(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172637
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】アーク故障検出システム、及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H02H 7/26 20060101AFI20241205BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02H7/26 A
H02B1/42
H02H7/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090481
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生島 剛
【テーマコード(参考)】
5G211
【Fターム(参考)】
5G211AA01
5G211DD01
5G211DD06
5G211DD14
5G211DD16
5G211DD21
5G211EE01
5G211GG10
(57)【要約】
【課題】回路部品の数を削減すること。
【解決手段】アーク故障検出システム1は、第1検出部10と、複数の第2検出部20と、判定部30と、を備える。共通経路部40には、複数の分岐回路BC1の各々に流れる電流が通過可能である。第1検出部10は、共通経路部40に流れる第1電流I1及び共通経路部40に発生する第1電圧のうち少なくとも一方に関する第1情報を検出する。複数の第2検出部20の各々は、複数の分岐回路BC1のうち対応する分岐回路BC1に流れる第2電流I2、及び、複数の分岐回路BC1のうち対応する分岐回路BC1に発生する第2電圧のうち少なくとも一方に関する第2情報を検出する。判定部30は、第1検出部10が検出した第1情報と、複数の第2検出部20がそれぞれ検出した複数の第2情報とに基づいて、複数の分岐回路BC1の各々でアーク故障の有無を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続される主幹回路から分岐する複数の分岐回路の各々でのアーク故障の有無を検出するアーク故障検出システムであって、
前記複数の分岐回路の各々に流れる電流が通過可能な共通経路部と、
前記共通経路部に流れる第1電流及び前記共通経路部に発生する第1電圧のうち少なくとも一方に関する第1情報を検出する第1検出部と、
前記複数の分岐回路の各々に対応して設けられる複数の第2検出部と、
判定部と、を備え、
前記複数の第2検出部の各々は、前記複数の分岐回路のうち対応する分岐回路に流れる第2電流、及び、前記複数の分岐回路のうち対応する分岐回路に発生する第2電圧のうち少なくとも一方に関する第2情報を検出し、
前記判定部は、前記第1検出部が検出した前記第1情報と、前記複数の第2検出部がそれぞれ検出した複数の前記第2情報とに基づいて、前記複数の分岐回路の各々でのアーク故障の有無を判定する、
アーク故障検出システム。
【請求項2】
前記第1検出部の検出対象の周波数域が、前記第2検出部の検出対象の周波数域よりも高い、
請求項1に記載のアーク故障検出システム。
【請求項3】
前記第1検出部は、前記共通経路部に設けられるロゴスキーコイルを用いて、前記共通経路部に流れる前記第1電流に関する前記第1情報を検出する、
請求項1に記載のアーク故障検出システム。
【請求項4】
前記複数の第2検出部の各々は、前記複数の分岐回路のうち対応する分岐回路に設けられるロゴスキーコイルを用いて、前記複数の分岐回路のうち対応する分岐回路に流れる前記第2電流に関する前記第2情報を検出する、
請求項1に記載のアーク故障検出システム。
【請求項5】
前記共通経路部はコンデンサを含む、
請求項1に記載のアーク故障検出システム。
【請求項6】
前記複数の分岐回路のうち共通の分岐回路に接続される複数のコンセント装置の各々が、
前記複数のコンセント装置の各々に流れる第3電流、及び、前記複数のコンセント装置の各々に発生する第3電圧のうち少なくとも一方に関する第3情報を検出する第3検出部と、
前記第3検出部の検出結果を送信する送信部と、を備え、
前記アーク故障検出システムは、前記送信部から送信される前記第3検出部の検出結果を受信する受信部を備え、
前記判定部は、前記第1検出部が検出した前記第1情報と、前記複数の第2検出部がそれぞれ検出した複数の前記第2情報と、前記受信部が受信した前記第3検出部の検出結果とに基づいて、前記複数のコンセント装置の各々でのアーク故障の有無を判定する、
請求項1に記載のアーク故障検出システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のアーク故障検出システムと、
前記主幹回路に設けられた主幹ブレーカと、
前記複数の分岐回路の各々に設けられた複数の分岐ブレーカと、
前記アーク故障検出システム、前記主幹ブレーカ、及び前記複数の分岐ブレーカを収容する筐体と、を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アーク故障検出システム、及び分電盤に関する。より詳細には、本開示は、分岐回路でのアーク故障の有無を検出するためのアーク故障検出システム、及び分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、分電盤用キャビネットに内器として収容される分電盤用ブレーカを開示する。分電盤用ブレーカは、一次側端子と、二次側端子と、一次側端子-二次側端子間の電流値が所定の電流値を超えた場合に二次側端子に接続されている負荷への電力供給を遮断する遮断部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数の分電盤用ブレーカの各々に接続される配線の断線又は短絡によるアーク故障を検出する場合、複数の分電盤用ブレーカの各々にアーク故障を検出するために必要な回路を備える必要があった。
【0005】
本開示の目的は、回路部品の数を削減可能なアーク故障検出システム、及び分電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のアーク故障検出システムは、交流電源に接続される主幹回路から分岐する複数の分岐回路の各々でのアーク故障の有無を検出するアーク故障検出システムである。前記アーク故障検出システムは、共通経路部と、第1検出部と、複数の第2検出部と、判定部と、を備える。前記共通経路部は、前記複数の分岐回路の各々に流れる電流が通過可能である。前記第1検出部は、前記共通経路部に流れる第1電流及び前記共通経路部に発生する第1電圧のうち少なくとも一方に関する第1情報を検出する。前記複数の第2検出部は、前記複数の分岐回路の各々に対応して設けられる。前記複数の第2検出部の各々は、前記複数の分岐回路のうち対応する分岐回路に流れる第2電流、及び、前記複数の分岐回路のうち対応する分岐回路に発生する第2電圧のうち少なくとも一方に関する第2情報を検出する。前記判定部は、前記第1検出部が検出した前記第1情報と、前記複数の第2検出部がそれぞれ検出した複数の前記第2情報とに基づいて、前記複数の分岐回路の各々でアーク故障の有無を判定する。
