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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017264
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エンジンのスロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/10 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F02D11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119786
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 将吾
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065BA01
3G065CA22
3G065DA05
3G065KA33
(57)【要約】
【課題】個別に組み立てたスロットルボディ側組付体とギヤカバー側組立体とを結合する際に、中間ギヤを支持する支軸の位置決め孔への嵌入操作、及び中間ギヤと相手側のギヤとの噛合操作を容易に実施できるエンジンのスロットル装置を提供する。
【解決手段】スロットルボディ側組立体26とギヤカバー側組立体27との間に、スロットル軸4の被動ギヤ14、モータ15の駆動ギヤ16、及び支軸17に支持された中間ギヤ19を収容し、支軸17が、一端17aをスロットルボディ側組立体26のギヤケース9に固定され、ギヤカバー側組立体27のギヤカバー10に、組立体26,27の結合に伴って支軸17の他端17bが挿入される位置決め孔20が形成され、中間ギヤ19の端面からの支軸17の他端17bの突出長L1が、位置決め孔20の開口面からの駆動ギヤ16の突出長L2よりも長く設定されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルボディに対してスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されたスロットルボディ側組立体と、ギヤカバーに対してモータが取り付けられたギヤカバー側組立体とを結合してなり、前記スロットルボディに設けられたギヤケースと前記ギヤカバーとの間に画成されたギヤ収容室内に、前記スロットル軸の端部に固定された被動ギヤ、前記モータの出力軸に固定された駆動ギヤ、及び支軸に支持されて前記駆動ギヤの回転を前記被動ギヤに伝達する中間ギヤを収容したエンジンのスロットル装置において、
前記支軸は、一端を前記ギヤケースと前記ギヤカバーとの何れか一方に固定されて、前記中間ギヤと共に前記スロットルボディ側組立体または前記ギヤカバー側組立体を構成し、
前記中間ギヤは、前記スロットルボディ側組立体と前記ギヤカバー側組立体との結合に伴って、前記ギヤカバー側組立体の前記駆動ギヤまたは前記スロットルボディ組立体の前記被動ギヤと噛合し、
前記ギヤケースと前記ギヤカバーとの何れか他方に、前記スロットルボディ側組立体と前記ギヤカバー側組立体との結合に伴って前記支軸の他端が挿入される位置決め孔を備え、
前記中間ギヤの端面からの前記支軸の他端の突出長は、前記位置決め孔が開口する開口面からの前記駆動ギヤまたは前記被動ギヤの突出長よりも長く設定されている
ことを特徴とするエンジンのスロットル装置。
【請求項2】
前記支軸は、一端を前記ギヤケースに固定されて、前記中間ギヤと共に前記スロットルボディ側組立体を構成し、
前記ギヤカバーに、前記スロットルボディ側組立体と前記ギヤカバー側組立体との結合に伴って前記支軸の他端が挿入される位置決め孔を備え、
前記中間ギヤの端面からの前記支軸の他端の突出長は、前記位置決め孔が開口する前記ギヤカバーの開口面からの前記駆動ギヤの突出長よりも長く設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項3】
前記支軸は、一端を前記ギヤカバーに固定されて、前記中間ギヤと共に前記ギヤカバー側組立体を構成し、
前記ギヤケースに、前記スロットルボディ側組立体と前記ギヤカバー側組立体との結合に伴って前記支軸の他端が挿入される位置決め孔を備え、
前記中間ギヤの端面からの前記支軸の他端の突出長は、前記位置決め孔が開口する前記ギヤケースの開口面からの前記被動ギヤの突出長よりも長く設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項4】
