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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172715
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】システム天井の耐震機構
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
E04B9/18 F
E04B9/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090611
(22)【出願日】2023-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】523207216
【氏名又は名称】株式会社エスメソッド
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正一
(57)【要約】
【課題】本願発明は、大地震の揺れにも耐える十分な耐震性能を備え、壊れにくく、軽くて安全で勾配のある天井にも適したシステム天井用の耐震機構を提供する。
【解決手段】幅の広い下フランジと断面が四辺形で幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が略同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成して、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の耐震機構が固定される、構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅の広い下フランジと断面が四辺形で上辺が筋状に開放された開放筋を具える幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が多少の違いはあるものの概ね同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成し、格子状のメインTバーおよびクロスTバーから天井材を垂下するシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構であって、
前記耐震機構は、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置され、メインTバー上またはクロスTバー上に密着して固定される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、
メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の前記耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の前記耐震機構が固定される、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【請求項2】
メインTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体はメインTバーを懸吊する1本の吊ボルトの下部に設置される一方、クロスTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体は所望の位置に設置されて吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトが連設され、
前記補強懸吊体は、本体が曲折した平板であり最下部に位置する本体の固定板がメインTバーの前記開放筋に挿入されて固定されるとともに、吊ボルトまたは疑似吊ボルトに連設する本体の上部は横断面が中空の四角形となるように補強された懸吊金具に、メインTバーまたはクロスTバーのライン方向の両側からフランジ同士が重ね合わされるように本体を囲繞する一対の溝形状の囲繞金物と、その下部が該上フランジに挿通されて一対の該囲繞金物のそれぞれに背中合わせに添設される一対の溝形状の添設金物と、からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム天井の耐震機構。
【請求項3】
前記耐震機構を構成する前記補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して略左右対称であって左右の質量も略同一である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシステム天井の耐震機構。
【請求項4】
メインTバーおよびクロスTバーはアルミ押出形材であって、天井材を含む前記システム天井自体の質量は2kg/m以下であり、前記補強懸吊体の構成部材である懸吊金具、囲繞金物および添設金物は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材であり、細径の角管である前記補強ブレースは25mm×25mm×厚さ1.6mmの鋼製であり、前記吊ボルトおよび前記疑吊ボルトの太さはW3/8である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシステム天井の耐震機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインTバーおよびクロスTバーを格子状に形成して天井材等を組み込むシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の天井構造として多く採用されているシステム天井は、天井スラブから吊り下げられた吊りボルトで懸吊金具を介して逆さT字状のメインTバーを懸吊し、さらにこのメインTバーに直交するようにしてクロスTバーを配置することにより格子状の枠組みを構築した後、この枠組みの開口から天井ボードを落とし込むようにして施工される。このシステム天井は格子状の枠組みのサイズにより質量は左右されるが軽量グラスウール等の天井板を用いた場合では吊りボルトおよび吊設金具を除いた質量が概ね4.0kg/mないし5.0kg/mである。
