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特開2024-172633呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172633
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/113 20060101AFI20241205BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241205BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61B5/113
A61B5/11 110
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090476
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 達男
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰子
(72)【発明者】
【氏名】井上 謙一
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB33
(57)【要約】
【課題】 人の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】 呼吸推定システム2は、信号取得部21と、オートエンコーダ22と、呼吸推定部23と、を備える。信号取得部21は、人H1で反射された電波を受信した電波センサ1から、受信した電波に応じたセンサ信号Y1を取得する。オートエンコーダ22は、センサ信号Y1に応じた復元信号Y2を出力する学習モデルM1を有する。学習モデルM1は人H1の呼吸が正常であれば復元信号Y2をセンサ信号Y1に一致又は類似させるように機械学習によって構築される。呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2とを比較した比較結果に基づいて、呼吸が異常であるか否かを推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人で反射された電波を受信した電波センサから、受信した前記電波に応じたセンサ信号を取得する信号取得部と、
前記センサ信号に応じた復元信号を出力する学習モデルを有し、前記学習モデルは前記人の呼吸が正常であれば前記復元信号を前記センサ信号に一致又は類似させるように機械学習によって構築された、オートエンコーダと、
前記センサ信号と前記復元信号とを比較した比較結果に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを推定する呼吸推定部と、を備える
呼吸推定システム。
【請求項2】
前記呼吸推定部は、前記センサ信号と前記復元信号との一致度に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを推定する
請求項1の呼吸推定システム。
【請求項3】
前記センサ信号に基づいて検出エリアにおける前記人の状態を検出する人状態検出部と、
前記呼吸推定部の推定結果及び前記人状態検出部の検出結果に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを判定する呼吸判定処理を行う出力判定部と、を更に備える
請求項1の呼吸推定システム。
【請求項4】
前記人状態検出部は、前記人の状態として前記検出エリアにおける前記人の存在を検出する存在検出部を有し、
前記出力判定部は、前記呼吸判定処理において、前記存在検出部の検出結果に基づいて、前記呼吸推定部の推定結果を有効又は無効とする
請求項3の呼吸推定システム。
【請求項5】
前記出力判定部は、前記呼吸判定処理において、
前記存在検出部が前記検出エリアにおける前記人の存在を検出し、かつ、前記呼吸推定部が前記呼吸は異常であると推定したとき、前記呼吸推定部の推定結果を有効として、前記呼吸は異常であると判定し、
前記存在検出部が前記検出エリアにおける前記人の存在を検出せず、かつ、前記呼吸推定部が前記呼吸は異常であると推定したとき、前記呼吸推定部の推定結果を無効として、前記呼吸は異常でないと判定する
請求項4の呼吸推定システム。
【請求項6】
前記人状態検出部は、前記人の状態として、前記検出エリアにおける前記人の接近及び離反を検出する接近検出部を更に有し、
前記出力判定部は、
前記接近検出部による前記接近の検出が終了してから前記離反を検出するまでの期間を候補期間とし、
前記候補期間において前記呼吸判定処理を行う
請求項3の呼吸推定システム。
【請求項7】
前記人状態検出部は、前記人の状態として、前記検出エリアにおける前記人の寝返りを検出する寝返り検出部を有し、
前記出力判定部は、前記呼吸判定処理において、前記寝返り検出部の検出結果に基づいて、前記呼吸推定部の推定結果を有効又は無効とする
請求項3の呼吸推定システム。
【請求項8】
前記出力判定部は、前記呼吸判定処理において、
前記寝返り検出部が前記人の寝返りを検出せず、かつ、前記呼吸推定部が前記呼吸は異常であると推定したとき、前記呼吸推定部の推定結果を有効として、前記呼吸は異常であると判定し
前記寝返り検出部が前記人の寝返りを検出し、かつ、前記呼吸推定部が前記呼吸は異常であると推定したとき、前記呼吸推定部の推定結果を無効として、前記呼吸は異常でないと判定する
請求項7の呼吸推定システム。
【請求項9】
請求項1の呼吸推定システムと、
前記電波センサと、を備える
センサシステム。
【請求項10】
人で反射された電波を受信した電波センサから、受信した前記電波に応じたセンサ信号を取得する信号取得ステップと、
前記人の呼吸が正常であれば復元信号を前記センサ信号に一致又は類似させるように機械学習によって構築された学習モデルを用いて、前記センサ信号に応じた前記復元信号を出力する復元信号生成ステップと、
前記センサ信号と前記復元信号とを比較した比較結果に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを推定する呼吸推定ステップと、を含む
呼吸推定方法。
【請求項11】
コンピュータシステムに、請求項10記載の呼吸推定方法を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、睡眠中の呼吸や心拍を非接触で測定することで、睡眠時無呼吸症候群を含む身体の情報を検出する身体情報測定装置を開示している。
【0003】
