッキングロボット40Pに対してビン70を振り分けてもよい。
【0086】
プロセッサ21は、振分先としての優先順位が1位であるピッキングロボット(例えば吸着ハンドを有するピッキングロボット40P)を、振分対象のピッキングロボット40Pに設定する(S21)。プロセッサ21は、振分先に設定されたピッキングロボット40Pが有するタスク量が所定量以上であるか否かを判定する(S22)。
【0087】
タスク量が所定量未満である場合(ステップS22のNo)、プロセッサ21は、振分先に設定されたピッキングロボット40Pを振分先のピッキングロボット40Pに決定する(S23)。
【0088】
振分先に設定されたピッキングロボット40Pが有するタスク量が所定量以上である場合(ステップS22のYes)、プロセッサ21は、優先順位が次(例えば2位)であるピッキングロボット40P(例えば2指ハンドを有するピッキングロボット40P)が、設定されたピッキングロボット40Pがピッキング予定であった対象物のピッキングを可能であるか否かを判定する(S24)。ここでのピッキング可能であるか否かは、例えば同じ対象物又は特性が類似する対象物のピッキング成功率が所定値以上であるか否かによって判別されてよい。
【0089】
優先順位が次のピッキングロボット40Pがピッキング可能である場合(ステップS24のYes)、プロセッサ21は、次の優先順位のピッキングロボット40Pを振分先のピッキングロボット40Pに設定する(S25)。そして、ステップS22に進む。
【0090】
優先順位が次のピッキングロボット40Pがピッキング不可能である場合(ステップS24のNo)、プロセッサ21は、振替先に設定されたピッキングロボット40Pを振分先のピッキングロボット40Pに決定する(S23)。
【0091】
図18及び図19の動作例によれば、上位管理装置20は、各ピッキングロボット40Pのピッキング作業に関する評価指標(例えばピッキング成功率、タクトタイム)を基に、ビン70の振分先のピッキングロボット40Pを決定できる。よって、上位管理装置20は、高速且つ高精度にピッキング可能と推測されるピッキングロボット40Pをビン70の振分先に決定できる。
【0092】
また、上位管理装置20は、タスク量を加味して振分先のピッキングロボット40Pを決定できる。例えば、上位管理装置20は、ピッキング指標値を基に振分先のピッキングロボット40Pを設定(仮決定)し、設定されたピッキングロボット40Pのタスク量を加味して、振分先のピッキングロボット40Pを決定(正式決定)できる。つまり、ピッキングロボット40Pが実施予定のタスク量が多い場合には、対象物のピッキング作業が可能な他のピッキングロボット40Pにピッキング作業を振り分けできる。よって、上位管理装置20は、当初に振分先設定されたピッキングロボット40Pにおいてピッキング作業の待機時間が発生することを回避できる。よって、上位管理装置20は、ピッキング作業すべき対象物の全てをピッキング作業するための全体のタクトタイムを短縮できる。
【0093】
なお、上位管理装置20のプロセッサ21は、上記のピッキング成功率とタクトタイムとを算出した際に、ピッキング成功率とタクトタイムとをメモリ22に保持させておき、次回以降のビン70の振り分けに用いることができるようにしてもよい。また、プロセッサ21は、ピッキング成功率及びタクトタイムの過去の実績値をメモリ22に保持させておき、後のタイミングでのビン70の割り当てに用いることができるようにしてもよい。これらの場合、上位管理装置20は、ビン70の振り分けを行う際にピッキング成功率とタクトタイムとを算出することを不要にできる。
【0094】
次に、ピッキングロボット40Pによるピッキング作業が困難な場合の他例について説明する。
【0095】
ここでは、振分先に設定されたピッキングロボット40Pが、ピッキング指示データで指示された対象物をピッキング不可能である場合を想定する。ここでは、いずれのピッキングロボット40Pでも対象物をピッキングできず、ピッキング成功率0%であることを想定する。
【0096】
いずれのピッキングロボット40Pもピッキング成功率0%である場合、ピッキング指標値(タクトタイム/ピッキング成功率)を得ることができない。よって、ピッキング指標値が最小となるピッキングロボット40Pが存在しない。この場合、上位管理装置20のプロセッサ21は、振分先のピッキング手段として作業者45を決定する。
【0097】
プロセッサ21は、作業者45の配置位置(ピッキングステーションPS0)に保管ビン71と出庫ビン72とを搬送するよう、通信デバイス24を介して搬送ロボット40Cに指示する。この処理は、図18のステップS19に相当する。この後、ピッキングステーションPS0において作業者45により対象物のピッキング作業が行われる。
【0098】
<ビンの移動>