【0003】
ところで、「脱落によって重大な危険を生ずるおそれのある天井」(以下、「特定天井」という。)に関する関連告示が交付され、特定天井が適合すべき構造耐力上安全な天井の構造方法が定められている。この特定天井は「6m超の高さにある、面積200m、質量2kg/m超の吊り天井で人が日常利用する場所に設置されているもの」とされているが、特定天井でなくとも天井の軽量化は安全上必須のものとなっている。そこで、本願発明者は、システム天井における天井の軽量化を目指し、その成果は特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示の技術は発明の名称「軽量システム天井」に係り、「天井の組立部材数が少なく組立が容易な上、メインバーやクロスバーの部材の剛性も従来と略同様としつつ、天井自体の質量を2kg/m以下に押さえることができる軽量のシステム天井下地を提供する。」ことを課題とし、その解決手段を「主に、断面形状が逆T字状を呈するとともに幅の広い下フランジと幅の狭い上フランジを有するア ルミニウム製のメインT型バーと断面形状が同一のクロスT型バーとから構成されるシステム天井であって、前記メインT型バーには上部に開口する第1のスリットが所定間隔で貫設され、前記クロスT型バーには下部に開口する第2のスリットが所定間隔で貫設されて、該第1のスリットおよび該第2のスリットが互いに嵌合して格子状の枠組みが形成され、前記メインT型バーおよび前記クロスT型バーの交差部には該クロスT型バーの浮き上がりを防止するための交差部押さえ金具が該メインT型バーの上フランジに挟着する」構成としている。
【0005】
一方、システム天井に適した耐震機構としては、特許文献2に開示の技術がある。
特許文献2に開示の技術は発明の名称「システム天井の天井板支持構造」に係り、「地震発生時の縦横の揺れに対して優れた耐震性を発現することができ、しかも施工性に優れ たシステム天井の天井板支持構造を開発するにある。」を課題としていて、その解決手段を「メインバー、これに直交するクロスバー、その垂直片の下部に該メインバーやクロスバーを取り付ける挟持部が形成され、階上床下面からメインバーとクロスバーとを吊持するためのハンガー部材、前記ハンガー部材が装着された吊持ボルト、前記吊持ボルト間に架設されたブレース材で構成され、メインバー及びクロスバーにハンガー部材の垂直片の向きが互いに直交するように取り付けられ且つメインバー及びクロスバーに沿って互いに直交するように吊持ボルト間に前記吊持ボルトに対して傾斜させてブレース材が架設されていることを特徴とする。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5829348号公報
【特許文献2】特開2003-013540号公報
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示の「システム天井の天井板支持構造」は、勾配のある天井を対象としたものではない。そこで、本願発明は特許文献1に開示の軽量システム天井の特性を活かし、大地震の揺れにも耐える十分な耐震性能を備え、壊れにくく、軽くて安全で勾配のある天井にも適したシステム天井用の耐震機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係るシステム天井の耐震機構は、幅の広い下フランジと断面が四辺形で上辺が筋状に開放された開放筋を具える幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が多少の違いはあるものの概ね同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成し、格子状のメインTバーおよびクロスTバーから天井材を垂下するシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構であって、前記耐震機構は、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置され、メインTバー上またはクロスTバー上に密着して固定される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の前記耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の前記耐震機構が固定される、ことを特徴としている。
なお、本明細書では、メインTバーおよびクロスTバーの設置方向(流し方向)をライン方向ということにする。