前記中間ギヤは、前記駆動ギヤと噛合する大径部と、前記大径部の前記ギヤケース側に並設されて前記被動ギヤと噛合する小径部とからなり、
前記大径部の端面からの前記支軸の他端の突出長は、前記位置決め孔が開口する前記ギヤカバーの開口面からの前記駆動ギヤの突出長よりも長く設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項5】
前記中間ギヤは、前記駆動ギヤと噛合する大径部と、前記大径部の前記ギヤケース側に並設されて前記被動ギヤと噛合する小径部とからなり、
前記小径部の端面からの前記支軸の他端の突出長は、前記位置決め孔が開口する前記ギヤケースの開口面からの前記被動ギヤの突出長よりも長く設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項6】
前記モータは、前記位置決め孔が開口する方向に前記出力軸を向けた姿勢で前記ギヤカバーに取り付けられている
ことを特徴とする請求項2または4に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項7】
前記モータは、前記支軸の他端が突出する方向に前記出力軸を向けた姿勢で前記ギヤカバーに取り付けられている
ことを特徴とする請求項3または5に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項8】
前記中間ギヤは、互いに噛合して前記駆動ギヤの回転を前記被動ギヤに伝達する複数のギヤの中の1つである
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによりスロットル弁を開閉駆動するエンジンのスロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのスロットル装置として、例えば特許文献1には、スロットルボディとギヤカバーとの間に伝動室を画成し、内部に電動モータ及び減速装置を収容したものが開示されている。減速装置は、電動モータに固定されたピニオンギヤ、弁軸に固定されたファイナルギヤ、及び支軸に支持された中間ギヤからなり、中間ギヤの大径ギヤ部がピニオンギヤに噛合し、小径ギヤ部がファイナルギヤに噛合している。ギヤカバーには、中間ギヤを支持した支軸の一端が圧入されると共に、ピニオンギヤが固定された電動モータのフランジがビスで仮止めされ、さらに回路基板がビスで固着されている。
【0003】
このような構成により、ギヤカバー単体の状態で、中間ギヤの支軸の圧入、電動モータのフランジの仮止め、回路基板のビス止め等を実施して、ギヤカバー側組立体として組立可能となっている。従って、スロットル装置を組み立てる際には、弁軸等をスロットルボディに取り付けるスロットルボディ側組立体の組立作業に並行して、ギヤカバー側組付体の組立作業を実施可能となり、これにより生産能率の向上を図っている。
また、組立完了したスロットルボディ側組付体とギヤカバー側組立体とを結合する際には、ギヤカバー側の電動モータをスロットルボディ側の凹部に収容しながら、ギヤカバー側の中間ギヤの支軸の他端をスロットルボディ側の位置決め孔に嵌入させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-97627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のスロットル装置は、スロットルボディ側組付体とギヤカバー側組立体とを結合する作業を実施し難いという問題があった。
【0006】
即ち、組付体を互いに結合する際には、ギヤカバー側の支軸の他端をスロットルボディ側の位置決め孔に嵌入させるだけでなく、支軸に支持された中間ギヤの小径ギヤ部をスロットルボディ側のファイナルギヤに噛合させる必要がある。このため結合作業では、ギヤカバーをスロットルボディに接近させながら、支軸の他端を位置決め孔に嵌入させると共に、小径ギヤ部をファイナルギヤに噛合させている。
【0007】