図20は、ピッキング作業時のビン70の移動例を示す図である。
【0099】
図20では、複数の保管ビン71を「保管ビンx」(xは自然数)と記載し、単に「保管x」とも記載する。また、図20では、出庫ビン72を単に「出庫」とも記載する。初期状態では、保管ビン1、保管ビン2、保管ビン3、及び出庫ビン72がピッキングロボット40の周辺のビン配置領域BRに2×2の形状で配置されている。
【0100】
まず、状態Aにおいて、保管ビン1から出庫ビン72への入れ替え(ピッキング作業)が行われる。
【0101】
状態Bにおいて、対象物がピッキングされた保管ビン1がX方向負側に離れ、保管ビン1が配置されていた位置に対してY方向正側から新たな保管ビン4が近づき、元の保管ビン1の位置に配置される。このような保管ビン1及び保管ビン4の移動中に、保管ビン2から出庫ビン72へのピッキング作業が行われる。
【0102】
状態Cにおいて、対象物がピッキングされた保管ビン2がX方向正側に離れ、保管ビン2が配置されていた位置に対してY方向正側から新たな保管ビン5が近づき、元の保管ビン2の位置に配置される。このような保管ビン2及び保管ビン5の移動中に、保管ビン3から出庫ビン72へのピッキング作業が行われる。
【0103】
このように、本実施形態では、1つ以上の保管ビン71の移動と他の1つ以上の保管ビン71及び出庫ビン72を用いたピッキング作業とを重複するタイミンングで実施でき、効率良くビン70の搬送とピッキング作業とを実施できる。よって、倉庫管理システム5は、複数の保管ビン71から出庫ビン72への対象物のピッキング作業を行う際のビン移動時間とタクトタイムとの合計時間を短縮できる。
【0104】
このような第1の実施形態における倉庫管理システム5によれば、複数のピッキングロボット40Pに対してビン70を適切に振り分けできる。倉庫管理システム5は、ピッキング作業が可能な2種類以上の構成が異なるピッキングロボット40Pと移動可能なビン70とを有する自動倉庫において、ピッキングが可能な対象物の網羅率を向上し、ピッキング作業の時間の短縮化を実現できる。この場合、上位管理装置20は、ピッキング指示データ(対象物の保管ビン、出庫ビン、数量など)に対して、ロボットの構成、ロボットの配置、ロボットのピッキングの評価指標(把持成功率と作業タクト)に応じて、1個の作業タクト、複数個の作業タクトの最小化を実現でき、アウトプットし、移動可能なビン70の配置を適切に制御できる。
【0105】
(第2の実施形態を得るに至った経緯)
特許文献1の情報処理方法では、ピッキング作業するピッキング手段に対して自動搬送車が搬送する棚をどのように配置するかは考慮されていない。そのため、ピッキング作業に用いる棚が複数存在する場合に、複数の棚の位置関係によってはピッキング作業に要する時間が長くなる。
【0106】
第2の実施形態では、例えば、ピッキングロボットを用いて対象物を保管ビンから出庫ビンへ移動させるピッキング作業を行う場合に、ピッキング作業に要する時間を短縮できるビン配置制御方法及びビン配置制御装置について説明する。
【0107】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、倉庫管理システムは、ピッキングステーションに搬送された各ビンの配置を制御する。本実施形態では、第1の実施形態で説明した事項と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0108】
<倉庫管理システムの構成>
第2の実施形態における倉庫管理システム5Aは、第1の実施形態における倉庫管理システム5と同様の構成を有する。なお、倉庫管理システム5Aは、上位管理装置20の代わりに上位管理装置20Aを有し、ロボットコントロールシステム30の代わりにロボットコントロールシステム30Aを有する。
【0109】
図21は、第2の実施形態の上位管理装置20Aの構成例を示すブロック図である。
上位管理装置20Aは、第1の実施形態の上位管理装置20と同様の構成を有する。なお、上位管理装置20Aは、プロセッサ21の代わりにプロセッサ21Aを備える。
【0110】
プロセッサ21Aは、第1の実施形態のプロセッサ21と同様の機能を有する。また、プロセッサ21Aは、所定のピッキングロボット40Pに対してビン70の配置を制御する。この場合、プロセッサ21Aは、例えば、対象物の特性、ビン70の内部に配置された物品の個数や配置状態、又は、保管ビン71内の対象物の配置位置と出庫ビン72内の移動後の対象物の配置可能位置とに基づいて、保管ビン71及び出庫ビン72との位置関係を決定する。また、この場合、保管ビン71内の対象物の配置位置と出庫ビン72内の移動後の対象物の配置可能位置とに基づいて、ピッキングロボットのハンドの移動距離を算出し、ハンドの移動距離に基づいてこの位置関係を決定してもよい。
