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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017270
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】容器および積層シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20240201BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65D77/20 H
B32B27/32 E
B65D77/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119802
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 季和
(72)【発明者】
【氏名】石黒 隆洋
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA07A
3E067BB14A
3E067BB16A
3E067BC07A
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA32
3E067EA35
3E067EB11
3E067EB27
3E067EE48
3E067FA01
3E067FC01
4F100AK04A
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AL05A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA16
4F100GB16
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】樹脂溜まりを覆ったシーラントと容器本体との接合強度を低下させつつ、好適な開封性および密封性を両立させることが可能な容器および積層シートを提供すること。
【解決手段】本発明における容器は、容器本体と接合領域で接合されることによって内部空間を形成する蓋体とを備え、容器本体は、第1層と、第1層に接合され接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、蓋体は、接合領域に面する第3層と、第3層に接合される第4層とを少なくとも含む積層体からなり、第2層が凝集破壊層かつ第3層がポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成される層であり、凝集破壊層の凝集強度は第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱く、第2層を形成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂の比率が10質量%以上69質量%以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体と、
を備える容器であって、
前記容器本体は、第1層と、前記第1層に接合され前記接合領域に面する第2層と、を少なくとも含む積層体からなり、
前記蓋体は、前記接合領域に面する第3層と、前記第3層に接合される第4層と、を少なくとも含む積層体からなり、
前記第2層が凝集破壊層かつ前記第3層がポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成される層であり、
前記凝集破壊層の凝集強度は前記第1層と前記第2層との間および前記第3層と前記第4層との間の層間接合強度よりも弱く、
前記第2層を形成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂の比率が10質量%以上69質量%以下である、
容器。
【請求項2】
前記接合領域の内周側では、少なくとも一部の部分で、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からなり前記凹部側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、
前記第3層の樹脂からなり、前記第1樹脂溜まり部よりも前記凹部側に位置し、前記第1樹脂溜まり部を覆う第2樹脂溜まり部と、が形成される、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記接合領域の外周側では、少なくとも一部の部分で、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からなり前記接合領域の外周側に傾いた瘤状断面の第3樹脂溜まり部と、
前記第3層の樹脂からなり前記第3樹脂溜まり部よりも前記接合領域の外周側に位置する瘤状断面の第4樹脂溜まり部と、が形成される、
請求項1または請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記接合領域の周方向の一部分を除く部分で、前記第3樹脂溜まり部と、前記第4樹脂溜まり部と、が形成される、
請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記第3層を形成するポリプロピレン系樹脂の結晶化温度は、90℃以上140℃以下である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
前記第3層を形成するポリプロピレン系樹脂の融点は、130℃以上175℃以下である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記第3層を形成するポリプロピレン系樹脂は、ブロックポリプロピレンである、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
前記凝集破壊層の厚みは、5μm以上300μm以下である、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記接合領域の外周側に前記第3樹脂溜まり部と、前記第4樹脂溜まり部と、が形成されない部分では、前記第2層が最も圧縮された位置から前記内部空間側に向けて形成された凹曲面状の曲率半径Rは、前記第2層および前記第3層が接触する幅をHとしたとき、0.10H以上1.00H以下であり、
前記接合領域の外周側に前記第3樹脂溜まり部と、前記第4樹脂溜まり部と、が形成されている部分では、前記曲率半径Rは、0.15H以上1.50H以下である、
請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
ポリプロピレン系樹脂を含み、ポリプロピレン系樹脂の比率が10質量%以上69質量%以下の樹脂組成である表面層と、
前記表面層に隣接し、ポリプロピレン系樹脂を含む第1の基材層と、
を含む積層シート。
【請求項11】
前記表面層は、ポリエチレン系樹脂を含む、
請求項10に記載の積層シート。
【請求項12】
前記表面層および前記第1の基材層に加え、ポリプロピレン系樹脂を含む第2の基材層をさらに含む、
請求項10または請求項11に記載の積層シート。
【請求項13】
前記積層シートは、凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含み、前記フランジ部に形成される接合領域で蓋体と接合する容器本体を形成するために用いられる積層シートであって、
前記表面層は、前記蓋体と接合された際に凝集破壊層となる、
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項14】
前記容器本体の積層体は、請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の積層シートであって、
前記蓋体の非接合領域において形成され、前記蓋体に形成された開孔および前記開孔を覆う封止フィルムを含む脱気機構を備えた、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
前記脱気機構は、前記蓋体に形成された非貫通の切り込みを含む、
請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記脱気機構は、前記蓋体に接して配置される発熱要素を含む、
請求項14または請求項15に記載の容器。
【請求項17】
前記蓋体は、少なくとも2つの部分を含み、
前記脱気機構は、前記2つの部分を互いに接合するシール部に形成される未接合部または切り込みを含む、
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の容器。
【請求項18】
前記接合領域には、前記内部空間の内圧が上昇したときに前記内部空間を外部空間に連通させることが可能な通蒸部が形成され、
前記通蒸部は前記接合領域の内周側に前記第1樹脂溜まり部と、前記第2樹脂溜まり部と、が形成されず、前記接合領域の外周側に前記第3樹脂溜まり部と、前記第4樹脂溜まり部と、が形成されない、
