IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人慶應義塾の特許一覧 ▶ 公益財団法人微生物化学研究会の特許一覧

<>
  • 特開-新規な抗生物質及びその製造方法 図1
  • 特開-新規な抗生物質及びその製造方法 図2
  • 特開-新規な抗生物質及びその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172719
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】新規な抗生物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/00 20060101AFI20241205BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241205BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241205BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241205BHJP
   A01N 43/72 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C07H17/00 CSP
A61K31/7048
A61P31/04
A01P3/00
A01N43/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090620
(22)【出願日】2023-06-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(チーム型研究(CREST))、研究領域「新たな生産プロセス構築のための電子やイオン等の能動的制御による革新的反応技術の創出」、研究課題「「ルイス酸-外部刺激」系によるイオン性中間体の活性化」、研究題目「外部刺激制御グリコシル化反応の開発と有用配糖体の創製」委託業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】000173913
【氏名又は名称】公益財団法人微生物化学研究会
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大介
(72)【発明者】
【氏名】戸嶋 一敦
(72)【発明者】
【氏名】牧川 巧
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 仁將
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
4H011
【Fターム(参考)】
4C057AA16
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD03
4C057KK30
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4H011AA01
4H011BB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌活性を有する新規化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】下式で表される化合物、又はその塩。

(式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、Dは、-Nであるか、又は置換されていてもよいトリアゾリル基である。)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、又はその塩。
【化1】
(式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nであるか、又は置換されていてもよいトリアゾリル基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物又はその塩を有効成分とする抗菌剤。
【請求項3】
薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌剤である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物又はその塩を含有する組成物。
【請求項5】
抗菌組成物である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
医薬組成物である請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
式(5)で表される化合物。
【化2】
(式中、Y及びYのいずれか一方が-F-G-Nで表される基であり、他方が-OHであり、
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基又はベンジル保護基)により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Gは置換されていてもよい二価炭化水素基である。)
【請求項8】
下記式(5)で表される化合物中のシリル保護基及び/又はベンジル保護基を脱離し、水酸基とすることを含む、式(1a)で表される化合物の製造方法。
【化3】
(式中、Y及びYのいずれか一方が-F-G-Nで表される基であり、他方が-OHであり、
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Gは置換されていてもよい二価炭化水素基である。)
【化4】
(式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nである。)
【請求項9】
下記式(1a)で表される化合物に、アルキンとアジドを反応させることを含む、式(1b)で表される化合物の製造方法。
【化5】
(式(1a)中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nである。)
【化6】
(式(1b)中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、置換されていてもよいトリアゾリル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗生物質及びその製造方法に関し、より詳細には、新規なアジスロマイシン誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非結核性抗酸菌(NTM)は、結核菌、らい菌と共に抗酸菌(マイコバクテリウム)の一種として分類される。NTMには190 種類以上の菌が含まれ、土や水、家畜を含む動物など環境中に生息している。また、NTM は(1)吸入による呼吸器系、(2)水や食物を介する消化器系、又は(3)傷ついた皮膚や創部から、人に感染し、肺、リンパ節、皮膚、骨・関節などに病変を作る。最も多い感染臓器は肺であり、NTM による肺の感染症を肺非結核性抗酸菌症(肺 NTM 症)と呼ぶ。これまで肺NTM症は、結核に罹患している人や肺に病気を持つ人、また、免疫力が低下した場合に起こりやすいといわれていたが、最近、肺に病気がなく免疫力が正常な人にも増加していること、長期の治療期間を必要とし、再発も高確率で生じること、および、世界中で罹患率が上昇していることから解決すべき重大な問題となっている。
【0003】
肺NTM症の原因となるNTMの菌種とその割合として、日本ではMycobacterium aviumとMycobacterium intracellulareが約 90%を占めており、M. aviumとM. intracellulareを併せてMycobacterium avium complex (MAC)と呼んでいる。また、Mycobacterium kansaiiが約4%、Mycobacterium absessusが約3%である。MACによる肺感染症を肺MAC 症、Mycobacterium abscessus による肺感染症を肺アブセッサス症と呼び、日本では、肺MAC 症と肺アブセッサス症が近年増加してきている。
【0004】
現在、肺NTM 症に対する代表的な治療には、3種の薬剤、マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシン(またはクラリスロマイシン)、エタンブトール、及びリファンピシンの混合投与が利用されており、アジスロマイシン(またはクラリスロマイシン)は治療に重要な薬剤である。しかし、近年、薬剤耐性NTM が出現してきており、耐性菌にも効果を示す新たな治療薬の開発が強く求められている。
【0005】
非特許文献1では、トリアザアセナプチレン系トポイソメラーゼ阻害剤であるgepotidacinが、薬剤耐性NTMに対して抗菌活性を発現することを報告している。
【0006】
非特許文献2では、テトラサイクリン類似抗生物質であるodacycline及びeravacyclineが薬剤耐性NTMに対して抗菌活性を発現することを報告している。
【0007】
非特許文献3では、マクロライド系抗生物質に類似するケトライド系抗生物質テリスロマイシンが、大腸菌23r RNAのドメインIIに対して相互作用を有することを報告している。しかし、NTMに対する相互作用様式に関しては、不明である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Antimicrob. Agents Chemother. 2022, 66, e00564-22
【非特許文献2】Antimicrob. Agents Chemother. 2019, 24, e00470-19
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2010, 107, 17152-17157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決すべき課題は、薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌活性を有する新規な化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
【0011】
項1.
下記式(1)で表される化合物、又はその塩。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nであるか、又は置換されていてもよいトリアゾリル基である。)
【0014】
項2.
項1に記載の化合物又はその塩を有効成分とする抗菌剤。
【0015】
項3.
薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌剤である項2に記載の抗菌剤。
【0016】
項4.
項1に記載の化合物又はその塩を含有する組成物。
【0017】
項5.
抗菌組成物である項4に記載の組成物。
【0018】
項6.
医薬組成物である項4に記載の組成物。
【0019】
項7.
式(5)で表される化合物。
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Y及びYのいずれか一方が-F-G-Nで表される基であり、他方が-OHであり、
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Gは置換されていてもよい二価炭化水素基である。)
項8.
下記式(5)で表される化合物中のシリル保護基及び/又はベンジル保護基を脱離し、水酸基とすることを含む、式(1a)で表される化合物の製造方法。
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、Y及びYのいずれか一方が-F-G-Nで表される基であり、他方が-OHであり、
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Gは置換されていてもよい二価炭化水素基である。)
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nである。)
項9.
