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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172628
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20241205BHJP
   E03D 11/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E03D13/00
E03D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090470
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高市 康太郎
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA04
2D039AD00
2D039AD04
2D039CA00
2D039CA02
2D039CB02
(57)【要約】
【課題】壁に固定して用いられる小便器において、壁に対して小便器本体を取り付ける作業の自由度を高める。
【解決手段】小便器1は、ボウル部21を含む小便器本体2と、ボウル部21に連通する排水トラップ3と、排水管95が設けられた壁91に対して小便器本体2を仮保持させる仮保持構造5と、を備える。仮保持構造5は、小便器本体2に設けられた係止部6と、壁91に固定される取付部材7と、を含む。係止部6が取付部材7に係止することで、小便器本体2は、排水管95を基準とした2つの高さから選択される1つの高さで、壁91に仮保持される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便受け用のボウル部を含む小便器本体と、
前記小便器本体のボウル部に連通する排水トラップと、
排水管が設けられた壁に対して前記小便器本体を仮保持させる仮保持構造と、を備え、
前記仮保持構造は、
前記小便器本体に設けられた係止部と、
前記壁に固定される取付部材と、を含み、
前記係止部が前記取付部材に係止することで、前記小便器本体を、前記排水管を基準とした2つの高さから選択される1つの高さで、前記壁に仮保持するように構成されている、
小便器。
【請求項2】
前記取付部材は、上下に距離をあけて設けられた第1部分と第2部分を含み、
前記係止部は、第1部分と第2部分に対して、択一的に係止される、
請求項1の小便器。
【請求項3】
前記取付部材は、前記排水管に接続される排水フランジである、
請求項1又は2の小便器。
【請求項4】
前記小便器本体の下部に、前記係止部が設けられ、
前記小便器本体の上部には、前記小便器本体を前記壁に固定するための壁掛け部が設けられている、
請求項1の小便器。
【請求項5】
前記排水トラップと前記排水管をつなぐ中間ユニットを、更に備え、
前記中間ユニットは、前記排水トラップからの排水が流入する流入口を有する筒部材を、含み、
前記筒部材は、前記取付部材に対して、第1姿勢と第2姿勢のいずれでも接続可能であり、
前記筒部材が前記第1姿勢にある場合の前記流入口の高さと、前記筒部材が前記第2姿勢にある場合の前記流入口の高さと、は互いに相違する、
請求項1の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、小便器に関し、詳しくは、壁に固定して用いられる小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁に固定して用いられるタイプの小便器が知られている。例えば、特許文献1に開示された小便器は、後方に突出する排水管を一体に有しており、小便器が壁に固定された状態において、小便器から突出する排水管が、壁の孔に挿し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-40743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示が解決しようとする課題は、壁に固定して用いられる小便器において、壁に対して小便器本体を取り付ける作業の自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一様態に係る小便器は、小便受け用のボウル部を含む小便器本体と、前記小便器本体のボウル部に連通する排水トラップと、排水管が設けられた壁に対して前記小便器本体を仮保持させる仮保持構造と、を備える。