小径ギヤ部とファイナルギヤとを噛合させるには、その互いの位置関係、換言するとギヤピッチを正しく保ち、且つギヤ同士の山と谷とを対応させるべく相対角度を微調整する必要がある。このような操作をしながら、これと並行して支軸の他端を位置決め孔に嵌入させる必要がある上、作業者はギヤカバーに遮られて肝心のギヤ同士の噛合状態や支軸と位置決め孔との位置関係を目視できない場合もある。結果として、スロットルボディ側組付体とギヤカバー側組立体との結合に、高難度且つ煩雑な作業が要求されるという問題が生じていた。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、個別に組み立てたスロットルボディ側組付体とギヤカバー側組立体とを結合する際に、中間ギヤを支持する支軸の位置決め孔への嵌入操作、及び中間ギヤと相手側のギヤとの噛合操作を容易に実施することができるエンジンのスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンのスロットル装置は、スロットルボディに対してスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されたスロットルボディ側組立体と、ギヤカバーに対してモータが取り付けられたギヤカバー側組立体とを結合してなり、スロットルボディに設けられたギヤケースとギヤカバーとの間に画成されたギヤ収容室内に、スロットル軸の端部に固定された被動ギヤ、モータの出力軸に固定された駆動ギヤ、及び支軸に支持されて駆動ギヤの回転を被動ギヤに伝達する中間ギヤを収容したエンジンのスロットル装置において、支軸が、一端をギヤケースとギヤカバーとの何れか一方に固定されて、中間ギヤと共にスロットルボディ側組立体またはギヤカバー側組立体を構成し、中間ギヤが、スロットルボディ側組立体とギヤカバー側組立体との結合に伴って、ギヤカバー側組立体の駆動ギヤまたはスロットルボディ組立体の被動ギヤと噛合し、ギヤケースとギヤカバーとの何れか他方に、スロットルボディ側組立体とギヤカバー側組立体との結合に伴って支軸の他端が挿入される位置決め孔を備え、中間ギヤの端面からの支軸の他端の突出長が、位置決め孔が開口する開口面からの駆動ギヤまたは被動ギヤの突出長よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0010】
その他の態様として、支軸が、一端をギヤケースに固定されて、中間ギヤと共にスロットルボディ側組立体を構成し、ギヤカバーに、スロットルボディ側組立体とギヤカバー側組立体との結合に伴って支軸の他端が挿入される位置決め孔を備え、中間ギヤの端面からの支軸の他端の突出長が、位置決め孔が開口するギヤカバーの開口面からの駆動ギヤの突出長よりも長く設定されていてもよい。
【0011】
その他の態様として、支軸が、一端をギヤカバーに固定されて、中間ギヤと共にギヤカバー側組立体を構成し、ギヤケースに、スロットルボディ側組立体とギヤカバー側組立体との結合に伴って支軸の他端が挿入される位置決め孔を備え、中間ギヤの端面からの支軸の他端の突出長が、位置決め孔が開口するギヤケースの開口面からの被動ギヤの突出長よりも長く設定されていてもよい。
【0012】
その他の態様として、中間ギヤが、駆動ギヤと噛合する大径部と、大径部のギヤケース側に並設されて被動ギヤと噛合する小径部とからなり、大径部の端面からの支軸の他端の突出長が、前記位置決め孔が開口するギヤカバーの開口面からの駆動ギヤの突出長よりも長く設定されていてもよい。
【0013】
その他の態様として、中間ギヤが、駆動ギヤと噛合する大径部と、大径部のギヤケース側に並設されて被動ギヤと噛合する小径部とからなり、小径部の端面からの支軸の他端の突出長が、位置決め孔が開口するギヤケースの開口面からの被動ギヤの突出長よりも長く設定されていてもよい。
【0014】
その他の態様として、モータが、位置決め孔が開口する方向に出力軸を向けた姿勢でギヤカバーに取り付けられていてもよい。
【0015】
その他の態様として、モータが、支軸の他端が突出する方向に出力軸を向けた姿勢でギヤカバーに取り付けられていてもよい。
【0016】
その他の態様として、中間ギヤが、互いに噛合して駆動ギヤの回転を被動ギヤに伝達する複数のギヤの中の1つであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエンジンのスロットル装置によれば、個別に組み立てたスロットルボディ側組付体とギヤカバー側組立体とを結合する際に、中間ギヤを支持する支軸の位置決め孔への嵌入操作、及び中間ギヤと相手側のギヤとの噛合操作を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のエンジンのスロットル装置を示す斜視図である。
図2】スロットル装置を別の角度から見た斜視図である。