下記式(1a)で表される化合物に、アルキンとアジドを反応させることを含む、式(1b)で表される化合物の製造方法。
【0026】
【化5】
【0027】
(式(1a)中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nである。)
【0028】
【化6】
【0029】
(式(1b)中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、置換されていてもよいトリアゾリル基である。)
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】マクロライド系抗生物質の作用機序の模式図。
図2】NTMのマクロライド系抗生物質に対する耐性メカニズムの模式図。
図3】(A)11位に置換基を導入したテリスロマイシン誘導体、(B)図3(A)のテリスロマイシン誘導体が大腸菌23S rRNAのドメインIIに結合した状態を示す模式図。(C)大腸菌リボゾームの結晶構造(PDB:3OAT、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2010, 107, 17152-17157.)、(D)新規なアジスロマイシン誘導体の一例。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において、単数形は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数と複数を含むものとする。
【0032】
本明細書において、「含有する(comprise)」は、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」も包含する概念である。
【0033】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0034】
本明細書において、マクロライド系抗生物質とは、12、14、15、又は16員環のラクトン環(マクロライド環)に中性糖又はアミノ糖が結合した、細菌のタンパク質合成を阻害する抗生物質を指す。
【0035】
本明細書において、別途規定していない場合、「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲノアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、シクロアルキル-アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル-アルコキシ基、アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、スルホ基、アルキルチオ基、シクロアルキル-アルキルチオ基、アミノ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ-アルキル基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルキル-アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、オキソ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換基として不飽和炭化水素環基を有していてもよいカルバモイル基、飽和若しくは不飽和複素環式基、芳香族炭化水素基などの不飽和炭化水素環基、飽和複素環オキシ基等が挙げられる。置換基が存在する場合、その個数は典型的には1個、2個又は3個である。
【0036】
本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である。
【0037】
本明細書において、アルキル基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルキル基である。
【0038】
本明細書において、ヒドロキシアルキル基は、好ましくはヒドロキシル基を1個有し、かつ炭素数が1~4個のヒドロキシル基である。
【0039】
本明細書において、ハロゲノアルキル基は、好ましくはハロゲン原子を1~7個有し、かつ炭素数が1~6個のハロゲノアルキル基である。
【0040】
本明細書において、シクロアルキル基は炭素数が3~7個のシクロアルキル基である。
【0041】
本明細書において、ヒドロキシシクロアルキル基は好ましくはヒドロキシル基を1又は2個以上有し、かつ炭素数が3~7個のヒドロキシシクロアルキル基である。
【0042】
本明細書において、シクロアルキル-アルキル基は、好ましくは炭素数が3~7個のシクロアルキル基で置換した炭素数が1~4個のアルキル基である。
【0043】
本明細書において、アラルキル基は、好ましくは炭素数が7~13個のアラルキル基である。
【0044】
本明細書において、アルケニル基は、好ましくは炭素数が2~6個のアルケニル基である。
【0045】
本明細書において、アルキニル基は、好ましくは炭素数が2~6個のアルキニル基である。
【0046】
本明細書において、アルコキシ基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルコキシ基である。
【0047】
本明細書において、ハロゲノアルコキシ基は、好ましくはハロゲン原子を1~7個有し、かつ炭素数が1~4個のアルコキシ基である。
【0048】
本明細書において、シクロアルコキシ基は、好ましくは炭素数が7~13個のシクロアルコキシ基である。
【0049】
本明細書において、シクロアルキル-アルコキシ基は、好ましくは炭素数が3~7個のシクロアルキルで置換された炭素数が1~4個のアルコキシ基である。
【0050】
本明細書において、アルキルスルホキシド基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルキルスルホキシド基である。
【0051】
本明細書において、アリールスルホキシド基は、好ましくは炭素数が6~13個のアリールを有するスルホキシド基である。
【0052】
本明細書において、アルキルチオ基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルキルチオ基である。
【0053】
本明細書において、シクロアルキル-アルキルチオ基は、好ましくは炭素数が3~7のシクロアルキルで置換された炭素数1~4個のアルキルチオ基である。
【0054】
本明細書において、モノアルキルアミノ基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルキル基でモノ置換されたアミノ基である。
【0055】
本明細書において、ジアルキルアミノ基は、好ましくは同一又は相異なる炭素数が1~6個のアルキル基でジ置換されたアミノ基である。
【0056】
本明細書において、ジアルキルアミノ-アルキル基は、ジアルキルアミノで置換されたアルキル基であり、好ましくはジアルキルアミノで置換された炭素数1~4個のアルキル基である。
【0057】
本明細書において、シクロアルキルアミノ基は、好ましくは炭素数が3~7のシクロアルキル基を1個又は2個有するアミノ基である。
【0058】
本明細書において、シクロアルキル-アルキルアミノ基は、好ましくは炭素数が3~7のシクロアルキルで置換された炭素数が1~4のアルキルアミノ基である。
【0059】
本明細書において、アシル基は、アルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基を指す。アルキルカルボニル基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルキルを有するカルボニル基である。アリールカルボニル基は、好ましくは炭素数が6~13個のアリールを有するカルボニル基である。
【0060】
本明細書において、アシルオキシ基は、アルキルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基を指す。アルキルカルボニルオキシ基は、好ましくは炭素数が1~6個のアルキルを有するカルボニルオキシ基である。アリールカルボニルオキシ基は、好ましくは炭素数が6~13個のアリールを有するカルボニルオキシ基である。
【0061】
本明細書において、アルコキシカルボニル基は好ましくは炭素数が1~6個のアルコキシを有するカルボニル基である。
【0062】
本明細書において、アラルキルオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数が7~13個のアラルキルを有するオキシカルボニル基である。
【0063】
本明細書において、不飽和複素環式基とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個以上(好ましくは1~3個)有する、単環式若しくは多環式の、完全不飽和又は部分不飽和の複素環式基である。
【0064】
本明細書において、不飽和炭化水素環基は、好ましくは、不飽和結合を少なくとも1個(例えば、1~8個)有する、単環又は複数の環からなる炭素数が5~14個の炭化水素環基であり、より好ましくは炭素数が6~14個の芳香族炭化水素基、又は単環式若しくは二環式であり炭素数5~14個の不飽和炭化水素環基である。
【0065】
本明細書において、飽和複素環オキシ基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する飽和複素環オキシ基であり、好ましくは窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1~3個有する飽和複素環オキシ基である。
【0066】
アジスロマイシン(AZM)は、細菌のタンパク質合成を阻害する抗菌作用を有し、肺炎、淋病及び肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)などの治療薬として広く使用されているマクロライド系抗生物質である(J. Periodontol. 1997, 68, 1206-1209)。
【0067】
【化7】
【0068】
肺NTM症(Front. Microbiol.2022, 13, 1044515)は、世界中で罹患率が上昇しており、有効な治療薬が少ない。さらに、薬剤耐性NTMの出現により、新たな治療薬の開発が求められている。
【0069】
図1はマクロライド系抗生物質の作用機序の模式図である(Antimicrob. Agents Chemother. 2010, 54, 4961-4970)。細菌のリボソーム 1 は大小2つの粒子である50Sサブユニットと30Sサブユニットを備えており、50Sサブユニットの23S rRNA 2はペプチドトンネル 6(リボソームトンネルと称する場合もある)の構成要素である。mRNA 3の遺伝子コドンに基づいてt RNA 4のアミノ酸 5を連結し、mRNA 2の遺伝情報がアミノ酸5を連結してなるポリペプチドへと転写される。アミノ酸が50個以上のポリペプチドを通常タンパク質と称する。合成されたタンパク質はペプチドトンネル6 を通ってリボソーム 1の外へ排出される。マクロライド系抗生物質 7は、リボソーム1 の50Sサブユニットの23S rRNA 2に結合し、タンパク質の排出を阻害する。
【0070】
図2はNTMのマクロライド系抗生物質に対する耐性メカニズムの模式図である。23S rRNA 2は約3000ヌクレオチドで構成され、I~VIの6つのドメインに分類される。このうち、既存のマクロライド系抗生物質 7はドメインVと結合と結合することにより、ペプチドトンネル 6を閉塞するが、薬剤耐性菌はドメインVの変異によりマクロライド耐性を獲得すると考えられている(Front. Microbiol. 2022, 13, 1044515)。
【0071】
そこで、本願発明者らは、テリスロマイシン(TLM)の11位に置換基を導入したテリスロマイシン誘導体が大腸菌の23S rRNAのドメインIIと新たな結合を形成したとの報告(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2010, 107, 17152-17157.)に基づき(図3(A)-(C))、アジスロマイシンの11位に置換基を導入した新規なアジスロマイシン誘導体を合成した(図3(D)))。新たに合成された化合物は、アジスロマイシンと比較して、薬剤耐性NTMに対する抗菌活性が向上した。