前記仮保持構造は、前記小便器本体に設けられた係止部と、前記壁に固定される取付部材と、を含み、前記係止部が前記取付部材に係止することで、前記小便器本体を、前記排水管を基準とした2つの高さから選択される1つの高さで、前記壁に仮保持するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、壁に固定して用いられる小便器において、壁に対して小便器本体を取り付ける作業の自由度を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の小便器が壁に固定された状態の正面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、図2の上部を拡大した図である。
図4図4は、図2の下部を拡大した図である。
図5図5は、図4のB-B線断面図である。
図6図6は、同上の小便器の中間ユニットを第1姿勢で取付部材に組み付けた斜視図である。
図7図7は、同上の小便器の下部の斜視図である。
図8図8は、同上の下部の分解斜視図である。
図9図9は、同上の小便器において中間ユニットを第2姿勢とした場合の要部断面図である。
図10図10は、図9のC-C線断面図である。
図11図11は、同上の中間ユニットを第2姿勢で取付部材に組み付けた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.一実施形態
一実施形態の小便器1について、添付図面に基づいて説明する。一実施形態の小便器1は、壁排水式の小便器であり、また、壁固定式の小便器である。以下の説明において用いる前後方向D1、左右方向D2、及び上下方向D3の各方向は、図1等に示されるように、垂直な壁91の表面に小便器1が固定された状態を基準とする。
【0009】
前後方向D1は、壁91と小便器1が並ぶ水平な方向であり、左右方向D2は、上下方向D3及び前後方向D1と直交する方向である。前後方向D1、左右方向D2、及び上下方向D3は、互いに直交する。前後方向D1において、壁91に対して小便器1が位置する向きが前方であり、これの反対が後方である。
【0010】
(小便器の全体)
図2等に示されるように、一実施形態の小便器1は、壁91に固定される小便器本体2と、小便器本体2に接続される排水トラップ3と、排水トラップ3に接続される中間ユニット4と、を備えている。小便器本体2、排水トラップ3、及び中間ユニット4は、合成樹脂製であることが好ましい。加えて、一実施形態の小便器1は、小便器本体2を壁91に仮保持させるための仮保持構造5を備えている。
【0011】
壁91は、床97から上方に立ち上がっている。小便器本体2と床97の間には、上下方向D3において隙間が設けられている。壁91には、排水管95が設けられている。排水管95は、床97よりも上に位置している。排水管95は、排水トラップ3及び中間ユニット4を介して、小便器本体2に連通接続される。
【0012】
(小便器本体)
小便器本体2は、小便を受けるためのボウル部21と、排水部23と、を含む。ボウル部21は、全体として上下に長く形成されており、その下端部に排水部23が設けられている。
【0013】
ボウル部21は、利用者の小便を受けてこれを排水部23に向けて流すように、全体として後方に向けて(つまり小便器本体2に対して壁91が位置する向きに)凹んだ湾曲形状を有している。
【0014】
加えて、小便器本体2は、ボウル部21の左右方向D2の両端縁から後方に向けて延長された左右の側壁221,222と、正面視においてボウル部21の下端部を隠すように設けられた前壁225と、を一体に備えている。左右の側壁221,222と前壁225は、互いに連続している。小便器本体2に接続された排水トラップ3及び中間ユニット4は、小便器本体2の左右の側壁221,222及び前壁225によって隠される。
【0015】
小便器本体2の上部には、ボウル部21の上端部から水を吐出するための吐水装置24が設けられている。吐水装置24は、壁91に固定された止水栓29を通じて供給された排水をボウル部21の上端部に開口した吐水口215にまで供給する給水経路241と、給水経路241に設けられた電磁弁の開閉等を制御する制御部245と、を含む。制御部245は、小便器本体2の上部に設けられた収納室28に、収納されている。
【0016】
図3に示されるように、小便器本体2の上部には、壁掛け部25が設けられている。壁掛け部25は、壁91に対して小便器本体2を壁掛け式で固定するための部分である。一実施形態では、小便器本体2に上部に設けられた固定金具26が、壁掛け部25を構成している。