【0111】
プロセッサ21Aは、決定された位置関係に基づいて、ピッキングロボット40Pに対する保管ビン71及び出庫ビン72の配置を制御する。例えば、プロセッサ21Aは、ピッキングロボット40Pに対する保管ビン71及び出庫ビン72の配置位置を決定する。この配置位置は、ピッキングロボット40Pが配置されたピッキングステーションPSのビン配置領域BRにおける保管ビン71及び出庫ビン72の配置位置である。保管ビン71の配置位置は、保管ビン座標によって規定され、出庫ビン72の配置位置は、出庫ビン座標によって規定される。
【0112】
なお、上記の所定のピッキングロボット40Pは、第1の実施形態で決定された振分先のピッキングロボット40Pであってもよいし、他の方法で決定された振分先のピッキングロボット40Pであってもよい。また、対象物の特性は、例えば、図13に示した対象物情報I3に含まれる形状、材質、重量、又はサイズ等である。
【0113】
プロセッサ21Aは、通信デバイス24を介して、カメラ60から撮像画像を取得してよく、センサから各種の検出情報を取得してよい。プロセッサ21Aは、撮像画像又は検出情報に基づいて、ビン70(例えば保管ビン71、出庫ビン72)の内部での物品の配置状態等を認識する。なお、ここで説明した撮像画像又は検出情報に基づく物品の配置状態等の認識は、ロボットコントロールシステム30Aで実施されてもよい。この場合、プロセッサ21Aは、通信デバイス24を介してロボットコントロールシステム30Aからこの認識の結果を含む認識情報を取得することで、ビン70内での物品の配置状態を認識してもよい。
【0114】
プロセッサ21Aは、決定された保管ビン71及び出庫ビン72の配置位置に基づいて、ピッキング指示データI1に保管ビン座標及び出庫ビン座標を追加することで更新し、ピッキング指示データI1Aを生成する。
【0115】
図22は、第2の実施形態のロボットコントロールシステム30Aの構成例を示すブロック図である。ロボットコントロールシステム30Aは、第1の実施形態のロボットコントロールシステム30と同様の構成を有する。なお、ロボットコントロールシステム30Aは、プロセッサ31の代わりにプロセッサ31Aを備える。
【0116】
プロセッサ31Aは、第1の実施形態のプロセッサ31と同様の機能を有する。また、プロセッサ31Aは、カメラ60から取得された撮像画像又はセンサから取得された検出情報等に基づいて、例えば、ビン70内の物品の配置状態を認識する。認識の結果の情報は、認識情報として通信デバイス34により上位管理装置20Aに送信される。
【0117】
図23は、更新されたピッキング指示データI1Aを示す図である。図23では、図4に示したピッキング指示データI1と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。ピッキング指示データI1Aは、タスクIDと、タスクタイプと、保管ビン座標と、出庫ビン座標と、時刻と、の情報を含む。保管ビン座標は、保管ビン71が搬送先のピッキングステーションPSに到着して配置予定の位置の座標である。出庫ビン座標は、出庫ビン72が搬送先のピッキングステーションPSに到着して配置予定の位置の座標である。
【0118】
<倉庫管理システムの動作>
次に、本実施形態のピッキング作業の動作例について説明する。
【0119】
ピッキングロボット40Pによるピッキング作業を細分化すると、例えば以下の処理が含まれる。ピッキングロボット40Pによるピッキング作業は、例えばロボットコントロールシステム30による制御の指示に従って行われる。ピッキング作業は、例えば、ピッキング時の処理として、ピッキング指示データの内容認識、ピッキング作業の対象物の認識、保管ビン71内の対象物へのアーム(ハンド)の移動、移動後のアームの振動収束待ち、及びハンドによる対象物のピッキング(例えば吸着又は把持)を含む。また、ピッキング作業は、プレース時の処理として、ピッキングされた対象物の出庫ビン72内での配置可能位置の認識、出庫ビン72内の対象物の配置可能位置へのアーム(ハンド)の移動、移動後のアームの振動収束待ち、及びハンドによる対象物の配置可能位置へのプレース(配置)を含む。上記のアームの移動は、XY方向への移動及びZ方向への移動(下降及び上昇)を含む。なお、ハンドはアームの先端部に設置されているので、アームの動作に連動して動作する。また、ハンドはアームから独立した動作も可能である。
【0120】
上記のピッキング作業における細分化された処理のうち、ピッキング、アーム(ハンド)の移動、及びプレースの処理に比較的時間がかかる。本実施形態では、倉庫管理システム5は、少なくとも、ピッキング作業時に対象物を保持するハンドの移動に要する移動時間を短縮する。ハンドの移動速度は、移動開始時に速度0から徐々に大きくなって目標速度となり、移動終了時に目標速度から徐々に小さくなって速度0となるように制御(台形制御ともいう)される。上記のハンドの移動時間に影響がある要因として、例えば、出庫ビン72への対象物の入れ方、対象物のサイズ、及び対象物の重量が挙げられる。
