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特開2024-172648クーリングプレート及びその製造方法、台座付き熱伝達抑制シート並びに組電池
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  • 特開-クーリングプレート及びその製造方法、台座付き熱伝達抑制シート並びに組電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172648
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】クーリングプレート及びその製造方法、台座付き熱伝達抑制シート並びに組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20241205BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/647
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090499
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 昌平
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031EE02
5H031EE03
5H031HH06
(57)【要約】
【課題】熱暴走を起こした電池セルからの高熱の伝熱を抑制できるクーリングプレートを提供する。また、このようなクーリングプレートを備え、安全性の高い組電池を提供する。
【解決手段】クーリングプレート1は、クーリングプレート本体部2と、クーリングプレート本体部2の面上に設置され、電池セル20を載置するための熱膨張材料からなる電池セル用台座3とを備える。台座付き熱伝達抑制シート40は、熱伝達抑制シート本体部45の片面又は両面に、電池セル20を載置するための熱膨張材料からなる電池セル用台座3を一体に設けてなる。組電池100は、複数の電池セル20が、クーリングプレート1の電池セル用台座3に載置されているとともに、電池セル20同士が直列又は並列に接続されている。組電池100は、第2のクーリングプレート47上に積層された台座付き熱伝達抑制シート40の電池セル用台座3に、電池セル20が載置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池において、電池セルを冷却するために用いられるクーリングプレートであって、
クーリングプレート本体部と、
前記クーリングプレート本体部の面上に設置され、電池セルを載置するための熱膨張材料からなる電池セル用台座と、
を備えることを特徴とする、クーリングプレート。
【請求項2】
前記熱膨張材料の熱膨張開始温度が、150℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のクーリングプレート。
【請求項3】
前記熱膨張材料が、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載のクーリングプレート。
【請求項4】
前記電池セル用台座が、前記電池セルの角部と接触することを特徴とする、請求項1に記載のクーリングプレート。
【請求項5】
複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚みのギャップフィラーが充填されていることを特徴とする、請求項1に記載のクーリングプレート。
【請求項6】
請求項1に記載のクーリングプレートの製造方法であって、
前記クーリングプレート本体部の面上に、前記電池セル用台座を設ける工程を有することを特徴とする、クーリングプレートの製造方法。
【請求項7】
複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーを充填する工程を有することを特徴とする、請求項6に記載のクーリングプレートの製造方法。
【請求項8】
組電池において、電池セルに添設される熱伝達抑制シートであって、
熱伝達抑制シート本体部の片面又は両面に、前記電池セルを載置するための熱膨張材料からなる電池セル用台座を一体に設けてなることを特徴とする、台座付き熱伝達抑制シート。
【請求項9】
前記熱膨張材料の熱膨張開始温度が、150℃以上であることを特徴とする、請求項8に記載の台座付き熱伝達抑制シート。
【請求項10】
前記熱膨張材料が、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項9に記載の台座付き熱伝達抑制シート。
【請求項11】
前記電池セル用台座が、前記電池セルの角部と接触する位置に設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の台座付き熱伝達抑制シート。
【請求項12】