【0017】
固定金具26は、壁91の表面に当てられる固定片264を含む。固定片264には前後方向D1に貫通した複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔を通じて壁91にねじ等の固定具を打ち込むことで、小便器本体2の上部が壁91に固定される。
【0018】
(排水トラップ)
図4図7、及び図8に示されるように、排水トラップ3は、ボウル部21の排水部23に対してその下方から連通接続されるU字管部31と、U字管部31の下流端から後方に延長された直管部32と、を一体に有する。
【0019】
排水トラップ3の上流端(つまり、U字管部31の上流端)が、ボウル部21の排水部23に連通接続される。排水トラップ3の下流端(つまり、直管部32の下流端)は、後方に開放されている。排水トラップ3が排水部23に接続された状態において、直管部32は、下流に向けて下り勾配となる。
【0020】
(中間ユニット)
中間ユニット4は、排水トラップ3の下流端に連通接続される壁排水用のユニットであり、図4及び図6等に示されるように、取付部材7と組み合わせて用いられる。取付部材7は、壁91に固定される部材であって、一実施形態では排水フランジ7Aで構成されている。
【0021】
中間ユニット4は、筒部材41と、筒部材41の上流端に接続される円環状の接続部材45とを備える。
【0022】
(筒部材)
筒部材41は、流入口411及び流出口412を、前後方向D1において互いに反対側に有する。流入口411は、小便器本体2からの排水が排水トラップ3を介して流入する開口であり、筒部材41の前端部に設けられている。流出口412は、流入口411を通じて筒部材41に流入した排水が流出する開口であり、筒部材41の後端部に設けられている。
【0023】
流入口411と流出口412では、上下方向D3の開口幅が相違している。流入口411は真円状の開口であり、流出口412は、上下に長い楕円状の開口である。ここでの真円の文言は、厳密な意味での真円に限定されず、略真円なものを含む。同様に、ここでの楕円の文言は、厳密な意味での楕円に限定されず、略楕円なものを含む。流入口411の中心軸と流出口412の中心軸では、互いに高さが異なる。
【0024】
筒部材41は、小径部414と、小径部414よりも大きな内径を有する大径部416と、小径部414と大径部416をつなぐ拡径部415と、を一体に有する。筒部材41において、小径部414、拡径部415、及び大径部416はこの順で上流側から下流側につながり、小径部414の上流端開口が流入口411を構成し、大径部416の下流端開口が流出口412を構成する。大径部416の下流端部は、上下に長い楕円状の外形を有する。
【0025】
(接続部材)
接続部材45は、ゴムで成形された円環状の弾性部材であって、筒部材41の上流端部に対してその外側から嵌め込まれる外側部分452と、筒部材41の流入口411に対して上流側から挿し込まれる内側部分454と、を一体に備える。
【0026】
内側部分454は、円環状の外形を有する外側部分452の内側に位置しており、下流側の部分ほど徐々に径が小さくなる形状を有する。図4に示されるように、接続部材45の内側部分454の内側に、排水トラップ3の下流端部(つまり直管部32の下流端部)が前方から挿し込まれることに伴って、内側部分454は弾性変形を生じる。
【0027】
(取付部材)
取付部材7は、壁91の排水管95に接続される排水フランジ7Aで、構成されている。
【0028】
排水フランジ7Aは、前後方向D1に貫通した円筒状の筒部73と、筒部73の上流端部から径方向外側に延設されたフランジ部74と、フランジ部74の前面から突出した位置決め用のリブ75と、を有する。
【0029】
筒部73は、壁91の排水管95に対して前方から挿し込まれる。一実施形態では、筒部73と排水管95の間に、両者をつなぐ筒状のアダプタ93が介在している。
【0030】
筒部73は、流入口731と流出口732を、前後方向D1において互いに反対側に有する。流入口731は、中間ユニット4の筒部材41からの排水が流入する開口である。流出口732は、流入口731を通じて筒部73に流入した排水が流出する開口である。
【0031】
フランジ部74は、正面視において矩形状の外形を有する。フランジ部74には、前後方向D1に貫通する複数の貫通孔740が設けられている。各貫通孔740を通じて壁91に固定具を打ち込むことで、排水フランジ7Aが壁91に固定される。
【0032】
