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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172689
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ナイロン微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/14 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C08J3/14 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090559
(22)【出願日】2023-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現/光スイッチ型海洋分解性の可食プラスチックの開発研究」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 魁人
(72)【発明者】
【氏名】横山 理沙
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070DA24
4F070DC07
4F070DC13
(57)【要約】
【課題】ナイロン6i、ナイロン6i-11、ナイロン11のナイロン微粒子を製造可能なナイロン微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】ナイロン微粒子の製造方法は、N-メチルピロリドン及びヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択される可溶化溶媒にナイロン6i、ナイロン6i-11及びナイロン11からなる群から選択されるナイロンを溶解させたナイロン溶解液を、水及びエタノールからなる群から選択される析出溶媒に加え、ナイロンを微粒状に析出させてナイロン析出液を調製する工程を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-メチルピロリドン及びヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択される一種以上の可溶化溶媒にナイロン6i、ナイロン6i-11及びナイロン11からなる群から選択されるナイロンを溶解させたナイロン溶解液を、水及びエタノールからなる群から選択される一種以上の析出溶媒に加え、前記ナイロンを微粒状に析出させてナイロン析出液を調製する工程を備える、
ことを特徴とするナイロン微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記N-メチルピロリドンを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水を用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水および前記エタノールを用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ナイロンとしてナイロン6i-11(75%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ナイロンとして前記ナイロン11を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項6】
更に、析出した前記ナイロンを分離、乾燥する工程を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項7】
ナイロン6i、ナイロン6i-11及びナイロン11からなる群から選択されるナイロンをN-メチルピロリドン及びヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択される一種以上の可溶化溶媒に溶解させてナイロン溶解液を調製する工程と、
水及びエタノールからなる群から選択される一種以上の析出溶媒に前記ナイロン溶解液を加え、前記ナイロンを微粒状に析出させてナイロン析出液を調製する工程とを備える、
ことを特徴とするナイロン微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記N-メチルピロリドンを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水を用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水および前記エタノールを用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記ナイロンとしてナイロン6i-11(75%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ナイロンとして前記ナイロン11を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【請求項12】
更に、析出した前記ナイロンを分離、乾燥する工程を備える、
ことを特徴とする請求項7に記載のナイロン微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイロン微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドの一種であるナイロンは、強靱かつ耐熱性、耐薬品性に優れていることから繊維やプラスチックとして様々な分野で利用されている。近年では、化粧品や3Dプリンターの造形材料、塗料などの分野において、微粒状のナイロン微粒子が使われている。
【0003】
ナイロン微粒子の製造方法として、特許文献1~4などがある。特許文献1ではナイロン6、ナイロン66、特許文献2ではナイロン6、特許文献3ではナイロン4、ナイロン3、また、特許文献4ではナイロン4、ナイロン3の微粒子の製造について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-80629号公報
