(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172690
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】CO2還元触媒、CO2還元触媒ユニット、及びCO2還元によるメタノール合成システム
(51)【国際特許分類】
B01J 23/80 20060101AFI20241205BHJP
C07C 29/154 20060101ALI20241205BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20241205BHJP
B01J 35/50 20240101ALI20241205BHJP
B01J 35/54 20240101ALI20241205BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B01J23/80 Z
C07C29/154 ZAB
C07C31/04
B01J35/02 A
B01J35/02 P
B01J35/02 311B
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090560
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504298291
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】銅谷 陽
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA11
4G169BA01A
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4G169FB09
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4G169FB64
4H006AA04
4H006AC41
4H006BA05
4H006BA07
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA82
4H006BA85
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4H006BC11
4H006BD33
4H006BD51
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】低圧下のCO
2還元反応であっても高いCO
2の転換率が得られるCO
2還元触媒、CO
2還元触媒ユニット、及びCO
2還元によるメタノール合成システムを提供することを目的する。
【解決手段】本発明のCO
2還元触媒は、一次粒子が凝集してなる立体構造を有する二次粒子からなるCO
2還元触媒であって、前記一次粒子は、針状、六角柱状、板状形状、又は鱗片状をなすコア部と、前記コア部を覆う表層部とを有し、前記表層部に触媒活性点を有し、前記コア部が、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとの複合酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を含有し、前記表層部が、主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、又は炭酸塩を含有することを特徴としている。本発明のCO
2還元触媒ユニットは前記CO
2還元触媒をカラム内に配置したものであり、本発明のCO
2還元によるメタノール合成システムは前記CO
2還元触媒ユニットを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子が凝集してなる立体構造を有する二次粒子からなるCO2還元触媒であって、
前記一次粒子は、針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状をなすコア部と、前記コア部を覆う表層部とを有し、前記表層部に触媒活性点を有し、
前記コア部が、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有し、
前記表層部が、主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有することを特徴とするCO2還元触媒。
【請求項2】
前記コア部の長径が10nm~2000nmである請求項1に記載のCO2還元触媒。
【請求項3】
前記コア部のアスペクト比が2~20である請求項1に記載のCO2還元触媒。
【請求項4】
前記元素Aが、アルミニウム、シリカ、マグネシウム、チタン、銅、マンガン、クロム、スズ、ガリウム、及びゲルマニウムから選択される1種以上の元素であり、
前記元素Bが、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、シリカ、チタン、マンガン、アルミニウム、スズ、銀、白金、金、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、及びセリウムから選択される1種以上の元素である、請求項1に記載のCO2還元触媒。
【請求項5】
請求項1に記載のCO2還元触媒をカラム内に配置した、CO2還元触媒ユニット。
【請求項6】
多数の通気孔を有するシート状の金属支持体と、
前記金属支持体の表面および裏面の少なくとも一部に形成された、前記CO2還元触媒を含有する触媒層と、を有し、
前記金属支持体の厚さ方向において、前記金属支持体の互いに隣接する部分が互いに間隙を空けて配置されており、
前記金属支持体が前記カラム内に配置されている、請求項5に記載のCO2還元触媒ユニット。
【請求項7】
前記金属支持体は巻回されて全体として円柱状をなし、
前記円柱状の中心側から半径方向外側に向かう方向において、隣接する前記金属支持体の間に前記間隙が設けられている、請求項6に記載のCO2還元触媒ユニット。
【請求項8】
前記金属支持体と前記間隙とが交互に配置されるように、前記金属支持体が複数積層されている、請求項6に記載のCO2還元触媒ユニット。
【請求項9】
前記金属支持体は、任意に穴を設けたシート、メッシュシート、又はパンチングプレートである、請求項6に記載のCO2還元触媒ユニット。
【請求項10】
前記CO2還元触媒を造粒してなる三次粒子を、前記カラムに多数充填してなる、請求項5に記載のCO2還元触媒ユニット。
【請求項11】
1つ又は複数の請求項5に記載のCO2還元触媒ユニットを有する反応器を通過した反応ガスを循環させた循環ガスと、水素と二酸化炭素を混合した原料ガスと、を混合して、混合ガスを得る混合器と、
前記混合ガスが、前記反応器を通過した後段に、ガス分離を行う凝縮器と、
前記循環ガスを、前記混合器に向けて循環させる循環装置と、を有し、
前記反応器では、前記混合ガスが流通される流路空間において、前記CO2還元触媒と前記混合ガスとが接触可能になるよう前記CO2還元触媒ユニットが挿入されている、CO2還元によるメタノール合成システム。
【請求項12】
前記反応器内では、温度を250℃以下、圧力を1MPaG未満として、メタノール合成反応を行う、請求項11に記載のCO2還元によるメタノール合成システム。
【請求項13】
前記水素が、水素供給源から供給される際に、前記水素の圧力を減圧してエネルギーに変換する水素減圧機を更に備える、請求項11に記載のCO2還元によるメタノール合成システム。
【請求項14】
前記反応器を2段以上備える、請求項11に記載のCO2還元によるメタノール合成システム。
【請求項15】
前記反応器において、複数の前記CO2還元触媒ユニットが垂直方向に設けられている請求項11に記載のCO2還元によるメタノール合成システム。
【請求項16】
前記反応器において、複数の前記CO2還元触媒ユニットが水平方向に設けられている請求項11に記載のCO2還元によるメタノール合成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2還元触媒、CO2還元触媒ユニット、及びCO2還元によるメタノール合成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタン及びメタノールの合成は、天然ガスや石炭などに由来する原料を用いて行われることが主流であったが、近年は、低炭素社会(脱炭素社会)のために、工業的に排出されるCO2又は大気中のCO2を還元することによるメタノールの製造が、SDGsの実現、ESG経営の観点からも注目されている。
【0003】
