(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172686
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】偏光シートおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241205BHJP
G02C 7/12 20060101ALI20241205BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B5/30
G02C7/12
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090555
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有香
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
【Fターム(参考)】
2H148CA13
2H148CA24
2H149AA23
2H149AB26
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA03W
2H149FA13X
2H149FA15X
2H149FA51X
2H149FA54X
2H149FA69
2H149FC08
2H149FD09
2H149FD25
2H149FD30
2H149FD46
2H149FD47
(57)【要約】
【課題】光学部品の製造に用いられる金型に対して、その製造の際に、得られる光学部品に含まれる添加剤が付着することによる金型の汚染、特に、添加剤として含まれる、光吸収スペクトルにおいて380nm以上440nm以下のような長波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤の付着に基づく金型の汚染を的確に抑制または防止して、光学部品を製造することができる偏光シートを提供すること。また、かかる偏光シートを備える信頼性に優れた光学部品を提供すること。
【解決手段】本発明の偏光シート15は、偏光膜13と第1樹脂層11と第2樹脂層12とを備え、第1樹脂層11および第2樹脂層12は、それぞれ独立して、樹脂材料と添加剤とを含有し、第1樹脂層11および第2樹脂層12のうち、少なくとも第1樹脂層11は、添加剤として、その光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤を含有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光膜と、前記偏光膜の一方の面側に設けられた第1樹脂層と、前記偏光膜の他方の面側に設けられた第2樹脂層とを備える偏光シートであって、
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、樹脂材料と添加剤とを含有し、
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層のうち、少なくとも前記第1樹脂層は、前記添加剤として、該添加剤の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤を含有することを特徴する偏光シート。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤は、該紫外線吸収剤の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上410nm以下の波長域に変曲点を有するものと、410nm超440nm以下の波長域に変曲点を有するものとのうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の偏光シート。
【請求項3】
当該偏光シートは、その光吸収スペクトルにおいて、390nm以上420nm以下の波長域における光透過率が7.0%以下であることを満足する領域を有する請求項1または2に記載の偏光シート。
【請求項4】
当該偏光シートは、前記一方の面側を湾曲凹面とし、前記他方の面側を湾曲凸面とする湾曲状態として使用されるものである請求項1に記載の偏光シート。
【請求項5】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、その平均厚さが0.15mm以上2.00mm以下である請求項1に記載の偏光シート。
【請求項6】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、前記添加剤の含有量が0.10重量%以上3.00重量%以下である請求項5に記載の偏光シート。
【請求項7】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、前記樹脂材料としてのポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂を主材料として構成される請求項6に記載の偏光シート。
【請求項8】
前記樹脂材料のガラス転移点は、100℃以上190℃以下である請求項7に記載の偏光シート。
【請求項9】
基材と、
前記基材に積層された、請求項1に記載の偏光シートと、を備えることを特徴とする光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光シートおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂等を主材料として構成される被覆層で偏光膜の両面を被覆した構成をなす偏光シート(樹脂基板)を備える光学部品として、例えば眼鏡用レンズが提案されている。
【0003】
この眼鏡用レンズは、例えば、平面視で平板状をなす偏光シート(偏光性積層体)の両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、偏光シートを打ち抜く。その後、この偏光シートに加熱下で熱曲げ加工を施すことで、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲偏光シートとする。そして、湾曲偏光シートから、保護フィルムを剥離させた後に、湾曲形状とされた凹部を備える金型に、金型の凹部と湾曲偏光シートの凸部とが当接するようにして、湾曲偏光シートを吸着させた状態で、インサート射出成形法を用いて、この湾曲偏光シートの凹面にポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂等の樹脂材料を主材料として含有する樹脂組成物で構成される樹脂層を形成することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような眼鏡用レンズの製造方法では、インサート射出成形法を用いて樹脂層を成形する際に、樹脂層を構成する樹脂組成物を、金型内へと注入する必要がある。そのため、樹脂組成物中に樹脂材料の他に、紫外線吸収剤のような添加剤が含まれていると、この添加剤により、金型の内部が汚染されるという問題があった。
【0005】
さらに、添加剤としての紫外線吸収剤が、紫外線吸収剤の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下のような長波長域に変曲点を有するものを含んでいる際には、このような紫外線吸収剤は希少性の高いものであるため、この紫外線吸収剤が樹脂組成物中から露出することに基づく、金型の汚染を可能な限り抑制したいと言う要求があるのも実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光学部品の製造に用いられる金型に対して、その製造の際に、得られる光学部品に含まれる添加剤が付着することによる金型の汚染、特に、添加剤として含まれる、光吸収スペクトルにおいて380nm以上440nm以下のような長波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤の付着に基づく金型の汚染を的確に抑制または防止して、光学部品を製造することができる偏光シートを提供すること、また、かかる偏光シートを備える信頼性に優れた光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 偏光膜と、前記偏光膜の一方の面側に設けられた第1樹脂層と、前記偏光膜の他方の面側に設けられた第2樹脂層とを備える偏光シートであって、
