(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172709
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】コイル基板、モータ用コイル基板、及びモータ
(51)【国際特許分類】
H01F 5/00 20060101AFI20241205BHJP
H02K 3/26 20060101ALI20241205BHJP
H01F 7/20 20060101ALI20241205BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20241205BHJP
H05K 3/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01F5/00 D
H02K3/26 E
H01F5/00 M
H01F7/20 D
H05K1/16 B
H05K3/42 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090599
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平澤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】古野 貴之
【テーマコード(参考)】
4E351
5E317
5H603
【Fターム(参考)】
4E351AA04
4E351AA16
4E351BB16
4E351BB22
4E351BB30
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4E351GG08
5E317AA24
5E317BB03
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5H603AA09
5H603BB01
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5H603CA05
5H603CB01
5H603CC02
5H603CD25
5H603CD26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビアホール内の抵抗の低下を抑制し、コイル配線のビアホール付近での強度を確保するコイル基板、モータ用コイル基板及びモータを提供する。
【解決手段】コイル基板は、樹脂基板であるフレキシブル基板10、樹脂基板の第1面10Fに形成されている第1コイル配線と第2面10Bに形成されている第2コイル配線と、第1コイル配線と第2コイル配線を樹脂基板に非貫通孔10aとして形成されたビアホールVHを介して電気的に接続しているビアホール配線VHU、VHV、VHWと、を有する。ビアホール配線は、外側と中心からなり、ビアホール配線の外側は、樹脂基板上に金属箔層120と、金属箔層上の無電解めっき層130と、無電解めっき層上の電解めっき層140と、が形成された導体層100と、導体層の上面及び側面を覆う追加めっき層150からなり、ビアホール配線の中心は、無電解めっき層、電解めっき層及び追加めっき層からなる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する樹脂基板と前記樹脂基板の第1面および第2面に形成されているコイル配線を含むコイル基板であって、
前記第1面に形成されている第1コイル配線と前記第2面に形成されている第2コイル配線と、
前記第1コイル配線と前記第2コイル配線を前記樹脂基板に非貫通孔として形成されたビアホールを介して電気的に接続しているビアホール配線と、を有し、
前記ビアホール配線は、外側と中心からなり、
前記ビアホール配線の外側は、前記樹脂基板上に金属箔層が形成され、前記金属箔層上に無電解めっき層が形成され、前記無電解めっき層上に電解めっき層形成された導体層と、前記導体層の上面及び側面を覆う追加めっき層からなり、
前記ビアホール配線の中心は、前記無電解めっき層、前記電解めっき層、及び前記追加めっき層からなる。
【請求項2】
請求項1のコイル基板であって、
前記追加めっき層の厚みは前記導体層の厚みよりも大きい。
【請求項3】
請求項1のコイル基板であって、前記ビアホールの断面形状はテーパ形状である。
【請求項4】
請求項1のコイル基板であって、前記樹脂基板には複数のコイルが配置されており、
前記第1コイル配線は、前記第1面上に形成された半ターンであり、
前記第2コイル配線は、前記第2面上に形成された半ターンであり、
前記第1コイル配線と前記第2コイル配線は、前記ビアホール配線を介して電気的に接続されている。
【請求項5】
請求項4のコイル基板であって、前記樹脂基板に複数のビアホールが形成されている。
