(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017269
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】プレート積層型熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20240201BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20240201BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F3/08 301Z
F28D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119801
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】松坂 周平
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA17
3L103AA18
3L103BB39
3L103CC09
3L103DD15
3L103DD18
3L103DD55
(57)【要約】
【課題】 U字型の出入り口配置を有するプレート積層型熱交換器における各段間の偏流傾向を抑制すること。
【解決手段】 プレート1、2の積層方向の一方の端部に、第1流体3の入口10及び出口11が形成されたプレート積層型熱交換器において、第1流体3がコア9に流入する入口10に、第1流体3の流れを各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に偏向する偏向機構を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿状の多数のプレート(1、2)が積層されて、
プレート(1、2)の積層方向の一枚おきに第1流体(3)が流通する第1流路(4)と、第2流体(5)が流通する第2流路(6)とが交互に形成され、
各プレート(1、2)には、互いに離間して第1連通孔(7)と第2連通孔(8)とが設けられており、
第1流体(3)が第1連通孔(7)から第1流路(4)を介して第2連通孔(8)に導かれるコア(9)を有するプレート積層型熱交換器において、
プレート(1、2)の積層方向の一方の端部に、第1流体(3)の入口(10)及び出口(11)が形成されており、
入口(10)は第1連通孔(7)に連結され、出口(11)は第2連通孔(8)に連結されており、
第1流体(3)がコア(9)に流入する入口(10)には、第1流体(3)の流れを各段の第1流路(4)の流入部(4a)から離れる方向に偏向する偏向機構を有するプレート積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のプレート積層型熱交換器において、
前記偏向機構は、入口(10)の中心軸(о)が、入口(10)が形成されたプレートに隣接するプレートの第1連通孔(7)の中心軸(p)に対して、第1流路(4)の流入部(4a)側の方向に位置ずれしており、
入口(10)の前記位置ずれの方向とは反対側の内周の位置(10a)が、入口(10)が形成されたプレートに隣接するプレートの第1連通孔(7)の前記位置ずれの方向とは反対側の内周の位置(7a)よりも、前記位置ずれの方向の側に位置している構造であるプレート積層型熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載のプレート積層型熱交換器において、
前記偏向機構は、入口(10)の中心軸(о)が、各段の第1流路(4)の流入部(4a)から離れる方向に向いている構造であるプレート積層型熱交換器。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれかに記載のプレート積層型熱交換器において、
第1流路(4)にインナフィンが設置されていないプレート積層型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート積層型熱交換器に関し、特に流体が流通する流路の各段間の偏流を抑制する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型のプレート積層型熱交換器として、プレートの積層方向の一枚おきに第1流体が流通する第1流路と、第2流体が流通する第2流路とが交互に形成されたものが存在する。
図13Aは、従来のプレート積層型熱交換器の概略図であって、プレートの積層方向の一方の端部に、第1流体3の入口10及び出口11が配置されている(U字形に流体が流通する出入り口配置)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来型のプレート積層型熱交換器は、熱交換器における第1流路の各段を流通する第1流体に偏流が生じることがある。
これは、
図13Aに示す如く、流体がU字形に流通する出入り口配置においては、入口から出口までの流路の流路長が、どの段の間を通るかによってなることに起因する。即ち、
図13Bに示すように、前記流路長が短い程、流量が多くなり、各段間の流量が偏ることがある。
また、この偏りは、段間の流通抵抗が小さい場合に、顕著となる。
そこで、本発明は、U字形に流体が流通する出入り口配置のプレート積層型熱交換器における各段間の偏流傾向を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための第1の発明は、皿状の多数のプレート1、2が積層されて、
プレート1、2の積層方向の一枚おきに第1流体3が流通する第1流路4と、第2流体5が流通する第2流路6とが交互に形成され、
各プレート1、2には、互いに離間して第1連通孔7と第2連通孔8とが設けられており、
第1流体3が第1連通孔7から第1流路4を介して第2連通孔8に導かれるコア9を有するプレート積層型熱交換器において、
プレート1、2の積層方向の一方の端部に、第1流体3の入口10及び出口11が形成されており、
入口10は第1連通孔7に連結され、出口11は第2連通孔8に連結されており、
第1流体3がコア9に流入する入口10には、第1流体3の流れを各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に偏向する偏向機構を有するプレート積層型熱交換器である。
【0005】
また、第2の発明は、上記第1の発明のプレート積層型熱交換器において、
前記偏向機構は、入口10の中心軸оが、入口10が形成されたプレートに隣接するプレートの第1連通孔7の中心軸pに対して、各段の第1流路4の流入部4a側の方向に位置ずれしており、
入口10の前記位置ずれの方向とは反対側の内周の位置10aが、入口10が形成されたプレートに隣接するプレートの第1連通孔7の前記位置ずれの方向とは反対側の内周の位置7aよりも、前記位置ずれの方向の側に位置している構造であるプレート積層型熱交換器である。