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、樹脂材料と添加剤とを含有し、
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層のうち、少なくとも前記第1樹脂層は、前記添加剤として、該添加剤の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤を含有することを特徴する偏光シート。
【0009】
(2) 前記紫外線吸収剤は、該紫外線吸収剤の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上410nm以下の波長域に変曲点を有するものと、410nm超440nm以下の波長域に変曲点を有するものとのうちの少なくとも一方を含む上記(1)に記載の偏光シート。
【0010】
(3) 当該偏光シートは、その光吸収スペクトルにおいて、390nm以上420nm以下の波長域における光透過率が7.0%以下であることを満足する領域を有する上記(1)または(2)に記載の偏光シート。
【0011】
(4) 当該偏光シートは、前記一方の面側を湾曲凹面とし、前記他方の面側を湾曲凸面とする湾曲状態として使用されるものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の偏光シート。
【0012】
(5) 前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、その平均厚さが0.15mm以上2.00mm以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の偏光シート。
【0013】
(6) 前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、前記添加剤の含有量が0.10重量%以上3.00重量%以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の偏光シート。
【0014】
(7) 前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ独立して、前記樹脂材料としてのポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂を主材料として構成される上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の偏光シート。
【0015】
(8) 前記樹脂材料のガラス転移点は、100℃以上190℃以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の偏光シート。
【0016】
(9) 基材と、
前記基材に積層された、上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の偏光シートと、を備えることを特徴とする光学部品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インサート射出成形法により、光学部品として、例えば、眼鏡用レンズを製造する際、すなわち、偏光シートを湾曲形状とすることで形成された湾曲凹面に樹脂層を形成する際に、得られる眼鏡用レンズ(光学部品)に含まれる添加剤が、インサート射出成形法に用いられる金型に付着することに基づく金型の汚染を的確に抑制することができる。特に、添加剤として含まれる、光吸収スペクトルにおいて380nm以上440nm以下のような長波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤の付着による金型の汚染を的確に抑制または防止することができる。したがって、添加剤の付着に基づく金型の汚染を、的確に抑制または防止し得るため、信頼性に優れた眼鏡用レンズ(光学部品)を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の偏光シートを有する光学部品としての眼鏡用レンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の偏光シートを用いて光学部品としての眼鏡用レンズを製造する製造方法を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の偏光シートの実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】
図3に示す偏光シートが湾曲形状とされた湾曲偏光シートを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の偏光シートおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本発明の偏光シート15は、偏光膜13と、この偏光膜13の一方の面側に設けられた第1樹脂層11と、偏光膜13の他方の面側に設けられた第2樹脂層12とを備え、第1樹脂層11および第2樹脂層12は、それぞれ独立して、樹脂材料と添加剤とを含有し、第1樹脂層11および第2樹脂層12のうち、少なくとも第1樹脂層11は、添加剤として、その光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤を含有する。
【0021】
これにより、インサート射出成形法により、光学部品として、例えば、眼鏡用レンズ30を製造する際、すなわち、偏光シート15を湾曲形状とすることで形成された湾曲凹面に樹脂層35を形成する際に、得られる眼鏡用レンズ30(光学部品)に含まれる添加剤が、インサート射出成形法に用いられる金型40に付着することに基づく金型40の汚染を的確に抑制することができる。特に、添加剤として含まれる380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤の付着による金型40の汚染を的確に抑制または防止することができる。したがって、添加剤の付着に基づく金型40の汚染を、的確に抑制または防止し得るため、信頼性に優れた眼鏡用レンズ30(光学部品)を製造することができる。
【0022】
本発明の偏光シート15は、例えば、眼鏡の一種であるサングラス100が備える眼鏡用レンズ30が有する偏光性の樹脂基板として使用される。そこで、以下では、まず、本発明の偏光シート15を説明するのに先立って、この眼鏡用レンズ30(本発明の光学部品)を備えるサングラス100について説明する。
【0023】
<サングラス>
図1は、本発明の偏光シートを有する光学部品としての眼鏡用レンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、
図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0024】
サングラス100は、
図1に示すように、フレーム20と、眼鏡用レンズ30とを備えている。
【0025】