【請求項6】
請求項1のコイル基板を略円筒状に巻くことで形成されるモータ用コイル基板。
【請求項7】
請求項6のモータ用コイル基板であって、前記コイル配線の占積率は、50%以上99%以下である。
【請求項8】
請求項6のモータ用コイル基板であって、前記モータ用コイル基板の外周面の円筒度は、0.0mmより大きく0.3mm以下である。
【請求項9】
請求項6のモータ用コイル基板であって、前記モータ用コイル基板の外径は、50mm以下である。
【請求項10】
請求項6のモータ用コイル基板及び磁石のうち一方を回転子に設けるとともに他方を固定子に設けることで形成されるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コイル基板、モータ用コイル基板、及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コイル基板の製造方法を開示している。特許文献1は、フレキシブル基板の両面に銅箔を設け、フレキシブル基板に貫通孔を設け、フレキシブル基板の全面にシード層を設け、シード層上にめっきレジストパターンを形成し、シード層上に電解めっき膜を形成し、貫通孔内にビア導体を形成し、めっきレジストパターンを剥離し、エッチングにより配線を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
<特許文献1の課題>
特許文献1の技術では、コイル基板を巻いてモータ用コイル基板を形成すると、ビアホール内の抵抗が低下すると考えられる。また、ビアホール付近での強度が足りなくなると考えられる。特に、小型モータ用コイル基板を形成するとなると、ビアーホール内の抵抗の低下やビアホール付近での強度の影響が表れやすいとも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコイル基板は、第1面および第2面を有する樹脂基板と前記樹脂基板の第1面および第2面に形成されているコイル配線を含むコイル基板であって、前記第1面に形成されている第1コイル配線と前記第2面に形成されている第2コイル配線と、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線を前記樹脂基板に非貫通孔として形成されたビアホールを介して電気的に接続しているビアホール配線と、を有し、前記ビアホール配線は、外側と中心からなり、前記ビアホール配線の外側は、前記樹脂基板上に金属箔層が形成され、前記金属箔層上に無電解めっき層が形成され、前記無電解めっき層上に電解めっき層形成された導体層と、前記導体層の上面及び側面を覆う追加めっき層からなり、前記ビアホール配線の中心は、前記無電解めっき層、前記電解めっき層、及び前記追加めっき層からなるものである。
【0006】
本発明のコイル基板は、第1コイル配線及び第2コイル配線と、ビアホール配線と、を有する。ビアホール配線は外側と中心からなり、ビアホール配線の外側は、金属箔層、無電解めっき層、電解めっき層からなる導体層と、追加めっき層からなり、ビアホール配線の中心は無電解めっき層、電解めっき層、追加めっき層からなるものである。追加めっきにより配線幅及び厚みが補完されるので、コイル基板を巻いてモータ用コイル基板を形成した際に、ビアホール付近に作用する力によるビアホール配線の変形を抑制できる。その結果、ビアホール内の抵抗の低下を抑制できる。また、コイル配線のビアホール付近での強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4A】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4B】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4C】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4D】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4E】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4F】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4G】実施形態のコイル基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図5】ビアホール配線の断面構造の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】実施形態のコイル基板を用いたモータ用コイル基板を模式的に示す斜視図である。
【
図7】ビアホールのテーパ形状の向きと、コイル基板を円筒状に巻く際の内周側及び外周側の向きとの関係を模式的に示す図である。
