(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172694
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】フィルムインサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20241205BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B33/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090568
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】599004612
【氏名又は名称】株式会社光金属工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100188411
【弁理士】
【氏名又は名称】阪下 典子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 幸秀
【テーマコード(参考)】
4F100
4F206
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EJ52B
4F100HB31B
4F206AA03
4F206AA13
4F206AA21
4F206AA28
4F206AD05
4F206AD09
4F206AD20
4F206AD27
4F206AD32
4F206AF10
4F206AH17
4F206AH33
4F206AR20
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JB19
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】品質のばらつき等を低減し、製造プロセスにおいて、歩留まりを向上させることができるフィルムインサート成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムインサート成形品の製造方法において、基材フィルムの一方の表面である第1の表面の少なくとも一部に印刷層が積層された積層フィルムを準備する積層フィルム準備工程と、積層フィルムの印刷層にレーザ光を照射し、印刷層の一部を除去することにより形成される意匠領域を有する加飾フィルムを形成する加飾フィルム形成工程と、加飾フィルムを成形金型に配置し、加飾フィルムの印刷層側に溶融した熱可塑性樹脂を射出してフィルムインサート成形品を形成するフィルムインサート成形工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムインサート成形品の製造方法において、
基材フィルムの一方の表面である第1の表面の少なくとも一部に印刷層が積層された積層フィルムを準備する積層フィルム準備工程と、
前記積層フィルムの前記印刷層にレーザ光を照射し、前記印刷層の一部を除去することにより形成される意匠領域を有する加飾フィルムを形成する加飾フィルム形成工程と、
前記加飾フィルムを成形金型に配置し、前記加飾フィルムの前記印刷層側に溶融した熱可塑性樹脂を射出してフィルムインサート成形品を形成するフィルムインサート成形工程と、を備える、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記基材フィルムの厚さは、前記印刷層の厚さより厚い、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記基材フィルムは、可視光線の全域または一部の光を透過する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記積層フィルム準備工程において、前記積層フィルムは、前記成形金型の少なくとも一部の表面形状に対応する形状に賦形された三次元形状を有する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程において、前記積層フィルムは、前記積層フィルムを保持する治具に真空吸着された状態でレーザ光を照射され、
前記治具は、多孔質金属材料で形成されている、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程において、前記積層フィルムは、前記積層フィルムを保持する治具に真空吸着された状態でレーザ光を照射され、
前記治具は、樹脂材料で形成された白色または乳白色の治具であって、真空吸引孔を有する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記印刷層の色は、黒色である、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記印刷層は、前記積層フィルムの前記第1の表面の全面に積層されている、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程後において、前記加飾フィルムの前記意匠領域に印刷を施すことにより光透過率を調整する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程後において、前記加飾フィルムの前記意匠領域に印刷を施すことにより所定の色彩を付与する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、フィルムインサート成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形品は、インストルメントパネル、センタークラスタ、センターコンソール、スイッチベース等の自動車内装部品や、炊飯器、洗濯機、検温モニタ等の表示パネルを備える各種電気製品等に、多く採用されている。一方、表面が加飾されたプラスチック成形品として、フィルムインサート成形品が知られている。