なお、本明細書において、「眼鏡用レンズ」とは、偏光性を有する光学部品であり、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0026】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、眼鏡用レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0027】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0028】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側に眼鏡用レンズ30が装着される。これにより、使用者は、眼鏡用レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0029】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0030】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0031】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0032】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0033】
眼鏡用レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。この眼鏡用レンズ30は、光透過性を有し、外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層35と、湾曲偏光シート10とを有している。
【0034】
樹脂層35は、光透過性を有し、レンズの裏側に位置し、眼鏡用レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層35が集光機能を有している。
【0035】
樹脂層35は、樹脂材料を主材料として含有する、光透過性を有する樹脂組成物で構成され、この構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
なお、本明細書において「主材料」とは、層(樹脂組成物)中に含まれる複数の構成材料のうち、50重量%以上で含まれる材料のことを言うものとする。
【0037】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する湾曲偏光シート10が備える第1樹脂層11を構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層35と、湾曲偏光シート10との密着性の向上を図ることができる。
【0038】
樹脂層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、眼鏡用レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0039】
かかる構成をなす樹脂層35において、本発明では、樹脂層35を構成する樹脂組成物を、紫外線吸収剤のような添加剤を含まないか、または、含まれたとしても、その含有量を低く設定することができる。そのため、インサート射出成形法により、眼鏡用レンズ30を製造する際に、得られる眼鏡用レンズ30(光学部品)に含まれる添加剤が、インサート射出成形法に用いられる金型40に付着することに基づく金型40の汚染を的確に抑制することができるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0040】
なお、紫外線吸収剤等の添加剤を、樹脂層35(樹脂組成物)が含有する場合、この添加剤としては、後述する第1樹脂層11に含まれる添加剤と同一のものを用いることができる。
【0041】
湾曲偏光シート10は、樹脂層35の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に、かかる形状に対応して湾曲形状をなして接合される湾曲樹脂基板であり、これにより、サングラス100に偏光性が付与される。その結果、サングラス100が、偏光性を有する偏光サングラスとしての機能を発揮する。この湾曲偏光シート10が、偏光シート15(本発明の偏光シート)を、湾曲形状としたもので構成されるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0042】
なお、前述の通り、サングラス100が備える眼鏡用レンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0043】
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、眼鏡用レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
【0045】
以上のような構成をなすサングラス100において、サングラス100が備える眼鏡用レンズ30は、本発明では、以下に示すような、眼鏡用レンズ30の製造方法により、偏光シート15が湾曲形状とされた湾曲偏光シート10を備えるものとして製造される。
【0046】
<眼鏡用レンズの製造方法>
図2は、本発明の偏光シートを用いて眼鏡用レンズを製造する製造方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、
図1の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0047】
以下、偏光シート15(本発明の偏光シート)を湾曲形状とした湾曲偏光シート10を備える眼鏡用レンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
[1]まず、第1樹脂層11と偏光膜13と第2樹脂層12とを備え、これらがこの順で積層された、全体形状が平板状をなす偏光シート15(偏光性積層体)を用意する。そして、この偏光シート15の両面に、保護フィルム50(マスキングフィルム)を貼付することで、偏光シート15の両面に保護フィルム50が貼付された多層積層体150を得る(
図2(a)参照)。
【0048】
[2]次に、
図2(b)に示すように、用意した多層積層体150を、すなわち、偏光シート15の両面に保護フィルム50を貼付した状態で偏光シート15を、その厚さ方向に打ち抜くことで、多層積層体150を平面視で円形状をなすものとする。
【0049】
[3]次に、
図2(c)に示すように、円形状とされた多層積層体150に対して、加熱下で熱曲げ加工を施すことで、多層積層体150を、第1樹脂層11側が湾曲凹面とされ、第2樹脂層12側が湾曲凸面とされた湾曲形状をなす湾曲多層積層体200とする。これにより、平板状をなす偏光シート15を、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、湾曲形状をなす湾曲偏光シート10とすることができる。
【0050】
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の多層積層体150(偏光シート15)の加熱温度(成形温度)は、前述の通り、本実施形態では、偏光シート15が樹脂層11、12を備え、樹脂層11、12の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上170℃以下程度、より好ましくは140℃以上160℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、偏光シート15の変質・劣化を防止しつつ、偏光シート15を軟化または溶融状態として、偏光シート15を確実に熱曲げして、湾曲形状をなす湾曲偏光シート10とすることができる。
【0051】
[4]次に、熱曲げがなされた湾曲偏光シート10から、保護フィルム50を剥離させる。その後、