【
図8】実施形態のモータ用コイル基板を用いたモータを模式的に示す断面図である。
【
図9A】実施形態のビアホール配線の断面構造を模式的に示す断面図である。
【
図9B】改変例のビアホール配線の断面構造の改変例を模式的に示す断面図である。
【
図9C】改変例のビアホール配線の断面構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
図1は実施形態のコイル基板2を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II間の断面図である。
【0009】
図1に示されるように、コイル基板2は、フレキシブル基板10と、U相コイル20Uと、V相コイル20Vと、W相コイル20Wと、U相端子40Uと、V相端子40Vと、W相端子40Wと、複数のコイル間接続線50U、50V、50Wと、複数の相間接続線60U、60Vと、戻り線70Wとを有する。
【0010】
フレキシブル基板10は、第1面10Fと、第1面10Fと反対側の第2面10Bとを有する樹脂基板である。フレキシブル基板10は、ポリイミド、ポリアミド等の絶縁性を有する樹脂を用いて形成される。フレキシブル基板10は可撓性を有する。フレキシブル基板10は第1辺E1~第4辺E4の四辺を有する矩形状に形成されている。第1辺E1はフレキシブル基板10の長手方向(
図1の矢印LD方向)の一端側の短辺である。第2辺E2は長手方向の他端側の短辺である。第1辺E1と第2辺E2はともに長手方向と直交する直交方向(
図1の矢印OD方向)に沿って延びる短辺である。第3辺E3と第4辺E4はともに長手方向に沿って延びる長辺である。後で説明されるように、コイル基板2が円筒状に巻かれてモータ用コイル基板550(後述の
図6参照)が形成される場合、第1面10Fは内周側に配置され、第2面10Bは外周側に配置される。なお、第1面10Fは外周側に配置され、第2面10Bは内周側に配置されてもよい。
【0011】
U相端子40U、V相端子40V、W相端子40Wは、いずれも、フレキシブル基板10の第3辺E3に形成されている。
図1に示されるように、U相端子40UはU相コイル20Uの始端20USに接続されている。同時に、U相端子40Uは戻り線70Wを介してW相コイル20Wの終端20WEに接続されている。V相端子40VはV相コイル20Vの始端20VSに接続されている。同時に、V相端子40Vは相間接続線60Uを介してU相コイル20Uの終端20UEに接続されている。W相端子40WはW相コイル20Wの始端20WSに接続されている。同時に、W相端子40Wは相間接続線60Vを介してV相コイル20Vの終端20VEに接続されている。
【0012】
U相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20Wは、それぞれ、三相モータのU相、V相、W相を構成する。
【0013】
<U相コイル>
図1に示されるように、U相コイル20Uは、6個のコイル31U、32U、33U、34U、35U、36Uを含んでいる。6個のコイル31U~36Uは、U相コイル20Uの始端20USから終端20UEに向かってこの順で並んでいる。
【0014】
6個のコイル31U~36Uは、いずれも、第1面10F上の半ターンである第1コイル配線30UFと第2面10B上の半ターンである第2コイル配線30UBがビアホール配線VHUを介して電気的に接続されることで、コイルが形成されている。ビアホール配線VHUは、第1コイル配線30UFと第2コイル配線30UBを、フレキシブル基板10に非貫通孔として形成されたビアホールVHを介して電気的に接続する(後述の
図5参照)。6個のコイル31U~36Uは、いずれも、隣接する各ターンがずらされながら配置されることによって形成されている。
【0015】
<V相コイル>
図1に示されるように、V相コイル20Vは、6個のコイル31V、32V、33V、34V、35V、36Vを含んでいる。6個のコイル31V~36Vは、V相コイル20Vの始端20VSから終端20VEに向かってこの順で並んでいる。
【0016】
6個のコイル31V~36Vは、いずれも、第1面10F上の半ターンである第1コイル配線30VFと第2面10B上の半ターンである第2コイル配線30VBがビアホール配線VHVを介して電気的に接続されることで、コイルが形成されている。ビアホール配線VHVは、第1コイル配線30VFと第2コイル配線30VBを、フレキシブル基板10に非貫通孔として形成されたビアホールVHを介して電気的に接続する(後述の
図5参照)。6個のコイル31V~36Vは、いずれも、隣接する各ターンがずらされながら配置されることによって形成されている。
【0017】
<W相コイル>