身体情報測定装置は、マイクロ波送受信装置と、電波解析部とを具備する。マイクロ波送受信装置は、検出対象である人に向けて電波を照射し、照射された電波が人で反射されて生成される身体情報含有電波を受信する。電波解析部は、マイクロ波送受信装置で受信した電波を解析することで、検出対象の無呼吸状態を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-210137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように人の呼吸の異常を推定するシステムにおいては、人の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システム構築の容易化が求められている。
【0006】
本開示の目的は、人の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る呼吸推定システムは、信号取得部と、オートエンコーダと、呼吸推定部と、を備える。前記信号取得部は、人で反射された電波を受信した電波センサから、受信した前記電波に応じたセンサ信号を取得する。前記オートエンコーダは、前記センサ信号に応じた復元信号を出力する学習モデルを有し、前記学習モデルは前記人の呼吸が正常であれば前記復元信号を前記センサ信号に一致又は類似させるように機械学習によって構築される。前記呼吸推定部は、前記センサ信号と前記復元信号とを比較した比較結果に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを推定する。
【0008】
本開示の一態様に係るセンサシステムは、上述の呼吸推定システムと、前記電波センサと、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る呼吸推定方法は、信号取得ステップと、復元信号生成ステップと、呼吸推定ステップと、を含む。前記信号取得ステップは、人で反射された電波を受信した電波センサから、受信した前記電波に応じたセンサ信号を取得する。前記復元信号生成ステップは、前記人の呼吸が正常であれば復元信号を前記センサ信号に一致又は類似させるように機械学習によって構築された学習モデルを用いて、前記センサ信号に応じた前記復元信号を出力する。前記呼吸推定ステップは、前記センサ信号と前記復元信号とを比較した比較結果に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを推定する。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上述の呼吸推定方法を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本開示は、人の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態における呼吸推定システムを備えるセンサシステムを示すブロック図である。
図2図2は、同上の呼吸推定システムが備える学習モデルを示す図である。
図3図3は、第1変形例の呼吸推定システムを示すブロック図である。
図4図4は、第2変形例の呼吸推定システムを示すブロック図である。
図5図5は、同上の候補期間を示す図である。
図6図6は、同上の出力判定部の状態を示す状態遷移図である。
図7図7は、第3変形例の呼吸推定システムを示すブロック図である。
図8図8は、呼吸推定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態は、一般に、呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、電波センサを用いて人の呼吸の状態を推定する呼吸推定システム、センサシステム、呼吸推定方法、及びプログラムに関する。
【0014】
以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、各実施形態及び変形例に限定されない。これらの実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0015】
実施形態
(1)概要
近年、人の生体情報を取得、蓄積、分析して、健康管理、空間制御などに利用するサービスが考えられている。生体情報は、例えば人の呼吸、心拍などの情報である。
【0016】
生体情報のセンシング手段としては、人のプライバシー、人への非接触などの観点から電波センサが適している。電波センサによるセンシングは、人のプライバシーを保護しやすい。また、電波センサは、非接触で人の生体情報をセンシングできるので、接触式のセンシング手段に比べて、継続的なセンシングが比較的容易である。例えば、カメラなどは、人のプライバシーを配慮するとセンシング手段としては使用し難い。リストバンド型又は腕時計型などのウェアラブルセンサは、人の身体に装着する必要があり、ウェアラブルセンサによる継続的なセンシングは、装着が面倒である又は装着し忘れるなどの理由によって難しい。
【0017】
人の生体情報を利用したサービスとしては、人の呼吸の状態を推定するサービスがある。推定対象となる呼吸の状態には、例えば睡眠時無呼吸症候群などの異常呼吸がある。
【0018】
そこで、本実施形態では、電波センサが出力するセンサ信号を用いて人の呼吸の異常を推定する呼吸推定システムについて説明する。
【0019】
図1に示すセンサシステム10は、電波センサ1、及び呼吸推定システム2を備える。本実施形態の呼吸推定システム2は、呼吸推定装置で構成される。
【0020】
呼吸推定システム2は、信号取得部21と、オートエンコーダ22と、呼吸推定部23と、を備える。信号取得部21は、人H1で反射された電波を受信した電波センサ1から、受信した電波に応じたセンサ信号Y1を取得する。オートエンコーダ22は、センサ信号Y1に応じた復元信号Y2を出力する学習モデルM1を有する。学習モデルM1は、人H1の呼吸が正常であれば復元信号Y2をセンサ信号Y1に一致又は類似させるように機械学習によって構築されている。呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2とを比較した比較結果に基づいて、呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であるか否かを推定する。
【0021】
上述の構成を備える呼吸推定システム2は、人H1の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システム構築の容易化を図ることができる。
【0022】
(2)センサシステム
図1は、センサシステム10の構成を示す。センサシステム10は、電波センサ1、呼吸推定システム2、及びユーザ装置3を備える。
【0023】
(2.1)電波センサ
