(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017265
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】接合部材
(51)【国際特許分類】
E04C 5/01 20060101AFI20240201BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240201BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20240201BHJP
E04C 3/12 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04C5/01
E04B1/30 Z
E04B1/26 F
E04C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119789
(22)【出願日】2022-07-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 前田建設工業株式会社及び帝人株式会社が、令和3年度 CLT等木質建築部材技術開発・普及事業成果報告会(WEB報告会)にて、木造またはそれを含む混構造の接合方法について公開した。(公開日:令和4年3月7日)
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 義隆
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 征義
(72)【発明者】
【氏名】牛谷 和弥
(72)【発明者】
【氏名】松尾 淳
【テーマコード(参考)】
2E163
2E164
【Fターム(参考)】
2E163FA02
2E163FA12
2E163FB36
2E163FB41
2E163FB42
2E163FB43
2E163FB46
2E163FF02
2E164EA03
(57)【要約】
【課題】木質部材を用いて架構を組む場合において、木質部材のめり込みによる架構の接合部の剛性の低減を抑制することができる接合部材を提供する。
【解決手段】木造の梁及び木造の柱の内の少なくとも一方を含む木質部材を用いて架構を組むための接合部材は、木質部材の延在方向の一端面に面するプレート部材を含む金物と、木質部材の一端面に形成される挿入孔に挿入される筒状部材と、筒状部材の内部空間に挿入される棒状部材と、棒状部材の一端部を金物に固定する第1締結具と、棒状部材の他端部を筒状部材に固定する第2締結具と、を備え、筒状部材は、棒状部材の一端部が第1締結具によって金物に固定され、且つ棒状部材の他端部が第2締結具によって筒状部材に固定された固定状態において、筒状部材の金物側に位置する一端面がプレート部材と当接するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造の梁及び木造の柱の内の少なくとも一方を含む木質部材を用いて架構を組むための接合部材であって、
前記木質部材の延在方向の一端面に面するプレート部材を含む金物と、
前記木質部材の前記一端面に形成される挿入孔に挿入される筒状部材と、
前記筒状部材の内部空間に挿入される棒状部材と、
前記棒状部材の一端部を前記金物に固定する第1締結具と、
前記棒状部材の他端部を前記筒状部材に固定する第2締結具と、を備え、
前記筒状部材は、前記棒状部材の前記一端部が前記第1締結具によって前記金物に固定され、且つ前記棒状部材の前記他端部が前記第2締結具によって前記筒状部材に固定された固定状態において、前記筒状部材の前記金物側に位置する一端面が前記プレート部材と当接するように構成される、
接合部材。
【請求項2】
前記プレート部材には、前記棒状部材によって貫通される貫通孔が形成されており、
前記第1締結具は、前記棒状部材の前記一端部に螺合される第1ナットを含み、
前記第1ナットは、前記固定状態において、前記プレート部材を挟んで前記筒状部材とは反対側に位置している、
請求項1に記載の接合部材。
【請求項3】
前記第2締結具は、前記棒状部材の前記他端部に螺合される第2ナットを含み、
前記筒状部材は、前記固定状態において、前記筒状部材の前記金物側とは反対側に位置する他端面が前記第2ナットと当接するように構成される、
請求項1又は2に記載の接合部材。
【請求項4】
前記木質部材には、内部に前記棒状部材の前記他端部が収容される収容空間が形成されており、
