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  • 特開-電池セル用台座及び組電池 図1
  • 特開-電池セル用台座及び組電池 図2
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  • 特開-電池セル用台座及び組電池 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172647
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電池セル用台座及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241205BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090498
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 昌平
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA28
5H040AT06
(57)【要約】
【課題】熱暴走を起こした電池セルからの高熱がクーリングプレートを介して伝熱することを抑制する。また、熱暴走を起こした電池セルからの高熱がクーリングプレートを介して伝熱することを抑え、安全性の高い組電池を提供する。
【解決手段】電池セル用台座3は、クーリングプレート1と電池セル20との間に介在され、熱膨張材料からなる。また、組電池100は、複数の電池セル20が、電池セル用台座3に載置されているとともに、電池セル20同士が直列又は並列に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池において、クーリングプレートと電池セルとの間に介在され、前記電池セルを載置する台座であって、
熱膨張材料からなることを特徴とする、電池セル用台座。
【請求項2】
前記熱膨張材料の熱膨張開始温度が、150℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電池セル用台座。
【請求項3】
前記熱膨張材料が、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の電池セル用台座。
【請求項4】
複数の電池セルと、クーリングプレートとの間に、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池セル用台座が介在しているとともに、
前記電池セル用台座に前記電池セルが載置されており、前記電池セル同士が直列又は並列に接続されていることを特徴とする、組電池。
【請求項5】
前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーが充填され、前記電池セル用台座と前記ギャップフィラーとで形成される面上に、前記電池セルが載置されていることを特徴とする、請求項4に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池において、クーリングプレートと電池セルとの間に介在され、電池セルを載置する電池セル用台座、並びに組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合(すなわち、電池の異常時)、熱暴走を起こした電池セルからの高熱や火炎が、隣接する他の電池セルに伝播するおそれがある。そのため、電池セル間に熱伝達抑制シートを介在させて、熱暴走の伝達や延焼を防止している。
【0004】
また、図4に示すように、組電池100では、冷却機能を有するクーリングプレート10に電池セル20を載置して、電池セル20を冷却することも行われている。なお、同図に示す符号50が、熱伝達抑制シートである。クーリングプレート10としては、例えば特許文献1では、熱伝導特性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金などの金属板の内部に循環路を設け、循環路に冷却液を流通させている。また、クーリングプレート10と電池セル20との間に、放熱性のギャップフィラー30を介在させることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/013120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、クーリングプレート10は、例えば金属板であるために熱伝導度が高い。そのため、図4に示すように、仮に、熱暴走を起こした電池セルを符号20Aで示すが、この電池セル20Aからの高熱は、図4中の矢印で示すように、クーリングプレート10を介して隣接する電池セル20に容易に伝熱する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱暴走を起こした電池セルからの高熱がクーリングプレートを介して伝熱することを抑制することを目的とする。また、本発明は、熱暴走を起こした電池セルからの高熱がクーリングプレートを介して伝熱することを抑え、安全性の高い組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、電池セル用台座に係る下記[1]の構成により達成される。
【0009】
[1] 組電池において、クーリングプレートと電池セルとの間に介在され、前記電池セルを載置する台座であって、
熱膨張材料からなることを特徴とする、電池セル用台座。
【0010】