この種のCO2還元によるメタノールの製造としては、水素及び二酸化炭素を主成分とする原料ガスを、所定の温度および圧力下で、反応炉に充填したCO2還元触媒と接触させて、メタノールを合成する各種の方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、水素、並びに一酸化炭素及び/又は二酸化炭素を主成分とする原料ガスを、温度:100℃~300℃、圧力:40kg/cm2G~200kg/cm2Gの条件下で、反応炉に充填したCO2還元触媒と接触させて、メタノールを合成することが開示されている。
CO2還元触媒としては、特許文献1及び特許文献2に開示されているようなCu-Zn-Al系触媒が用いられる。
【0005】
水素及び二酸化炭素を主成分とする原料ガスからメタノールを合成する反応は、特許文献1で開示されているように、反応温度が低温でかつ反応圧力が高圧であるほど、メタノールが合成される方向に平衡反応が進む。しかし、反応温度が低温であると反応速度が低下するためCO2の還元反応が進まず、特許文献1では前記のような高温・高圧条件下でメタノールの合成が行われる。
【0006】
特許文献3では、そのような高温・高圧条件下でメタノールを合成する反応器において、メタノールの収率を上げるために反応器内にゼオライトを有する選択透過膜を設置する方法が開示されている。一方、特許文献4では、このような選択透過膜であるゼオライト膜を有する反応器の耐久性を向上する目的で、反応器内に所定の線膨張係数を有する接合材を用いることが検討されている。すなわち、反応器内に配置されている触媒を保持している管状のゼオライト膜と、この管状のゼオライト膜の一端を封止するキャップや、管状のゼオライト膜のもう一端に接続される配管との、材料の線膨張係数の差による耐久性の低下を防図ために、管状のゼオライト膜とキャップとの間、又は管状のゼオライト膜と配管との間に接合材を配置することが開示されている。
【0007】
特許文献5では、CO2還元によるメタノール転化率を向上させるために、原料ガスを、触媒を充填した反応炉に導入する際に、触媒にマイクロ波を照射して加熱すると同時に、原料ガスにおける水素の割合を高くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-15102号公報
【特許文献2】特表2015-502248号公報
【特許文献3】特開2021-24801号公報
【特許文献4】特開2020-23488号公報
【特許文献5】特開2010-37229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、高圧下でメタノール合成が行われるため、高圧を発生させるための設備コストおよび運転コストが高くなるという懸念がある。また、特許文献1に記載の方法では、高圧で反応させていても、CO2の転換率が低いという課題がある。
特許文献2では、CO2還元触媒それ自体の活性や安定性に関する検討はなされているが、特許文献2に開示のCu-Zn-Al系触媒を用いた場合において、CO2の転換率を向上させるための反応条件や触媒の構造の検討は特にされていない。
【0010】
特許文献3では、反応器内にゼオライト膜を設置して、メタノールの収率を上げることをシミュレーションで検討しているだけであり、反応器内の触媒におけるCO2の転換率の向上等の検討はされていない。一方、このようにゼオライト膜を内部に配置した反応器では、ガス供給側が高圧となり、ガス透過側が低圧となるため、シール性の向上が求められるため、特許文献4では、ゼオライト膜とその他の部材との接合方法について検討しているが、低圧下でのCO2の転換率の向上が可能な反応炉の構成の検討はされていない。
特許文献5の方法では、低圧下におけるメタノールの合成が実施されているが、メタノールの転換率、即ちCO2の転換率が20質量%未満と低く、工業的に望ましいメタノールの転換率には至っていないという課題がある。
【0011】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、低圧下のCO2還元反応であっても、高いCO2の転換率が得られる、CO2還元触媒、CO2還元触媒ユニット、及びCO2還元によるメタノール合成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のいずれかの態様を有する。
(1)本発明の態様1は、一次粒子が凝集してなる立体構造を有する二次粒子からなるCO2還元触媒であって、
前記一次粒子は、針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状をなすコア部と、前記コア部を覆う表層部とを有し、前記表層部に触媒活性点を有し、
前記コア部が、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有し、
前記表層部が、主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有することを特徴とする。
【0013】
態様1のCO2還元触媒によれば、CO2還元反応を比較的に低圧で行った場合にも高いCO2の転換率が得られる。これにより、CO2還元反応のためのシステムに要求される耐圧性を下げることもでき、安全性を確保した上で製造コストを削減することも可能である。
【0014】
(2)態様2のCO2還元触媒は、前記コア部の長径が10nm~2000nmである態様1に記載のCO2還元触媒である。
【0015】
態様2のCO2還元触媒によれば、一次粒子のサイズを調整したことによりCO2還元反応の効率をさらに高めることが可能である。
【0016】
(3)態様3のCO2還元触媒は、前記コア部のアスペクト比が2~20である態様1または2に記載のCO2還元触媒である。
【0017】
態様3のCO2還元触媒によれば、一次粒子のアスペクト比を調整したことにより、CO2還元触媒の二次粒子表面に立体構造が形成され、触媒活性点と原料ガスとの接触面積が増加し、CO2還元反応の効率をさらに高めることが可能である。
【0018】
(4)態様4のCO2還元触媒は、前記元素Aが、アルミニウム、シリカ、マグネシウム、チタン、銅、マンガン、クロム、スズ、ガリウム、及びゲルマニウムから選択される1種以上の元素であり、
前記元素Bが、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、シリカ、チタン、マンガン、アルミニウム、スズ、銀、白金、金、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、及びセリウムから選択される1種以上の元素である、態様1~3のいずれかに記載のCO2還元触媒である。
【0019】
態様4のCO2還元触媒によれば、前記元素AおよびBが上記元素から選択されているので、CO2還元反応の効率をさらに高めることが可能である。
【0020】
(5)態様5のCO2還元触媒ユニットは、態様1~4のいずれかに記載のCO2還元触媒をカラム内に配置した、CO2還元触媒ユニットである。
【0021】
態様5のCO2還元触媒ユニットによれば、カラムの一端から他端へ原料ガスを流すことにより、CO2還元触媒と原料ガスの接触効率を高く維持することができ、高い反応効率を得ることが可能である。
【0022】
(6)態様6のCO2還元触媒ユニットは、多数の通気孔を有するシート状の金属支持体と、
前記金属支持体の表面および裏面の少なくとも一部に形成された、前記CO2還元触媒を含有する触媒層と、を有し、
前記金属支持体の厚さ方向において、前記金属支持体の互いに隣接する部分が互いに間隙を空けて配置されており、
前記金属支持体が前記カラム内に配置されている、態様5に記載のCO2還元触媒ユニットである。
【0023】
態様6のCO2還元触媒ユニットによれば、前記間隙を通して原料ガスを流通させることにより、原料ガスとCO2還元触媒との接触効率を高めることができ、反応効率を向上できるだけでなく、製造コストが安く済むというメリットを有する。
【0024】
(7)態様7のCO2還元触媒ユニットは、前記金属支持体は巻回されて全体として円柱状をなし、
前記円柱状の中心側から半径方向外側に向かう方向において、隣接する前記金属支持体の間に前記間隙が設けられている、態様5又は6に記載のCO2還元触媒ユニットである。
【0025】
態様7のCO2還元触媒ユニットによれば、原料ガスとCO2還元触媒との接触面積をより増加させて、CO2還元触媒反応時の圧力損失をより低減することが可能になる。
【0026】
(8)態様8のCO2還元触媒ユニットは、前記金属支持体と前記間隙とが交互に配置されるように、前記金属支持体が複数積層されている、態様5又は6に記載のCO2還元触媒ユニットである。
【0027】
態様8のCO2還元触媒ユニットによれば、原料ガスとCO2還元触媒との接触面積をより増加させて、CO2還元触媒反応時の圧力損失をより低減することが可能になる。