【特許文献2】国際公開第2007/37211号
【特許文献3】特開2020-100846号公報
【特許文献4】国際公開第2022/113993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4のいずれにも、ナイロン6i、ナイロン6i-11、ナイロン11の微粒子の製造については記載されていない。
【0006】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的はナイロン6i、ナイロン6i-11、ナイロン11のナイロン微粒子を製造可能なナイロン微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係るナイロン微粒子の製造方法は、
N-メチルピロリドン及びヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択される一種以上の可溶化溶媒にナイロン6i、ナイロン6i-11及びナイロン11からなる群から選択されるナイロンを溶解させたナイロン溶解液を、水及びエタノールからなる群から選択される一種以上の析出溶媒に加え、前記ナイロンを微粒状に析出させてナイロン析出液を調製する工程を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記N-メチルピロリドンを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水を用いることが好ましい。
【0009】
また、前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水および前記エタノールを用いることが好ましい。
【0010】
また、前記ナイロンとしてナイロン6i-11(75%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いることが好ましい。
【0011】
また、前記ナイロンとして前記ナイロン11を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いることが好ましい。
【0012】
更に、析出した前記ナイロンを分離、乾燥する工程を備えることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点に係るナイロン微粒子の製造方法は、
ナイロン6i、ナイロン6i-11及びナイロン11からなる群から選択されるナイロンをN-メチルピロリドン及びヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択される一種以上の可溶化溶媒に溶解させてナイロン溶解液を調製する工程と、
水及びエタノールからなる群から選択される一種以上の析出溶媒に前記ナイロン溶解液を加え、前記ナイロンを微粒状に析出させてナイロン析出液を調製する工程とを備える、
ことを特徴とする。
【0014】
また、前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記N-メチルピロリドンを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水を用いることが好ましい。
【0015】
また、前記ナイロンとしてナイロン6i-11(50%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記水および前記エタノールを用いることが好ましい。
【0016】
また、前記ナイロンとしてナイロン6i-11(75%AUA)を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いることが好ましい。
【0017】
また、前記ナイロンとして前記ナイロン11を用い、
前記可溶化溶媒として前記ヘキサフルオロイソプロパノールを用いるとともに、前記析出溶媒として前記エタノールを用いることが好ましい。
【0018】
更に、析出した前記ナイロンを分離、乾燥する工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ナイロン6i、ナイロン6i-11、ナイロン11のナイロン微粒子を製造可能なナイロン微粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ナイロン微粒子の製造方法を示す工程図である。
図2】実験例1で得られたナイロン6i-11(50%AUA)微粒子のSEM像を示す写真である。
図3】実験例2で得られたナイロン6i-11(75%AUA)微粒子のSEM像を示す写真である。
図4】実験例3で得られたナイロン11微粒子のSEM像を示す写真である。
図5】実験例20で得られたナイロン6i-11(50%AUA)の粒度分布を示すグラフである。
図6】実験例24で得られたナイロン6i-11(50%AUA)の粒度分布を示すグラフである。
図7】実験例2で得られたナイロン6i-11(75%AUA)の粒度分布を示すグラフである。
図8】実験例3で得られたナイロン11の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ナイロン微粒子の製造方法は、図1に示すように、ナイロン溶解液調製工程、ナイロン析出液調製工程、分離工程、乾燥工程を備える。
【0022】
<ナイロン溶解液調製工程>
ナイロン溶解液調製工程では、ナイロンを可溶化溶媒に溶解させる。可溶化溶媒中にて、ナイロンの水素結合が切断され、それぞれの分子が分散した形態になる。ナイロンの溶解は常温で行い得る。用いるナイロンの形態として、ペレット状ナイロンなどを用いることができる。
【0023】
ナイロンは、ナイロン6i、ナイロン11またはナイロン6i-11である。ナイロン6i-11として、ナイロン6i-11(50%AUA)、ナイロン6i-11(75%AUA)等、種々のナイロン6i-11が挙げられる。
