(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172718
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】回転電機用ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20241205BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02K3/24 Z
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090617
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅志
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA13
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CB26
5H603CC05
5H603CD02
5H603CD06
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE05
5H604AA03
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DB06
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】回転電機用ステータのスロットにコイルを容易に固定するとともに、コイルを効率よく冷却する。
【解決手段】回転電機用ステータは、コイルを包囲するようにスロット22に配置された絶縁部材を備える。周方向複数のスロット22は、周方向に互いに所定スロット数だけ離れた第1スロット22Aと第2スロット22Bとを含み、コイルは、第1スロット22Aに配置された直線部214と第2スロット22Bに配置された直線部215とを一体に有する略U字状の複数の導体セグメント210を有する。回転電機用ステータは、第1スロット22A内の絶縁部材と直線部214との間に充填された発泡体45をさらに備え、第2スロット22B内の絶縁部材と直線部215との間に、冷却油が流れる空隙が設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する周方向複数のスロットが設けられたステータコアと、
前記スロットに配置されたコイルと、
前記コイルを包囲するように前記スロットに配置された絶縁部材と、を備える回転電機用ステータであって、
前記周方向複数のスロットは、周方向に互いに所定スロット数だけ離れた第1スロットと第2スロットとを含み、
前記コイルは、前記第1スロットに配置された第1コイル部と前記第2スロットに配置された第2コイル部とを一体に有する略U字状の複数のセグメントコイルを有し、
前記絶縁部材は、前記第1スロットに配置された第1絶縁部材と前記第2スロットに配置された第2絶縁部材とを有し、
前記回転電機用ステータは、前記第1絶縁部材と前記第1コイル部との間に充填された発泡体をさらに備え、
前記第2絶縁部材と前記第2コイル部との間に、冷却媒体が流れる空隙が設けられることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記発泡体は、予め前記第1絶縁部材のみの表面に設けられた発泡層により構成されることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記所定スロット数は、所定の奇数であり、
前記発泡体は、前記周方向複数のスロットに周方向1つおきに設けられることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記複数のセグメントコイルは、第1セグメントコイルと第2セグメントコイルとを含み、
前記第1セグメントコイルの前記第2コイル部と前記第2セグメントコイルの第1コイル部とは、周方向に所定スロット数だけ離れて配置されるとともに、互いに接続され、
前記所定スロット数は、所定の奇数であり、
前記発泡体は、前記周方向複数のスロットに周方向1つおきに設けられることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記ステータコアは、前記空隙に冷却媒体を導くように前記第2スロットの周囲に設けられた流路を有することを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記流路は、前記第2スロットの径方向かつ軸方向に延在する側面に設けられることを特徴とする回転電機用ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステータコアに設けられたスロットに絶縁紙が配置されるとともに、絶縁紙の内側にコイルが配置されてなるステータが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載のステータでは、絶縁紙の一方の表面に発泡材料層が設けられ、発泡材料層を加熱して発泡させることで、コイルに押し付け力を付与してコイルを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のステータのようにスロット内で発泡材料層を発泡させると、コイルの周囲に冷却媒体を流すことができず、コイルを効率的に冷却することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である回転電機用ステータは、軸方向に延在する周方向複数のスロットが設けられたステータコアと、スロットに配置されたコイルと、コイルを包囲するようにスロットに配置された絶縁部材と、を備える。