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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172657
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】緑茶飲料成型物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/32 20060101AFI20241205BHJP
   A23F 3/26 20060101ALI20241205BHJP
   A23F 3/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A23F3/32
A23F3/26
A23F3/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090511
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】591155242
【氏名又は名称】鹿児島県
(74)【代理人】
【識別番号】100170014
【弁理士】
【氏名又は名称】蓼沼 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】下園 英俊
(72)【発明者】
【氏名】三浦 伸之
(72)【発明者】
【氏名】有村 恭平
(72)【発明者】
【氏名】東瀬戸 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】飛松 諒
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB11
4B027FC01
4B027FC02
4B027FC10
4B027FE01
4B027FP72
4B027FP76
4B027FP77
4B027FP90
(57)【要約】
【課題】緑茶から抽出した緑茶浸出液に何ら添加物を使用することなく凍結乾燥して成型しても、淹れたての緑茶の緑色及び風味に近い緑茶飲料を簡便に調製できる緑茶飲料成型物の製造方法及び緑茶飲料成型物を提供する。
【解決手段】緑茶と2~30℃の水とを混合して得た混合液をマイナス30~マイナス10℃で冷凍した後、2~10℃で解凍して、緑茶浸出液を得て、当該緑茶浸出液を、凍結乾燥して製造することを特徴とする緑茶飲料成型物の製造方法。及び、水又は湯と混合して緑茶飲料を調製するための凍結乾燥された緑茶飲料成型物であって、緑茶成分を含有し、デキストリン、甘味料、及び薬品のいずれも添加しない無添加の緑茶飲料成型物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶と2~30℃の水とを混合して得た混合液をマイナス30~マイナス10℃で冷凍した後、2~10℃で解凍して、緑茶浸出液を得て、
当該緑茶浸出液を、凍結乾燥して製造することを特徴とする緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項2】
前記緑茶浸出液は、解凍後に茶殻を除いて得られることを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項3】
前記緑茶浸出液は、濃度が9.0重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項4】
前記緑茶浸出液は、濃度が9.0重量%以上となるように、解凍後に凍結濃縮して得られることを特徴とする請求項3に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項5】
前記緑茶飲料成型物は、無添加で且つ、CIELCH色空間による明度(L*)が40~60、彩度(C*)が30~40、及び色相角度(h*)が95~110であることを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項6】
水又は湯と混合して緑茶飲料を調製するための凍結乾燥された緑茶飲料成型物であって、