【0024】
ナイロン6i-11は、式1に示すように、式2に示す1-アミノヘキシル-2-ピロリドン-4-カルボン酸(以下、6iモノマーユニット)と式3に示す11アミノウンデカン酸(以下、11モノマーユニット)が縮合して得られるナイロンである。すなわち、6iモノマーユニットと11モノマーユニットとの配合比(モル比)によって、種々のナイロン6i-11が存在し得る。
【0025】
【化1】
【0026】
そして、本明細書においては、6iモノマーユニットと11モノマーユニットとの配合比に応じて合成されたナイロン6i-11をナイロン6i-11(100x%AUA)と表す。具体的には、式1中のxが0.5であるナイロン6i-11をナイロン6i-11(50%AUA)、式1中のxが0.75であるナイロン6i-11をナイロン6i-11(75%AUA)と表す。したがって、本明細書におけるナイロン6i-11には、式1中のxが0より大きく1より小さいナイロン6i-11、即ち、6iモノマーユニットおよび11モノマーユニットの両方を有し、11モノマーユニットの配合比が0%より大きく100%より小さいナイロン6i-11が含まれる。
【0027】
可溶化溶媒として、N-メチルピロリドンおよびヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択される一種以上を用いる。これらは混合して用いてもよいが、ナイロン6i-11(50%AUA)に対しては、N-メチルピロリドン、ヘキサフルオロイソプロパノールのいずれを用いてもよい。また、ナイロン6i-11(75%AUA)およびナイロン11に対しては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いることが好ましい。
【0028】
ナイロンを溶解する手法は、例えば、可溶化溶媒としてN-メチルピロリドンを用いる場合では還流による溶解手法、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた場合では、室温での転倒混和による溶解手法や加温による溶解手法など、用いる可溶化溶媒やナイロン種等に応じて適宜選択して行えばよい。また、可溶化溶媒は、用いるナイロンを十分溶解可能な量であればよく、例えば、ナイロン濃度が20~30mg/mL程度である。
【0029】
<ナイロン析出液調製工程>
ナイロン析出液調製工程では、溶解したナイロンを析出させる析出溶媒にナイロン溶解液を加え、ナイロン析出液を得る。
【0030】
具体的には、上記のように調製したナイロン溶解液を少量ずつ析出溶媒に滴下する。ナイロンは上述した有機溶媒以外には基本的に不溶であるため、ナイロン溶解液を析出溶媒に滴下すると、溶解しているナイロンが凝集し、微粒子状に析出する。これにより、この微粒子状に析出したナイロンが分散したナイロン析出液を得ることができる。
【0031】
用いる析出溶媒として、水、エタノールが挙げられる。これらは混合して用いてもよいが、ナイロン6i-11(50%AUA)に対しては、析出溶媒として、水を用いることが好ましい。また、ナイロン6i-11(75%AUA)およびナイロン11に対しては、エタノールを用いることが好ましい。また、ナイロン6i-11(50%AUA)に対しては、析出溶媒として、水およびエタノールの双方を用いてもよい。この場合、ナイロン6i-11(50%AUA)のナイロン溶解液をエタノールに添加した後に、水を添加するとよい。
【0032】
<分離工程>
析出したナイロン微粒子をナイロン析出液から分離する。分離方法は、有機溶媒及び析出溶媒を分離、除去できればどのような手法で行ってもよく、例えば、ナイロン析出液を遠心分離し、上清を除去することで有機溶媒及び析出溶媒からナイロンを分離することができる。また、上清を除去した後、水を加えて再度遠心分離を行う操作を複数回行ってもよい。
【0033】
<乾燥工程>
分離したナイロン微粒子を乾燥する。乾燥方法については、溶媒を十分に除去できれば特に限定されず、凍結乾燥や熱風乾燥など、公知の分離方法にて行うことができる。
【0034】
以上の工程を経て、ナイロン微粒子を得ることができる。得られたナイロン微粒子は、化粧品や3Dプリンターの造形材料、塗料などに利用され得る。特に、ナイロン6i-11は海洋生分解性であるため、海洋環境での光や塩による刺激にて速やかに生分解され得る。このため、ナイロン6i-11微粒子で成形、製造されたプラスチック製品については、海洋環境問題として叫ばれているマイクロプラスチック問題を助長しないため、環境悪化の抑制につながる。
【実施例0035】
<実験例1>ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子の製造
以下の(a)-(e)手順に従い、ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子を製造した。
(a)ナイロン6i-11(50%AUA)のペレットをN-メチルピロリドン(3mL)に添加し、環流(100℃、72時間)によって溶解し、ナイロン溶解液(25mg/mL)を調製した。
(b)ナイロン溶解液(80μL)を水(320μL)に滴下し、ナイロン析出液(5mg/mL)を調製した。
(c)ナイロン析出液を遠心(700G、5分間)した後、上清を除去した。
(d)水を加え、遠心(700G、5分間)した後、上清を除去した。この操作を3回行った。
(e)分離したナイロン微粒子を凍結乾燥した。
【0036】
<実験例2>ナイロン6i-11(75%AUA)微粒子の製造
以下の(a)-(d)手順に従い、ナイロン6i-11(75%AUA)微粒子を製造した。
(a)ナイロン6i-11(75%AUA)のペレットをヘキサフルオロイソプロパノール(4mL)に添加し、室温静置(2時間30分、転倒混和)により溶解し、ナイロン溶解液(25mg/mL)を調製した。
(b)ナイロン溶解液(80μL)をエタノール(320μL)に滴下し、ナイロン析出液(25mg/mL)を調製した。
(c)ナイロン析出液を遠心(12000G、10分間)した後、上清を除去した。