図3】ギヤユニットを示す分解斜視図である。
図4】ギヤカバーを取り外してギヤ収容室内の各ギヤの噛合状態を示す側面図である。
図5】ギヤ収容室内の各ギヤの噛合状態を示す図4のV-V線断面図である。
図6】スロットルボディ側組立体とギヤカバー側組立体とを相対向させた状態を示す断面図である。
図7】スロットルボディ側組立体とギヤカバー側組立体とを結合すべく互いに接近させた状態を示す断面図である。
図8】ギヤケースに取り付けられるモータを治具を用いて位置決めした状態を示す説明図である。
図9】中間ギヤ及び支軸をギヤケース側に設けた別例1のスロットル装置を示す図6に対応する断面図である。
図10】別例1のスロットル装置を示す図7に対応する断面図である。
図11】一対の中間ギヤを備えた別例2のスロットル装置を示す図4に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化したエンジンのスロットル装置の一実施形態を説明する。
《全体構成》
図1は、本実施形態のエンジンのスロットル装置を示す斜視図、図2は、スロットル装置を別の角度から見た斜視図である。
本実施形態のスロットル装置1は、原動機付き自転車に走行用動力源として搭載される単気筒エンジンに装着されるものである。スロットル装置1のスロットルボディ2には、図示しないエンジンの筒内と連通するスロットルボア2aが貫通形成されている。車両への搭載状態では、スロットルボア2aの一端がエアクリーナに接続され、他端がエンジンの吸気マニホールドに接続され、エアクリーナで濾過された吸入空気がスロットルボア2a及び吸気マニホールドを経てエンジンの筒内に供給される。
【0020】
スロットルボア2a内にはスロットル弁3がスロットル軸4により開閉可能に支持され、スロットルボディ2に取り付けられたギヤユニット6によりスロットル軸4が駆動され、これによりスロットル弁3が開閉して吸入空気の量を調整する。なお、図1,2中の6は、スロットル弁3の開度を検出するスロットル開度センサであり、7は、図示しない吸気圧センサと接続される吸気圧取出し口である。以下の説明では、スロットル軸4の軸線C3に沿った方向をスロットル軸線方向と称する場合がある。
【0021】
《ギヤユニット6》
次いで、ギヤユニット6の詳細を説明する。
図3は、ギヤユニット6を示す分解斜視図、図4は、ギヤカバーを取り外してギヤ収容室内の各ギヤの噛合状態を示す側面図、図5は、ギヤ収容室内の各ギヤの噛合状態を示す図4のV-V線断面図である。
スロットル軸線方向に沿ったスロットルボディ2の一側にはギヤケース9が取り付けられ、ギヤケース9にはビス8によりギヤカバー10が締結されて内部にギヤ収容室11を画成している。スロットル軸4の一端はギヤ収容室11内に突出し、ボルト12によりワッシャ13を介して被動ギヤ14が締結されている。ギヤカバー10に形成されたモータ室10a内にはモータ15が配設され、その出力軸15aは、スロットル軸4の軸線C3と平行な軸線C1に沿ってギヤ収容室11内に突出して駆動ギヤ16が固定されている。なお、ギヤケース10は、スロットルボディ2に一体形成してもよい。
【0022】
ギヤ収容室11内において被動ギヤ14と駆動ギヤ16との間には支軸17が配設され、支軸17は、スロットル軸4の軸線C3と平行な軸線C2に沿った姿勢に保たれ、その一端17aがギヤケース9に貫設された圧入孔18内に圧入されている。支軸17には回転可能に中間ギヤ19が支持され、支軸17の他端17bは中間ギヤ19の端面からギヤカバー10側に突出して、ギヤカバー10に形成された位置決め孔20内に嵌入している。中間ギヤ19は、駆動ギヤ16と噛合する大径部19a、及び大径部19aのギヤケース9側に一体的に並設されて被動ギヤ14と噛合する小径部19bからなる。従って、モータ15による駆動ギヤ16の回転は中間ギヤ19の大径部19aに伝達され、さらに小径部19bから被動ギヤ14に伝達される。
【0023】
ギヤ収容室11内においてスロットル軸4には戻りバネ22が巻回され、スロットル軸4と共にスロットル弁3を閉方向に付勢している。戻りバネ22により被動ギヤ14が閉方向に回動すると、その一側がギヤ収容室11内のストッパ部23に当接して回動規制され、これによりスロットル弁3が全閉位置に保たれる。このような戻りバネ22の付勢力を受けながら、モータ15による駆動ギヤ16の回転方向に応じて各ギヤ14,16,19及びスロットル軸4を介してスロットル弁3が開閉される。
【0024】