前記木質部材の表面には、前記収容空間と連通する開口が形成されている、
請求項1又は2に記載の接合部材。
【請求項5】
前記筒状部材は、ラグスクリューボルトを含む、
請求項1又は2に記載の接合部材。
【請求項6】
前記筒状部材は、前記ラグスクリューボルトに継がれる配管をさらに含む、
請求項5に記載の接合部材。
【請求項7】
前記金物は、前記木質部材の前記延在方向と交差する方向に向いている交差プレート部材をさらに含む、
請求項1又は2に記載の接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、木造の梁及び木造の柱の内の少なくとも一方を含む木質部材を用いて架構を組むための接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、鋼製又はコンクリート造の接合部材が木質梁の延在方向に直交して木質梁に当接する当接面を含んでおり、この当接面と木質梁とを緊張材によって互いに圧着していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木質梁のような木質部材を用いて架構を組む場合、接合部材が木質部材にめり込んでしまい、架構の接合部の剛性が低減する場合がある。しかしながら、特許文献1には、木質部材のめり込みによる架構の接合部の剛性の低減について何ら考慮されていない。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、木質部材を用いて架構を組む場合に、木質部材のめり込みよる架構の接合部の剛性の低減を抑制することができる接合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る接合部材は、木造の梁及び木造の柱の内の少なくとも一方を含む木質部材を用いて架構を組むための接合部材であって、前記木質部材の延在方向の一端面に面するプレート部材を含む金物と、前記木質部材の前記一端面に形成される挿入孔に挿入される筒状部材と、前記筒状部材の内部空間に挿入される棒状部材と、前記棒状部材の一端部を前記金物に固定する第1締結具と、前記棒状部材の他端部を前記筒状部材に固定する第2締結具と、を備え、前記筒状部材は、前記棒状部材の前記一端部が前記第1締結具によって前記金物に固定され、且つ前記棒状部材の前記他端部が前記第2締結具によって前記筒状部材に固定された固定状態において、前記筒状部材の前記金物側に位置する一端面が前記プレート部材と当接するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の接合部材によれば、木質部材を用いて架構を組む場合において、木質部材のめり込みによる架構の接合部の剛性の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る接合部材を含む架構の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る接合部材の構成を概略的に示す図である。
【
図3A】一実施形態に係る金物の構成を概略的に示す図である。
【
図3B】一実施形態に係る金物の構成を概略的に示す図である。
【
図4A】一実施形態に係るラグスクリューボルトの一端面の付近を拡大して示す説明図である。
【
図4B】一実施形態に係るラグスクリューボルトの他端面の付近を拡大して示す説明図である。
【
図5】幾つかの実施形態に係る筒状部材の構成を説明するための図である。
【
図6】幾つかの実施形態に係る棒状部材の構成を説明するための図である。
【
図7】幾つかの実施形態に係る金物の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による接合部材について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示に係る接合部材は、木造の梁及び木造の柱の内の少なくとも一方を含む木質部材を用いて架構を組むためのものである。
図1は、本開示に係る接合部材1を含む架構100の一例を示す図である。
図1に例示する形態では、架構100は、木造の梁101と木造の柱102とが接合部材1によって接合されることで組み立てられている。木造の柱102は、下側柱102A(102)と、下側柱102Aより上方に配置される上側柱102B(102)と、を含んでいる。接合部材1は、木造の梁101の延在方向D1の一方側の一端部103、下側柱102Aの柱頭部105、及び上側柱102Bの柱脚部107のそれぞれと緊結されている。
【0011】
尚、