周方向複数のスロットは、周方向に互いに所定スロット数だけ離れた第1スロットと第2スロットとを含み、コイルは、第1スロットに配置された第1コイル部と第2スロットに配置された第2コイル部とを一体に有する略U字状の複数のセグメントコイルを有し、絶縁部材は、第1スロットに配置された第1絶縁部材と第2スロットに配置された第2絶縁部材とを有し、回転電機用ステータは、第1絶縁部材と第1コイル部との間に充填された発泡体をさらに備え、第2絶縁部材と第2コイル部との間に、冷却媒体が流れる空隙が設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ステータのコイルを固定しつつ、コイルを効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータを含む回転電機の要部構成を示す断面図。
【
図3A】スロットに配置される非発泡絶縁部材の構成を示す斜視図。
【
図3B】スロットに配置される発泡絶縁部材の構成を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータの製造工程を説明する斜視図。
【
図5】コイルを構成する導体セグメントの配置の一例を示す図。
【
図7】
図6のコイルのうち、U相コイルの接続形態を示す図。
【
図8】
図4のVIII-VIII線に沿ったステータコアの断面図。
【
図9】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータの要部断面図であり、冷却油の流れを示す図。
【
図10】第1変形例に係る回転電機用ステータとしての
図8の変形例を示す図。
【
図11】第1変形例に係る回転電機用ステータの要部断面図であり、冷却油の流れを示す図。
【
図13】第2変形例に係る回転電機用ステータとしての
図8の変形例を示す図。
【
図14】第2変形例に係る回転電機用ステータの要部断面図であり、冷却油の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図14を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機用ステータを含む回転電機100の要部構成を示す断面図である。回転電機100は、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載され、車両駆動用の電動機として用いることができ、発電機として用いることもできる。なお、回転電機100は、車両以外に搭載し、種々の用途に用いることもできる。
【0009】
図1は、回転電機100の要部構成を示す軸線CL0に直交する断面図である。
図1に示すように、回転電機100は、軸線CL0を中心に回転するロータ1と、ロータ1の外周面1aを包囲するようにロータ1の外側に設けられたステータ2とを備える。ステータ2の周囲にはケース3が配置される。以下では、軸線CL0の延在する方向を軸方向、軸線CL0から放射状に延びる方向を径方向、軸線CL0を中心とした円の円周に沿った方向を周方向と定義する。
【0010】
回転電機100は、例えば埋込磁石型同期モータとして構成される。したがって、ロータ1は、軸線CL0を中心とした略円環形状のロータコア10と、ロータコア10に形成された周方向複数の磁極部(不図示)と、を有する。なお、磁極部には永久磁石が埋設される。ロータコア10の内周面10aには、例えば回転電機100の出力軸を構成する不図示のロータシャフトが嵌合され、ロータ1はロータシャフトと一体に回転する。ロータ1の外周面1aはロータコア10の外周面に相当する。ロータコア10は、磁性体である金属製の複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して形成される。
【0011】
ステータ2は、ロータ1の外周面1aから径方向に所定の間隔を隔てて配置された内周面20aを有する軸線CL0を中心とした略円環状のステータコア20と、ステータコア20に取り付けられたコイル21と、を有する。ステータコア20は、磁性体である金属製の複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成される。
【0012】
ステータコア20は、略円筒形状のヨーク24から径方向内側に向けて周方向等間隔に突設された周方向複数のティース23を有する。周方向に隣り合うティース23の間には、内周面20aから径方向外側に向けて周方向複数のスロット22が設けられ、各スロット22にコイル21が装着される。なお、
図1では、周方向一部のスロット22のみを示す。スロット22の総数は例えば48である。スロット22の総数は48より多くてもよく、少なくてもよい。ステータコア20の外周面20bは、ケース3の内周面31に液密に嵌合される。
【0013】
コイル21は、略矩形断面を有する導体である。なお、コイル21は円形断面を有する導体であってもよい。コイル21は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを含み、3相コイルとして構成される。U相コイル、V相コイルおよびW相コイルは、それぞれU相引き出し線、V相引き出し線およびW相引き出し線を介して不図示の電力変換装置等と電気的に接続される。回転電機100を電動機として用いる場合には、電力変換装置から各コイル21に3相の交流電力が供給される。これにより、ステータ2に磁界が発生し、この磁界とロータ1の磁極部の永久磁石によって発生する磁界とが相互作用することにより、ロータ1が回転する。その結果、走行駆動力が発生し、車両が走行する。回転電機100を発電機として用いる場合には、回転電機100の駆動によって生じた3相の交流電力を、不図示の電力変換装置等に供給する。