【0007】
本開示の一態様の分電盤は、前記アーク故障検出システムと、前記主幹回路に設けられた主幹ブレーカと、前記複数の分岐回路の各々に設けられた複数の分岐ブレーカと、筐体と、を備える。前記筐体は、前記アーク故障検出システム、前記主幹ブレーカ、及び前記複数の分岐ブレーカを収容する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回路部品の数を削減可能なアーク故障検出システム、及び分電盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るアーク故障検出システムを備える分電盤の概略的な回路図である。
【
図2】
図2は、同上の分電盤の具体構成を示す概略的な回路図である。
【
図3】
図3は、同上の分電盤のカバーを外した状態の正面図である。
【
図4】
図4は、同上の分電盤の要部を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の分電盤の要部を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、変形例1に係るアーク故障検出システムを備える分電盤の概略的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るアーク故障検出システム、及びそれを備える分電盤について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例に過ぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、以下の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ等の寸法比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(実施形態)
(1)概要
図1は、本実施形態に係るアーク故障検出システム1及びそれを備える分電盤100の概略的な回路図である。
【0012】
アーク故障検出システム1は、交流電源2に接続される主幹回路MC1から分岐する複数の分岐回路BC1の各々でのアーク故障の有無を検出する。
【0013】
アーク故障検出システム1は、共通経路部40と、第1検出部10と、複数の第2検出部20と、判定部30と、を備える。
【0014】
共通経路部40には、複数の分岐回路BC1の各々に流れる電流が通過可能である。
【0015】
第1検出部10は、共通経路部40に流れる第1電流I1及び共通経路部40に発生する第1電圧のうち少なくとも一方に関する第1情報を検出する。
【0016】
複数の第2検出部20は、複数の分岐回路BC1の各々に対応して設けられる。
【0017】
複数の第2検出部20の各々は、複数の分岐回路BC1のうち対応する分岐回路BC1に流れる第2電流I2、及び、複数の分岐回路BC1のうち対応する分岐回路BC1に発生する第2電圧のうち少なくとも一方に関する第2情報を検出する。
【0018】
判定部30は、第1検出部10が検出した第1情報と、複数の第2検出部20がそれぞれ検出した複数の第2情報とに基づいて、複数の分岐回路BC1の各々でアーク故障の有無を判定する。
【0019】
本実施形態のアーク故障検出システム1は、例えば、住宅用(戸建て住宅用又は集合住宅用)の分電盤100において主幹回路MC1からそれぞれ分岐する複数の分岐回路BC1の各々でのアーク故障を検出するために用いられる。本開示で言う「アーク故障」は、例えば、分岐回路BC1に含まれる一対の電線L30における絶縁劣化又は半断線等の線異常によって発生し得る。本開示で言う「半断線」は、断線しかかっている状態を意味し、具体的には、一対の電線L30の各々がより線であれば、より線を構成する複数本の素線のうちの一部の素線が断線した状態である。アーク故障は、一例として、一対の電線L30の間が短絡することでアーク(いわゆるパラレルアーク)が発生する異常事象を含み得る。また、アーク故障は、一例として、一対の電線L30のうちの一方が半断線することによってアーク(いわゆるシリーズアーク)が発生する異常事象を含み得る。なお、パラレルアークによって電線L30に流れる電流の大きさは数十~数百A程度であるのに対して、シリーズアークでは負荷機器LD1を通って電流が流れるため、シリーズアークによって電線L30に流れる電流の大きさは数A~30A程度である。
【0020】
本開示において、主幹回路MC1は、例えば、交流電源2に接続される主幹電路L10と、交流電源2と主幹電路L10との間に接続される主幹ブレーカB1と、を含み得る。
図1に示す主幹電路L10は、例えば単相3線式の配電方式であり、L1相となる電路L11と、L2相となる電路L12と、N相となる電路L13とを含んでいる。
【0021】
また、複数の分岐回路BC1の各々は、例えば、主幹電路L10から分岐する分岐電路L20と、分岐電路L20の端末に接続される分岐ブレーカB2と、分岐ブレーカB2と負荷機器LD1との間を接続する一対の電線L30と、負荷機器LD1と、を含み得る。なお、本開示では、単相3線式の配電方式を採用しているため、複数の分岐回路BC1は、L1相の電路L11とN相の電路L13とから分岐する複数の第1分岐回路BC11と、L2相の電路L12とN相の電路L13とから分岐する複数の第2分岐回路BC12と、を含み得る。
【0022】
共通経路部40は、複数の分岐回路BC1の各々を流れる第2電流I2が通過可能な経路である。共通経路部40は、複数の分岐回路BC1の各々を流れる第2電流I2が通過可能な電路を少なくとも含み、電路と直列に接続されたインピーダンス要素を更に含む。ここで、複数の分岐回路BC1の各々を流れる第2電流I2が共通経路部40を通過可能であるとは、各分岐回路BC1に流れる第2電流I2が共通経路部40を双方向に流れることが可能な状態を言う。なお、第2電流I2の全てが共通経路部40を通過可能であることは必須ではなく、第2電流I2の少なくとも一部の電流成分(例えば、高周波成分又は低周波成分)が共通経路部40を通過可能であればよい。本開示では、複数の分岐回路BC1が、複数の第1分岐回路BC11と、複数の第2分岐回路BC12とを備えているため、共通経路部40は、複数の第1分岐回路BC11の各々を流れる第2電流I2が通過可能な第1共通経路部40Aと、複数の第2分岐回路BC12の各々を流れる第2電流I2が通過可能な第2共通経路部40Bと、を含み得る。第1共通経路部40Aは、L1相の電路L11とN相の電路L13との間を電気的に接続する電路であり、第1共通経路部40Aには、複数の第1分岐回路BC11の各々を流れる第2電流I2が通過可能である。また、第2共通経路部40Bは、L2相の電路L12とN相の電路L13との間を電気的に接続する電路であり、第2共通経路部40Bには、複数の第2分岐回路BC12の各々を流れる第2電流I2が通過可能である。