図1に例示する形態では、接合部材1が木造の梁101と木造の柱102とを接合しているが、本開示は、この形態に限定されない。例えば、接合部材1は、コンクリート造の柱と木造の梁とを接合してもよいし、木造の上側柱とコンクリート造の下側柱とを接合してもよいし、複数の木造の梁を互いに接合してもよい。
【0012】
以下、接合部材1に木造の梁101(単に「梁101」と記載する)が緊結される場合を例にして、接合部材1の構成及び作用・効果について説明する。梁101の延在方向D1のうち接合部材1に向かう方向を一方とし、接合部材1から離れる方向を他方とする。梁101は、例えば、板(ラミナ)を積層した集成材で形成されており、梁101の延在方向D1に直交する方向に切断された断面の拡大化が図られている。
【0013】
(構成)
図2は、一実施形態に係る接合部材1の構成を概略的に示す図である。
図2に例示するように、接合部材1は、金物2と、筒状部材4と、棒状部材6と、第1締結具8と、第2締結具10と、を含む。
【0014】
一実施形態では、梁101の延在方向D1の一方側の一端面110には、挿入孔112が形成されている。挿入孔112は、梁101の一端面110から梁101の延在方向D1の他方側の他端面114に向かって延びている。挿入孔112の先端111(延在方向D1の他方側の他端)は、延在方向D1において、梁101の一端面110と他端面114との間に位置している。つまり、挿入孔112は梁101を貫通していない。
【0015】
図2に例示するように、金物2は、梁101の一端面110に面するプレート部材12を含む。プレート部材12は、板形状を有する金属製の金属板である。一実施形態では、プレート部材12には、棒状部材6によって貫通される貫通孔13が形成されている。
図3A及び
図3Bを参照して、一実施形態に係る金物2の構成を具体的に説明する。
【0016】
図3Aは、一実施形態に係る金物2の構成を概略的に示す図であって、金物2の側面図を図示している。
図3Aにおいて、金物2は上下方向D2と直交する水平方向のうち延在方向D1と直交する幅方向D3の一方から視認されている。
図3Bは、一実施形態に係る金物2の構成を概略的に示す図であって、金物2の平面図を図示している。
図3Bにおいて、金物2は上下方向D2の上方から視認されている。
【0017】
一実施形態では、
図3A及び
図3Bのそれぞれに例示するように、金物2は、本体部50と、本体部50から突出する本体部側突出部52と、プレート部材12から突出するプレート部材側突出部54と、本体部側突出部52とプレート部材側突出部54とを挟持する挟持部56と、をさらに含んでいる。一実施形態では、本体部50は直方体形状を有している。本体部側突出部52は、本体部50の側面から梁101に向かうように突出している。プレート部材側突出部54は、プレート部材12の梁101側とは反対側の面(延在方向D1の一方側の面)から突出している。挟持部56は、一対の板状の鋼板56A、56Bを含んでいる。本体部側突出部52及びプレート部材側突出部54のそれぞれは、一方側の鋼板56A及び一方側の鋼板56Aよりも幅方向D3の他方側に位置する他方側の鋼板56Bによって挟持されている。一方側の鋼板56Aは、本体部側突出部52及びプレート部材側突出部54のそれぞれと高力ボルトのような締結具57を介して互いに結合されている。一方側の鋼板56Aは、この締結具57を介して他方側の鋼板56Bとも互いに結合されている。
【0018】
一実施形態では、
図3Aに例示するように、金物2は、上下方向D2の下側に向いている下側の交差プレート部材58、及び上下方向D2の上側に向いている上側の交差プレート部材59をさらに含んでいる。下側の交差プレート部材58及び上側の交差プレート部材59のそれぞれは、板形状を有している。下側の交差プレート部材58は、本体部50の下面に取り付けられ、下側柱102Aと緊結されている。上側の交差プレート部材59は、本体部50の上面に取り付けられ、上側柱102Bと緊結されている。
【0019】
図2に例示するように、筒状部材4は、筒形状を有しており、上述した梁101の挿入孔112に挿入される。筒状部材4の両端面は開口している。一実施形態では、筒状部材4は、外周にねじ山14が形成されている金属製のラグスクリューボルト4A(4)を含む。ラグスクリューボルト4Aは、挿入孔112の深さ(延在方向D1の長さ)とほぼ同一の長さを有する。挿入孔112に挿入されているラグスクリューボルト4Aのレイアウトについては後述する。尚、本開示は、筒状部材4をラグスクリューボルト4Aに限定するものではない。幾つかの実施形態では、筒状部材4は鋼管を含む。