複数の電池セルが、請求項1~4のいずれか1項に記載のクーリングプレートの前記電池セル用台座に載置されているとともに、前記電池セル同士が直列又は並列に接続されていることを特徴とする、組電池。
【請求項13】
複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーが充填され、前記電池セル用台座と前記ギャップフィラーとで形成される面上に、前記電池セルが載置されていることを特徴とする、請求項12に記載の組電池。
【請求項14】
複数の電池セルが、クーリングプレート上に積層された請求項8~11のいずれか1項に記載の台座付き熱伝達抑制シートの前記電池セル用台座に載置されているとともに、前記電池セル同士が直列又は並列に接続されていることを特徴とする、組電池。
【請求項15】
複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間及び前記クーリングプレートで形成される空間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーが充填され、前記電池セル用台座と前記ギャップフィラーとで形成される面上に、前記電池セルが載置されていることを特徴とする、請求項14に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に使用されるクーリングプレート及びその製造方法に関する。また、本発明は、電池セルを載置する台座を一体化した台座付き熱伝達抑制シートに関する。更に、本発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合(すなわち、電池の異常時)、熱暴走を起こした電池セルからの高熱や火炎が、隣接する他の電池セルに伝播するおそれがある。そのため、電池セル間に熱伝達抑制シートを介在させて、熱暴走の伝達や延焼を防止している。
【0004】
また、図6に示すように、組電池100では、冷却機能を有するクーリングプレート10に電池セル20を載置して、電池セル20を冷却することも行われている。なお、同図に示す符号50が、熱伝達抑制シートである。クーリングプレート10としては、例えば特許文献1では、熱伝導特性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金などの金属板の内部に循環路を設け、循環路に冷却液を流通させている。また、クーリングプレート10と電池セル20との間に、放熱性のギャップフィラー30を介在させることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/013120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、クーリングプレート10は、例えば金属板であるために熱伝導度が高い。そのため、図6に示すように、仮に、熱暴走を起こした電池セルを符号20Aで示すが、この電池セル20Aからの高熱は、図6中の矢印で示すように、クーリングプレート10を介して隣接する電池セル20に容易に伝熱する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱暴走を起こした電池セルからの高熱の伝熱を抑制できるクーリングプレートを提供することを目的とする。また、本発明は、伝熱を抑制したクーリングプレートを備え、安全性の高い組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、クーリングプレートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0009】
[1] 組電池において、電池セルを冷却するために用いられるクーリングプレートであって、
クーリングプレート本体部と、
前記クーリングプレート本体部の面上に設置され、電池セルを載置するための熱膨張材料からなる電池セル用台座と、
を備えることを特徴とする、クーリングプレート。
【0010】
クーリングプレートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[5]に関する。
【0011】
[2] 前記熱膨張材料の熱膨張開始温度が、150℃以上であることを特徴とする、[1]に記載のクーリングプレート。
[3] 前記熱膨張材料が、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のクーリングプレート。
[4] 前記電池セル用台座が、前記電池セルの角部と接触することを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1つに記載のクーリングプレート。
[5] 複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚みのギャップフィラーが充填されていることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1つに記載のクーリングプレート。
【0012】