図1に示されるように、W相コイル20Wは、6個のコイル31W、32W、33W、34W、35W、36Wを含んでいる。6個のコイル31W~36Wは、W相コイル20Wの始端20WSから終端20WEに向かってこの順で並んでいる。
【0018】
6個のコイル31W~36Wは、いずれも、第1面10F上の半ターンである第1コイル配線30WFと第2面10B上の半ターンである第2コイル配線30WBがビアホール配線VHWを介して電気的に接続されることで、コイルが形成されている。ビアホール配線VHWは、第1コイル配線30WFと第2コイル配線30WBを、フレキシブル基板10に非貫通孔として形成されたビアホールVHを介して電気的に接続する(後述の
図5参照)。6個のコイル31W~36Wは、いずれも、隣接する各ターンがずらされながら配置されることによって形成されている。
【0019】
図1に示されるように、実施形態では各コイル20U、20V、20Wの配線は六角形状に配置されている。他の例では、各コイル20U、20V、20Wの配線は円形(真円形、楕円形)、三角形、四角形(正方形、長方形、ひし形)、五角形、七角形以上の多角形等、任意の形状に配置されていてもよい。また、すべてのコイルの配線の配置形状が同一であることに限られず、コイル間で配線の配置形状が異なっていてもよい。一つのコイル配線の巻き数は、特に限定されないが、1回以上であればよく、3回から7回であることが好ましい。コイル配線は、第1面10Fで半ターンを配置し、第2面10Bで半ターンを配置し、ビアホールVHにより接続することで形成されているのである。また、第2面10Bで半ターンを配置し、第1面10Fで半ターンを配置してもよい。このとき、半ターンとは、コイル配線の半分を指しているのである。また、第1面10Fで1/4ターン、第2面10Bで1/4ターンを配置し、ビアホールVHにより接続させて、第1面10Fもしくは第2面10Bの合計で半ターンを配置してもよい。さらにコイル配線は、第1面10Fもしくは第2面10Bで1ターンを配置してもよい。このとき、第1面10Fのコイル配線と第2面10Bのコイル配線で重ねてもよいし、一部分を重ねてもよいし、重ねなくてもよい。
【0020】
<ビアホールの複数構造>
図3は、
図1の領域A、すなわちフレキシブル基板10において最も第2辺E2側に位置するW相コイル36Wの、第4辺E4側のビアホール配線VHW近傍の領域を部分的に拡大した図である。
図3に示す例では、1つの第1コイル配線30WFの第4辺E4側の端部と、1つの第2コイル配線30WBの第4辺E4側の端部との間に、複数(例えば3つ)のビアホールVHがフレキシブル基板10に非貫通孔として形成されている。ビアホールVHの大きさやビアホールVHの間隔は特に限定されないが、ビアホールVHの大きさは、50~300μmであることが好ましく、ビアホールVHの間隔は、100μm以上であることが好ましく、100~300μmであることがより好ましい。なお、ビアホールVHの間隔とは、2つのビアホールVHの最短距離である。各ビアホールVHにはそれぞれビアホール配線VHWが形成されている。複数(例えば3つ)のビアホール配線VHWはそれぞれの第1コイル配線30WFと第2コイル配線30WBをビアホールVHを介して電気的に接続する。なお、1つの第1コイル配線30WFの一方側の端部と1つの第2コイル配線30WBの対応する一方側の端部とを接続するビアホールVH(ビアホール配線VHW)の数は単数でもよいが、複数の方が好ましい。ビアホールVH(ビアホール配線VHW)の数は上記3個に限られず、2個又は4個以上としてもよい。なお、ビアホールVH及びビアホール配線VHWの詳細な説明については後述する(
図4及び
図5)。
【0021】
なお、W相コイル36Wの第3辺E3側のビアホールVH及びビアホール配線VHW、W相コイル36W以外のW相コイル31W~35W、並びに、W相コイル20W以外のU相コイル20U及びV相コイル20VのビアホールVH及びビアホール配線VHWについても、
図3と同様に構成される。
【0022】
<ビアホール配線の製造方法>
実施形態のコイル基板2は任意の方法で製造される。例えば、コイル基板2は、金属箔を有するフレキシブル基板10を出発材料として、テンティング法によって形成される。以下、その製造工程の一例を
図4A~
図4Gにより説明する。
図4A~
図4Gは、実施形態のコイル基板2の製造方法を模式的に示す断面図である。
【0023】
図4Aに示されるように、第1面10F及び第2面10Bに金属箔層120が形成されているフレキシブル基板10が用意される。金属箔層120は、Cu、Ni、Al等が含まれ、フレキシブル基板10に張り付けて形成される。なお、金属箔層120は、配線形成がしやすいことからCuを主成分としたものを用いることが好ましい。金属箔層120の厚みは例えば10~50[μm]である。