【0121】
出庫ビン72への対象物を入れ方に応じて、XY方向のハンドの移動速度が異なり得る。出庫ビン72への対象物を入れ方とは、保管ビン71内の対象物の配置位置と出庫ビン72内の移動後の対象物の配置可能位置との位置関係のことである。例えば、保管ビン71内の対象物の配置位置から出庫ビン72内の対象物の配置可能位置までの距離が長い程、XY方向のハンドの移動距離が長くなり、XY方向のハンドの移動時間が長くなる。一方、保管ビン71内の対象物の配置位置から出庫ビン72内の対象物の配置可能位置までの距離が短い程、XY方向のハンドの移動距離が短くなり、XY方向のハンドの移動時間が短くなる。
【0122】
図24は、保管ビン71と出庫ビン72との配置関係に応じたXY方向のハンドの移動時間のイメージを示す図である。図24では、配置パターンAでは、保管ビン71と出庫ビン72とがX方向に並んで配置されており、ハンドは対象物80を他の物品85の上方を通過して長距離移動する必要がある。配置パターンBでは、保管ビン71と出庫ビン72とが対角方向に並んで配置されており、ハンドは対象物80を他の物品85の上方を通過せずに短距離移動することで済む。
【0123】
対象物のサイズ又はビン70内の物品の個数に応じて、Z方向のハンドの移動時間が異なり得る。対象物のサイズが大きい程、又は、保管ビン71内の物品の個数が多い程、Z方向のアームの移動速度が速くなり、よってアームの移動時間が短くなる。Z方向に物品が重ねられて置かれている場合、アームのZ方向の移動距離が少なくなるためである。なお、出庫ビン72内の物品の個数が多い場合も同様に、Z方向のアームの移動時間が短くなる。Z方向に対象物が重ねられて配置されるためである。一方、対象物のサイズが小さい程、又は、保管ビン71内の物品の個数が少ない程、又は、出庫ビン72内の物品の個数が少ない程、Z方向のアームの移動速度が速くなる。
【0124】
図25は、Z方向のハンドの移動速度のイメージを示す図である。図25では、他の物品85上に配置する場合には、ハンドの移動距離が短くなるので高速になり、他の物品85上に配置しない場合には、ハンドの移動距離が長くなる。
【0125】
例えば、プロセッサ21が、認識された物品の配置状態を基に、保管ビン71において物品85上に対象物80が重ねられているか、つまりZ方向の高い位置に対象物80が配置されているかを判別する。対象物80が高い位置に配置されている場合には、対象物80が保管された保管ビン71と、出庫ビン72とは、X方向又はY方向に並べて配置されるのではなく、対角方向に配置されても、ピッキング作業の時間が増大することを抑制できる。同様に、プロセッサ21が、認識された物品の配置状態を基に、出庫ビン72において物品85上に対象物80が重ねられるか、つまりZ方向の高い位置に対象物80が配置可能であるかを判別する。対象物80が高い位置に配置可能である場合には、保管ビン71と、対象物が格納される出庫ビン72とは、X方向又はY方向に並べて配置されるのではなく、対角方向に配置されても、ピッキング作業の時間が増大することを抑制できる。
【0126】
対象物の重量に応じて、対象物をハンドがピッキングした状態でのXYZ方向の各方向のハンドの移動時間が異なり得る。対象物の重量が重い程、対象物をピッキングした状態でのXYZ方向のハンドの移動速度が遅くなり、よってハンドの移動時間が長くなる。重量が重い程、上記の台形制御における加速度が小さいためである。一方、対象物の重量が軽い程、対象物をピッキングした状態でのXYZ方向の各方向のハンドの移動速度が速くなり、よってアームの移動時間が短くなる。
【0127】
図26は、対象物の特性に応じた対象物の移動のイメージを示す図である。図26では、上位管理装置20は、重量が重い対象物の移動距離を、重量が軽い対象物の移動距離よりも短くすることで、ハンドの移動時間を短くでき、タクトタイムを短縮できる。重量が重いという特性ではなく、対象物のサイズが大きい、対象物の材質が滑り易い、対象物の形状が単純形状であるという特性の場合でも同様である。この場合、上位管理装置20は、保管ビン71と出庫ビン72とを近づけて、例えばX方向又はY方向に隣接に配置することでピッキング作業の時間が増大することを抑制できる。一方、対象物の重量が軽い、対象物のサイズが小さい、対象物の材質が滑り難い、対象物の形状が複雑形状であるという特性の場合には、ハンドの移動速度を速くでき、ハンドの移動時間を短くできるので、保管ビン71と出庫ビン72とが多少離して配置されても、例えば対角方向に配置されても、ピッキング作業の時間が増大することを抑制できる。