電波センサ1は、検出エリアW1内に電波(送信波)を送信し、検出エリアW1で反射された電波(受信波)を受信する。そして、電波センサ1は、受信波に応じた電気信号を、センサ信号Y1として呼吸推定システム2へ出力する。センサ信号Y1の波形は、検出エリアW1内の物体の位置及び動きなどに応じた波形となる。
【0024】
電波センサ1は、人H1が睡眠をとるための部屋R1に設置される。部屋R1は、例えば住戸(戸建住宅、集合住宅)の寝室、病院の病室、又は検査施設の検査室などである。部屋R1には、ベッド又は布団などの寝具B1が置かれている。人H1は、部屋R1に入り、寝具B1に横たわって就寝する。電波センサ1は、例えば寝具B1の上方の天井付近に設置され、下方の寝具B1を含む検出エリアW1に向かって送信波を出力する。あるいは、電波センサ1は、寝具B1で横たわる人H1の頭部に対して上側に位置する壁面(例えばベッドのヘッドボードの上方の壁面)や、寝具B1の横に置いているサイドボードなどに設置されてもよい。
【0025】
このように、電波センサ1の検出エリアW1には、人H1が就寝する寝具B1が設置されており、電波センサ1は、寝具B1で就寝している人H1に向かって送信波を送信し、人H1で反射した受信波を受信できる。センサ信号Y1の波形は、検出エリアW1における人H1の状態に応じた波形となる。人H1の状態は、人H1の呼吸、存在、移動、位置、及び動きなどである。すなわち、電波センサ1は、人H1の呼吸、存在、移動、位置、及び動きなどに応じた波形を有するセンサ信号Y1を出力する。例えば、人H1が寝具B1に安静に横たわっていても、人H1の体表面は呼吸の動作で細かく動いているので、センサ信号Y1の波形は、検出エリアW1における人H1の呼吸に応じた波形となる。
【0026】
電波センサ1は、ドップラ方式の電波センサ、及びFMCW(Frequency-Modulated Continuous-Wave)方式の電波センサなどのいずれであってもよい。送信波は、例えば、所定周波数が24.15GHzのミリ波である。なお、送信波は、ミリ波に限らず、マイクロ波でもよく、送信波の周波数は、特定の値に限定されるものではない。
【0027】
電波センサ1がドップラ方式の電波センサであれば、電波センサ1は、所定周波数の電波を送信波として検出エリアW1に向けて送信して、検出エリアW1内の人H1で反射された電波を受信波として受信する。そして、電波センサ1は、送信波と受信波との周波数の差分に相当するドップラ周波数のセンサ信号Y1を呼吸推定システム2へ出力する。呼吸推定システム2は、ドップラ周波数に基づいて人H1に関する速度(体表面の動きの速度、移動速度など)の情報を求め、速度及び速度の時間変化などに基づいて、人H1の状態を判別できる。
【0028】
電波センサ1がFMCW方式の電波センサであれば、電波センサ1は、周波数(送信周波数)が時間の経過に伴って変化する送信波を送信し、周波数(受信周波数)が時間の経過に伴って変化する受信波を受信する。そして、電波センサ1は、送信周波数と受信周波数との周波数差に等しい周波数(ビート周波数)のビート信号をセンサ信号Y1として呼吸推定システム2へ出力する。この場合、呼吸推定システム2は、ビート周波数に基づいて人H1までの距離に関する情報を求め、距離及び距離の時間変化などに基づいて、人H1の状態を判別できる。
【0029】
(2.2)呼吸推定システム
呼吸推定システム2は、信号取得部21、オートエンコーダ22、呼吸推定部23、及び出力部24を備える。そして、呼吸推定システム2は、センサ信号Y1に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを判定する。すなわち、呼吸推定システム2は、検出エリアW1に存在する人H1の呼吸が異常であるか否かを判定する。本実施形態では、特に睡眠時の人H1が睡眠時無呼吸症候群であるか否かを判定する。
【0030】
呼吸推定システム2は、コンピュータシステムを備えることが好ましい。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における呼吸推定システム2の機能の少なくとも一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリにあらかじめ記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む一ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1乃至複数の電子回路で構成される。
【0031】
コンピュータシステムは、1台のコンピュータ装置に限らず、互いに連携した複数台のコンピュータ装置で実現されてもよい。また、コンピュータシステムは、クラウドコンピューティングシステムとして構築されてもよい。
【0032】
(2.2.1)信号取得部
信号取得部21は、電波センサ1からセンサ信号Y1を受け取り、センサ信号Y1をオートエンコーダ22及び呼吸推定部23に引き渡すインタフェース機能を有する。
【0033】
例えば、信号取得部21は、センサ信号Y1がアナログ信号であれば、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換機能を有する。また、信号取得部21は、センサ信号Y1に含まれる不要な成分を抑制するフィルタリング機能、及びセンサ信号Y1を増幅する増幅機能の少なくとも一方を有していてもよい。
【0034】
(2.2.2)オートエンコーダ
オートエンコーダ22は、信号取得部21を介してセンサ信号Y1を受け取り、受け取ったセンサ信号Y1に応じた復元信号Y2を出力する学習モデルM1を有する。学習モデルM1は、人H1の呼吸が正常であれば復元信号Y2をセンサ信号Y1に一致又は類似させるように機械学習によって予め構築されている。
【0035】
具体的に図2に示すように、学習モデルM1は、入力層L1、中間層(隠れ層)L2、及び出力層L3を備えるニューラルネットワークを含む。ニューラルネットワークは、入力層L1における入力データを次元圧縮するエンコーダ機能、及び次元圧縮されたデータから元の次元の出力データを出力層L3に生成するデコーダ機能を有するアルゴリズムを実行する。このアルゴリズムは、入力データを次元圧縮して重要な特徴量を抽出した後、抽出した特徴量から元の次元を有する出力データを生成する。そして、出力層L3における出力データが入力層L1における入力データに一致するように、又は出力データが入力データに近付くように、学習によって中間層L2が予め決定されている。すなわち、中間層L2における各エッジの重みは、学習によって予め設定されている。
【0036】