【0072】
本発明の一態様において、下記の式(1)で表される化合物、又はその塩が提供される。
【0073】
【化8】
【0074】
式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nであるか、又は置換されていてもよいトリアゾリル基である。
【0075】
式(1)で表される化合物は、15員環ラクトンを有する配糖体のマクロライドであり、アジスロマイシンの誘導体とみなすことができる。式(1)で表される化合物は、15員環の11位に糖鎖とフェニル基又はアルキル基とを介してアジド基又は置換されていてもよいトリアゾリル基を有することにより、薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌活性を有する。
【0076】
Aが五炭糖又はその重合体に由来する糖鎖である場合、五炭糖は好ましくはアラビノフラノース、リボースである。Aが五炭糖の重合体に由来する糖鎖である場合は、五炭糖は、好ましくは1位と4位の炭素に結合する水酸基の縮合により隣り合う五炭糖と重合する。
【0077】
Aが六炭糖又はその重合体に由来する糖鎖である場合、六炭糖は好ましくはグルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、フコースである。Aが六炭糖の重合体に由来する糖鎖である場合は、六炭糖は、好ましくは1位と4位の炭素に結合する水酸基の縮合により隣り合う六炭糖と重合する。
【0078】
Aを構成する五炭糖又は六炭糖は、一種類であってもよいし、二種類以上であってもよい。
【0079】
Aを構成する五炭糖又は六炭糖の炭素骨格に結合する水素及び/又は水酸基は、アミノ基などによりさらに置換されていてもよい。
【0080】
Aが五炭糖又は六炭糖に由来する重合体である場合、五炭糖又は六炭糖の重合度は好ましくは1~3である。
【0081】
いくつかの実施形態では、Xが-A-B-Dで表される基であり、Xが-OHである。
【0082】
いくつかの実施形態では、Xが-A-B-Dで表される基であり、Xが-OHである。
【0083】
いくつかの実施形態では、Aは、下記の式(2)又は(3)である。
【0084】
【化9】
【0085】
式(2)中、mは1~3であり、
5及びR6の一方が水素であり、他方が-OHであり、
7及びR8の一方が水素であり、他方が-OHであり、
は水素又は-CHOHである。
【0086】
式(3)中、nは1~3であり、
10及びR11の一方が水素であり、他方が-OHであり、
12及びR13の一方が水素であり、他方が-OHである。
【0087】
Bは飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。
【0088】
Bは、置換若しくは非置換のアルキルフェニル基、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のアルキル基であることが好ましい。アルキルフェニル基は、アルキル基により置換されたフェニル基である。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、炭素数は1~6個であることが好ましい。
【0089】
いくつかの実施形態では、Bは、非置換のアルキルフェニル基、非置換のフェニル基、又は非置換のアルキル基である。Bが置換されている場合、置換基は本明細書に定義したいずれの置換基であってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、Dは、-Nである。いくつかの実施形態では、Dは、非置換の又は置換されたトリアゾリル基である。トリアゾリル基は1,2,3-トリアゾリル基又は1,2,4-トリアゾリル基であってよい。Dが置換されている場合、置換基は本明細書に定義した、いずれの置換基であってもよい。特に好ましい置換基としては、アルキルアミノ基(例えば-CH-NH)、ジアルキルアミノ-アルキル基(例えば-CH-N(CH)、アミノフェニル基、ピリジル基などが挙げられる。
【0091】
式(1)で表される化合物の塩とは、有機化学の分野で用いられる慣用的なものを意味し、例えばカルボキシル基を有する場合の当該カルボキシル基における塩基付加塩や、又はアミノ基若しくは塩基性の複素環基を有する場合の当該アミノ基若しくは塩基性複素環基における酸付加塩などの塩を挙げることができる。式(1)で表される化合物の塩は、好ましくは薬学的に許容される塩である。
【0092】
塩基付加塩の塩基としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属などが挙げられる。
【0093】
酸付加塩の酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、などの有機酸が挙げられる。
【0094】
式(1)で表される化合物が、光学異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体等の異性体を有する場合には、特に明記しない限り、いずれの異性体も混合物も本発明化合物に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶など)によりそれぞれを単一化合物として得ることができる。
【0095】
式(1)で表される化合物又はその塩は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても多形混合物であっても式(1)で表される化合物又はその塩に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。式(1)で表される化合物又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれも本発明化合物又はその塩に包含される。同位元素(例えば、H、14C、35S、125Iなど)などで標識された化合物も、式(1)で表される化合物又はその塩に包含される。
【0096】
本発明の一態様において、式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分とする抗菌剤が提供される。
【0097】
式(1)で表される化合物又はその塩は、薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌作用を有するため、かかる抗菌剤も薬剤耐性非結核性抗酸菌に対する抗菌作用を有する。
【0098】
一実施形態において、薬剤耐性非結核性抗酸菌は、M. avium、M. intracellulare、M. avium subsp. hominissuis(MAH)、M. abscessus、M. chelonae、M. bolletii、M. kansasii、M. ulcerans、M. avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M. conspicuum、M. kansasii、M. peregrinum、M. immunogenum、M. xenopi、M. marinum、M. malmoense、M. marinum、M. mucogenicum、M. nonchromogenicum、M. scrofulaceum、M. simiae、M. smegmatis、M. szulgai、M. terrae、M. terraecomplex、M. haemophilum、M. genavense、M. asiaticum、M. shimoidei、M. gordonae、M. nonchromogenicum、M. triplex、M. lentiflavum、M. celatum、M. fortuitum、M. fortuitum complex(M. fortuitumおよびM. chelonae)またはそれらの組み合わせである。薬剤耐性非結核性抗酸菌は好ましくは、アジスロマイシンを含むマクロライド系抗生物質に対する耐性を有する。さらなる実施形態において、薬剤耐性非結核性抗酸菌は、薬剤よびM. intracellulare)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、式(1)で表される化合物又はその塩は、薬剤耐性ではない非結核性抗酸菌に対しても抗菌作用を有する。一実施形態において、非結核性抗酸菌としては、M. avium、M. intracellulare、M. avium subsp. hominissuis(MAH)、M. abscessus、M. chelonae、M. bolletii、M. kansasii、M. ulcerans、M. avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M. conspicuum、M. kansasii、M. peregrinum、M. immunogenum、M. xenopi、M. marinum、M. malmoense、M. marinum、M. mucogenicum、M. nonchromogenicum、M. scrofulaceum、M. simiae、M. smegmatis、M. szulgai、M. terrae、M. terraecomplex、M. haemophilum、M. genavense、M. asiaticum、M. shimoidei、M. gordonae、M. nonchromogenicum、M. triplex、M. lentiflavum、M. celatum、M. fortuitum、M. fortuitum complex(M. fortuitumおよびM. chelonae)またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、式(1)で表される化合物又はその塩の抗菌活性は、アジスロマイシンの抗菌活性よりも高い。
【0101】
本発明の実施形態の抗菌剤は、有効成分として、式(1)で表される化合物又はその塩のみを含有してもよいし、あるいは本発明の実施形態の抗菌剤は、式(1)で表される化合物又はその塩の抗菌活性を損なわない限りにおいて、さらに式(1)で表される化合物又はその塩以外の抗菌薬(本願明細書中、単に「他の抗菌薬」と称する場合がある)を含有してもよい。他の抗菌薬は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
本発明の実施形態の抗菌剤の使用用途及び態様は、細菌に対する抗菌を目的とするものであれば特に限定されない。例えば、抗菌剤としてそのまま用いてもよいし、各種組成物(医薬組成物、化粧料組成物、食品組成物、医療用洗浄用組成物、食器用殺菌洗浄用組成物、口腔用組成物、表面抗菌用組成物等)に配合して使用してもよい。
【0103】
本発明の実施形態の抗菌剤は、式(1)で表される化合物又はその塩が有効量、又はその濃度が最小生育阻止濃度(MIC)以上になる量でこれらを含有することが好ましい。
【0104】
上記のような使用用途及び態様に応じて、本発明の実施形態の抗菌剤は、添加剤を含有する組成物であることができる。添加剤としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤、防錆剤、金属防食剤、消泡剤、防錆剤、極圧添加剤、金属防食剤、消泡剤、染料等が挙げられる。使用目的に応じて、これらの添加剤のうち、薬学的に許容される成分を選択して使用することが好ましい。本発明の実施形態の抗菌剤は、使用目的に応じて、慣用の方法により適切な形態(錠剤、丸剤、散剤、液剤、注射剤、懸濁剤、乳剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等)に調製して使用することができる。
【0105】
本発明の実施形態の抗菌剤中の、式(1)で表される化合物又はその塩の含有量は、抗菌作用が発揮される限りにおいて特に限定されるものではない。例えば、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005~1重量%、より好ましくは0.001~0.1重量%であることができる。
【0106】
本発明の実施形態の抗菌剤を医薬目的で使用する場合、又は医薬組成物に配合して使用する場合、投与方法や投与量等は、含有する式(1)で表される化合物又はその塩の含有量、他の抗菌薬の含有量、剤形、投与対象の年齢・体重などにより適宜選択される。