図2(d)に示すように、湾曲形状とされた湾曲凹面を備える金型40に、金型40の湾曲凹面と湾曲偏光シート10の湾曲凸面とが当接するようにして、湾曲偏光シート10を吸着させた状態とする。そして、インサート射出成形法を用いて、この湾曲偏光シート10の湾曲凹面に、樹脂材料を主材料とする樹脂組成物で構成される樹脂層35を射出成形する。これにより、偏光シート15が熱曲げされた湾曲偏光シート10と、樹脂層35とを備える眼鏡用レンズ30が製造される。
【0052】
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中に樹脂層35を形成するための樹脂組成物を低圧で射出した後、金型を40高圧で閉じてこの樹脂組成物に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としての樹脂層35ひいては眼鏡用レンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂組成物に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂組成物を冷却することができるので、寸法精度の高い樹脂層35を得ることができる。
【0053】
以上のような眼鏡用レンズ30の製造方法において、眼鏡用レンズ30が備える湾曲偏光シート10の形成に用いられる偏光シート15として、本発明の偏光シートが用いられる。これにより、前記工程[4]において、金型40を用いたインサート射出成形法により、湾曲偏光シート10と樹脂層35とを備える眼鏡用レンズ30を得る際に、紫外線吸収剤等の添加剤が、インサート射出成形法に用いられる金型40に付着することに基づく金型40の汚染を的確に抑制することができる。そのため、信頼性に優れた眼鏡用レンズ30を製造することができるが、以下、本発明の偏光シートについて詳述する。
【0054】
<偏光シート15>
本発明の偏光シート15は、偏光膜13と、この偏光膜13の一方の面側に設けられた第1樹脂層11と、偏光膜13の他方の面側に設けられた第2樹脂層12とを備え、第1樹脂層11および第2樹脂層12は、それぞれ独立して、樹脂材料と添加剤とを含有し、第1樹脂層11および第2樹脂層12のうち、少なくとも第1樹脂層11は、添加剤として、添加剤(紫外線吸収剤)の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤を含有する。
【0055】
以下、この偏光シート15(本発明の偏光シート)について、まず、偏光シート15を構成する各部(各層)について説明する。なお、偏光シート15は、上記の通り、第1樹脂層11と、偏光膜13と、第2樹脂層12とを備えていればよいが、本実施形態では、さらに、偏光膜13と第1樹脂層11とを接合(接着)する接着剤層16と、偏光膜13と第2樹脂層12とを接合(接着)する接着剤層17とを備える場合について説明する。
【0056】
図3は、本発明の偏光シートの実施形態を示す縦断面図、
図4は、
図3に示す偏光シートが湾曲形状とされた湾曲偏光シートを示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図3、
図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0057】
(偏光膜13)
偏光膜13は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有している。これにより、偏光シート15(湾曲偏光シート10)を通過する光は、偏光されたものとなる。
【0058】
偏光膜13の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜13の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
【0059】
このような偏光膜13の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、偏光膜13は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜13は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
【0061】
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシッドブラックなどが挙げられる。
【0062】
この偏光膜13の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
【0063】
(第1樹脂層11)
第1樹脂層11は、
図2(d)、
図3に示すように、偏光膜13の下面側(一方の面側)に設けられ、これにより、偏光膜13を保護する保護層として機能する。そして、第1樹脂層11は、
図4に示すように、偏光シート15を湾曲形状とした湾曲偏光シート10において、その下面(偏光膜13と反対側の面)が湾曲凹面を構成する。
【0064】
この第1樹脂層11は、特に限定されないが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、および、トリアセチルセルロースのようなセルロース樹脂等の樹脂材料を主材料として含有する樹脂組成物で構成され、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリアミド系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を主材料として構成されていることが好ましい。
【0065】
ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、湾曲偏光シート10の透明性や耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、偏光シート15の軽量化が図られる。また、ポリアミド系樹脂は、透明性および耐衝撃性の他に、耐薬品性、耐応力性等の向上を図ることができる。
【0066】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、脂環式ポリアミド、半芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂環式ポリアミドは、耐衝撃性に優れた材料である。そのため、偏光シート15を優れた耐衝撃性を発揮するものとし得る。また、半芳香族ポリアミドは、弾性率の高い材料である。そのため、曲げ等の応力に対して、優れた耐性を有する偏光シート15とすることができる。
【0067】
なお、本明細書において、半芳香族ポリアミドとは、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族性化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミドのことを言い、具体的には、下記式(1B)で表すことができる。
【0068】
【化1】
(ただし、式(1B)中のR
1およびR
2は、一方が2価の芳香族置換基、他方が2価の脂肪族置換基であり、nは、2以上の整数である。)
【0069】
なお、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミンのうち少なくとも一方について、2種以上のモノマーを含む共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)であってもよい。
【0070】
また、上記式(1B)中のR1、R2のうちの芳香族置換基としては、下記式(2B)で表されるものであるのが好ましい。
【0071】
【化2】
(ただし、式(2B)中、l、mは、それぞれ独立に0以上2以下の整数である。)
【0072】
これにより、偏光膜13をより好適に保護することができるとともに、湾曲偏光シート10の加工性をより優れたものとし得る。また、第1樹脂層11にリタデーションを付与する場合には、第1樹脂層11の延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
