IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東北大学の特許一覧 ▶ 株式会社ワコムの特許一覧

<>
  • 特開-切削訓練補助システム 図1
  • 特開-切削訓練補助システム 図2
  • 特開-切削訓練補助システム 図3
  • 特開-切削訓練補助システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172626
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】切削訓練補助システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090468
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅充
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利彦
(72)【発明者】
【氏名】小堀 武
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 僚
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 和毅
(72)【発明者】
【氏名】高野 樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和之
(72)【発明者】
【氏名】北村 喜文
(72)【発明者】
【氏名】洪 光
(72)【発明者】
【氏名】池松 香
(57)【要約】
【課題】より安価に切削対象の切削を訓練することができる。
【解決手段】装着型ディスプレイ、擬似切削器具、位置検知装置、制御装置を備える切削訓練補助システムであって、前記擬似切削器具は、三次元方向の加速度及び角速度を測定する6軸センサと、振動する振動子と、を備え、前記位置検知装置は、前記擬似切削器具の位置及び前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度を検知し、前記制御装置は、前記位置検知装置の位置、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度及び前記擬似切削器具の三次元方向の加速度及び角速度 とに基づいて前記振動子の振動を制御し、前記位置検知装置の位置、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度及び前記擬似切削器具の三次元方向の加速度及び角速度とに基づいて前記装着型ディスプレイに切削器具を表示させる、切削訓練補助システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着型ディスプレイ、擬似切削器具、位置検知装置、制御装置を備える切削訓練補助システムであって、
前記擬似切削器具は、
先端部に位置指示部
を備え、
三次元方向の加速度及び角速度を測定する6軸センサと、
振動する振動子と、
を備え、
前記位置検知装置は、前記位置指示部を検知することによって、前記擬似切削器具の位置及び前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度を検知し、
前記制御装置は、
前記位置検知装置の位置、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の位置、角度及び前記擬似切削器具の三次元方向の加速度及び角速度とに基づいて前記振動子の振動を制御し、
前記位置検知装置の位置、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の位置、角度及び前記擬似切削器具の三次元方向の加速度及び角速度とに基づいて前記装着型ディスプレイに切削器具を表示させる、
切削訓練補助システム。
【請求項2】
前記擬似切削器具は、ヘッドと持ち手部分を備え、前記持ち手部分は、前記ヘッドを地面に対して水平にしたときに前記地面に対して鋭角をなすように配置され、
前記ヘッドは、前記位置指示部と6軸センサを備え、
前記持ち手部分は、振動子を備え、
前記位置指示部は、コイルと、前記コイルの軸心に沿って圧力を圧力センサに伝達する芯体を備える、
請求項1に記載の切削訓練補助システム。
【請求項3】
前記位置検知装置は、前記擬似切削器具の先端部を中心とし、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の方位角を検出する、
請求項1又は2に記載の切削訓練補助システム。
【請求項4】
前記位置検知装置には、切削対象物が配置され、
前記制御装置は、前記擬似切削器具により検知された前記芯体に加えられる圧力に基づいて前記振動子を振動させる、
請求項2に記載の切削訓練補助システム。
【請求項5】
前記切削対象物は、歯型である、
請求項4に記載の切削訓練補助システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記装着型ディスプレイに切削対象物の画像モデルと前記擬似切削器具の画像モデルを表示させ、
切削対象物と前記擬似切削器具の位置関係と、前記装着型ディスプレイに表示される切削対象物の画像モデルと前記擬似切削器具の画像モデルとの位置関係とを一致させるように制御を行う、
請求項1に記載の切削訓練補助システム。
【請求項7】
前記装着型ディスプレイ又は前記制御装置は、音声発生部を有し、
前記芯体が前記切削対象物に接触したとき、前記振動子が振動すると共に、音声発生部は音声を出力する、
請求項4に記載の切削訓練補助システム。
【請求項8】
前記音声発生部は、前記擬似切削器具の前記芯体に加わる圧力に基づいて、又は、前記擬似切削器具の角度、回転角、加速度、角速度のいずれかの変化に基づいて、出力する音声を変化させる、
請求項7に記載の切削訓練補助システム。
【請求項9】
前記擬似切削器具は、無線通信部を備え、前記制御装置に接続される、
請求項1に記載の切削訓練補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削訓練補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療は繊細な患部が対象の治療であることから、その技術を習得するときには歯の切削を訓練することが重要である。そのため、歯の切削を訓練することを目的としたロボットやVR技術を用いたシミュレータが開発されている(例えば非特許文献1及び非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Al‐Saud, Loulwa M., F. Mushtaq, M. J. Allsop, P. C. Culmer, I. Mirghani, E. Yates, A. Keeling, M. A. Mon-Williams and M. Manogue. "Feedback and motor skill acquisition using a haptic dental simulator."European Journal of Dental Education" 21.4 (2017): 240-247.