学習モデルM1を構築するための学習は、正常呼吸を行う人で反射した受信波によるセンサ信号(正常センサ信号)を学習データとして用いる。すなわち、学習モデルM1の学習は、異常呼吸を行う人で反射した受信波によるセンサ信号(異常センサ信号)を学習データとして用いない教師なし学習である。学習モデルM1は、教師なし学習によって予め構築される。
【0037】
学習モデルM1の精度を向上させ、学習モデルM1による多様な人への対応を可能とするためには、より多くの学習データを用いることが好ましい。しかしながら、異常センサ信号を学習データとして用いる教師あり学習では、正解ラベル付きの学習データとして異常センサ信号のデータを収集するために、例えば睡眠時無呼吸症候群などの異常呼吸の疑いで検査入院している被験者を対象にして、センサ信号のデータを収集する必要がある。このため、教師あり学習では、異常センサ信号を収集する手間がかかり、多くの正解ラベル付きの学習データを収集することは困難であった。
【0038】
一方、本実施形態では、正常センサ信号を学習データとして用いる教師なし学習によって学習モデルM1を構築するので、正常センサ信号のデータを学習データとして収集すればよい。正常センサ信号を収集することは、異常センサ信号を収集することに比べて容易であり、多くの学習データを容易に収集できる。したがって、教師なし学習によって学習モデルM1を構築することで、学習モデルM1の精度を向上させ、学習モデルM1による多様な人への対応が可能となる。さらに、教師なし学習によって学習モデルM1を構築することで、異常呼吸であるか否かを推定するための学習モデルM1を容易に構築することができる。
【0039】
上述のように構築された学習モデルM1では、センサ信号Y1が正常センサ信号であれば(異常センサ信号でなければ)、学習モデルM1が出力する復元信号Y2の波形は、センサ信号Y1の波形に一致又は類似したものになる。また、センサ信号Y1が異常センサ信号であれば、学習モデルM1が出力する復元信号Y2の波形は、センサ信号Y1の波形とは異なるものになる。
【0040】
(2.2.3)呼吸推定部
呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2とを入力される。呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2とを比較した比較結果に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを推定する。本実施形態では、呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2との一致度に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを推定する。例えば、センサ信号Y1と復元信号Y2との一致度は、センサ信号Y1の波形と復元信号Y2の波形との一致度である。
【0041】
具体的に、呼吸推定部23は、センサ信号Y1及び復元信号Y2の少なくとも一方を増幅して、センサ信号Y1のレベルと復元信号Y2のレベルとを揃える。例えば、呼吸推定部23は、センサ信号Y1の最大レベルと復元信号Y2の最大レベルとが同一になるように、センサ信号Y1及び復元信号Y2の少なくとも一方を増幅する。そして、呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2との一致度を示す指標として、センサ信号Y1と復元信号Y2との相関係数を求める。呼吸推定部23は、相関係数が予め決められた第1閾値以上であれば、センサ信号Y1は異常センサ信号ではなく、人H1の呼吸は異常でない、と推定する。呼吸推定部23は、相関係数が第1閾値未満であれば、センサ信号Y1は異常センサ信号であり、人H1の呼吸は異常である、と推定する。
【0042】
呼吸推定部23は、センサ信号Y1と復元信号Y2との一致度を示す指標として、相関係数以外の指標を用いてもよい。例えば、センサ信号Y1と復元信号Y2との一致度を示す指標として、呼吸数を用いる。この場合、呼吸推定部23は、センサ信号Y1に基づく人H1の呼吸数を第1呼吸数として求め、復元信号Y2に基づいて人H1の呼吸数を第2呼吸数として求める。そして、呼吸推定部23は、第1呼吸数と第2呼吸数との差が第2閾値未満あれば、センサ信号Y1は異常センサ信号でなく、人H1の呼吸は異常でない、と推定する。呼吸推定部23は、第1呼吸数と第2呼吸数との差が第2閾値以上であれば、センサ信号Y1は異常センサ信号であり、人H1の呼吸は異常である、と推定する。
【0043】
なお、センサ信号Y1と復元信号Y2との一致度を示す指標は、相関係数、呼吸数以外であってもよく、特定の指標に限定されない。
【0044】
(2.2.4)出力部
出力部24は、呼吸推定部23による人H1の呼吸の推定結果を、呼吸推定システム2による人H1の呼吸の判定結果として、ユーザ装置3へ出力する。すなわち、出力部24は、人H1の呼吸の判定結果を含む判定データをユーザ装置3へ出力する。判定データは、判定結果を視覚的に通知する画像データを含む。判定データは、判定結果を聴覚的に通知する音声データを更に含んでいてもよい。
【0045】
(2.3)ユーザ装置
ユーザ装置3は、パーソナルコンピュータ、専用端末、スマートフォン、又はタブレット端末などで構成され、ディスプレイ装置(液晶ディスプレイ装置又は有機ELディスプレイ装置など)を備える。ユーザ装置3は、出力部24から判定データを受け取ると、判定データに含まれる画像データに基づいて、判定結果をユーザに通知する画像を表示する。また、ユーザ装置3は、スピーカ装置を更に備えていてもよい。この場合、ユーザ装置3は、判定データに含まれる音声データに基づいて、判定結果をユーザに通知する音声を発する。また、ユーザ装置3は、出力部24から受け取った判定データを記憶し、例えば一晩の就寝が終了した後などの任意のタイミングで、ユーザからの要求に応えて一連の判定結果をユーザに通知してもよい。
【0046】
(2.4)小括
上述のように、呼吸推定システム2では、教師なし学習によって構築された学習モデルM1を有するオートエンコーダ22を用いて、人H1の呼吸が異常であるか否かを推定する。したがって、教師なし学習によって学習モデルM1を構築することで、学習モデルM1の精度を向上させ、学習モデルM1による多様な人への対応が可能となる。さらに、教師なし学習によって学習モデルM1を構築することで、異常呼吸であるか否かを推定するための学習モデルM1を容易に構築することができる。この結果、呼吸推定システム2は、人H1の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる。
【0047】
(3)第1変形例
図3は、第1変形例の呼吸推定システム2Aの構成を示す。
【0048】