【0107】
次に、式(1)で表される化合物の製造方法について説明する。
【0108】
本発明の一態様において、下記式(1)で表される化合物の一つである式(1a)で表される化合物は、式(5)で表される化合物中のシリル保護基及び/又はベンジル保護基を脱離し、水酸基とすることにより製造される。
【0109】
【化10】
【0110】
(式中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、-Nである。)
【0111】
【化11】
【0112】
(式中、Y及びYのいずれか一方が-F-G-Nで表される基であり、他方が-OHであり、
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Gは置換されていてもよい二価炭化水素基である。)
【0113】
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖である。
【0114】
Fが、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖である場合、五炭糖の水酸基の一部又は全部がシリル保護基により置換されていてもよいし、水酸基の一部又は全部がベンジル保護基により置換されていてもよいし、水酸基の一部がシリル保護基により置換され、水酸基の一部がベンジル保護基により置換されていてもよい。
【0115】
Fが、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖である場合、六炭糖の水酸基の一部又は全部がシリル保護基により置換されていてもよいし、水酸基の一部又は全部がベンジル保護基により置換されていてもよいし、水酸基の一部がシリル保護基により置換され、水酸基の一部がベンジル保護基により置換されていてもよい。
【0116】
Fが五炭糖又はその重合体に由来する糖鎖である場合、五炭糖は好ましくはアラビノフラノース、リボースである。Fが五炭糖の重合体に由来する糖鎖である場合は、五炭糖は、好ましくは1位と4位の炭素に結合する水酸基の縮合により隣り合う五炭糖と重合する。
【0117】
Fが六炭糖又はその重合体に由来する糖鎖である場合、六炭糖は好ましくはグルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、フコースである。Fが六炭糖の重合体に由来する糖鎖である場合は、六炭糖は、好ましくは1位と4位の炭素に結合する水酸基の縮合により隣り合う六炭糖と重合する。
【0118】
Fを構成する五炭糖又は六炭糖は、一種類であってもよいし、二種類以上であってもよい。
【0119】
Fを構成する五炭糖又は六炭糖の炭素骨格に結合する水素及び/又は水酸基は、アミノ基などによりさらに置換されていてもよい。
【0120】
Fが五炭糖又は六炭糖に由来する重合体である場合、五炭糖又は六炭糖の重合度は1~3であることが好ましい。
【0121】
シリル保護基としては、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)を始めとする、一級アルコールを保護するシリル保護基を使用することができる。
【0122】
ベンジル保護基としては、4-メチルベンジル基(-CH-Ph―CH)及び4-メトキシベンジル(-CH-Ph-OCH)を始めとする、一級アルコールを保護するベンジル基を使用することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、Fは、下記の式(6)又は(7)である。
【0124】
【化12】
【0125】
式(6)中、mは1~3であり、
5及びR6の一方が水素であり、他方が-O-Proc(Procは、シリル保護基又はベンジル保護基である)であり、
7及びR8の一方が水素であり、他方が-O-Proc(Procは、シリル保護基又はベンジル保護基である)であり、
は水素又は-CHO-Proc(Procは、シリル保護基又はベンジル保護基である)である。
【0126】
式(7)中、nは1~3であり、
10及びR11の一方が水素であり、他方が-O-Proc(Procは、シリル保護基又はベンジル保護基である)であり、
12及びR13の一方が水素であり、他方が-O-Proc(Procは、シリル保護基又はベンジル保護基である)である。
【0127】
Gは飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。
【0128】
Gは、置換若しくは非置換のアルキルフェニル基、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のアルキル基であることが好ましい。アルキルフェニル基は、アルキル基により置換されたフェニル基である。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、炭素数は1~6個であることが好ましい。
【0129】
いくつかの実施形態では、Gは、非置換のアルキルフェニル基、非置換のフェニル基、又は非置換のアルキル基である。Gが置換されている場合、置換基は本明細書に定義したいずれの置換基であってもよい。
【0130】
なお、式(5)で表される化合物は、アジスロマイシンをアリールボロン酸(例えば4-ニトロフェニルボロン酸)の存在下でアジド化合物(具体的には、五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖と-G-N基(Gは置換されていてもよい二価炭化水素基である)とがエーテル結合を介して結合されたアジド化合物)と反応させることにより得られる。
【0131】
Fは、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている五炭糖、水酸基の少なくとも一部がシリル保護基及び/又はベンジル保護基により置換されている六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖である。
【0132】
本発明の一態様において、式(1)で表される化合物の一つである式(1b)で表される化合物は、式(1a)で表される化合物に、アルキンとアジドを反応させることにより製造される。アルキンとアジドを反応させることによりトリアゾール化合物を製造する方法はアジド-クリック反応として知られ、式(1b)で表される化合物もアジド-クリック反応を利用して製造することができる。アジド-クリック反応は好ましくは銅触媒の存在下で行われ得る。アジドはRC-N(Rは水素又は置換基)の構造を有する有機アジドであることが好ましい。アルキンは、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキンであることが好ましい。アルキンが置換基を有する場合、置換基として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲノアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、シクロアルキル-アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルキル-アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル-アルキルチオ基、アミノ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ-アルキル基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルキル-アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換基として不飽和炭化水素環基を有していてもよいカルバモイル基、飽和若しくは不飽和複素環式基、芳香族炭化水素基などの不飽和炭化水素環基、飽和複素環オキシ基等が挙げられる。
【0133】
【化13】
【0134】
(式(1b)中、X及びXのいずれか一方が-A-B-Dで表される基であり、他方が-OHであり、
Aは五炭糖、六炭糖、又はそれらのいずれかの重合体に由来する糖鎖であり、
Bは置換されていてもよい二価炭化水素基であり、
Dは、置換されていてもよいトリアゾリル基である。)
Dのトリアゾリルの基は1,2,3-トリアゾリル基又は1,2,4-トリアゾリル基であってよい。Dが置換されている場合、置換基は本明細書に定義したいずれの置換基であってもよい。特に好ましい置換基としては、アルキルアミノ基(例えば-CH-NH)、ジアルキルアミノ-アルキル基(例えば-CH-N(CH)、アミノフェニル基、ピリジル基などが挙げられる。
【0135】
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0136】
以下の実施例は、例示のみを意図したものであり、何ら本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。特に断らない限り、試薬は、市販されているか、又は当技術分野で慣用の手法、公知文献の手順に従って入手又は調製する。
【実施例0137】
実施例1 アジスロマイシン誘導体の合成
以下、特段の定めがない限り、A/Bで表される液体はAとBの混合溶液を指す。THFはテトラヒドロフラン、TBAFはフッ化テトラブチルアンモニウムを指す。
【0138】
(1)化合物KK01の合成
【0139】
【化14】
【0140】
アジスロマイシン(1.0 eq.)とp-ニトロフェニルボロン酸(0.2 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)溶液に、室温及びアルゴン雰囲気下で3,4,6-トリ-O-ベンジル-1,2-無水-d-グルコース(2.0 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO (体積比 3/1)を加えた。反応混合物を同じ室温で24時間撹拌し、0.05 M NaBO3 水溶液を加えて反応を停止した。結果として得られた混合物に飽和NaHCO3水溶液を加えた。水層を酢酸エタノールで抽出し、合一した抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4 で乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、保護されたKK01を得た (収率86%)。
【0141】
化合物 保護されたKK01:白色固体; 融点 117-118 oC; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 7.35-7.15 (15H, m), 5.26 (1H, d, J = 3.6 Hz), 5.19 (1H, d, J = 6.4 Hz), 4.90 (1H, ABq, J= 11.6 Hz), 4.89 (1H, d, J = 5.6 Hz), 4.81 (2H, dd, J = 10.8 Hz, 11.2), 4.64 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.52 (1H, d, J = 10.8 Hz), 4.41 (1H, d, J = 7.2 Hz), 4.12-4.08 (1H, m), 3.96 (1H, d, J = 8.8 Hz), 3.79-3.77 (3H, m), 3.74-3.53 (5H, m), 3.28 (3H, s), 3.00 (1H, d), 2.75 (1H, dd, J = 6.4, 7.2 Hz), 2.33 (6H, s), 2.17 (3H, s), 2.05-2.00 (3H,m), 1.77-1.61 (4H, m), 1.53-1.49 (1H, dd, J = 4.4, 14.8 Hz), 1.33-1.22 (19H, m), 1.14 (3H, s, H-22), 1.09 (3H, d, J = 7.2 Hz), 1.01 (3H, d, J= 6.4 Hz), 0.96 (3H, d, J = 5.6 Hz), 0.90 (3H, t, J = 7.2 Hz) ; HRMS (ESI-TOF) m/z 1180.7045 (C65H100N2O17[M+H]+ の計算値 1180.7022).