【非特許文献2】Serrano, Carlos M., Paul R. Wesselink, and Johanna M. Vervoorn. "First experiences with patient‐centered training in virtual reality." Journal of dental education 84.5 (2020): 607-614.
【非特許文献3】Kato, Kunihiro, Kaori Ikematsu, and Yoshihiro Kawahara. "CAPath: 3D-Printed Interfaces with Conductive Points in Grid Layout to Extend Capacitive Touch Inputs."Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction 4.ISS (2020): 1-17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歯の切削を訓練するためのロボットやシミュレータは高価であった。そのため、例えば歯学部の学生全員にロボット又はシミュレータを貸与することは難しかった。このような問題は歯の切削に限定された問題ではなく、様々な切削対象について共通した問題である。
本発明の目的は、より安価に切削対象の切削を訓練することができる切削訓練補助システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、装着型ディスプレイ、擬似切削器具、位置検知装置、制御装置を備える切削訓練補助システムであって、前記擬似切削器具は、三次元方向の加速度及び角速度を測定する6軸センサと、振動する振動子と、を備え、前記位置検知装置は、前記擬似切削器具の位置及び前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度を検知し、前記制御装置は、前記位置検知装置の位置、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度及び前記擬似切削器具の三次元方向の加速度及び角速度 とに基づいて前記振動子の振動を制御し、前記位置検知装置の位置、前記位置検知装置に対する前記擬似切削器具の角度及び前記擬似切削器具の三次元方向の加速度及び角速度とに基づいて前記装着型ディスプレイに切削器具を表示させる、切削訓練補助システムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より安価に切削対象の切削を訓練することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】切削訓練補助システムの使用例を示す図である。
図2】擬似切削器具の構成を示す図である。
図3】切削訓練補助システムの構成要素間の関係を示した図である。
図4】歯に関する情報の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
〈全体の構成〉
図1は切削訓練補助システム1の使用例を示す図である。図1を用いて切削訓練補助システム1の概略について説明する。
切削訓練補助システム1は、使用者Uが切削訓練をすることを補助する。切削訓練補助システム1は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)11、擬似切削器具12、デジタイザ15、制御装置16及び物理プロップ17を備える。以下、説明のためにデジタイザ15がXY平面に位置し、Z軸に対して垂直であるとする。
【0009】
使用者Uは、HMD11を頭部に装着する。HMD11は使用者Uの目を覆う形で装着される。HMD11のディスプレイには、切削器具を使用して切削対象を切削している様子の映像が表示される。本実施形態における切削対象は例えば歯であるがこれに限られない。例えば、切削対象は骨や木材など切削対象となりうるものであればよい。HMD11は、スマートグラスなどの装着型ディスプレイであってもよい。
【0010】
