(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172692
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】板状体および板状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 29/00 20060101AFI20241205BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B32B29/00
B32B3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090565
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一真
(72)【発明者】
【氏名】福岡 将
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100DC01
4F100DC01B
4F100DG10
4F100DG10A
4F100DG10B
4F100DG10C
4F100EJ28
4F100EJ93
4F100EJ94
(57)【要約】
【課題】テープ等の補助部材を用いずに側面の強度確保や外観を良くすることが可能となる板状体を提供する。
【解決手段】上下を厚み方向とする板状の芯材と、前記芯材の上面を覆う第1紙材と、前記芯材の下面を覆う第2紙材と、を有する板状体であって、第1紙材の外縁近傍が下側へ曲げられてなる第1曲げ部と、第2紙材の外縁近傍が上側へ曲げられてなる第2曲げ部とにより、側面が覆われた板状体とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下を厚み方向とする板状の芯材と、
前記芯材の上面を覆う第1紙材と、
前記芯材の下面を覆う第2紙材と、を有する板状体であって、
第1紙材の外縁近傍が下側へ曲げられてなる第1曲げ部と、第2紙材の外縁近傍が上側へ曲げられてなる第2曲げ部とにより、側面が覆われたことを特徴とする板状体。
【請求項2】
第1曲げ部は、第1紙材の外縁近傍が下側へ直角を超える角度で曲げられてなり、
第2曲げ部は、第2紙材の外縁近傍が上側へ直角を超える角度で曲げられてなり、
第1曲げ部および第2曲げ部の外縁は、前記芯材の側面に形成された窪みに嵌まっていることを特徴とする請求項1に記載の板状体。
【請求項3】
第1曲げ部および第2曲げ部は、前記窪みの内側において接触していることを特徴とする請求項2に記載の板状体。
【請求項4】
前記芯材は、上方視ハニカム構造を有する紙材であることを特徴とする請求項2に記載の板状体。
【請求項5】
第1紙材、前記芯材、および第2紙材が上から順に積層配置された中間体の側面へのジグの押し当てにより、請求項2から請求項4の何れかに記載の板状体を製造する方法であって、
前記ジグは、
第1紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第1紙材の外縁を下側へターンするように導く第1曲面部と、
第2紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第2紙材の外縁を上側へターンするように導く第2曲面部と、を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
前記ジグは、上側の面が第1曲面部の一部であるとともに下側の面が第2曲面部の一部であり、上下方向と直交する方向へ突出するように形成された突出部を有し、
前記押し当てに伴って、前記突出部に押されて前記芯材の側面に凹みが生じるようにする請求項5に記載の製造方法であって、
第1曲面部は、第1紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第1紙材の外縁を前記凹みに導くように形成され、
第2曲面部は、第2紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第2紙材の外縁を前記凹みに導くように形成されたことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材で芯材を覆うように構成された板状体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリール用のフランジ等として、紙材で芯材を覆うように構成された板状体が利用されている。紙材は一般的に金属材などに比べて軽量かつ安価であるとともに、使用後はリサイクル容易であり、可燃ごみとしての廃棄も可能である点で優れている。
【0003】