【0003】
このようなフィルムインサート成形品の製造方法として、まず、合成樹脂シートにスクリーン印刷方式で印刷して加飾フィルムを形成し、これを射出成形の成形金型に挿入しうる形状に加工(以下、「賦形」とも呼ぶ)し、その後、当該賦形された加飾フィルムを当該成形金型に挿入して、当該成形金型内へ溶融樹脂を射出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記賦形の工程における合成樹脂シート(本明細書における「加飾フィルム」に相当)の形状再現性や意匠ズレ等を低減するために、固定側金型にゲートを備え、可動側金型の局部に凹型が形成された射出成形用金型内で、当該固定側金型と合成樹脂シートとの間におけるゲート口の周辺に局部的な空隙を設けることにより、当該ゲート口から当該空隙に射出された溶融樹脂によって膨出する該合成樹脂シートの局部が上記凹型の内部形状に応じて賦形する賦形加工方法が採用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-299016号公報
【特許文献2】特開2005-074743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、フィルムインサート成形品における意匠の位置精度、精緻さやシャープさへの要求が一層高まってきている。このため、このような要求を満たさないフィルムインサート成形品は、品質のばらつき等により当該成形品の製造プロセスにおいて、歩留まりの低下を招くという問題がある。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるフィルムインサート成形品の製造方法は、基材フィルムの一方の表面である第1の表面の少なくとも一部に印刷層が積層された積層フィルムを準備する積層フィルム準備工程と、前記積層フィルムの前記印刷層にレーザ光を照射し、前記印刷層の一部を除去することにより形成される意匠領域を有する加飾フィルムを形成する加飾フィルム形成工程と、前記加飾フィルムを成形金型に配置し、前記加飾フィルムの前記印刷層側に溶融した熱可塑性樹脂を射出してフィルムインサート成形品を形成するフィルムインサート成形工程と、を備える。本フィルムインサート成形品の製造方法によれば、レーザ加工により、意匠領域を有する加飾フィルムを形成する。このため、合成樹脂シートにスクリーン印刷方式で意匠を印刷して作製された加飾フィルムと比較して、加飾フィルムにおける意匠の位置精度が高く、また、意匠を精緻でシャープに再現することができる。これにより、このように形成された加飾フィルムを備えるフィルムインサート成形品の品質のばらつき等を低減し、ひいては、当該成形品の製造プロセスにおいて、歩留まりを向上させることができる。
【0010】
(2)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記基材フィルムの厚さは、前記印刷層の厚さより厚い構成としてもよい。本フィルムインサート成形品の製造方法において、積層フィルムをこのような構成とすることにより、積層フィルムの強度が向上し、ひいては、レーザ加工時における積層フィルムの損傷を抑制することができる。
【0011】
(3)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記基材フィルムは、可視光線の全域または一部の光を透過する構成としてもよい。本フィルムインサート成形品の製造方法において、積層フィルムをこのような構成とすることにより、レーザ加工時におけるレーザ光は、基材フィルムを透過し、基材フィルムを損傷させることなく、印刷層のみを除去することができる。
【0012】
(4)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記積層フィルム準備工程では、前記成形金型の少なくとも一部の表面形状に対応する形状に賦形された三次元形状を有する積層フィルムを準備することとしてもよい。一般に、フィルムインサート成形品の製造方法では、意匠が形成された印刷層を有する積層フィルムを賦形する際に、当該印刷層における意匠の位置ずれが発生することがある。本フィルムインサート成形品の製造方法では、積層フィルムを三次元形状に賦形することにより得られたフィルムを用いて、レーザ加工により意匠を形成するため、フィルムインサート成形品における意匠の位置ずれを低減させることができる。
【0013】
(5)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記加飾フィルム形成工程では、前記積層フィルムは、前記積層フィルムを保持する治具に真空吸着された状態でレーザ光を照射することとしてもよい。また、前記治具は、多孔質金属材料で形成されている構成としてもよい。本フィルムインサート成形品の製造方法によれば、加飾フィルム形成工程において、このような治具を用いるため、レーザ加工時における、積層フィルムの位置ずれを抑制することができ、ひいては、フィルムインサート成形品における意匠領域の位置精度を向上させることができる。
【0014】