【0020】
一実施形態では、接合部材1は、複数のラグスクリューボルト4Aを含んでいる。複数のラグスクリューボルト4Aは、上方のラグスクリューボルト4Aと、上方のラグスクリューボルト4Aよりも下方に位置する下方のラグスクリューボルト4Aと、を含む。上下方向D2において、上方のラグスクリューボルト4Aは、梁101の軸線Oを挟んで下方のラグスクリューボルト4Aとは反対側に位置している。このような構成によれば、上下方向D2の両側から梁101に作用する外力(例えば、地震)に対する耐力を向上させることができる。幾つかの実施形態では、複数のラグスクリューボルト4Aは、幅方向D3において、互いにずれて配置されている(
図3B参照)。
【0021】
棒状部材6は、棒状形状を有しており、筒状部材4の内部空間5(
図4A、
図4Bを参照)に挿入される。このような棒状部材6は、例えば、PC鋼棒、PC鋼線、PC鋼より線、鉄筋などである。棒状部材6は、筒状部材4よりも長い。棒状部材6の延在方向D1の一方側の一端部16、及び棒状部材6の延在方向D1の他方側の他端部18のそれぞれには、ネジ山20が形成されている。一実施形態では、後述する固定状態において、棒状部材6の他端部18は、梁101の内部に位置している。つまり、
図2に例示するように、梁101には、内部に棒状部材6の他端部18が収容される収容空間115が形成されている。さらに、梁101の一端面110及び他端面114を除く梁101の表面116には、収容空間115と連通する開口117が形成されている。この収容空間115は、挿入孔112の先端111とも連通している。一実施形態では、開口117は、梁101の正面118(
図2の紙面手前の面)に形成されている。尚、開口117は、梁101の上面に形成されてもよいし、下面に形成されてもよいし、梁101の裏面に形成されてもよい。
【0022】
第1締結具8は、棒状部材6の一端部16を金物2に固定する。一実施形態では、第1締結具8は、棒状部材6の一端部16に螺合される第1ナット22(8)を含む。第1ナット22は、プレート部材12の貫通孔13に棒状部材6を貫通させた状態で、このプレート部材12が梁101の一端面110に当接するまで棒状部材6の一端部16に螺合される。この第1ナット22の螺合によって棒状部材6の一端部16が金物2に固定される。
【0023】
第2締結具10は、棒状部材6の他端部18を筒状部材4に固定する。一実施形態では、第2締結具10は、棒状部材6の他端部18に螺合される第2ナット24(10)を含む。第2ナット24は、ラグスクリューボルト4Aに当接するまで棒状部材6の他端部18に螺合される。この第2ナット24の螺合によって棒状部材6の他端部18がラグスクリューボルト4Aに固定される。
【0024】
以下、棒状部材6の一端部16が第1ナット22によって金物2に固定され、且つ棒状部材6の他端部18が第2ナット24によって筒状部材4(ラグスクリューボルト4A)に固定されている状態を「固定状態」と記載する。
【0025】
ラグスクリューボルト4Aのレイアウトについて説明する。
図4Aは、一実施形態に係るラグスクリューボルト4Aの一端面30の付近を拡大して示す説明図である。
図4Bは、一実施形態に係るラグスクリューボルト4Aの他端面32の付近を拡大して示す説明図である。ラグスクリューボルト4Aの一端面30は、固定状態において、ラグスクリューボルト4Aの延在方向D1の一方側(プレート部材12側)に位置する面である。ラグスクリューボルト4Aの他端面32は、ラグスクリューボルト4Aの延在方向D1の他方側(プレート部材12側とは反対側)に位置する面である。
【0026】
図4Aに例示するように、ラグスクリューボルト4Aは、固定状態において、ラグスクリューボルト4Aの一端面30がプレート部材12と当接するように構成される。ラグスクリューボルト4Aは、固定状態になる前に、ラグスクリューボルト4Aの一端面30が挿入孔112の入口113(延在方向D1の一方側の一端)に位置するように、挿入孔112に挿入されている。幾つかの実施形態では、ラグスクリューボルト4Aは、固定状態になる前に、ラグスクリューボルト4Aの一端面30と梁101の一端面110とが互いに面一となるように、挿入孔112に挿入されている。そして、第1ナット22の螺合によってラグスクリューボルト4Aの一端面30がプレート部材12と当接する。尚、ラグスクリューボルト4Aは、固定状態になる前に、ラグスクリューボルト4Aの一端面30が梁101の一端面110よりも僅かに延在方向D1の他方に位置するように、挿入孔112に挿入されてもよい。