特許文献1には、このような板状体の一種として、表皮材12(紙材)で心材11(芯材)を覆うように構成されたパネル10(板状体)、及びその製造方法が開示されている。このパネル10は、端材14を心材11の端に配設し、テープ15を表皮材12の端部及び端材14を覆うように接着して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、端材14を心材11の端に配設し、テープ15を表皮材12の端部及び端材14を覆うように接着したことにより、パネル10の端を補強するとともに、パネル10の端の外観を良くすることができるとされている。
【0006】
しかし、このパネル10を製造するためには、端材14やテープ15等の補助部材が必要となり、このような補助部材が不要である場合に比べて製造コストの増大が懸念され、更には補助部材の品質管理も必要となる。なお、特許文献1におけるパネル10の製造において、仮にテープ等の補助部材の使用を省略すると、表皮材12の端部が側方へ露出して表皮材12が剥がれ易くなったり、心材11の側面が全体的に露出したりする等、主に強度や外観の面で問題が生じ易くなる。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み、テープ等の補助部材を用いずに側面の強度確保や外観を良くすることが可能となる板状体、および当該板状体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る板状体は、上下を厚み方向とする板状の芯材と、前記芯材の上面を覆う第1紙材と、前記芯材の下面を覆う第2紙材と、を有する板状体であって、第1紙材の外縁近傍が下側へ曲げられてなる第1曲げ部と、第2紙材の外縁近傍が上側へ曲げられてなる第2曲げ部とにより、側面が覆われた構成とする。本構成によれば、テープ等の補助部材を用いずに側面の強度確保や外観を良くすることが可能となる。
【0009】
上記構成としてより具体的には、第1曲げ部は、第1紙材の外縁近傍が下側へ直角を超える角度で曲げられてなり、第2曲げ部は、第2紙材の外縁近傍が上側へ直角を超える角度で曲げられてなり、第1曲げ部および第2曲げ部の外縁は、円板状である前記芯材の側面に形成された窪みに嵌まっている構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、第1曲げ部および第2曲げ部は、前記窪みの内側において接触している構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記芯材は、上方視ハニカム構造を有する紙材である構成としても良い。
【0011】
また本発明に係る製造方法は、第1紙材、前記芯材、および第2紙材が上から順に積層配置された中間体の側面へのジグの押し当てにより、上記構成の板状体を製造する方法であって、前記ジグは、第1紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第1紙材の外縁を下側へターンするように導く第1曲面部と、第2紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第2紙材の外縁を上側へターンするように導く第2曲面部と、を備える方法とする。
【0012】
上記方法としてより具体的には、前記ジグは、上側の面が第1曲面部の一部であるとともに下側の面が第2曲面部の一部であり、上下方向と直交する方向へ突出するように形成された突出部を有し、前記押し当てに伴って、前記突出部に押されて前記芯材の側面に凹みが生じるようにする方法であって、第1曲面部は、第1紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第1紙材の外縁を前記凹みに導くように形成され、第2曲面部は、第2紙材の外縁近傍の表面を滑らせて、第2紙材の外縁を前記凹みに導くように形成された方法としても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る板状体によれば、テープ等の補助部材を用いずに側面の強度確保や外観を良くすることが可能となる。また本発明に係る製造方法によれば、本発明に係る板状体を容易かつ効率良く製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る板状体1の上方視による模式的な外観図である。
【
図2】板状体1の径方向端部近傍における模式的な断面図である。
【
図3】板状体1のサンプルの径方向端部近傍を表す写真である。
【
図4】板状体1を用いて構成されたリールの概略的な外観図である。
【
図5】曲げ加工を行う際の中間体10とジグ2の配置に関する説明図である。
【
図7】曲げ加工が行われる様子を模式的に示す説明図である。
【
図8】板状体1のサンプルにおける接触部1yの近傍の様子の説明図である。
【
図9】第1曲げ部および第2曲げ部の形態に関する説明図である。
【