【0024】
図4Bに示されるように、レーザにより、フレキシブル基板10に非貫通孔10aが形成される。非貫通孔10aは、フレキシブル基板10の第1面10F側の金属箔層120を貫通し第2面10B側の金属箔層120を貫通しないように、レーザの出力を調節して形成される。なお、
図4A~
図4Gでは簡略化して円筒状の非貫通孔として図示しているが、レーザにより非貫通孔10aが形成される場合には、非貫通孔10aの断面形状は第1面10F側の開口面積が第2面10B側の開口面積よりも大きなテーパ形状となる(後述の
図5参照)。
【0025】
図4Cに示されるように、金属箔層120の表面、及び、フレキシブル基板10の非貫通孔10a内に、無電解めっきにより無電解めっき層130が形成される。無電解めっきにはCu、Ni等を含んだ化学めっきが含まれる。なお、無電解めっき層130は、配線形成がしやすいことからCuを主成分としたものを用いることが好ましい。無電解めっき層130の厚みは例えば1~5[μm]である。
【0026】
図4Dに示されるように、無電解めっき層130をシード層として、無電解めっき層130の表面に、Cu、Niを含んだ電解めっきにより電解めっき層140が形成される。なお、電解めっき層140は、配線形成がしやすいことからCuを主成分としたものを用いることが好ましい。電解めっき層140の厚みは例えば10~50[μm]である。
【0027】
図4Eに示されるように、電解めっき層140上にめっきレジストパターン210が形成される。
【0028】
図4Fに示されるように、めっきレジストパターン210から露出する電解めっき層140、無電解めっき層130、金属箔層120がエッチングにより除去される。その後、めっきレジストパターン210が剥離されて、配線パターンが完成する。
【0029】
図4Gに示されるように、配線パターンの全ての露出した表面上に、Cu、Niを含んだ電解めっきにより追加めっき層150が形成される。なお、追加めっき層150は、配線形成がしやすいことからCuを主成分としたものを用いることが好ましい。追加めっき層150の厚みは、金属箔層120、無電解めっき層130及び電解めっき層140の厚みの合計よりも大きい。以上により、第1コイル配線と第2コイル配線をビアホールVHを介して電気的に接続するビアホール配線VHU、VHV、VHWが完成する。
【0030】
<ビアホール配線の断面構造>
図5は、ビアホール配線VHU、VHV、VHWの断面構造の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示されるように、ビアホール配線VHU、VHV、VHWは、外側と中心からなる。「外側」は、フレキシブル基板10の非貫通孔10aの内周面よりも径方向外側の領域であり、「中心」は、フレキシブル基板10の非貫通孔10aの内周面よりも径方向内側の領域である。ビアホール配線VHU、VHV、VHWの外側は、第1コイル配線30UF、30VF、30WF又は第2コイル配線30UB、30VB、30WBに接続されている。ビアホール配線VHU、VHV、VHWの外側は、フレキシブル基板10の第1面10F上及び第2面10B上のいずれにおいても、導体層100と、導体層100の表面(上面及び側面)を覆う追加めっき層150からなる。導体層100は、フレキシブル基板10上に金属箔層120が形成され、金属箔層120上に無電解めっき層130が形成され、無電解めっき層130上に電解めっき層140が形成されることで、形成される。ビアホール配線VHU、VHV、VHWの中心は、製造時に残された第2面10B側の金属箔層120の第1面10F側は、無電解めっき層130、電解めっき層140、及び追加めっき層150からなり、金属箔層120の第1面10Fとは反対側も同様に、無電解めっき層130、電解めっき層140、及び追加めっき層150からなる。ビアホール配線VHU、VHV、VHWの外側は4層構造であり、中心は金属箔層120の第1面10F側が3層構造、第1面10Fとは反対側が3層構造である。
【0031】
ビアホール配線VHU、VHV、VHWの外側では、追加めっき層150の厚みt1は、導体層100の厚みt2よりも大きい。ビアホール配線VHU、VHV、VHWの中心では、追加めっき層150の厚みt3は、無電解めっき層130及び電解めっき層140の厚みの合計t4よりも大きい。また、ビアホールVHの断面形状は、前述のように非貫通孔10aがレーザで形成されることにより、第1面10F側の開口面積が第2面10B側の開口面積よりも大きなテーパ形状である。
【0032】
<モータ用コイル基板>
図6は、実施形態のコイル基板2を用いたモータ用コイル基板550を模式的に示す斜視図である。
図6に示されるように、実施形態のコイル基板2(
図1、