電池セル用台座に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]及び[3]に関する。
【0011】
[2] 前記熱膨張材料の熱膨張開始温度が、150℃以上であることを特徴とする、[1]に記載の電池セル用台座。
[3] 前記熱膨張材料が、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の電池セル用台座。
【0012】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[4]の構成により達成される。
【0013】
[4] 複数の電池セルと、クーリングプレートとの間に、[1]~[3]のいずれか1つに記載の電池セル用台座が介在しているとともに、
前記電池セル用台座に前記電池セルが載置されており、前記電池セル同士が直列又は並列に接続されていることを特徴とする、組電池。
【0014】
組電池に係る本発明の好ましい実施形態は、下記の[5]に関する。
【0015】
[5] 前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーが充填され、前記電池セル用台座と前記ギャップフィラーとで形成される面上に、前記電池セルが載置されていることを特徴とする、[4]に記載の組電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電池セル用台座は、熱暴走を起こした電池セルからの高熱を吸熱して膨張し、熱暴走を起こした電池セルを持ち上げてクーリングプレートとの間に空気層を形成する。空気層は断熱性に優れるため、電池の異常時において、熱暴走を起こした電池セルに隣接する電池セルへの伝熱を防止する。
【0017】
そのため、本発明の電池セル用台座を備える組電池は、電池の異常時において、熱暴走を起こした電池セルからの高熱や火炎が、隣接する電池セルに伝達することが抑えられ、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る組電池について、電池セルの周辺を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の電池セル用台座の配置例を示すものであって、(A)は一本の長い電池セル用台座を平行に配置した場合、(B)は短い電池セル用台座を複数、配置した場合を示している。
図3図3は、電池セル用台座の作用を説明するための模式図である。
図4図4は、従来の組電池を、図1に準じて示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る電池セル用台座及び組電池について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0020】
[電池セル用台座]
図1は、本発明の組電池100について、電池セルの周辺を模式的に示す断面図である。図示されるように、クーリングプレート10と電池セル20との間に、本発明の電池セル用台座3が介在している。
【0021】
本実施形態において、クーリングプレート10の種類は、冷却機能を有するものであれば特に制限はない。例えば特許文献1に記載の組電池のように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板の内部に循環路を設け、循環路に冷却液を流通させる構造を有する。なお、クーリングプレート10の種類として上記金属板の他に、熱伝導度の高いゲルシートを用いてもよい。
【0022】
電池セル用台座3は、熱膨張材料からなる。後述するように、電池セル用台座3は、電池セル20の通常の充放電時(すなわち、電池の通常使用時)には膨張せず、電池セル20が熱暴走を起こしたとき(すなわち、電池の異常時)に膨張する。そのため、熱膨張材料の熱膨張開始温度は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が更に好ましく、300℃以上がより更に好ましい。また、電池セル用台座3には電池セル20が載置されるため、熱膨張材料は電池セル20の重量に耐え得る圧縮強度が必要である。このような熱膨張開始温度及び圧縮強度を有し、取り扱いが容易であることから、熱膨張材料としては、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0023】
熱膨張性マイクロカプセルは、液状の低沸点炭化水素を樹脂製の殻(シェル)で包み込んだものであり、加熱により樹脂製の殻が軟化し、中の液状炭化水素が気体に変化し、その圧力でカプセル自体が膨張する。また、市場からも入手可能であり、株式会社クレハの「クレハマイクロスフェアー」や、松本油脂製薬株式会社の「マツモトマイクロスフェアーF、FNシリーズ」(登録商標)等の市販品を用いることができる。なお、これらは、袋に詰めて所定形状の台座とされ、電池セル20下部の所定箇所に設置される。
【0024】
熱分解型化学発泡剤としては、アゾジカーボンアミド(ADCA)、N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等が挙げられる。また、市場からも入手可能であり、大塚化学株式会社の「ユニフォーム AZ」等の市販品を用いることができる。なお、これらもまた、袋に詰めて所定形状の台座とされ、電池セル20下部の所定箇所に設置される。
【0025】
特に、熱膨張黒鉛は、180℃以上になると体積が約10倍に膨張し、膨張率も高いたことに加えて、熱膨張性マイクロカプセルや熱分解型化学発泡剤のように袋詰め工程が不要で、取り扱い性が高いため、より好ましい。ただし、熱膨張黒鉛は絶縁性が比較的劣るため、有機シート(シュリンクフィルム等)で被覆することが好ましい。