【0028】
(9)態様9のCO2還元触媒ユニットは、前記金属支持体が、任意に穴を設けたシート、メッシュシート、又はパンチングプレートである、態様5~8の何れか一項に記載のCO2還元触媒ユニットである。
【0029】
態様9のCO2還元触媒ユニットの構成によれば、CO2還元触媒ユニット内で原料ガスをより効率よく循環させることが出来、原料ガスとCO2還元触媒との接触効率を高めることができる。
【0030】
(10)態様10のCO2還元触媒ユニットは、前記CO2還元触媒を造粒してなる三次粒子を、前記カラムに多数充填してなる、態様5に記載のCO2還元触媒ユニットである。
【0031】
態様10のCO2還元触媒ユニットによれば、カラムの一端から他端へ原料ガスを流す際に、CO2還元触媒と原料ガスの接触効率を高く維持することができ、高い反応効率を得ることが可能である。
【0032】
(11)態様11のCO2還元によるメタノール合成システムは、1つ又は複数の態様5~10の何れか一項に記載のCO2還元触媒ユニットを有する反応器を通過した反応ガスを循環させた循環ガスと、水素と二酸化炭素を混合した原料ガスと、を混合して、混合ガスを得る混合器と、
前記混合ガスが、前記反応器を通過した後段に、ガス分離を行う凝縮器と、
前記循環ガスを、前記混合器に向けて循環させる循環装置と、を有し、
前記反応器では、前記混合ガスが流通される流路空間において、前記CO2還元触媒と前記混合ガスとが接触可能になるよう前記CO2還元触媒ユニットが挿入されている、CO2還元によるメタノール合成システムである。
【0033】
態様11のCO2還元によるメタノール合成システムによれば、CO2還元反応を比較的に低圧で行った場合にも高いCO2の転換率が得られる。更に、態様11のCO2還元によるメタノール合成システムでは、CO2還元反応を行うにあたり生じる反応ガスの一部を循環ガスとして用いているため、CO2還元反応における熱エネルギー効率を高めることが可能である。
【0034】
(12)態様12のCO2還元によるメタノール合成システムは、前記反応器内では、温度を250℃以下、たとえば圧力を1MPaG未満として、メタノール合成反応を行う、態様11に記載のCO2還元によるメタノール合成システムである。
【0035】
態様12のCO2還元によるメタノール合成システムによれば、比較的低圧である条件下であっても、高いCO2の転換率が得られる。
【0036】
(13)態様13のCO2還元によるメタノール合成システムは、前記水素が、水素供給源から供給される際に、前記水素の圧力を減圧してエネルギーに変換する水素減圧機を更に備える、態様11又は12に記載のCO2還元によるメタノール合成システムである。
【0037】
工業的に水素は高圧な液体水素、高圧ガス等の状態で保持されている。態様13のCO2還元によるメタノール合成システムによれば、高圧下の水素の圧力を減圧してエネルギーに変換する水素減圧機を備えるため、低圧下でのCO2還元反応を実施しながら、水素減圧時のエネルギーを回収することができるため、CO2還元によるメタノール合成システム内における熱エネルギー効率を高めることができる。
【0038】
(14)態様14のCO2還元によるメタノール合成システムは、前記反応器を2段以上備える、態様11~13の何れか一項に記載のCO2還元によるメタノール合成システムである。
【0039】
態様14のCO2還元によるメタノール合成システムによれば、CO2の転換率をより向上させることができる。
【0040】
(15)態様15のCO2還元によるメタノール合成システムは、前記反応器において、複数の前記CO2還元触媒ユニットが垂直方向に設けられている態様11~14の何れか一項に記載のCO2還元によるメタノール合成システムである。
【0041】
態様15のCO2還元によるメタノール合成システムによれば、CO2の転換率をより向上させることができる。
【0042】
(16)態様15のCO2還元によるメタノール合成システムは、前記反応器において、複数の前記CO2還元触媒ユニットが水平方向に設けられている態様11~14の何れか一項に記載のCO2還元によるメタノール合成システム。
【0043】
態様16のCO2還元によるメタノール合成システムによれば、CO2の転換率を向上させるだけではなく、プラントの高さを抑え且つ反応器内のCO2還元触媒ユニットの交換が容易になるため、CO2還元によるメタノール合成システムのコストを削減することも可能である。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、低圧下のCO2還元反応において、高いCO2の転換率が得られる、CO2還元触媒、CO2還元触媒ユニット、及びCO2還元によるメタノール合成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態のCO
2還元触媒を支持体に固定してなる触媒複合体を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の複数の触媒複合体を互いに間隙を空けて積層させたCO
2還元触媒ユニットの要部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の触媒複合体を互いに間隙を空けて巻回し、円柱状としたCO
2還元触媒ユニットの要部を示す斜視図である。(a)は触媒複合体のみを巻回し、円柱状とした図であり、(b)は円柱状のロッドに触媒複合体を巻回し、円柱状とした図である。
【
図4】本発明の一実施形態のCO
2還元触媒の表面を示す走査電子顕微鏡(SEM)による写真(500倍)である。
【
図5】本発明の一実施形態のCO
2還元触媒の二次粒子を示す走査電子顕微鏡(SEM)による写真(5,000倍)である。
【
図6】(a)本発明の一実施形態のCO
2還元触媒の一次粒子のコア部を示す走査電子顕微鏡(SEM)による写真(20,000倍)である。(b)本発明の一実施形態のCO
2還元触媒の一次粒子が凝集してなる二次粒子の拡大図であって、コア部が表層部に覆われていることを示す走査電子顕微鏡(SEM)による写真(40,000倍)である。
【
図7】本発明の一実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムを示すブロック図である。
【
図8】本発明の他の実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムを示すブロック図である。
【
図9】本発明の他の実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムを示すブロック図である。
【
図10】本発明の他の実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムを示すブロック図である。
【
図11】本発明の他の実施形態のCO
2還元触媒ユニットを示す斜視図である。
【
図12】本発明の他の実施形態のCO
2還元触媒ユニットを示す断面図である。(a)はCO
2還元触媒ユニットの長さ方向に沿った断面図であり、(b)はCO
2還元触媒ユニットの径方向に沿った断面図である。
【
図13】本発明の他の実施形態のメタノール合成システムの反応器を示す斜視図である。
【
図14】本発明の他の実施形態のメタノール合成システムの反応器を示す斜視図である。
【
図15】本発明の実施例1で用いたCO
2還元触媒ユニットの製造方法を示す写真である。(a)は金属支持体であるAl箔(フィルム)、(b)はAl箔(フィルム)の一方の面に触媒層を形成する工程、(c)は得られた触媒複合体をカラムに配置する工程を示す。
【
図16】(a)は本発明の実施例1で得たCO
2還元触媒を走査電子顕微鏡(SEM)によって観察した一次粒子(40,000倍)の写真である。(b)は比較例1で得たCO
2還元触媒を走査電子顕微鏡(SEM)によって観察した一次粒子(40,000倍)の写真である。
【
図17】本発明の一実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムにおけるエネルギー収支の一例を示すブロック図である。
【
図18】本発明の一実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムにおけるエネルギー収支の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態のCO2還元触媒、CO2還元触媒ユニット、及びCO2還元によるメタノール合成システムについて説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0047】
(CO
2還元触媒)
本実施形態のCO
2還元触媒を
図4~