請求項2から請求項9のいずれか1項若しくは請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器および積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジを用いて容器に包装された冷蔵食品又は冷凍食品を電子レンジでそのまま加熱して調理することが行われている。このような容器本体および蓋体からなる食品などの容器において、容器の密封性と、開封性、すなわち開封時に蓋体を容器本体から容易に剥離できることとを両立することは容易ではない。容器本体と蓋体との間の接合強度を強くすれば密封性は向上するが開封性は低下し、逆に接合強度を弱くすれば開封性が向上する代わりに密封性が低下するためである。このような課題を解決するための技術は、これまでに種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器本体のフランジ部と蓋体とをヒートシールする際に、接合領域の内周縁近傍で容器本体の表面層および蓋体のシール層に瘤状の樹脂溜まりを形成する技術が記載されている。このような樹脂溜まりを形成し、かつ容器本体の表面層を凝集破壊層とすることによって、密封性と開封性とを両立した容器を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-102081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レンジアップ用途や、レトルト殺菌を行う容器には、加熱する際に内容物が高温となることから、ポリエチレン(PE)系樹脂よりも耐熱性に優れた無延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリプロピレン系樹脂をシーラントに用いたフィルムを蓋体として使用することが好ましい。しかし、ポリプロピレン系樹脂を用いて特許文献1に記載の瘤状の樹脂溜まりを形成すると、シーラントが樹脂溜まりを完全に覆ってしまい、剥離の進行を阻害することから開封感の悪化が確認される。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂溜まりを覆ったシーラントと容器本体との接合強度を低下させつつ、好適な開封性および密封性を両立させることが可能な容器および積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]凹部および上記凹部の周縁に沿って形成され上記周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、上記フランジ部に形成される接合領域で上記容器本体に接合されることによって上記凹部との間に内部空間を形成する蓋体と、を備える容器であって、上記容器本体は、第1層と、第1層に接合され上記接合領域に面する第2層と、を少なくとも含む積層体からなり、上記蓋体は、上記接合領域に面する第3層と、第3層に接合される第4層と、を少なくとも含む積層体からなり、上記第2層が凝集破壊層かつ上記第3層がポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成される層であり、上記凝集破壊層の凝集強度は上記第1層と上記第2層との間および上記第3層と上記第4層との間の層間接合強度よりも弱く、上記第2層を形成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂の比率が10質量%以上69質量%以下である、容器。
[2]上記接合領域の内周側では、少なくとも一部の部分で、上記第1層および上記第2層を形成する樹脂からなり上記凹部側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、上記第3層の樹脂からなり上記第1樹脂溜まり部よりも上記凹部側に位置し、上記第1樹脂溜まり部を覆う第2樹脂溜まり部と、が形成される、[1]に記載の容器。
[3]上記接合領域の外周側では、少なくとも一部の部分で、上記第1層および上記第2層を形成する樹脂からなり上記接合領域の外周側に傾いた瘤状断面の第3樹脂溜まり部と、上記第3層の樹脂からなり上記第3樹脂溜まり部よりも上記接合領域の外周側に位置する瘤状断面の第4樹脂溜まり部と、が形成される、[1]または[2]に記載の容器。
[4]上記接合領域の周方向の一部分を除く部分で、上記第3樹脂溜まり部と、上記第4樹脂溜まり部と、が形成される、[3]に記載の容器。
[5]上記第3層を形成するポリプロピレン系樹脂の結晶化温度は、90℃以上140℃以下である、[1]から[4]のいずれか1項に記載の容器。
[6]上記第3層を形成するポリプロピレン系樹脂の融点は、130℃以上175℃以下である、[1]から[5]のいずれか1項に記載の容器。
[7]上記第3層を形成するポリプロピレン系樹脂は、ブロックポリプロピレンである、[1]から[6]のいずれか1項に記載の容器。
[8]上記凝集破壊層の厚みは、5μm以上300μm以下である、[1]から[7]のいずれか1項に記載の容器。
[9]上記接合領域の外周側に上記第3樹脂溜まり部と、上記第4樹脂溜まり部と、が形成されない部分では、上記第2層が最も圧縮された位置から上記内部空間側に向けて形成された凹曲面状の曲率半径Rは、前記第2層および前記第3層が接触する幅をHとしたとき、0.10H以上1.00H以下であり、上記接合領域の外周側に上記第3樹脂溜まり部と、上記第4樹脂溜まり部と、が形成されている部分では、上記曲率半径Rは、0.15H以上1.50H以下である、[3]から[8]のいずれか1項に記載の容器。
[10]ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を含み、ポリプロピレン系樹脂の比率が10質量%以上69質量%以下の樹脂組成であるとともに凝集破壊層である表面層と、上記表面層に隣接し、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を含む第1の基材層と、を含む積層シート。
[11]上記表面層は、ポリエチレン系樹脂を含む、[10]に記載の積層シート。
[12]上記表面層および上記第1の基材層に加え、ポリプロピレン系樹脂を含む第2の基材層をさらに含む、[10]または[11]に記載の積層シート。
[13]上記積層シートは、凹部および凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含み、上記フランジ部に形成される接合領域で蓋体と接合する
容器本体を形成するために用いられる積層シートであって、上記表面層は、上記蓋体と接合された際に凝集破壊層となる、[10]から[12]のいずれか1項に記載の積層シート。
[14]上記容器本体の積層体は、[10]から[13]のいずれか1項に記載の積層シートであって、上記蓋体の非接合領域において形成され、上記蓋体に形成された開孔および上記開孔を覆う封止フィルムを含む脱気機構を備えた、[1]から[9]のいずれか1項に記載の容器。
[15]上記脱気機構は、上記蓋体に形成された非貫通の切り込みを含む、[14]に記載の容器。
[16]上記脱気機構は、上記蓋体に接して配置される発熱要素を含む、[14]または[15]に記載の容器。
[17]上記蓋体は、少なくとも2つの部分を含み、上記脱気機構は、上記2つの部分を互いに接合するシール部に形成される未接合部または切り込みを含む、[14]から[16]のいずれか1項に記載の容器。
[18]上記接合領域には、上記内部空間の内圧が上昇したときに上記内部空間を外部空間に連通させることが可能な通蒸部が形成され、上記通蒸部は上記接合領域の内周側に上記第1樹脂溜まり部と、上記第2樹脂溜まり部と、が形成されず、上記接合領域の外周側に上記第3樹脂溜まり部と、上記第4樹脂溜まり部と、が形成されない、[2]から[9]のいずれか1項若しくは[14]から[17]のいずれか1項に記載の容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明による容器および積層シートによれば、表面層を形成する樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂の比率が10質量%以上69質量%以下であることによって、樹脂溜まりを覆ったシーラントと容器本体との接合強度を低下させつつ、好適な開封性および密封性を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る容器の斜視図である。
図2図1に示す容器の平面図である。
図3図1に示す容器の部分断面図である。
図4】従来例に係る容器の部分断面図である。
図5図1に示す容器の部分断面における樹脂溜まり部の形成方法を示す図である。
図6図1に示す容器の部分断面図である。
図7図1に示す容器の部分断面における樹脂溜まり部の形成方法を示す図である。
図8】第3層のポリプロピレン系樹脂層を形成する樹脂組成物のDSCの測定結果を示すグラフである。
図9】第3層のポリプロピレン系樹脂層を形成する樹脂組成物のDSCの測定結果を示すグラフである。
図10A】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第1の例を示す図である。
図10B】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第1の例を示す図である。
図11A】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第2の例を示す図である。