図2)が略円筒状に巻かれることによって、モータのためのモータ用コイル基板550が形成される。コイル基板2が円筒状に巻かれる場合、第1辺E1(
図1)を起点として、直交方向に延びる軸(第1辺E1と平行に延びる軸)を中心に複数回巻かれる。コイル基板の巻かれる回数は特に限定されないが、2回以上10回以下であることが好ましい。コイル基板2が円筒状に巻かれる際、フレキシブル基板10の第1面10Fが内周側に配置され、第2面10Bが外周側に配置される。なお、コイル基板2が円筒状に巻かれる際、フレキシブル基板10の第1面10Fが外周側に配置され、第2面10Bが内周側に配置されてもよい。
【0033】
図7は、ビアホールVHのテーパ形状の向きと、コイル基板2を円筒状に巻く際の内周側及び外周側の向きとの関係を模式的に示す図である。なお、
図7ではコイル基板2における各配線の図示を省略している。
図7に示されるように、コイル基板2には、第1面10F側の開口面積が第2面10B側の開口面積よりも大きなテーパ形状の複数のビアホールVHが形成されている。コイル基板2が円筒状に巻かれる際、フレキシブル基板10の第1面10Fが内周側に配置され、第2面10Bが外周側に配置されることにより、ビアホールVHの開口面積が大きい方が内周側、小さい方が外周側として巻かれる。これにより、ビアホールVHの開口面積が小さい方が外周側において引っ張られて拡大され、ビアホールVHの開口面積が大きい方が内周側において圧縮されて縮小され、ビアホールVHは円筒形状に近づくように力を受ける。その結果、ビアホールVH付近に作用する力を低減でき、ビアホールVH内の抵抗の低下を抑制できる。
【0034】
図6に示すように、モータ用コイル基板550は内周面ICと外周面OCとを有している。コイル基板2の巻き回数を2回以上10回以下とすることにより、形成されるモータ用コイル基板550の外周面OCの円筒度が0.0mmより大きく0.3mm以下となる。外周面OCの円筒度は0.0mmより大きく0.3mm以下であると、モータ用コイル基板550は、平坦な場所で均等に転がることがない。外周面OCの円筒度が0.0mmより大きく0.3mm以下であることにより、モータ形成時にヨークとの接着強度が高くなる。安定した性能のモータが得られる。そのため、モータとして稼働させたときでも、モータ用コイル基板550の位置ずれがなく、安定した性能のモータが得られる。
【0035】
外周面OCの円筒度は、V字ブロックによる測定法で測定される。即ち、モータ用コイル基板550をV字ブロック上に載せ、一回転させて軸と直角方向の差を異なる5か所で測定し、その平均値を算出することにより、外周面OCの円筒度が測定される。
【0036】
図示は省略するが、第1コイル配線30UF、30VF、30WFと、第2コイル配線30UB、30VB、30WBと、ビアホール配線VHU、VHV、VHWは、絶縁層で覆われている。なお、絶縁層は、配線に追従して形成してもよいし、回路を被覆し、隣り合う配線間も絶縁層で充填してもよい。絶縁層が形成されていることで、各配線が露出していないこととなり、絶縁が保たれるのである。絶縁層102F、102Bを形成する方法は、特に限定されないが、液状の樹脂を印刷や樹脂の電着により形成することができる。樹脂の例は、ポリイミドである。絶縁層の厚みは特に限定されないが、1μm以上30μm以下程度で形成することが好ましい。
【0037】
モータ用コイル基板550の断面は、フレキシブル基板10と、コイル20U、20V、20Wの第1コイル配線30UF、30VF、30WF及び第2コイル配線30UB、30VB、30WB、ビアホール配線VHU、VHV、VHWの各配線と、絶縁層で構成される。このとき、モータ用コイル基板550の断面積における全配線の断面積の割合を算出した結果がコイルの占積率となる。実施形態のモータ用コイル基板550は、コイルの占積率が50%以上99%以下である。このとき、コイルの占積率の算出方法は、占積率=(配線の断面積の和/モータ用コイル基板の断面積)×100である。
【0038】
占積率が50%以上99%以下のモータ用コイル基板550を用いることで、高トルクのモータが得られる。さらに、実施形態のモータ用コイル基板550が小型モータに適用される場合、トルクを向上させることができ、性能の高いモータが得られる。本明細書における小型モータとは、モータ用コイル基板550の外径が50mm以下のモータである。なお、モータ用コイル基板550の外周面の直径は、ノギス測長で行うのである。
【0039】
<モータ>
図8は、実施形態のモータ用コイル基板550(
図6)を用いたモータ600を模式的に示す断面図である。モータ600は、モータ用コイル基板550をヨーク560の内側に配置し、モータ用コイル基板550の内側に回転軸580と回転軸580に固定された磁石570とを配置することによって形成される。実施形態のモータ600はスロットレスモータである。磁石570と回転軸580とが回転子610を構成し、モータ用コイル基板550とヨーク560とが固定子620を構成する。