(6)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記加飾フィルム形成工程では、前記積層フィルムは、前記積層フィルムを保持する治具に真空吸着された状態でレーザ光を照射することとしてもよい。また、前記治具は、樹脂材料で形成された白色または乳白色の治具であって、真空吸引孔を有する構成としてもよい。本フィルムインサート成形品の製造方法によれば、加飾フィルム形成工程において、このような治具を用いるため、レーザ加工時における、積層フィルムの位置ずれを抑制することができ、ひいては、フィルムインサート成形品における意匠領域の位置精度を向上させることができる。さらに、上記治具の色が、白色または乳白色であるため、レーザ加工時におけるレーザ光を拡散させることができる。これにより、レーザ光による治具の損傷を低減することができる。
【0015】
(7)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記印刷層の色は、黒色としてもよい。このように、印刷層の色が全ての光の色を吸収する黒色であることにより、レーザ光の吸収率が高くなるのでレーザ加工条件を容易に決定することができる。
【0016】
(8)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記印刷層は、前記積層フィルムの前記第1の表面の全面に積層されていてもよい。本フィルムインサート成形品の製造方法において、全面に印刷層が積層された積層フィルムを用いることにより、加飾フィルムに施すべき全ての意匠をレーザ加工により形成することができる。
【0017】
(9)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記加飾フィルム形成工程後に前記加飾フィルムの前記意匠領域に印刷を施すことにより光透過率を調整してもよい。これにより、意匠領域とその周辺の境界をよりシームレス化し、両者を視覚的に一体化することができ、ひいては、フィルムインサート成形品における意匠性や装飾性を向上させることができる。
【0018】
(10)上記フィルムインサート成形品の製造方法において、前記加飾フィルム形成工程後に前記加飾フィルムの前記意匠領域に印刷を施すことにより所定の色彩を付与してもよい。本フィルムインサート成形品の製造方法によれば、加飾フィルムの意匠性や意匠の自由度を向上させることができる。また、フィルムインサート成形品を外側から見る者(以下、「視認者」とも呼ぶ)が、意匠領域に当該色彩を視認することができ、フィルムインサート成形品全体として意匠性や装飾性を向上させることができる。
【0019】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、フィルムインサート成形品等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態における車両1に備えられたインストルメントパネル11部分を車両後方から車両前方へ向かって見た状態を概略的に示す説明図である。
【
図2】第1実施形態における加飾パネル111の構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】第1実施形態における加飾パネル111のYZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図4】第1実施形態における加飾パネル111の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における加飾パネル111の製造方法の概要を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態における加飾パネル111の製造方法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施形態:
A-1.加飾パネル111の構成:
図1は、第1実施形態におけるインストルメントパネル11部分を車両後方から車両前方へ向かって見た状態を概略的に示す説明図であり、
図2は、第1実施形態における加飾パネル111の構成を概略的に示す説明図であり、
図3は、第1実施形態における加飾パネル111のYZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3には、
図2のII-IIの位置における加飾パネル111のYZ断面構成のうち、
図2の部分AにおけるYZ断面構成が示されている。
図2および
図3には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、加飾パネル111は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されていてもよい。これらの点は、以降の図においても同様である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態において、加飾パネル111は、車両1の前方に配置されたインストルメントパネル11に備えられたセンタークラスタ110を覆うセンタークラスタパネルである。センタークラスタ110は、加飾パネル111の表面S1(以下、「操作面S1」とも呼ぶ)とは反対側に、ナビゲーションパネル、感圧センサを備えるセンサシート、LED等の光源等を備える。
【0023】
センタークラスタ110は、ディスプレイ105と、スイッチ107とを備える。ディスプレイ105は、ナビゲーション等の各種画像を表示可能な部分である。スイッチ107は、本実施形態において車内環境や快適性等を操作可能なスイッチであり、タッチパネル式のスイッチである。なお、加飾パネル111は、特許請求の範囲におけるフィルムインサート成形品に相当する。
【0024】