呼吸推定システム2Aは、人状態検出部25、及び出力判定部26を更に備える。なお、呼吸推定システム2と同様の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0049】
人状態検出部25は、センサ信号Y1に基づいて人H1の状態を検出する。出力判定部26は、呼吸推定部23の推定結果及び人状態検出部25の検出結果に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを判定する呼吸判定処理を行う。
【0050】
呼吸推定システム2Aでは、人状態検出部25は、存在検出部251を有する。存在検出部251は、センサ信号Y1に基づいて、人H1の状態として検出エリアW1における人H1の存在を検出する。人H1が寝具B1に安静に横たわっていても、人H1の体表面は呼吸の動作で細かく動いている。したがって、検出エリアW1に人H1が存在していない無人状態におけるセンサ信号Y1と、人H1が検出エリアW1に存在している有人状態におけるセンサ信号Y1とは異なる。しかして、存在検出部251は、人H1が寝具B1に安静に横たわっていても、センサ信号Y1に基づいて、検出エリアW1における人H1の存在を検出することができる。例えば、存在検出部251は、主成分分析によるパターン認識処理、KL変換によるパターン認識処理、重回帰分析を用いた認識処理、又はニューラルネットワークによる認識処理等を用いたアルゴリズムを用いる。存在検出部251は、検出結果を出力判定部26へ出力する。
【0051】
出力判定部26は、呼吸判定処理において、存在検出部251の検出結果に基づいて、呼吸推定部23の推定結果を有効又は無効とする。
【0052】
具体的に、出力判定部26は、呼吸判定処理において、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出し、かつ、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を有効とする。すなわち、出力判定部26は、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出していれば、呼吸推定部23の推定結果を有効とし、呼吸は異常であると判定する。
【0053】
出力判定部26は、呼吸判定処理において、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出せず、かつ、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を無効とする。すなわち、出力判定部26は、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出していなければ、呼吸推定部23の推定結果を無効とし、呼吸は異常でないと判定する。
【0054】
出力判定部26は、呼吸判定処理において、存在検出部251の検出結果に関わらず、呼吸推定部23が呼吸は異常でないと推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を有効として、呼吸は異常でないと判定する。
【0055】
出力部24は、出力判定部26の判定結果を、呼吸推定システム2による人H1の呼吸の判定結果として、ユーザ装置3へ出力する。
【0056】
上述のように、呼吸推定システム2Aは、呼吸推定部23の推定結果及び存在検出部251の検出結果に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを判定する呼吸判定処理を行う。したがって、人H1が検出エリアW1にいない無人状態であるにも関わらず、人H1の呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム2Aは、人H1の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0057】
なお、出力判定部26が呼吸推定部23の推定結果を有効又は無効とする具体的な手順は、上記以外でもよく、存在検出部251の検出結果に基づく手順であればよい。
【0058】
(4)第2変形例
図4は、第2変形例の呼吸推定システム2Bの構成を示す。
【0059】
呼吸推定システム2Bでは、人状態検出部25は、存在検出部251に加えて、接近検出部252を更に有する。なお、呼吸推定システム2Aと同様の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0060】
接近検出部252は、センサ信号Y1に基づいて、人H1の状態として、検出エリアW1における人H1の接近及び離反を検出する。電波センサ1は、寝具B1の近傍又は寝具B1自体に設置されているので、接近検出部252は、人H1の電波センサ1への接近を人H1の寝具B1への接近として検出し(接近検出)、人H1の電波センサ1からの離反を人H1の寝具B1からの離反として検出できる(離反検出)。
【0061】
電波センサ1がドップラ方式の電波センサであれば、接近検出部252は、ドップラ信号の位相に基づいて、人H1の電波センサ1への接近及び電波センサ1からの離反を検出することができる。すなわち、接近検出部252は、ドップラ信号の位相に基づいて、人H1の寝具B1への接近及び寝具B1からの離反を検出することができる。
【0062】
電波センサ1がFMCW方式の電波センサであれば、接近検出部252は、人H1までの距離の時間変化に基づいて、人H1の電波センサ1への接近及び電波センサ1からの離反を検出することができる。すなわち、接近検出部252は、人H1までの距離の時間変化に基づいて、人H1の寝具B1への接近及び寝具B1からの離反を検出することができる。
【0063】
そして、接近検出部252は、人H1の接近及び離反の検出結果を出力判定部26へ出力する。
【0064】
人H1は、検出エリアW1において寝具B1に接近した後に、寝具B1に横たわって就寝する。そして、起床した人H1は、寝具B1から離反する。すなわち、人H1が寝具B1に接近し、寝具B1に横たわってから離反するまでの期間では、人H1が寝具B1において就寝している可能性が高い。そこで、出力判定部26は、接近検出部252による接近の検出が終了してから離反を検出するまでの期間を候補期間とする。そして、出力判定部26は、候補期間において呼吸判定処理を行う。出力判定部26は、候補期間以外では呼吸判定処理を行わないことが好ましい。
【0065】
具体的に図5に示すように、出力判定部26は、接近検出部252が人H1の接近を検出(接近検出)すると、時間t1に接近検出が終了してから、時間t2に離反を検出(離反検出)するまでの期間を候補期間とする。そして、出力判定部26は、候補期間において、呼吸推定部23の推定結果、及び存在検出部251の検出結果に基づいて、以下の呼吸判定処理を行う。