図6の走査電子顕微鏡(SEM)の写真で示す。
本実施形態のCO
2還元触媒は一次粒子が凝集してなる立体構造を有する二次粒子からなるCO
2還元触媒であって、前記一次粒子は、針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状をなす第1のコア部1と、前記第1のコア部1を覆う表層部2とを有し、前記表層部2に触媒活性点を有し、前記第1のコア部1が、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有し、前記表層部2が、主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有している。
また、本実施形態のCO
2還元触媒は、針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状をなす一次粒子が凝集してなる立体構造を有する二次粒子からなる第2のコア部と、前記第2のコア部を覆う表層部2とを有し、前記表層部2に触媒活性点を有するものであってもよい。ここで、前記第2のコア部が、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有し、前記表層部2が、主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有している。
【0048】
CO
2還元触媒の第2のコア部の一例を、
図6(a)の走査電子顕微鏡(SEM)の写真(20,000倍)及び
図6(b)の走査電子顕微鏡(SEM)の写真(40,000倍)で示す。第2のコア部は、
図6(a)及び
図6(b)で示されるように、複数の針状の第1のコア部1が凝集してなるものである。
CO
2還元触媒は針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状をなす第1のコア部1と第1のコア部1を覆う表層部2とを有している。
図6(b)では第1のコア部1が針状をなしている。第1のコア部1の長径は10nm~2000nmであることが好ましく、500nm~1000nmであることがより好ましい。
また、第1のコア部1のアスペクト比は2~20であることが好ましく、5~15であることがより好ましい。
本実施形態で第2のコア部は、複数の針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状の第1のコア部1が凝集してなる立体構造をなしている。第1のコア部1が長径は10nm~2000nmであり、且つアスペクト比は2~20である場合、第1のコア部1が凝集してなる第2のコア部の表面の立体構造が原料ガスと接触しやすい構成となり、好ましい。
【0049】
CO
2還元触媒の第1のコア部1又は第2のコア部を覆う表層部2は、第1のコア部1又は第2のコア部の表面全面を覆うものであっても、第1のコア部1又は第2のコア部の一部を覆う物であってもよい。
図6では、表層部2の一部が複数の粒状をなしており、一次粒子の表面がより原料ガスと接触しやすい構成となり、より好ましい。表層部2の一部が複数の粒状をなす場合、その粒状部の径は50nm未満であることが好ましく、1nm~10nmであることがより好ましい。
【0050】
CO2還元触媒の第1のコア部1又は第2のコア部を覆う表層部2は、触媒活性点を有しており、水素とCO2を含有する原料ガスが触媒活性点で還元反応を生じて、メタン又はメタノールが生成される。
【0051】
CO2還元触媒の第1のコア部1又は第2のコア部は、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有している。
ここで、主成分とは、第1のコア部1又は第2のコア部の50mol%以上を占めることを言い、主成分は80mol%以上であるとより好ましい。
元素Aとしては、アルミニウム、シリカ、マグネシウム、チタン、銅、マンガン、クロム、スズ、ガリウム、及びゲルマニウムから選択される1種以上の元素を選択することができる。
第1のコア部1又は第2のコア部における、特に好ましい組成は、例えば亜鉛とアルミニウム、亜鉛と銅、又は亜鉛とアルミニウムと銅とを含有する化合物である。
【0052】
CO2還元触媒の表層部2は、主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩を含有している。
ここで、主成分とは、表層部2の50mol%以上を占めることを言い、主成分は80mol%以上であるとより好ましい。
元素Bとしては、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、シリカ、チタン、マンガン、アルミニウム、スズ、銀、白金、金、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、及びセリウムから選択される1種以上の元素を選択することができる。
表層部2における、特に好ましい組成は、例えば銅とマグネシウム、銅とシリカ、銅と亜鉛、或いは銅と、マグネシウム、シリカ、及び亜鉛から選択される2種以上の元素とを含有する化合物である。
【0053】
表層部2における主成分である銅と銅以外の元素Bとの複合酸化物、水酸化物、または炭酸塩が、
図6(b)で示すように複数の粒状をなしている場合、第1のコア部1の表面に多数の触媒活性点が設けられ易く、好ましい。触媒活性点とは、活性成分の中で触媒作用(化学結合の組み替え)に直接関係する部分を言い、原料分子が吸着して反応を生じる箇所である。
すなわち、第1のコア部1が凝集してなる第2のコア部が立体構造を有することで、表層部2で形成される活性点となるCu/ZnO、CuZn界面を増やすことができる。従って、本実施形態のCO
2還元触媒による触媒層の表層と、従来の立体構造を有していない触媒による触媒層の表層とを、上面から観察して同一の視野範囲で比較すると、本実施形態の本実施形態のCO
2還元触媒は触媒活性点を有する触媒層の表層の面積が大きくなる。
【0054】
すなわち、本実施形態のCO
2還元触媒では、一次粒子を凝集させて、立体構造を有する二次粒子を得ている。
二次粒子の構成の一例を、
図5の走査電子顕微鏡(SEM)の写真(5,000倍)で示す。二次粒子は、一次粒子由来の立体構造に加えて、二次粒子間に複数の凹凸及び複数の空孔を有する立体構造を有している。
本実施形態のCO
2還元触媒を構成する二次粒子群では、一次粒子由来の二次粒子体が有する立体構造だけではなく、二次粒子体が更に凝集してなる凝集体も立体構造を有しているため、CO
2還元触媒表面が原料ガスと接触しやすい構成となり、好ましい。
【0055】
(CO2還元触媒の製造方法)
本実施形態のCO2還元触媒は、以下の方法で得るとよい。
先ず、主成分である亜鉛と亜鉛以外の元素Aとを含む水溶液である、硝酸溶液、硫酸溶液、塩化物溶液、或いは酢酸溶液等の酸性溶液と、水酸化ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウムなどの水溶液であるアルカリ性溶液とを、pH10~13の条件下で同時に滴下して、Zn-A複合体が針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状をなす、前駆体スラリーを得る。このとき亜鉛の酸性溶液と亜鉛以外の元素Aを含む酸性溶液とを別々に添加してもよい。
このとき、Zn-A複合体において、亜鉛含有量が50mol%以上であることが好ましく、80mol%以上であるとより好ましい。亜鉛含有量が上記範囲内であれば、針状、六角柱状、板状形状、または鱗片状であるZn-A複合体を得ることができる。
【0056】
次に、主成分である銅と銅以外の元素Bを含む水溶液である、硝酸溶液、硫酸溶液、塩化物溶液、或いは酢酸溶液等の酸性溶液としてCu-B混合溶液を得る。
このとき、Cu-B混合溶液におけるCuと元素Bとの元素合計に対して、銅含有量が50mol%以上であることが好ましく、80mol%以上であるとより好ましい。
【0057】
次に、前駆体スラリーと、Cu-B混合溶液と、水酸化ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性水溶液とを、同時に滴下し、pHが10.0~13.0となるようにして攪拌して、触媒前駆体粒子を得る。このとき、Cu、Zn、A元素、B元素のモル比Cu:Zn:A:Bが12~64:17~76:1~38:1~33であることが好ましい。より好ましくは、モル比Cu:Zn:A:Bが30~58:36~66:1~7:1~6。 そして、得られた触媒前駆体粒子を、洗浄、濾過、乾燥した後、300℃~500℃の温度条件下で1~10時間、空気雰囲気で焼成して、Zn-Cu複合体の焼成酸化物を得た。このZn-Cu複合体の焼成酸化物は、第1のコア部1又は第2のコア部を覆う表層部2を有する、本実施形態のCO2還元触媒として用いることができる。