モータ15の一対の接点15bは、ギヤケース9に設けられたコネクタ24と電気的に接続されている。車両への搭載状態では、コネクタ24に車体側のコントローラから延設されたハーネスが接続され、車両のスロットル操作量等に応じてコントローラによりモータ15が制御されてスロットル弁3を開閉駆動する。
【0025】
《組立体の結合のための各部の寸法設定》
詳細は後述するが、本実施形態のスロットル装置1は、スロットルボディ2側とギヤカバー10側との組立作業を並行して実施し、それぞれの組立完了後に互いに結合する手順を採っている。スロットルボディ2には、スロットル弁3、スロットル軸4、被動ギヤ14、ギヤケース9、支軸17及び中間ギヤ19が組み付けられ、以下、組付後の状態をスロットルボディ側組立体26と称する。また、ギヤカバー10には、モータ15及び駆動ギヤ16が組み付けられ、以下、組付後の状態をギヤカバー側組立体27と称する。
【0026】
図6は、スロットルボディ側組立体26とギヤカバー側組立体27とを相対向させた状態を示す断面図、図7は、スロットルボディ側組立体26とギヤカバー側組立体27とを結合すべく互いに接近させた状態を示す断面図である。
スロットルボディ側組立体26とギヤカバー側組立体27とを結合する際には、スロットルボディ側組立体26の支軸17の他端17bを、ギヤカバー側組立体27の位置決め孔20に嵌入させると共に、支軸17に支持された中間ギヤ19の大径部19aをギヤカバー側組立体27の駆動ギヤ16に噛合させる必要がある。
【0027】
このような結合作業を容易に実施するために、スロットル軸線方向において、中間ギヤ19の大径部19aの端面からの支軸17の他端17bの突出長をL1とし、位置決め孔20が開口するギヤカバー10の開口面からの駆動ギヤ16の突出長をL2としたときに、突出長L1を突出長L2よりも長く設定している(L1>L2)。詳しくは本実施形態では、支軸17の他端17bに形成されている面取り部28の長さl1、及び位置決め孔20の開口部に形成されている面取り部29の長さl2を考慮し、長さl1,l2の合計よりも大きな値L3を突出長L2に加算して突出長L1を設定している(L1=L2+L3,L3>l1+l2)。
【0028】
《組立体26,27の結合作業、及び達成される作用効果》
組立を完了した各組立体26,27の結合作業は、以下の手順で実施される。
図6に示すように、スロットルボディ側組立体26とギヤカバー側組立体27とを相対向させる。この配置では、支軸17の他端17bと位置決め孔20の開口部とが相対向し、中間ギヤ19の大径部19aの外周と駆動ギヤ16の外周とが相対向する。組立体26,27を次第に接近させると、まず、位置決め孔20に支軸17の他端17bが嵌入し始め、その後に、図7に示すように位置決め孔20への支軸17の嵌入長さが値L3に達した時点で、中間ギヤ19の大径部19aと駆動ギヤ16とが噛合し始める。
【0029】
組立体26,27の接近に伴って、支軸17の嵌入長さはL3を超えてさらに増加すると共に、大径部19aと駆動ギヤ16とのスロットル軸線方向の噛合長さが次第に増加する。そして図5に示すように、ギヤケース9とギヤカバー10とが結合した時点で、中間ギヤ19の大径部19aと駆動ギヤ16とが完全に噛合し、ビス8によりギヤケース9とギヤカバー10とを締結すると結合作業が完了する。
【0030】
以上のように組立体26,27を接近させる過程では、中間ギヤ19の大径部19aと駆動ギヤ16との噛合に先行して、位置決め孔20に支軸17の他端17bが嵌入し始める。従って、この時点以降では支軸17がいわゆる位置決めピンとして機能し、中間ギヤ19の大径部19aと駆動ギヤ16との位置関係、換言するとギヤピッチが定められ、この状態で大径部19aと駆動ギヤ16との噛合操作が行われる。
【0031】
特許文献1のスロットル装置では、組立体を結合する際に、位置決め孔への支軸の嵌入操作と、ギヤ同士の噛合操作とを並行して実施する必要がある。しかも、噛合操作では、小径ギヤ部とファイナルギヤとの位置関係を正しく保ちながら相対角度を微調整する必要があり、これらの要因により組立体の結合作業が困難になっていた。
【0032】
これに対して本実施形態では、位置決め孔20への支軸17の嵌入操作とギヤ同士の噛合とを同時に実施する必要がなく、それぞれの操作に集中できる。そして、位置決め孔20への支軸17の嵌入によりギヤピッチが定まった状態でギヤ同士の噛合操作を行うため、作業者は大径部19aと駆動ギヤ16との位置関係に特に注意を払うことなく、その相対角度を微調整するだけの簡単な操作で容易にギヤ同士の噛合を開始させることができる。