【0066】
出力判定部26は、候補期間において、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出していれば、呼吸推定部23の推定結果を有効とし、呼吸は異常であると判定する。
【0067】
出力判定部26は、候補期間において、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出していなければ、呼吸推定部23の推定結果を無効とし、呼吸は異常でないと判定する。
【0068】
出力判定部26は、候補期間において、存在検出部251の検出結果に関わらず、呼吸推定部23が呼吸は異常でないと推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を有効として、呼吸は異常でないと判定する。
【0069】
図6は、出力判定部26の状態を示す状態遷移図である。まず、出力判定部26の動作がリセットされると(状態ST0)出力判定部26は待機状態(状態ST1)になる。そして、出力判定部26は、人H1が寝具B1に接近すると、接近検出部252の検出結果に基づいて人H1の接近を認識する(状態ST2)。
【0070】
接近していた人H1が寝具B1に横たわって、人H1の移動が停止すると、接近検出部252による人H1の接近検出は終了する。出力判定部26は、接近検出部252による人H1の接近検出が終了してから、接近検出部252が人H1の離反を検出するまでの期間を、候補期間(図5参照)とする(状態ST3)。そして、出力判定部26は、候補期間において呼吸判定処理を行う。
【0071】
なお、出力判定部26は、状態ST2から状態ST3に遷移すると(候補期間が始まると)、状態ST3に遷移してから一定時間T11(図5参照)が経過した後に開始される判定期間において呼吸判定処理を行うことが好ましい。判定期間は、候補期間が始まる時間t1から一定時間T11が経過した後に始まる期間であり、人H1が寝具B1に安静に横たわっていると想定可能な期間である。判定期間は、時間t1から一定時間T11が経過した後の候補期間に相当する。一定時間T11は例えば3分である。なお、一定時間T11の具体値は特定の値に限定されず、適宜設定可能である。
【0072】
出力判定部26は、人H1が寝具B1から離反すると、接近検出部252の検出結果に基づいて人H1の離反を認識する(状態ST4)。出力判定部26は、人H1の離反を認識した後、待機状態(状態ST1)に戻る。以降、出力判定部26は、接近検出部252の検出結果に基づいて、上述の状態ST1-ST4のいずれかの状態に遷移する。
【0073】
上述のように、呼吸推定システム2Bは、呼吸推定部23の推定結果、存在検出部251の検出結果、及び接近検出部252の検出結果に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを判定する呼吸判定処理を行う。したがって、人H1が検出エリアW1にいない無人状態であるにも関わらず、人H1の呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であると誤って判定する誤判定の発生を更に抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム2Aは、人H1の異常呼吸を判定する精度を更に向上させることができる。
【0074】
(5)第3変形例
図7は、第3変形例の呼吸推定システム2Cの構成を示す。
【0075】
呼吸推定システム2Cでは、人状態検出部25は、存在検出部251及び接近検出部252に加えて、寝返り検出部253を更に有する。なお、呼吸推定システム2Bと同様の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0076】
寝返り検出部253は、センサ信号Y1に基づいて、人H1の状態として、検出エリアW1における人H1の寝返りを検出する。人H1の寝返りによるセンサ信号Y1の変動は、人H1の呼吸によるセンサ信号Y1の変動に比べて大きくなる。そこで、寝返り検出部253は、センサ信号Y1に基づいて、寝具B1に横たわっている人H1の寝返りを検出することができる。例えば、寝返り検出部253は、主成分分析によるパターン認識処理、KL変換によるパターン認識処理、重回帰分析を用いた認識処理、又はニューラルネットワークによる認識処理等を用いたアルゴリズムを用いる。寝返り検出部253は、検出結果を出力判定部26へ出力する。
【0077】
出力判定部26は、呼吸判定処理において、寝返り検出部253の検出結果に基づいて、呼吸推定部23の推定結果を有効又は無効とする。
【0078】
具体的に、呼吸推定システム2Cでは、出力判定部26は、接近検出部252による接近の検出が終了してから離反を検出するまでの期間を候補期間(図5参照)とする。そして、出力判定部26は、候補期間において、呼吸推定部23の推定結果、並びに存在検出部251及び寝返り検出部253の各検出結果に基づいて、以下の呼吸判定処理を行う。
【0079】
出力判定部26は、候補期間において、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出し、かつ、寝返り検出部253が人H1の寝返りを検出せず、かつ、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を有効とする。すなわち、出力判定部26は、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出し、寝返り検出部253が検出エリアW1における人H1の寝返りを検出していなければ、呼吸推定部23の推定結果を有効とし、呼吸は異常であると判定する。
【0080】
出力判定部26は、候補期間において、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出しないとき、又は、寝返り検出部253が人H1の寝返りを検出したときには、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定しても、呼吸推定部23の推定結果を無効とする。すなわち、出力判定部26は、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、存在検出部251が検出エリアW1における人H1の存在を検出していない、又は、寝返り検出部253が検出エリアW1における人H1の寝返りを検出すれば、呼吸推定部23の推定結果を無効とし、呼吸は異常でないと判定する。
【0081】