【0006】
また、第3の発明は、上記第1の発明のプレート積層型熱交換器において、
前記偏向機構は、入口10の中心軸оが、各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に向いている構造であるプレート積層型熱交換器である。
【0007】
また、第4の発明は、上記第2または第3の発明のいずれかのプレート積層型熱交換器において、
第1流路4にインナフィンが設置されていないプレート積層型熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
上記第1の発明は、第1流体3がコア9に流入する入口10には、第1流体3の流れを各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に偏向する偏向機構を有することを特徴とする。
この構成により、コア9の入口10に近い段への、第1流体3の流入が抑制され、コア9の入口10から遠い段への流入が促進されるので、U字型の出入り口配置のプレート積層型熱交換器における段間の偏流が抑制される。
【0009】
第2の発明は、偏向機構を、入口10の中心軸оが、入口10が形成されたプレートに隣接するプレートの第1連通孔7の中心軸pに対して、各段の第1流路4の流入部4a側の方向に位置ずれした構造とすることを特徴とする。
この構成により、簡易な構成で、偏流抑制の効果を得ることができる。
【0010】
第3の発明は、偏向機構を、入口10の中心軸оが、各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に向いている構造とすることを特徴とする。
この構成により、簡易な構成で、偏流抑制の効果を得ることができる。
【0011】
第4の発明は、第1流路4にインナフィンが設置されていないものとすることを特徴とする。
このように、段間の流通抵抗が小さく、前記流路長の影響が大きい場合であっても、偏流を抑制することが可能であり、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施例のプレート積層型熱交換器の平面図。
【
図4】本発明の第2の実施例のプレート積層型熱交換器の要部断面図。
【
図6】本発明の第3の実施例のプレート積層型熱交換器の要部断面図。
【
図8】本発明の第4の実施例のプレート積層型熱交換器の要部断面図。
【
図9】本発明の第5の実施例のプレート積層型熱交換器の要部断面図。
【
図10】本発明の第5の実施例の他の例を示す要部断面図。
【
図11】本発明の第6の実施例のプレート積層型熱交換器の要部断面図。
【
図12】本発明の第6の実施例の他の例を示す要部断面図。
【
図13A】従来のプレート積層型熱交換器であって、そのコア9の上端側のみに、入口10と出口11が配置された概略図。
【
図13B】同熱交換器のコア9における各段の流路分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の各実施の形態につき説明する。
各実施例のプレート積層型熱交換器で共通する構成は、次の通りである。
皿状の多数のプレート1、2が積層されて、コア9を構成する。プレート1、2の積層方向の一枚おきに第1流体3が流通する第1流路4と、第2流体5が流通する第2流路6とが交互に形成されている。各プレート1、2には、互いに離間して第1連通孔7と第2連通孔8とが設けられている。第1連通孔7と第2連通孔8は、コア9の第1流路4の各段とつながっている。
第1流体3は、第1連通孔7から第1流路4を介して第2連通孔8に導かれる。第2流体5は、第2流路6内を流通する。そして、第1流体3と第2流体5との間に熱交換が行われる。
【0014】
各実施例では、プレート1、2の積層方向の一方の端部に、第1流体3の入口10及び出口11が形成されており(U字型の出入り口配置)、入口10は第1連通孔7に連結され、出口11は第2連通孔8に連結されている。
各実施例の特徴は、第1流体3がコア9に流入する入口10に、第1流体3の流れを各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に偏向する偏向機構を有する点にある。
【0015】
各実施例では、第1流路4は中空となっている(インナフィンが設置されていない)。この第1流路4のように流路が中空の場合、その流通抵抗は小さいので、一般的には段間の偏流が生じやすい。第1流路4には、熱伝達向上のために突起を形成しても良いが、その場合も流路抵抗は比較的小さいので、一般的には段間に偏流が生じる傾向がある。
なお、例えば、第1流体3は水、冷媒等であり、第2流体5はオイル等である。
この例では、
図1に示す如く、各プレート1、2の平面形状は円形に形成されているが、この平面形状は円形に限らず、方形等の任意の形状を取ることもできる。
【0016】
第2流路6には、
図2に記載の如く、インナフィン16を設置することができる。
プレート1、2の積層方向の最外側に配置されるプレート1、2の厚さは、他の中間部に積層されるプレート1、2の厚さより厚くすることができる。プレート1、2の積層方向の両端には、
図1、
図2に記載のように、カバープレート14と、ベースプレート15を配置されている。
【実施例0017】
第1の実施例では、
図2に示す如く、第1流体3の入口10及び出口11がカバープレート14に形成されている。
この実施例では、前述の偏向機構は、入口10の中心軸оが、入口10が形成されたプレートに隣接するプレートの第1連通孔7の中心軸pに対して、各段の第1流路4の流入部4a側の方向に位置ずれしている。そして、入口10の前記位置ずれの方向とは反対側の内周の位置10aが、入口10が形成されたカバープレート14に隣接するプレート2の第1連通孔7の位置ずれの方向とは反対側の内周の位置7aよりも、位置ずれの方向の側に位置している構造をとる。
上記のように構成することで、第1流体3の流れが各段の第1流路4の流入部4aから離れる方向に偏向されるので、コア9の入口10に近い段への、第1流体3の流入が抑制され、コア9の入口10から遠い段への流入が促進される。その結果、簡易な構造で、U字型の出入り口配置のプレート積層型熱交換器における段間の偏流が抑制される。
【0018】
この実施例では、入口10が形成されたカバープレート14に隣接するプレート2の第1連通孔7の中心軸pと、その他のプレートの第1連通孔7の中心軸qとは同軸に形成されていることにより、簡易な構成となっているが、中心軸p、qを同軸であることは必須ではない。
【0019】
図3は、第1の実施例の他の例であり、第1流体3の入口10及び出口11(
図3以降の図面では出口11側は省略している。)がベースプレート15に形成されている点で、
図1、
図2と異なる。