図11B】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第2の例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第2の例を示す図である。
図13】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第3の例を示す図である。
図14A】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第3の例を示す図である。
図14B】本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第3の例を示す図である。
図15】積層体の第1の構成例を示す模式的な断面図である。
図16】積層体の第2の構成例を示す模式的な断面図である。
図17】積層体の第3の構成例を示す模式的な断面図である。
図18】積層体の第3の構成例の他の例を示す模式的な断面図である。
図19】第3の構成例に係る積層体の製造工程を示す図である。
図20】本発明の実施例に係るシール強度およびパンク圧強度の測定に用いられた容器の平面図である。
図21】パンク圧強度とシール温度との関係を示すグラフである。
図22】シール圧力240kgfでヒートシールした初期開封強度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
なお、本明細書において、積層体の各層を形成する樹脂組成物の主成分は、その層を形成している樹脂組成物の中で最も含有率が多い樹脂成分を意味する。従って、樹脂組成物は主成分に加えて他の成分を含んでもよい。主成分は、例えばIR法によって確認することができる。本明細書において、積層体の各層を形成する樹脂組成物の成分の含有率は、別途記載がない限りその層を形成する樹脂組成物全体に対する質量%で表記する。
【0012】
(容器の全体構成および製造方法)
図1は、本発明の一実施形態に係る容器100の斜視図である。図1(A)に示されるように、容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、略円形の平面形状を有し、カップ状の凹部111と、凹部111の周縁に沿って形成され、周縁から外方に延出するフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される環状の接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。蓋体130は、容器本体110のフランジ部112の周縁から延出して形成されたタブ130Aを含む。
【0013】
図2は、図1に示す容器100の平面図である。図示されるように、環状の接合領域140の内周側には内側樹脂溜まり部120が形成され、接合領域140の外周側には外側樹脂溜まり部125が形成される。ここで、外側樹脂溜まり部125は接合領域140の周方向の一部分、具体的には開封部141には形成されておらず、全体としてC字状になっている。このように、内周側に内側樹脂溜まり部120が形成されるが、外周側では少なくとも周方向の一部の区間で外側樹脂溜まり部125が形成されないことによって、容器100の密封性を高めるとともに、図2(B)に示されるように、開封時には開封部141で接合領域140における蓋材の開封がしやすくなる。また、接合領域140には、内部空間SPの内圧が上昇したときに、内部空間SPを外部空間に連通させることが可能な図示されない通蒸部が形成されてもよい。通蒸部は、接合領域140の内周側に内側樹脂溜まり部120が形成されず、接合領域140の外周側にも外側樹脂溜まり部125が形成されない。
【0014】
図3は、図1に示す容器100の部分断面図である。図3図2に示すIII-III線に沿った、開封部141の断面図であり、(A)は開封部141が破壊される前の状態を、(B)は開封部141が破壊された後の状態を示す。図示された例において、容器本体110は、基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cを含む積層体114を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層114Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面下層114Bは、基材層114Aと表面層114Cとの間にあり、それぞれの層に接合されている。表面層114Cは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。
【0015】
ここで、積層体114の基材層114Aおよび表面下層114Bは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層114Aおよび表面下層114Bとの間では、例えば剛性が異なる。基材層114Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0016】
一方、積層体114の表面層114Cは、加熱後の外観を改善する観点からはホモポリプロピレン(HPP)を含有することが好ましいが、HPP以外にも、メタロセン触媒系ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレンなどを含んでもよい。表面層114Cに含まれるポリプロピレン系樹脂の比率は、10質量%以上69質量%以下であることが好ましく、40質量%以上68質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。なお、表面層114Cの厚みは、樹脂溜まりの形成のため、5μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0017】
なお、図示された例において積層体114は基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cの3つの層を含むが、他の例において積層体114は追加の層を含んでもよい。例えば、積層体114は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の基材層と、基材層とを接着する図示しない接着層とを含んでもよい。接着層は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。また、積層体114は、酸素などを遮断するガスバリア層を含んでもよい。ガスバリア層は、酸素バリア層であってもよい。酸素バリア層は、酸素バリア性を有する層であり、容器として用いた場合に内容物の酸化劣化を抑制することができる。酸素バリア層に用いられる材料としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、MXナイロン(MXNy)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、酸素バリア層はコーティング法により形成することも可能であり、この場合に使用できる材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミ、及び窒化ケイ素等の無機系材料、ポリビニルアルコール(PVA)等の有機系材料、並びにシリカ/PVA等の有機無機ハイブリッド材料等からなる群から選択されるコート材料等が挙げられる。
【0018】
蓋体130は、外層131Aおよびシール層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。外層131Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。一方、シール層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に向けられる側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。シール層131Bはポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成される層である。ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度は、90℃以上140℃以下であるか、ポリプロピレン系樹脂の融点は、130℃以上175℃以下である。例えば、ブロックポリプロピレン(BPP)を用いることが好ましいが、ランダムポリプロピレン(RPP)を用いてもよい。容器100において、外層131Aとシール層131Bとは互いに接合されている。なお、他の例では、積層体131にも追加の層が含まれてもよい。
【0019】
蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂組成物の主成分であるポリプロピレンの結晶化温度は、易剥離性と樹脂溜まり形成の両立のため90℃以上140℃以下であることが好ましく、易開封性と好適な樹脂溜まり形成の両立の観点から、95℃以上135℃以下であることがより好ましく、104℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。さらに、前記ポリプロピレンの融点は、易剥離性と樹脂溜まり形成の両立のため130℃以上175℃以下であることが好ましく、易開封性と樹脂溜まり形成の両立の観点から、135℃以上172℃以下であることがより好ましく、144℃以上170℃以下であることがさらに好ましい。シール層131Bに樹脂組成物の結晶化温度もしくは融点が比較的高いポリプロピレンを用いることによって、樹脂溜まりを覆ったシーラントと容器本体との接合強度を抑制し、蓋体130を容器本体110から剥がし易くすることができる。