リブ75は、上下に長い楕円環状のリブである。リブ75は、その内側に筒部材41の大径部416が嵌まり込むように設けられている。
【0033】
排水フランジ7Aをその前方から見たとき、排水フランジ7Aの流入口731は、楕円環状であるリブ75の内側に位置する。真円状の外形を有する流入口731の中心軸と、楕円環状であるリブ75の中心軸と、は上下方向D3に所定の距離だけずれて位置する。正面視において、真円状である流入口731の中心は、楕円環状であるリブ75の中心から下方に所定の距離だけずれた位置にある。
【0034】
中間ユニット4は、排水フランジ7Aに対して、2つの姿勢でのみ接続可能である。該2つの姿勢は、図6等に示される第1姿勢P1と、図11等に示される第2姿勢P2である。
【0035】
つまり、中間ユニット4が第1姿勢P1にあるときに、中間ユニット4の筒部材41を、排水フランジ7Aに連通接続させることが可能であるとともに、中間ユニット4が第2姿勢P2にあるときにも、中間ユニット4の筒部材41を排水フランジ7Aに連通接続させることが可能である。
【0036】
(第1姿勢)
中間ユニット4が第1姿勢P1にあるとき、流入口411の上端は、流出口412の上端と同程度の高さにあり、流入口411の下端は、流出口412の下端よりも高い位置にある。筒部材41の流入口411の中心軸C1は、排水フランジ7Aの流入口731の中心軸C2よりも、所定の距離d1だけ高く位置する。所定の距離d1は、例えば20mmである。
【0037】
中間ユニット4を第1姿勢P1で排水フランジ7Aに接続させたときには、壁91の排水管95が比較的低い位置にあるとき(例えば、排水管95の中心軸が床97から205mmの高さにあるとき)に、小便器本体2を、標準的な高さに設置することができる。
【0038】
(第2姿勢)
図9から図11には、中間ユニット4が第2姿勢P2にあるときが示されている。中間ユニット4の第1姿勢P1と第2姿勢P2は、互いに反転した姿勢である。第1姿勢P1にある中間ユニット4を、自身の中心軸まわりに180°回転させたときの中間ユニット4の姿勢が、第2姿勢P2である。
【0039】
中間ユニット4の筒部材41の大径部416は、中間ユニット4が第1姿勢P1と第2姿勢P2のいずれの姿勢にあるときにも、排水フランジ7Aのリブ75の内側に嵌まり込んで位置決めされる。
【0040】
中間ユニット4が第2姿勢P2にあるとき、筒部材41の流入口411の中心軸C1は、排水フランジ7Aの流入口731の中心軸C2と同じ高さにある。
【0041】
中間ユニット4を第2姿勢P2で排水フランジ7Aに接続させたときには、中間ユニット4を第1姿勢P1で排水フランジ7Aに接続させたときと比較して、筒部材41の流入口411が、排水フランジ7Aを基準として所定の距離d1だけ低く位置することになる。
【0042】
そのため、中間ユニット4を第2姿勢P2で排水フランジ7Aに接続させることで、壁91の排水管95が比較的高い位置にあるとき(例えば、排水管95の中心軸が床97から225mmの高さにあるとき)にも、小便器本体2を、標準的な高さに設置することができる。
【0043】
(係止体)
図6等に示されるように、排水フランジ7Aには、係止体76が設けられている。係止体76は、フランジ部74の前面のうち左右方向D2においてリブ75を挟んだ両側の部分から、それぞれ前方に突出している。左右の係止体76は、以下に述べる共通の構造を有する。
【0044】
係止体76は、上下方向D3に距離をあけて位置する凸状の第1部分71と第2部分72を含む。第1部分71と第2部分72の上下方向D3の距離は、第1部分71と第2部分72の中心間の距離である。この距離は、所定の距離d1と一致することが好ましい。
【0045】
第1部分71は、十字状に交差した横片712と縦片714を有する。第1部分71のうち横片712と縦片714の交差する部分が、第1部分71の中心である。横片712は、フランジ部74の前面から前方に突出するとともに左右方向D2に伸びたリブ状の部分である。縦片714は、フランジ部74の前面から前方に突出するとともに上下方向D3に伸びたリブ状の部分である。
【0046】
第2部分72は、十字状に交差した横片722と縦片724を有する。第2部分72のうち横片722と縦片724の交差する部分が、第2部分72の中心である。横片722は、フランジ部74の前面から前方に突出するとともに左右方向D2に伸びたリブ状の部分である。縦片724は、フランジ部74の前面から前方に突出するとともに上下方向D3に伸びたリブ状の部分である。