【0014】
図2は、
図1のステータ2の要部拡大図である。
図2に示すように、スロット22は、ステータコア20の内周面20aに設けられた開口221と、開口221の径方向外側に設けられた収容部222とを有する。収容部222は、径方向に延在して互いに対向する一対の側面222a,222bと、一対の側面222a,222bを接続する径方向外側の底面222cとを有する。収容部222の幅、すなわち一対の側面222a,222b間の距離(周方向長さ)は、径方向外側にわたって一定であり、収容部222は、径方向に細長の断面略矩形状に形成される。ティース23は、径方向内側の先端部に、周方向両側に突設された突出部231を有し、一対の突出部231(ティース先端部)の間に開口221が設けられる。収容部222の幅は、開口221の幅よりも大きい。
【0015】
スロット22には、2種類の絶縁部材41,42が周方向交互に配置される。絶縁部材41,42はいずれも略直方体形状の収容空間SP1を形成し、絶縁部材41,42の内側の収容空間SP1に、コイル21を形成する4本の導体セグメント210が径方向に並べて配置される。なお、スロット内の導体セグメント210の本数は4本より多くてもよく、少なくてもよい。絶縁部材41は、絶縁機能を有し、発泡接着層を含まない単層ないし複層構造の部材である。絶縁部材42は、絶縁機能を有し、発泡接着層を含む複層構造の部材である。したがって、絶縁部材41を非発泡絶縁部材と呼び、絶縁部材42を発泡絶縁部材と呼ぶことがある。
【0016】
図3Aは、非発泡絶縁部材41の全体構成を示す斜視図であり、
図3Bは、発泡絶縁部材42の全体構成を示す斜視図である。なお、
図3A,
図3Bで、X方向、Y方向およびZ方向は、それぞれ軸方向、周方向および径方向に相当する。
【0017】
図3Aに示すように、非発泡絶縁部材41は、電気絶縁性を有する樹脂を構成材とした略矩形のシート状の絶縁基材43を、略矩形の枠形状を呈するように折り曲げて形成される。より詳しくは、非発泡絶縁部材41は、互いに略平行に延在する一対の側壁411,412と、互いに略平行に延在する一対の周壁413,414とを有する。
図2に示すように、側壁411,412は、スロット22の一対の側面222a,222bに対向する。周壁413は、スロット22の底面222cに対向する。周壁414は、スロット22の開口221を塞ぐようにティース23の一対の突出部231の径方向外側の周面に当接する。
図3Aに示すように、周壁413の軸方向中央部には、周壁413を貫通する略矩形状の開口415が設けられる。
【0018】
図3Bに示すように、発泡絶縁部材42も、非発泡絶縁部材41と同様、略矩形の枠形状を呈するように、略矩形のシート状の絶縁基材43を折り曲げて形成される。但し、非発泡絶縁部材41と異なり、発泡絶縁部材42の絶縁基材43の表面には、その全面ないしほぼ全面にわたって発泡層44が形成され、発泡層44が内側となるように絶縁基材43が折り曲げられる。発泡層44は、例えばエポキシ系発泡樹脂材料等の熱硬化型発泡性樹脂材料によって構成される。発泡層44は、熱可塑性樹脂材料によって構成されてもよい。発泡層44は、所定温度まで加熱されることにより発泡して膨張し、発泡体となる。これにより、
図2に示すように、コイル21と発泡絶縁部材42との間の空隙が、発泡体45で満たされる。なお、以下では便宜上、発泡層44が発泡体45となった後は、発泡体45を発泡絶縁部材42とは別部材として扱うが、発泡体45を発泡絶縁部材42の一部として扱い、発泡絶縁部材42が発泡体45を有するとすることもできる。
【0019】
発泡絶縁部材42は、非発泡絶縁部材41と同様、互いに略平行に延在する一対の側壁421,422と、互いに略平行に延在する一対の周壁423,424とを有する。但し、非発泡絶縁部材41と異なり、周壁423の軸方向中央部に開口は設けられない。
図2に示すように、側壁421,422は、スロット22の一対の側面222a,222bに対向する。周壁423は、スロット22の底面222cに対向する。周壁424は、スロット22の開口221を塞ぐようにティース23の一対の突出部231の径方向外側の周面に当接する。
【0020】
図3A,
図3Bに示すように、絶縁部材41、42の軸方向両端部には、略矩形状の開口46,47が設けられ、コイル21(
図2)は、開口46および開口47を介してスロット22の外側に突出する。非発泡絶縁部材41において、絶縁基材43の一端部431と他端部432とは、側壁411と周壁413との境界部において互いに当接する。発泡絶縁部材42において、絶縁基材43の一端部431には発泡層44が設けられず、この絶縁基材43の一端部431と他端部432とは、側壁421と周壁423との境界部において互いに当接する。なお、一端部431と他端部432とは、他の位置で当接してもよく、互いに重なり合ってもよい。
【0021】