【0020】
ここで、容器100において、積層体114の表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層体114および積層体131を構成する表面層114C以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層114Cを第2層、シール層131Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第2層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第3層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。また、蓋体130のシール層131Bも凝集可能な層であってもよく、この場合、シール層131Bの凝集強度は容器本体110の表面層114C凝集強度と同等もしくはそれより弱くてもよい。このように、表面層114Cを凝集破壊層とすることによって容器100を容易に開封することができる。
さらに上述したように表面層114Cのポリプロピレン系樹脂として用いるポリプロピレンを選定することによって、容器100を容易に開封することができる。なお、本明細書において、凝集強度は、積層体114,131の各層を構成する樹脂を結合させている分子間力(凝集力)によって発揮される強度を意味する。凝集破壊層である表面層114Cの凝集強度が、表面下層114Bと表面層114Cとの間およびシール層131Bと外層131Aとの間の層間接合強度よりも弱いことは、外周側から、容器本体110と蓋体130を引きはがすと凝集破壊により開封可能であることにより確認できる。
【0021】
さらに、図3に示されるように、接合領域140の凹部111側の端縁部に、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が形成される。第1樹脂溜まり部121は、積層体114の表面下層114Bおよび表面層114Cを形成する樹脂からなる瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部122は、蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部121よりも凹部111側に位置し、第1樹脂溜まり部121を覆う。図示されているように、表面層114Cは、第1樹脂溜まり部121の表面に沿って、かつ第1樹脂溜まり部121と第2樹脂溜まり部122との隙間を通るように形成される。以下の説明では、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を総称して樹脂溜まり部120ともいう。
【0022】
次に、容器100の開封動作について説明する。ユーザーは、フランジ部112よりも外側に延出した蓋体130のタブ130Aを摘持し、ここから図3(A)に示すように蓋体130を引き剥がすことによって容器100の開封を開始することができる。上述のように、表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と表面層114Cとの間の接合強度、積層体114および積層体131の表面層114C以外の各層の凝集強度、ならびに積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。従って、ユーザーが蓋体130を引き剥がすと、接合領域140で蓋体130に引っ張られた表面層114Cが凝集破壊される。これによって、表面層114Cの一部が蓋体130とともに引き剥がされ、表面層114Cの残りの部分は表面下層114B側に残る。さらにユーザーが蓋体130を引き剥がすと、図3(B)に示すように、樹脂溜まり部120で表面層114Cの凝集破壊が途切れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、樹脂溜まり部120において、表面層114Cの凝集破壊が、第1樹脂溜まり部121の形状に沿って進行するためである。第1樹脂溜まり部121の表面と第2樹脂溜まり部122の表面とが互いに離反する接合領域140の端縁140E付近で表面層114Cは両側から引っ張られて破断し、第2樹脂溜まり部122とともに蓋体130側から離れる。また、シール層131Bの凝集強度が表面層114Cの凝集強度と同等もしくはそれより弱い場合は、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が破断し、蓋体130が引き剥がされる。
【0023】
ここで、図4を用いて、従来例に係る容器について説明する。図4は、従来例に係る容器の部分断面図であり、(A)は開封部が破壊される前の状態を、(B)は開封部を破壊するときの状態を示す。図示された例において、容器本体910は、基材層914A、表面下層914Bおよび表面層914Cを含む積層体914を、真空成形または圧空成形などによって図示しない凹部およびフランジ部を含む形状に成形したものである。基材層914Aは、容器本体910の外側に位置し、容器本体910の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面下層914Bは、基材層914Aと表面層914Cとの間にあり、それぞれの層に接合されている。表面層914Cは、容器本体910の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部912に形成される接合領域940に面する。また、蓋体930は、外層931Aおよびシール層931Bを含むフィルム状の積層体931からなる。外層931Aは、蓋体930の表側、すなわち容器本体910に面しない側に位置し、蓋体930に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。さらに、接合領域940の凹部側の端縁部に、第1樹脂溜まり部921および第2樹脂溜まり部922が形成され、第2樹脂溜まり部922は第1樹脂溜まり部921を覆っている。第1樹脂溜まり部921および第2樹脂溜まり部922を総称して樹脂溜まり部920ともいう。
【0024】
従来例に係る容器では、表面層914Cは、ポリプロピレン系樹脂を含み、表面層914Cに含まれるポリプロピレン系樹脂の比率は、70質量%以上である。従来例に係る容器は、図4(B)に示すように、ユーザーが蓋体930を引き剥がすと、接合領域940で蓋体930に引っ張られた表面層914Cが凝集破壊されるものの、樹脂溜まり部920で表面層914Cとシール層931Bとの剥離ができず、剥離の進行を阻害する。そのため、容器本体910から蓋体930を引き剥がす際の開封感が良好ではない。
【0025】
従来例に係る容器に対して、図3を用いて説明した本実施形態に係る容器100は、上記のように樹脂溜まり部120で表面層114Cとシール層131Bとの剥離ができ、容器本体110から第2樹脂溜まり部122とともに蓋体130を引き剥がすことができる。表面層114Cに含まれるポリプロピレン系樹脂の比率が高い場合、表面層114Cとシール層131Bとの接合強度が高いことから、本実施形態では表面層114Cに含まれるポリプロピレン系樹脂の比率を低下させることによって、表面層114Cとシール層131Bとの接合強度が低くなる。併せて、蓋体130のシール層131Bに樹脂組成物の結晶化温度もしくは融点が比較的高いポリプロピレンを用いることによって、樹脂溜まりを覆ったシーラントと容器本体との接合強度を抑制し、蓋体130を容器本体110から剥がし易くすることができる。
【0026】
このように、積層体114の表面層114Cの凝集強度を弱め、かつ樹脂溜まり部120で表面層114Cとシール層131Bの接合強度を抑制すれば、開封時にユーザーが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態で、内部空間SPの内圧が向上した際、接合領域140では第1樹脂溜まり部121の凹部111側の根元付近に応力が集中するため、剥離途中で、凝集破壊しない表面下層114Bが形成する樹脂瘤によって剥離が阻まれ、高い内圧に対抗することが可能である。このようにして、本実施形態に係る容器100では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。
【0027】
図5は、図1に示す容器100の部分断面(図2のIII-III線断面)における樹脂溜まり部120の形成方法を示す図である。図5に示されるように、容器100の製造工程は、環状シール盤601を用いてヒートシールで蓋体130と容器本体110との間を接合する工程を含む。ここで、環状シール盤601は、容器本体110のフランジ部112に形成される接合領域140の内周側、すなわち凹部111側の端縁部に面する内側傾斜面602と、内側傾斜面602から外側に向かって広がる外側傾斜面603とを含む。内側傾斜面602は、凸曲面状であってもよい。