【0058】
(CO
2還元触媒ユニット)
反応器120内に配置される、本実施形態のCO
2還元触媒ユニット110の構成を
図1~
図3及び
図11~
図12を用いて説明する。
本実施形態のCO
2還元触媒ユニット110は、本実施形態のCO
2還元触媒をカラム14内に配置して得たものである。
本実施形態のCO
2還元触媒ユニット110では、本実施形態のCO
2還元触媒を構成する二次粒子を、に造粒、又はシート状に成形して、カラム14内に配置するとよい。
得られたCO
2還元触媒の表面の構成を、
図4の走査電子顕微鏡(SEM)の写真(500倍)で示す。
【0059】
本実施形態のCO
2還元触媒をシート状に成形して、CO
2還元触媒ユニット110で用いる場合、カラム14内に、
図1で示す触媒複合体10を配置するとよい。
触媒複合体10は、多数の通気孔13を有するシート状の金属支持体12と、金属支持体12の表面と裏面の少なくとも一部に形成された、CO
2還元触媒を含有する触媒層11と、を有する。
【0060】
シート状の金属支持体12は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金で形成されているとよい。アルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金は、熱伝導性に優れるため、カラム14内の触媒複合体10の均熱性を向上させ、反応効率が向上し、特にメタノールの選択率が向上することが期待される。
【0061】
シート状の金属支持体12の厚みは1mm以下であることが好ましく、10μm以上500μm以下であることがより好ましい。金属支持体12の厚みが上記の範囲内であると、触媒複合体10をカラム14内に配置する際のハンドリング性に優れている。
【0062】
金属支持体12は、多数の通気孔13を有している。
多数の通気孔13の形状は限定されず、金属支持体12に任意に穴をあけて、通気孔13を形成しても、メッシュシート又はパンチングプレートの空孔部を通気孔13として用いてもよい。通気孔13を形成したシートの一例は、
図15(a)に示す。
【0063】
本実施形態のCO
2還元触媒を含有する触媒層11は、金属支持体12の表面と裏面の少なくとも一部に形成されている。更に、
図1で示すように、触媒層11は、金属支持体12の通気孔13の表面の一部又は全面に形成されていてもよい。
より詳細には、触媒層11は、金属支持体12の表面と裏面とのいずれか一方にだけ形成されていてもよい。また、触媒層11は、金属支持体12の表面と裏面との両面に形成されていてもよい。更に、触媒層11は、金属支持体12の通気口13の通気性に影響を与えない範囲で、通気口13に形成されていてもよい。
【0064】
触媒層11の厚みは、2μm以上200μm以下であることが好ましい。触媒層11の厚みが上記の範囲内であると、1MPaG未満の低圧下でCO2還元の反応を十分に進めることができ、且つ触媒複合体10をカラム14内に配置する際のハンドリング性に優れている。
【0065】
触媒層11は、本実施形態のCO2還元触媒を水、及び/又は有機系バインダーと混合して、CO2還元触媒分散液を得て、CO2還元触媒分散液を金属支持体12に湿式法で塗工して得た塗膜を乾燥させることで得ることができる。
【0066】
触媒複合体10は、
図3(a)で示すように、金属支持体12と触媒層11とを有する1つのシート状の触媒複合体10を巻回し、全体として円柱状をなして、
図11で示すようにカラム14内に配置することができる。
このとき、カラム14内に配置された触媒複合体10は、
図3(a)で示すように、円柱状の触媒複合体10の中心側から半径方向外側に向かう方向において、隣接する金属支持体12の間に間隙16が形成されている。
なお、触媒複合体10を巻回する際、
図3(b)で示すように、中心に円柱状のロッド15を配置し、ロッド15周面に触媒複合体10を巻き付けて巻回して、全体として円柱状をなす触媒複合体10を得てもよい。ロッド15は円筒状であってもよい。
この時ロッド15は、CO
2還元触媒ユニット110における均熱性を向上させる観点から、金属支持体12と同様の金属によって形成されていることが好ましい。
【0067】
本実施形態のCO2還元触媒ユニット110の構成によれば、円柱状をなしている触媒複合体10において、円柱状の中心側から半径方向外側に向かう方向において、金属支持体12の間に間隙16が設けられているため、金属支持体12に形成された触媒層11におけるCO2還元触媒と原料ガスとの接触面積を増加させ、1MPaG未満の低圧下でCO2還元反応を行っても、十分なCO2の転換率を得ることができる。
【0068】
本実施形態のCO
2還元触媒ユニット110では、例えば、カラム14(内径50mm)、円筒状ロッド15(径25mm)を準備し、円筒ロッド15周りにシート幅500mm×長さ10m、厚み0.1mmの触媒複合体10を80回巻回してカラム14内に配置すると、巻回数が緩和され、円柱状の触媒複合体10の中心側から半径方向外側に向かう方向において、
図12(a)及び12(b)で示すように、触媒複合体10の間、即ち、金属支持体12間に間隙16を生じさせることができる。
円柱状の触媒複合体10の中心側から半径方向外側に向かう方向における、金属支持体12間の間隙16は1mm以下であることが好ましい。
【0069】
なお、円柱状の中心側から半径方向外側に向かう方向において、金属支持体12間に間隙16を設けるために、触媒層11の表面に金属のメッシュシートを配置して、金属のメッシュシート由来の間隙16が設けられていてもよい。
【0070】
このような本実施形態のCO2還元触媒ユニット110の構成によれば、CO2還元触媒ユニット110内を原料ガスが通過し易く、且つCO2還元触媒と原料ガスとの接触面積を増加させて、CO2還元反応時の圧力損失を低減することができる。
【0071】
CO
2還元触媒ユニット110において、複数の触媒複合体10を用いることもできる。例えば、
図2で示すように、シート状の金属支持体12と間隙16とが交互に配置されるように、複数の触媒複合体10を積層して、カラム14内に配置してもよい。
このとき、隣接する金属支持体12間に設けられる間隙16の厚さ方向の幅は、1mm以下であることが好ましく、10μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
間隙16が上記範囲内であれば、CO
2還元触媒ユニット110内を原料ガスが通過し易く、且つCO
2還元触媒と原料ガスとの接触面積を増加させて、CO
2還元反応時の圧力損失を低減することができる。
【0072】
本実施形態では、間隙16を形成するために、触媒の積層厚に凹凸を加える方法の他、触媒複合体10と間隙16をなすスペーサーとが交互に配置されていてもよい。
スペーサーとしては、シート状の金属支持体12に設けられた凸部が挙げられる。
シート状の金属支持体12が凸部を有すると、その凸部の厚みに沿って、隣接する金属支持体12の厚さ方向において、間隙16が形成される。
【0073】
スペーサーとしては、シート、メッシュシート又はパンチングプレートを用いてもよい。
メッシュシート又はパンチングプレートは複数の空孔部を有している。従って、触媒複合体10とメッシュシート又はパンチングプレートとを交互に積層する場合、隣接する金属支持体12の厚さ方向において、メッシュシート又はパンチングプレートの複数の空孔部由来の間隙16が形成される。
【0074】
本実施形態のCO2還元触媒を粒子状に造粒して、CO2還元触媒ユニット110で用いる場合、カラム14内に造粒したCO2還元触媒の粒子(三次粒子)を充填するとよい。
CO2還元触媒の三次粒子の粒径は500μm~10mmであることが好ましく、1mm~5mmであることがより好ましい。
また、カラム14内におけるCO2還元触媒の三次粒子の充填密度は0.2g/cm3~0.5g/cm3であることが好ましい。
CO2還元触媒の三次粒子の粒径と、カラム14内における充填密度が上記範囲であれば、カラム14内において、原料ガスとCO2還元触媒とを十分に接触させて、1MPaG未満の低圧下でCO2還元の反応を十分に進めることができる。
【0075】
CO2還元触媒の三次粒子は、本実施形態のCO2還元触媒を、水及び/又は有機系バインダーと混合して、CO2還元触媒分散液を得て、CO2還元触媒分散液を噴霧乾燥して得ることができる。また、CO2還元触媒の三次粒子は、本実施形態のCO2還元触媒を、所定の形状に圧縮形成した後、これを粉砕し、篩で紛級することで得てもよい。
【0076】