緑茶成分を含有し、デキストリン、甘味料、及び薬品のいずれも添加しない無添加の緑茶飲料成型物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶浸出液を凍結乾燥した緑茶飲料成型物の製造方法及び緑茶飲料成型物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に緑茶は、緑茶の葉や茎を湯や水に浸漬して、急須やフィルタで固形物すなわち茶殻を取り除いた浸出液として飲まれるが、急須やフィルタなどの器具が必要な上、生ゴミが発生するため、消費者が敬遠し、需要が減少している。そのため、緑茶の葉や茎が入ったティーバッグが開発されたが、浸出した後のティーバッグは生ゴミとして廃棄する必要がある。
【0003】
一方、抹茶や粉末緑茶は、器具を使わずに湯や水を注いで飲むことができ、その後のゴミも発生しない。しかし、粒子が粗い抹茶や粉末緑茶は、湯や水を混ぜて飲料する時に喉に不快な異物感を与え、また、粒子の細かい抹茶や粉末緑茶は、湯や水に混ざらずダマができるため茶筅で混ぜる必要がある。更に、抹茶や粉末緑茶に水を加えても、充分に浸出するには数時間かかる。
【0004】
そこで、湯や水を注いで、速やかに飲むことができる緑茶飲料として、インスタントの緑茶飲料粉末が知られているが、粉末は飛散しやすくカップに入れにくいため、より取り扱いしやすい緑茶飲料成型物が求められている。
一例として、特許文献1には、凍結乾燥された緑茶飲料固化物(緑茶飲料成形物に相当)が提案されている。また、特許文献2には、化学結合剤や薬品又は甘味料の添加を必要とせず、茶浸出液を凍結濃縮してから凍結乾燥する、茶を含む植物抽出物のタブレット調整システム及び方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-161383号公報
【特許文献2】特開2021-69376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、緑茶飲料固化物が提案されているものの、成型性を良くしかつ吸湿しにくくするためにデキストリンを添加している。しかしながら、デキストリンを添加すると、緑茶本来の風味を変えてしまうという問題があった。また、特許文献1の技術では、緑茶を湯で浸出して緑茶浸出液を生成するが、加熱によるクロロフィルの分解、すなわち緑色から黄色への変色、及び、酸化による風味の変質が起こってしまうために、茶原料不溶性微粒子を添加して淹れたての緑茶の緑色及び風味に少しでも近づけている。しかしながら、添加しているデキストリンのマスキング機能により、あえて添加した茶原料不溶性微粒子からの風味が損なわれてしまうとの問題もあった。
【0007】
また、特許文献2の技術では、デキストリン等を添加せずに調整したタブレット茶が提案されているものの、緑茶を湯で浸出して緑茶浸出液を生成した場合には、色及び風味の変質が起こり、調整したタブレット茶では淹れたての緑茶の緑色や風味が再現できないという問題があった。また、特許文献2の技術では、水で浸出して緑茶浸出液を生成することも提案されているが、低温の水による浸出では、うま味の成分であるテアニンなどのアミノ酸類は多く浸出されても、渋みの成分であるエピガロカテキンガレート(EGCg)などのカテキン類は極端に少なく、うま味と渋みとの調和がとれないために、淹れたての緑茶の味わいが再現できず、調整したタブレット茶に湯を注いでも及び緑色及び風味のいずれも淹れたての緑茶に劣り、おいしく飲めないという問題があった。
【0008】
このように、凍結乾燥により生成されたタブレット茶や緑茶飲料固化物といった従来技術の緑茶飲料成型物では、淹れたての緑茶の緑色及び風味が再現された緑茶飲料を提供できなかった。
【0009】
そこで、本発明は、緑茶から抽出した緑茶浸出液に何ら添加物を使用することなく凍結乾燥して成型しても、淹れたての緑茶の緑色及び風味に近い緑茶飲料を簡便に調製できる緑茶飲料成型物の製造方法及び緑茶飲料成型物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するための研究を行い、緑茶を水で浸出するだけでなく、緑茶を水に浸出後これを冷凍して解凍した後に、緑茶浸出液を凍結乾燥することにより、無添加でも緑茶の緑色が変色することなく、渋み成分であるカテキン類の浸出量が水浸出より大幅に増加し、水だけでなく湯を注いでも直ぐにおいしく飲める緑茶飲料成型物を提供できることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明によれば、以下の緑茶飲料成型物の製造方法及び当製法によって製造する緑茶飲料成型物を提供できる。