図4は、ステータ2の組立工程の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、ステータコア20のスロット22には、ステータコア20の一端面200aから他端面200bに向けて軸方向に沿って絶縁部材41,42が挿入される。すなわち、非発泡絶縁部材41と発泡絶縁部材42とが周方向交互に位置するように、絶縁部材41,42が挿入される。絶縁部材41,42の軸方向長さはステータコア20の軸方向長さと同一であり、絶縁部材41、42はステータコア20の軸方向端面から突出せずにステータコア20の内側に配置される。なお、絶縁部材41,42の軸方向長さがステータコア20の軸方向長さよりも長くてもよく、短くてもよい。
【0022】
絶縁部材41,42の内側の収容空間SP1には、軸方向に沿って導体セグメント210挿入される。
図4には便宜上、2個の導体セグメント210が示される。導体セグメント210は、互いに平行に延在する一対の脚211,212と、一対の脚211,212の端部同士を接続する頂部213とを有し、全体が略U字状を呈する。脚211,212は、それぞれ頂部213に連なる直線部214,215と、スロット22に挿入後に屈曲される傾斜部216,217と、傾斜部216,217の先端の接合部218,219と、を含む。導体セグメント210は、銅等の導電材料からなる平角線によって形成され、接合部218,219を除き、絶縁被膜により被覆される。
【0023】
直線部214,215は、絶縁部材41,42の軸方向長さと同一またはそれよりも長尺である。したがって、導体セグメント210を収容空間SP1に挿入した状態では、頂部213がステータコア20の一端面200aから突出し、傾斜部216,217がステータコア20の他端面200bから突出する。ステータコア20から突出した導体セグメント210の一端側(頂部側)は、クローズ側コイルエンドとなり、他端側(先端側)は、オープン側コイルエンドとなる。
【0024】
導体セグメント210の先端の接合部218,219は、同一の相を構成する他の導体セグメント210の先端の接合部218,219と電気的および物理的に接続される。このように複数の導体セグメント210を接続することにより、周方向複数のティース23を巻回するようにコイル21が形成される。
【0025】
発泡絶縁部材42は、絶縁部材41,42の内側に導体セグメント210が挿入された後、不図示の加熱用治具等を用いて加熱される。例えば、ステータコア20の内周面20aが全周にわたって加熱されることで、全ての発泡絶縁部材42が同時に加熱される。発泡絶縁部材42が所定温度まで上昇すると、発泡層44(
図3B)が発泡して膨張し、
図2に示す発泡体45となる。
【0026】
図5は、スロット22を周方向に沿って平面に展開した図である。
図5には、スロット内に挿入された導体セグメント210が模式的に示される。なお、
図5では、絶縁部材41,42の図示を省略する。
図5には、一例として、周方向に隣り合う一対の導体セグメント210A,210Bが示される。
【0027】
図5に示すように、導体セグメント210の傾斜部216,217は周方向に屈曲される。例えば導体セグメント210Aの傾斜部216が導体セグメント210B側(周方向外側)に屈曲され、導体セグメント210Bの傾斜部217が導体セグメント210A側(周方向外側)に屈曲される。なお、導体セグメント210の傾斜部216,217は、周方向外側ではなく周方向内側に屈曲されてもよい。
【0028】
さらに、導体セグメント210A,210Bは、周方向に隣り合う接合部218,219が互いに対向するように先端部が屈曲される。互いに対向する導体セグメント210Aの接合部219と導体セグメント210Bの接合部218とは、レーザ溶接などによって接合される。これにより複数の導体セグメント210が電気的および物理的に接続され、コイル21が形成される。
【0029】
導体セグメント210Aの直線部214,215は、周方向に所定スロット数SL1だけ飛び越えた一対のスロット22,22、すなわち第1スロット22Aと第2スロット22Bとにそれぞれ挿入される。周方向複数(48個)のスロット22を1から順番に番号付けすると、第1スロット22Aは奇数番のスロット22の総称であり、第2スロット22Bは偶数番のスロット22の総称である。なお、第1スロット22Aが偶数番のスロット22の総称であり、第2スロット22Bが奇数番のスロット22の総称であってもよい。これにより所定スロット数SL1が奇数となる。所定スロット数SL1は例えば5であり、直線部214が挿入される第1スロット22Aをn番スロットとすると、直線部215が挿入される第2スロット22Bはn+5番スロットである。なお、所定スロット数SL1は5以外の奇数であってもよい。
【0030】
また、導体セグメント210Bの直線部214と導体セグメント210Aの直線部215とは、周方向に所定スロット数SL2だけ飛び越えた一対のスロット22,22、すなわち奇数番の第1スロット22Aと偶数番の第2スロット22Bとにそれぞれ挿入される。例えば直線部214が第1スロット22Aに、直線部215が第2スロットに22Bに挿入される。直線部214が第2スロット22Bに、直線部215が第1スロット22Aに挿入されてもよい。所定スロット数SL2は例えば7であり、導体セグメント210Aの直線部215が挿入される第2スロット22Bを上述したようにn+5番スロットとすると、導体セグメント210Bの直線部214が挿入される第1スロット22Aはn+12番スロットである。なお、所定スロット数SL2は7以外の奇数であってもよい。
【0031】
このように所定スロット数SL1を所定の奇数(例えば5)に、所定スロット数SL2を所定の奇数(例えば7)に設定することで、導体セグメント210の一方の直線部214が発泡絶縁部材42(