【0023】
ここにおいて、いずれかの分岐回路BC1でアーク故障が発生した場合、アーク故障に起因するアーク電流が発生し、アーク電流の一部は共通経路部40にも流れる。したがって、第1検出部10によって検出される第1情報は、分岐回路BC1で発生したアーク故障によって変化するので、判定部30は、第1情報をアーク故障の判定に利用することができる。つまり、第1情報は、複数の分岐回路BC1の各々に流れる第2電流に関する情報を含んでいる。本実施形態では、判定部30が、複数の分岐回路BC1の各々でアーク故障の有無を判定するために、第1検出部10が検出した第1情報と、複数の第2検出部20がそれぞれ検出した複数の第2情報とを用いている。複数の分岐回路BC1の各々で、アーク故障の有無を判定するために用いられる第1情報及び第2情報の両方を検出する場合は、複数の分岐回路BC1の各々に第1検出部と第2検出部とを設ける必要がある。それに対して、本実施形態のアーク故障検出システム1では、第1検出部10が、複数の分岐回路BC1の各々に流れる電流が通過可能な共通経路部40で第1情報を検出している。したがって、本実施形態のアーク故障検出システム1では、複数の分岐回路BC1の各々に第1情報を検出するための第1検出部を設ける場合に比べて、アーク故障検出システム1を構成する回路部品の数を削減できる、という利点がある。
【0024】
(2)詳細
以下、本実施形態に係るアーク故障検出システム1、及びアーク故障検出システム1を備える分電盤100について
図1~
図5を参照して説明する。
【0025】
分電盤100の筐体101(
図3参照)は、例えば、戸建て住宅又は集合住宅のような住宅用の施設に設置されて使用される。なお、分電盤100が設置される施設は、戸建て住宅又は集合住宅のような住宅用の施設に限定されず、非住宅用の建物(例えば、工場、商業用ビル、オフィスビル、病院、学校等)に設置されてもよい。
【0026】
以下の説明では、特に断りがない限り、
図3におけるX軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向と規定する。また、X軸方向及びZ軸方向とそれぞれ直交する方向を前後方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、アーク故障検出システム1及び分電盤100の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0027】
(2.1)分電盤
まず、分電盤100について
図1及び
図3~
図5を参照して説明する。分電盤100は、
図1及び
図3に示すように、アーク故障検出システム1と、主幹回路MC1に設けられた主幹ブレーカB1と、複数の分岐回路BC1の各々に設けられた複数の分岐ブレーカB2と、筐体101と、を備える。筐体101は、アーク故障検出システム1、主幹ブレーカB1、及び複数の分岐ブレーカB2を収容する。また、筐体101は、主幹回路MC1及び複数の分岐回路BC1での消費電力等を監視する監視ユニット110を更に収容している。なお、筐体101が監視ユニット110を収容することは必須ではなく、監視ユニット110は適宜省略が可能である。
【0028】
分電盤100の筐体101は、前面が開口した箱状のボディ102(
図3参照)と、ボディ102の開口を塞ぐカバーと、を備えている。なお、
図3では、カバーの図示を省略している。筐体101は、例えば建物の壁、又は建物を構成する部材等の取付対象に取り付けられる。なお、筐体101は、壁に設けられた取付孔に一部又は全体が埋め込まれた状態で取り付けられてもよい。
【0029】
筐体101の内部には、
図3に示すように、主幹ブレーカB1、複数の分岐ブレーカB2、及び監視ユニット110等が収容されている。主幹ブレーカB1、複数の分岐ブレーカB2、及び監視ユニット110は、ボディ102に直接又は取付用の部品等を介して取り付けられている。
図3は、筐体101の内部における主幹ブレーカB1、複数の分岐ブレーカB2、及び監視ユニット110の配置を示しているが、これらの配置は一例であり、適宜変更が可能である。
【0030】
主幹ブレーカB1は、例えば合成樹脂製の箱形の器体130を備えている。主幹ブレーカB1は、交流電源2からの電線L40が接続される一次側端子131と、主幹電路L10を構成する3本の導電バーが接続される二次側端子と、一次側端子131と二次側端子との間に接続された接点と、を備えている。また、主幹ブレーカB1の器体130の前面には、接点のオン/オフを手動で切り替えるためのハンドル132が設けられている。
【0031】
また、主幹ブレーカB1は、主幹電路L10に流れる漏電電流を検出すると、接点を開極させる保護回路を備えている。なお、保護回路は、主幹電路L10に短絡電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検出する機能を備えてもよく、主幹電路L10に流れる過電流を検出すると、接点を開極させてもよい。また、保護回路は、単相3線式配線における中性線の欠相状態を検出する機能を更に備えてもよく、中性線の欠相状態を検出すると、接点を開極させてもよい。なお、主幹ブレーカB1は、所定の制限値を超える電流が流れると、接点を開極させるリミッタ機能を備えていてもよい。
【0032】
主幹ブレーカB1の二次側端子は、主幹ブレーカB1の器体130の右側面から横方向に突出している。主幹ブレーカB1の二次側端子には、主幹電路L10を構成する3つの導電バー141,142,143(
図4及び
図5参照)が接続される。すなわち、主幹ブレーカB1の二次側端子には、L1相の電路L11を構成する導電バー141と、L2相の電路L12を構成する導電バー142と、N相の電路L13を構成する導電バー143とが接続される。各導電バー141,142,143は、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、筐体101の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカB1の右側の位置に配置されている。
【0033】