1.緑茶と2~30℃の水とを混合して得た混合液を、マイナス30~マイナス10℃で冷凍した後、2~10℃で解凍して、緑茶浸出液を得て、当該緑茶浸出液を、凍結乾燥して製造することを特徴とする緑茶飲料成型物の製造方法。
2.前記緑茶浸出液は、解凍後に茶殻を除いて得られることを特徴とする1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
3.前記緑茶浸出液は、濃度が9.0重量%以上であることを特徴とする1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
4.前記緑茶浸出液は、濃度が9.0重量%以上となるように、解凍後に凍結濃縮して得られることを特徴とする3に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
5.前記緑茶飲料成型物は、無添加で且つ、CIELCH色空間による明度(L*)が40~60、彩度(C*)が30~40、及び色相角度(h*)が95~110であることを特徴とする1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
6.水又は湯と混合して緑茶飲料を調製するための凍結乾燥された緑茶飲料成型物であって、緑茶成分を含有し、デキストリン、甘味料、及び薬品のいずれも添加しない無添加の緑茶飲料成型物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緑茶から浸出した緑茶浸出液に何ら添加物を使用することなく凍結乾燥して成型しても、淹れたての緑茶の緑色及び風味に近い緑茶飲料を簡便に調製できる緑茶飲料成型物の製造方法及び緑茶飲料成型物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る緑茶飲料成型物の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図2】水に浸漬した茶の葉の気孔の状態を示す電子顕微鏡写真である。
図3】水に浸漬し、冷凍した後に解凍した茶の葉の気孔の状態を示す電子顕微鏡写真である。
図4】実施例1において調製した緑茶飲料成型物の外観を示す写真である。
図5】本発明により製造した緑茶飲料成型物及び水浸漬により製造した緑茶飲料成型物に湯を注いで試飲評価した時のうまみ、渋み、及び香りの評点を示す図である。
図6】本発明により製造した緑茶飲料成型物及び水浸漬により製造した緑茶飲料成型物に水又は湯を注いで試飲評価した時の選択した好みを示す図である。
図7】本発明により製造した緑茶飲料成型物及びデキストリンを添加して製造した緑茶飲料成型物に湯を注いで試飲評価した時の選択した好みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の緑茶飲料成型物の製造方法及び緑茶飲料成型物について、具体的な実施形態を説明する。
なお、本発明は、以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能である。
【0015】
図1のフローを参照しつつ、本発明の緑茶飲料成型物の製造方法について説明する。
【0016】
[緑茶の種類]
本発明の緑茶飲料成型物の製造の原料となる緑茶は、特に限定されることはなく、一般に市販されている緑茶(例えば、煎茶、深蒸し茶、玉露、蒸し製玉緑茶、釜炒茶、番茶、てん茶)である。緑茶は、茶葉のみを含むものであってもよいし、茶葉とその茎とを含むもの、更には、茶とその茎とその他の部分を含むものであってもよい。但し、緑茶粉末や抹茶のような粉砕物は、粉砕時に香りの飛散があるので好ましくない。
なお、本発明により、例えば、焙じ茶、烏龍茶、紅茶及び後発酵茶等、緑茶以外の茶葉を原料とした飲料成型物についても製造することができる。
【0017】
[緑茶の浸漬工程]
緑茶と2~30℃、好ましくは10~20℃の水を混合し、混合液を生成する。緑茶と水との重量割合は緑茶1に対して水5.5~12.5、好ましくは緑茶1に対して水6~8とする。
【0018】
[冷凍・解凍工程]
その後、マイナス30℃~マイナス10℃で1時間以上かけて混合液を冷凍し、2~10℃で完全に解凍する。このように冷凍・解凍することにより、図2に示す冷凍・解凍前の茶の葉の状態が、図3に示す冷凍・解凍後の茶の葉の状態に変化する。図に示すように、冷凍・解凍後には、茶の葉の細胞、特に気孔が損傷していることで、低温での緑茶成分の浸出でありながら、緑茶成分を豊富に、例えば、冷凍・凍結しない場合の2倍程度に向上させることができる。解凍時間は任意であるが、緑茶混合液の品温が18~20℃で一晩保存すると変質することがあるため、品温は10℃より高くなることは好ましくない。