また、本発明の上記目的は、クーリングプレートの製造方法に係る下記[6]の構成により達成される。
【0013】
[6] [1]~[5]のいずれか1つに記載のクーリングプレートの製造方法であって、
前記クーリングプレート本体部の面上に、前記電池セル用台座を設ける工程を有することを特徴とする、クーリングプレートの製造方法。
【0014】
クーリングプレートの製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[7]に関する。
【0015】
[7] 複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーを充填する工程を有することを特徴とする、[6]に記載のクーリングプレートの製造方法。
【0016】
また、本発明の上記目的は、台座付き熱伝達抑制シートに係る下記[8]の構成により達成される。
【0017】
[8] 組電池において、電池セルに添設される熱伝達抑制シートであって、
熱伝達抑制シート本体部の片面又は両面に、前記電池セルを載置するための熱膨張材料からなる電池セル用台座を一体に設けてなることを特徴とする、台座付き熱伝達抑制シート。
【0018】
台座付き熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[9]~[11]に関する。
【0019】
[9] 前記熱膨張材料の熱膨張開始温度が、150℃以上であることを特徴とする、[8]に記載の台座付き熱伝達抑制シート。
[10] 前記熱膨張材料が、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル又は熱分解型化学発泡剤であることを特徴とする、[8]又は[9]に記載の台座付き熱伝達抑制シート。
[11] 前記電池セル用台座が、前記電池セルの角部と接触する位置に設けられていることを特徴とする、[8]~[10]のいずれか1つに記載の台座付き熱伝達抑制シート。
【0020】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[12]の構成により達成される。
【0021】
[12] 複数の電池セルが、[1]~[5]のいずれか1つに記載のクーリングプレートの前記電池セル用台座に載置されているとともに、前記電池セル同士が直列又は並列に接続されていることを特徴とする、組電池。
【0022】
組電池に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[13]に関する。
【0023】
[13] 複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーが充填され、前記電池セル用台座と前記ギャップフィラーとで形成される面上に、前記電池セルが載置されていることを特徴とする、[12]に記載の組電池。
【0024】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[14]の構成により達成される。
【0025】
[14] 複数の電池セルが、クーリングプレート上に積層された[8]~[11]のいずれか1つに記載の台座付き熱伝達抑制シートの前記電池セル用台座に載置されているとともに、前記電池セル同士が直列又は並列に接続されていることを特徴とする、組電池。
【0026】
組電池に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[15]に関する。
【0027】
[15] 複数の前記電池セル用台座を有し、前記電池セル用台座間及び前記クーリングプレートで形成される空間に、前記電池セル用台座と同じ厚さのギャップフィラーが充填され、前記電池セル用台座と前記ギャップフィラーとで形成される面上に、前記電池セルが載置されていることを特徴とする、[14]に記載の組電池。
【発明の効果】
【0028】
本発明のクーリングプレートは、熱暴走を起こした電池セルからの高熱を熱膨張材料からなる電池セル用台座が吸熱して膨張し、熱暴走を起こした電池セルを持ち上げてクーリングプレート本体部との間に空気層を形成する。空気層は断熱性に優れるため、電池の異常時において、熱暴走を起こした電池セルに隣接する電池セルへの伝熱を防止する。
【0029】
そのため、本発明のクーリングプレートを備える組電池は、電池の異常時において、熱暴走を起こした電池セルからの高熱や火炎が、隣接する電池セルに伝達することが抑えられ、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態に係る組電池について、電池セルの周辺を模式的に示す断面図であるとともに、本発明の実施形態に係るクーリングプレートの構造を示す模式図である。
図2図2は電池セル用台座の配置例を示すものであって、(A)は一本の長い台座を平行に配置した場合、(B)は短い電池セル用台座を複数、配置した場合を示している。