【0128】
図27は、上位管理装置20の動作例を示すフローチャートである。
なお、図27の処理開始時点では、各ビン70が、ピッキング作業を行うピッキングロボット40Pの近傍に位置していることを想定する。
【0129】
プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、カメラ60による撮像画像を取得する。この撮像画像には、保管ビン71内の物品が映り込んでいる。プロセッサ21は、撮像画像に基づいて、保管ビン71内の物品の配置状態を認識する。この際、プロセッサ21は、保管ビン71内で対象物がどの位置に配置されているかを認識する(S31)。
【0130】
プロセッサ21は、通信デバイス24を介して、カメラ60による撮像画像を取得する。この撮像画像には、出庫ビン72内の物品が映り込んでいる。プロセッサ21は、撮像画像に基づいて、出庫ビン72内の物品の配置状態を認識する。この際、プロセッサ21は、出庫ビン72内で対象物を配置可能な位置を認識する(S32)。
【0131】
プロセッサ21は、保管ビン71内の物品の配置状態と出庫ビン72内の物品の配置状態とに基づいて、ピッキングステーションPSのビン配置領域BRにおける保管ビン71及び出庫ビン72のそれぞれの配置位置を決定する。この場合、保管ビン71内での対象物の配置位置と出庫ビン72内での対象物の配置可能位置とに基づいて、ピッキングステーションPSのビン配置領域BRにおける保管ビン71及び出庫ビン72のそれぞれの配置位置を決定してよい。また、この場合、プロセッサ21は、一例として、対象物がピッキング作業される際の保管ビン71から出庫ビン72への移動距離が最短となる最短配置を計算し、最短配置に対応する保管ビン71及び出庫ビン72のそれぞれの配置位置を決定してよい(S33)。最短配置の詳細については後述する。
【0132】
プロセッサ21は、決定された配置位置での配置となるように保管ビン71及び出庫ビン72を搬送するように、通信デバイス24を介して搬送ロボット40Cに指示する(S34)。
【0133】
プロセッサ21は、保管ビン71及び出庫ビン72が決定された配置位置に配置されることを認識すると、保管ビン71から出庫ビン72へ対象物を移し替えるピッキング作業の実行を指示する(S35)。なお、ピッキングロボット40Pのハンドは、ピッキング作業が一回終了する毎に初期位置(例えばピッキングロボット40Pの中央位置)に戻ってもよいし、戻らなくてもよい。
【0134】
次に、最短配置の詳細について説明する。
【0135】
図28は、保管ビン71及び出庫ビン72の内部を上方から見た図である。図28では、保管ビン71には1個の物品85が保管されており、出庫ビン72には5個の物品が格納されている。この保管ビン71及び出庫ビン72には、一例として、それぞれX方向に2個、Y方向に3個の物品を平面的に(上下方向に重ならないように)配置可能となっているとする。この場合、図28において保管ビン71の左上の配置位置p1に配置された対象物80としての物品85は、ピッキングされ、出庫ビン72の右下のスペースとしての配置可能位置p2に移動され、この位置に下ろされて格納されることになる。保管ビン71と出庫ビン72との位置関係としては、例えば図29の配置パターンが考えられる。
【0136】
なお、配置位置p1は、例えばプロセッサ21によって、保管ビン71の内部が撮像された撮像画像と対象物情報とに基づいて認識されてよい。例えば、プロセッサ21Aは、対象物のサイズ等の各種の特徴に基づいて、ピッキング指示データで指示された対象物の有無を判別し、その対象物の配置位置p1も判別してよい。また、配置可能位置p2は、例えばプロセッサ21によって、出庫ビン72の内部が撮像された撮像画像と対象物情報とに基づいて認識されてよい。例えば、プロセッサ21Aは、物品の配置状態(例えば空きスペース)と対象物のサイズ等の各種の特徴に基づいて、配置可能位置p2を決定してよい。プロセッサ21Aは、例えば、出庫ビン72内の空きスペースに所定のサイズの対象物が収まる場合には、この空きスペースの位置を配置可能位置p2に決定してよい。また、配置位置p1及び配置可能位置p2は、Z方向の位置の成分を含んでよい。
【0137】
図29は、ビン配置領域BRに保管ビン71及び出庫ビン72を配置する配置パターンの一例を示す図である。図29では、ビン配置領域BRは、X方向に2つ、Y方向に2つビン70を並べて配置可能な矩形状の領域である。プロセッサ21は、ビン配置領域BRにおいて、保管ビン71及び出庫ビン72を配置する配置パターンを複数仮定する。図29では、配置パターンPT1,PT2,PT3が示されている。
【0138】