【0033】
加えて、ギヤ同士が噛合し始めた後にも、支軸17によりギヤピッチが保たれ続けて組立体26,27の接近が案内されるため、容易にギヤケース9とギヤカバー10とを正規の姿勢で結合することができる。作業中の作業者は、ギヤカバー10に遮られて肝心のギヤ同士の噛合状態や支軸17と位置決め孔20との位置関係を目視できない場合もあるが、そのような状況でも嵌入操作と噛合操作の何れも容易に実施することができる。
【0034】
特に本実施形態では、支軸17を位置決め孔20に挿入し易くする為に、支軸17の他端17b及び位置決め孔20の開口部にそれぞれ面取り部28,29が形成されているため、組立体26,27を接近させる過程では、面取り部28,29の長さl1,l2相当分だけ位置決め孔20に支軸17が嵌入し始めるタイミングが遅れる。換言すると、支面取り部28,29が無い場合には、軸17の突出長L1を駆動ギヤ16の突出長L2よりも長くすれば、ギヤ同士の噛合開始に先行して位置決め孔20に支軸17を嵌入させ始めることができる。しかし、面取り部28,29が形成されていると、その長さl1,l2相当分だけ実質的な支軸17の突出長L1が減少してしまう。
【0035】
そこで本実施形態では、長さl1,l2の合計l1+l2よりも大きな値L3を突出長L2に加算して突出長L1を設定している。従って、図7に基づき述べたように、ギヤ同士が噛合を開始した時点では、確実に位置決め孔20に支軸17が嵌入しており、これにより上記したギヤ同士の噛合操作に関する利点を達成することができる。
但し、具体的な面取り部28,29の長さl1,l2を考慮することなく、突出長L1を突出長L2よりも十分に大きな値に設定してもよい。
【0036】
一方、ギヤカバー側組立体27のモータ15は、ギヤカバー10の位置決め孔20が開口する方向に出力軸15aを向けた姿勢でギヤカバー10に取り付けられている。換言すると、位置決め孔20と出力軸15aとが同一方向に向いているため、図8に示すように、治具30を用いてモータ15を位置調整することができる。詳しくは、駆動ギヤ16と中間ギヤ19とを正規のギヤピッチに保つには、ギヤカバー10上で位置決め孔20を基準とした適切な位置にモータ15を固定する必要がある。治具30には、ギヤピッチに相当する間隔で位置決めピン30aと位置決め孔30bが形成され、位置決めピン30aをギヤカバー10の位置決め孔20に嵌入させ、位置決め孔20をモータ15の出力軸15aに篏合させる。これによりモータ15が正規位置に調整され、この状態でモータ15を固定すれば、位置決め孔20と出力軸15aとを正規のギヤピッチに保つことができる。
【0037】
ところで、本実施形態では、中間ギヤ19及び支軸17をスロットルボディ側組立体26に設け、ギヤカバー側組立体27との結合に伴って、支軸17をギヤカバー10の位置決め孔20に嵌入させ、中間ギヤ19の大径部19aをモータ15の出力軸15aに噛合させた。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、中間ギヤ19及び支軸17をギヤカバー側組立体27に設けてもよく、以下に別例1として説明する。なお、この別例1と後述の別例2では、実施形態と同一構成の箇所は同一部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に述べる。
【0038】
《別例1》
図9は、中間ギヤ19及び支軸17をギヤケース9側に設けた別例1のスロットル装置1を示す図6に対応する断面図、図10は、別例1のスロットル装置1を示す図7に対応する断面図である。
ギヤカバー10には、実施形態の位置決め孔20に代えて圧入孔41が形成され、この圧入孔41内に支軸17の一端17aが圧入されている。支軸17には中間ギヤ19が回転可能に支持されて、その大径部19aが駆動ギヤ16と噛合している。従って、この別例1では、ギヤカバー10、モータ15、駆動ギヤ16、中間ギヤ19及び支軸17によりギヤカバー側組立体27が構成されている。
【0039】
また、ギヤケース9には、実施形態の圧入孔18に代えて位置決め孔42が形成され、組立体26,27の結合時には、この位置決め孔42に支軸17の他端17bが圧入される。従って、この別例1では、スロットル弁3、スロットル軸4、被動ギヤ14及びギヤケース9によりスロットルボディ側組立体26が構成されている。
【0040】