図3B)の内側に、他方の直線部215が非発泡絶縁部材41(
図3A)の内側に挿入されるようになる。これにより、
図5に示すように収容空間SP1内の直線部214の周囲の隙間が発泡体45で満たされ、導体セグメント210が拘束される。その結果、発泡体45を介して導体セグメント210をステータコア20に固定することができ、コイル21をスロット内の所定位置に保持することができる。
【0032】
図6は、コイル21の配置パターンの一例を示す図である。
図6では、周方向(Y方向)に連続する一部(15個)のスロット22を平面に展開して示しており、各スロット22に、便宜上、1~15の番号が付されている。各スロット22には、径方向(Z方向)に4つのコイル21が配置されるが、これらをZ方向に沿って内径側から順番に1段目コイル、2段目コイル、3段目コイルおよび4段目コイルと呼ぶ。
図6では、V相のコイル21(21V)が1本の斜線で、W相のコイル21(21W)が2本の斜線で示される。U相のコイル21(21U)は斜線なしで示される。
【0033】
図6に示すように、奇数番のスロット22(1番スロット、3番スロット,・・・,15番スロット)には、互いに異なる相のコイル21が配置される。したがって、コイル21は2相巻きで配置される。なお、偶数番のスロット22(2番スロット,4番スロット,・・・,14番スロット)には、互いに同一の相のコイル21がそれぞれ配置される。
【0034】
より具体的には、1番スロットの1段目および3段目にはV相コイル21Vが、2段目および4段目にはU相コイル21Uが配置される。2番スロットにはU相コイル21Uのみが配置される。3番スロットの1段目および3段目にはU相コイル21Uが、2段目および4段目にはW相コイル21Wが配置される。4番スロットにはW相コイル21Wのみが配置される。5番スロットの1段目および3段目にはW相コイル21Wが、2段目および4段目にはV相コイル21Vが配置される。6番スロットにはV相コイル21Vのみが配置される。1番スロット~6番スロットにおけるコイル21の配置は、7番スロット以降において繰り返される。すなわち、コイル21の配置は6スロット毎に周期的に繰り返される。
【0035】
4段目のスロット22に配置された一部のコイル21には、U相引き出し線、V相引き出し線およびW相引き出し線がそれぞれ接続され、これら引き出し線を介してコイル21に交流電力が供給される。例えば2番スロット4段目および3番スロット4段目のU相コイル21UにそれぞれU相引き出し線が接続され、4番スロット4段目および5番スロット4段目のW相コイル21WにそれぞれW相引き出し線が接続され、6番スロット4段目および7番スロット4段目のV相コイル21VにそれぞれV相引き出し線が接続される。また、4段目のスロット22に配置された一部のコイル21には、電気的な中点が接続される。例えば8番スロット4段目および9番スロット4段目のU相コイル21U、10番スロット4段目および11番スロット4段目のW相コイル21W、および12番スロット4段目および13番スロット4段目のV相コイル21Vがそれぞれ中点に接続される。
【0036】
図7は、
図6のコイル21のうち、U相コイル21Uの接続形態を模式的に示す図であり、U相引き出し線から中点に至る電気回路を、便宜上、前半(U相引き出し線側)と後半(中点側)とに分けて示している。図中、実線L12,L14,L15,L17は、異なる導体セグメント同士の溶接による接続(
図5の導体セグメント210Aと導体セグメント210Bの接続)を、点線L11,L13,L16,L18は、導体セグメント210の頂部213を介しての直線部214,215の接続(
図5の導体セグメント210Aの直線部214,215の接続)を、それぞれ示す。電流は、例えばL11、L12、L13、L14、L18、L17、L16、L15の順番に流れる。図示は省略するが、V相コイルとW相コイルの接続形態も
図7と同様である。
【0037】
図7に示すように、7番スロット3段目と14番スロット4段目、7番スロット1段目と14番スロットの2段目、2番スロット3段目と9番スロット4段目、2番スロット1段目と9番スロット2段目のU相コイル同士が互いに接続される。すなわち、周方向に7スロット飛び越えたコイル同士が互いに接続される。また、2番スロット4段目と7番スロット3段目、2番スロット2段目と7番スロット1段目、9番スロット4段目と14番スロット3段目、9番スロット2段目と14番スロット1段目のU相コイル同士が互いに接続される。すなわち、周方向に5スロット飛び越えたコイル同士が互いに接続される。
【0038】
図示は省略するが、8番スロット3段目と15番スロット4段目、8番スロット1段目と15番スロットの2段目、1番スロット3段目と8番スロット4段目、1番スロット1段目と8番スロット2段目のU相コイル同士も互いに接続される。また、3番スロット4段目と8番スロット3段目、3番スロット2段目と8番スロット1段目、8番スロット4段目と13番スロット3段目、8番スロット2段目と13番スロット1段目のU相コイル同士が互いに接続される。
【0039】
図5には、接合部218,219を含むオープン側コイルエンド201が、便宜上、帯状の範囲で示される。このオープン側コイルエンド201には、複数の導体セグメント210の接合部218,219が互いに溶接された後、絶縁処理が施される。例えば電気絶縁性を有する粉体塗料を溶着させる粉体塗装が行われる。粉体塗料は、熱可溶性樹脂を含む粉体であり、溶着させた粉体塗料を硬化させることによりオープン側コイルエンド201に絶縁部を形成することができる。