【0142】
【化15】
【0143】
保護されたKK01 (1.0 eq.)の乾燥酢酸エタノール/メタノール水溶液(体積比3/1)(= 3/1)とギ酸との水溶液を20% Pd(OH)2/C の存在下で室温で4時間水素雰囲気(7 atm)下で撹拌した。雰囲気圧から標準圧に戻した後、反応混合物を使い捨てのメンブレンフィルター (DISMIC-13cp)でろ過し、ろ液を真空濃縮した。 粗生成物の水/メタノール溶液にアニオン交換樹脂 (アンバーライト)を室温で加えた。混合物を同じ室温で1時間撹拌し、ろ過し、真空濃縮した。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィによる残留物の精製により、KK01を得た (収率97%)。
【0144】
化合物 KK01: 白色固体; 融点 110-111 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 5.42 (1H, d, J = 4.0 Hz), 5.27 (1H, d, J = 10.0 Hz), 4.90 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq, J= 6.0, 9.5 Hz), 3.77-3.62 (8H, m), 3.50 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.34 (3H, s), 3.26 (1H, dd, J = 7.0, 10.5 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.89-2.84 (2H, m), 2.70 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.47-2.38 (2H, m), 2.34 (6H, s), 2.25 (3H, s), 2.10-2.02 (2H, m), 1.96 (1H, br-s), 1.85 (1H, m), 1.76-1.70 (2H, m), 1.63 (1H, m), 1.57 (1H, dd, J = 5.0, 15.0 Hz), 1.44 (1H, br-d, J = 8.0 Hz), 1.32-1.19 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.5 Hz), 1.08 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.95 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.88 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z911.5715 (C44H83N2O17 [M+H]+の計算値 911.5686).
【0145】
(2)化合物KK02の合成
【0146】
【化16】
【0147】
アジスロマイシン(1.0 eq.)とp-ニトロフェニルボロン酸(0.2 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)溶液に、室温及びアルゴン雰囲気下で3,4,6-トリ-O-ベンジル-1,2-無水-D-ガラクトース(2.0 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)を加えた。反応混合物を同じ室温で24時間撹拌し、0.05 M NaBO3 水溶液を加えて反応を停止した。結果として得られた混合物に飽和NaHCO3水溶液を加えた。水層を酢酸エタノールで抽出し、合一した抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4 で乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、保護されたKK02を得た(収率79%)。
【0148】
化合物 保護されたKK02:白色固体; 融点 119-120 oC; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 7.35-7.25 (15H, m), 5.32 (1H, d, J = 3.6 Hz), 5.18 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.86 (2H, m), 4.74 (1H, ABq, J = 11.2 Hz), 4.58 (2H, ABq, J = 11.2 Hz), 4.46-4.41 (3H, m), 4.30-4.22 (2H, m), 4.12-4.08 (3H, m), 3.77-3.57 (6H, m), 3.48-3.46 (1H, m), 3.35 (1H, m), 3.27 (3H, s), 3.01 (1H, d, J = 9.2 Hz), 2.77-2.72 (3H, m), 2.43 (6H, s), 2.33 (1H, d, J = 15.2 Hz), 2.11 (3H, s), 2.04-1.98 (3H, m), 1.85-1.50 (4H, m), 1.32-1.22 (21H, m), 1.14 (3H, s), 1.06 (3H, d, J = 7.2 Hz), 1.00 (3H, d, J = 6.4 Hz), 0.96 (3H, d, J= 4.8 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.2, 7.6 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z1180.7039 (C65H100N2O17 [M+H]+の計算値 1180.7022).
【0149】
【化17】
【0150】
保護されたKK02 (1.0 eq.)の乾燥酢酸エタノール/メタノール水溶液(体積比3/1)(= 3/1)とギ酸との水溶液を20% Pd(OH)2/C の存在下で室温で4時間水素雰囲気(7 atm)下で撹拌した。雰囲気圧から標準圧に戻した後、反応混合物を使い捨てのメンブレンフィルター (DISMIC-13cp)でろ過し、ろ液を真空濃縮した。 粗生成物の水/メタノール溶液にアニオン交換樹脂 (アンバーライト)を室温で加えた。混合物を同じ室温で1時間撹拌し、ろ過し、真空濃縮した。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィによる残留物の精製により、KK02を得た(収率94%)。
【0151】
化合物 KK02: 白色固体; 融点 120-121 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d5.41 (1H, d, J = 4.0 Hz), 5.29 (1H, d, J = 9.0 Hz), 4.90 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq, J= 6.5, 9.5 Hz), 3.98 (1H, dd, J = 6.5, 6.5 Hz), 3.94 (1H, br-d, J= 3.5 Hz), 3.91 (1H, dd, J = 4.0, 10.0 Hz), 3.75 (1H, dd, J = 3.5, 10.0 Hz), 3.71-3.64 (5H, m), 3.33 (3H, s), 3.26 (1H, dd, J = 7.5, 10.5 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.89-2.83 (2H, m), 2.71 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.47-2.39 (2H, m), 2.34 (6H, s), 2.25 (3H, s), 2.10-2.02 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.86 (1H, m), 1.76-1.73 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.58 (1H, dd, J = 5.0, 15.5 Hz), 1.38 (1H, br-d, J= 10.5 Hz), 1.32-1.19 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.5 Hz), 1.08 (3H, d, J= 7.0 Hz), 0.95 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 911.5708 (C44H83N2O17[M+H]+ の計算値 911.5686).