本実施形態では、本実施形態のCO2還元触媒を用いてシート状の触媒複合体10を形成し、カラム14内に配置したCO2還元触媒ユニット110と、本実施形態のCO2還元触媒を粒子状(三次粒子)に造粒してカラム14内に充填させたCO2還元触媒ユニット110と、を説明したが、シート状の触媒複合体10を用いた場合の方が、カラム14内におけるCO2還元触媒の表面積が増加し、より高いCO2の転換率を得られるため、好ましい。
また、本実施形態のCO2還元触媒を用いてシート状の触媒複合体10を形成し、カラム14内に配置したCO2還元触媒ユニット110では、CO2還元触媒を粒子状(三次粒子)に造粒してカラム14内に充填させているCO2還元触媒ユニット110と比べて、CO2還元反応時の圧力損失を低減でき、好ましい。
【0077】
(CO
2還元によるメタノール合成システムおよび合成方法)
本実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システム200の一例を
図7に示す。
本実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システム200は、少なくとも、本実施形態のCO
2還元触媒ユニット110を備える反応器120と、第1の混合器25と、第1の凝縮器33と、ガス循環装置35とを有する。
【0078】
本実施形態のCO
2還元触媒ユニット110を備える反応器120は、
図13及び
図14で示す。
反応器120は、円筒状のシエル部111と、1つ以上のCO
2還元触媒ユニット110と、円筒状のシエル部111の一方の底面に設けられた原料ガス供給部112とを有している。そして、CO
2還元触媒ユニット110が原料ガス供給部112に接続され、シエル部111がCO
2還元触媒ユニット110と原料ガス供給部112とを覆うように配置される。円筒状のシエル部111の他方の底面には、合成ガス排出管が接続される。
複数の反応器120を用いる場合は、
図14で示すように、反応器120を並列又は直列に並べて用いるとよい。
【0079】
図13及び
図14では、反応器120において、CO
2還元触媒ユニット110が垂直方向に配置されているが、反応器120を横置きにして、CO
2還元触媒ユニット110が水平方向に配置されていてもよい。
これは、CO
2還元触媒ユニット110は原料ガス供給部112に固定されており、重力の影響を受けず、均等配置されているためである。
【0080】
先ず、反応器120には、第1の混合器25から、水素と二酸化炭素とCO
2還元によるメタノール合成システムにおける循環ガスとを混合して得た第1の混合ガス(原料ガス)が供給され、CO
2還元反応が行われる。
ここで、水素は水素減圧機22を通して、二酸化炭素は二酸化炭素圧縮機21を通して、所定の圧力で供給される。本実施形態ではCO
2還元反応を1MPaG未満の低圧下で実施可能であるため、水素及び二酸化炭素を1MPaG程度の圧力で供給してよい。
水素と二酸化炭素とは、
図7で示すように、予め第2の混合器23にて混合され、予熱器24で加熱し、第1の混合器25に供給することができる。また、水素と二酸化炭素とは、循環ガスを供給するラインに直接導入して、第1の混合器25に供給してもよい。
反応器120にて、触媒複合体10をカラム14内に配置したCO
2還元触媒ユニット11を用いて、以下式(1)~(3)で示されるCO
2還元反応を行う。
CO
2+3H
2→CH
3OH+H
2O (1)
CO
2+H
2→CO+H
2O (2)
CO+2H
2→CH
3OH (3)
【0081】
本実施形態で、水素と二酸化炭素とCO2還元によるメタノール合成システムにおける循環ガスとを混合して得た第1の混合ガスを原料ガスとして用いた。原料ガスとしては、水素と二酸化炭素とを主成分として含むもの、ガス化ガスのような一酸化炭素と水素とを主成分としたもの等があげられる。ガス化ガスのような一酸化炭素と水素とを主成分として含有する原料ガスを本実施形態で適用した場合、更なる高い反応効率を得ることができる。
【0082】
本実施形態では、反応器120に本実施形態のCO2還元触媒ユニット11が供えられているため、水素と二酸化炭素とを反応させるCO2還元反応を、温度を好ましくは180℃以上250℃以下、より好ましくは250℃未満、圧力を好ましくは1MPaG未満の条件で実施しながら、高いCO2の転換率を得ることができる。本実施形態において「CO2の転換率」とは、CO2の転換率=[{メタノール発生量(mol/min)+一酸化炭素発生量(mol/min)}/二酸化炭素供給量(mol/min)]×100にて算出される値である。
例えば、本実施形態では反応器120におけるCO2の転換率を70%以上とすることができる。更に、本実施形態では反応器120を3段以上用いる場合、CO2の転換率を90%以上とすることができる。
【0083】
反応器120で得られた反応ガスは、熱交換器27にて、CO2還元によるメタノール合成システムにおける循環ガスと熱交換され、冷却される。更に、冷却器32及び第1の凝集器33にてメタノールと水とが凝縮され、反応ガスは、メタノールと水とを含む液体と、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素などを含む気体とに気液分離される。
【0084】
凝縮器33から排出されるメタノールと水とを含む液体は、減圧機36にて減圧後、第2の凝集器37にて再度凝集させて、蒸留塔39に供給するとよい。
なお、メタノールと水とを含む液体は蒸留塔39に供給する前に、プレヒーター38によって加熱してもよい。
蒸留塔39では、メタノールと水とが分離される。
【0085】
第1の凝集器33で分離した、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素などを含む気体は、スプリッター34に送られたのち、ガス循環機35を通して、熱交換器27に供給するとよい。
なお、スプリッター34に送られた気体の一部は所定の圧力に制御した圧力コントロール弁により外部にパージガスとして排出してよい。
熱交換器27に供給された気体は、熱交換器27に供給される反応ガスの熱で昇温され、ヒーター29にて更に昇温した上で、循環ガスとして、再度反応器120に供給することができる。
【0086】
図8~10に、本実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システム200の変形例を示す。
図8のCO
2還元によるメタノール合成システム210では、第2の熱交換器30を設けて、反応装置120から排出された反応ガスの熱を直接循環ガスと熱交換せず、熱交換器27と第2の熱交換器30とを循環する熱媒を介して熱交換を行う。
【0087】
すなわち、熱交換器27と第2の熱交換器30との間に熱媒循環路を配置し、反応装置120から排出された反応ガスの熱は、熱交換器27を通過する熱媒循環路の熱媒で熱交換する。
熱交換器27から排出された熱媒は、必要に応じてヒーター28で再加熱したのち、第2の熱交換器30に供給され、ガス循環機35から第2の熱交換器30に送られる循環ガスと熱交換したのち、熱媒循環ポンプ31を介して熱交換器27に戻ることで循環している。ここで、熱媒としては、合成系熱媒油、シリコン油、又は水蒸気を用いるとよい。
本構成によれば、循環ガスによる熱交換の熱損失をより小さくして、エネルギー効率が高いCO2還元によるメタノール合成システム210が得られる。
【0088】
図9のCO
2還元によるメタノール合成システム220では、反応器120で生じた反応熱を熱媒油で回収し、第2の熱交換器30に供給している。
熱媒は、反応器120から排出されたのち、必要に応じてヒーター28にて再加熱したのち、第2の熱交換器30に供給され、ガス循環機35から熱交換器27に送られる循環ガスと熱交換したのち、熱媒循環ポンプ31を介して反応器120に戻ることで循環している。
【0089】
反応器120で生じた反応ガスにおけるメタノール、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含むガスは、冷却器32及び第1の凝集器33に供給され、メタノールと水とを含む液体と、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等のメタノールより沸点が低い成分を含む気体とに気液分離される。
【0090】
次に、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等のメタノールより沸点が低い成分を含む気体は、第2の熱交換器30に供給され、第2の熱交換器30を通過する熱媒の熱によって昇温され、ヒーター29にて更に昇温した上で、循環ガスとして、再度反応器120に供給することができる。
【0091】
本構成によれば、反応器120に第2の熱交換器30にて吸熱された後の熱媒が供給されるため、反応器120における過熱防止効果を得ることができる。