また、本願請求項2に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1に記載のシステム天井の耐震機構であって、メインTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体はメインTバーを懸吊する1本の吊ボルトの下部に設置される一方、クロスTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体は所望の位置に設置されて吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトが連設され、前記補強懸吊体は、本体が曲折した平板であり最下部に位置する本体の固定板がメインTバーの前記開放筋に挿入されて固定されるとともに、吊ボルトまたは疑似吊ボルトに連設する本体の上部は横断面が中空の四角形となるように補強された懸吊金具と、メインTバーまたはクロスTバーのライン方向の両側からフランジ同士が重ね合わされるように本体を囲繞する一対の溝形状の囲繞金物と、その下部が該上フランジに挿通されて一対の該囲繞金物のそれぞれに背中合わせに添設される一対の溝形状の添設金物と、からなる、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1または請求項2に記載のシステム天井の耐震機構であって、前記耐震機構を構成する前記補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して略左右対称であって左右の質量も略同一である、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシステム天井の耐震機構であって、メインTバーおよびクロスTバーはアルミ押出形材であって、天井材を含む前記システム天井自体の質量は2kg/m以下であり、前記補強懸吊体の構成部材である懸吊金具、囲繞金物および添設金物は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材であり、細径の角管である前記補強ブレースは25mm×25mm×厚さ1.6mmの鋼製であり、前記吊ボルトおよび前記疑吊ボルトの太さはW3/8である、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は上記の構成により以下の効果を奏する。
(1-イ)メインTバーおよびクロスTバーの上フランジの断面は上部が解放されたボックス状になっているため、メインTバーおよびクロスTバー自体の曲げ剛性が大きくなって、曲がりにくくなり、従来の上フランジが平板状のシステム天井に比べてロングスパンでも扱いやすい。
(1-ロ)また、本願発明に係る耐震機構は、メインTバーが吊ボルトに懸吊されて仮止めされた後に、耐震機構を構成する各部材(補強懸吊体とそれに連結固定される補強ブレース)が配置されて固定されるので、システム天井自体の傾斜に合致したものとなる。
(1-ハ)そして、クロスTバーが傾斜している場合であっても、メインTバーの位置が確定し、それによりクロスTバーの位置や傾きも確定し、クロスTバー上の補強懸吊体とそれに連結固定される補強ブレースが配置されて固定されるため、クロスTバーの傾斜に馴染んだものとなる。
(1-ニ)実大実験によって得た出願人の知見では、本願発明に係る耐震機構は概ね66mのロングスパンを負担することができるので、メインTバーあるいはクロスTバーの各ライン上に1ヶ所設置すれば、ほぼ全てのシステム天井に対して所定の耐震効果を得ることができる。
(2)メインTバー上の耐震機構は吊ボルトの真下に設置される補強懸吊体と一対の補強ブレースから形成されているので、設置場所にある程度の制約を受けるが、クロスTバー上の耐震機構は任意の位置に設置されるので、設備配管等による設置個所の制約が少ない。
(3)耐震機構を構成する補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して左右対称であり、左右の質量も略同一であるので、地震による繰り返し外力が作用しても、これらの部材に偏心やねじれが生ずることがなく、長時間耐えることができる。
(4)システム天井自体の質量は2kg/m以下である一方、補強懸吊体の構成部材は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材を使用し、補強ブレースに25mm×25mm×厚さ1.6mmの細径の角管を使用し、吊ボルトの太さをW3/8とすることにより、補強ブレースに作用する曲げ応力に対する抵抗力も増大し、これらの相乗効果により前述した効果を得ることができるので、当該システム天井に大地震による水平荷重が作用しても十分に耐えることができる。
【0010】
一般的な耐震天井では天井面に作用する水平力を支持する1対のブレースを負担面積毎に設置するが、本願発明では剛性が期待できないシステム天井の構造からメインTバーおよびクロスTバーの各ライン毎に設置することが特徴であり、これにより補強ブレースの設置位置の制約が大幅に緩和されるため、天井下地内に設置される設備配管や大空間に多く見られるトラス構造等、それらの影響を受けずに設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、メインTバーのライン方向の縦断面図であって、実施例に係る耐震機構の全体図である。
図2図2は、実施例に係る懸吊金具およびメインTバーの断面図である。
図3図3は、実施例に係る耐震機構の図面であり、(1)は正面図、(2)は側面図、(3)は平面図(見下げ図)である。
図4図4は、実施例に係る補強懸吊体の傾斜したメインTバーの取付状況を示す正面図である。 なお、図面では、メインTバーのライン方向に直交する方向から見た補強懸吊体を正面図としている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態に係る実施例について説明する。なお、図1ないし図4において、符号1は実施例に係る耐震機構、符号10は補強懸吊体、符号11は懸吊金具、符号111は懸吊金具本体、符号112は挟持カバー、符号12は囲繞金物、符号13は添設金物、符号20は補強ブレース、符号21はブレース受金具、符号30は吊ボルト囲繞管、符号40はメインTバー、符号41は上フランジ、符号411は開放筋、符号42は下フランジ、符号43はウエブ、符号44は突条、符号61は吊ボルト、符号62はブレース受金具、符号70は床スラブ、である。