【0047】
一実施形態において、第1部分71の縦片714と、第2部分72の縦片724と、は直線状に連続している。また、第1部分71の横片712と、第2部分72の横片722と、は共に楕円環状のリブ75と連続している。
【0048】
(仮保持構造)
小便器本体2を壁91に仮保持させるための仮保持構造5は、小便器本体2の下部の補強部材8に設けられた係止部6と、壁91に固定される上記の排水フランジ7Aと、を含む。
【0049】
(補強部材)
図7及び図8に示されるように、補強部材8は、樹脂シートを用いて成形された小便器本体2を補強する部材であって、小便器本体2の左右の側壁221,222のそれぞれの下部に固定された状態で、排水トラップ3の下流部を支持するように構成されている。
【0050】
補強部材8は、左右方向に長い矩形状の主体部81と、主体部81に連設された保持部83と、を有する。主体部81の左右方向D2の両端部には、左右の側壁221,222に固定される固定端部811,812が設けられている。主体部81の左右の固定端部811,812は、小便器本体2の左右の側壁221,222の内側面に対して、例えば接着剤を用いて固定される。
【0051】
保持部83は、主体部81から前方に突出するとともに、主体部81から上方に突出するように設けられている。保持部83は、排水トラップ3の下流端部を保持する第1保持部831と、中間ユニット4を保持する第2保持部832と、を含む。
【0052】
第1保持部831は、排水トラップ3の直管部32が前方から挿し込まれるように、前後方向D1に貫通した筒状の形状を有する。第2保持部832は、中間ユニット4が収容されるように、上方及び後方に開放された凹状の形状を有している。第1保持部831の貫通孔と、第2保持部832の凹みと、は互いに連通している。
【0053】
(係止部)
仮保持構造5の一部を構成する係止部6は、補強部材8の主体部81及び保持部83と一体に設けられている。具体的には、左右方向D2において保持部83を挟んだ両側に、係止部6が設けられている。
【0054】
左右の係止部6は、取付部材7の左右の係止体76に対して、前方から挿し込み可能に構成されている。左右の係止部6は、以下に述べる共通の構造を有する。
【0055】
係止部6は、対応する係止体76の第1部分71と第2部分72に対して、択一的に挿し込み可能に構成されている。係止部6は、後方に開放された溝65を有する。溝65を、前後方向D1と直交する面で切断した断面は、十字状である(図5を参照)。
【0056】
溝65は、十字状に交差した横溝652と縦溝654を有する。横溝652は、左右方向D2に伸びるとともに後方に開放された溝である。縦溝654は、上下方向D3に伸びるとともに後方に開放された溝である。縦溝654は、更に上方及び下方に開放されている。
【0057】
係止部6は、溝65の下方に位置する空所67を、更に有する。空所67は、溝65と連通しており、より具体的には、溝65の縦溝654と連通している。
【0058】
壁91の排水管95とこれに接続された排水フランジ7Aが比較的低い位置にあり、これに対応するために中間ユニット4が第1姿勢P1で装着されているとき、係止部6が有する左右の十字状の溝65には、排水フランジ7Aの左右の第1部分71が、それぞれ挿し込まれる(図5を参照)。排水フランジ7Aの左右の第2部分72は、係止部6の左右の空所67にそれぞれ収容される。これにより、小便器本体2は、補強部材8及び排水フランジ7Aを介して壁91に仮保持される。
【0059】
換言すると、小便器本体2は、壁91に対して、上下方向D3及び左右方向D2の両方で位置決めされる。詳細には、排水フランジ7Aの第1部分71の横片712が、溝65の横溝652に挿し込まれることによって、壁91に対する小便器本体2の上下方向D3の位置決めがなされる。排水フランジ7Aの第1部分71の縦片714が、溝65の縦溝654に挿し込まれることによって、壁91に対する小便器本体2の左右方向D2の位置決めがなされる。小便器本体2は、前後方向D1においては、壁91に対する所定範囲内での相対移動が可能である。
【0060】
壁91の排水管95とこれに接続された排水フランジ7Aが比較的高い位置にあり、これに対応するために中間ユニット4が第2姿勢P2で装着されているとき、係止部6が有する左右の十字状の溝65には、排水フランジ7Aの左右の第2部分72が、それぞれ挿し込まれる(図10を参照)。排水フランジ7Aの左右の第1部分71は、係止部6の上方に配置される。これにより、小便器本体2は、補強部材8及び排水フランジ7Aを介して壁91に仮保持される。