【0028】
環状シール盤601の内側傾斜面602の曲率半径は樹脂溜まり形成のためには開封部141に対応する部分では0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましい。図5に示すHは、ヒートシールによって表面層114Cおよびシール層131Bが接触する幅である。このとき、接合領域140の内周側にのみ樹脂溜まり部が形成されている区間でヒートシールされた容器の、表面層114Cが最も圧縮された位置から内部空間SP側に向けて形成された凹曲面状の曲率半径Rは、0.10H以上1.00H以下であることが好ましく、より好ましくは0.12H以上0.85H以下、さらに好ましくは0.15H以上0.70H以下である。
【0029】
上記の製造工程では、図5および後に説明する図7の場合、図中の上側から環状シール盤601が下降してきたときに、内側傾斜面602と外側傾斜面603と接する部分が他の部分よりも先に蓋体130に当接する。なお、環状シール盤601が蓋体130に当接する順番は、上記に限らず、環状シール盤601の形状によって異なる。
内側傾斜面602および外側傾斜面603が当接した部分では蓋体130および容器本体110を形成する樹脂に環状シール盤601から熱が加えられ、ヒートシールによって蓋体130と容器本体110との間が接合される。このとき、接合領域140の内周側の端縁部では、加えられた熱によって溶融した容器本体110の表面下層114Bおよび表面層114C、ならびに蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂が、内側傾斜面602によって凹部111側に押し出されて第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を形成する。
【0030】
シール層131Bがブロックポリプロピレン(BPP)等のポリプロピレン成分を主成分とする場合、比較的高温度のシール温度でないと樹脂溜まりが形成されない。そのため、上記のように環状シール盤601の形状を工夫することによって。より低温で樹脂溜まりを形成可能にすることが重要となる。環状シール盤601に接する樹脂にPET系樹脂を選定する場合、蓋材の荒れを防ぐ観点から、シール温度の上限は230℃程度である。実生産では、外気温の変化や、内容物がフランジに夾雑する現象が起き、シール温度が設定よりも低くなる現象が生じる可能性が考えられる。そのため、シール上限でしか樹脂溜まりが形成されない状態であると、生産を続けていく中で、樹脂溜まりが形成されない容器が生じてしまう可能性が高い。環状シール盤の形状を工夫することによって樹脂溜まりを低温から形成できるようにすることで、実生産時にシール条件のぶれが生じても、安定して好適な開封性および密封性を両立させた容器を製造することができる。
【0031】
図6は、図1に示す容器100のVI-VI線に沿った部分断面図である。図示されるように、環状の接合領域140の内周側には上述した内側樹脂溜まり部120が形成されるとともに、接合領域140の外周側には外側樹脂溜まり部125が形成される。外側樹脂溜まり部125は、第3樹脂溜まり部123および第4樹脂溜まり部124を含む。第3樹脂溜まり部123は、積層体114の表面下層114Bおよび表面層114Cを形成する樹脂からなる瘤状断面を有する。第4樹脂溜まり部124は、蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂からなり、第3樹脂溜まり部123よりも接合領域140の外周側に位置する瘤状断面を有する。内側樹脂溜まり部120が形成されることによって、内部空間SPの内圧に対抗することができ、外側樹脂溜まり部125が形成されることによって、容器100の外側からの開封しようとする力に対抗することができる。そのため、図示された、開封部141以外の部分では容器100を開封し難いのに対し、開封部141では外側樹脂溜まり部125が形成されないため、開封が容易である。
【0032】
図7は、図1に示す容器100の部分断面(図2のVI-VI線断面)における樹脂溜まり部120,125の形成方法を示す図である。図7に示されるように、容器100の製造工程は、環状シール盤701を用いてヒートシールで蓋体130と容器本体110との間を接合する工程を含む。ここで、環状シール盤701は、容器本体110のフランジ部112に形成される接合領域140の内周側、すなわち凹部111側の端縁部に面する内側傾斜面702と、内側傾斜面702から外側に向かって広がる外側傾斜面703とを含む。図7に示すHは、ヒートシールによって表面層114Cおよびシール層131Bが接触する幅である。このとき、表面層114Cが最も圧縮された位置から内部空間SP側に向けて形成された凹曲面状の曲率半径Rは、0.15H以上1.50H以下であることが好ましく、より好ましくは0.20H以上1.35H以下、さらに好ましくは0.25H以上1.20H以下である。
【0033】
上記の製造工程では、図中の上側から環状シール盤701が下降してきたときに蓋体130に当接される内側傾斜面702及び外側傾斜面703の圧力は、環状シール盤601の内側傾斜面602及び外側傾斜面603の圧力よりも大きくなる。そのため、ヒートシールによって、溶融した容器本体110の表面下層114Bおよび表面層114C、ならびに蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂が、接合領域140の内周側と外周側とに押し出されて、内側樹脂溜まり部120と外側樹脂溜まり部125とを形成する。
【0034】
図8および9は、ポリプロピレン系樹脂層を形成する樹脂組成物の示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)の測定結果を示すグラフである。DSC曲線のピークについて、JIS K7121では「曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分」と定義されており、ベースラインは「試験片に転移および反応を生じない温度領域の(中略)DSC曲線」と定義されている。つまり、DSC曲線が一旦ベースラインに達した後、転移または反応が生じ始めてから、生じなくなるまでの温度領域がピークである。パーキンエルマージャパン社製の「Diamond DSC」を使用し、樹脂組成物の試験片を0℃で5分間等温保持した後で、10.00℃/分で220℃まで昇温(1st Run)させたときのDSC曲線から、上述したようなピークの定義に従って、ピーク位置の融解温度を測定した結果が図9である。1st Runの後さらに、220℃で5分間等温保持した後、10.00℃分で220℃から0.00℃に冷却させた時のDSC曲線から、上述したようなピークの定義に従って、ピーク位置の結晶化温度を測定した結果が図8である。
【0035】
上記に示すように、DSC曲線の結晶化温度のピークが90℃以上140℃以下に存在するポリプロピレン系樹脂もしくは1st Runのピークが130℃以上175℃以下に存在するポリプロピレン系樹脂を凝集破壊層に接着する層に用いる場合、好適な開封性および密封性を両立させることが可能となる。
【0036】
(脱気機構の構成)
図10Aおよび図10Bは、本発明の一実施形態で容器100の蓋体130に設けられる脱気機構150の第1の例を示す図である。図1に示す容器100における脱気機構150は、この第1の例に係る脱気機構150Aである。脱気機構150Aは、蓋体130に形成された開孔151と、開孔151を覆う封止フィルム152とを含む。図10Aの例では封止フィルム152が開孔151の外側に熱溶着または接着剤で接着され、図10Bの例では封止フィルム152が開孔151の内部空間SP側に熱溶着または接着剤で接着される。例えば封止フィルム152を蓋体130よりも低強度のフィルムで形成することによって、内容物の加熱によって発生した水蒸気のために内部空間SPの圧力が上昇した場合には、封止フィルム152を蓋体130の他の部分や接合領域140が破壊されるよりも先に破断させ、安定的に水蒸気を排出することができる。
【0037】
図11A図11Bおよび図12は、本発明の一実施形態で容器100の蓋体130に設けられる脱気機構150の第2の例を示す図である。図示された例において、脱気機構150Bは、蓋体130に形成された非貫通の切り込み153を含む。図11Aの例では切り込み153が外側から形成され、図11Bの例では切り込み153が内部空間SP側から形成される。この場合、内容物の加熱によって発生した水蒸気のために内部空間SPの圧力が上昇すると、切り込み153のために蓋体130の強度が低下している部分を蓋体130の他の部分や接合領域140が破壊されるよりも先に破断させ、安定的に水蒸気を排出することができる。あるいは、図12に示されるように内部空間SP側からの切り込み153を接合領域140に近い位置に形成し、内部空間SPの圧力が上昇した場合には切り込み153から蓋体130を形成する積層体131の層間接着(例えば、図3の例における積層体131の外層131Aとシール層131Bとの間の接着)を破壊させて、接合領域140を越えた蓋体130の端部から水蒸気を排出してもよい。
【0038】