図2を用いて、本実施形態の加飾パネル111の構成を説明する。加飾パネル111は、三次元形状を有し、加飾領域113と、ディスプレイ領域115と、シンボルマーク領域117とを備える。Z軸方向視において、加飾パネル111のディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117は、それぞれ、センタークラスタ110のディスプレイ105およびスイッチ107の位置に重なる。なお、ディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117は、ともに、特許請求の範囲における意匠領域に相当する。
【0025】
加飾領域113は、Z軸方向視において後述の印刷層L2が重なる領域であり、本実施形態では黒色の部分である。ディスプレイ領域115は、透光性を有する矩形状の領域である。換言すれば、本実施形態ではディスプレイ領域115は、可視光線のほぼ全域の光を透過する透明の領域である。また、シンボルマーク領域117には、スイッチ107に対応する各種シンボルマークが、ディスプレイ領域115と同様に、透光性を有する抜き文字または抜き形状となるよう施されている。
図2(a)には、シンボルマーク領域117のうちの、フロントガラスのデフロスタを表すシンボルマーク領域117aが拡大されて示されている。なお、
図2(a)において、加飾領域113の表示を省略している。
【0026】
図3を用いて、加飾パネル111の断面構成について説明する。本実施形態において加飾パネル111の加飾領域113は、YZ断面において、3層構造を有している。より詳しくは、加飾パネル111の加飾領域113は、加飾パネル111の表面S1から順に、基材層L1、印刷層L2、成形樹脂層L3の順に構成されている。基材層L1と、印刷層L2と、成形樹脂層L3とは、互いに接合している。一方、加飾パネル111のディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117の部分(部分P1,P2,P3)では、YZ断面において、基材層L1と成形樹脂層L3とから構成される2層構造を有している。なお、基材層L1は、特許請求の範囲における基材フィルムに相当し、基材層L1と印刷層L2とから構成される層は、特許請求の範囲における加飾フィルムに相当する。
【0027】
本実施形態の基材層L1は、加飾パネル111の表面S1を構成する層であり、可視光線のほぼ全域の光を透過する透明材料で構成される。すなわち、Z軸方向視において印刷層L2が重ならない領域は、透明である。ここで、「透明」とは、JIS K7136に従って測定した全光線透過率が、例えば、60%程度以上、好ましくは、80%程度以上であることを意味する。基材層L1を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート(PC)、ABS、ポリエステル系ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、アクリル、ポリイミド系、オレフィン系、トリアセチルセルロース等の樹脂や、シリコーンゴム等のエラストマーを使用することができる。耐候性・耐薬品性・耐衝撃性等の観点から、ポリカーボネート(PC)樹脂が好ましい。基材層L1を構成する材料は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。基材層L1のZ軸方向における厚さは、例えば、25μm~1000μm程度であり、好ましくは、100μm~400μm程度である。
【0028】
本実施形態の印刷層L2は、加飾パネル111に加飾性を持たせる層である。例えば、文字、図形、記号、絵柄等のシンボルマーク、ナビゲーションパネルに対応する窓枠、その他の装飾、これらを組み合わせた任意の意匠が中抜き文字または中抜き形状、中抜き領域となるよう施されている。このような意匠は、例えば、センタークラスタ110において、加飾パネル111の操作面S1と反対側に備えられた感圧センサの機能に対応するように形成することができる。本実施形態の加飾パネル111では、車内環境や快適性等を操作可能な感圧センサの位置に対応して各種のシンボルマーク領域117が形成されている。印刷層L2のZ軸方向における厚さは、基材層L1の厚さより薄い。換言すれば、基材層L1の厚さは、印刷層L2の厚さより厚い。印刷層L2の厚さは、例えば、1μm~100μm程度であり、好ましくは、2μm~30μm程度である。
【0029】
本実施形態において印刷層L2は、黒色の着色剤で構成されているが、これに限定されず、後述の加飾フィルム形成工程のレーザ加工において除去可能な色の着色剤であればよい。当該着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよいが、耐久性の観点から、顔料であることが好ましい。当該顔料は、無機顔料であってもよく、有機顔料であってもよい。
【0030】
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の白色顔料;カーボンブラック、チタンブラック、チタンカーボン、酸化鉄、黒鉛等の黒色顔料;酸化鉄、バリウムイエロー、カドミウムレッド、及びクロムイエローが挙げられる。
【0031】
有機顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;アゾレッド、アゾイエロー、アゾオレンジ等のアゾ系顔料;キナクリドンレッド、シンカシャレッド、シンカシャマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンマルーン等のペリレン系顔料;カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、アントラキノンレッド、及びジケトピロロピロールが挙げられる。上記着色剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、2種以上の着色剤を用いる場合、2種以上の無機顔料または有機顔料を組み合わせてもよいし、無機顔料と有機顔料とを組み合わせてもよい。