図3図3は、図1に示すクーリングプレートの作用を説明するための模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る台座付き熱伝達抑制シートを示す断面図であり、(A)は電池セル間用の台座付き熱伝達抑制シート、(B)は最外側の電池セル用の台座付き熱伝達抑制シートを示している。
図5図5は、図4に示す台座付き熱伝達抑制シートを備える組電池を、図1に準じて示す模式図である。
図6図6は、従来の組電池及びクーリングプレートを、図1に準じて示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るクーリングプレート及びその製造方法、台座付き熱伝達抑制シート並びに組電池について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0032】
[クーリングプレート及びその製造方法]
図1に示すように、本発明のクーリングプレート1は、クーリングプレート本体部2と、クーリングプレート本体部2の面上に設置される熱膨張材料からなる電池セル用台座3とを有する。そして、組電池100において、電池セル用台座3に電池セル20が載置される。
【0033】
本実施形態において、クーリングプレート本体部2の種類は、冷却機能を有するものであれば特に制限はない。例えば、特許文献1のように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板の内部に循環路を設け、循環路に冷却液を流通させる構造を有する。なお、クーリングプレート10の種類として上記金属板の他に、熱伝導度の高いゲルシートを用いてもよい。
【0034】
後述するように、電池セル用台座3は、電池セル20の通常の充放電時(すなわち、電池の通常使用時)には膨張せず、電池セル20が熱暴走を起こしたとき(すなわち、電池の異常時)に膨張する。そのため、電池セル用台座3となる熱膨張材料の熱膨張開始温度は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が更に好ましく、300℃以上がより更に好ましい。また、電池セル用台座3には電池セル20が載置されるため、熱膨張材料は電池セル20の重量に耐え得る圧縮強度が必要である。このような熱膨張開始温度及び圧縮強度を有し、更には取り扱い性が容易であることから、熱膨張材料としては、熱膨張黒鉛、バーミキュライト、熱膨張性マイクロカプセル、及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0035】
熱膨張性マイクロカプセルは、液状の低沸点炭化水素を樹脂製の殻(シェル)で包み込んだものであり、加熱により樹脂製の殻が軟化し、中の液状炭化水素が気体に変化し、その圧力でカプセル自体が膨張する。また、市場からも入手可能であり、株式会社クレハの「クレハマイクロスフェアー」や、松本油脂製薬株式会社の「マツモトマイクロスフェアーF、FNシリーズ」(登録商標)等の市販品を用いることができる。なお、これらは、袋に詰めて所定形状の台座とされ、電池セル20下部の所定箇所に設置される。
【0036】
熱分解型化学発泡剤としては、アゾジカーボンアミド(ADCA)、N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等が挙げられる。また、市場からも入手可能であり、大塚化学株式会社の「ユニフォーム AZ」等の市販品を用いることができる。なお、これらもまた、袋に詰めて所定形状の台座とされ、電池セル20下部の所定箇所に設置される。
【0037】
特に、熱膨張黒鉛は、180℃以上になると体積が約10倍に膨張し、膨張率も高いたことに加えて、熱膨張性マイクロカプセルや熱分解型化学発泡剤のように袋詰め工程が不要で、取り扱い性が高いため、より好ましい。但し、熱膨張黒鉛は絶縁性が劣るため、有機シート(シュリンクフィルム等)で被覆することが好ましい。
【0038】
電池セル用台座3は、電池セル20の角部を支持することが好ましい。図3に示すように、熱暴走を起こした電池セル20を符号20Aで示すが、この電池セル20Aからの高熱を電池セル用台座3Aが吸熱して膨張し、電池セル20Aを押し上げる。その際、電池セル用台座3が電池セル20Aの角部を支持していると、電池セル20Aを効率よく、確実に押し上げることができる。
【0039】
したがって、図2(A)に示すように、電池セル20の横幅Wとほぼ同じ長さの一本の長い電池セル用台座3を2本、電池セル20の厚みDとほぼ同じ間隔で平行に配置することが好ましい。又は、図2(B)に示すように、短い電池セル用台座3を複数、間隔を開けて電池セル20の横幅Wに沿って点在してもよい。
【0040】
電池セル用台座3は、例えば両面粘着テープにより、クーリングプレート本体部2に接着される。
【0041】