【0073】
上記式(1B)中のR1、R2のうちの脂肪族置換基は、炭素数が4以上18以下のものであるのが好ましく、炭素数が4以上18以下の炭化水素基であるのがより好ましく、炭素数が4以上18以下の飽和炭化水素基であるのがさらに好ましい。
【0074】
これにより、偏光シート15を、湾曲形状をなす湾曲偏光シート10とする際の加工性をより優れたものとし得る。
【0075】
さらに、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジアミンとを構成モノマーとして含むものであるのが好ましい。これにより、偏光膜13をより好適に保護することができるとともに、偏光シート15を、湾曲形状をなす湾曲偏光シート10とする際の加工性をより優れたものとし得る。また、延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
【0076】
脂環式ポリアミドは、その分子内に脂環式の化学構造を有しており、主鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよいし、側鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよい。
【0077】
この脂環式ポリアミドとしては、例えば、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの少なくとも一方が脂環式の化学構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(3B)で表すことができる。
【0078】
【化3】
(ただし、式(3B)中、R
3、R
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が4以下の炭化水素基、oは、2以上14以下の整数、pは、0以上6以下の整数、nは、2以上の整数である。)
【0079】
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂または複素脂環式ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、偏光シート15の強度をより優れたものとし得る。また、複素脂環式ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に複素脂肪族環を備えており、これにより、偏光シート15の耐熱性をより優れたものとし得る。
【0080】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0081】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0082】
【化4】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0083】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
特に、芳香族系ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、湾曲偏光シート10は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
【0085】
また、複素脂環式ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に複素脂肪族環を備えるものであるが、この複素脂肪族環は、2つの環状体からなり、それぞれの環状体が有する一辺同士が互いに連結している縮合多環系構造をなしているのが好ましい。また、2つの環状体は、それぞれ、5員環または6員環であるのが好ましい。
【0086】
以上のことから、複素脂環式ポリカーボネート系樹脂において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記式(2X)で表わされるものが好ましい構造である。
【0087】
【0088】
なお、上記式(2X)で表わされるカーボネート構成単位を有する複素脂環式ポリカーボネート系樹脂は、下記式(2Xa)で表わされるエーテルジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
【0089】
【0090】
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記式(2XA)で表わされる1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール(イソソルビド)型のものや、下記式(2XB)で表わされる1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(イソマンニド)型ものが挙げられる。
【0091】
【0092】
第1樹脂層11を構成する樹脂組成物中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における偏光シート15の熱曲げ加工による湾曲偏光シート10の形成を比較的容易に実施することができる。また、第1樹脂層11にリタデーションを発現させる際には、このリタデーションの発現のための延伸を好適に行うことができる。さらに、湾曲偏光シート10の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0093】
かかる構成をなす第1樹脂層11は、前述の通り、樹脂材料を主材料とする樹脂組成物で構成されるが、本発明では、樹脂組成物が、添加剤を含有し、この添加剤として、添加剤(紫外線吸収剤)の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤(UVA)を含有する。
【0094】
このように、本発明では、眼鏡用レンズ30を構成する、樹脂層35および偏光シート15(湾曲偏光シート10)のうち、偏光シート15、より詳しくは、偏光シート15が備える第1樹脂層11が添加剤を含有している。そのため、樹脂層35を構成する樹脂組成物を、紫外線吸収剤のような添加剤を含まないか、または、含まれたとしても、その含有量を低く設定することができる。そのため、前記工程[4]において、金型40を用いたインサート射出成形法により、眼鏡用レンズ30を得る際に、紫外線吸収剤等の添加剤が、インサート射出成形法に用いられる金型40に付着することに基づく金型40の汚染を的確に抑制することができる。なお、樹脂層35を構成する樹脂組成物に、仮に、多量の添加剤が含まれていると、金型40は、成形される樹脂層35との接触面だけではなく、樹脂層35を構成する樹脂組成物、すなわち、樹脂層35の形成に用いられる樹脂組成物が金型40内に供給される際に流れる、金型40内の流路をも汚染されることになる。これに対して、上記の通り、第1樹脂層11を、添加剤を含有するものとして、樹脂層35を構成する樹脂組成物を、紫外線吸収剤のような添加剤を含まないか、または、含まれたとしても、その含有量を低く設定することで、金型40が備える流路における汚染の発生を、的確に抑制または防止することができる。
【0095】
また、前記工程[4]において、金型40を用いたインサート射出成形法により、眼鏡用レンズ30を得る際に、偏光シート15(湾曲偏光シート10)が備える第1樹脂層11および第2樹脂層12のうち、金型40の湾曲偏光シート10との接触面に対して、第2樹脂層12が接触し、第1樹脂層11は、接触することがない。そのため、光吸収スペクトルにおいて380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する紫外線吸収剤(以下、「長波長域紫外線吸収剤」と言うこともある。)を、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物が含む添加剤として含有するものとすることで、長波長域紫外線吸収剤のような希少性が高く高価なものが、金型40の内部を汚染することに基づき、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物から漏出するのを的確に抑制または防止することができる。また、このような長波長域紫外線吸収剤の漏出を的確に抑制または防止し得ることから、偏光シート15(湾曲偏光シート10)を備える眼鏡用レンズ30を、信頼性に優れたものとし得る。