【0061】
換言すると、小便器本体2は、壁91に対して、上下方向D3及び左右方向D2の両方で位置決めされる。詳細には、排水フランジ7Aの第2部分72の横片722が、溝65の横溝652に挿し込まれることによって、壁91に対する小便器本体2の上下方向D3の位置決めがなされる。排水フランジ7Aの第2部分72の縦片724が、溝65の縦溝654に挿し込まれることによって、壁91に対する小便器本体2の左右方向D2の位置決めがなされる。小便器本体2は、前後方向D1においては、壁91に対する所定範囲内での相対移動が可能である。
【0062】
(施工方法)
一実施形態の小便器1を施工する方法は、以下の第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、及び第5工程を備える。
【0063】
第1工程では、排水トラップ3の上流端部を、例えば接着剤を用いて、小便器本体2の排水部23に対して下方から固定する(図8を参照)。加えて、補強部材8の左右の固定端部811,812を、例えば接着剤を用いて、小便器本体2の左右の側壁221,222の内面下部にそれぞれ固定する。このとき、排水トラップ3の下流端部を、補強部材8の第1保持部831に挿し通す。
【0064】
第2工程では、中間ユニット4を、排水フランジ7Aに装着する(図6及び図11を参照)。このとき、壁91の排水管95が比較的低い位置にある場合には、中間ユニット4を第1姿勢P1として、排水フランジ7Aの環状のリブ75内に嵌め込む。壁91の排水管95が比較的高い位置にある場合には、中間ユニット4を第2姿勢P2として、排水フランジ7Aの環状のリブ75内に嵌め込む。中間ユニット4の筒部材41は、例えば接着剤を用いて、排水フランジ7Aのリブ75に固定することが好ましい。
【0065】
第3工程では、中間ユニット4が装着された排水フランジ7Aを、壁91に固定する。このとき、排水フランジ7Aの筒部73が、アダプタ93を介して排水管95に挿し込まれ、排水フランジ7Aは排水管95に接続される(図4を参照)。
【0066】
第4工程では、排水トラップ3及び補強部材8が装着された小便器本体2の下部を、排水フランジ7Aに仮保持させる。詳細には、以下に述べる係合によって、小便器本体2の下部を排水フランジ7Aに仮保持させる。
【0067】
壁91の排水管95及び排水フランジ7Aが比較的低い位置にあり、これに対応して中間ユニット4が第1姿勢P1で排水フランジ7Aに装着されている場合には、小便器本体2に固定された補強部材8の左右の係止部6が有する溝65と、壁91に固定された排水フランジ7Aが左右に有する第1部分71と、をそれぞれ係合させる。
【0068】
壁91の排水管95及び排水フランジ7Aが比較的高い位置にあり、これに対応して中間ユニット4が第2姿勢P2で排水フランジ7Aに装着されている場合には、小便器本体2に固定された補強部材8の左右の係止部6が有する溝65と、壁91に固定された排水フランジ7Aが左右に有する第2部分72と、をそれぞれ係合させる。
【0069】
第5工程では、排水フランジ7Aに対して仮保持された小便器本体2の上部を、壁91に固定する。詳細には、小便器本体2の上部の壁掛け部25を構成する固定金具26を、壁91に固定することで、小便器本体2を壁91に本固定する(図3を参照)。
【0070】
2.変形例
上記の実施形態は、本開示の小便器1の一実施形態に過ぎず、同様の作用効果を奏する範囲内において、適宜に設計変更を行うことが可能である。以下に列挙する変形例においては、上記の実施形態と同様の構成について同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0071】
上記の実施形態では、取付部材7が排水フランジ7Aで構成されているが、排水フランジ7Aとは別部材で取付部材7が構成されてもよい。この場合の取付部材7は、壁91のうち排水フランジ7Aの周囲に位置する部分に、固定されることが好ましい。
【0072】
上記の実施形態では、仮保持構造5が、小便器本体2に装着される補強部材8の係止部6と、壁91に装着される取付部材7と、を含むが、仮保持構造5の構成はこれに限定されない。仮保持構造5は、小便器本体2を、排水管95を基準とした2つの高さから選択される1つの高さで、壁91に仮保持できる限りにおいて、適宜の構成が採用され得る。
【0073】