本実施形態では、3つの導電バー141,142,143と、複数の分岐ブレーカB2とは、例えば合成樹脂製のベース台150に取り付けられている。また、ベース台150には、複数の分岐回路BC1のそれぞれに流れる電流を計測するための電流計測器170が取り付けられている。このベース台150は、例えば金属製の支持部材160を介してボディ102に取り付けられている。つまり、3つの導電バー141,142,143と複数の分岐ブレーカB2とは、ベース台150及び支持部材160を介してボディ102に取り付けられている。
【0034】
ベース台150の前面には、左右両端部の上下方向における中央部に、それぞれ前方に突出する一対の支柱151(
図4参照)が設けられている。ベース台150の前面には、一対の支柱151を挟んで上下両側に、L1相の導電バー141とL2相の導電バー142とが配置されている。L1相の導電バー141と、L2相の導電バー142とは、ベース台150の前面に左右方向に沿って配置されている。また、ベース台150の前面には、一対の支柱151の前端部分に架け渡すように、N相の導電バー143が取り付けられている。
【0035】
また、ベース台150の前面には、N相の導電バー143を間にした上下両側の取付スペースSP1,SP2に、複数の分岐ブレーカB2が左右方向に並べて配置可能である。
【0036】
分岐ブレーカB2の器体200(
図5参照)は、左右方向の寸法が、上下方向及び前後方向の寸法に比べて小さい直方体状に形成されている。分岐ブレーカB2の器体200には、分岐ブレーカB2が取付スペースSP1又はSP2に配置された状態で、N相の導電バー143側を向く面に、3つの差込口201が開口している。3つの差込口201は、器体200の一面に前後方向に並んで設けられている。器体200の内部には、3つの差込口201のうちの2つに対応する位置にプラグイン端子が収容されている。100V用の分岐ブレーカB2では、前後方向における中央の差込口201を除く2つの差込口201に対応する位置に、プラグイン端子が収容されている。200V用の分岐ブレーカB2では、最も前側にある差込口201を除く2つの差込口201に対応する位置に、プラグイン端子が収容されている。
【0037】
なお、分岐ブレーカB2の器体200には、3つの差込口201が設けられた端部と反対側の端部に、負荷機器LD1からの電線L30が接続される速結型の端子が設けられている。
【0038】
導電バー141は、ベース台150の前面に配置される平板部1411と、平板部1411の端部を曲げ加工することで形成された複数の接続端子1412と、を備えている。複数の接続端子1412は、左右方向に並んで設けられており、複数の接続端子1412の半分は下向きに突出し、残りの半分は上向きに突出している。下向きに突出する複数の接続端子1412及び上向きに突出する複数の接続端子1412は、それぞれ、分岐ブレーカB2の1個分の幅寸法と同じ間隔で並んでいる。
【0039】
また、導電バー142は、ベース台150の前面に配置される平板部1421と、平板部1421の端部を曲げ加工することで形成された複数の接続端子1422と、を備えている。複数の接続端子1422は、左右方向に並んで設けられており、複数の接続端子1412の半分は下向きに突出し、残りの半分は上向きに突出している。下向きに突出する複数の接続端子1422及び上向きに突出する複数の接続端子1422は、それぞれ、分岐ブレーカB2の1個分の幅寸法と同じ間隔で並んでいる。
【0040】
ここで、上側の取付スペースSP1に配置される分岐ブレーカB2の3つの差込口201には、前側から順番に、N相の導電バー143と、L2相の導電バー142の接続端子1422と、L1相の導電バー141の接続端子1412とが挿入される。よって、取付スペースSP1に100V用の分岐ブレーカB2を配置した場合、この分岐ブレーカB2は、L1相の導電バー141とN相の導電バー143とにそれぞれ接続される。つまり、上側の取付スペースSP1に配置される分岐ブレーカB2は、第1分岐回路BC11の分岐ブレーカB2となる。また、取付スペースSP1に200V用の分岐ブレーカB2を配置した場合、この分岐ブレーカB2は、L1相の導電バー141とL2相の導電バー142とにそれぞれ接続される。
【0041】
また、下側の取付スペースSP2に配置される分岐ブレーカB2の3つの差込口201には、前側から順番に、N相の導電バー143と、L1相の導電バー141の接続端子1412と、L2相の導電バー142の接続端子1422とが挿入される。よって、100V用の分岐ブレーカB2を取付スペースSP2に配置した場合、この分岐ブレーカB2は、L2相の導電バー142とN相の導電バー143とにそれぞれ接続される。つまり、下側の取付スペースSP2に配置される分岐ブレーカB2は、第2分岐回路BC12の分岐ブレーカB2となる。また、取付スペースSP2に200V用の分岐ブレーカB2を配置した場合、この分岐ブレーカB2は、L1相の導電バー141とL2相の導電バー142とにそれぞれ接続される。
【0042】
また、ベース台150の前側には、一対の支柱151の間に架け渡すようにして2つの電流計測器170が取り付けられている。2つの電流計測器170のうちの一方は、一対の支柱151の下側に配置され、2つの電流計測器170のうちの他方は、一対の支柱151の上側に配置される。2つの電流計測器170は同様の構成を有しているので、一対の支柱151の下側に配置される電流計測器170(
図5参照)を例に説明する。
【0043】
電流計測器170は、主面の法線が上下方向と平行になるように配置される基板171を備える。基板171は、左右方向の寸法が、前後方向の寸法よりも大きい矩形板状に形成されている。基板171には、複数の接続端子1422がそれぞれ挿入される複数の円形の貫通孔172と、複数の接続端子1412がそれぞれ挿入される複数の長方形状の貫通孔173と、が設けられている。基板171には、後側にそれぞれ設けられた複数の貫通孔172の周りに、複数の電流センサ21がそれぞれ設けられている。
【0044】
一対の支柱151の下側に配置される電流計測器170では、基板171の複数の貫通孔172に複数の接続端子1422がそれぞれ挿入される。したがって、複数の電流センサ21により、複数の接続端子1422にそれぞれ流れる電流、すなわち複数の第2分岐回路BC12の各々に流れる第2電流I2の値を計測することができる。
【0045】
また、一対の支柱151の上側に配置される電流計測器170では、基板171の複数の貫通孔172に複数の接続端子1412がそれぞれ挿入される。したがって、複数の電流センサ21により、複数の接続端子1412にそれぞれ流れる電流、すなわち複数の第1分岐回路BC11の各々に流れる第2電流I2を測定することができる。
【0046】