使用者Uは、擬似切削器具12を使用することで切削を擬似的に行う。図2は、擬似切削器具12の構成を示す図である。擬似切削器具12は、例えば歯の切削器具を模した形状で構成される。擬似切削器具12は、ヘッド13、持ち手部分14が一体となった構造を有する。使用者Uは、持ち手部分を把持し、ヘッド13の位置指示部131に備えられる芯体120を物理プロップ17に接触させる。擬似切削器具12の位置指示部131の芯体120は、歯の切削器具において切削するための刃が備えられた部分に相当する。
切削器具は先端部を地面に対して垂直にしたときに持ち手部分は地面に対して垂直にはならず地面と鋭角をなす。擬似切削器具12も同様にして、位置指示部131を地面に対して垂直にしたときにヘッド13は地面に対して平行となる。また、ヘッド13を地面に対して水平にしたときに持ち手部分14は地面に対して水平にはならず地面と鋭角をなすような構造をとる。
【0011】
擬似切削器具12は、位置指示部131、6軸センサ122、センサ回路123、振動子124、制御回路125、インタフェース126を備える。
【0012】
位置指示部131は、擬似切削器具12の先端部に設けられる。位置指示部131は、芯体120及びコイル121を備える。使用者Uは、擬似切削器具12を使用して、芯体120の先を物理プロップに接触させることで切削を擬似的に行う。
【0013】
芯体120は、コイル121の軸心に平行に備えられる。芯体120は、コイル121の軸心に沿って加えられる圧力を圧力センサに伝達する。
【0014】
コイル121は、磁界を発生させる。コイル121は、ヘッド13を地面に対して水平にしたときに、垂直になるように備えられる。コイル121が発生する磁界を後述するデジタイザ15が検知することで、擬似切削器具12の位置やZ軸に対する傾き、擬似切削器具12の筆圧を算出する。なお、擬似切削器具12の筆圧は、芯体120に加えられる圧力が圧力センサに伝達されることによって算出されてもよい。
【0015】
6軸センサ122は擬似切削器具12のヘッド13に備えられる。6軸センサ122は、三次元方向の加速度及び角速度を測定する。センサ回路123は、圧力センサや6軸センサ122による測定結果を取得する。
【0016】
振動子124は、制御装置16による制御により振動する。振動子124は、擬似切削器具12の持ち手部分14に備えられることが望ましい。振動子124は、制御装置16による制御により、振動の大きさや振動の周波数を変更する。制御回路125は、制御装置16からの指示を振動子124を制御する電気信号に変換し、振動子124を制御する。また、制御回路125は、センサ回路123から測定結果を取得し、制御回路125に送信する電気信号に変換する。
【0017】
インタフェース126は、擬似切削器具12と制御装置16とを接続する。インタフェース126は例えばUSB端子である。インタフェース126を介して擬似切削器具12と制御装置16は、電気信号を送受信する。擬似切削器具12は、無線装置を備えることで、制御装置16と電気信号を送受信してもよい。
【0018】
デジタイザ15は、表面に電磁信号を発生させる。デジタイザ15は、コイル121が発生する磁界を検知することで、擬似切削器具12の位置やZ軸に対する傾き、擬似切削器具12の筆圧の大きさを算出する。デジタイザ15は、擬似切削器具12がZ軸に対して傾いている場合に、コイル121から発生する磁界のメインピークとサイドローブを検知することで、擬似切削器具12のZ軸に対する傾きを算出する。擬似切削器具12の筆圧の大きさは、擬似切削器具12により物理プロップ17に加えられる圧力の大きさである。デジタイザ15は、特定の位置に固定して設置されてもよい。デジタイザ15は、例えば水平な台の上の特定の位置に配置される。擬似切削器具12とデジタイザ15とは、基準となる位置関係が設定される。デジタイザ15は、擬似切削器具12の位置情報を検知する位置検知装置や、擬似切削器具12の傾き情報を検知する傾き検知装置や、擬似切削器具12の筆圧の大きさを検知する筆圧検知装置として動作する。
【0019】