【0096】
長波長域紫外線吸収剤としては、長波長域紫外線吸収剤の光吸収スペクトルにおいて、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、380nm以上410nm以下の波長域に変曲点を有するもの、410nm超440nm以下の波長域に変曲点を有するものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これにより、380nm以上440nm以下の波長域の光を長波長域紫外線吸収剤で確実に吸収し得るため、かかる波長域の光が偏光シート15(湾曲偏光シート10)ひいては眼鏡用レンズ30を透過するのを的確に抑制または防止することができる。
【0097】
また、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤は、その光吸収スペクトルにおいて、400nm以上417nm以下の波長域の光透過率が10%以下であるのが好ましく、400nm以上417nm以下の波長域の光透過率が5%以下であるのがより好ましい。これにより、380nm以上440nm以下の波長域に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤を用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0098】
380nm以上410nm以下の波長域に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤としては、例えば、402nm付近に変曲点を有するもの(大和化成社製、「DAINSORB T-206」)、409nm付近に変曲点を有するもの(BASFジャパン社製、「Tinopal OB」)、400nm付近に変曲点を有するもの(ケミプロ化成社製、「KEMISORB 73」)等が挙げられる。また、410nm超440nm以下の波長域に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤としては、例えば、417nm付近に変曲点を有するもの(オリエント化学社製、「UA3912」)、416nm付近に変曲点を有するもの(紀和化学社製、「KP PLAST UVA」)、427nm付近に変曲点を有するもの(富士フイルム社製、「OUV-012」)等が挙げられる。
【0099】
長波長域の光が偏光シート15を透過し得る程度は、具体的には、偏光シート15の光吸収スペクトルにおいて、390nm以上420nm以下の波長域における光透過率が、7.0%以下に設定されている領域を有するのが好ましく、5.0%以下に設定されている領域を有するのがより好ましく、3.0%以下に設定されている領域を有するのがさらに好ましい。前記光透過率が、前記上限値以下に設定されることにより、長波長域の紫外線(380nm以上430nm以下の波長域の光)が、偏光シート15を透過するのが的確に抑制されていると言うことができる。
【0100】
この場合、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物中における長波長域紫外線吸収剤の含有量は、0.04重量%以上2.70重量%以下であるのが好ましく、0.05重量%以上2.00重量%以下であるのがより好ましい。長波長域紫外線吸収剤の含有量を上記範囲内に設定することにより、380nm以上430nm以下の波長域の光が偏光シート15(湾曲偏光シート10)ひいては眼鏡用レンズ30を透過するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0101】
また、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物に含まれる添加剤としては、長波長域紫外線吸収剤以外に、他の添加剤が含まれていてもよく、特に限定されないが、例えば、長波長域紫外線吸収剤よりも短波長領域に光の吸収率のピークを有する紫外線吸収剤(UVB、UVC)や、光吸収剤(可視光吸収剤)、染料等の着色剤、滑剤、充填材、配向助剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
このように、第1樹脂層11が、長波長域紫外線吸収剤以外に、長波長域紫外線吸収剤とは異なるものを添加剤として含有する場合、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物中における添加剤の含有量、すなわち、長波長域紫外線吸収剤と他の添加剤との合計の含有量は、0.10重量%以上3.00重量%以下であるのが好ましく、0.15重量%以上2.30重量%以下であるのがより好ましく、0.20重量%以上2.00重量%以下であるのがさらに好ましく、0.30重量%以上1.80重量%以下であるのが特に好ましい。
【0103】
ここで、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物が、樹脂材料として、ポリアミド系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を含む場合、第1樹脂層11に、それぞれ、優れた機械的強度または耐衝撃性が付与される。これに反して、前記工程[3]における偏光シート15の熱曲げ加工による湾曲偏光シート10の形成の際に、この熱曲げ加工時における温度条件等によっては、偏光シート15の熱曲げを、優れた精度で実施し得ないと言う問題が生じることがあった。これに対して、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物中における添加剤の含有量を、前記範囲内に設定することで、第1樹脂層11に対して、加熱時における柔軟性を付与することができる。そのため、前記工程[3]における偏光シート15の熱曲げ加工による湾曲偏光シート10の形成を、優れた精度で実施することができる。
【0104】
また、第1樹脂層11の平均厚さは、特に限定されず、例えば、0.15mm以上2.00mm以下であるのが好ましく、0.25mm以上1.00mm以下であるのがより好ましい。これにより、前述した第1樹脂層11としての機能を、第1樹脂層11に確実に付与することができる。また、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物に、長波長域紫外線吸収剤を添加することで得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0105】
(第2樹脂層12)
第2樹脂層12は、
図2(d)、
図3に示すように、偏光膜13の上面側(他方の面側)に設けられ、これにより、偏光膜13を保護する保護層として機能する。そして、第2樹脂層12は、
図4に示すように、偏光シート15を湾曲形状とした湾曲偏光シート10において、その上面(偏光膜13と反対側の面)が湾曲凸面を構成する。
【0106】
この第2樹脂層12は、特に限定されないが、第1樹脂層11と同様に、樹脂材料を主材料として含有する樹脂組成物で構成されるものであり、この樹脂材料としてしては、ポリアミド系樹脂またはポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。
【0107】