配置パターンPT1では、図28の配置状態の保管ビン71がビン配置領域BRの右上の領域BR2に配置され、図28の配置状態の出庫ビン72がビン配置領域BRの左上の領域BR1に配置されている。この場合、XY平面における、保管ビン71内の配置位置p1と出庫ビン72内の配置可能位置p2との距離は、距離d1である。
【0139】
配置パターンPT2では、図28の配置状態の保管ビン71がビン配置領域BRの左下の領域BR3に配置され、図28の配置状態の出庫ビン72がビン配置領域BRの左上の領域BR1に配置されている。この場合、XY平面における、保管ビン71内の配置位置p1と出庫ビン72内の配置可能位置p2との距離は、距離d2である。
【0140】
配置パターンPT3では、図28の配置状態の保管ビン71がビン配置領域BRの右下の領域BR4に配置され、図28の配置状態の出庫ビン72がビン配置領域BRの左上の領域BR1に配置されている。この場合、XY平面における、保管ビン71内の配置位置p1と出庫ビン72内の配置可能位置p2との距離は、距離d3である。
【0141】
ビン配置領域BRにおける出庫ビン72に対して保管ビン71が取りうる各配置パターンPT1~PT3の距離d1~d3のうち、距離d2が最短距離となる。よって、距離d2の場合の配置パターンPT2が最短配置として決定される。このようにして、プロセッサ21は、ステップS33における対象物の移動距離が最短となる最短配置を計算する。
【0142】
図30は、ピッキング時のハンドと対象物の動きの流れの一例を示す図である。図30では、ピッキング作業が一回終了する毎にハンド41が初期位置に戻る場合を想定する。
【0143】
図29の配置パターンPT2でのピッキング作業では、まず、状態Aにおいて、初期位置にあるハンド41が保管ビン71内の対象物80の配置位置p1に向かう。続いて、状態Bにおいて、ハンド41が対象物80をピッキングする。続いて、状態Cにおいて、ピッキングされた対象物80を出庫ビン72の配置可能位置p2に移動させる。続いて、状態Dにおいて、対象物80を出庫ビン72の配置可能位置p2に下ろして配置し、ハンド41を初期位置に戻す。したがって、図27のステップS33における最短配置の決定は、対象物80の移動距離(つまり基準位置を考慮しないハンド)が最短となることの代わりに、ピッキング作業時の初期位置を考慮したハンド41の移動距離が最短となる配置パターンが決定されてもよい。
【0144】
さらに、本実施形態について補足する。
【0145】
本実施形態では、倉庫管理システム5Aは、対象物情報とビン70の配置状態との少なとも一方を活用して、つまり対象物情報とビン70の配置状態との少なくとも一方に基づいて、ビン70の配置制御を行う。対象物情報を活用する場合、上位管理装置20Aのプロセッサ21Aは、例えば、対象物の重量のあるものについては対象物等の移動距離が短くなるように配置する。ビン70の配置状態を活用する場合も、同様に、プロセッサ21Aは、例えば、対象物の重量のあるものについては対象物等の移動距離が短くなるように配置する。対象物情報とビン70の配置状態との双方を活用する場合も、同様である。
【0146】
また、ビン70の配置制御において保管ビン71が複数存在する場合、ビン配置領域BR内での所定の保管ビン71についての所望の配置位置が、他の保管ビン71が配置されている又は配置予定であるために、所定の保管ビン71を所望の配置位置に配置できないことがあり得る。所望の配置位置は、例えばタクトタイム(ピッキング作業に要した時間)が最短である配置位置である。この場合、プロセッサ21Aは、所定の保管ビン71の配置位置として、最適な配置位置ではなく、最適の次に良いタクトタイムを有する配置位置を選択してよい。
【0147】
また、プロセッサ21Aは、ほぼ同時に複数の保管ビン71及び出庫ビン72の配置位置を指示する場合、それぞれの保管ビン71毎及び出庫ビン72毎に、タクトタイムを算出してよい。そして、プロセッサ21Aは、ピッキング指示データに基づく一連のピッキング作業(例えば1つの出荷指示に応じたピッキング作業)の全体としてタクトタイムが短くなるように、保管ビン71及び出庫ビン72の配置位置を指示してよい。
【0148】
このような本実施形態の倉庫管理システム5Aによれば、ピッキング指示データで指定されたピッキング作業の対象物の重量、対象物のサイズ、ビン70内の個数、又は出庫ビン72への対象物の入れ方等に基づいて、出庫ビン72に対する保管ビン71の配置を最適化できる。そして、倉庫管理システム5Aは、ピッキングロボット40Pの動作を制御することで、各ビン70の最適化されて配置された場合のピッキン作業の動作(例えばなるべくZ方向の高い位置にある対象物からピッキングする、空きスペースにプレースする)をスムーズに実施できる。よって、倉庫管理システム5Aは、ピッキングロボット40Pのアーム又はハンド等の動作に要する時間をなるべく小さくでき、ピッキングロボット40Pのピッキング作業時のタクトタイムを短縮でき、ピッキング作業を高速化できる。