【0032】
成形樹脂層L3は、加飾パネル111の裏面S2を構成する層であり、基材層L1および印刷層L2を支持する樹脂層である。成形樹脂層L3は、熱可塑性樹脂で構成される。成形樹脂層L3を構成する材料として、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂のポリマーアロイ、アクリル樹脂等を使用することができる。当該熱可塑性樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。なお、基材層L1を構成する材料の荷重たわみ温度は、成形樹脂層L3を構成する材料の荷重たわみ温度以上であることが好ましい。
【0033】
使用時において、センタークラスタ110に組み込まれた加飾パネル111は、ディスプレイ領域115またはシンボルマーク領域117において裏面S2側に配置されたLED等の光源からの光が投光される。当該投光された光は、加飾パネル111のディスプレイ領域115またはシンボルマーク領域117の中抜き部分を透過し、当該中抜き部分を透過した透過光により、センタークラスタ110の表面S1側から見る者に対して、加飾性を有する印刷層L2を際立たせることができるようになる。
【0034】
A-2.加飾パネル111の製造方法:
図4は、第1実施形態における加飾パネル111の製造方法を示すフローチャートであり、
図5および
図6は、第1実施形態における加飾パネル111の製造方法の概要を示す説明図である。
【0035】
はじめに、積層フィルムを準備する(積層フィルム準備工程S10)。
図5(A)(B)に示すように、本実施形態の積層フィルム準備工程S10では、積層フィルムとして、予め、後述のフィルムインサート成形工程S40で用いられる成形金型IMの表面形状に対応する形状に賦形された積層フィルム111S(以下、「賦形フィルム111S」とも呼ぶ)を準備する。換言すれば、本実施形態の積層フィルム準備工程S10では、三次元形状を有する賦形フィルム111Sを準備する。なお、賦形フィルム111Sは、特許請求の範囲における積層フィルムに相当する。
【0036】
まず、
図5(A)に示すように、基材層L1と印刷層L2とを有する積層フィルム111Pを準備する。より詳しくは、本実施形態の積層フィルム111Pは、基材層L1の表面S3(表面S1と反対側の表面)の全面に印刷層L2が積層されている。ここで、基材層L1の形成材料および厚さ等は、上述した通りである。印刷層L2は、黒色の着色剤で構成されており、着色剤の種類および厚さ等は、上述した通りである。このような積層フィルム111Pは、例えば、黒色の顔料を着色剤として含有する着色インキを用い、一般的な印刷法により形成することができる。当該印刷法として、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。なお、表面S3は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。
【0037】
次に、
図5(A)(B)に示すように、積層フィルム111Pを、固定具Fで固定した状態で、積層フィルム111Pの表面S1をヒータHの熱hで加熱し、賦形金型SMの表面形状に合致するよう賦形して、賦形フィルム111Sを形成する。ここで、賦形金型SMの表面形状は、フィルムインサート成形工程S40で用いられる成形金型IMの表面形状に対応している。当該賦形の方法は、特に限定されず、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成型、プラグアシスト成形等により行うことができる。
【0038】
次に、トリム加工を行う(トリム加工工程S20)。
図5(C)に示すように、積層フィルム準備工程S10で形成された賦形フィルム111Sの形状が、後述のフィルムインサート成形工程S40で用いられる成形金型IMの形状に合うように、賦形フィルム111Sを周縁部Tでカットする。すなわち、賦形フィルム111Sの外周部OPをトリム加工する。当該トリム加工は、特に限定されないが、レーザ加工、超音波カット、プレスカット等により行うことができる。
【0039】
次に、加飾フィルムを形成する(加飾フィルム形成工程S30)。
図5(D)および
図6(A)に示すように、本実施形態の加飾フィルム形成工程S30では、トリム加工された賦形フィルム111Sの印刷層L2にレーザ加工を施すことにより、加飾フィルム111Lを形成する。より具体的には、賦形フィルム111Sにおける印刷層L2のディスプレイ領域115(
図6(A)中の部分P1)およびシンボルマーク領域117に対応する領域にレーザ光Lを照射し、当該領域の印刷層L2を除去して、ディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117が形成された加飾フィルム111Lを形成する。使用するレーザの種類として、固体レーザ、半導体レーザ、CO
2レーザ等を使用することができる。また、レーザ加工の条件(レーザの出力および加工時間等)は、賦形フィルム111Sのディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117において、印刷層L2を全て除去して基材層L1を露出させつつ、基材層L1を損傷しないよう調整することができる。本実施形態において、YVO4レーザを用い、レーザ加工の出力は0.1~15Wとすることができる。なお、
図6(A)および(C)において、シンボルマーク領域117に対応する部分P2,P3の図示を省略している。
【0040】
次に、フィルムインサート成形を行う(フィルムインサート成形工程S40)。