また、ポリアミド系樹脂およびポリカーボネート系樹脂としては、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物中に含まれるものとして説明したのと同様のものを用いることができる。
【0108】
かかる構成をなす第2樹脂層12は、前述の通り、樹脂材料を主材料とする樹脂組成物で構成される。そして、この樹脂組成物は、第1樹脂層11と同様に、添加剤を含有するものであってもよいが、添加剤を含む場合、添加剤として、長波長域紫外線吸収剤を含まないか、または、含まれたとしても、その含有量が、第1樹脂層11における長波長域紫外線吸収剤の含有量よりも低く設定されていることが好ましい。これにより、前記工程[4]において、金型40を用いたインサート射出成形法により、眼鏡用レンズ30を得る際に、金型40の湾曲偏光シート10との接触面に対して、第2樹脂層12が接触することとなるが、この接触により金型40が汚染されるのを的確に抑制または防止することができる。また、長波長域紫外線吸収剤のような希少性が高く高価なものが、金型40の内部を汚染することに基づき、第2樹脂層12を構成する樹脂組成物から、多量に漏出するのを的確に抑制または防止することができる。
【0109】
なお、第2樹脂層12を構成する樹脂組成物が、長波長域紫外線吸収剤等の添加剤を含む場合、金型40の湾曲偏光シート10との接触面が、第2樹脂層12を構成する樹脂組成物が含有する添加剤により汚染される可能性を有することになる。これに対して、樹脂層35を構成する樹脂組成物が添加剤を含む場合では、金型40の樹脂層35との接触面だけではなく、樹脂層35を構成する樹脂組成物が流れる金型40内の流路をも汚染されることになる。そのため、第2樹脂層12を構成する樹脂組成物が添加剤を含む構成とすることで、金型40内の流路における汚染の発生を、的確に防止することができる。
【0110】
また、長波長域紫外線吸収剤を含む添加剤としては、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物が含有するものとして説明したのと同様のものを用いることができる。
【0111】
さらに、第2樹脂層12が、添加剤を含有する場合、第2樹脂層12を構成する樹脂組成物中における添加剤の含有量は、0.10重量%以上3.00重量%以下であるのが好ましく、0.20重量%以上2.30重量%以下であるのがより好ましく、0.23重量%以上2.00重量%以下であるのがさらに好ましい。第2樹脂層12を構成する樹脂組成物中における添加剤の含有量を、前記範囲内に設定することで、第1樹脂層11を構成する樹脂組成物に添加剤を添加する場合と同様に、第2樹脂層12に対して、加熱時における柔軟性を付与することができる。そのため、前記工程[3]における偏光シート15の熱曲げ加工による湾曲偏光シート10の形成を、優れた精度で実施することができる。
【0112】
また、第2樹脂層12の平均厚さは、特に限定されず、例えば、0.15mm以上2.00mm以下であるのが好ましく、0.25mm以上1.0mm以下であるのが好ましい。これにより、前述した第2樹脂層12としての機能を、第2樹脂層12に確実に付与することができる。
【0113】
さらに、以上のような構成をなしている第1樹脂層11および第2樹脂層12は、リタデーションが発現されているもの、またはリタデーションが発現されていないもののいずれであってもよいが、リタデーションを発現させる場合、第1樹脂層11のリタデーションと第2樹脂層12のリタデーションとは、異なっているのが好ましく、第1樹脂層11のリタデーションは、第2樹脂層12のリタデーションよりも低くなっているのが好ましい。
【0114】
これにより、第2樹脂層12は、熱収縮により湾曲曲率が小さくなる方向に変形しやすいが、第1樹脂層11は、熱収縮により変形しにくくすることができる。したがって、
図2、
図4に示したように、眼鏡用レンズ30が備える湾曲偏光シート10に適用することで、湾曲した湾曲状態で用いられることになるが、この際に、湾曲凸面側に第2樹脂層12が位置し、湾曲凹面側に第1樹脂層11が位置するように湾曲形状とするのが好ましい。この場合、第2樹脂層12が比較的熱収縮率が高いため、比較的熱変形しやすいが、湾曲偏光シート10では、第1樹脂層11は、第2樹脂層12の熱変形を抑制する機能を発揮する。そのため、湾曲偏光シート10全体として、熱による過剰な変形を防止することができる。その結果、湾曲偏光シート10の熱変形に起因して、眼鏡用レンズ30自体の形状が変形するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0115】
第1樹脂層11のリタデーションは、0nm以上500nm以下であるのが好ましく、50nm以上350nm以下であるのがより好ましい。第2樹脂層12のリタデーションは、2600nm以上8000nm以下であるのが好ましく、3500nm以上6500nm以下であるのがより好ましい。これにより、第1樹脂層11のリタデーションを十分に低くすることができるとともに、第2樹脂層12のリタデーションを十分に高くすることができる。よって、湾曲偏光シート10の偏光性能を十分に高めることができる。
【0116】
なお、第1樹脂層11および第2樹脂層12のリタデーションの差異は、層中に含まれる構成材料や、厚さ、さらには、延伸倍率等を異ならせることにより発現させることができる。
【0117】
第1樹脂層11の延伸倍率は、特に限定されないが、前記リタデーションの大きさに設定されるように、例えば、0.95以上1.1以下であるのが好ましい。第2樹脂層12の延伸倍率は、特に限定されないが、前記リタデーションの大きさに設定されるように、1.5以上3.5以下であるのが好ましい。
【0118】
また、第1樹脂層11、第2樹脂層12および偏光膜13の延伸方向は、一致しているのが好ましい。これにより、湾曲偏光シート10の偏光性能をさらに高めることができる。
【0119】
(接着剤層16および接着剤層17)
接着剤層16(第1接着剤層)および接着剤層17(第2接着剤層)は、それぞれ、偏光膜13と第1樹脂層11とを、および、偏光膜13と第2樹脂層12とを接合する機能を有している。これにより、湾曲偏光シート10の耐久性の向上を図ることができる。
【0120】
接着剤層16、17を構成する接着剤(または粘着剤)としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。これにより、接着剤層16、17の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、形状変化に対する追従性を特に優れたものとし得る。
【0121】
この接着剤層16、17の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。これにより、接着剤層16、17としての機能を、確実に付与することができる。
【0122】
なお、接着剤層16、17は、第1樹脂層11、第2樹脂層12および偏光膜13の構成等によっては、その形成を省略することもできる。
【0123】
また、湾曲偏光シート10は、その総厚が0.1mm以上2mm以下であるのが好ましい。
【0124】
以上、本発明の偏光シートおよび光学部品について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0125】
例えば、本発明の偏光シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0126】
また、本発明の偏光シートは、前述した構成に加え、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0127】
より具体的には、例えば、本発明の偏光シートは、中間層や、レンズとしての度数を調整する度数調整層等を備えていてもよい。
【0128】