【0040】
モータ用コイル基板550は、円筒状のヨーク560の内側に配置されている。モータ用コイル基板550の外周面OCとヨーク560の内周面560aとは、接着により固定されている。モータ用コイル基板550の内周面ICと磁石570の外周面570aとは、所定の間隙をあけて径方向に対向するように配置されている。
【0041】
なお、上記実施形態では磁石570を回転子610に設け、モータ用コイル基板550を固定子620に設けたが、これに限られない。磁石570を固定子に設け、モータ用コイル基板550を回転子に設ける構成であってもよい。また、実施形態のモータ用コイル基板550はスロットレスモータに用いられたが、スロットレスモータ以外のモータに用いられてもよい。
【0042】
<実施形態の効果>
以上の通り、実施形態のコイル基板2(
図1~
図2)、モータ用コイル基板550(
図6)、モータ600(
図8)の構成が説明された。上記の通り、実施形態のコイル基板2は、第1コイル配線30UF、30VF、30WF及び第2コイル配線30UB、30VB、30WBと、ビアホール配線VHU、VHV、VHWと、を有する。ビアホール配線VHU、VHV、VHWは外側と中心からなる。ビアホール配線VHU、VHV、VHWの外側は、金属箔層120、無電解めっき層130、電解めっき層140からなる導体層100と、追加めっき層150からなり、ビアホール配線VHU、VHV、VHWの中心は無電解めっき層130、電解めっき層140、追加めっき層150からなる。追加めっき層150によりコイル配線の配線幅及び厚みが補完されるので、コイル基板2を巻いてモータ用コイル基板550を形成した際に、ビアホールVH付近に作用する力がビアホール配線内で緩衝されて、作用する力が減少するため、ビアホール配線VHU、VHV、VHWの変形を抑制できる。その結果、ビアホールVH内の抵抗の低下を抑制できる。また、ビアホールVH付近に作用する力がビアホール配線内で緩衝されるので、コイル配線のビアホールVH付近での強度を確保できる。
【0043】
さらに、小型モータ用コイル基板を形成すると、巻いたときに作用する力が大きくなりやすいが、本発明のビアホール配線により、ビアホールVH付近に作用する力がビアホール配線内で緩衝されて、作用する力が減少するため、ビアホール配線の変形を抑制できる。その結果、ビアホールVH内の抵抗の低下を抑制できる。また、ビアホールVH付近に作用する力がビアホール配線内で緩衝されるので、コイル配線のビアホールVH付近での強度を確保できる。
【0044】
実施形態のコイル基板2では、追加めっき層150の厚みt1は導体層100の厚みt2よりも大きい。追加めっき層150の厚みt1を、導体層100の厚みt2よりも大きくすることで、ビアホール配線VHU、VHV、VHWやコイル配線のビアホールVH付近での強度をより向上できる。その結果、コイル基板2を巻いてモータ用コイル基板550を形成した際に、ビアホールVH内の抵抗の低下をより抑制できる。
【0045】
実施形態のコイル基板2では、ビアホールVHの断面形状がテーパ形状である。その結果、コイル基板2を巻いてモータ用コイル基板550を形成する際に、ビアホールVHの開口面積が大きい方を内周側、小さい方を外周側として巻くことで、ビアホールVH付近に作用する力を低減でき、ビアホールVH内の抵抗の低下を抑制できる。なお、ビアホールVHはフレキシブル基板10に対してレーザにより穴あけを行うことで形成されるのである。
【0046】
実施形態のコイル基板2では、フレキシブル基板10の第1面10F上の半ターンである第1コイル配線30UF、30VF、30WFと第2面10B上の半ターンである第2コイル配線30UB、30VB、30WBがビアホール配線VHU、VHV、VHWを介して電気的に接続されることで、U相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20Wが形成されている。ビアホールVH内の抵抗の低下を抑制でき、且つ、ビアホールVH付近での強度を確保できることで、コイルの性能の低下を抑制し、コイル基板2の信頼性を向上できる。
【0047】
実施形態のコイル基板2では、フレキシブル基板10に複数のビアホールVH(ビアホール配線VHU、VHV、VHW)が形成されている。複数のビアホールVH(ビアホール配線VHU、VHV、VHW)が形成されることで、フレキシブル基板10に複数のコイルを形成できる。また、1つの第1コイル配線30UF、30VF、30WFの一方側の端部と1つの第2コイル配線30UB、30VB、30WBの対応する一方側の端部とが、複数のビアホールVH(ビアホール配線VHU、VHV、VHW)により電気的に接続されている。その結果、一つのビアホールVH(ビアホール配線VHU、VHV、VHW)が断線したとしても、他のビアホールVH(ビアホール配線VHU、VHV、VHW)により接続を確保することができるので、接続信頼性を向上することができる。