【0027】
図4Aに例示するように、第1ナット22は、固定状態において、プレート部材12を挟んでラグスクリューボルト4Aとは反対側に位置している。プレート部材12は、第1ナット22とラグスクリューボルト4Aとの間に挟まれている。
【0028】
一実施形態では、
図4Bに例示するように、ラグスクリューボルト4Aは、固定状態において、ラグスクリューボルト4Aの他端面32が第2ナット24と当接するように構成される。ラグスクリューボルト4Aは、固定状態になる前に、ラグスクリューボルト4Aの他端面32が挿入孔112の先端111(挿入孔112の出口)に位置するように、挿入孔112に挿入されている。幾つかの実施形態では、収容空間115を画定する面のうち延在方向D1の他方側に向く面を収容面120とすると、ラグスクリューボルト4Aは、固定状態になる前に、ラグスクリューボルト4Aの他端面32と収容面120とが互いに面一となるように、挿入孔112に挿入されている。そして、第2ナット24の螺合によってラグスクリューボルト4Aの他端面32が第2ナット24と当接する。尚、ラグスクリューボルト4Aは、固定状態になる前に、ラグスクリューボルト4Aの他端面32が収容面120よりも僅かに延在方向D1の一方に位置するように、挿入孔112に挿入されてもよい。
【0029】
一実施形態では、接合部材1は、固定状態になってから第1ナット22及び第2ナット24のうちの少なくとも一方をさらに螺合することで、梁101にプレストレスを付与する。具体的に説明すると、第1ナット22又は第2ナット24の螺合によってラグスクリューボルト4Aが押圧され、この押圧力がラグスクリューボルト4Aのねじ山14を介して梁101に伝達される。そして、梁101にプレストレス(圧縮力)が付与される。尚、筒状部材4が鋼管である場合にも、接合部材1は梁101にプレストレスを付与可能である。
【0030】
(作用・効果)
一実施形態に係る接合部材1の作用・効果について説明する。一実施形態によれば、固定状態においてラグスクリューボルト4Aの一端面30が金物2のプレート部材12に当接しているので、接合部材1が梁101にめり込むことを抑制できる。このため、梁101を用いて架構100を組む場合において、梁101のめり込みによる架構100の接合部の剛性の低減を抑制することができる。
【0031】
一実施形態によれば、第1ナット22を用いるという簡易な構成で、棒状部材6の一端部16を金物2に固定することができる。同様に、第2ナット24を用いるという簡易な構成で、棒状部材6の他端部18を梁101に固定することができる。尚、一実施形態では、第1ナット22及び第2ナット24を用いて、棒状部材6の他端部18を梁101に固定していたが、本開示はこの形態に限定されない。例えば、棒状部材6の他端部18が梁101に溶接されることで、棒状部材6の他端部18を梁101に固定してもよい。
【0032】
一実施形態によれば、固定状態から第1ナット22及び第2ナット24のうちの少なくとも一方をさらに螺合することで、梁101に予めプレストレス(圧縮力)を与えておき、梁101の変形を抑制することができる。また、梁101に予めプレストレスを与えることで、例えば、上側柱102Bの梁101へのめり込みを抑制し、架構100の接合部を中心とする上側柱102Bの回転や上側柱102Bのすべりを抑制することができる。つまり、架構100の接合部を剛接合にすることができる。
【0033】
一実施形態によれば、第1ナット22の螺合や第2ナット24の螺合によってラグスクリューボルト4Aは押圧され、この押圧力はラグスクリューボルト4Aのねじ山14を介して、梁101に伝達されている。つまり、筒状部材4にラグスクリューボルト4Aを適用することで、筒状部材4と梁101との接触面積を増やして梁101への押圧力の伝達効率を向上させ、所定の大きさのプレストレスを梁101に容易に付与することができる。また、第1実施形態によれば、ラグスクリューボルト4Aのねじ山14が梁101に干渉することで、ラグスクリューボルト4Aが梁101の挿入孔112から離脱することを抑制できる。
【0034】
一実施形態によれば、梁101の内部には棒状部材6の他端部18が収容される収容空間115が形成されているので、梁101の内部における棒状部材6の他端部18の位置を任意に設定することができる。つまり、任意の長さの棒状部材6を適用することができる。このため、棒状部材6の剛性を調整して、梁101の曲げ応力に対応可能な棒状部材6を梁101の内部に配置することができる。また、第2ナット24が梁101の内部に埋められるので、接合部材1の意匠性を向上させることができる。尚、棒状部材6の剛性は、棒状部材6の径の大きさによって調整されてもよい。