【0019】
[固液分離工程]
解凍した混合液から第1緑茶浸出液(以下、緑茶浸出液は単に浸出液という)を得る。第1浸出液は、解凍した混合液から茶殻を除いて得てもよいし、解凍した混合液の上澄みを抽出して得てもよい。茶殻を除く場合は、解凍した緑茶混合液を篩又はフィルタで濾過して茶殻を除いてもよいし、遠心分離で固液分離した後に篩又はフィルタで濾過して茶殻を除いてもよい。篩は30メッシュ(目開き500~600μm)~100メッシュ(目開き130~150μm)が好ましく、それより粗いと湯又は水で溶かした製品を飲料したとき喉に異物感を与え、細かいと製品の歩留まりが悪くなり、作業性も悪化する。
【0020】
[凍結濃縮工程]
得られた第1浸出液を、容器や型枠に充填し、大気圧下にてマイナス50~マイナス30℃で3時間以上静置することにより凍結する。その後、凍結した第1浸出液が融けないように、10~80Paの圧力下で、40~70℃まで段階的に、例えば1時間で+10℃昇温することにより、濃度を9.0重量%以上、好ましくは13~16重量%に濃縮した緑茶濃縮液を得る。ただし、得られた第1浸出液の濃度が9.0重量%以上の場合には、本凍結濃縮工程は省略してもよい。
【0021】
ここで濃度とは、第1浸出液又は緑茶濃縮液を乾燥した後の残留固化物の重量を、乾燥前の第1浸出液又は緑茶濃縮液の重量で除して100を乗じた割合とする。なお、濃度が9.0重量%未満では最終製品の成型性が悪く、もろくなる。以下、濃度が9.0重量%以上の第1浸出液及び緑茶濃縮液を併せて、第2浸出液という。
【0022】
[充填(成型)工程、凍結乾燥工程]
得られた第2浸出液を型に充填し、大気圧下にてマイナス50~マイナス30℃で3時間以上静置することにより凍結する。その後、凍結した第2浸出液が融けないように、10~80Paの圧力下で、60~70℃まで段階的に昇温して、6時間以上静置することにより水分を3重量%以下まで凍結乾燥させることで、図4の外観写真に示すような緑茶飲料成型物が得られる。ただし、型の形状は限定されず、直方体、立方体、球、円柱、又はその他の任意の形状に加工することが可能である。型の大きさは1~3cm、厚さ0.5~1.5cmが好ましい。
なお、本発明の緑茶飲料成型物の製造方法では、製造方法全体を通して緑茶に水を加えて浸出した第1及び/又は第2浸出液のみを用い、何も添加しないこととする。
【0023】
[製品包装工程]
得られた緑茶飲料成型物は、保管及び輸送するために、包装する。包装材料は耐湿性及び遮光性が高いもので、乾燥剤の同封が好ましい。例えば、アルミラミネート袋に酸化カルシウム乾燥剤を同封する方法がある。
【0024】
[緑茶飲料成型物]
本発明の緑茶飲料成型物は、水又は湯と混合して緑茶飲料を調製するための凍結乾燥した、緑茶成分を含有する、無添加の緑茶飲料成型物であることを特徴とする。
このような特徴により、緑茶に水又は湯を注いで淹れた緑茶、特に淹れたての緑茶の緑色及び風味に近い、緑色で風味のすぐれた緑茶飲料を、水又は湯と混合して簡便に調製できる、緑茶飲料成型物を提供することができる。
【0025】
ここで、用語について説明する。
緑茶に0~30℃の水を加えて、マイナス30~マイナス10℃で冷凍し、2~10℃で解凍することにより緑茶成分が浸出した第1又は第2緑茶浸出液を得る冷凍・解凍浸出を「本発明」とする。
【0026】
本発明の緑茶飲料成型物は、第1又は第2緑茶浸出液に甘味料又はデキストリンを含有させることなく、添加物を何ら添加しない、すなわち無添加で凍結乾燥することにより製造することができる。ここで、「デキストリン」とは、デンプンを加水分解して得られる低分子量の多糖類をいう。
【0027】
また、本発明の緑茶飲料成型物は、凍結濃縮工程を経ることで、成型性に優れ、凍結乾燥により膨張や破裂することなく、確実に成型することができる。さらに、本発明の緑茶飲料成型物は、緑茶を浸出させた第1又は第2浸出液のみからなるので、即溶性にすぐれ、必要なときに水又は湯と混合して分散又は溶解させることにより、無添加の緑茶飲料を簡便に調製することができる。
【0028】
本発明の飲料成型物は、デキストリンを含まず、かつ低温でありながら豊富な緑茶成分が浸出された第1又は第2浸出液を凍結乾燥したものであることにより、緑茶本来の緑色及び風味が変質せず、かつ十分な緑茶成分を含むので、通常緑茶に水又は湯を注いで淹れた緑茶と遜色ない緑色及び風味に優れたものとすることができる。