【0152】
(3)化合物KK03の合成
【0153】
【化18】
【0154】
アジスロマイシン(1.0 eq.)とp-ニトロフェニルボロン酸(0.2 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)溶液に、室温及びアルゴン雰囲気下で3,4,6-トリ-O-ベンジル-1,2-無水-D-マンノース(3.0 eq.) の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)を加えた。反応混合物を同じ室温で24時間撹拌し、0.05 M NaBO3 水溶液を加えて反応を停止した。結果として得られた混合物に飽和NaHCO3水溶液を加えた。水層を酢酸エタノールで抽出し、合一した抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4 で乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、保護されたKK03を得た(収率51%)。
【0155】
化合物 保護されたKK03: 無色形; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 7.37-7.19 (15H, m), 5.17-5.14 (2H, m), 4.85 (1H, ABq, J = 11.2 Hz), 4.72-4.58 (4H, ABq, J = 11.2, 11.6, 9.6, 11.2 Hz), 4.54-4.47 (3H, ABq, J = 11.6, 11.2, 7.2 Hz), 4.31-4.26 (2H, m), 4.03-4.00 (1H, m), 3.94-3.85 (2H, m), 3.78-3.65 (5H, m), 3.58 (1H, d, J= 5.6 Hz), 3.33 (3H, s), 3.30-3.25 (1H, m), 2.98 (1H, t, J = 8.0, 8.8 Hz), 2.77-2.57 (3H, m), 2.36 (3H, s), 2.30 (6H, s), 2.16-1.74 (9H, m), 1.59 (1H, dd, J = 5.2, 15.2 Hz), 1.45-1.41 (1H, m), 1.31-1.14 (30H, m), 1.02 (3H, d, J = 7.2 Hz), 0.91 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.88 (3H, d, J= 7.2 Hz), 0.79 (3H, t, J = 7.2, 7.6 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z1180.7059 (C65H100N2O17 [M+H]+の計算値 1180.7022).
【0156】
【化19】
【0157】
保護されたKK03 (1.0 eq.) の 乾燥酢酸エタノール/メタノール水溶液(体積比3/1)(= 3/1)とギ酸との水溶液を20% Pd(OH)2/C の存在下で室温で4時間水素雰囲気(7 atm)下で撹拌した。雰囲気圧から標準圧に戻した後、反応混合物を使い捨てのメンブレンフィルター (DISMIC-13cp)でろ過し、ろ液を真空濃縮した。 粗生成物の水/メタノール溶液にアニオン交換樹脂 (アンバーライト)を室温で加えた。混合物を同じ室温で1時間撹拌し、ろ過し、真空濃縮した。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィによる残留物の精製により、KK03を得た(収率91%)。
【0158】
化合物 KK03: 白色固体; 融点 120-121 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 5.41 (1H, dd, J = 3.0, 9.5 Hz), 5.09 (1H, d, J = 5.0 Hz), 4.71 (1H, br-s), 4.52 (1H, d, J = 7.5 Hz), 4.28 (1H, dd, J = 2.0, 4.0 Hz), 4.21 (1H, dq, J = 6.0, 9.5 Hz), 4.07 (1H, d, J = 2.5 Hz), 3.91 (1H, dd, J = 3.0, 12.0 Hz), 3.89 (1H, m), 3.82 (1H, dd, J = 3.5, 11.5 Hz), 3.74 (1H, m), 3.71 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.66 (1H, d, J = 7.0 Hz), 3.54 (1H, dd, J = 3.0, 9.5 Hz), 3.42 (1H, dt, J = 3.0, 10.0 Hz), 3.37 (3H, s), 3.25 (1H, dd, J = 7.0, 10.0 Hz), 3.04 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.89 (1H, dd, J= 6.0, 13.5 Hz), 2.78 (1H, dq, J = 4.0, 7.5 Hz), 2.72 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.58 (1H, d, J = 10.5 Hz), 2.43 (1H, d, J = 15.0 Hz), 2.35 (6H, s), 2.30 (3H, s), 2.18 (1H, dd, J = 11.5, 11.5 Hz), 2.05 (1H, m), 2.00 (1H, m), 1.93 (1H, m), 1.77-1.74 (2H, m), 1.58 (1H, dd, J= 5.0, 15.0 Hz), 1.49 (1H, m), 1.38 (1H, dd, J = 9.0, 15.0 Hz), 1.31-1.14 (22H, m), 1.05 (3H, d, J = 7.5 Hz), 0.93-0.90 (6H, m); HRMS (ESI-TOF) m/z 911.5710 (C44H83N2O17[M+H]+の計算値 911.5686).
【0159】
(4)化合物KK04の合成
【0160】
【化20】
【0161】
アジスロマイシン(1.0 eq.)とp-ニトロフェニルボロン酸(0.2 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)溶液に、3,4-ジ-O-ベンジル-1,2-無水-L-フコース(2.0 eq.) の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)を加えた。反応混合物を同じ室温で24時間撹拌し、0.05 M NaBO3 水溶液を加えて反応を停止した。結果として得られた混合物に飽和NaHCO3水溶液を加えた。水層を酢酸エタノールで抽出し、合一した抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4 で乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、保護されたKK04を得た(収率93%)。
【0162】
化合物 保護されたKK04: 無色形; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 7.42-7.26 (10H, m), 5.04 (1H, d, J= 4.4 Hz), 4.98 (1H, ABq, J = 11.6 Hz), 4.92 (1H, d, J = 4.4 Hz), 4.90 (1H, ABq, J = 12.4 Hz), 4.75 (1H, ABq, J = 12.4 Hz), 4.67 (1H, ABq, J = 11.6 Hz), 4.43 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.39 (1H, br-s), 4.21 (1H, dd, J = 7.6, 10.4 Hz), 4.04-3.90 (3H, m), 3.75-3.48 (5H, m), 3.34 (3H, s), 3.28-3.22 (1H, m), 3.02 (1H, t, J = 7.6, 9.2 Hz), 2.63-2.58 (2H, m), 2.34 (6H, s), 2.22 (3H, s), 2.06-1.98 (2H, m), 1.90-1.82 (2H, m), 1.54 (1H, dd, J = 4.0, 14.4 Hz), 1.42 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.36 (3H, s), 1.31 (3H, d, 4.0 Hz), 1.26-1.21 (9H, m), 1.16 (6H, m), 1.12 (3H, s), 1.05 (6H, d, J = 5.6 Hz), 1.00 (3H, 7.2 Hz), 0.93 (3H, t, J= 7.2, 7.6 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1074.6623 (C58H94N2O16 [M+H]+ の計算値 1074.6603).
【0163】
【化21】
【0164】
保護されたKK04 (1.0 eq.)の乾燥酢酸エタノール/メタノール水溶液(体積比3/1)(= 3/1)とギ酸との水溶液を20% Pd(OH)2/C の存在下で室温で4時間水素雰囲気(7 atm)下で撹拌した。雰囲気圧から標準圧に戻した後、反応混合物を使い捨てのメンブレンフィルター (DISMIC-13cp)でろ過し、ろ液を真空濃縮した。粗生成物の水/メタノール溶液にアニオン交換樹脂 (アンバーライト)を室温で加えた。混合物を同じ室温で1時間撹拌し、ろ過し、真空濃縮した。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィによる残留物の精製により、KK04を得た(収率87%)。
【0165】
化合物 KK04: 白色固体; 融点 104-105 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 5.19 (1H, dd, J = 3.5, 8.0 Hz), 4.99 (1H, d, J = 5.0 Hz), 4.95 (1H, d, J = 3.5 Hz), 4.51 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.33 (1H, br-s), 4.22 (1H, dd, J = 7.0, 13.5 Hz), 4.18 (1H, dq, J = 6.0, 9.5 Hz), 3.83-3.79 (3H, m), 3.73-3.65 (3H, m), 3.36 (3H, s), 3.24 (1H, dd, J= 7.0, 10.5 Hz), 3.03 (1H, d, J = 10.0 Hz), 2.77-2.69 (3H, m,), 2.58 (1H, dd, J= 6.0, 12.0 Hz), 2.41 (1H, d, J = 15.0 Hz), 2.34 (6H, s), 2.33 (3H, s), 2.17 (1H, dd), 2.04 (1H, m), 1.97-1.89 (2H, m), 1.74 (1H, dd, J = 2.0, 10.5 Hz), 1.56 (1H, dd, J= 5.0, 15.0 Hz), 1.52-1.40 (3H, m), 1.32-1.16 (22H, m), 1.07 (3H, d, J = 7.5 Hz), 1.02 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.94 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z895.5761 (C44H83N2O16 [M+H]+の計算値 895.5737).