また、前記実施形態では、本発明の光学部品を、すなわち、本発明の偏光シートが湾曲形状をなすものとされた湾曲偏光シートを備える光学部品を、眼鏡レンズに適用した場合について説明したが、この場合に限定されず、例えば、カメラレンズ、光透過性カバーおよび液晶ディスプレイカバー等にも適用することができる。
【実施例0129】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0130】
1.原材料の準備
まず、偏光シート15の製造に用いた原材料を以下に示す。
【0131】
(ポリカーボネート系樹脂1)
ポリカーボネート系樹脂1として、ビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を用意した。
【0132】
(紫外線吸収剤1)
紫外線吸収剤1として、光吸収スペクトルにおいて、波長417nm付近に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤(オリエント化学工業社製、「BONASORB UA 3912」)を用意した。
【0133】
(紫外線吸収剤2)
紫外線吸収剤2として、光吸収スペクトルにおいて、波長402nm付近に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤(大和化成社製、「DAINSORB T-206」)を用意した。
【0134】
(紫外線吸収剤3)
紫外線吸収剤3として、光吸収スペクトルにおいて、波長380nm付近に変曲点を有する長波長域紫外線吸収剤(アデカ社製、「LA-31RG」)を用意した。
【0135】
(光吸収剤1)
光吸収剤1として、青色染料(紀和化学社製、「KP Plast Blue R」)を用意した。
【0136】
(光吸収剤2)
光吸収剤2として、赤色染料(紀和化学社製、「KP Plast Red H2G」)を用意した。
【0137】
(光吸収剤3)
光吸収剤3として、赤色染料(紀和化学社製、「KP Plast Green G」)を用意した。
【0138】
(滑剤1)
滑剤1として、モノグリセライド(理研ビタミン社製、「S-100A」)を用意した。
【0139】
2.偏光シートの製造
(実施例1)
<1> まず、ポリビニルアルコール系フィルムを、水槽中で延伸しながら、染料を溶解した水溶液にて染色し、ホウ酸で処理した。その後、処理されたポリビニルアルコール系フィルムを水洗いし、乾燥した。これにより、厚さが35μmの偏光膜13を得た。
【0140】
<2> 次いで、98.456重量%のポリカーボネート系樹脂1と、1.500重量%の紫外線吸収剤1と、0.005重量%の滑剤1と、0.012重量%の光吸収剤2と、0.005重量%の光吸収剤3とを配合したものを、混練することで、第1樹脂層11の形成に用いる樹脂組成物を調製した。
【0141】
そして、この樹脂組成物を用いた、ベント式単軸押出機による押出成形により、厚さ0.300mm、リタデーション100nmのシート状の第1樹脂層11を得た。
【0142】
<3> 次いで、99.761重量%のポリカーボネート系樹脂1と、0.2148重量%の紫外線吸収剤3と、0.0243重量%の滑剤1と、0.0002重量%の光吸収剤1と、0.0001重量%の光吸収剤2とを配合したものを、混練することで、第2樹脂層12の形成に用いる樹脂組成物を調製した。
【0143】
そして、この樹脂組成物を用いた、ベント式単軸押出機による押出成形により厚さ0.5mmの第1シートを得た。該第1シートが120℃となるように加熱しながら2倍に一軸延伸することにより、厚さ0.300mm、リタデーション2600nmのシート状の第2樹脂層12を得た。
【0144】
<4> 次いで、第1樹脂層11の一方の面上に、第1接着剤として二液型湿気硬化型ポリウレタン接着剤(主剤:三井化学社製、「タケラック A-520」、硬化剤:三井化学社製、「タケネート A-50」)をバーコーターにて乾燥後の厚さが20μmになるように塗布した。また、第2樹脂層12の一方の面上に、第2接着剤として二液型湿気硬化型ポリウレタン接着剤(主剤:三井化学社製、「タケラック A-520」、硬化剤:三井化学社製、「タケネート A-50」)をバーコーターにて乾燥後の厚さが20μmになるように塗布した。
【0145】
<5> 次いで、第1接着剤および第2接着剤がそれぞれ塗布された第1樹脂層11および第2樹脂層12を、オーブンに入れ、第1接着剤および第2接着剤中の溶剤分が乾燥するまで加熱した。これにより、第1樹脂層11の一方の面上に接着剤層16(第1接着剤層)が積層された第1積層体を得るとともに、第2樹脂層12の一方の面上に接着剤層17(第2接着剤層)が積層された第2積層体を得た。
【0146】
その後、偏光膜13の一方の面上に、第1接着剤層16が接触するように、第1積層体を偏光膜13に積層し、偏光膜13の他方の面上に、第2接着剤層17が接触するように、第2積層体を偏光膜13に積層した後に、ラミネーター機のゴムロールを用いて、第1積層体、偏光膜13および第2積層体をそれぞれ圧着させることで、実施例1の偏光シート15を得た。
【0147】
(実施例2~4、参考例1~2)
第1樹脂層11および第2樹脂層12を、それぞれ、形成するための樹脂組成物として、表1に示す構成材料を、表1に示す含有量で含むものを用いて第1樹脂層11および第2樹脂層12を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2~4、参考例1~2の偏光シート15を得た。
【0148】
3.評価
各実施例および各参考例の偏光シート15を、以下の方法で評価した。
【0149】
<1>偏光シート15の熱曲げ加工性
各実施例および各参考例の偏光シート15について、それぞれ、以下に示すような熱曲げ加工性の評価を行った。
【0150】
すなわち、まず、偏光シート15の両面側、すなわち、第1樹脂層11の偏光膜13とは反対側の面上に、また、第2樹脂層12の偏光膜13とは反対側の面上にそれぞれポリオレフィンからなる保護フィルム50をラミネート法により積層した。
【0151】
次いで、この偏光シート15を、直径8cmに打ち抜いた後に、レマ成形機(真空成形機)(CR-32型)を用いて、145℃、15分間、吸引しつつ熱曲げ加工を行うことで、曲率半径R1が65.4mmである湾曲偏光シート10とした。
【0152】
そして、熱曲げ加工がなされた湾曲偏光シート10が備える第1樹脂層11および第2樹脂層12の表面性状を目視にて観察し、その観察結果に基づいて、次のように評価した。
【0153】
[評価基準]
第1樹脂層11および第2樹脂層12における
◎:R1が70未満である。
〇:R1が70以上73未満である。
△:R1が73以上76未満である。
×:R1が76以上である。
【0154】
<2>偏光シート15の紫外線透過性
各実施例および各参考例の偏光シート15について、それぞれ、その光吸収スペクトルの測定を、分光光度計(日本分光社製、「V670」)を用いて実施することで、390nm以上420nm以下の波長域における光透過率を測定し、その光透過率に基づいて、次のように評価した。
【0155】
[評価基準]
400nmおよび417nmでの波長における光透過率が
◎:3.0%以下である。
〇:3.0%超5.0%以下である。
△:5.0%超7.0%以下である。
×:7.0%超である。
【0156】
以上のようにして得られた各実施例および各参考例の偏光シート15における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0157】
【0158】
表1に示したように、各実施例における偏光シートでは、第1樹脂層11および第2樹脂層12における添加剤の含有量が、それぞれ、0.20重量%以上2.50重量%以下の範囲内に設定されており、これにより、熱曲げ加工性を満足する結果を示した。
【0159】
これに対して、各参考例における偏光シートでは、第1樹脂層11における添加剤の含有量が、0.20重量%以上2.50重量%以下の範囲内に設定されておらず、その結果、熱曲げ加工性を満足しないことが明らかとなった。