図10】第1曲げ部および第2曲げ部の形態に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について各図面を参照しながら説明する。なお以下の説明において、上下方向は板状体の厚み方向に一致し、板状体についての径方向は板状体の中心軸M(
図1等を参照)を基準とした径方向を表す。
【0016】
図1は、本実施形態に係る板状体1の上方視による模式的な外観図である。
図2は、板状体1の径方向端部近傍における模式的な断面図(中心軸Mを含む平面で切断した場合の断面図)である。
図3は、板状体1のサンプルの径方向端部近傍を表す写真である。これらの図に示すように板状体1は、全体的に見て、上下に貫通した貫通孔1xを中央に設けた中空円板状に形成されており、上下に延びる中心軸Mについて軸対称であるとともに、上下対称に構成されている。
【0017】
本実施形態の例では、板状体1の厚み(上下方向の寸法)は10mmであり、板状体1の径方向寸法(直径)は500mmである。また板状体1は、リール用のフランジ(リールの構成部品の一つ)として利用可能である。
図4に示すリール5は、板状体1をフランジとして用いて構成されたリールの一例である。
図4に示すように、リール5は、長手方向へ延びる円筒状のコア3の両端それぞれに、フランジとしての板状体1が一つずつ固定されて構成されている。リール5は、各種ケーブル等の紐状物、フィルム等の帯状物を巻き付けて使用することが可能である。なお本発明に係る板状体の具体的な形状、サイズ、および材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0018】
板状体1は、第1紙材11、第2紙材12、および芯材13を用いて形成されており、これらの何れにも貫通孔1xを構成する孔が設けられている。第1紙材11および第2紙材12としては、板紙、紙管原紙、或いはライナー等が適用可能である。但し、これらの紙材11,12の具体的な形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。各紙材11,12として板紙または紙管原紙が適用される場合、その厚みは、0.3~1.5mmであることが好ましく、更には0.3~1.2mmであることがより好ましく、0.3~1.0mmであることが最も好ましい。また各紙材11,12として板紙または紙管原紙が適用される場合、その坪量は、200~900g/m2であることが好ましく、更には200~600g/m2であることがより好ましく、200~500g/m2であることが最も好ましい。各紙材11,12としてライナーが適用される場合、その厚みは0.1~0.5mmであることが好ましく、更には0.2~0.4mmであることがより好ましく、0.2~0.3mmであることが最も好ましい。また各紙材11,12としてライナーが適用される場合、その坪量は160~350g/m2であることが好ましく、更には160~280g/m2であることがより好ましく、160~220g/m2であることが最も好ましい。各紙材11,12がこのように設定されることで、後述する曲げ加工がしやすく、また、板状体1の端面の強度を効果的に向上させることができる。第1紙材11は、芯材13の上面を覆う上面被覆部11aと、上面被覆部11aの全周の径方向端部から下側へ曲げられた第1曲げ部11bとを有する。第1曲げ部11bは、第1紙材11の外縁近傍が下側へ曲げられた部分と見ることができ、全周に亘って芯材13の側面の上側半分を覆っている。
【0019】
第2紙材12は、芯材13の下面を覆う下面被覆部12aと、下面被覆部12aの全周の径方向端部から上側へ曲げられた第2曲げ部12bとを有する。第2曲げ部12bは、第2紙材12の外縁近傍が上側へ曲げられた部分と見ることができ、全周に亘って芯材13の側面の下側半分を覆っている。
【0020】
芯材13は、全体的に見て上下方向を厚み方向とする中空円板状に形成されている。本実施形態の例では、芯材13は、ハニカムセルを構成する中芯(上方視ハニカム構造を有する紙材)である。但し、芯材13の具体的な形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。上記中芯の坪量は90~220g/m2であることが好ましく、更には115~180g/m2であることがより好ましく、115~160g/m2であることが最も好ましい。上記ハニカムセルの径サイズ(六角形の対辺どうしの距離)は、5~25mmであることが好ましく、更には7~16mmであることがより好ましく、8~14mmであることが最も好ましい。芯材13がこのように設定されることで、後述する曲げ加工がしやすく、また、板状体1の端面の強度を効果的に向上させることができる。なお芯材13の上下に各紙材11,12を設けた板状体1(ハニカムボード)の厚みは、5~50mmであることが好ましく、更には10~30mmであることがより好ましく、10~20mmであることが最も好ましい。芯材13の構成に使用されている紙の厚みは、第1紙材11および第2紙材12の厚みよりも薄い。また芯材13は、例えば、芯材13として段ボールまたはその他各種の紙材で構成された板状部材が採用されても良く、紙材以外で構成された板状部材が採用されても良い。