(d)分離したナイロン微粒子を凍結乾燥した。
【0037】
<実験例3>ナイロン11微粒子の製造
以下の(a)-(d)手順に従い、ナイロン11微粒子を製造した。
(a)ナイロン11のペレットをヘキサフルオロイソプロパノール(4mL)に添加し、室温静置(2時間30分、転倒混和)により溶解し、ナイロン溶解液(25mg/mL)を調製した。
(b)ナイロン溶解液(80μL)をエタノール(320μL)に滴下し、ナイロン析出液(25mg/mL)を調製した。
(c)ナイロン析出液を遠心(12000G、10分間)した後、上清を除去した。
(d)分離したナイロン微粒子を凍結乾燥した。
【0038】
表1に実験例1~3で得られたナイロン微粒子の収率をまとめた。また、実験1~3で得られたナイロン微粒子について、SEM(Scanning Electron Microscope)を撮影した。図2図4に、実験例1、2、3で得られたナイロン微粒子のSEM像をそれぞれ示す。
【0039】
【表1】
【0040】
以上のように、実験例1~3において、ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子、ナイロン6i-11(75%AUA)微粒子、ナイロン11微粒子を製造できることを確認した。
【0041】
また、ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子の製造において、以下のように、析出溶媒として水とエタノールを併用した製造方法についても検証した。
【0042】
<実験例11~20>ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子の製造
実験例1の手順(a)、(b)のうち、(b)を下記(b’)に代えて、種々のナイロン析出液を調製した。そして、(b’)においてナイロン微粒子が生成されたものについて、実験例1の(c)~(e)の手順を行い、ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子を製造した。
(b’)ナイロン溶解液(40μL)をエタノール(360μL)に滴下した後、これに所定量の水(100~200μL)を加えた。そして、室温放置し、溶液が白濁したか否かを目視することでナイロン微粒子の生成の有無を確認した後、更に、-30℃に冷却してナイロン微粒子の生成の有無を確認した。
【0043】
ナイロン溶解液量、エタノール量、微粒子生成の有無について、表2にまとめた。析出溶媒としてエタノールのみ使用した段階では微粒子が生成されなかったが、その後、所定量以上の水を加えることで、微粒子が生成されること、そして、生成されたものについてはナイロン微粒子を製造できることを確認した。
【0044】
【表2】
【0045】
<実験例21~27>ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子の製造
また、ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子について、可溶化溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール、析出溶媒として水とエタノールを併用した製造方法について、以下のように検証した。
【0046】
実験例1の(a)、(b)の手順を下記の(a”)、(b”)の手順にそれぞれ代えて、種々のナイロン析出液を調製し、ナイロン微粒子が生成されたものについて、実験例1の(c)~(e)の手順を行い、ナイロン6i-11(50%AUA)微粒子を製造した。
(a”)ナイロン6i-11(50%AUA)のペレットをヘキサフルオロイソプロパノール(3mL)に添加し、加温(70℃、30分)して溶解し、ナイロン溶解液(25mg/mL)を調製した。
(b”)所定量のナイロン溶解液(20~200μL)を所定量のエタノール(200~380μL)に滴下した後、これに水(200μL)を加えた。ナイロン微粒子の形成の有無について、溶液が白濁したか否かを目視で確認することで行った後、更に、-30℃に冷却してナイロン微粒子の有無を確認した。
【0047】
実験例21~27におけるナイロン溶解液量、エタノール量、微粒子生成の有無について、表3にまとめた。ナイロン6i-11(50%AUA)をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた場合、析出溶媒としてエタノールのみ使用した段階では微粒子が生成されなかったが、その後、所定量以上の水を加えることで、微粒子が生成されること、そして、生成されたものについてはナイロン微粒子を製造できることを確認した。
【0048】
【表3】
【0049】
(粒度分布の測定)
実験例20のナイロン6i-11(50%AUA)微粒子、実験例24のナイロン6i-11(50%AUA)微粒子、実験2のナイロン6i-11(75%AUA)微粒子、実験3のナイロン11微粒子について、粒度分布を測定した。
・装置:レーザ回折式粒度分布測定装置(LMD-2000e、株式会社セイシン企業製)
・測定法:湿式分散法
・分散媒:エタノール
・データ取り込み回数:5000回
・測定粒径範囲:0.02~2000μm
【0050】
図5図8に、実験例20のナイロン6i-11(50%AUA)微粒子、実験例24のナイロン6i-11(50%AUA)微粒子、実験2のナイロン6i-11(75%AUA)微粒子、実験3のナイロン11微粒子の粒度分布(頻度分布、積算分布)を示す。また、測定は2回行い、それぞれの平均粒径(D50=メディアン径)を表4にまとめた。以上のように、ナイロン6i-11、ナイロン11のナイロン微粒子を製造できることを確認した。
【0051】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0052】
化粧品や3Dプリンターの造形材料、塗料などの分野において使用されるナイロン微粒子の製造に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8