制御装置16は、HMD11からHMD11の位置情報を取得する。制御装置16は、擬似切削器具12から6軸センサ122により測定される三次元方向の加速度及び角速度を取得する。制御装置16は、デジタイザ15から擬似切削器具12の位置情報を取得する。制御装置16は、デジタイザ15から擬似切削器具12の位置及びZ軸に対する傾きを取得する。制御装置16は、デジタイザ15から物理プロップ17に加える力の大きさを取得する。制御装置16は、HMD11に表示させる切削器具及び切削対象の形状と、切削器具と擬似切削器具12との形状の対応関係、切削対象と物理プロップ17との形状の対応関係、物理プロップ17の位置情報を記憶している。
【0020】
制御装置16は、ヘッド13に備えられた6軸センサ122から三次元方向の加速度及び角速度を取得することで、位置指示部131を軸としたときの擬似切削器具12の回転量を算出することができる。これにより、制御装置16は、擬似切削器具12はZ軸に対してほぼ垂直であり、デジタイザ15により磁界のサイドローブが検知されない場合であっても、擬似切削器具12の位置を正確に算出することができる。
【0021】
制御装置16は、HMD11を制御し、物理プロップ17の設置位置に基づいて切削対象の画像モデルを表示させ、擬似切削器具12の位置に基づいて切削器具の画像モデルを表示させる。制御装置16は、物理プロップ17と擬似切削器具12との位置関係と、切削対象の画像モデルと切削器具の画像モデルとの位置関係を一致させるように制御を行う。
制御装置16は、擬似切削器具12を制御し、擬似切削器具12の位置と筆圧の大きさに基づいて振動子124を振動させる。制御装置16による振動子124の制御方法についての詳細は後述する。
【0022】
物理プロップ17は、切削対象と類似した形状を有する。物理プロップ17は、例えば歯と類似した形状を有する。物理プロップ17は、切削対象の硬さと近い硬度の硬さを有していてもよい。物理プロップ17は歯と類似した形状を有するとき、歯の硬さと近い硬度の硬さを有していてもよい。物理プロップ17は、デジタイザ15の所定の位置に配置される。物理プロップ17は、デジタイザ15の上に固定されて配置されてもよい。
【0023】
擬似切削器具12は、電磁誘導方式のスタイラスであり、コイル121が磁場を発生させデジタイザ15に発生させた磁場を検知させることで、擬似切削器具12の位置を検出させ、磁界の変化を検知させることで擬似切削器具12の筆圧を検出させる。これにより、擬似切削器具12の位置指示部131の芯体120が物理プロップ17に接触し、デジタイザ15に接触していない場合であっても擬似切削器具12の位置及び筆圧が検出される。
【0024】
図3は、切削訓練補助システム1の構成要素間の関係を示した図である。
制御装置16は、HMD11からHMD11の位置情報を取得する。制御装置16は、HMD11の表示を制御する。
制御装置16は、擬似切削器具12から6軸センサ122による測定結果を取得する。制御装置16は、擬似切削器具12の振動子124の振動を制御する。
制御装置16は、デジタイザ15から擬似切削器具12の位置情報を取得する。
【0025】
使用者Uは、擬似切削器具12を物理プロップ17の周囲で動かすことで切削対象を切削する訓練を行う。制御装置16はどんな情報処理装置であってもよく、例えばHMD11などと一体の装置として構成されてもよく、クラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
【0026】
制御装置16は、切削対象に関する情報を記憶する記憶装置を備えてもよい。切削対象に関する情報は例えば切削対象の物理的なパラメータであって、切削対象の形状、切削対象の硬さ、及び切削対象の繊維の方向に関する情報を含む。切削対象が歯である場合、切削対象に関する情報は例えば歯の形状、歯の硬さ、歯の繊維の方向、及び歯の神経の位置に関する情報を含む。歯の形状、歯の硬さ、歯の繊維の方向、及び歯の神経の位置は、歯の種類や、歯の中の位置によって異なる。図4は、切削対象に関する情報の一例である歯に関する情報を示す表である。歯の位置はFDI方式の表記法により表され、例えば11は右上の上顎中切歯である。歯の位置は歯の形状に対応する。歯はそれぞれ複数の領域に分けられる。それぞれの領域には硬さ及び繊維の方向が設定される。