【0021】
なお本実施形態では芯材13の外縁全周において、第1曲げ部11bは、第1紙材11の外縁近傍が下側へ直角(90°)を超える角度で曲げられて形成され、第2曲げ部12bは、第2紙材12の外縁近傍が上側へ直角を超える角度で曲げられて形成されている。なお、これらの直角を超える角度での曲がる角度θ(
図2を参照)は120°以上であることが好ましく、150°以上とすることがより好ましい。本実施形態の例では、丸みを帯びるように曲げられており、角度θは170°程度である。
【0022】
また、芯材13の側面の全周において窪み13aが形成されており、第1曲げ部11bと第2曲げ部12bの端部は窪み13aに嵌まっている。窪み13aの内側において、第1曲げ部11bと第2曲げ部12bの端部近傍が接触した接触部1yが形成されている。このような構成により、芯材13の側面は全周に亘って、第1曲げ部11bと第2曲げ部12bによって完全に覆われている。
【0023】
上述した構成の板状体1は、芯材13として空隙率の高いハニカム構造を有する紙材が使用されているため、その分、紙の使用量を削減して軽量化が実現されている。また板状体1は、芯材13の上下の両面に比較的厚みのある第1紙材11および第2紙材12を設けたため、芯材13の上面と下面の露出が抑えられるとともに、適度な強度が確保されている。なお、芯材13は上方視ハニカム構造を採用したことにより、上下方向の圧縮に対する強度は十分に確保されている。
【0024】
次に板状体1の製造方法について説明する。本実施形態の例では、第1紙材11、第2紙材12、および芯材13を上下方向に積層した中間体10が予め形成され、この中間体10に対してジグ2(R曲げジグ)を用いた曲げ加工を施して製造される。
図5は、当該曲げ加工を行う際の中間体10とジグ2の初期配置の一例を概略的に示している。
図6は、ジグ2の模式的な断面図を表す。
【0025】
中間体10は、上述した曲げ加工が施される前の板状体1に相当し、それぞれ上方視の形状およびサイズが同じである第1紙材11、第2紙材12、および芯材13が上下方向に積層されたものであり、中空円板状となっている。中間体10における第1紙材11、第2紙材12、および芯材13は、いずれも、上方視の外縁が円形状であるとともに上面と下面の全体が平坦であり、第1紙材11は芯材13の上面に貼り付けられており、第2紙材12は芯材13の上面に貼り付けられている。本実施形態の例では、中間体10の径方向寸法(直径)は520mmである。なお中間体10自体は、例えば芯材13の上下に各板材11,12を接着剤で貼り付けて、容易に形成することができる。
【0026】
ジグ2は、金属(例えばSUS303のステンレス)で構成されており、
図5に示す前後方向(中間体10の径方向に一致し、中間体10に向かう方を前方とする。)への平行移動が可能に設定されている。なお本発明に係るジグの具体的な形状、サイズ、および材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0027】
図6に示すように、ジグ2には、前方へ露出するように、第1曲面部21aおよび第2曲面部21bが設けられている。本実施形態のジグ2は、断面が一定で厚み方向(
図6に示す断面と直交する方向)のサイズが適度に(例えば20~50mmの所定値に)設定されている。なおジグ2は、上下に延びる中心軸X(
図6を参照)を設定して、中心軸Xを基準として前方が径方向外向きとなるように軸対称に構成し、この中心軸Xを中心に回転可能としても良い。
【0028】
図6に示す断面視で、第1曲面部21aは、位置Pa1から位置Pb1を経て位置Pcに至るまでの領域を占めている。位置Pa1から位置Pb1までの領域は、位置Pa1から後側へ向かうほど、徐々に下方へ向かうように形成されている。また当該領域において、位置Pa1寄りの部分は、前後方向に対して少しの角度(本実施形態の例では8~10°の角度)だけ傾斜した直線状となっており、この部分より位置Pb1寄りの部分は円弧状となっている。
【0029】
位置Pb1から位置Pcまでの領域は、位置Pb1から前側へ向かうほど、徐々に下方へ向かうように形成されている。当該領域における位置Pb1寄りの部分は、上述した円弧状に連接した同じ半径の円弧状となっている。前後方向の位置について、位置Pcは位置Pa1と位置Pb1との間にあり、本実施形態の例では、位置Pcの前後方向位置は、位置Pa1の前後方向位置と位置Pb1の前後方向位置との間の概ね中央である。
【0030】