上記の実施形態では、小便器本体2の下部に設けられた(詳細には補強部材8に設けられた)係止部6が、凹状の溝65を有し、取付部材7が、凸状の第1部分71と第2部分72を有しているが、各部の凹凸形状はこれに限定されない。例えば、係止部6がリブのような凸状の部分を有し、この凸状の部分が、取付部材7が有する凹状の第1部分71と第2部分72に対して択一的に係止されてもよい。
【0074】
上記の実施形態では、小便器本体2の上部に壁掛け部25が設けられているが、このような壁掛け部25が設けられることが必須ではない。小便器本体2を壁91に本固定することができる限りにおいて、適宜の固定構造が採用され得る。
【0075】
また、上記の実施形態の小便器1は、自身の姿勢変更によって流入口411の高さを2段階で変更可能な中間ユニット4を備えているが、このような中間ユニット4を備えることが必須ではなく、中間ユニット4を介さずに排水トラップ3と排水管95をつなぐことも可能である。
【0076】
3.まとめ
以上、実施形態及び各種変形例に基づいて説明したように、第1態様の小便器(1)は、小便受け用のボウル部(21)を含む小便器本体(2)と、小便器本体(2)のボウル部(21)に連通する排水トラップ(3)と、排水管(95)が設けられた壁(91)に対して小便器本体(2)を仮保持させる仮保持構造(5)と、を備える。仮保持構造(5)は、小便器本体(2)に設けられた係止部(6)と、壁(91)に固定される取付部材(7)と、を含み、係止部(6)が取付部材(7)に係止することで、小便器本体(2)を、排水管(95)を基準とした2つの高さから選択される1つの高さで、壁(91)に仮保持するように構成されている。
【0077】
この態様によれば、小便器本体(2)を、排水管(95)を基準として比較的高い位置に仮保持させることができ、また、排水管(95)を基準として比較的低い位置に仮保持させることもできる。したがって、この態様によれば、壁(91)に対して小便器本体(2)を取り付け作業を、高い自由度で実施することができる。
【0078】
第2態様の小便器(1)では、第1態様において、取付部材(7)は、上下に距離をあけて設けられた第1部分(71)と第2部分(72)を含む。係止部(6)は、第1部分(71)と第2部分(72)に対して、択一的に係止される。
【0079】
この態様によれば、取付部材(7)に第1部分(71)と第2部分(72)を設けたシンプルな構造によって、小便器本体(2)の取り付け作業を、高い自由度で実施することが可能となる。
【0080】
第3態様の小便器(1)では、第1態様又は第2態様において、取付部材(7)は、排水管(95)に接続される排水フランジ(7A)である。
【0081】
この態様によれば、排水フランジ(7A)を利用したシンプルな構造で、小便器本体(2)の取り付け作業を、高い自由度で実施することが可能となる。
【0082】
第4態様の小便器(1)では、第1態様から第3態様のいずれか1つにおいて、小便器本体(2)の下部に、係止部(6)が設けられている。小便器本体(2)の上部には、小便器本体(2)を壁(91)に固定するための壁掛け部(25)が設けられている。
【0083】
この態様によれば、小便器本体(2)の下部を壁(91)に仮保持した状態で、小便器本体(2)の上部を壁(91)に本固定することができる。
【0084】
第5態様の小便器(1)は、第1態様から第4態様のいずれか1つにおいて、排水トラップ(3)と排水管(95)をつなぐ中間ユニット(4)を、更に備える。中間ユニット(4)は、排水トラップ(3)からの排水が流入する流入口(411)を有する筒部材(41)を、含む。筒部材(41)は、取付部材(7)に対して、第1姿勢(P1)と第2姿勢(P2)のいずれでも接続可能である。筒部材(41)が第1姿勢(P1)にある場合の流入口(411)の高さと、筒部材(41)が第2姿勢(P2)にある場合の流入口(411)の高さと、は互いに相違する。
【0085】
この態様によれば、排水管(95)に対する小便器本体(2)の高さと、筒部材(41)の姿勢と、を選択することによって、壁(91)に対する小便器本体(2)の取り付け作業を、高い自由度で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 小便器
2 小便器本体
21 ボウル部
25 壁掛け部
3 排水トラップ
4 中間ユニット
41 筒部材
411 流入口
5 仮保持構造
6 係止部
7 取付部材
7A 排水フランジ
71 第1部分
72 第2部分
91 壁
95 排水管
P1 第1姿勢
P2 第2姿勢
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11