【0040】
このように粉体塗装により絶縁処理が施されることにより、オープン側コイルエンド201が固着され、コイル21を固定することができる。つまり本実施形態では、導体セグメント210の脚211が、発泡体45を介してスロット内で固定されるが、これに加え、脚211,212の先端部であるオープン側コイルエンド201が絶縁部を介して固定される。これにより、個々の導体セグメント210をステータコア20に固定することができ、複数の導体セグメント210からなるコイル21をステータコア20に強固に固定することができる。
【0041】
図2に示すように、本実施形態では、発泡絶縁部材42とコイル21との間の空隙が発泡体45により塞がれるが、非発泡絶縁部材41とコイル21との間には空隙CLが設けられたままである。この空隙CLには、ステータ2の外部から冷却油が導かれ、冷却油の流れによりコイル21が冷却される。以下、この点について説明する。
図4に示すように、ステータコア20の外周面20bには、ステータコア20の軸方向中央部に、全周にわたって所定深さの溝200が設けられる。
【0042】
図1に示すように、ステータコア20の外周面20bはケース3の内周面31によって液密に覆われる。これにより、溝200(
図1の点線)とケース3の内周面31との間に、軸線CL0を中心とした円環状の流路PA0が形成される。ケース3の外周面には、冷却油供給用のフランジ部32が設けられる。フランジ部32は、例えばケース3の外周面の重力方向最上部に設けられる。フランジ部32には、ケース3を径方向に貫通する貫通孔32aが穿設され、貫通孔32aを介してケース3の外部空間と流路PA0とが連通する。
【0043】
図8は、
図4のVIII-VIII線に沿ったステータコア20の単体の断面図である。なお、
図8では、ステータコア20の周方向の一部(3スロット分)のみを示す。
図8に示すように、スロット22は、発泡絶縁部材42が配置される奇数番の第1スロット22Aと、非発泡絶縁部材41が配置される偶数番の第2スロット22Bとを周方向交互に有する。第1スロット22Aは、導体セグメント210の脚211(直線部214)を固定する固定用スロットであり、第2スロット22Bは、冷却油が供給される冷却油用スロットである。
【0044】
ステータコア20の溝200の底面には、周方向複数の第2スロット22Bの底面に向けて延在し、ステータコア20を径方向に貫通する複数の貫通孔202が穿設される。換言すると、ステータコア20には、第2スロット22Bの径方向外側のヨーク24に、径方向に延在する貫通孔202が設けられる。貫通孔202は油路を構成する。これによりケース3の貫通孔32a、流路PA0、およびステータコア20の貫通孔202を介して、ケース3の外部から第2スロット22Bの内部に冷却油を導くことができる。なお、第1スロット22Aの径方向外側のヨーク24に貫通孔は設けられない。このため、ステータコア20に設けられる貫通孔202の面積は最小限に抑えられ、貫通孔202を設けたことによる回転電機100の性能低下を抑えることができる。
【0045】
図9は、
図1のケース3の貫通孔32aの中心線に沿った軸線CL0に直交する断面図であり、回転電機100の要部を拡大して示す図である。
図9に矢印で示すように、ケース3の外部から供給された冷却油は、ケース3の貫通孔32aを介してステータコア20の外周面に設けられた流路PA0に流入する。流路PA0に流入した冷却油は、流路PA0に沿って周方向に流れるとともに、ステータコア20の周方向複数の貫通孔202および非発泡絶縁部材41の開口415を介して非発泡絶縁部材41の内側の収容空間SP1に流入する。
【0046】
収容空間SP1に流入した冷却油は、非発泡絶縁部材41とコイル21との空隙CLおよび径方向に隣り合うコイル21同士の空隙CLを通り、軸方向に流れる。そして、非発泡絶縁部材41の軸方向両端部の開口46,47(
図3A)を介して収容空間SP1の外部に流出する。これにより、コイル21に沿って冷却油が流れ、コイル21を効率よく冷却することができる。また、開口46,47から冷却油が流出するので、オープン側およびクローズ側のコイルエンドを効率よく冷却することができる。
【0047】
このとき、非発泡絶縁部材41の内側を冷却油が流れることにより、非発泡絶縁部材41の近傍のステータコア20が間接的に冷却される。すなわち、非発泡絶縁部材41の内側における冷却油の流れにより、第2スロット22Bの温度が低下するとともに、矢印Qに示すような第1スロット22A側から第2スロット22B側への伝熱により、第1スロット22A側の温度も低下する。このため、発泡絶縁部材42の内側に冷却油は流れないが、発泡絶縁部材42の周囲の温度を低下させることができ、ステータコア20を周方向に良好に冷却することができる。
【0048】
以上では、非発泡絶縁部材41の径方向外側の周壁413に、冷却油供給用の開口415を設けたが、冷却油供給用の開口を、非発泡絶縁部材41の他の位置に設けてもよい。
図10~
図12は、その一例である回転電機100の第1変形例を示す図であり、非発泡絶縁部材41の側面から冷却油を供給する例を示す図である。
【0049】
図10は、
図7の変形例を示すステータコア20の断面図である。なお、
図10は、
図8と異なり、ステータコア20の軸方向中央部からずれた箇所における断面図であり、ステータコア20の軸方向中央部の溝200は点線で示される。