また位置Pcは、ジグ2を上下に二等分する仮想平面Z上に位置しており、第1曲面部21aと第2曲面部21bの両方の端部に相当する。第2曲面部21bは、この仮想平面Zを基準として、第1曲面部21aと上下対称に形成されている。なお
図6に示すように、第2曲面部21bにおける位置Pa1と対称である位置を位置Pa2とし、位置Pb1と対称である位置を位置Pb2とする。
【0031】
またジグ2においては、前側(上下方向と直交する方向)へ突出するように形成された突出部21cが設けられている。突出部21cは、上側の面が第1曲面部21aの一部(位置Pb1から位置Pcに至る部分)であり、下側の面が第2曲面部21bの一部(位置Pb2から位置Pcに至る部分)である。本実施形態の例では、位置Pcは突出部21cの先端の位置に該当する。
【0032】
上述した曲げ加工を行う際には、
図5に例示するように中間体10とジグ2が配置される。このとき、中間体10とジグ2の上下方向の中心位置どうしは一致している。このように中間体10とジグ2が配置された後、中心軸Mを中心として中間体10を破線矢印Raで示すように回転させながら、ジグ2を中間体10の中心軸Mへ徐々に近づけるように平行移動させる。
【0033】
図7は、上述した曲げ加工が行われる様子を模式的に示している。なお
図7における中間体10およびジグ2は、それぞれの中央部を含む平面(
図5に示す仮想平面Y)で切断した場合の断面図として示されている。
【0034】
図7(a)は、ジグ2が中間体10に接触する直前の様子を示している。本図に示すように、ジグ2の第1曲面部21aの上端は、中間体10における第1紙材11の上端よりも僅かに上側に位置しており、第2曲面部21bの下端は、中間体10における第2紙材12の下端よりも僅かに下側に位置している。そのためジグ2を中間体10へ更に近づけると、第1紙材11の端部が第1曲面部21aの上側寄りの位置(
図6に示す直線状の部分)に接触し、第2紙材12の端部が第2曲面部21bの下側寄りの位置(
図6に示す直線状の部分)に接触する。また、更にジグ2を中間体10へ近づけて、中間体10の側面へジグ2を押し当てることができる。
【0035】
図7(b)は、
図7(a)に示す状態からジグ2を中間体10へ更に近づけたときの様子を示している。本図に示すように第1紙材11は、第1曲面部21aの上側寄りの位置に当たった後、表面が第1曲面部21aを滑るように進み、下側へターンするように導かれる。またこれと同時に、第2紙材12は、第2曲面部21bの下側寄りの位置に当たった後、表面が第2曲面部21bを滑るように進み、上側へターンするように導かれる。
【0036】
なお、第1曲面部21aおよび第2曲面部21bの後側(
図6に示す位置Pb1,Pb2の近傍)は、
図6に示す断面視で十分な丸みが設けられている。そのため、第1紙材11および第2紙材12を円滑にターンさせることが可能である。また、第1紙材11および第2紙材12が位置Pbに到達する前に、突出部21cが芯材13の端面を押し付ける格好となるため、当該端面に径方向内側への凹みQが形成される。これにより、凹みQへ第1紙材11および第2紙材12の外縁を円滑に導くことができ、第1紙材11および第2紙材12を容易にターンさせることができる。
【0037】
図7(c)は、
図7(b)に示す状態からジグ2を中間体10へ更に近づけたときの様子を示している。本図に示すように、各紙材11,12は、表面が各曲面部21a,21bを滑るように更に進み、各紙材11,12の端部が位置Pcに達してからも更にジグ2を中心軸Mに近づけると、各紙材11,12の端部が芯材13にめり込むように進み、これらの端部近傍どうしが芯材13に挟まれて圧着した状態となる。
【0038】
このような状態に至るまで中間体10へジグ2を十分に押し当てた後、中間体10からジグ2を離しても、各紙材11,12の端部は芯材13にめり込んだままとなり、当該端部の近傍どうしが圧着した状態は維持される。このようにして板状体1を製造することができ、各紙材11,12の端部近傍どうしが接触した部分は、先に説明した板状体1の接触部1yとして残存する。
図8は、板状体1のサンプルにおける接触部1yの近傍の様子を示しており、本図に示すように当該サンプルでは、各紙材11,12の端部近傍どうしの接触は維持されている。
【0039】
なお板状体1の製造工程においては、上述した曲げ加工が行われた後、更に各種の工程(例えば、板状体1の側面における窪み13aの近傍へ接着剤または樹脂等を流し込み、各曲げ部11b,12bの曲がった状態をより確実に維持するための工程等)が行われるようにしても良い。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態に係る板状体1は、上下を厚み方向とする板状の芯材13と、芯材13の上面を覆う第1紙材11と、芯材13の下面を覆う第2紙材12と、を有しており、第1紙材11の外縁近傍が下側へ曲げられた第1曲げ部11bと、第2紙材12の外縁近傍が上側へ曲げられた第2曲げ部12bとにより、側面が覆われている。