【0048】
実施形態では、コイル基板2を略円筒状に巻くことでモータ用コイル基板550が形成される。実施形態のモータ用コイル基板550では、コイル配線の占積率は50%以上99%以下である。コイルの占積率を50%以上99%以下とすることで高いトルクが得られ、性能の高いモータが得られる。
【0049】
実施形態のモータ用コイル基板550では、外周面OCの円筒度は、0.0mmより大きく0.3mm以下である。外周面OCの円筒度を0.0mmより大きく0.3mm以下とすることで、磁石570の周囲に設けたヨーク560の内周面にモータ用コイル基板550を接着してモータ600を形成する場合に、外周面OCの円筒度が0.0mmである場合に比べ、接着状態のモータ用コイル基板550の外周面とヨーク560の内周面が滑り難くなり、接着強度を高めることができる。
【0050】
実施形態のモータ用コイル基板550の外径は50mm以下である。外径50mm以下のモータ用コイル基板550を用いて小型のモータ600を形成することで、モータ性能の低下を効果的に抑制し、性能及び信頼性の高い小型のモータ600を実現できる。
【0051】
実施形態では、ヨーク560の内周面560aにモータ用コイル基板550の外周面OCが接着されてモータ600が形成される。実施形態のモータ600では、ビアホールVH内の抵抗の低下を抑制でき、且つ、ビアホールVH付近での強度を確保できるコイル基板2を巻いたモータ用コイル基板550を使用することで、性能及び信頼性の高いモータ600を実現できる。
【0052】
<実施形態の改変例>
図9Aは、実施形態のビアホール配線VHU、VHV、VHWの断面構造を模式的に示す断面図であり、
図9B及び
図9Cは、改変例のビアホール配線VHU、VHV、VHWの断面構造を模式的に示す断面図である。なお、
図9A~
図9Cでは、ビアホールVHのテーパ形状については簡略化して円筒状の非貫通孔として図示している。
【0053】
図9Aに示すように、実施形態のビアホールVHは、電解めっき層140がフレキシブル基板10の非貫通孔10aを充填しない構造としたが、例えば
図9B及び
図9Cに示すように、電解めっき層140がフレキシブル基板10の非貫通孔10aの少なくとも一部を充填した構造としてもよい。
図9Bに示す構造では、電解めっき層140が非貫通孔10aの一部を充填している。電解めっき層140の第1面10F側の表面には、凹部140aが形成されている。電解めっき層140の厚みは、ビアホールVHの中心位置近傍で最も薄くなり、外側に近づくほど厚みが増すように形成されている。追加めっき層150は、ビアホールVHの外側においては導体層100の上面及び側面を覆い、中心においては電解めっき層140の凹部140aを含む表面を覆うように形成されている。
【0054】
図9Cに示す構造では、電解めっき層140が非貫通孔10aの全部を充填している。電解めっき層140の第1面10F側の表面は、中心と外側とで面一となるように形成されている。追加めっき層150は、ビアホールVHの外側においては導体層100の上面及び側面を覆い、中心においては電解めっき層140の面一の表面を覆うように形成されている。
【0055】
ビアホールVHの開口径が大きい場合には(例えば250~300μm程度)
図9Aに示す構造となり、開口径が中程度の場合には(例えば100~250μm程度)
図9Bに示す構造となり、開口径が小さい場合には(例えば50~100μm程度)
図9Cに示す構造となる。
【0056】
図9B及び
図9Cのいずれの構造においても、ビアホール配線VHU、VHV、VHWの外側は、導体層100と追加めっき層150からなり、ビアホール配線VHU、VHV、VHWの中心は、無電解めっき層130、電解めっき層140、及び追加めっき層150からなる。以上説明した改変例でも、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
2:コイル基板
10:フレキシブル基板
10B:第2面
10F:第1面
30UF、30VF、30WF:第1コイル基板
30UB、30VB、30WB:第2コイル基板
100:導体層
120:金属箔層
130:無電解めっき層
140:電解めっき層
150:追加めっき層
550:モータ用コイル基板
570:磁石
600:モータ
610:回転子
620:固定子
OC:モータ用コイル基板の外周面
VH:ビアホール
VHU、VHV、VHW:ビアホール配線
t1:追加めっき層の厚み
t2:導体層の厚み