【0035】
尚、一実施形態では、筒状部材4はラグスクリューボルト4Aだけで構成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。
図5は、幾つかの実施形態に係る筒状部材4の構成を説明するための図である。
図5に例示する形態では、筒状部材4は、ラグスクリューボルト4Aに継がれる鋼管4Bをさらに含む。
図5に例示する形態では、鋼管4Bは、ラグスクリューボルト4Aの他端面32に継がれている。言い換えると、鋼管4Bは、梁101の内部において、ラグスクリューボルト4Aよりも延在方向D1の他方側に位置している。そして、
図4Bに例示して説明したラグスクリューボルト4Aの他端面32に代わり、鋼管4Bの延在方向D1の他方側の他端面34が第2ナット24と当接するように構成される。
【0036】
ラグスクリューボルト4Aは、鋼管4Bと比較して、ねじ山14を介して梁101にプレストレスを与えられるが、梁101に大きなプレストレスを与えられるが、製造費が高い。このため、
図5に例示する形態によれば、筒状部材4がラグスクリューボルト4Aと鋼管4Bとを含むことで、梁101に与えるプレストレスをラグスクリューボルト4Aで確保しつつ、製造費の削減を図ることができる。
【0037】
尚、一実施形態では、棒状部材6の他端部18が梁101の内部に位置するように、梁101の内部に収容空間115が形成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。挿入孔112は、梁101の一端面110から梁101の他端面114まで延びていてもよい。
【0038】
図6は、幾つかの実施形態に係る棒状部材6の構成を説明するための図である。
図6に例示する形態では、挿入孔112の先端111(挿入孔112の出口)は、梁101の他端面114に位置している。そして、棒状部材6の他端部18は、梁101の他端面114よりも延在方向D1の他方側に突出している。言い換えると、棒状部材6は梁101を貫通している。また、梁101の挿入孔112には鋼管4Bが挿入されており、鋼管4Bの延在方向D1の他方側の他端面34は、梁101の他端面114と第2ナット24との間に位置する座金35に当接している。このような構成によれば、座金35を介してプレストレスのような棒状部材6に作用する力を梁101に伝達できるので、ラグスクリューボルト4Aを適用する場合と比較して、製造コストを削減できる。尚、梁101の挿入孔112に挿入されるのは、鋼管4Bに限定されず、ラグスクリューボルト4Aであってもよい。
【0039】
尚、一実施形態では、金物2は、プレート部材12と本体部50とが互いに異なる部材に分離していたが、本開示はこの形態に限定されない。
図7は、幾つかの実施形態に係る金物2の構成を説明するための図である。
図7に例示する形態では、プレート部材12は、本体部50の側面のうち梁101に向いている他方側面60に接続されている。プレート部材12は、延在方向D1において、本体部50と梁101との間に位置している。金物2は、本体部50の他方側面60とは反対側の一方側面62に接続され、プレート部材12に対向する板状の一方側プレート部材64をさらに含む。
図7に例示する形態では、一方側プレート部材64及び本体部50のそれぞれには、棒状部材6によって貫通される貫通孔66,68が形成されている。固定状態において、棒状部材6の一端部16は、一方側プレート部材64よりも延在方向D1の一方側に位置している。このような構成によれば、接合部材1に梁101を緊結する緊結作業(例えば、棒状部材6の一端部16に第1ナット22を螺合する)のためのスペースを容易に確保することができる。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
[1]本開示に係る接合部材は、
木造の梁及び木造の柱の内の少なくとも一方を含む木質部材を用いて架構を組むための接合部材であって、
前記木質部材の延在方向の一端面に面するプレート部材を含む金物と、
前記木質部材の前記一端面に形成される挿入孔に挿入される筒状部材と、
前記筒状部材の内部空間に挿入される棒状部材と、
前記棒状部材の一端部を前記金物に固定する第1締結具と、
前記棒状部材の他端部を前記筒状部材に固定する第2締結具と、を備え、