ここで、各電流センサ21は、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルからなり、貫通孔172に通された接続端子1412又は1422を通過する電流に応じた出力を生じるロゴスキーコイルである。電流計測器170は、各電流センサ21の出力に基づいて、複数の分岐回路BC1の各々を流れる第2電流I2の値を算出する。なお、電流センサ21は、ロゴスキーコイルに限定されず、変流器(カレントトランス)、ホール素子、磁気抵抗素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子、シャント抵抗などのセンサでもよい。
【0047】
(2.2)アーク検出システム
次に、アーク故障検出システム1について
図1~
図5を参照して説明する。アーク故障検出システム1は、上述したように、共通経路部40と、第1検出部10と、複数の第2検出部20と、判定部30と、を備えている。
【0048】
本実施形態では、複数の分岐回路BC1が、L1相の電路L11とN相の電路L13とから分岐する複数の第1分岐回路BC11と、L2相の電路L12とN相の電路L13とから分岐する複数の第2分岐回路BC12と、を含んでいる。
【0049】
したがって、本実施形態では、L1相の電路L11とN相の電路L13との間に、複数の第1分岐回路BC11の各々に流れる第2電流I2が通過可能な第1共通経路部40Aが設けられ、L2相の電路L12とN相の電路L13との間に、複数の第2分岐回路BC12の各々に流れる第2電流I2が通過可能な第2共通経路部40Bが設けられている。
【0050】
図2は、アーク故障検出システム1の具体構成を示す概略的な回路図である。なお、第1分岐回路BC11及び第2分岐回路BC12は同様の構成を有しているので、第2分岐回路BC12、及び、第2分岐回路BC12でのアーク故障の有無を検出する回路については、図示及び説明を省略する。
【0051】
図2の具体回路例では、共通経路部40はコンデンサC1を含んでいる。具体的には、第1共通経路部40Aは、L1相の電路L11とN相の電路L13との間を接続する電路と、この電路に直列に接続されたコンデンサC1とを含んでいる。コンデンサC1のインピーダンスは高周波ほど低下するので、第1共通経路部40Aには、複数の第1分岐回路BC11の各々に流れる電流(第2電流I2)の高周波成分が通過可能である。本開示において、第2電流I2の高周波成分とは、下限周波数(例えば数kHz~数十kHz程度の周波数)よりも高い周波数域の電流成分である。また、第2電流I2の低周波成分とは、下限周波数以下の周波数域の電流成分である。なお、共通経路部40は、コンデンサC1に代えて、アーク故障時に発生する電流が通過可能なハイパスフィルタを含んでいてもよい。
【0052】
第1共通経路部40Aを構成する電路には、例えば、ロゴスキーコイルのような電流センサ11が設けられている。電流センサ11は、例えば、貫通孔が設けられた基板の表面に、貫通孔を囲むように形成された、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルである。電流センサ11は、基板に設けられた貫通孔に、L1相の電路L11とN相の電路L13との間を接続する電路の一部(つまり、第1共通経路部40Aを構成する電路の一部)が挿入された状態で配置されている。
【0053】
図2の具体回路例では、電流センサ11を用いて第1共通経路部40Aに流れる高周波電流の電流値を検出する高周波検出部12により第1検出部10が構成されている。つまり、第1検出部10としての高周波検出部12は、第1共通経路部40Aに流れる高周波電流の電流値を第1情報として検出する。言い換えると、本実施形態の第1検出部10は、共通経路部40(
図2では例えば第1共通経路部40A)に設けられるロゴスキーコイルを用いて、共通経路部40に流れる第1電流I1に関する第1情報を検出する。より詳細には、第1検出部10は、共通経路部40に設けられるロゴスキーコイルを用いて、共通経路部40に流れる第1電流I1の電流値を第1情報として検出する。第1検出部10は、ロゴスキーコイルを用いて第1電流I1に関する第1情報を検出しているので、第1電流I1を検出するためのセンサとしてカレントトランス等を用いる場合に比べて小型化を図ることができる。
【0054】
また、
図2の具体回路例では、複数の第1分岐回路BC11の各々に設けられた低周波検出部22が、複数の分岐電路L20の各々に設けられた電流センサ21を用いて、複数の第1分岐回路BC11の各々に流れる第2電流I2に関する第2情報を検出する。ここで、複数の第1分岐回路BC11の各々に設けられた低周波検出部22によって第2検出部20が構成されている。つまり、複数の第2検出部20の各々は、複数の分岐回路BC1のうち対応する分岐回路BC1に設けられるロゴスキーコイルを用い、複数の分岐回路BC1のうち対応する分岐回路BC1に流れる第2電流I2に関する前記第2情報を検出する。第2検出部20は、ロゴスキーコイルを用いて第2電流I2を検出しているので、第2電流I2を検出するためのセンサとしてカレントトランス等を用いる場合に比べて小型化を図ることができる。また、第2検出部20である低周波検出部22は、第2電流I2に含まれる低周波成分の大きさ、つまり低周波電流の電流値を第2情報として検出する。低周波検出部22は、例えば、電流センサ21の出力に含まれる高周波成分を減衰させるローパスフィルタを備え、ローパスフィルタを通過した後の信号から、第1分岐回路BC11に流れる低周波電流の電流値を検出する。
【0055】
判定部30は、例えば、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、判定部30の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0056】
判定部30には、高周波検出部12(第1検出部10)が検出した第1情報と、複数の低周波検出部22(第2検出部20)がそれぞれ検出した複数の第2情報と、が入力される。判定部30は、高周波検出部12が検出した第1情報と、複数の低周波検出部22がそれぞれ検出した複数の第2情報とに基づいて、複数の分岐回路BC1でのアーク故障の有無を判定する。具体的には、判定部30は、高周波検出部12が検出した高周波電流の電流値が所定の第1閾値電流以上であり、かつ、低周波検出部22が検出した低周波電流の電流値が所定の第2閾値電流以上である場合、低周波検出部22の検出対象である分岐回路BC1でアーク故障が発生したと判定する。なお、判定部30は、高周波検出部12が検出した高周波電流の電流値が所定の第1閾値電流未満である、又は、低周波検出部22が検出した低周波電流の電流値が第2閾値電流未満である場合、低周波検出部22の検出対象である分岐回路BC1でアーク故障が発生していないと判定する。