【0027】
制御装置16が備える記憶装置には複数の歯に関する情報が記憶されてもよい。例えば、制御装置16が備える記憶装置には成人の歯に関する情報及び乳児の歯に関する情報が記憶されてもよい。例えば、制御装置16が備える記憶装置には異なる個人の歯に関する情報が記憶されてもよい。各々の歯に関する情報に含まれる歯の物理的なパラメータ、例えば歯の形状、歯の硬さ、歯の繊維の方向及び歯の神経の位置は異なっていてもよい。
【0028】
制御装置16は、切削対象に関する情報に基づいて、HMD11の画面に表示するよう制御してもよい。つまり、制御装置16は、異なる切削対象に関する情報に基づいて、HMD11の画面に異なる切削対象が表示されるよう制御してもよい。
【0029】
制御装置16は、切削器具に関する情報を記憶してもよい。切削器具に関する情報は例えば切削器具の物理的なパラメータであって、例えば切削器具の形状や、切削器具のモータの振動数、切削器具の先端バーの硬さである。制御装置16は、複数の異なる切削器具に関する情報を記憶してもよく、切削器具各々の物理的なパラメータは異なってもよい。
制御装置16は、切削器具に関する情報に基づいて、HMD11の画面に表示するよう制御してもよい。つまり、制御装置16は、異なる切削器具に関する情報に基づいて、HMD11の画面に異なる切削器具が表示されるよう制御してもよい。
【0030】
制御装置16は、擬似切削器具12と物理プロップ17との位置関係及び筆圧の大きさに基づいて振動子124の振動の大きさや周波数を算出する。制御装置16は、擬似切削器具12の位置指示部131の芯体120と物理プロップ17とが接触していると判定したときに振動子124を振動させる。また、制御装置16は、筆圧の大きさが所定の値以上であるときに、振動子124を振動させる。また、制御装置16は、擬似切削器具12の筆圧が大きくなった場合に振動子124に発生させる振動の振幅を大きくし、擬似切削器具12の筆圧が小さくなった場合に振動子124に発生させる振動の振幅を小さくする。
【0031】
また、振動子124の振動の大きさや周波数は切削対象や切削器具に関する情報に基づいて算出されてもよい。例えば、より硬い切削対象を切削する場合には、振動子124の振動の大きさを大きくしてもよい。例えば、切削器具の先端のバーの硬さがより硬い場合には、振動子124の振動の大きさを大きくしてもよい。
【0032】
制御装置16は、擬似切削器具12の位置指示部131の芯体120と物理プロップ17とが接触したと判定した場合、HMD11が音を発するように制御してもよい。制御装置16は、擬似切削器具12の位置指示部131の芯体120と物理プロップ17とが接触したと判定した場合、HMD11を制御し切削対象を切削するときに生じる音を発させる。制御装置16が音を発するように制御するのはHMD11に限られず、例えば他のスピーカーが音を発するように制御してもよい。制御装置16は、擬似切削器具12の筆圧や擬似切削器具12と物理プロップ17との位置関係に基づいて、HMD11が発する音を変化させてもよい。制御装置16は、切削対象に関する情報に基づいて、HMD11が発する音を変化させてもよい。制御装置16は、設定される切削器具の種類によりHMD11が発する音を変化させてもよい。例えば、制御装置16は、切削時に生じる音と同じ又は類似した音の情報を、当該切削において切削器具にかけられる圧力、切削器具の切削対象に対する位置及び使用される切削器具の種類と対応付けて記憶する記憶装置を備え、記憶装置に記憶された情報に基づいてHMD11が音を発するように制御する。また、制御装置16は、切削対象21が歯であるとき、歯の神経の位置と切削器具との間の距離が近いと判定した場合、HMD11が音を発するように制御してもよい。制御装置16は、歯の神経の位置と切削器具との間の距離が近いと判定した場合、例えば使用者Uに警告する目的でHMD11がアラート音を発するように制御する。
【0033】