【0092】
図10のCO
2還元によるメタノール合成システム230では、反応器を3段設けた以外は、
図7のCO
2還元によるメタノール合成システム200と同じ構成を有する。
図10における、反応器120´と反応器120´´とは、反応器120と同じ動作を示し、熱交換器27´と熱交換器27´´とは熱交換器27と同じ動作を示し、冷却器32´と、冷却器32´´とは冷却器32と同じ動作を示し、凝集器33´と凝集器33´´とは凝集器3と同じ動作を示す。
そして、凝集器33、凝集器33´、及び凝集器33´´から排出されたメタノールと水とを含む液体は、混合器64及び65を介して、減圧機36に供給される。
【0093】
反応器120を複数設ける構成は、3段に限定されず、5段~10段反応器を設けることができる。
反応器120を複数設ける場合は、例えば
図14で示すように、複数の反応器120を直列に配置しても、並列に配置してもよい。
反応器を複数設ける場合、CO
2の転換率をより高くすることが可能になる。
なお、反応器120を複数設ける構成において、反応器120と、冷却器32を含む濃縮器33と、をセットで複数有していてもよく、反応器120のみを複数配置し、最後に冷却器32を含む濃縮器33を配置してもよい。
【0094】
(CO
2還元によるメタノール合成システムにおけるエネルギー)
本実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムによれば、
図17及び18で示すように、CO
2還元によるメタノール合成システムにおけるエネルギーを循環させて、エネルギー効率の良いCO
2還元反応を行うことができる。
【0095】
また、本実施形態のCO2還元によるメタノール合成システムでは、1MPaG未満の低い圧力下でCO2還元反応を行うことができる。また、本実施形態で用いる、CO2還元によるメタノール合成システムは、高圧で供給される水素の圧力を減圧してエネルギーに変換する水素減圧機22を備えることができる。
従って、本実施形態のCO2還元によるメタノール合成システムでは、水素の圧力を1MPaG未満まで減圧してエネルギーを得ることができる。工業的に水素は高圧な液体水素、高圧ガス等の状態で保持されており、これらの圧力として7m3で14.7MPaG、10m3で10.6MPaG等があげられる。本実施形態では、このような高圧な液体水素、高圧水素ガスを原料とする場合、水素減圧機22を通して減圧し1MPaG未満とする。
【0096】
図17の例では、先ず低圧の水素と二酸化炭素とを含有する原料ガスは、水素の高位発熱量を基準としてエネルギー100kWを有している。本実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムではCO
2の転換率が高いため、反応によりメタノール分の高位発熱量として60kW程度のエネルギーを生産できる。CO
2還元反応では、メタノール以外のガスも生成され、未反応の水素とメタノール以外のガスが有する20kWのエネルギーは回収されて、エネルギーとして再生できる。再生されたエネルギーは加熱源(20kW)として利用することができる。また、再生されたエネルギーのうち10kW未満は電力として回収でき、管理棟や通信機等のユーティリティで利用できる。
【0097】
図18の例では、減圧時の回収エネルギーによりメタノール合成システムにおける所内電力10kWを供給することができる。低圧の水素と二酸化炭素とを含有する原料ガスは、水素の高位発熱量を基準としてエネルギー100kWを有している。本実施形態のCO
2還元によるメタノール合成システムではCO
2の転換率が高いため、反応によりメタノール分の高位発熱量として60kW程度のエネルギーを生産できる。CO
2還元反応では、メタノール以外のガスも生成され、メタノール以外のガスが有する20kW~30kWのエネルギーは回収されて、エネルギーとして再生できる。再生されたエネルギーは加熱源(20kW)として利用することができる。また、再生されたエネルギーのうち10kW未満は電力として回収することも可能であり、管理棟や通信機器等のユーティリティで利用できる。
【0098】
以上説明した通り、本実施形態のCO2還元によるメタノール合成システムでは、エネルギーを循環させているため、CO2還元反応において外部から供給するエネルギーを削減し、エネルギー効率がよいCO2還元によるメタノール合成システムおよび合成方法を提供できる。
【実施例0099】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0100】
(実施例1)
亜鉛を84mol%と、アルミニウムを16mol%含む水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを、pH12の条件下で同時に滴下して、針状のZn-Al複合体を含む前駆体スラリーを得た。
次に、前駆体スラリーに対し、銅を91mol%と、ジルコニウムを9mol%含むCu-Zr混合溶液と、水酸化ナトリウム水溶液とを、同時に滴下し、pHが10.0となるようにして攪拌して、触媒前駆体粒子を得た。このとき、触媒前駆体粒子におけるCu、Zn、Al、Zrのモル比Cu:Zn:Al:Zrが32:63:1:4であった。
触媒前駆体粒子におけるCu、Zn、Al、Zrのモル比は、前駆体粒子をXRF、ICP等の組成分析により確認した。
得られた触媒前駆体粒子は、純水で洗浄した後、濾過及び乾燥させ、更に350℃の空気雰囲気で5時間焼成することでZn-Cu複合体の焼成酸化物を得た。このZn-Cu複合体の焼成酸化物を、本発明のCO
2還元触媒として用いる。
得られたCO
2還元触媒を走査電子顕微鏡(SEM)(40,000倍)で観察すると、
図16(a)で示される通り、CO
2還元触媒は針状のコア部とコア部の少なくとも一部を覆う表層部とを有し、表層部において径が10nm以上50nm未満の複数の粒状部が分散していることが観察された。
また、走査電子顕微鏡(SEM)の写真において、CO
2還元触媒の針状のコア部の長径は100nm~2000nmの範囲であることが観察された。
また、針状のコア部のアスペクト比の平均は10であった。アスペクト比の平均は、走査電子顕微鏡(SEM)の写真で、任意に選択した2500nm×2500nmの範囲の観察領域で観察される針状のコア部のアスペクト比の平均を算出し、これを3つの観察領域で行い、その平均をアスペクト比の平均とした。
【0101】
次に、
図15(a)で示すように、任意に穴をあけたAl箔(フィルム)(300mm×360mm)を、金属支持体として準備した。
更に、得られたCO
2還元触媒を水と混合してCO
2還元触媒分散液を得た。そして、
図15(b)で示すように、CO
2還元触媒分散液をAl箔(フィルム)の一方の面に湿式法で280mm×320mm塗工した後に、得られた塗膜を乾燥させ、Al箔(フィルム)の一方の面に、膜厚40μmの触媒層を形成した。
触媒層におけるCO
2還元触媒の量は2gであった。触媒層におけるCO
2還元触媒の量は天秤を用いて測定した。膜圧はマイクロメーターで3点測定したものの平均である。
以上の方法で得た、Al箔の一方の面に触媒層が形成されている触媒複合体を、直径6mm長さ320mmのアルミ棒を中心として巻回したのち、
図15(c)で示すように、直径10mm、長さ400mmのカラム内に配置して、CO
2還元触媒ユニットを得た。
このCO
2還元触媒ユニットでは、カラム内で触媒複合体の巻回数が緩和され、円柱状の中心側から半径方向外側に向かう方向において、Al箔(フィルム)間に空隙が設けられていた。
【0102】
得られたCO
2還元触媒ユニットを反応器120に配置して、CO
2還元反応を行った。
CO
2還元反応は、
図7で示すCO
2還元によるメタノール合成システム200を用いて行い、反応器120内の圧力を0.9MPaG、反応器120内の温度250℃に設定した。
また、CO
2還元によるメタノール合成システム200における、反応器120に供給される循環ガスの量と水素と二酸化炭素による原料ガスの量とから算出される循環比(循環ガスの量(mol/min)/原料ガスの量(mol/min))は、10とした。原料ガスは30mln/minで供給した。
また、原料ガスにおける水素と二酸化炭素とのモル比は3であるが、前記反応器120に供給する混合ガスにおける水素と二酸化炭素とのモル比(H
2/CO
2)は最終的に4.79であった。また反応器120出口ガス温度は240℃であった。反応器120で行われたCO
2還元反応によって得られた反応ガスでは、メタノールと二酸化炭素とのモル比(メタノール(MeOH)/CO
2)が0.4、一酸化炭素と二酸化炭素とのモル比(CO/CO
2)が0.21であった。