【実施例0013】
まず、実施例に係るメインTバー40について、図2を参考に説明する。
メインTバー40は、主に幅の狭い上フランジ41と幅の広い下フランジ42と上フランジ41および下フランジ42を連結するウエブ43から構成されていて、逆さT字状を呈している。そして、下フランジ42は平板状であるものの、上フランジ41の断面はボックス状の四辺形でその上辺の中心部には筋状に開放された開放筋411を具えている。また、下フランジ42の下面中央に沿って断面が矢印のような突条44が形成されていて、そこに図示外の天井挟持金具が嵌め込まれて天井材を挟持するようになっている。
【0014】
つぎに、実施例に係るメインTバー40上に設置される耐震機構1について、図1ないし図4に基づいて説明する。
図1に示すように、メインTバー40上に設置される耐震機構1は、床スラブ70から吊り下げられる吊ボルト61の下部に設置される補強懸吊体10と、補強懸吊体10の両サイドからメインTバー40のライン方向に延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具21に連結する細径の角管で形成された一対の補強ブレース20、20と、から構成されている。なお、ブレース受金具21はスラブにアンカー止めされた溝形状の金具であり、その溝形に補強ブレース20が嵌合してビス止めされている。そして、耐震機構1を懸吊している吊ボルト61と補強ブレース20との挟角は、概ね30°ないし60°内に収まるようにすることが望ましい。
【0015】
補強懸吊体10は複数の部材が組み合わされて構成されていて、メインTバー40が吊ボルト51に懸吊されて仮止めされた後に設置されるが、その核部材となるのが、図2に示す懸吊金具11である。懸吊金具11は、補強挟持具本体111と補強挟持具本体111とは別体の補強挟持カバー112および補強挟持具本体111を補強する図示外の補強金具とから構成されている。
【0016】
補強挟持具本体111は平板を折り曲げて形成され、補強挟持具本体111の上部は水平方向に折り曲げられて、そこに吊ボルト61が貫通してボルト止めされている。そして補強挟持具本体111の下部はクランク状に折り曲げられて、その先端は開放筋411に挿入されて上フランジ41の上から補強挟持カバー112で覆われ、補強挟持カバー112とともに上フランジ41および補強挟持具本体111の下部がビス止めされる。さらに、図示外の補強金具は断面がコの字状であり補強挟持具本体111に嵌着していて、嵌着後は補強挟持具本体111の横断面が四角形となり、その断面の大きさは28.2mm×28.2mmとなる。この結果、補強挟持具本体111の曲げ強度が大きくなるとともに、後述する囲繞金物12との納まりが良くなる。
【0017】
つぎに、図3を参照して説明する。補強懸吊体10の構成部材である囲繞金物12は下部にメインTバー40の上フランジ41が挿通する挿通孔を有する横断面がコの字の溝形状の金物であって、コの字の開放面を補強挟持具11に向け、その両側から挿通孔を上フランジ41に挿入した後、補強挟持具11を囲繞するように、かつ溝形状の刃(フランジ)の部分が重なり合って固定される。さらに、添設金物13も下部にメインTバー40の上フランジ41が挿通する挿通孔を有する断面がコの字の金物であって、挿通孔を上フランジ41に挿入して囲繞金物12と背中合わせになるように、すなわちコの字の開放面を外側に向けて取り付け、一対の囲繞金物12および添設金物13をビス止めして固定する。これにより補強懸吊体10が形成される。そして、ボルト止めされた吊ボルト51の上部には補強用の吊ボルト補強角管30がその上下をボルトで締め付けられることにより挿着されていて、一対の囲繞金物12、12と吊ボルト補強角管30とはビス止めされている。なお、メインTバー40が水平状態における補強懸吊体10の大きさは、水平方向136mm×垂直方向146mm×厚さ28,6mmとなる。
【0018】
そして、補強懸吊体10の両サイドに位置する一対の添設金物13、13の開放面とスラブ下に固定されたブレース受金具62、62とを連結する一対の補強ブレース30、30を固定することにより耐震機構1の設置は完了する。なお、補強ブレース30は25mm×25mm×1.6mmの角管を使用している。
【0019】
また、図4は、メインTバー40が傾斜している場合である。この場合、メインTバー40の傾斜に伴って囲繞金物12と添設金物13が固定されているため、一対の囲繞金物12、12間にはずれが生じるが、ずれが生じた状態で囲繞金物12および添設金物13をビス止めして固定する。
【0020】
なお、実施例に係るクロスTバー上に設置される耐震機構については、前述した耐震機構1と略同様の構成であり、異なるところは、耐震機構1の構成部材である補強挟持具本体111の上部が吊ボルト61にボルト止めされているが、クロスTバー上に設置される耐震機構では吊ボルト61に代わって吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトがボルト止めされている点のみである。
【0021】
〔本願発明に係る耐震機構を有効に機能させるための条件〕
本願発明に係る耐震機構については、2023年4月に日本建築総合試験所で「天井面に作用する地震時の水平慣性力をブレースを介して支持構造物に伝えることができ、地震時の水平加速度2.2Gおよび鉛直加速度1Gに対して損傷しない性能を有すること。」を目標性能として実大試験をおこなった。その結果、以下の「適用範囲」を得た。
【0022】
(1)適用建築物は、新築、既存の別や構造種別、規模に制限を設けない。