【0166】
(5)化合物KK05の合成
【0167】
【化22】
【0168】
アジスロマイシン(1.0 eq.)とp-ニトロフェニルボロン酸(0.2 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)溶液に、室温及びアルゴン雰囲気下で3,4-ジ-O-ベンジル-1,2-無水-L-ラムノース(2.0 eq.) の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)を加えた。反応混合物を同じ室温で24時間撹拌し、0.05 M NaBO3 水溶液を加えて反応を停止した。結果として得られた混合物に飽和NaHCO3水溶液を加えた。水層を酢酸エタノールで抽出し、合一した抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4 で乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、保護されたKK05を得た (収率82%)。
【0169】
化合物 保護されたKK05: 白色固体; 融点 134-135 oC; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 7.40-7.20 (10H, m), 5.01-4.98 (2H, m), 4.86 (1H, ABq, J = 11.2 Hz), 4.80 (1H, ABq, J = 11.6 Hz), 4.63 (1H, ABq, J = 12.4 Hz), 4.58-4.54 (3H, m), 4.40 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.30 (1H, br-s), 4.00-3.94 (1H, m), 3.90 (1H, br-s), 3.73-3.56 (3H, m), 3.48-3.42 (1H, m), 3.36-3.33 (1H, m), 3.31 (3H, s), 3.28-3.23 (1H, m), 2.84-2.76 (2H, m), 2.69 (1H, dd, J= 2.8, 10.8 Hz), 2.47-2.44 (1H, m), 2.32 (6H, s), 2.30 (3H, s), 2.18-1.92 (5H, m), 1.72-1.68 (2H, m), 1.52-1.40 (1H, dd, J = 4.0, 14.4 Hz), 1.26-1.13 (27H, m), 1.02 (3H, J = 8.0 Hz), 0.91-0.87 (6H, m); HRMS (ESI-TOF) m/z1074.6619 (C58H94N2O16 [M+H]+の計算値 1074.6603).
【0170】
【化23】
【0171】
保護されたKK05 (1.0 eq.) の 乾燥酢酸エタノール/メタノール水溶液(体積比3/1)(= 3/1)とギ酸との水溶液を20% Pd(OH)2/C の存在下で室温で4時間水素雰囲気(7 atm)下で撹拌した。雰囲気圧から標準圧に戻した後、反応混合物を使い捨てのメンブレンフィルター (DISMIC-13cp)でろ過し、ろ液を真空濃縮した。 粗生成物の水/メタノール溶液にアニオン交換樹脂 (アンバーライト)を室温で加えた。混合物を同じ室温で1時間撹拌し、ろ過し、真空濃縮した。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィによる残留物の精製により、KK05を得た (収率82%)。
【0172】
化合物 KK05: 白色固体; 融点 111-112 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 5.05 (1H, d, J = 4.5 Hz), 5.01 (1H, dd, J = 2.5, 10.0 Hz, H-13), 4.46 (1H, d, J = 7.5 Hz), 4.43 (1H, s), 4.35 (1H, br-s), 4.21 (1H, dq, J = 6.5, 9.5 Hz), 4.19 (1H, d, J = 3.5 Hz), 3.91 (1H, br-s), 3.72 (1H, m), 3.64 (1H, d, J = 7.5 Hz), 3.53-3.47 (2H, m), 3.37 (3H, s), 3.27 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.25 (1H, dd, J = 7.5, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 10.0 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 7.0, 14.0 Hz), 2.74 (1H, dq, J = 3.5, 7.0 Hz), 2.68 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.45 (1H, d, J = 15.5 Hz), 2.34 (1H, m), 2.34 (6H, s), 2.31 (3H, s), 2.22 (1H, dd, J = 11.0, 11.0 Hz), 2.12 (1H, m), 2.05 (1H, m), 1.90 (1H, m), 1.75-1.68 (2H, m), 1.57 (1H, dd, J = 5.0, 15.0 Hz), 1.49 (1H, m), 1.35 (1H, br-d, J = 12.5 Hz), 1.30-1.25 (12H, m), 1.20-1.17 (10H, m), 1.06 (3H, d, J = 7.5 Hz), 0.93 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.88 (3H, t, J = 7.5 Hz); 1HRMS (ESI-TOF) m/z 895.5750 (C44H83N2O16[M+H]+ の計算値 895.5737).
【0173】
(6)化合物KK06の合成
【0174】
【化24】
【0175】
アジスロマイシン(1.0 eq.)とp-ニトロフェニルボロン酸(0.2 eq.)の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)溶液に、4-O-p-アジドベンジル-3,6-ジ-O-トリイソプロピルシリル-1,2-無水-D-グルコース(2.0 eq.) の乾燥CH3CN / DMSO(体積比3/1)を加えた。反応混合物を同じ室温で24時間撹拌し、0.05 M NaBO3 (0.2 eq.)水溶液を加えて反応を停止した。結果として得られた混合物に飽和NaHCO3水溶液を加えた。水層を酢酸エタノールで抽出し、合一した抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4 で乾燥させ、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、保護されたKK06を得た (収率89%)。
【0176】
化合物 KK06: 黄色発泡体; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.34-7.31 (2H, m), 7.04-7.02 (2H, m), 5.21 (1H, d, J = 8.8 Hz), 5.11 (1H, d, J = 3.6 Hz), 4.86 and 4.76 (2H, ABq, J = 12.0 Hz), 4.85 (1H), 4.52 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.42 (1H, d, J = 7.2 Hz), 4.21 (1H, dq, J = 6.4, 9.2 Hz), 4.16 (1H, dd, J= 9.2, 9.2 Hz), 3.93 (1H, dd, J = 3.2, 11.6 Hz), 3.87-3.79 (3H, m), 3.71-3.65 (2H, m), 3.48 (1H, dd, J = 9.2, 9.2 Hz), 3.44 (1H, dd, J = 3.2, 9.6 Hz), 3.33 (3H, s), 3.28 (1H, m), 3.03 (1H, d, J = 9.6 Hz), 2.87-2.78 (3H, m), 2.45-2.40 (2H, m), 2.40 (6H, s), 2.23 (3H, s), 2.08-1.99 (4H, m), 1.84-1.66 (3H, m), 1.57 (1H, dd, J = 4.4, 15.2 Hz), 1.32-1.30 (10H, m), 1.24-1.03 (58H, m), 0.97 (3H, d, J = 6.0 Hz), 0.91 (3H, t, J = 6.8 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z1354.8839 (C69H128N5O17Si2[M+H]+ の計算値 1354.8838).
【0177】
(7)化合物KK07の合成
【0178】
【化25】
【0179】
KK06 (1.0 eq.)のテトラヒドロフラン 溶液に室温及びアルゴン雰囲気下で1.0 M TBAFのTHF (10 eq.) 溶液を加えた。反応混合物を18時間40℃で撹拌した後、真空濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、KK07を得た(収率70%)。
【0180】
化合物 KK07: 黄色固体; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 7.42-7.40 (2H, m), 7.06-7.03 (2H, m), 5.41 (1H, d, J = 3.5 Hz), 5.27 (1H, d, J = 10.0 Hz), 4.93 and 4.64 (2H, ABq, J = 11.0 Hz), 4.90 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq J = 6.0, 9.0 Hz), 3.80 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.78-3.64 (6H, m), 3.53 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.36 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.34 (3H, s), 3.26 (1H, dd, J = 7.0, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.89-2.84 (2H, m), 2.71 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.47-2.41 (2H, m), 2.34 (6H, s), 2.23 (3H, s), 2.09-2.01 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.85 (1H, m), 1.76-1.71 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.57 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.41 (1H, br-d, J = 14.5 Hz), 1.32-1.19 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.5 Hz), 1.05 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.94 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.0 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1042.6176 (C51H88N5O17 [M+H]+の計算値 1042.6175).