【0041】
そのため板状体1によれば、特許文献1の開示内容のようにテープ等を使用しなくても、第1紙材11および第2紙材12の端面が側方へ露出しないようにして、これらの紙材11,12が剥がれ易くなることは回避される。また紙材11,12で覆われる分、芯材13における側面(端面)の露出が抑えられる。このように板状体1によれば、テープ等の補助部材を用いずに側面の強度確保や外観を良くすることが可能である。なお、第1曲げ部11bと第2曲げ部12bの形態については、例えば
図9に示す形態としても良い。この形態では、第1紙材11の外縁近傍が下側へ概ね直角に曲げられて第1曲げ部11bが形成され、第2紙材12の外縁近傍が上側へ概ね直角に曲げられて第2曲げ部12bが形成されている。またこの形態では、第1曲げ部11bと第2曲げ部12bの端部どうし(
図9にαで示す箇所)を接触させた状態とし、これらの曲げ部11b,12bによって芯材13の側面を完全に覆うことが可能である。
【0042】
また板状体1において、第1曲げ部11bは、第1紙材11の外縁近傍が下側へ直角を超える角度で曲げられてなり、第2曲げ部12bは、第2紙材12の外縁近傍が上側へ直角を超える角度で曲げられてなり、第1曲げ部11bおよび第2曲げ部12bの外縁は、円板状である芯材13の側面に形成された窪み13aに嵌まっている。
【0043】
このように、第1曲げ部11bおよび第2曲げ部12bの外縁は、窪み13aに嵌まっていることにより外部への露出がより一層抑えられる。そのため板状体1においては、第1曲げ部11bおよび第2曲げ部12bが剥がれ易くなったり、板状体1の外観に問題が生じたりすることを、より効果的に防ぐことが可能である。
【0044】
更に板状体1の全周において、第1曲げ部11bおよび第2曲げ部12bは、窪み13aの内側において接触している。そのため板状体1の側面は、第1曲げ部11bおよび第2曲げ部12bによって完全に覆われ、側方へ芯材13を露出させないようにすることが可能である。なお第1曲げ部11bおよび第2曲げ部12bの形態については、
図10に例示するように、上述のとおり直角を超える角度で曲げられるとともに、更にその端部寄りの部分が上下方向外側に向けて丸まって延びる形態としても良い。
【0045】
なお既に説明したとおり、
図4に示すリール5は、長手方向に延びるコア51と、コア51の長手方向両端それぞれに設けられたフランジ部とを備え、コア51に対象物が巻き付けられるリールであって、当該フランジ部として板状体1を採用したものとなっている。但し、本発明に係る板状体の用途はリール用のフランジに限られるものではなく、本発明に係る板状体は、例えば所定の物品を乗せるための台座など、種々の用途に利用可能である。また、板状体は円板形状に限られるものではなく、例えば、上方視矩形状であるもの等、種々の板状とすることが可能である。
【0046】
また先述した板状体1の製造方法は、第1紙材11、芯材13、および第2紙材12が上から順に積層配置された中間体10の側面へのジグ2の押し当てにより、板状体1を製造する方法となっている。このジグ2は、第1紙材11の外縁近傍の表面を滑らせて、第1紙材11の外縁を下側へターンするように導く第1曲面部21aと、第2紙材12の外縁近傍の表面を滑らせて、第2紙材12の外縁を上側へターンするように導く第2曲面部21bと、を備える。この製造方法によれば、中間体10の側面へジグ2を押し当てることにより、各紙材11,12の曲げ加工を適切に行うことが可能であり、板状体1を容易かつ効率良く製造することが可能である。
【0047】
更にジグ2は突出部21cを有しており、この突出部21cを利用して、上記の製造方法では、中間体10の側面へのジグ2の押し当てに伴って、突出部21cに押されて芯材13の側面に凹みQが生じるようにする。また、第1曲面部21aは、第1紙材11の外縁近傍の表面を滑らせて、第1紙材11の外縁を凹みQに導くように形成され、第2曲面部21bは、第2紙材12の外縁近傍の表面を滑らせて、第2紙材12の外縁を凹みQに導くように形成されている。そのため当該製造方法によれば、各紙材11,12の曲げ加工を行うととともに凹みQを形成して、この凹みQに各紙材11,12の外縁を導くことが可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、各種用途の板状体に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 板状体
1x 貫通孔
1y 接触部
10 中間体
11 第1紙材
11a 上面被覆部
11b 第1曲げ部
12 第2紙材
12a 下面被覆部
12b 第2曲げ部
13 芯材
13a 窪み
2 ジグ
21a 第1曲面部
21b 第2曲面部
5 リール
51 コア
M 板状体1(または中間体10)の中心軸
Q 凹み