(2)天井面の単位面積質量は2kg/m以下とする。
(3)天井面積、設置階に制限を設けない。ただし、設置場所は屋内とする。
(4)天井面の傾斜は22度以下とし、段差を設けない。
(5)天井吊り高さは3,000mm以下とし、概ね均一とする。ただし、鉄骨造の梁下にブレース補強材を取り付ける場合、梁下から天井面までの長さは2,500mm以下とする。
(6)吊りボルト間隔は1,820mm×910mm以下とし、釣合いよく設置する。
(7)メインTバーとクロスTバーの構成格子寸法は910mm×910mmとする。
(8)ブレースは全てのメインTバーおよびクロスTバーの通りに取り付ける場合と、1列おきに取り付ける場合の2種類とする。
(9)ブレースを支持するブレース補強材の支持スパンは5m以下とする。
(10)壁等の間には、それぞれの天井が有する補強ブレース設置部の構造、支持位置、天井の吊り長さ、負担距離等から計算によって必要なクリアランスを設けるが、最大でも40mm程度である。
【符号の説明】
【0023】
1 実施例に係る耐震機構
10 補強懸吊体
11 補強挟持具
111 挟持金具
112 吊着金具
113 補強金具
12 囲繞金物
13 添設金物
20 補強ブレース
21 ブレース受金具
40 メインTバー
41 上フランジ
411 開放筋
42 下フランジ
61 吊ボルト
70 床スラブ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅の広い下フランジと断面が四辺形で上辺が筋状に開放された開放筋を具える幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が多少の違いはあるものの概ね同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成し、格子状のメインTバーおよびクロスTバーから天井材を垂下するシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構であって、
前記耐震機構は、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置され、メインTバー上またはクロスTバー上に密着して固定される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、
メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の前記耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の前記耐震機構が固定され、
メインTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体はメインTバーを懸吊する1本の吊ボルトの下部に設置される一方、クロスTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体は所望の位置に設置されて吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトが連設され、
前記補強懸吊体は、本体が曲折した平板であり最下部に位置する本体の固定板がメインTバーの前記開放筋に挿入されて固定されるとともに、吊ボルトまたは疑似吊ボルトに連設する本体の上部は横断面が中空の四角形となるように補強された懸吊金具に、メインTバーまたはクロスTバーのライン方向の両側からフランジ同士が重ね合わされるように本体を囲繞する一対の溝形状の囲繞金物と、その下部が該上フランジに挿通されて一対の該囲繞金物のそれぞれに背中合わせに添設される一対の溝形状の添設金物と、からなる、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム天井の耐震機構であって、前記耐震機構を構成する前記補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して略左右対称であって左右の質量も略同一である、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステム天井の耐震機構であって、メインTバーおよびクロスTバーはアルミ押出形材であり、天井材を含む前記システム天井自体の質量は2kg/m2以下であり、前記補強懸吊体の構成部材である懸吊金具、囲繞金物および添設金物は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材であり、細径の角管である前記補強ブレースは25mm×25mm×厚さ1.6mmの鋼製であり、前記吊ボルトおよび前記疑吊ボルトの太さはW3/8である、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係るシステム天井の耐震機構は、幅の広い下フランジと断面が四辺形で上辺が筋状に開放された開放筋を具える幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が多少の違いはあるものの概ね同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成し、格子状のメインTバーおよびクロスTバーから天井材を垂下するシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構であって、前記耐震機構は、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置され、メインTバー上またはクロスTバー上に密着して固定される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