【0149】
なお、一例として、ビン配置領域BR内の領域BR1に配置された保管ビン71と領域BR2に配置された保管ビン71とから、同じ出庫ビン72に対してピッキング作業を行うとする。この場合、異なる保管ビン71からのピッキング作業を行うことになるので、異なる保管ビン71へのアームのアプローチが必要になる。よって、アームの移動距離が長くなるので、アームの移動時間が長くなる傾向にある。この場合、領域BR1に配置された保管ビン71が、ビン配置領域BRから出ずに領域BR2に移動してもよい。上位管理装置20のプロセッサ21は、保管ビン71又は出庫ビン72がビン配置領域BR内で移動しながらピッキング作業を行う場合と、異なる保管ビン71へアームをアプローチしてピッキング作業を行う場合とで、所要時間が短い方を選択してよい。プロセッサ21は、このそれぞれの所要時間をシミュレーションによって算出可能であってよい。
【0150】
なお、本実施形態では、上位管理装置20Aのプロセッサ21Aがビン配置制御に関する処理を主に実行することを例示したが、これに限られない。例えば、ロボットコントロールシステム30Aのプロセッサ31Aがビン配置制御に関する処理を主に実行するようにしてもよい。
【0151】
(実施形態の概要)
以上により、本開示には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0152】
(項目1)
複数のピッキングロボット(ピッキングロボット40P)によるピッキング作業の対象物(対象物80)を格納可能なビン(ビン70)を振り分けるビン振分方法であって、
前記対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データ(ピッキング指示データI1)を取得するステップ(ステップS11)と、
対象物毎且つピッキングロボット毎の前記ピッキング作業に関する評価指標を取得するステップ(ステップS12)と、
前記ピッキング指示データと前記評価指標とに基づいて、前記複数のピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対して前記ビンを振り分けるステップ(ステップS13)と、
を含むビン振分方法。
【0153】
これにより、ビン振分方法は、ピッキングロボットが複数存在し、各ピッキングロボットが商品毎にピッキングの得意及び不得意を有する場合でも、ピッキング指示データによってどのようなピッキングを行うか認識でき、評価指標によって対象物やピッキングロボットの特性に応じた得意及び不得意を認識できる。よって、ビン振分方法は、複数のピッキングロボットのうち好適なビンの振分先を決定できる。
【0154】
(項目2)
前記評価指標は、
前記対象物毎且つ前記ピッキングロボット毎のピッキング作業の成功率を示す成功率情報(ピッキング成功率情報I4)と、
前記対象物毎且つ前記ピッキングロボット毎のピッキング作業に要する時間であるタクトタイムを示すタクト情報(タクトタイム情報I5)と、含む、
項目1に記載のビン振分方法。
【0155】
これにより、ビン振分方法は、ピッキング作業に成功し易く、ピッキングの作業時間(タクトタイム)を短縮し易いビンの振分先を決定できる。
【0156】
(項目3)
前記ピッキングロボット毎に、前記ピッキングロボットの構成に関するロボット構成情報(ロボット構成情報I2)を取得するステップと、
前記対象物毎に、前記対象物に関する対象物情報(対象物情報I3)を取得するステップと、を更に含み、
前記評価指標を取得するステップは、前記ロボット構成情報と前記対象物情報に基づいて、シミュレーションによって前記評価指標を算出するステップを含む、
項目1又は2に記載のビン振分方法。
【0157】
これにより、ビン振分方法は、予め評価指標をメモリ等が保持していなくても、ロボット構成情報と対象物情報とを基に評価指標を得ることができる。
【0158】
(項目4)
前記ビンを振り分けるステップは、
前記成功率情報と前記タクト情報とに基づいて、前記ピッキング指示データで指示された前記対象物をピッキングする前記ピッキングロボットの優先順位を決定するステップと、
前記優先順位に基づいて、前記第1のピッキングロボットを決定するステップと、を含む、
項目2に記載のビン振分方法。
【0159】
これにより、ビン振分方法は、例えばピッキングロボットの優先順位が高いものをビンの振分先の候補として、ビンの振分先を決定できる。
【0160】
(項目5)
前記ピッキングロボット毎に、前記対象物をピッキングすべきタスク量に関するタスク量情報を取得するステップ、を更に含み、
前記ビンを振り分けるステップは、
前記ピッキングロボットの前記優先順位と前記タスク量情報とに基づいて、前記第1のピッキングロボットを決定するステップを含む、