出力判定部26は、候補期間において、存在検出部251及び寝返り検出部253の各検出結果に関わらず、呼吸推定部23が呼吸は異常でないと推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を有効として、呼吸は異常でないと判定する。
【0082】
上述のように、呼吸推定システム2Cは、呼吸推定部23の推定結果、存在検出部251の検出結果、接近検出部252の検出結果、及び寝返り検出部253の検出結果に基づいて、人H1の呼吸が異常であるか否かを判定する呼吸判定処理を行う。したがって、人H1が検出エリアW1にいない無人状態であったり、人H1が寝返りをしているにも関わらず、人H1の呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム2Aは、人H1の異常呼吸を判定する精度を更に向上させることができる。
【0083】
なお、出力判定部26が呼吸推定部23の推定結果を有効又は無効とする具体的な手順は、上記以外でもよく、寝返り検出部253の検出結果に基づく手順であればよい。
【0084】
例えば、人状態検出部25が寝返り検出部253のみを有している場合、出力判定部26は、以下のように呼吸判定処理を行う。
【0085】
出力判定部26は、寝返り検出部253が人H1の寝返りを検出せず、かつ、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を有効とする。すなわち、出力判定部26は、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、寝返り検出部253が検出エリアW1における人H1の寝返りを検出していなければ、呼吸推定部23の推定結果を有効とし、呼吸は異常であると判定する。
【0086】
また、出力判定部26は、寝返り検出部253が人H1の寝返りを検出し、かつ、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部23の推定結果を無効とする。すなわち、出力判定部26は、呼吸推定部23が呼吸は異常であると推定したときに、寝返り検出部253が検出エリアW1における人H1の寝返りを検出すれば、呼吸推定部23の推定結果を無効とし、呼吸は異常でないと判定する。したがって、出力判定部26は、人H1が寝返りをしたときに、呼吸は異常であると誤って判定する誤判定の発生を抑制できる。
【0087】
(6)呼吸推定方法
上述の呼吸推定システム2、2A、2B、2Cが実行する呼吸推定方法をまとめると、図8のフローチャートで表される。
【0088】
呼吸推定方法は、信号取得ステップS1と、復元信号生成ステップS2と、呼吸推定ステップS3と、を含む。
【0089】
信号取得ステップS1では、信号取得部21が、人H1で反射された電波を受信した電波センサ1から、受信した電波に応じたセンサ信号Y1を取得する。
【0090】
復元信号生成ステップS2では、オートエンコーダ22が、人H1の呼吸が正常であれば復元信号Y2をセンサ信号Y1に一致又は類似させるように機械学習によって構築された学習モデルM1を用いて、センサ信号Y1に応じた復元信号Y2を出力する。
【0091】
呼吸推定ステップS3では、呼吸推定部23が、センサ信号Y1と復元信号Y2とを比較した比較結果に基づいて、呼吸が異常であるか否かを推定する。
【0092】
本呼吸推定方法は、呼吸推定システム2、2A、2B、2Cと同様に、人H1の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる。
【0093】
(7)その他の変形例
人状態検出部25は、存在検出部251、接近検出部252、及び寝返り検出部253のうち、少なくとも1つを有してればよい。
【0094】
人H1の異常呼吸は、睡眠時無呼吸症候群に限定されず、例えば呼吸間隔の異常、呼吸回数の異常などであってもよい。
【0095】
電波センサ1は、ドップラ方式、FMCW方式以外の電波センサであってもよい。電波センサ1は、例えば2周波FSK(Frequency shift keying)方式の電波センサであってもよい。
【0096】
(8)まとめ
実施形態に係る第1の態様の呼吸推定システム(2、2A、2B、2C)は、信号取得部(21)と、オートエンコーダ(22)と、呼吸推定部(23)と、を備える。信号取得部(21)は、人(H1)で反射された電波を受信した電波センサ(1)から、受信した電波に応じたセンサ信号(Y1)を取得する。オートエンコーダ(22)は、センサ信号(Y1)に応じた復元信号(Y2)を出力する学習モデル(M1)を有する。学習モデル(M1)は人(H1)の呼吸が正常であれば復元信号(Y2)をセンサ信号(Y1)に一致又は類似させるように機械学習によって構築される。呼吸推定部(23)は、センサ信号(Y1)と復元信号(Y2)とを比較した比較結果に基づいて、呼吸が異常であるか否かを推定する。
【0097】
上述の呼吸推定システム(2、2A、2B、2C)は、人(H1)の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる。
【0098】
実施形態に係る第2の態様の呼吸推定システム(2、2A、2B、2C)では、第1の態様において、呼吸推定部(23)は、センサ信号(Y1)と復元信号(Y2)との一致度に基づいて、前記呼吸が異常であるか否かを推定することが好ましい。
【0099】
上述の呼吸推定システム(2、2A、2B、2C)は、人(H1)の呼吸の異常を精度よく推定できる。
【0100】
実施形態に係る第3の態様の呼吸推定システム(2A、2B、2C)は、第1又は第2の態様において、人状態検出部(25)と、出力判定部(26)と、を更に備えることが好ましい。人状態検出部(25)は、センサ信号(Y1)に基づいて検出エリア(W1)における人(H1)の状態を検出する。出力判定部(26)は、呼吸推定部(23)の推定結果及び人状態検出部(25)の検出結果に基づいて、呼吸が異常であるか否かを判定する呼吸判定処理を行う。
【0101】
上述の呼吸推定システム(2A、2B、2C)は、人(H1)の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0102】
実施形態に係る第4の態様の呼吸推定システム(2A、2B、2C)では、第3の態様において、人状態検出部(25)は、人(H1)の状態として検出エリア(W1)における人(H1)の存在を検出する存在検出部(251)を有することが好ましい。出力判定部(26)は、呼吸判定処理において、存在検出部(251)の検出結果に基づいて、呼吸推定部(23)の推定結果を有効又は無効とすることが好ましい。
【0103】