また、複数の電池セル用台座3を有する場合に、電池セル用台座3と電池セル用台座3との間に、ギャップフィラー30を充填してもよい。クーリングプレート本体部2と電池セル20との間に電池セル用台座3を介在させることにより、電池セル用台座3の厚さ分だけクーリングプレート本体部2と電池セル20との間に隙間が形成される。そこで、電池セル用台座3と電池セル用台座3との間に、電池セル用台座3と同じ厚さのギャップフィラー30を充填し、電池セル用台座3とギャップフィラー30とで形成される面上に電池セル20を載置する。ギャップフィラー30は放熱性を有しており、ギャップフィラー30を介在させることにより、電池セル20の通常の充放電時(すなわち、電池の通常使用時)に電池セル20からの熱を効率よく放熱することができる。
なお、介在させるギャップフィラー30の厚さは、ギャップフィラー30を介在させることによる作用効果を実現できる限り、電池セル用台座3の厚さと略同じであればよく、完全に同一の厚さでなくても構わない。
【0042】
なお、ギャップフィラー30は、グリース状のギャップフィラーを電池セル用台座3間に塗布し、硬化させればよい。
【0043】
本発明のクーリングプレート1は、このように構成される。そして、図3に示すように、電池セル20Aが熱暴走を起こしたとき(電池の異常時)に、電池セル20Aからの高熱を、電池セル20Aが載置された電池セル用台座3Aが吸熱して膨張する。図示されるように、電池セル用台座3(3A)の間にギャップフィラー30、電池セル20(20A)の間に熱伝達抑制シート50がそれぞれ配置されているため、電池セル用台座3Aは、その厚さ方向(図中の上方)に膨張する。そして、電池セル用台座3Aの膨張に伴って電池セル20Aが持ち上げられる。
【0044】
電池セル20Aが持ち上げられると、電池セル20Aとギャップフィラー30との間に空気層7が形成される。空気層7は断熱性が高いため、電池セル20Aからの高熱の伝播を抑えることができる。
【0045】
ところで、電池の異常において、電池セル用台座3を膨張させるための材料として、上述の熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも一方を用いることができるが、本実施形態の作用効果、すなわち、電池の異常時において、電池セル用台座3の膨張により、電池セル20Aが持ち上げられ、電池セル20Aとギャップフィラー30との間に、断熱性の高い空気層7が形成されることにより、電池セル20Aからの高熱の伝播を抑えることができる(すなわち、熱暴走の連鎖の抑制)という作用効果を妨げるものでなければ、例えば、上述の熱膨張性マイクロカプセル及び熱分解型化学発泡剤のうち少なくとも一方を、ギャップフィラー30に混ぜ込んでもよい。
【0046】
ただし、その場合において、電池セル用台座3の膨張率とギャップフィラー30の膨張率が同等であると、上記した断熱性の高い空気層7が形成されないおそれがあるため、ギャップフィラー30の膨張率は、電池セル用台座3の膨張率よりも低くする必要がある。
【0047】
このように、組電池100において、熱膨張性の電池セル用台座3を備える本発明のクーリングプレート1を用いることにより、熱暴走を起こした電池セル20Aによる熱暴走の伝播を防止することができる。
【0048】
[台座付き熱伝達抑制シート]
図4に示すように、本発明の台座付き熱伝達抑制シート40は、熱伝達抑制シート本体部45に、電池セル用台座3を一体に付設したものである。なお、図4(A)は、電池セル間用の台座付き熱伝達抑制シート40であり、熱伝達抑制シート本体部45の両面の端部(図では下端)に、上記の電池セル用台座3が設けられている。また、図4(B)は、最外側の電池セル用の台座付き熱伝達抑制シート40であり、熱伝達抑制シート本体部45の片面の下端に上記の電池セル用台座3が設けられている。なお、熱伝達抑制シート本体部45と電池セル用台座3とは、例えば両面粘着テープにより接合される。
【0049】
台座付き熱伝達抑制シート40は、図中に点線で示す一般的なクーリングプレート(以下、本発明の「クーリングプレート1」と区別するために、「第2のクーリングプレート47」という。)の面上に積層されて使用される。この第2のクーリングプレート47は、上記した本発明のクーリングプレート1おけるクーリングプレート本体部2、又は図6に示したクーリングプレート10に相当するものであり、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板の内部に循環路を設け、循環路に冷却液を流通させる構造を有する。また、同じく図中に点線で示す電池セル20を、電池セル用台座3に載置して使用される。
【0050】
熱伝達抑制シート本体部45の種類には特に制限はなく、従来から用いられているものを利用することができるが、下記の配合物を含有することが好ましい。
【0051】
熱伝達抑制シート本体部45は、無機粒子と有機繊維とを有する断熱材とすることができる。また、断熱材は、無機粒子及び有機繊維の間に、複数の三次元的に連結した空孔を有する。なお、有機繊維は、表面の少なくとも一部を被覆する溶着部を有し、無機粒子の少なくとも一部は、溶着部により有機繊維の表面に溶着されている。これにより、有機繊維の表面は無機粒子で覆われた構成となっている。
【0052】