【0026】
また、電池セル用台座3は、電池セル20の角部を支持することが好ましい。図3に示すように、熱暴走を起こした電池セル20を符号20Aで示すが、この電池セル20Aからの高熱を電池セル用台座3が吸熱して膨張し、電池セル20Aを押し上げる。その際、電池セル用台座3が電池セル20Aの角部を支持していると、電池セル20Aを効率よく、確実に押し上げることができる。
【0027】
したがって、図2(A)に示すように、電池セル20の横幅Wとほぼ同じ長さの一本の長い電池セル用台座3を2本、電池セル20の厚みDとほぼ同じ間隔で平行に配置することが好ましい。あるいは、図2(B)に示すように、短い電池セル用台座3を複数、間隔を開けて電池セル20の横幅Wに沿って点在してもよい。
【0028】
電池セル用台座3は、例えば両面粘着テープにより、クーリングプレート10に接着される。
【0029】
また、クーリングプレート10と電池セル20との間に電池セル用台座3が介在していることより、組電池100において、電池セル用台座3の厚さ分だけクーリングプレート10と電池セル20との間に隙間が形成される。そこで、電池セル用台座3と電池セル用台座3との間に、電池セル用台座3と同じ厚さのギャップフィラー30を充填し、電池セル用台座3とギャップフィラー30とで形成される面上に、電池セル20を載置する。ギャップフィラー30は放熱性を有しており、ギャップフィラー30を介在させることにより、電池セル20の通常の充放電時(すなわち、電池の通常使用時)に、電池セル20からの熱を効率よく放熱することができる。
なお、介在させるギャップフィラー30の厚さは、ギャップフィラー30を介在させることによる作用効果を実現できる限り、電池セル用台座3の厚さと略同じであればよく、完全に同一の厚さでなくても構わない。
【0030】
なお、ギャップフィラー30は、グリース状のギャップフィラーを電池セル用台座3間に塗布し、硬化させればよい。
【0031】
このような電池セル用台座3を備えることにより、図3に示すように、電池セル20Aが熱暴走を起こしたとき(電池の異常時)に、電池セル20Aからの高熱を、電池セル20Aが載置された電池セル用台座3Aが吸熱して膨張する。図示されるように、電池セル用台座3(3A)の間にギャップフィラー30、電池セル20(20A)の間に熱伝達抑制シート50がそれぞれ配置されているため、電池セル用台座3Aは、その厚さ方向(図中の上方)に膨張する。そして、電池セル用台座3Aの膨張に伴って電池セル20Aが持ち上げられる。
【0032】
電池セル20Aが持ち上げられると、電池セル20Aとギャップフィラー30との間に空気層7が形成される。空気層7は断熱性が高いため、電池セル20Aからの高熱の伝播を抑えることができる。
【0033】
ところで、電池の異常において、電池セル用台座3を膨張させるための材料として、上述の熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも一方を用いることができるが、本実施形態の作用効果、すなわち、電池の異常時において、電池セル用台座3の膨張により、電池セル20Aが持ち上げられ、電池セル20Aとギャップフィラー30との間に、断熱性の高い空気層7が形成されることにより、電池セル20Aからの高熱の伝播を抑えることができる(すなわち、熱暴走の連鎖の抑制)という作用効果を妨げるものでなければ、例えば、上述の熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも一方を、ギャップフィラー30に混ぜ込んでもよい。
【0034】
ただし、その場合において、電池セル用台座3の膨張率とギャップフィラー30の膨張率が同等であると、上記した断熱性の高い空気層7が形成されないおそれがあるため、ギャップフィラー30の膨張率は、電池セル用台座3の膨張率よりも低くする必要がある。
【0035】
このように、組電池100において、熱膨張性の電池セル用台座3を用いることにより、熱暴走を起こした電池セル20Aによる熱暴走の伝播を防止することができる。
【0036】
[組電池]
図1に示すように、本発明の組電池100は、複数の電池セル20が、クーリングプレート10の面上の電池セル用台座3、又は電池セル用台座3とギャップフィラー30とで形成される面上に載置されている。また、電池セル20間には熱伝達抑制シート50が介在しており、電池ケース(図示せず)に収容されている。
【0037】
なお、熱伝達抑制シート50には制限はなく、従来から用いられているものを利用することができる。
【0038】
そして、図3に示すように、熱暴走を起こした電池セル20Aを、電池セル用台座3Aが持ち上げ、空気層7を形成する。これにより、熱暴走を起こした電池セル20Aによる熱暴走の伝播が防止されるため、本発明の組電池100は安全性が高いものとなる。
【0039】
また、電池セル20(20A)同士は、バスバーにより直列又は並列に接続されるが、熱暴走を起こした電池セル20Aが電池セル用台座3Aにより持ち上げられるため、持ち上げられた分だけ電極25と電極25Aとの間に高低差が生じる。そのため、バスバー15は、電極25(25A)の高さ方向の変位を吸収できるように、板ばねのように変形する湾曲部16を有することが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
3、3A 電池セル用台座
7 空気層
10 クーリングプレート
15 バスバー
16 湾曲部
20、20A 電池セル
30 ギャップフィラー
50 熱伝達抑制シート
100 組電池
図1
図2
図3
図4