図13図14Aおよび図14Bは、本発明の一実施形態で容器100の蓋体130に設けられる脱気機構150の第3の例を示す図である。図示された例では、蓋体130が、2つの部分130B,130Cからなる。これらの部分はヒートシール、超音波シールまたは接着剤を用いたシール部132によって互いに接合されるが、脱気機構150Cの部分ではシール部132に図14Aのような未接合部154、または図14Bのような切り込み155が設けられる。いずれの場合も、脱気機構150Cでは未接合部154または切り込み155のためにシール部132の接合幅が狭くなっている。従って、内容物の加熱によって発生した水蒸気のために内部空間SPの圧力が上昇すると、未接合部154または切り込み155のためにシール部132の接合幅が狭くなっている脱気機構150Cの部分を蓋体130の他の部分や接合領域140が破壊されるよりも先に破断させ、安定的に水蒸気を排出することができる。
【0039】
他の例として、脱気機構150は、蓋体130に接して配置される発熱要素を含んでもよい。発熱要素は、例えば電子レンジのマイクロ波が集中して発熱する要素であり、例えば蓋体130の少なくとも一部に接合される金属箔や金属蒸着部を有するフィルムなどの部材であってもよいし、蓋体130に塗布される例えば金属粉を含有する塗料であってもよいし、蓋体130に金属蒸着を行ったものでもよい。このような発熱要素としては、例えばアルミニウム、ニッケル、クロムを用いることができる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る容器100は、内部での水蒸気の発生に耐えうる程度のパンク圧強度を有する。このような容器100において、上記のような脱気機構150を設けることによって、容器100の内部に水蒸気を充満させた状態で高圧を維持し、調理の効率を向上させることができる。例えば、容器100の圧力を0.0196MPaにした場合、水蒸気が充満した容器100の内部の温度は100℃ではなく102.5℃まで上昇するため、加熱時間を約17%短縮することができる。
【0041】
(積層体の構成例)
次に、本発明の一実施形態において容器本体110を形成する積層体の構成例について説明する。以下の説明において、積層体の各層を形成する樹脂組成物の主成分は、その層を形成している樹脂組成物の中で最も含有率が多い樹脂成分を意味する。従って、樹脂組成物は主成分に加えて他の成分を含んでもよい。主成分は、例えばIR法によって確認することができる。以下の説明において、積層体の各層を形成する樹脂組成物の成分の含有率は、別途記載がない限りその層を形成する樹脂組成物全体に対する質量%で表記する。
【0042】
図15は、本発明の一実施形態に係る積層体10の構造を示す模式的な断面図である。図15に示されるように、積層体10は、表面層11と、表面下層12,15と、基材層13,14とを有する。積層体10を図3に示された積層体114に対応付けると、表面層11は表面層114Cに、表面下層12,15は表面下層114Bに、基材層13,14は基材層114Aに、それぞれ対応する。以下、各層の構成について説明する。なお、積層体10は、後述するような容器100を構成するのに適した厚み、具体的には例えば0.3mm以上、1.2mm以下の厚みで形成されるが、この例には限定されない。
【0043】
表面層11は、積層体10が後述する容器100に成形されたときに、ヒートシールなどによって蓋体130に接合される層である。具体的には、表面層11は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物で形成される。表面層11を形成する樹脂組成物(以下、第1の樹脂組成物ともいう)は、加熱後の外観を改善する観点からはホモポリプロピレン(HPP)を含有することが好ましいが、HPP以外にも、メタロセン触媒系ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレンなどを含んでもよい。表面層114Cに含まれるポリプロピレン系樹脂の比率は、10質量%以上69質量%以下であることが好ましい。
【0044】
基材層13,14は、表面下層12に対して表面層11とは反対側に積層され、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層13,14には、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。基材層13,14の間に、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのエチレンビニルアルコール樹脂を含む酸素バリア層が追加されてもよい。酸素バリア層は、図3に示す積層体114に含まれるものと同様であるため、その詳細な説明については省略する。
【0045】
ポリプロピレン系樹脂は少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。バイオポリプロピレンは、例えば、非可食植物であるソルゴーの糖蜜を微生物で発酵させて中間素材を生成し、脱水することにより得ることができる。また、ポリエチレン系樹脂は、少なくとも一部にバイオマス由来のポリエチレンを含有してもよい。バイオマス由来のポリエチレンの材料としては、例えば、トウモロコシ、キャッサバ、サトウキビ、さとう大根、パームヤシ、大豆、ヒマ等があげられる。また、バイオマス由来のポリエチレンは、発酵、菌発酵、化学変化、培養抽出など、どのような方法で製造されたものであってもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、バイオマス由来の低密度ポリエチレンであってもよい。また、ポリエチレン系樹脂として、化石燃料由来のポリエチレン系樹脂と、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂とを併用してもよい。
このようなバイオマス由来の樹脂については、以下に説明する積層体の第2の構成例における第1の基材層22,25、第2の基材層23,24、積層体の第3の構成例における第1の基材層31および第2の基材層32,33においても同様である。
【0046】
なお、以上で説明した積層体10において、表面層11および表面下層12以外の層構成は任意であり、例えば必要とされる剛性やバリア性に応じて追加の層が含まれてもよく、またいずれかの層が省略されてもよい。
【0047】
図16は、積層体の第2の構成例を示す模式的な断面図である。図示された例において、積層体20は、表面層21と、第1の基材層22,25と、第2の基材層23,24と、バリア層26と、接着層27とを有する。積層体20では、表面層21、第1の基材層22(表面下層)、第2の基材層23、接着層27、バリア層26、接着層27、第2の基材層24、第1の基材層25がこの順で積層されている。積層体20では、例えば必要とされる剛性やバリア性に応じて追加の層が含まれてもよく、またいずれかの層が省略されてもよい。例えば、他の例では、上記の第1の基材層22,25または第2の基材層23,24のいずれかが省略され、表面層と、単一の基材層と、接着層と、バリア層と、接着層と、単一の基材層とがこの順で積層されてもよい。また、さらに他の例では、第1の基材層22,25と第2の基材層23,24とが同じ樹脂組成で形成されてもよい。積層体20は、容器100を構成するのに適した厚み、具体的には例えば0.2mm以上、1.4mm以下の厚みで形成されるが、この例には限定されない。積層体20を図3に示された積層体114に対応付けると、表面層21は表面層114Cに、第1の基材層22は表面下層114Bに、第2の基材層23から第1の基材層25までの層は基材層114Aに、それぞれ対応する。以下、各層の構成について説明する。
【0048】
表面層21は、加熱後の外観を改善する観点からはホモポリプロピレン(HPP)を含有することが好ましいが、HPP以外にも、メタロセン触媒系ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレンなどを含んでもよい。表面層21に含まれるポリプロピレン系樹脂の比率は、10質量%以上69質量%以下であることが好ましい。
【0049】
また、表面層21を形成するポリオレフィン系樹脂は、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などを含んでもよい。限定的でない例として、容器100の開封時に表面層21が破断される場合、表面層21の厚みを5μm以上300μm以下にすることが好ましく、10μm以上50μm以下にすることがより好ましい。
【0050】
第1の基材層22,25は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物で形成される。ポリプロピレン系樹脂としては、例えばホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)が使用でき、ホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)であることが好ましく、用途に応じこれらのいずれか一種、または二種以上を併用することができる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用でき、高密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンであることが好ましく、用途に応じこれらのいずれか一種、または二種以上を併用することができる。