このように構成された断熱材においては、複数の三次元的に連結した空孔を有するため、空気断熱による効果が得られ、断熱性能を向上させることができる。また、断熱材は、高い柔軟性を有する有機繊維を含んでいるため、断熱材の柔軟性を高めることができるとともに、有機繊維同士が絡まりやすくなり、シート強度を向上させる効果を得ることができる。さらに、空孔が存在することにより、シート全体のクッション性が向上するため、電池セルが充放電時に膨張した際に、断熱材は、電池セルの膨張分を吸収できる。したがって、このような断熱材を有する熱伝達抑制シート本体部45の破壊を抑制することができる。
【0053】
また、空孔の少なくとも一部が断熱材の表面に連通しており、外方に向けて開口していることが好ましい。空孔がこのように構成されていると、隣接する電池セルが熱暴走した際に、断熱材が高温になり、有機繊維等が分解された場合であっても、その分解ガスがシート内部にとどまることなく、空孔を介して外部に放出される。したがって、この点からも、シートの破壊を防止する効果を得ることができる。
【0054】
上記したように、有機繊維の外周面における溶着部が無機粒子を有機繊維に固着させていると、無機粒子の脱落(粉落ち)を抑制する効果を得ることができる。したがって、例えば、電池セルの一部が膨張して熱伝達抑制シート本体部45に圧縮応力や衝撃が与えられた場合でも、断熱材の形状を保持する効果をより一層高めることができ、断熱材の圧縮変形による断熱効果の低下を防止することができる。
【0055】
また、断熱材は、無機繊維を含むことが好ましい。無機繊維は高温でも分解しにくいため、電池セルが熱暴走し、電池セルに隣接して配置されている熱伝達抑制シート本体部45が高温に晒された場合に、断熱材中の有機繊維が分解しても、無機繊維が残存するため、断熱材の形状を確実に保持することができる。また、比較的硬い無機繊維に、柔軟性を有する有機繊維が絡まりやすく、無機繊維と有機繊維とにより立体的な骨格が形成されるため、断熱材の強度をより一層向上させることができる。
【0056】
なお、断熱材は、湿式法及び乾式法のいずれの方法で製造されていてもよい。
【0057】
更に、断熱材の厚さ方向と直交する第1面及び第2面の少なくとも一方に、マイカシートが積層されていてもよい。マイカは、耐熱性及び絶縁性に優れており、さらにマイカを含む材料をシート状に加工したマイカシートは、耐衝撃性にも優れている。したがって、電池セルが高温により破裂し、飛散物が発生した場合に、マイカシートによって断熱材が保護されるため、断熱材が破損することを抑制することができる。その結果、電池セル間で高い断熱性を維持することができる。
【0058】
[組電池(その1)]
図1に示すように、本発明の組電池100は、複数の電池セル20が、本発明のクーリングプレート1の電池セル用台座3、又は電池セル用台座3とギャップフィラー30とで形成される面上に載置されている。また、電池セル20間には、熱伝達抑制シート50が介在しており、電池ケース(図示せず)に収容されている。
【0059】
なお、熱伝達抑制シート50は、上記した台座付き熱伝達抑制シート40における熱伝達抑制シート本体部45を用いることもできるし、他の一般的な熱伝達抑制シート(断熱シート)を用いることもできる。
【0060】
そして、図3に示すように、熱暴走を起こした電池セル20Aを電池セル用台座3Aが持ち上げ、空気層7を形成する。これにより、熱暴走を起こした電池セル20Aによる熱暴走の伝播が防止されるため、本発明の組電池100は安全性が高いものとなる。
【0061】
また、電池セル20(20A)同士は、バスバーにより直列又は並列に接続されるが、熱暴走を起こした電池セル20Aが電池セル用台座3Aにより持ち上げられるため、持ち上げられた分だけ電極25と電極25Aとの間に高低差が生じる。そのため、バスバー15は、電極25(25A)の高さ方向の変位を吸収できるように、板ばねのように変形する湾曲部16を有することが好ましい。
【0062】
[組電池(その2)]
図5は、図4(A)に示した台座付き熱伝達抑制シート40を備える組電池100を、図1に準じて示す模式図である。組電池100は、台座付き熱伝達抑制シート40を、第2のクーリングプレート47上に積層するとともに、電池セル用台座3に電池セル20を載置して電池セル20間に配置される。その際、電池セル用台座3及び第2のクーリングプレート47で形成される空間に、電池セル用台座3と同じ厚さのギャップフィラー30を充填し、電池セル用台座3とギャップフィラー30とで形成される面上に、電池セル20を載置してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、10 クーリングプレート
2 クーリングプレート本体部
3、3A 電池セル用台座
7 空気層
15 バスバー
16 湾曲部
20、20A 電池セル
30 ギャップフィラー
40 台座付き熱伝達抑制シート
45 熱伝達抑制シート本体部
47 第2のクーリングプレート
50 熱伝達抑制シート
100 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6