上述の呼吸推定システム(2A、2B、2C)は、人(H1)が検出エリア(W1)にいない無人状態であるにも関わらず、人(H1)の呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム(2A、2B、2C)は、人(H1)の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0104】
実施形態に係る第5の態様の呼吸推定システム(2A、2B、2C)では、第4の態様において、出力判定部(26)は、呼吸判定処理において、存在検出部(251)が検出エリア(W1)における人(H1)の存在を検出し、かつ、呼吸推定部(23)が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部(23)の推定結果を有効として、呼吸は異常であると判定することが好ましい。出力判定部(26)は、呼吸判定処理において、存在検出部(251)が検出エリア(W1)における人(H1)の存在を検出せず、かつ、呼吸推定部(23)が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部(23)の推定結果を無効として、呼吸は異常でないと判定することが好ましい。
【0105】
上述の呼吸推定システム(2A、2B、2C)は、人(H1)が検出エリア(W1)にいない無人状態であるにも関わらず、人(H1)の呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム(2A、2B、2C)は、人(H1)の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0106】
実施形態に係る第6の態様の呼吸推定システム(2B、2C)では、第3乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、人状態検出部(25)は、人(H1)の状態として、検出エリア(W1)における人(H1)の接近及び離反を検出する接近検出部(252)を更に有することが好ましい。出力判定部(26)は、接近検出部(252)による接近の検出が終了してから離反を検出するまでの期間を候補期間とし、候補期間において呼吸判定処理を行う。
【0107】
上述の呼吸推定システム(2B、2C)は、人(H1)が検出エリア(W1)にいない無人状態であるにも関わらず、人(H1)の呼吸が異常(睡眠時無呼吸症候群など)であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム(2B、2C)は、人(H1)の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0108】
実施形態に係る第7の態様の呼吸推定システム(2C)では、第3乃至第6の態様のいずれか1つにおいて、人状態検出部(25)は、人(H1)の状態として、検出エリア(W1)における人(H1)の寝返りを検出する寝返り検出部(253)を有することが好ましい。出力判定部(26)は、呼吸判定処理において、寝返り検出部(253)の検出結果に基づいて、呼吸推定部(23)の推定結果を有効又は無効とすることが好ましい。
【0109】
上述の呼吸推定システム(2C)は、人(H1)が寝返りをしたときに、呼吸は異常であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム(2C)は、人(H1)の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0110】
実施形態に係る第8の態様の呼吸推定システム(2C)では、第7の態様において、出力判定部(26)は、呼吸判定処理において、寝返り検出部(253)が人(H1)の寝返りを検出せず、かつ、呼吸推定部(23)が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部(23)の推定結果を有効として、呼吸は異常であると判定することが好ましい。出力判定部(26)は、呼吸判定処理において、寝返り検出部(253)が人(H1)の寝返りを検出し、かつ、呼吸推定部(23)が呼吸は異常であると推定したとき、呼吸推定部(23)の推定結果を無効として、呼吸は異常でないと判定することが好ましい。
【0111】
上述の呼吸推定システム(2C)は、人(H1)が寝返りをしたときに、呼吸は異常であると誤って判定する誤判定の発生を抑制することができる。すなわち、呼吸推定システム(2C)は、人(H1)の異常呼吸を判定する精度を向上させることができる。
【0112】
実施形態に係る第9の態様のセンサシステム(10)は、第1乃至第8の態様のいずれか1つの呼吸推定システム(2、2A、2B、2C)と、電波センサ(1)と、を備える。
【0113】
上述のセンサシステム(10)は、人(H1)の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる。
【0114】
実施形態に係る第10の態様の呼吸推定方法は、信号取得ステップ(S1)と、復元信号生成ステップ(S2)と、呼吸推定ステップ(S3)と、を含む。信号取得ステップ(S1)は、人(H1)で反射された電波を受信した電波センサ(1)から、受信した電波に応じたセンサ信号(Y1)を取得する。復元信号生成ステップ(S2)は、人(H1)の呼吸が正常であれば復元信号(Y2)をセンサ信号(Y1)に一致又は類似させるように機械学習によって構築された学習モデル(M1)を用いて、センサ信号(Y1)に応じた復元信号(Y2)を出力する。呼吸推定ステップ(S3)は、センサ信号(Y1)と復元信号(Y2)とを比較した比較結果に基づいて、呼吸が異常であるか否かを推定する。
【0115】
上述の呼吸推定方法は、人(H1)の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる。
【0116】
実施形態に係る第11の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第10の態様呼吸推定方法を実行させる。
【0117】
上述のプログラムは、人(H1)の呼吸の異常を精度よく推定でき、かつ、システムを容易に構築することができる。
【符号の説明】
【0118】
10 センサシステム
1 電波センサ
2、2A、2B、2C 呼吸推定システム
21 信号取得部
22 オートエンコーダ
23 呼吸推定部
25 人状態検出部
251 存在検出部
252 接近検出部
253 寝返り検出部
26 出力判定部
H1 人
M1 学習モデル
Y1 センサ信号
Y2 復元信号
W1 検出エリア
B1 寝具
S1 信号取得ステップ
S2 復元信号生成ステップ
S3 呼吸推定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8