【0051】
上記のような第1の基材層22,25のそれぞれにおいて、含有されるポリエチレン系樹脂の少なくとも一部は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂(バイオポリエチレン)であってもよい。積層体20の機能性の観点から、バイオポリエチレンの配合量は、積層体20全体に対して例えば70質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。一方、環境負荷を実効的に軽減する観点から、バイオポリエチレンの配合量は、積層体20全体に対して0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上である。
【0052】
上記のような第2の基材層23,24は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の他、各種ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの混合物などを含有してもよい。第2の基材層23,24には、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0053】
バリア層26は、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのエチレンビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、またはポリアクリロニトリルなどを含む酸素バリア層である。酸素バリア層の材料は、容器本体110の積層体114に酸素バリア層が含まれる場合と同様であってもよい。バリア層26の厚みは、例えば積層体20全体の0.1%以上15%以下である。接着層27は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。接着層27の厚みは、例えばそれぞれ積層体10全体の0.1%以上5%以下である。
【0054】
図17は、積層体の第3の構成例を示す模式的な断面図である。図示された例において、積層体30は、第1の基材層31と、第1の基材層31の両側にそれぞれ積層される第2の基材層32,33とを含む。積層体30を図3に示された積層体114に対応付けると、第2の基材層32は表面層114Cに、第1の基材層31および第2の基材層33は基材層114Aに、それぞれ対応する。以下、各層の構成について説明する。
【0055】
第1の基材層31は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを混合した樹脂組成物を主成分とする。ポリプロピレン系樹脂は、少なくともプロピレンを含む重合体であればよい。プロピレンを含む重合体としては、例えば、ホモポリプロピレン、およびプロピレンとオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンとオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよいし、これらの混合物であってもよい。耐熱性および硬度の観点から、ポリプロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレンが好ましい。
【0056】
一方、第1の基材層31に含有されるポリエチレン系樹脂は、少なくともエチレンを含む重合体であればよい。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン系樹脂、特に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0057】
第2の基材層32,33は、ポリプロピレン系樹脂を含有する。ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。第2の基材層32,33は、加熱後の外観を改善する観点からはホモポリプロピレン(HPP)を含有することが好ましいが、HPP以外にも、メタロセン触媒系ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレンなどを含んでもよい。第2の基材層32,33に含まれるポリプロピレン系樹脂の比率は、10質量%以上69質量%以下であることが好ましく 、40質量%以上68質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0058】
また、積層体30は、上記の例のように第1の基材層31と第2の基材層32,33とからなる3層構造に限定されず、4層以上の多層構造でもよい。4層以上の多層構造の積層体は、例えば、第1の基材層および第2の基材層以外に、その他の層を有していてもよい。例えば、図17の積層体30において、第1の基材層31と第2の基材層32,33との間等に、図示しないその他の層を有する積層体30が挙げられる。その他の層としては、例えば、バリア層、接着層、または防曇剤を含有する防曇層等が挙げられる。また、積層体30は、第1の基材層31の片面のみに第2の基材層32を有していてもよい。例えば、図18に示すように、第1の基材層31の片面のみに、第2の基材層32が積層された積層体30Aでもよい。また、第2の基材層32,33は、第1の基材層31の少なくとも片側に積層されるが、第1の基材層31と第2の基材層32,33との間に例えばバリア層や接着層などの他の層が介在してもよい。
【0059】
図19は、第3の構成例に係る積層体の製造工程を示す図である。製造工程では、押出機のTダイ501より共押出された積層体30は、金属製無端ベルト506とともに第1冷却ロール502と第2冷却ロール503との間に挟み込まれる。金属製無端ベルト506は、各冷却ロール、および搬送ロール505によって連続的に搬送されている。また、各冷却ロールには、水冷管などの図示しない冷却手段が備えられている。成形直後の積層体30は、第1冷却ロール502および第2冷却ロール503のそれぞれの周面、および金属製無端ベルト506との接触によって冷却される。第2冷却ロール503の略下半周に対応する部分では金属製無端ベルト506と第2冷却ロール503との間に積層体20を挟み込みながら、金属製無端ベルト506の裏面側に吹き付けノズル507を用いて冷却水を吹き付けることによってさらに積層体30を冷却する。吹き付けられた冷却水は、水槽508を用いて回収される。積層体30は金属製無端ベルト506とともに第2冷却ロール503を離れて第3冷却ロール504上に移動し、第3冷却ロール504の略上半周に対応する部分で冷却された後、剥離ロール510によりガイドされて第3冷却ロール504および金属製無端ベルト506から離れて冷却工程を終了し、さらに搬送される。なお、金属製無端ベルト506の裏面に付着した水は、第2冷却ロール503から第3冷却ロール504への搬送途中に設けられている吸水ロール509で除去される。
【0060】
上記のような製造工程によれば、複数の冷却ロール502,503および金属製無端ベルト506との接触、ならびに冷却水の吹き付けによって、成形直後の積層体30を必要な温度まで急冷し、例えば機械物性や透明性などを発揮させることができる。
【0061】
本発明の一実施形態に係る容器100は、容器本体110の表面層114Cを凝集破壊層とすることによって、開封時にユーザーが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。また、接合領域140の内周側に内側樹脂溜まり部120を形成することによって、容器100の密封性が高まる。さらに、凝集破壊層を形成する表面層114Cの樹脂組成物のポリプロピレン系樹脂の比率を10質量%以上69質量%以下とすることによって、容器本体110と蓋体130との接合強度を低下させることができる。シール層131Bを構成するポリプロピレンの結晶化温度のピークが90℃以上140℃以下であるか、1st Runの融点のピークが130℃以上175℃以下であることによって、界面強度を抑制し、蓋体130を容器本体110から剥がし易くすることができる。
【0062】
上記により、本発明の一実施形態に係る容器100によれば、樹脂組成物として融点が高いブロックポリプロピレンを用いることによって、蓋体130のシール層131Bと、表面層114Cの接合強度を低下させ、界面強度を抑制して好適な開封性および密封性を両立させることが可能となる。
【実施例0063】
次に、本発明の実施例および比較例について説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。各例におけるフィルム構成、原料、評価サンプルの作製、密封性および開封性の測定、シール強度の測定およびパンク圧強度の測定は、以下のような方法で実施した。
【0064】
[実施例1~2、比較例1~2]
以下の原料を用いて、厚み約30~50μmの表面層を持つ全層約650μmのシートと、厚み70μmのBPPシール層を持つフィルムとを、シール盤を用いてヒートシールし、評価サンプルを作製した。作製した評価サンプルを用いて密封性および開封性を測定した。表面層とシール層とのシール時間は1.0秒、測定回数は1回である。シール圧力は、樹脂溜まりを形成するために用いられる、通常よりも高い圧力である240kgfである。