制御装置16は、HMD11が削られる切削対象の形状を表示するように制御する。HMD11に表示される切削対象の削られる量は、切削対象に関する情報及び擬似切削器具12の筆圧や位置に基づいて決定される。HMD11に表示される切削対象の削られる量は、設定される切削器具の種類により決定されてもよい。例えば、制御装置16は、単位時間当たりの切削により削られる切削対象の量の情報を、切削器具にかけられる圧力、切削器具の切削対象に対する位置及び使用される切削器具の種類と対応付けて記憶する記憶装置を備え、記憶装置に記憶された情報に基づいて削られる切削対象の量を決定する。
【0034】
制御装置16は、決定した削られる切削対象の形状のデータをメモリなどの記憶装置に記憶させてもよい。記憶装置に記憶された経時的な切削対象の形状のデータを使用者が参照することにより、使用者は行った切削作業のシミュレーションを振り返ることができる。また、記憶装置に記憶された削った切削対象の形状のデータを使用者が参照することもできる。
【0035】
物理プロップ17は、切削対象の形状を模した模型である。使用者は物理プロップ17に擬似切削器具12の位置指示部131の芯体120を接触させることで、実際の切削対象の切削と同様、切削器具が切削対象に接触している感覚を得ることができる。物理プロップ17を設置する位置はデジタイザ15上の所定の位置である。デジタイザ15がディスプレイを有している場合、デジタイザ15に物理プロップ17を設置する位置が示されてよい。
【0036】
《作用・効果》
このように、本実施形態によれば、切削訓練補助システム1は、HMD11、擬似切削器具12、デジタイザ15、制御装置16及び物理プロップ17を備える。本実施形態に係る切削訓練補助システム1は、切削対象の切削を訓練するためのシミュレータとしては小型である。そのため、運搬を容易にすることができ、例えば学生が学校から家に持って帰ることにより家で切削訓練をすることができる。
【0037】
また、切削訓練補助システム1の使用者Uは擬似切削器具12を物理プロップ17に接触させると、擬似切削器具12が振動し、擬似切削器具12の持ち手部分に振動を感じる。これにより、切削訓練補助システム1は使用者Uに切削対象を切削しているという触覚体験を提供することができる。切削対象に関する情報や擬似切削器具12の筆圧・位置に基づいて擬似切削器具12の振動を変化させることができ、これにより、切削訓練補助システム1は切削対象の硬さを再現し、使用者に切削対象の硬さに応じた触覚体験を提供することができる。
【0038】
また、切削訓練補助システム1の使用者はHMD11の画面において、擬似切削器具12に対応する切削器具と物理プロップ17に対応する切削対象を見ることができ、また、切削器具により削られる切削対象の形状を見ることができる。これにより、切削訓練補助システム1は使用者に切削対象を切削しているという視覚体験を提供することができる。
【0039】
なお、実際の切削対象の切削作業においては切削対象を削った分だけ空間が生じることから切削器具の可動域が広がる。しかしながら、本実施形態において物理プロップ17は実際には削られないため、擬似切削器具12の可動域が広がることはない。本実施形態の切削訓練補助システム1は、上記の通りHMD11により使用者に切削対象が削れる映像を表示することで、視覚的に切削対象を削った実感を与えることができる。
【0040】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
切削訓練補助システム1の、HMD11、擬似切削器具12、デジタイザ15、制御装置16の通信方法は特に限定されない。例えば制御装置16、擬似切削器具12、デジタイザ15は有線で接続され通信してもよいし、無線通信部を備え、無線通信を行ってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 切削訓練補助システム、11 ヘッドマウントディスプレイ、12 擬似切削器具、121 コイル、122 6軸センサ、123 センサ回路、124 振動子、125 制御回路、126 インタフェース、13 ヘッド、14 持ち手部分、15 デジタイザ、16 制御装置、17 物理プロップ
図1
図2
図3
図4