【0057】
ここで、第1検出部10の検出対象の周波数域は、第2検出部20の検出対象の周波数域よりも高くなっている。つまり、第1検出部10である高周波検出部12の検出対象である第1電流I1の周波数域は、第2検出部20である低周波検出部22の検出対象である第2電流I2の周波数域よりも高い。したがって、判定部30は、第2電流に関する第2情報と、第2電流よりも周波数域が高い第1電流に関する第1情報とに基づいて、複数の分岐回路BC1の各々でアーク故障が発生しているか否かを判定する。このように、判定部30は、周波数域が異なる2つの情報(第1情報及び第2情報)に基づいて、複数の分岐回路BC1の各々でアーク故障が発生しているか否かを判定することができ、アーク故障が発生しているか否かをより正確に判定することができる。また、第2検出部20よりも高周波域の第1情報を検出する第1検出部10は、第2検出部20に比べて高性能の部品を必要とするが、第1検出部10を、1つではなく複数の分岐回路BC1でのアーク故障の検出に共用しているので、アーク故障検出システム1の製造コストを削減することができる。
【0058】
判定部30は、アーク故障の判定結果を出力部50に出力する。出力部50は、例えば、液晶ディスプレイ又は7セグメントLED等の表示部を含む。判定部30は、いずれかの分岐回路BC1でアーク故障が発生したと判定すると、アーク故障が発生したと判定した分岐回路BC1に関する情報(例えば、分岐回路BC1に割り当てられた回路番号又は名称など)を表示部に表示させる。これにより、アーク故障検出システム1は、アーク故障が発生したと判定した分岐回路BC1に関する情報をユーザに報知することができる。なお、出力部50は、表示部に限定されず、判定結果を音声で出力するスピーカでもよいし、判定結果をユーザが所持するスマートフォン等の情報端末に送信する通信デバイスでもよい。
【0059】
また、アーク故障検出システム1は、第1検出部10A,10Bと、判定部30と、出力部50と、を収容する器体70(
図3参照)を備えている。アーク故障検出システム1の器体70は、例えば、分電盤100の筐体101の内部において、例えば主幹ブレーカB1の左側のスペースに取り付けられている。なお、アーク故障検出システム1の器体70の取付位置は適宜変更が可能である。また、第2検出部20は、アーク故障検出システム1の器体70の外部に配置されているが、器体70の内部に収容されていてもよい。
【0060】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0061】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記の実施形態を基本構成と言う場合もある。
【0062】
本開示におけるアーク故障検出システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるアーク故障検出システム1の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。ここで言うIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここで言うコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1又は複数の電子回路で構成される。
【0063】
また、アーク故障検出システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることはアーク故障検出システム1に必須の構成ではなく、アーク故障検出システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、アーク故障検出システム1の少なくとも一部の機能、例えば、判定部30の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0064】
また上記の実施形態において、測定データなどの2値の比較において、「以上」としているところは「より大きい」であってもよい。つまり、2値の比較において、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」としているところは「以下」であってもよい。
【0065】
(3.1)変形例1
変形例1に係るアーク故障検出システム1及びそれを備える分電盤100について
図6を参照して説明する。なお、変形例1のアーク故障検出システム1は、受信部60を備える点を除いて、基本構成のアーク故障検出システム1と同様の構成を有しているので、共通の構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0066】
複数の分岐回路BC1のうち、共通の分岐回路BC1には複数のコンセント装置300が接続されている。共通の分岐回路BC1に接続される複数のコンセント装置300の各々は、第3検出部310と、送信部320と、を備えている。
【0067】
第3検出部310は、複数のコンセント装置300の各々に流れる第3電流I3、及び、複数のコンセント装置300の各々に発生する第3電圧のうち少なくとも一方に関する第3情報を検出する。ここでは、第3検出部310が、複数のコンセント装置300の各々に流れる第3電流I3に関する第3情報を検出しており、例えば第3電流I3の電流値を第3情報として検出している。
【0068】
送信部320は、第3検出部310の検出結果を送信する。送信部320は、アーク故障検出システム1の受信部60との間で無線通信を行う。送信部320と受信部60との間の通信には、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用することが好ましい。
【0069】
コンセント装置300と分岐ブレーカB2とは電線L30を介して接続される。コンセント装置300は、電線L30が接続される電線接続端子を備えている。また、コンセント装置300は、負荷機器LD1からの電線L50に設けられた差込プラグが着脱可能な状態で接続される刃受部を備えている。コンセント装置300の刃受部に負荷機器LD1の差込プラグを差込接続すると、分岐ブレーカB2から供給される電力がコンセント装置300を介して負荷機器LD1に供給される。
【0070】
アーク故障検出システム1の受信部60は、送信部320から送信される第3検出部310の検出結果を受信する。そして、判定部30は、第1検出部10が検出した第1情報と、複数の第2検出部20がそれぞれ検出した複数の第2情報と、受信部60が受信した第3検出部310の検出結果とに基づいて、複数のコンセント装置300の各々でアーク故障の有無を判定する。
【0071】