【0065】
<原料>
(表面層)
成分(1):ホモポリプロピレン(MFR:0.5g/10分、融点:150~165℃)
成分(2):メタロセン触媒系ランダムポリプロピレン(MFR:2.0g/10分、融点:125℃)
成分(3):低密度ポリエチレン(MFR:4.3g/10分、融点:128℃)
(シール層:「BPP」)
主成分:ブロックポリプロピレン(BPP):MFR:3.0g/10分、融点150~165℃
<シール盤の形状>
開封部:環状形状の内周縁から外周縁までの距離は5.1mm、内側傾斜面によるシール幅は1.3mm、内側傾斜面の曲率半径は1.6
接合領域:環状形状の内周縁から外周縁までの距離は1.5mm、内側傾斜面によるシール幅は1.3mm、内側傾斜面の曲率半径は1.6
以下の表1に示す配合に従って、表面層のフィルムであるシートA~Dを作製した。得られた表面層(シートA~Dのいずれか)とシール層(「BPP」)とを、シール盤により210℃~230℃の各温度でヒートシールし、評価サンプルを作製した。
【0066】
【表1】
成分(1)および成分(2)はポリプロピレン系樹脂であることから、シートA,Bにはポリプロピレン系樹脂が60質量%含まれており、シートC,Dにはポリプロピレン系樹脂が70質量%含まれている。
【0067】
<測定結果>
得られた表面層(シートA~Dのいずれか)を持つシートとシール層(「BPP」)とを、シール盤により210℃~230℃の各温度でヒートシールし、それぞれの密封性および開封性を測定した。結果を表2に示す。密封性は、接合領域140のフィルムに切り込みを入れて、容器100の内側より開封した際の感覚を定性的に評価した。表2において、フィルムが剥離しなかった場合を「A」、フィルムが容易に剥離した場合を「B」、抵抗がありつつもフィルムが剥離した場合を「C」と記載した。開封性は、開封時の感覚によって定性的に評価した。表2において、開封性の表記は、フィルムが容易に剥離した場合を「A」、フィルムが剥離しなかった場合を「B」、抵抗がありつつもフィルムが剥離した場合を「C」とした。
【0068】
【表2】
【0069】
上記の表2の実施例1、2に示されるように、表面層がシートAおよびBであって、シール層がBPPを主成分である場合に、シール温度が220℃または230℃であれば、密封性および開封性が「A」という評価が得られた。表1に示すとおり、表面層のシートAは、ホモポリプロピレンが60質量%含まれ、表面層のシートBはホモポリプロピレンが50質量%、メタロセン触媒系ランダムポリプロピレンが10質量%含まれる。つまり、表面層のシートAおよびBはポリプロピレン成分を60質量%含む。
また、シール層の樹脂組成物がランダムポリプロピレンである場合等の比較例1~2に示される条件では、密封性と開封性とが両立しなかったか、又はシートが破断した。
したがって、表面層のポリプロピレン比率が60質量%の場合は、密封性および開封性が両立したことがわかる。
【0070】
[実施例3~4、比較例3]
続いて、以下に示す組み合わせに従って、厚み約30~50μmの表面層を持つ全層約650μmのシートを成形した容器と、厚み70μmのBPPシール層を持つフィルムとを、シール盤により210℃~230℃の各温度でヒートシールし、評価サンプルを作製した。作製した評価サンプルを用いて、パンク圧強度、初期開封強度およびシール強度を測定した。表面層とシール層のシール時間は1.0秒、測定回数は3回である。シール圧力は、樹脂溜まりを形成するために用いられる、通常よりも高い圧力である240kgfである。
実施例3:表面層「シートA」、シール層「BPP」
実施例4:表面層「シートB」、シール層「BPP」
比較例3:表面層「シートC」、シール層「BPP」
表1を用いて説明したとおり、表面層のシートA,Bにはポリプロピレン系樹脂が60質量%含まれており、シートCにはポリプロピレン系樹脂が70質量%含まれている。
【0071】
<測定条件>
図20は、パンク圧強度、初期開封強度およびシール強度の測定に用いられた容器100の平面図である。本実施例では、図示されたような形状でフランジ部112に接合領域140が形成された矩形の容器100について、5つの測定点P1~P5でシール強度を測定した。測定点P1は開封部141であり、樹脂溜まりは接合領域140の内周側にのみ形成されている。また、測定点P2~P5は接合領域140であり、接合領域140の内周側および外周側に形成されている。初期開封強度は開封部141において測定し、シール強度はP1~P5の各測定点において測定した。
【0072】
パンク圧強度は、破袋時の最大圧力であり、例えば容器本体110と蓋体130との間の内部空間SPに所定の送風量(1.0±0.2L/分(目安))で空気を送入することによって測定できる。容器100のパンク圧強度は、例えば0.001MPa以上であり、好ましくは0.04MPa以上である。また、容器100のパンク圧強度の上限は、例えば0.20MPa以下である。パンク圧強度は、JIS Z0238「8.容器の破裂強さ試験」に準拠し測定することができる。
【0073】
また、初期開封強度は、内部空間SPに達するまでの開封時において蓋体130を引き剥がす力の最大値である。例えば3.0kgf以下であり、好ましくは2.8kgf以下であり、より好ましくは2.5kgf以下である。開封強度の下限は特に限定されないが、意図されない開封を防止する観点から、例えば0.1kgf以上である。開封強度は、蓋体130の開封起点部(タブ部)に測定用の治具を取り付け、蓋体130の開封開始側を容器本体110のフランジ面に対して135度の角度で引っ張り、その引張強度の最大値を測定する。開封強度測定装置としては、IMADA製プッシュプルゲージを使用することができる。
【0074】
シール強度は、測定点P1~P5それぞれにおける接合領域140の内周縁側でフランジ部112に隣接する凹部111の側面と蓋体130とを治具で挟持して、15mm幅の評価サンプルを上に引張速度300mm/minで容器内側から引き離した際の最大値を測定した。実施例3、4および比較例3のシール強度は、IMADA製プッシュプルゲージを用い、測定した物である。
【0075】
<測定結果>
図21は、実施例および比較例におけるパンク圧強度とシール温度との関係を示すグラフである。また、図22はシール圧力240kgfでヒートシールした初期開封強度の測定結果を示すグラフである。図21のグラフに示すように、実施例3、4および比較例3のいずれにおいても、シール温度が上昇するにつれてパンク圧強度が上昇し、特にシール温度が220℃または230℃において容器100が高密封であるといえる。
【0076】
また、図22に示すように、表面層の樹脂組成物にポリプロピレン系樹脂が60質量%含まれている実施例3または4の場合、シール温度が上昇するにつれて初期開封強度が上昇するが、表面層の樹脂組成物にポリプロピレン系樹脂が70質量%含まれている比較例3の場合は、シール温度が220℃または230℃の場合は開封できなかった。つまり、図21および図22から、実施例3または4の場合はシール温度を上昇させてパンク圧強度が上昇した高密封の状態であっても開封部141におけるフィルムの剥離は可能である。しかしながら、比較例3では高密封の状態では開封部141におけるフィルムの剥離ができなかったといえる。
220℃以上で高密封状態であることはシール強度の測定結果からも言える。以下の表4は、実施例3、4および比較例3のシール強度を測定した結果を示す。数値の単位は、kgf/15mmである。
【0077】
【表3】

各シール温度でシールした場合のシール強度を、矩形の容器100について、5つの測定点P1~P5で各3回測定した。表3の平均値は、3回測定したシール強度の値の平均とするが、3回の内何回か剥離できなかった場合は、剥離できた場合のシール強度の値の平均値を示す。
【0078】
表3に示すとおり、実施例3および4のシール強度について、いずれの条件も、P1が最もシール強度が低くなる。このP1は、シール温度が210℃のときに、2.0kgf/15mm付近の値であったが、この値は、比較的容易に引き剥がしが可能となるものである。しかしながら、220℃では、P1も平均が3.0kgf/15mm以上の値が得られ、引き剥がしが困難であった。230℃では、実施例3では5.0kgf/15mm、実施例4、実施例3では剥離ができなかった(表中の「-」)。これは、図22で示された結果を、容器内側から剥離を行ったデータとしても裏付けたものであり、シール温度が220℃以上の場合は高密封であることがわかる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0080】
100 :容器
110 :容器本体
111 :凹部
112 :フランジ部
114 :積層体
114A :基材層
114B :表面下層
114C :表面層
120 :内側樹脂溜まり部
121 :第1樹脂溜まり部
122 :第2樹脂溜まり部
130 :蓋体
130A :タブ
131 :積層体
131A :外層
131B :シール層
140 :接合領域
141 :開封部
150 :脱気機構

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22