の前記耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の前記耐震機構が固定され、メインTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体はメインTバーを懸吊する1本の吊ボルトの下部に設置される一方、クロスTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体は所望の位置に設置されて吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトが連設され、前記補強懸吊体は、本体が曲折した平板であり最下部に位置する本体の固定板がメインTバーの前記開放筋に挿入されて固定されるとともに、吊ボルトまたは疑似吊ボルトに連設する本体の上部は横断面が中空の四角形となるように補強された懸吊金具に、メインTバーまたはクロスTバーのライン方向の両側からフランジ同士が重ね合わされるように本体を囲繞する一対の溝形状の囲繞金物と、その下部が該上フランジに挿通されて一対の該囲繞金物のそれぞれに背中合わせに添設される一対の溝形状の添設金物と、からなる、ことを特徴としている。
なお、本明細書では、メインTバーおよびクロスTバーの設置方向(流し方向)をライン方向ということにする。
また、本願請求項2に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1に記載のシステム天井の耐震機構であって、前記耐震機構を構成する前記補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して略左右対称であって左右の質量も略同一である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1または請求項2に記載のシステム天井の耐震機構であって、メインTバーおよびクロスTバーはアルミ押出形材であり、天井材を含む前記システム天井自体の質量は2kg/m2以下であり、前記補強懸吊体の構成部材である懸吊金具、囲繞金物および添設金物は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材であり、細径の角管である前記補強ブレースは25mm×25mm×厚さ1.6mmの鋼製であり、前記吊ボルトおよび前記疑吊ボルトの太さはW3/8である、ことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本願発明は上記の構成により以下の効果を奏する。
(1-イ)メインTバーおよびクロスTバーの上フランジの断面は上部が解放されたボックス状になっているため、メインTバーおよびクロスTバー自体の曲げ剛性が大きくなって、曲がりにくくなり、従来の上フランジが平板状のシステム天井に比べてロングスパンでも扱いやすい。
(1-ロ)また、本願発明に係る耐震機構は、メインTバーが吊ボルトに懸吊されて仮止めされた後に、耐震機構を構成する各部材(補強懸吊体とそれに連結固定される補強ブレース)が配置されて固定されるので、システム天井自体の傾斜に合致したものとなる。
(1-ハ)そして、クロスTバーが傾斜している場合であっても、メインTバーの位置が確定し、それによりクロスTバーの位置や傾きも確定し、クロスTバー上の補強懸吊体とそれに連結固定される補強ブレースが配置されて固定されるため、クロスTバーの傾斜に馴染んだものとなる。
(1-ニ)実大実験によって得た出願人の知見では、本願発明に係る耐震機構は概ね66mのロングスパンを負担することができるので、メインTバーあるいはクロスTバーの各ライン上に1ヶ所設置すれば、ほぼ全てのシステム天井に対して所定の耐震効果を得ることができる。
1-ホ)メインTバー上の耐震機構は吊ボルトの真下に設置される補強懸吊体と一対の補強ブレースから形成されているので、設置場所にある程度の制約を受けるが、クロスTバー上の耐震機構は任意の位置に設置されるので、設備配管等による設置個所の制約が少ない。
)耐震機構を構成する補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して左右対称であり、左右の質量も略同一であるので、地震による繰り返し外力が作用しても、これらの部材に偏心やねじれが生ずることがなく、長時間耐えることができる。
)システム天井自体の質量は2kg/m以下である一方、補強懸吊体の構成部材は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材を使用し、補強ブレースに25mm×25mm×厚さ1.6mmの細径の角管を使用し、吊ボルトの太さをW3/8とすることにより、補強ブレースに作用する曲げ応力に対する抵抗力も増大し、これらの相乗効果により前述した効果を得ることができるので、当該システム天井に大地震による水平荷重が作用しても十分に耐えることができる。
以上
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅の広い下フランジと断面が四辺形で上辺が筋状に開放された開放筋を具える幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が多少の違いはあるものの概ね同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成し、格子状のメインTバーおよびクロスTバーから天井材を垂下するシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構であって、