具体的には、判定部30は、第1検出部10が検出した第1電流I1の電流値が所定の第1閾値電流以上であり、かつ、第2検出部20が検出した第2電流I2の電流値が所定の第2閾値電流以上である場合、第2検出部20の検出対象である分岐回路BC1でアーク故障が発生したと判定する。ここで、判定部30には、複数のコンセント装置300が接続された分岐回路BC1の情報が予め設定されているものとする。判定部30は、複数のコンセント装置300が接続された分岐回路BC1でアーク故障が発生したと判定した場合、複数のコンセント装置300の送信部320から送信された複数の第3情報に基づいて、どのコンセント装置300に接続された電線でアーク故障が発生したか否かを更に判定する。すなわち、判定部30は、各コンセント装置300から受信した第3情報に基づいて、第3電流I3の電流値と所定の第3閾値電流とを比較し、第3電流I3の電流値が第3閾値電流以上であれば、当該コンセント装置300に接続された電線(分岐ブレーカB2とコンセント装置300とを接続する電線L30、及びコンセント装置300と負荷機器LD1とを接続する電線L50等)でアーク故障が発生したと判定する。なお、判定部30は、第3電流I3の電流値が第3閾値電流未満であれば、当該コンセント装置300に接続された電線ではアーク故障が発生していないと判定する。
【0072】
このように、変形例1では、分岐回路BC1に複数のコンセント装置300が接続されている場合に、判定部30が、どのコンセント装置300に接続された電線でアーク故障が発生しているか否かを判定しているので、アーク故障の発生箇所をより細かく特定することができる。
【0073】
(3.2)その他の変形例
上記の実施形態では、第1情報が第1電流I1に関する情報であるが、第1情報は、共通経路部40に発生する第1電圧に関する情報でもよい。第1検出部10が、共通経路部40に発生する第1電圧の電圧値を第1情報として検出する場合、例えば、共通経路部40と直列に第1電流が流れる電流検出用のシャント抵抗器を接続し、このシャント抵抗器の両端電圧から共通経路部40に発生する第1電圧の電圧値を検出すればよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、第2情報が、複数の分岐回路BC1の各々に流れる第2電流I2の電流値に関する情報であるが、第2情報は、複数の分岐回路BC1の各々に発生する第2電圧に関する情報でもよい。第2検出部20が、複数の分岐回路BC1の各々に発生する第2電圧を検出する場合、例えば、複数の分岐回路BC1の各々と直列に第2電流が流れる電流検出用のシャント抵抗器を接続し、このシャント抵抗器の両端電圧から第2電圧の電圧値を検出すればよい。
【0075】
なお、第1情報が第1電圧に関する情報を含み、第2情報が第2電圧に関する情報を含む場合、判定部30は、第1電圧の電圧値が第1閾値電圧よりも高く、かつ、第2電圧の電圧値が第2閾値電圧よりも高い場合、対応する分岐回路BC1でアーク故障が発生したと判定すればよい。また、判定部30は、第1電圧の電圧値が第1閾値電圧以下であるか、又は、第2電圧の電圧値が第2閾値電圧以下である場合、対応する分岐回路BC1でアーク故障が発生していないと判定すればよい。
【0076】
ここで、第1検出部10の検出対象である第1電圧の周波数域は、第2検出部20の検出対象である第2電圧の周波数域よりも高いことが好ましく、判定部30は、第2情報と、第2情報よりも周波数域が高い第1情報とに基づいて、複数の分岐回路BC1の各々でアーク故障が発生しているか否かをより正確に判定することができる。
【0077】
なお、第1検出部10は、第1情報として、第1電流I1に関する情報と第1電圧に関する情報の両方を検出してもよく、第2検出部20は、第2情報として、第2電流I2に関する情報と第2電圧に関する情報の両方を検出してもよい。
【0078】
また、上記の基本構成及び変形例1では、第1検出部10の検出対象の周波数域が、第2検出部20の検出対象の周波数域よりも高くなっているが、第1検出部10の検出対象の周波数域が、第2検出部20の検出対象の周波数域よりも低くなるように、第1検出部10及び第2検出部20が構成されていてもよい。
【0079】
上記の基本構成及び変形例1では、配電方式が単相3線方式である場合を例に説明したが、配電方式は単相2線式でもよいし、3相3線式でもよい。
【0080】
上記の基本構成及び変形例1で説明した分電盤100の形状及び大きさ、並びに筐体101に収容される内器(主幹ブレーカB1、分岐ブレーカB2等)の数、分岐回路BC1の数等は適宜変更が可能である。また、第2検出部20が備える電流センサ21、及び、第1検出部10が備える電流センサ11の構成及び配置等も適宜変更が可能である。
【0081】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0082】
第1の態様のアーク故障検出システム(1)は、交流電源(2)に接続される主幹回路(MC1)から分岐する複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々でのアーク故障の有無を検出するアーク故障検出システム(1)である。アーク故障検出システム(1)は、共通経路部(40,40A,40B)と、第1検出部(10,10A,10B)と、複数の第2検出部(20,20A,20B)と、判定部(30)と、を備える。共通経路部(40,40A,40B)は、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々に流れる電流が通過可能である。第1検出部(10,10A,10B)は、共通経路部(40,40A,40B)に流れる第1電流(I1)及び共通経路部(40,40A,40B)に発生する第1電圧のうち少なくとも一方に関する第1情報を検出する。複数の第2検出部(20,20A,20B)は、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々に対応して設けられる。複数の第2検出部(20,20A,20B)の各々は、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)のうち対応する分岐回路(BC1,BC11,BC12)に流れる第2電流(I2)、及び、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)のうち対応する分岐回路(BC1,BC11,BC12)に発生する第2電圧のうち少なくとも一方に関する第2情報を検出する。判定部(30)は、第1検出部(10,10A,10B)が検出した第1情報と、複数の第2検出部(20,20A,20B)がそれぞれ検出した複数の第2情報とに基づいて、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々でのアーク故障の有無を判定する。