図10に示すように、ステータコア20の軸方向中央部には、溝200の底面から径方向内側に向けて細長形状の油孔203が設けられる。より詳しくは、油孔203は、第1スロット22Aの側面222aと第2スロット22Bの側面222bとの間であり、かつ、第2スロット22Bの近傍に、径方向に延設される。油孔203の先端部は、ステータコア20の内周面20aよりも径方向外側に位置する。
【0050】
第2スロット22Bの側面222bには、径方向3箇所に、軸方向に延在する断面略矩形状の溝223が設けられる。これらの溝223は、ステータコア20の軸方向中央部において油孔203と連通し、油路を構成する。これによりステータコア20の貫通孔202および溝223を介して、第2スロット22Bの側面222bから第2スロット22Bの内部に冷却油を導くことができる。
【0051】
図11は、第1変形例に係る回転電機100の要部を拡大して示す断面図であり、
図9と同様、
図1のケース3の貫通孔32aの中心線に沿った軸線CL0に直交する断面図である。
図12は、非発泡絶縁部材41の側壁412の正面図(
図11の矢視XII図)である。
図11,
図12に示すように、非発泡絶縁部材41の径方向外側の周壁413には開口が設けられず、側壁412に開口416が設けられる。より詳しくは、
図12に示すように、側壁412には、第2スロット22Bの溝223の位置に対応して径方向3箇所に、かつ、軸方向に所定間隔で、略矩形状の複数の開口416が設けられる。
【0052】
図11に矢印で示すように、ケース3の外部から供給された冷却油は、ケース3の貫通孔32aを介してステータコア20の外周面に設けられた流路PA0に流入する。流路PA0に流入した冷却油は、流路PA0に沿って周方向に流れるとともに、ステータコア20の周方向複数の油孔203を通過し、第2スロット22Bの溝223に沿って軸方向に流れる。そして、非発泡絶縁部材41の開口416を介して非発泡絶縁部材41の内側の収容空間SP1に、第2スロット22Bの側方(周方向一方)から流入する。
【0053】
収容空間SP1に流入した冷却油は、非発泡絶縁部材41とコイル21との空隙CLおよび径方向に隣り合うコイル21同士の空隙CLを通り、非発泡絶縁部材41の軸方向両端部の開口46,47(
図3A)を介して収容空間SP1の外部に流出する。これによりコイル21に沿って冷却油が流れ、コイル21を効率よく冷却することができる。また、オープン側およびクローズ側のコイルエンドを効率よく冷却することができる。
【0054】
また、軸方向に延在する溝223に沿って冷却油が流れるので、ステータコア20の表面に沿って冷却油が流れるようになり、ステータコア20を効率よく冷却することができる。これにより、第1スロット22Aの周囲の温度低下が促進され、ステータ2を周方向全体にわたって良好に冷却することができる。
【0055】
図13、
図14は、
図10,
図11のさらなる変形例(第2変形例)を示す図である。
図13では、第2スロット22Bの側面222bに、径方向かつ軸方向に延在する単一の溝224が設けられる。溝224の軸方向中央部における径方向外側の端面は、油孔203に連通し、溝224は油路を構成する。第2スロット22Bには、
図12と同一の非発泡絶縁部材41が装着される。これにより、
図14に示すように、油孔203を通過した冷却油が、溝224および開口416を介して第2スロット22Bの側方から非発泡絶縁部材41の内側の収容空間SP1に流入し、収容空間SP1内を流れる。その結果、収容空間SP1内のコイル21を効率よく冷却することができる。この場合、
図12の例に比べ、径方向における溝224の面積が大きいため、ステータコア20と冷却油との接触面積が増大し、ステータコア20をより効率よく冷却することができる。
【0056】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)回転電機用のステータ2は、軸方向に延在する周方向複数のスロット22が設けられたステータコア20と、スロット22に配置されたコイル21と、コイル21を包囲するようにスロット22に配置された絶縁部材41,42と、を備える(
図1,
図2)。周方向複数のスロット22は、周方向に互いに所定スロット数SL1だけ離れた第1スロット22Aと第2スロット22Bとを含む(
図5)。コイル21は、第1スロット22Aに配置された直線部214と第2スロット22Bに配置された直線部215とを一体に有する略U字状の複数の導体セグメント210を有する(
図4,
図5)。絶縁部材は、第1スロット22Aに配置された発泡絶縁部材42と第2スロット22Bに配置された非発泡絶縁部材41とを有する(
図2,
図3A,
図3B)。ステータ2は、発泡絶縁部材42とコイル21との間に充填された発泡体45をさらに備える(
図2)。非発泡絶縁部材41とコイル21との間には、冷却油が流れる空隙CLが設けられる(
図2)。
【0057】
これにより、第1スロット22Aに配置された導体セグメント210が発泡体45を介してステータコア20(第1スロット22A)に固定されるとともに、第2スロット22Bに配置された導体セグメント210が第2スロット22Bを流れる冷却油により冷却される。したがって、コイル21を良好に固定かつ冷却することができる。また、コイル21は発泡体45を介して固定されるので、コイル21の被覆が損傷することを防止することができ、良好な絶縁性を維持できる。
【0058】
(2)発泡体45は、予め発泡絶縁部材42のみの表面に設けられた発泡層44により構成される(