前記耐震機構は、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置され、メインTバー上またはクロスTバー上に密着して固定される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、
メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の前記耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の前記耐震機構が固定され、
メインTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体はメインTバーを懸吊する1本の吊ボルトの下部に設置される一方、クロスTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体は所望の位置に設置されて吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトが連設され、
前記補強懸吊体は、本体が曲折した平板であり最下部に位置する本体の固定板がメインTバーの前記開放筋に挿入されて固定されるとともに、吊ボルトまたは疑似吊ボルトに連設する本体の上部は横断面が中空の四角形となるように補強された懸吊金具に、メインTバーまたはクロスTバーのライン方向の両側からフランジ同士が重ね合わされるように本体を囲繞する一対の溝形状の囲繞金物と、その下部が該上フランジに挿通されて一対の該囲繞金物のそれぞれに背中合わせに添設される一対の溝形状の添設金物と、からなる、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム天井の耐震機構であって、前記耐震機構を構成する前記補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して略左右対称であって左右の質量も略同一である、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステム天井の耐震機構であって、メインTバーおよびクロスTバーはアルミ押出形材であり、天井材を含む前記システム天井自体の質量は2kg/m以下であり、前記補強懸吊体の構成部材である懸吊金具、囲繞金物および添設金物は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材であり、細径の角管である前記補強ブレースは25mm×25mm×厚さ1.6mmの鋼製であり、前記吊ボルトおよび前記疑似吊ボルトの太さはW3/8である、ことを特徴とするシステム天井の耐震機構。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係るシステム天井の耐震機構は、幅の広い下フランジと断面が四辺形で上辺が筋状に開放された開放筋を具える幅の狭いボックス状の上フランジを有する逆さT字状のメインTバーに断面が多少の違いはあるものの概ね同形のクロスTバーを平面的に交差させて格子状に形成し、格子状のメインTバーおよびクロスTバーから天井材を垂下するシステム天井の天井下地内に設置される耐震機構であって、前記耐震機構は、メインTバーおよびクロスTバーの各ライン上に設置され、メインTバー上またはクロスTバー上に密着して固定される補強懸吊体と、該補強懸吊体の両サイドから延伸してスラブ下に固定されたブレース受金具に連結する細径の角管で形成される一対の補強ブレースと、から構成され、メインTバーが吊ボルトに懸吊されて所定の位置で仮止めされた後にメインTバー上の前記耐震機構が固定され、その後にクロスTバー上の前記耐震機構が固定され、メインTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体はメインTバーを懸吊する1本の吊ボルトの下部に設置される一方、クロスTバー上に設置される前記耐震機構の補強懸吊体は所望の位置に設置されて吊ボルトと同径で長さの短い疑似吊ボルトが連設され、前記補強懸吊体は、本体が曲折した平板であり最下部に位置する本体の固定板がメインTバーの前記開放筋に挿入されて固定されるとともに、吊ボルトまたは疑似吊ボルトに連設する本体の上部は横断面が中空の四角形となるように補強された懸吊金具に、メインTバーまたはクロスTバーのライン方向の両側からフランジ同士が重ね合わされるように本体を囲繞する一対の溝形状の囲繞金物と、その下部が該上フランジに挿通されて一対の該囲繞金物のそれぞれに背中合わせに添設される一対の溝形状の添設金物と、からなる、ことを特徴としている。
なお、本明細書では、メインTバーおよびクロスTバーの設置方向(流し方向)をライン方向ということにする。
また、本願請求項2に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1に記載のシステム天井の耐震機構であって、前記耐震機構を構成する前記補強懸吊体および一対の前記補強ブレースはメインTバーまたはクロスTバーの平面上の中心線に対して略左右対称であって左右の質量も略同一である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係るシステム天井の耐震機構は、請求項1または請求項2に記載のシステム天井の耐震機構であって、メインTバーおよびクロスTバーはアルミ押出形材であり、天井材を含む前記システム天井自体の質量は2kg/m以下であり、前記補強懸吊体の構成部材である懸吊金具、囲繞金物および添設金物は厚さが1.6mmの鋼板の折り曲げ材であり、細径の角管である前記補強ブレースは25mm×25mm×厚さ1.6mmの鋼製であり、前記吊ボルトおよび前記疑似吊ボルトの太さはW3/8である、ことを特徴としている。
以上