この別例1においては、組立体26,27を結合する際に、ギヤカバー側組立体27の支軸17の他端17bを、スロットルボディ側組立体26の位置決め孔42に嵌入させると共に、支軸17に支持された中間ギヤ19の小径部19bをスロットルボディ側組立体26の被動ギヤ14に噛合させる必要がある。そこで、スロットル軸線方向において、中間ギヤ19の小径部19bの端面からの支軸17の他端17bの突出長をL1とし、位置決め孔42が開口するギヤケース9の開口面からの被動ギヤ14の突出長をL2としたときに、突出長L1を突出長L2よりも長く設定している(L1>L2)。なお、実施形態と同様に、支軸17の他端17bの面取り部28及び位置決め孔42の開口部の面取り部29を考慮した値L3に基づき突出長L1を設定してもよい。
【0041】
組立体26,27を次第に接近させると、まず、位置決め孔42に支軸17の他端17bが嵌入し始め、図10に示すように、位置決め孔42に支軸17がある程度嵌入した時点で、中間ギヤ19の小径部19bと被動ギヤ14とが噛合し始める。従って、重複する説明はしないが、位置決め孔42への支軸17の嵌入操作とギヤ同士の噛合とを順を追って実施することができ、それぞれの操作に集中できる。また、位置決め孔42への支軸17の嵌入によりギヤピッチが定まった状態でギヤ同士の噛合操作を行うため、容易にギヤ同士を噛合させることができる。
【0042】
また、ギヤカバー側組立体27に設けられたモータ15は、ギヤカバー10の支軸17が突出する方向に出力軸15aを向けた姿勢でギヤカバー10に取り付けられている。このため、図示はしないが実施形態の治具30と同様に、支軸17を嵌入させる位置決め孔と出力軸15aに篏合する位置決め孔とを備えた治具を用いて、モータ15を位置調整することができる。
【0043】
ところで、実施形態では、単一の中間ギヤ19を介して駆動ギヤ16の回転を被動ギヤ14に伝達したが、これに限るものではない。例えば、複数の中間ギヤを介して回転伝達してもよく、以下に別例2として説明する。
【0044】
《別例2》
図11は、一対の中間ギヤを備えた別例2のスロットル装置1を示す図4に対応する側面図である。
駆動ギヤ16の回転はアイドラギヤとして機能する第1中間ギヤ51に伝達され、さらに第2中間ギヤ52の大径部52aに伝達される。第2中間ギヤ52の小径部52bの回転は被動ギヤ14に伝達され、これによりスロットル軸4と共にスロットル弁3が開閉される。
【0045】
このような構成のスロットル装置1において、例えば駆動ギヤ16だけをギヤカバー側組立体27に設けた場合には、組立体26,27の結合に伴って駆動ギヤ16を第1中間ギヤ51と噛合させる。また、駆動ギヤ16及び第1中間ギヤ51をギヤカバー側組立体27に設けた場合には、組立体26,27の結合に伴って第1中間ギヤ51を第2中間ギヤ52の大径部52aと噛合させる。
【0046】
また、駆動ギヤ16、第1中間ギヤ51及び第2中間ギヤ52をギヤカバー側組立体27に設けた場合には、組立体26,27の結合に伴って第2中間ギヤ52の小径部52bを被動ギヤ14と噛合させる。重複する説明はしないが、何れの場合も実施形態と同様に突出長L1,L2を設定すれば、同様の作用効果を達成することができる。
【0047】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、原動機付き自転車に搭載される単一のスロットルボア2を備えたスロットル装置1に具体化したが、これに限るものではなく、種々の車両に搭載されたエンジンのスロットル装置に適用できる。また、また、走行用動力源以外の用途で利用されるエンジン、例えば発電機用のエンジン等に本発明のスロットル装置を適用してもよい。さらに、複数のスロットルボアを備えた多連スロットル装置として具体化してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 スロットル装置
2 スロットルボディ
3 スロットル軸
4 スロットル弁
9 ギヤケース
10 ギヤカバー
11 ギヤ収容室
14 被動ギヤ
15 モータ
15a 出力軸
16 駆動ギヤ
17 支軸
17a 一端
17b 他端
19 中間ギヤ
19a 大径部
19b 小径部
20,42 位置決め孔
26 スロットルボディ側組立体
27 ギヤカバー側組立体
51 第2の中間ギヤ(中間ギヤ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11