原料ガスにおける水素と二酸化炭素とのモル比、並びに反応ガスにおけるメタノールと二酸化炭素とのモル比及び一酸化炭素と二酸化炭素とのモル比は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC-2014)を用いて測定した。
【0103】
以上のCO2還元反応における、CO2の転換率(転換率)と、メタノールの選択率(選択率)は、以下の式(4)及び(5)で求めた。
転換率=[{メタノール発生量(mol/min)+一酸化炭素発生量(mol/min)}/二酸化炭素供給量(mol/min)]×100 (4)
選択率={メタノール発生量(mol/min)/(メタノール発生量(mol/min)+一酸化炭素発生量(mol/min)}×100 (5)
実施例1のCO2還元触媒ユニットによれば、CO2還元反応におけるCO2の転換率は61%であり、メタノールの選択率は66%であった。
【0104】
また、実施例1のCO2還元反応におけるガス縮減%と圧損(kPaG)は以下の通り算出した。
ガス縮減%={出口ガス量(mL/min)/原料ガス量(mL/min)}×100
圧損=反応器入口圧力計指示値(kPaG)―反応器出口圧力計指示値(kPaG)
結果を表1に示す。
【0105】
(実施例2)
CO
2還元反応を、リアクター設定温度を250℃として、
図10で示す反応器を3段用いるCO
2還元によるメタノール合成システム230にて行った以外は、実施例1と同様の条件でCO
2還元反応を行った。このとき反応器出口ガス温度は245℃であった。
すなわち、
図10の反応器120、反応器120′、及び反応器120′′に実施例1の反応器120で用いたCO
2還元触媒ユニットと同じCO
2還元触媒ユニットをそれぞれ配置して、3段のCO
2還元反応を行った。すなわち、実施例1で使用したCO
2還元触媒ユニットを3つ使用しており、CO
2還元触媒の量は2g×3=6gと示された。
結果を表1に示す。
【0106】
(実施例3)
CO2還元反応を、循環比を5とする以外は実施例2と同様の条件でCO2還元反応を行った。
結果を表1に示す。
【0107】
(実施例4)
実施例1で得たCO2還元触媒を10mm円筒形に圧縮成形した。これを粉砕し、メッシュ数16の篩を使い平均粒径が1mmであるCO2還元触媒の三次粒子を得た。
【0108】
次に、CO2還元触媒の三次粒子を、直径4mm、長さ400mmのカラム内に、充填密度が0.3g/cm3となるように充填して、CO2還元触媒ユニットを得た。
カラムに充填されるCO2還元触媒の量は2gであった。
【0109】
得られたCO
2還元触媒ユニットを、
図10で示す反応器を3段用いるCO2還元によるメタノール合成システム230の反応器120、反応器120′、及び反応器120′′にそれぞれ配置した以外は、実施例2と同様の方法でCO
2還元反応を行った。このとき反応器出口ガス温度は250℃であった。なお、1つのCO
2還元触媒ユニットが含有するCO
2還元触媒の量は2gであるため、これを3つ使用している実施例4では、CO
2還元触媒の量は2g×3=6gであった。
結果を表1に示す。
【0110】
(実施例5)
実施例4で得たCO2還元触媒の三次粒子を、直径4mm、長さ400mmのカラム内に、充填密度が0.3g/cm3となるように充填して、カラムにCO2還元触媒が2g充填されているCO2還元触媒ユニットを得た。
得られたCO2還元触媒ユニットを、実施例1と同様に、CO2還元によるメタノール合成システム200の反応器120に配置した以外は、実施例1と同様の方法でCO2還元反応を行った。このとき反応器出口ガス温度は250℃であった。
結果を表1に示す。
【0111】
(実施例6)
実施例4で得たCO2還元触媒の三次粒子を、直径10mm、長さ400mmのカラム内に、充填密度が0.3g/cm3となるように充填して、カラムにCO2還元触媒が2g充填されているCO2還元触媒ユニットを得た。
得られたCO2還元触媒ユニットを、実施例1と同様に、CO2還元によるメタノール合成システム200の反応器120に配置した以外は、実施例1と同様の方法でCO2還元反応を行った。このとき反応器出口ガス温度は215℃であった。
結果を表1に示す。
【0112】
(比較例1)
亜鉛を84mol%と、アルミニウムを16mol%含む水溶液と、銅を91mol%と、ジルコニウムを9mol%含むCu-Zr混合溶液と、水酸化ナトリウム水溶液とを、同時に滴下し、pHが10.0となるようにして攪拌して、触媒前駆体粒子を得た。このとき、触媒前駆体粒子におけるCu、Zn、Al、Zrのモル比Cu:Zn:Al:Zrが32:63:1:4であった。
【0113】
得られた触媒前駆体粒子は、純水で洗浄した後、濾過及び乾燥させ、更に350℃の空気雰囲気で5時間焼成することでCu-Zn-Al-Zr複合体の焼成酸化物を得た。比較例3では、このCu-Zn-Al-Zr複合体の焼成酸化物をCO
2還元触媒として用いた。
得られたCO
2還元触媒を走査電子顕微鏡(SEM)(40,000倍)で観察すると、
図16(b)で示される通り、CO
2還元触媒は凹凸を有しているが、針状のコア部とコア部の少なくとも一部を覆う表層部とを有する立体構造を有していなかった。
【0114】
得られたCO2還元触媒にバインダーとして水を加え10mm円筒形に圧縮成形した。これを粉砕し、メッシュ数16の篩を使い平均粒径が1mmであるCO2還元触媒の三次粒子を得た。
【0115】
次に、CO2還元触媒の三次粒子を、直径4mm、長さ500mmのカラム内に、充填密度が0.3g/cm3となるように充填して、CO2還元触媒ユニットを得た。
カラムに充填されるCO2還元触媒の量は2gであった。
【0116】
得られたCO
2還元触媒ユニットを、
図7で示すCO
2還元によるメタノール合成システム200の反応器120に配置した以外は、実施例1と同様の方法でCO
2還元反応を行った。このとき反応器出口ガス温度は250℃であった。
結果を表1に示す。
【0117】
(比較例2)
比較例1で得たCO2還元触媒の三次粒子を、直径10mm、長さ400mmのカラム内に、充填密度が0.3g/cm3となるように充填して、CO2還元触媒ユニットを得た。
カラムに充填されるCO2還元触媒の量は2gであった。
【0118】
得られたCO
2還元触媒ユニットを、
図7で示すCO
2還元によるメタノール合成システム200の反応器120に配置した以外は、実施例1と同様の方法でCO
2還元反応を行った。このとき反応器出口ガス温度は250℃であった。
結果を表1に示す。
【0119】
【0120】
実施例1~5で示されるように、本発明のCO2還元触媒を用いた場合、反応圧力が0.9MPaGという低い条件下であっても、CO2の転換率が60%以上、メタノールの選択率が60%以上と高くなることが確認された。
実施例6では、触媒層温度が上がらなかった影響もありメタノールの選択率は53%であったが、本発明のCO2還元触媒を用いているためCO2の転換率は40%以上であった。
一方、比較例1及び2によって、本発明のCO2還元触媒の立体構造を有していない従来の触媒では、反応圧力が0.9MPaGという低い条件下ではCO2の転換率及びメタノールの選択率が低いことが確認された。
【0121】
また、実施例1と実施例2とを比較すると、CO2還元によるメタノール合成システムにおける反応器の数が1段である場合と、3段である場合とでは、反応器の数が3段である場合の方が、CO2の転換率及びメタノールの選択率が向上することが確認された。
【0122】
一方、実施例3によれば、本発明のCO2還元触媒を有するCO2還元触媒ユニットを用いた場合、循環比を低減しても、十分なCO2の転換率及びメタノールの選択率が得られることが確認された。
【0123】
実施例2と実施例4とを比較すると、CO2還元触媒ユニットにおけるCO2還元触媒が、Al箔の一方の面に触媒層が形成されている触媒複合体を巻回し、全体として円柱状をなしている状態でカラム内に配置される場合と、CO2還元触媒の三次粒子をカラム内に充填している場合とでは、Al箔の一方の面に触媒層が形成されている触媒複合体を、巻回し、全体として円柱状をなしている状態でカラム内に配置される場合の方が、CO2の転換率及びメタノールの選択率が向上することが確認された。なお、カラム径が直径4mmの実施例5とカラム径が直径10mmの実施例6の比較においてカラム径が直径4mmである実施例5の方がCO2の転換率及びメタノールの選択率は向上していることが確認された。この結果を踏まえると、実施例2ではカラム径が直径10mmであっても、カラム径が直径4mmである実施例4よりCO2の転換率及びメタノールの選択率が高くなっており、実施例2と実施例4との比較における実施例2のCO2還元触媒ユニットにおけるCO2還元触媒の形状の優位性が認められた。