【0029】
次に、本発明の緑茶飲料成型物の成分及び官能評価について説明する。
【0030】
本発明の緑茶飲料成型物は、第1浸出液を水浸出により得た緑茶飲料成型物より、可溶性固形分が増えることで重量が増えて堅くなり、成型性が優れる。ここで、水浸出とは、緑茶に0~30℃の水を加えて、緑茶成分が浸出した第1浸出液を得ることをいう。
【0031】
本発明の緑茶飲料成型物は、第1浸出液を水浸出により得た緑茶飲料成型物より、カテキン類とアミノ酸類とが増加する。
【0032】
本発明の緑茶飲料成型物は、第1浸出液を水浸出により得た緑茶飲料成型物より、湯を注いで調整した緑茶飲料を試飲評価した場合、うまみ、渋み、及び香りが増し、飲用者に好まれる味にすることができる。
【0033】
[緑茶飲料]
本発明の緑茶飲料は、上記説明した本発明の緑茶飲料成型物を水又は湯に混合してなるものである。
緑茶飲料成型物を溶解して緑茶飲料を調製する際の水又は湯の量は、飲用者の嗜好により、適宜調整することができる。
【実施例0034】
以下の本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1>
【0035】
[緑茶飲料成型物の製造方法]
南九州市産の普通煎茶81gに水道水1,000gを加えて、金属製ザル上で搾り、30メッシュの篩で茶殻を除いた、3種類の浸出方法による第1浸出液を得た。一つは、湯浸出法であって、90℃の湯を加え、5分後に茶殻を除き第1浸出液(湯)を得、二つ目は、冷水浸出法であって、水道水を加え、5℃の冷蔵庫で一晩静置し、茶殻を除き第1浸出液(冷水)を得、もう一つは、本発明の冷凍・解凍浸出法であって、水道水を加え、マイナス20℃の冷凍庫で一晩凍結後、室温で解凍し、茶殻を除き第1浸出液(本発明)を得た。
【0036】
各第1浸出液は、真空凍結乾燥装置(アルバック社、DFR-5N-B)を用いて、マイナス30℃で予備凍結し、制御圧力70Pa及び棚温度0℃から25℃に徐々に昇温して4時間凍結乾燥し、各第1浸出液の1/6の重量に濃縮して、各第2浸出液を得た。この時の各第2浸出液の濃度は、第2浸出液(湯)で14.0重量%、第2浸出液(冷水)で7.6重量%、第2浸出液(本発明)で11.9重量%であった。
各第2浸出液を型枠(形状:正四角錐台(上辺1.55cm、底辺0.95cm、高さ1.3cm))に入れ、真空凍結乾燥装置(同上)を用いて、マイナス40℃で予備凍結し、制御圧力70Pa及び棚温度0℃から60℃に徐々に昇温、最終的に40℃に降温して、14時間真空凍結乾燥し、図4の外観写真に示す緑茶飲料成型物を製造した。
【0037】
<成型物の特徴>
緑茶飲料成型物の色調については、色差計(日本電色工業社製、SD3000)を使用して、緑茶飲料成型物は直径0.6cmの測定径による反射測定にて、CIELCH色空間により、明度(L*)、彩度(C*)、及び色相角度(h*)を測定した。なお、明度は数値が高いほど明るく、彩度は数値が高いほど鮮やか、色相角度は90で黄色、180で緑色、その間の数値が高いほど緑色が増すことを示す。また、緑茶飲料成型物の堅さについては、レオメーター(山電社製、RE2-33005C)を使用して、ロードセル20N(ニュートン)、くさび形プランジャー(接触面積24mm)、測定速度1mm/秒の条件で最大荷重を測定した。各浸出法における緑茶飲料成型物の特徴及び色調を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
本実施例では、第1浸出液(湯)を用いた緑茶飲料成型物(以下、湯成型物という)の色は、色相角度90.5の黄色だったが、第1浸出液(冷水)を用いた緑茶飲料成形物(以下、冷水成形物という)では色相角度94.6、第1浸出液(本発明)を用いた緑茶飲料成型物(以下、本発明の成型物という)では色相角度96.4と黄緑色だった。さらに、本発明の成型物では、冷水成型物と比較して、重量が増え、緑色が濃く、堅く成型性が優れることが分かった。
【0040】
<成型物に水を加えた飲料液の特徴>