図6(B)および(C)に示すように、加飾フィルム111Lを用いて、フィルムインサート成形を行い、加飾領域113と、ディスプレイ領域115と、シンボルマーク領域117とを有する加飾パネル111を製造する。より詳しくは、加飾フィルム111Lを成形金型IMに配置し、成形金型IMの射出口Eから溶融した熱可塑性樹脂MRを成形金型IM内へ射出する。その後、所定の冷却時間をおいて成形金型IMを型開きし、脱型することにより、加飾パネル111を製造する。X方向視において、加飾パネル111は、ディスプレイ領域115が位置する部分(
図3および
図6(A)および(C)の部分P1)において、印刷層L2が除去された状態であり、基材層L1と、熱可塑性樹脂MRから構成された成形樹脂層L3との2層構造を有する。加飾パネル111のシンボルマーク領域117が位置する部分(
図3の部分P2,P3)においても、同様に、基材層L1と成形樹脂層L3との2層構造を有する。このため、本実施形態の加飾パネル111は、上方向から見たとき、透明なディスプレイ領域115とシンボルマーク領域117とを有する。
【0041】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の加飾パネル111の製造方法は、基材層L1の表面S3の全面に印刷層L2が積層された積層フィルム111Pを、所定の形状に賦形した賦形フィルム111Sを準備する積層フィルム準備工程S10と、賦形フィルム111Sの印刷層L2にレーザ光を照射し、印刷層L2の一部を除去して、ディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117を有する加飾フィルム111Lを形成する加飾フィルム形成工程と、加飾フィルム111Lを成形金型IMに配置し、加飾フィルム111Lの印刷層L2の側から溶融した熱可塑性樹脂を射出して加飾パネル111を形成するフィルムインサート成形工程と、を備える。
【0042】
本実施形態の加飾パネル111の製造方法によれば、レーザ加工により、意匠領域としてのディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117を有する加飾フィルム111Lを形成する。このため、合成樹脂シートにスクリーン印刷方式で意匠を印刷して作製された加飾フィルムと比較して、加飾フィルム111Lにおける意匠の位置精度が高く、また、意匠を精緻でシャープに再現することができる。これにより、このように形成された加飾フィルム111Lを備える加飾パネル111の品質のばらつき等を低減し、ひいては、加飾パネル111の製造プロセスにおいて、歩留まりを向上させることができる。
【0043】
本実施形態の積層フィルム準備工程(S10)では、成形金型IMの表面形状に対応する形状に賦形された三次元形状を有する賦形フィルム111Sを準備する。一般に、加飾パネルの製造方法では、印刷により意匠が施された印刷層を有する積層フィルムを賦形する際に、印刷層における意匠の位置ずれが発生することがある。本実施形態の製造方法では、積層フィルム111Pを三次元形状に賦形することにより得られた賦形フィルム111Sを用いて、レーザ加工により意匠を形成するため、加飾パネル111における意匠の位置ずれを低減させることができ、歩留まりを向上させると共に、今まで実現できなかった意匠精度を確保することができる。
【0044】
印刷により意匠が施された印刷層を有する積層フィルムを賦形する際における、印刷層の意匠の位置ずれは、加飾パネルの大きさが大きいほど発生しやすい傾向がある。本実施形態の製造方法では、賦形後のレーザ加工により意匠を施すため、意匠の位置ずれが発生しやすい、比較的大きい加飾パネルの製造においても好適に用いられる。一方、一枚の積層フィルムを用いて複数の加飾パネルを製造する際には、賦形後に意匠を施す本実施形態の製造方法では、賦形時の意匠の位置ずれを考慮したマージンを最低限に抑えることができ、経済性に優れる。さらには、本実施形態の製造方法によれば、賦形時の意匠の位置ずれに関する上記問題により困難であった、三次元形状を有する加飾パネルの折曲部分にも意匠を施すことができる。
【0045】
本実施形態の製造方法において、基材層L1厚さは、印刷層L2の厚さより厚い。このため、賦形フィルム111Sの強度が向上し、ひいては、レーザ加工時における賦形フィルム111Sの損傷を抑制することができる。また、本実施形態において、基材層L1は、可視光線の全域の光を透過する透明の層である。このため、レーザ加工時におけるレーザ光は、基材層L1を透過し、基材層L1を損傷させることなく、印刷層L2のみを除去することができる。また、本実施形態において、印刷層L2の色は、黒色である。このため、レーザ加工条件を容易に決定することができる。また、本実施形態において、印刷層L2は、基材層L1の表面S3の全面に積層されている。このため、加飾フィルム111Lに施すべき全ての意匠(ディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117)をレーザ加工により形成することができる。
【0046】
B.第2実施形態:
第2実施形態の加飾パネル111の製造方法では、第1実施形態の加飾パネル111の製造方法のうちの加飾フィルム形成工程S30を、次に示す方法に代えて行う。具体的には、第2実施形態の加飾フィルム形成工程は、真空環境内で行われる。より詳しくは、真空環境内において、トリム加工された賦形フィルム111Sの表面S1の側が治具に接するように保持し、かつ、当該治具に真空吸着させた状態で、印刷層L2のディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117に対応する領域にレーザ光Lを照射する。当該治具は、多孔質金属材料で形成されている。当該多孔質金属材料としては、例えば、多孔質アルミニウム、多孔質ステンレス等を使用することができる。