項目4に記載のビン振分方法。
【0161】
これにより、ビン振分方法は、例えば振分先の候補におけるピッキング作業の混み具合を加味して、振分先を決定できる。
【0162】
(項目6)
前記ビンを振り分けるステップは、
前記ピッキングロボット毎に、前記成功率情報に基づいて、前記対象物をピッキング可能であるか否かを判定するステップと、
前記対象物をピッキング可能なピッキングロボットが存在しない場合、前記対象物を作業者(作業者45)がピッキングするための作業領域に対してビンを振り分けるステップと、を含む、
項目2に記載のビン振分方法。
【0163】
これにより、ビン振分方法は、いずれのピッキングロボットによっても対象物のピッキング作業が困難であると推測される場合には、最初の振分先の決定時から作業者としての人へビンを振り分けできる。
【0164】
(項目7)
前記ビンを振り分けるステップは、
前記第1のピッキングロボットによる前記対象物のピッキングに所定回数失敗したか否かを判定するステップと、
前記所定回数失敗したと判定された場合、前記対象物を作業者がピッキングするための作業領域に対してビンを振り分けるステップと、を含む、
項目1又は2に記載のビン振分方法。
【0165】
これにより、ビン振分方法は、振分先のピッキングロボットによって対象物のピッキング作業が困難であった場合でも、作業者としての人へビンを振り分けるよう変更し、ピッキングに成功する確率を高くできる。
【0166】
(項目8)
前記第1のピッキングロボットの位置に前記ビンを搬送するよう搬送ロボット(搬送ロボット40C)に指示するステップ、を更に含む、
項目1から7のいずれか1項に記載のビン振分方法。
【0167】
これにより、ビン振分方法は、振分先に決定されたピッキングロボットの位置にビンを配置でき、ピッキングロボットによるピッキング作業を実施可能な状態にできる。
【0168】
(項目9)
前記ビンは、前記ピッキング作業の前の前記対象物が保管された保管ビン(保管ビン71)を含む、
項目1から8のいずれか1項に記載のビン振分方法。
【0169】
これにより、ビン振分方法は、振分先に決定されたピッキングロボットの位置に保管ビンを配置できる。
【0170】
(項目10)
前記ビンは、前記ピッキング作業の後の前記対象物が格納される出庫ビン(出庫ビン72)を含む、
項目1から9のいずれか1項に記載のビン振分方法。
【0171】
これにより、ビン振分方法は、振分先に決定されたピッキングロボットの位置に出庫ビンを配置できる。
【0172】
(項目11)
プロセッサ(プロセッサ21)を備え、ピッキングロボットによるピッキング作業の対象物を格納可能なビンを振り分けるビン振分装置(上位管理装置20)であって、
前記プロセッサは、
前記対象物のピッキング作業を指示するためのピッキング指示データと、対象物毎且つピッキングロボット毎の前記ピッキング作業に関する評価指標と、を取得し、
前記ピッキング指示データと前記評価指標とに基づいて、複数のピッキングロボットのうちの第1のピッキングロボットに対して前記ビンを振り分ける、
ビン振分装置。
【0173】
これにより、ビン振分装置は、項目1と同様の効果が得られる。
【0174】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0175】
また、上記実施形態は、ビン振分方法の機能を実現するプログラムを、ネットワーク或いは各種記憶媒体を介してコンピュータ(例えば上位管理装置20)に供給し、このコンピュータのプロセッサが読み出して実行するプログラム、及びこのプログラムが記憶された記録媒体も適用範囲としてよい。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本開示は、複数のピッキングロボットを用いて物品を保管ビンから出庫ビンへ移動させるピッキング作業を行う場合に、ピッキング作業の効率を向上できるビン振分方法及びビン振分装置等に有用である。
【符号の説明】
【0177】
5 倉庫管理システム
10 倉庫管理装置
20,20A 上位管理装置
21,21A プロセッサ
22 メモリ
23 入力デバイス
24 通信デバイス
25 入出力インタフェース
30,30A ロボットコントロールシステム
31,31A プロセッサ
22 メモリ
23 入力デバイス
24 通信デバイス
35 入出力インタフェース
40 ロボット装置
40C 搬送ロボット
40P ピッキングロボット
45 作業者
50 倉庫
60 カメラ
70 ビン
71 保管ビン
72 出庫ビン
80 対象物
85 物品
BR ビン配置領域
PS ピッキングステーション
p1 配置位置
p2 配置可能位置
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