緑茶飲料成型物に湯又は水を加えた飲料液の評価については、緑茶飲料成型物1個に対して80℃又は28℃のイオン交換水を30g注いで溶かした飲料液、及び参考比較として同じ原料の緑茶3gを100g80℃のイオン交換水で3分又は28℃のイオン交換水で1時間浸出した飲料液を調整して行った。色調については、色差計(日本電色工業社製、SD3000)の透過測定にて、CIELCH色空間により、明度(L*)、彩度(C*)、及び色相角度(h*)を測定した。なお、明度、彩度、及び色相角度については上述した通りである。各浸出法における緑茶飲料成型物に湯又は水を注いだ飲料液の官能評価及び色調を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
本実施例では、湯成型物に水を注いだ飲料液は、苦渋味が強い味で、色調が明度75.5、彩度43.5、色相角度93.6の濃い黄色だったが、冷水成型物では苦渋味がなく、色調が明度85.7、彩度31.3、色相角度100.2の黄緑色、本発明の成型物では苦渋味がなく、色調が明度77.1、彩度48.1、色相角度97.1の濃い黄緑色と、原料の緑茶を湯や水で淹れた液の色に近い黄緑色だった。さらに、本発明の成型物では、冷水浸出物と比較して、水を注いだ飲料液の味はうまみが濃厚になり、湯を注いだ飲料液の味は渋みが増えてうまみと渋みのバランスが良く旨くなることが分かった。
【0043】
続いて、本発明の緑茶飲料成型物の成分分析について、実施例に基づいて説明する。
[カテキン類の分析]
微粉砕した緑茶飲料成型物0.02gに2%のアスコルビン酸水溶液1mLと50%アセトニトリル水溶液9mLを加えて、ホモジナイザーで30秒間磨砕した。抽出溶液は、遠心分離(10,000rpm×5分間)後、フィルタ(0.45μm)でろ過した後、HPLCによる分析に供した。HPLCの測定条件は、以下のとおりである。
カラム:Cadenza CD-C18(Imtakt製、粒子径3μm、長さ150×幅3mm)、カラム温度40℃
検出器:UV-1570(日本分光製)、測定波長210nm
移動相:0.1%ギ酸水溶液(A液)、メタノール:アセトニトリル=3:2溶液(B液)、流速0.4mL/min
グラジエント条件:0~7分はA液85%、7~20分はA液85%から50%に均一に変化させる。
【0044】
各浸出法における緑茶飲料成型物のカテキン類の含量を表3に示す。なお、表に示すEGCgはエピガロカテキンガレート、カテキン類計は、EGCg、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、カテキンガレートの合計値及び湯成型物の合計値を100とした時の指数を示す。
【0045】
【表3】
【0046】
本実施例では、湯成型物のカテキン含量は、冷水成型物及び本発明の成型物より多いことが分かった。冷水成型物ではカテキン類合計で湯浸出物の37%と少なかったが、本発明の成型物では73%に増加することが示された。
【0047】
[アミノ酸類の分析]
微粉砕した緑茶飲料成型物0.05gに超純水10mLを加えて、超音波洗浄器に10分間静置後、遠心分離(10,000×g、10分)し、上澄みを0.45μmフィルタでろ過した後、適宜希釈し、内部標準物質グリシルグリシンを添加し、LCMSでの分析に供した。LCMSの測定条件は、以下のとおりである。
カラム:Intrada Amino Acid(Imtakt社、粒子径3μm、長さ75×幅3mm)、カラム温度40℃
検出器:LCMS-2020(島津製作所製)
移動相:アセトニトリル:ギ酸=100:1(A液)、100mMギ酸アンモニウム水溶液(B液)、流速0.6mL/min
【0048】
製造した緑茶飲料成型物のアミノ酸類の含量を表4に示す。なお、主要アミノ酸類計はテアニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アルギニンの合計値及び湯成型物の合計値を100とした時の指数を示す。
【0049】
【表4】
【0050】
本実施例では、湯成型物の主要アミノ酸類計は、冷水成型物及び本発明の成型物の主要アミノ酸類計より多いことが分かった。詳細には、主要アミノ酸類計は、冷水成型物では湯成型物の69%と少なかったが、本発明の成型物では99%であって湯成型物とほんのわずかしか違わないことが示された。
【0051】
[官能審査]
冷水成型物及び本発明の成型物の各1個に対して、70℃のイオン交換水30gの割合で溶かした各緑茶飲料を、20~50歳台の18人が試飲し、うまみ、渋み、及び香りの比較も行った結果を図5に示す。図中の縦軸は冷水成型物を基準とした本発明の成型物の評価点とし、+2を「かなり強い」、+1を「やや強い」、0を「差が無い」、-1を「やや弱い」、-2を「かなり弱い」とした。