前記筒状部材は、前記棒状部材の前記一端部が前記第1締結具によって前記金物に固定され、且つ前記棒状部材の前記他端部が前記第2締結具によって前記筒状部材に固定された固定状態において、前記筒状部材の前記金物側に位置する一端面が前記プレート部材と当接するように構成される。
【0042】
上記[1]に記載の構成によれば、固定状態において筒状部材の一端面が金物のプレート部材に当接しているので、接合部材が木質部材にめり込むことを抑制できる。このため、木質部材を用いて架構を組む場合において、木質部材のめり込みによる架構の接合部の剛性の低減を抑制することができる。
【0043】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記プレート部材には、前記棒状部材によって貫通される貫通孔が形成されており、
前記第1締結具は、前記棒状部材の前記一端部に螺合される第1ナットを含み、
前記第1ナットは、前記固定状態において、前記プレート部材を挟んで前記筒状部材とは反対側に位置している。
【0044】
上記[2]に記載の構成によれば、第1ナットを用いるという簡易な構成で、棒状部材の一端部を金物に固定することができる。さらに、第1ナットを棒状部材の一端部に螺合することで、木質部材に予めプレストレス(圧縮力)を与えておき、木質部材の変形を抑制することができる。
【0045】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記第2締結具は、前記棒状部材の前記他端部に螺合される第2ナットを含み、
前記筒状部材は、前記固定状態において、前記筒状部材の前記金物側とは反対側に位置する他端面が前記第2ナットと当接するように構成される。
【0046】
上記[3]に記載の構成によれば、第2ナットを用いるという簡易な構成で、棒状部材の他端部を木質部材に固定することができる。さらに、第2ナットを棒状部材の他端部に螺合することで、木質部材に予めプレストレス(圧縮力)を与えておき、木質部材の変形を抑制することができる。
【0047】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記木質部材には、内部に前記棒状部材の前記他端部が収容される収容空間が形成されており、
前記木質部材の表面には、前記収容空間と連通する開口が形成されている。
【0048】
上記[4]に記載の構成によれば、木質部材の内部における棒状部材の他端部の位置を任意に設定することができる。また、第2締結具が木質部材の内部に埋められるので、木質部材の意匠性を向上させることができる。
【0049】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記筒状部材は、ラグスクリューボルトを含む。
【0050】
上記[5]に記載の構成によれば、筒状部材が木質部材の挿入孔から離脱することを抑制できる。
【0051】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]に記載の構成において、
前記筒状部材は、前記ラグスクリューボルトに継がれる鋼管をさらに含む。
【0052】
ラグスクリューボルトは、鋼管と比較して、棒状部材に作用する力(例えば、プレストレス)を木質部材に効率的に伝達できるが、製造費が高い。このため、上記[6]に記載の構成によれば、筒状部材がラグスクリューボルトと鋼管とを含むことで、木質部材への伝達効率を確保しつつ、製造費の削減を図ることができる。
【0053】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記金物は、前記木質部材の前記延在方向と交差する方向に向いている交差プレート部材をさらに含む。
【0054】
上記[7]に記載の構成によれば、木造の柱と木造の梁とを接合することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 接合部材
2 金物
4 筒状部材
4A ラグスクリューボルト
4B 鋼管
6 棒状部材
8 第1締結具
10 第2締結具
12 プレート部材
13 貫通孔
16 棒状部材の一端部
18 棒状部材の他端部
22 第1ナット
24 第2ナット
30 ラグスクリューボルトの一端面
32 ラグスクリューボルトの他端面
56 下側の交差プレート部材
58 上側の交差プレート部材
100 架構
101 木造の梁
102 木造の柱
102A 下側柱
102B 上側柱
112 挿入孔
115 収容空間
D1 延在方向
D2 上下方向
O 梁の軸線