図3B)。これにより、発泡絶縁部材42の内側に発泡体45を容易に充填することができる。また、発泡層44の加熱前には、発泡絶縁部材42の内側に広い空間が形成されるので、導体セグメント210を発泡絶縁部材42の内側に容易に挿入することができる。したがって、コイル21の装着時にコイル21の被覆が損傷することを防止することができる。
【0059】
(3)所定スロット数SL1は、所定の奇数(例えば5)である。発泡体45は、周方向複数のスロット22に周方向1つおきに設けられる(
図2)。これにより、全ての導体セグメント210の一方の脚211を、発泡体45を介してステータコア20に固定することができる。したがって、複数の導体セグメント210を接続してなるコイル21を、ステータコア20に強固に固定することができる。
【0060】
(4)複数の導体セグメント210は、一対の導体セグメント210A,210Bを含む(
図5)。導体セグメント210Bの直線部214と導体セグメント210Aの直線部215とは、周方向に所定スロット数SL2だけ離れて配置されるとともに、互いに接合される(
図5)。所定スロット数SL2は所定の奇数(例えば7)であり、発泡体45は、周方向複数のスロット22に周方向1つおきに設けられる(
図2)。これにより、互いに接続される一対の導体セグメント210A,210Bの脚211,212の一方(脚211)を、発泡体45を介してステータコア20に固定することができる。したがって、複数の導体セグメント210を接続してなるコイル21を、ステータコア20に強固に固定することができる。
【0061】
(5)ステータコア20は、第2スロット22Bの空隙CLに冷却油を導くように第2スロット22Bの周囲に設けられた流路(溝223,224)を有する(
図10,
図13)。これにより、第2スロット22Bの周囲を効率よく冷却することができる。また、第2スロット22Bの周囲の温度低下に伴い第1スロット22Aの周囲を冷却することも可能である。また、第1スロット22Aの周囲に冷却油供給用の流路を設ける必要がないため、ステータコア20に設けられる流路の面積増加を抑えることができる。その結果、十分な磁路を確保することができ、回転電機100の性能低下(例えばトルクの低下)を抑制することができる。
【0062】
(6)溝223,224は、第2スロット22Bの径方向かつ軸方向に延在する側面222bに設けられる(
図10,
図13)。これにより冷却油が流れる溝223,224と第1スロット22Aとの距離が短くなるため、ステータ2を周方向全体にわたって良好に冷却することができる。
【0063】
なお、上記実施形態(
図2)では、第1スロット22Aに第1絶縁部材として略直方体形状の発泡絶縁部材42を、第2スロット22Bに第2絶縁部材として略直方体形状の非発泡絶縁部材41を配置するようにしたが、第1絶縁部材と第2絶縁部材の構成(全体の形状)は上述したものに限らない。上記実施形態(
図5)では、第1スロット22Aに配置された直線部214(第1コイル部)と第2スロット22Bに配置された直線部215(第2コイル部)とを有する略U字状の導体セグメント210によりコイル21を構成したが、セグメントコイルの構成は上述したものに限らない。
【0064】
上記実施形態では、発泡絶縁部材42の表面に予め発泡層44を形成し、発泡層44により発泡体45を構成するようにしたが、第1絶縁部材の構成はこれに限らない。第1絶縁部材と第2絶縁部材の表面に接着層を形成するようにしてもよい。上記実施形態では、非発泡絶縁部材41と導体セグメント210の直線部215との間に、冷却油が流れる空隙CLを設けたが、他の冷却媒体が流れる空隙を設けてもよく、冷却媒体は冷却油に限らない。上記実施形態では、ステータ2の径方向外側の1箇所からスロット内に冷却油を供給するようにしたが、冷却媒体の供給経路は上述したものに限らない。例えばステータの径方向外側の複数箇所からスロット内に冷却媒体を供給するようにしてもよく、ステータの軸方向外側からスロット内に冷却媒体を供給するようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態(
図5)では、導体セグメント210の一対の脚211,212が周方向に所定スロット数SL1(第1所定スロット数)だけ飛び越えて配置されるとともに、所定スロット数SL1を5に設定したが、第1所定スロット数は5以外の奇数であってもよい。上記実施形態(
図5)では、導体セグメント210A(第1セグメントコイル)の直線部215と導体セグメント210B(第2セグメントコイル)の直線部214とが周方向に所定スロット数SL2(第2所定スロット数)だけ飛び越えて配置されるとともに、所定スロット数SL2を7に設定したが、第2所定スロット数は7以外の奇数であってもよい。
【0066】
上記実施形態(
図10~
図14)では、第2スロット内の空隙CLに冷却油を導くように第2スロット22Bの側方に流路(溝223,224)を設けるようにした。すなわち、第2スロット22Bの径方向かつ軸方向に延在する側面222bに流路を設けるようにしたが、流路の構成は上述したものに限らない。第2スロット22Bの周方向一方でなく、周方向両方に流路が設けるようにしてもよい。
【0067】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
2 ステータ、20 ステータコア、21 コイル、22 スロット、22A 第1スロット、22B 第2スロット、41 非発泡絶縁部材、42 発泡絶縁部材、44 発泡層、45 発泡体、100 回転電機、210,210A,210B 導体セグメント、211,212 脚、214,215 直線部、222b 側面、CL 空隙