【0052】
本発明の成型物は、湯を注いだ場合、冷水浸出物より、うまみ、渋み、及び香りのどれもがやや強く評価された。
【0053】
冷水成型物及び本発明の成型物の各1個に対して、室温の又は70℃のイオン交換水30gの割合で溶かした各緑茶飲料を、20~50歳台の16人(室温)又は18人(70℃)が試飲し、好みを選択した結果を図6に示す。
【0054】
本発明の成型物は、冷水成型物と比較して、水を注いだ場合、好まれる飲用者数に差が無かったが、湯を注いだ場合、多くの飲用者に好まれることがわかった。
<実施例2>
【0055】
[緑茶飲料成型物の製造方法]
南九州市産の普通煎茶81gに水道水1,000gを加え、マイナス20℃の冷凍庫で一晩凍結後、室温で解凍し、冷凍・解凍浸出液とした。その後、それぞれ金属製ザル上で搾り、30メッシュの篩で茶殻を除いて第1浸出液(本発明)を得た。
【0056】
第1浸出液(本発明)を、真空凍結乾燥装置(アルバック社、DFR-5N-B)を用いて、マイナス30℃で予備凍結し、制御圧力70Pa及び棚温度0℃から60℃に徐々に昇温、最終的に40℃に降温して、4時間凍結濃縮し、無添加第2浸出液(本発明)を得た。無添加第2浸出液(本発明)を2つに分け、一方に、無添加第2浸出液(本発明)とデキストリン(商品名:サナス2002)とをそれぞれ重量比100:7.8で混合してデキストリン入り第2浸出液(本発明)とした。この時の各濃縮第2浸出液の濃度は、無添加第2浸出液(本発明)で14.6重量%、デキストリン入り第2浸出液(本発明)で20.4重量%であった。
各第2浸出液(本発明)を実施例1と同様の操作で緑茶飲料成型物を製造した。デキストリン入り第2浸出液(本発明)から製造したデキストリン入り緑茶飲料成型物のデキストリンの割合は33重量%となった。
【0057】
<成型物及び成型物に水を加えた飲料液の特徴>
緑茶飲料成型物の堅さについては、レオメーター(山電社製、RE2-33005C)を使用して、ロードセル20N(ニュートン)、くさび形プランジャー(接触面積24mm2)、測定速度1mm/秒の条件で最大荷重を測定した。また、緑茶飲料成型物に湯又は水を加えた液の官能評価については、緑茶飲料成型物1個に対して70℃又は25℃のイオン交換水を30g注いで溶かした液を調整して行った。デキストリンの有無における緑茶飲料成型物の特徴、及び湯又は水を加えた液の官能評価を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
本発明により、無添加の緑茶飲料成型物は、湯や水を注いで飲むと、デキストリン入りのものより風味が強い、つまり原料本来の香りとうまみとが強く感じられることがわかった。
【0060】
本発明の無添加及びデキストリン入り緑茶飲料成型物1個に対して、70℃のイオン交換水30gの割合で溶かした各緑茶飲料を、20~50歳台の19人が試飲し、好みを選択した結果を図7に示す。
【0061】
本発明の無添加の緑茶飲料成型物は、デキストリン入り緑茶飲料成形物と比較して、湯を注いだ場合、多くの飲用者に好まれることがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶と2~30℃の水とを混合して得た混合液をマイナス30~マイナス10℃で冷凍した後、2~10℃で解凍して、緑茶浸出液を得て、
当該緑茶浸出液を、凍結乾燥して製造することを特徴とする緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項2】
前記緑茶浸出液は、解凍後に茶殻を除いて得られることを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項3】
前記緑茶浸出液は、濃度が9.0重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項4】
前記緑茶浸出液は、濃度が9.0重量%以上となるように、解凍後に凍結濃縮して得られることを特徴とする請求項3に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。
【請求項5】
前記緑茶飲料成型物は、無添加で且つ、CIELCH色空間による明度(L*)が40~60、彩度(C*)が30~40、及び色相角度(h*)が95~110であることを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料成型物の製造方法。