【0047】
このように、第2実施形態の加飾パネル111の製造方法では、加飾フィルム形成工程において、多孔質金属材料で形成された治具に賦形フィルム111Sを真空吸着させた状態でレーザ加工を行う。このため、レーザ加工時における、賦形フィルム111Sの位置ずれを抑制することができ、ひいては、加飾パネル111におけるディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117の位置精度を向上させることができる。
【0048】
C.第3実施形態:
第3実施形態の加飾パネル111の製造方法では、第2実施形態の加飾パネル111の製造方法のうちの加飾フィルム形成工程S30において、多孔質金属材料で形成された治具に代えて、次に示す治具を使用する。具体的には、第3実施形態の加飾フィルム形成工程では、樹脂材料で形成され、かつ、真空吸引孔を有する治具が使用される。また、当該治具の色は、当該治具がレーザ光を拡散させるために、白色または乳白色である。
【0049】
上記樹脂材料として、特に限定されないが、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。当該樹脂材料は、強度とコストの観点から、ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂等を使用することが好ましい。また、上記当該樹脂材料には、上記治具の色を白色または乳白色に調色すべく、顔料が配合されている。当該顔料として、特に限定されないが、例えば、有機色素や無機顔料等が使用される。
【0050】
上記治具は、レーザ加工時に、賦形フィルム111Sをより確実に真空吸着させるべく、複数の真空吸引孔を有する。当該治具における真空吸引孔の位置は、賦形フィルム111Sを確実に真空吸着できれば、特に限定されない。賦形フィルム111Sにおけるレーザ光照射時の位置ずれを抑制する観点から、例えば、ディスプレイ領域115やシンボルマーク領域117の周囲に真空吸引孔を設けることが好ましい。当該真空吸引孔の直径は、例えば、0.5mm~2mm程度である。また、当該真空吸引孔のピッチ(当該真空吸引孔間の距離)は、例えば、5mm~30mm程度である。
【0051】
このように、第3実施形態の加飾パネル111の製造方法では、加飾フィルム形成工程において、樹脂材料で形成され、かつ、真空吸引孔を有する治具に賦形フィルム111Sの表面S1の側が接するように真空吸着させた状態でレーザ加工を行う。このため、レーザ加工時における、賦形フィルム111Sの位置ずれを抑制することができ、ひいては、加飾パネル111におけるディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117の位置精度を向上させることができる。さらに、本実施形態の治具の色は、白色または乳白色であるため、レーザ加工時におけるレーザ光を拡散することができる。これにより、治具の損傷を低減することができる。
【0052】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記実施形態では、加飾パネル111の製造方法として、センタークラスタパネルを例に挙げて説明したが、これに限られない。上記実施形態の製造方法は、インストルメントパネル、センターコンソールや、スイッチベース等の車両内装部品に用いられるパネルや、炊飯器、洗濯機、検温モニタ等の各種電化製品の表示パネル等の製造にも適用することができる。
【0054】
上記実施形態の加飾パネル111において、ディスプレイ領域115および/またはシンボルマーク領域117は、可視光線の一部の光を透過する半透明の領域であってもよい。ディスプレイ領域115およびシンボルマーク領域117の透明度は、積層フィルム111Pの基材層L1を構成する材料に光拡散剤等を添加することにより調整することができる。
【0055】
上記実施形態において、基材層L1を構成する材料の荷重たわみ温度は、成形樹脂層L3を構成する材料の荷重たわみ温度以上であることが好ましいとしたが、これに限定されない。すなわち、基材層L1を構成する材料の荷重たわみ温度を、成形樹脂層L3を構成する材料の荷重たわみ温度未満となるよう構成することができる。
【0056】
上記実施形態の加飾パネル111の製造方法において、印刷層L2は、基材層L1の表面S3の一部にのみ積層されていてもよい。例えば、積層フィルムにおいて、ディスプレイ領域115等面積の大きい領域を除く領域に印刷層が積層されていてもよい。また、印刷層L2の色は、黒以外の色であってもよい。例えば、茶色、木目調色等とすることができる。
【0057】
上記実施形態の積層フィルム111Pは、基材層L1および印刷層L2を有する2層構造の積層フィルムであるが、これに限定されない。すなわち、基材層L1の表面S1上に、コーティング層等の他の層を有する積層フィルムであってもよい。他の層としては、例えば、耐候性・耐薬品性・耐衝撃性等を有する層が挙げられる。他の層を構成する形成材料としては、例えば、アクリル樹脂等の樹脂が使用される。
【0058】
上記実施形態の加飾パネル111の製造方法において、加飾フィルム形成工程では、加飾フィルム111Lのシンボルマーク領域117における光透過率を調整してもよい。これにより、意匠領域とその周辺の境界をよりシームレス化し、両者を視覚的に一体化することができ、ひいては、加飾フィルム111Lの意匠性や装飾性を向上させることができる。例えば、シンボルマーク領域117の光透過率を20%程度以下とすることができる。このような光透過率の調整は、特に限定されないが、賦形フィルム111Sの裏面(表面S1と反対側の表面)側において、例えば、パッド印刷、転写印刷、スクリーン印刷等の印刷方法により所定のスモークインキを付与することでできる。