【0083】
この態様によれば、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々に対応してそれぞれ第1情報を検出する複数の第1検出部を設ける場合に比べて、回路部品の数を削減することができる。
【0084】
第2の態様のアーク故障検出システム(1)では、第1の態様において、第1検出部(10,10A,10B)の検出対象の周波数域が、第2検出部(20,20A,20B)の検出対象の周波数域よりも高い。
【0085】
この態様によれば、判定部(30)は、周波数域が異なる第1情報と第2情報とに基づいて、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々でアーク故障の有無を判定するので、同じ周波数域の第1情報と第2情報とに基づいてアーク故障の有無を判定する場合に比べて、アーク故障の有無をより正確に判定することができる。さらに、第2検出部(20,20A,20B)よりも高周波域の第1情報を検出する第1検出部(10,10A,10B)は、第2検出部(20,20A,20B)に比べて高性能の部品を必要とするが、この第1検出部(10,10A,10B)を複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)でのアーク故障の検出に共用しているので、アーク故障検出システム(1)の製造コストを削減することができる。
【0086】
第3の態様のアーク故障検出システム(1)では、第1又は第2の態様において、第1検出部(10,10A,10B)は、共通経路部(40,40A,40B)に設けられるロゴスキーコイルを用いて、共通経路部(40,40A,40B)に流れる第1電流(I1)に関する第1情報を検出する。
【0087】
この態様によれば、第1検出部(10,10A,10B)は、ロゴスキーコイルを用いて第1電流(I1)を検出しているので、第1電流(I1)を検出するためのセンサとしてカレントトランスを用いる場合に比べて小型化を図ることができる。
【0088】
第4の態様のアーク故障検出システム(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、複数の第2検出部(20,20A,20B)の各々は、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)のうち対応する分岐回路(BC1,BC11,BC12)に設けられるロゴスキーコイルを用いて、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)のうち対応する分岐回路(BC1,BC11,BC12)に流れる第2電流(I2)に関する第2情報を検出する。
【0089】
この態様によれば、第2検出部(20,20A,20B)は、ロゴスキーコイルを用いて第2電流(I2)を検出しているので、第2電流(I2)を検出するためのセンサとしてカレントトランスを用いる場合に比べて小型化を図ることができる。
【0090】
第5の態様のアーク故障検出システム(1)では、第1~第4のいずれかの態様において、共通経路部(40,40A,40B)はコンデンサ(C1)を含む。
【0091】
この態様によれば、コンデンサ(C1)により、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々に流れる電流の高周波成分を共通経路部(40,40A,40B)に通過させることができる。
【0092】
第6の態様のアーク故障検出システム(1)では、第1~第5のいずれかの態様において、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)のうち共通の分岐回路(BC1,BC11,BC12)に接続される複数のコンセント装置(300)の各々が、複数のコンセント装置(300)の各々に流れる第3電流、及び、複数のコンセント装置(300)の各々に発生する第3電圧のうち少なくとも一方に関する第3情報を検出する第3検出部(310)と、第3検出部(310)の検出結果を送信する送信部(320)と、を備える。アーク故障検出システム(1)は、送信部(320)から送信される第3検出部(310)の検出結果を受信する受信部(60)を備える。判定部(30)は、第1検出部(10,10A,10B)が検出した第1情報と、複数の第2検出部(20,20A,20B)がそれぞれ検出した複数の第2情報と、受信部(60)が受信した第3検出部(310)の検出結果とに基づいて、複数のコンセント装置(300)の各々でのアーク故障の有無を判定する。
【0093】
この態様によれば、共通の分岐回路(BC1,BC11,BC12)に接続される複数のコンセント装置(300)のうち、どのコンセント装置(300)でアーク故障が発生しているかを判定することができる。
【0094】
第7の態様の分電盤(100)は、第1~第6のいずれかの態様のアーク故障検出システムと、主幹回路(MC1)に設けられた主幹ブレーカ(B1)と、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々に設けられた複数の分岐ブレーカ(B2)と、筐体(101)と、を備える。筐体(101)は、アーク故障検出システム(1)、主幹ブレーカ(B1)、及び複数の分岐ブレーカ(B2)を収容する。
【0095】
この態様によれば、複数の分岐回路(BC1,BC11,BC12)の各々に対応してそれぞれ第1情報を検出する複数の第1検出部を設ける場合に比べて、回路部品の数を削減することができる。
【0096】
上記態様に限らず、上記実施形態に係るアーク故障検出システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、アーク故障検出システム(1)の検出方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0097】
第2~第6の態様に係る構成については、アーク故障検出システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 アーク故障検出システム
2 交流電源
10,10A,10B 第1検出部
20,20A,20B 第2検出部
30 判定部
40 共通経路部
40A 第1共通経路部
40B 第2共通経路部
60 受信部
100 分電盤
101 筐体
300 コンセント装置
310 第3検出部
320 送信部
B1 主幹ブレーカ
B2 分岐ブレーカ
BC1 分岐回路
BC11 第1分岐回路
BC12 第2分岐回路
C1 コンデンサ
I1 第1電流
I2 第2電流
MC1 主幹回路