【0059】
上記実施形態の加飾フィルム111Lにおいて、例えば、シンボルマーク領域117に、所定の色彩を付与していてもよい。これにより、加飾フィルムの意匠性や意匠の自由度を向上させることができる。また、視認者が、シンボルマーク領域117等の意匠領域に当該色彩を視認することができ、加飾パネル全体として意匠性や装飾性を向上させることができる。このようにシンボルマーク領域117に所定の色彩を付与する方法としては、特に限定されないが、賦形フィルム111Sの裏面(表面S1と反対側の表面)側において、例えば、パッド印刷、転写印刷、スクリーン印刷等の印刷方法により所定の色彩を付与することができる。
【0060】
上記実施形態の加飾パネルの111の製造方法は、三次元形状の加飾パネル111に限定されず、例えば、二次元形状の加飾パネルの製造に適用することもできる。この場合、積層フィルム111Pを賦形することなく、加飾フィルム形成工程を行う。二次元形状の加飾パネルの例としては、例えば、検温モニタ等の表示パネル等を挙げることができる。
【0061】
上記実施形態において、トリム加工工程S20を行っているが、これに限定されず、トリム加工が不要な場合にはトリム加工を行う必要はない。
【0062】
上記実施形態における各部材の寸法や材料および色は、あくまで一例であり、種々変形可能である。なお、各部材に種々の装飾を施していてもよい。
【0063】
本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、基材層L1、印刷層L2、成形樹脂層L3、上記コーティング層等の他の層を構成する材料に、種々の添加剤を配合することができる。例えば、光透過率や色調を調整するための色素、可塑剤、補強剤、光増感剤、光安定剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤等の添加剤を配合することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:車両 11:インストルメントパネル 105:ディスプレイ 107:スイッチ 110:センタークラスタ 111:加飾パネル 111L:加飾フィルム 111P:積層フィルム 111S:賦形フィルム 113:加飾領域 115:ディスプレイ領域 117:シンボルマーク領域 117a:シンボルマーク領域 E:射出口 F:固定具 H:ヒータ IM:成形金型 L1:基材層 L2:印刷層 L3:成形樹脂層 MR:熱可塑性樹脂 OP:外周部 P1:部分 P2,P3:部分 S10:積層フィルム準備工程 S1:表面(操作面) S20:トリム加工工程 S2:裏面 S30:加飾フィルム形成工程 S3:表面 S40:フィルムインサート成形工程 SM:賦形金型 h:熱
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムインサート成形品の製造方法において、
基材フィルムの一方の表面である第1の表面の少なくとも一部に印刷層が積層された積層フィルムであって、前記成形金型の少なくとも一部の表面形状に対応する形状に賦形された三次元形状を有する積層フィルムを準備する積層フィルム準備工程と、
前記積層フィルムの前記印刷層にレーザ光を照射し、前記印刷層の一部を除去することにより形成される意匠領域を有する加飾フィルムを形成する加飾フィルム形成工程と、
前記加飾フィルムを成形金型に配置し、前記加飾フィルムの前記印刷層側における前記印刷層が除去された部分に溶融した熱可塑性樹脂を射出してフィルムインサート成形品を形成するフィルムインサート成形工程と、を備える、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記基材フィルムの厚さは、前記印刷層の厚さより厚い、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記基材フィルムは、可視光線の全域または一部の光を透過する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程において、前記積層フィルムは、前記積層フィルムを保持する治具に真空吸着された状態でレーザ光を照射され、
前記治具は、多孔質金属材料で形成されている、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程において、前記積層フィルムは、前記積層フィルムを保持する治具に真空吸着された状態でレーザ光を照射され、
前記治具は、樹脂材料で形成された白色または乳白色の治具であって、真空吸引孔を有する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記印刷層の色は、黒色である、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記印刷層は、前記積層フィルムの前記第1の表面の全面に積層されている、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程後において、前記加飾フィルムの前記意匠領域に印刷を施すことにより光透過率を調整する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルムインサート成形品の製造方法において、
前記加飾フィルム形成工程後において、前記加飾フィルムの前記意匠領域に印刷を施すことにより所定の色彩を付与する、
ことを特徴とする、フィルムインサート成形品の製造方法。