【0181】
(8)化合物KK08の合成
【0182】
【化26】
【0183】
KK07 (1.0 eq.) のTHF溶液に、室温及びアルゴン雰囲気下でプロパルギルアミン (4.4 eq.)を加えた。反応混合物を同じ室温で5分撹拌し、CuSO4・5H2O (4.0 eq.)及びNa-Asc (1.0 eq.)の水溶液を反応混合物に加えた。18時間撹拌した後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる反応混合物の精製により、KK08を得た (収率85%)。
【0184】
化合物 KK08: 黄色固体; 融点 150-151 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 8.39 (1H, s), 7.83-7.81 (2H, m), 7.61-7.60 (2H, m), 5.43 (1H, d, J = 3.5 Hz), 5.28 (1H, d, J = 10.5 Hz), 5.05 and 4.76 (2H, ABq, J = 11.5 Hz), 4.90 (1H), 4.50 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq, J = 6.0, 9.5 Hz), 3.98 (2H, s), 3.84 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.81 (1H, m), 3.73-3.64 (5H, m), 3.55 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.42 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.34 (3H, s), 3.27 (1H, dd, J = 7.5, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.88-2.85 (2H, m), 2.75 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.44-2.41 (2H, m), 2.37 (6H, s), 2.25 (3H, s), 2.11-2.02 (2H, m), 1.96 (1H, br-s), 1.86 (1H, m), 1.77-1.70 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.58 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.42 (1H, br-d, J = 15.5Hz), 1.32-1.19 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.5 Hz), 1.07 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.95 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.0 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1097.6582 (C54H93N6O17 [M+H]+ の計算値 1097.6592)。
【0185】
(9)化合物KK09の合成
【0186】
【化27】
【0187】
KK07 (1.0 eq.) のTHF溶液に、室温及びアルゴン雰囲気下でN,N-ジメチルプロパルギルアミン (4.4 eq.)を加えた。反応混合物を同じ室温で5分撹拌し、CuSO4・5H2O (4.0 eq.)及びNa-Asc (1.0 eq.)の水溶液を反応混合物に加えた。18時間撹拌した後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる反応混合物の精製により、KK09を得た(収率94%)。
【0188】
化合物 KK09: 黄色固体; 融点 152-153 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 8.46 (1H, s), 7.84-7.83 (2H, m), 7.62-7.60 (2H, m), 5.42 (1H, d, J= 3.5 Hz), 5.28 (1H, d, J = 9.5 Hz, 5.05 and 4.76 (2H, ABq, J = 11.5 Hz), 4.90 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.5 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.0 Hz), 4.20 (1H, dq, J = 6.0 Hz , J = 9.5 Hz), 3.84 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.81 (1H, m), 3.72-3.64 (7H, m), 3.55 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.42 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.34 (3H, s), 3.27 (1H, dd, J = 7.5, 10.5 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.88-2.85 (2H, m), 2.72 (1H, dt, J = 3.5, 11.0 Hz), 2.48-2.41 (2H, m), 2.35 (6H, s), 2.33 (6H, s), 2.24 (3H, s), 2.10-2.02 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.86 (1H, m), 1.77-1.71 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.58 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.42 (1H, br-d, J = 12.0 Hz), 1.32-1.20 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.07 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.95 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.0 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1125.6939 (C56H97N6O17 [M+H]+ の計算値 1125.6905).
【0189】
(10)化合物KK10の合成
【0190】
【化28】
【0191】
KK07 (1.0 eq.) のメタノール溶液に室温及びアルゴン雰囲気下で3-エチニルアニリン(2.0 eq.)を加えた。反応混合物を同じ室温で5時間撹拌した。反応混合物にTBTA (1.0 eq.) 及び [Cu(MeCN)4]PF6 (1.0 eq.) を加えた。15時間撹拌後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、KK10を得た (収率88%)。
【0192】
化合物 KK10: 黄色固体; 融点 170-171 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 8.80 (1H, s), 7.90-7.88 (2H, m), 7.63-7.62 (2H, m), 7.28 (1H, br-s), 7.23-7.18 (2H, m), 6.75 (1H, dt, J = 2.0, 7.0 Hz), 5.42 (1H, d, J = 3.5 Hz), 5.28 (1H, d, J = 10.0 Hz), 5.06 and 4.77 (2H, ABq, J = 12.0 Hz), 4.90 (1H,), 4.49 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq, J = 6.0, 9.5 Hz), 3.85 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.82 (1H, m), 3.75-3.63 (5H, m), 3.56 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.43 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz,), 3.33 (3H, s), 3.26 (1H, dd, J = 7.0, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.89-2.85 (2H, m), 2.71 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.47-2.41 (2H, m), 2.34 (6H, s), 2.24 (3H, s), 2.09-2.02 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.86 (1H, m), 1.75-1.72 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.57 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.41 (1H, br-d, J = 10.0 Hz), 1.32-1.20 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.07 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.94 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1159.6785 (C59H95N6O17 [M+H]+ の計算値 1159.6748).
【0193】
(11)化合物KK11の合成
【0194】
【化29】
【0195】
KK07 (1.0 eq.) のメタノール溶液に室温及びアルゴン雰囲気下で3-エチニルピリジン (2.0 eq.)を加えた。反応混合物を同じ室温で5時間撹拌した。反応混合物にTBTA (1.0 eq.) 及び [Cu(MeCN)4]PF6 (1.0 eq.) を加えた。15時間撹拌後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、KK11を得た (収率99%)。
【0196】
化合物 KK11: 黄色固体; 融点 164-165 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 9.12 (1H, br-s), 9.09 (1H, s), 8.56 (1H, br-d, J = 5.0 Hz), 8.39 (1H, br-d, J = 8.0 Hz), 7.92-7.90 (2H, m), 7.65-7.63 (2H, m), 7.57 (1H, dd, J = 5.0, 8.0 Hz), 5.43 (1H, d, J = 4.0 Hz), 5.28 (1H, d, J = 9.5 Hz), 5.07 and 4.78 (2H, ABq, J = 12.0 Hz), 4.89 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.0 Hz), 4.20 (1H, dq, J = 6.0, 9.5 Hz), 3.85 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.82 (1H, m), 3.74-3.64 (5H, m), 3.56 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.44 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.34 (3H, s), 3.27 (1H, dd, J = 7.5, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.88-2.85 (2H, m), 2.72 (1H, dt, J = 3.5, 11.0 Hz), 2.44-2.41 (2H, m), 2.35 (6H, s), 2.25 (3H, s), 2.09-2.03 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.87 (1H, m), 1.76-1.72 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.58 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.41 (1H, br-d, J = 13.0 Hz), 1.32-1.20 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.07 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.94 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1145.6616 (C59H95N6O17 [M+H]+ の計算値 1145.6592).
【0197】
(12)化合物KK12の合成
【0198】
【化30】
【0199】
KK07 (1.0 eq.) のメタノール溶液に室温及びアルゴン雰囲気下で4-エチニルアニリン(2.0 eq.)を加えた。反応混合物を同じ室温で5時間撹拌した。反応混合物にTBTA (1.0 eq.) 及び [Cu(MeCN)4]PF6 (1.0 eq.) を加えた。15時間撹拌後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、KK12を得た(収率99%)。
【0200】
化合物 KK12: 黄色固体; 融点 186-187 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 8.71 (1H, s), 7.89-7.87 (2H, m), 7.66-7.61 (4H, m), 6.81-6.78 (2H, m), 5.42 (1H, d, J = 3.5 Hz), 5.28 (1H, d, J = 9.5 Hz), 5.05 and 4.77 (2H, ABq, J = 11.5 Hz), 4.89 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.5 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq, J = 6.5, 9.5 Hz), 3.85 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.82 (1H, m), 3.75-3.64 (5H, m), 3.56 (1H, dd, J = 4.0, 9.5 Hz), 3.43 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.33 (3H, s), 3.26 (1H, dd, J = 7.5, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 9.5 Hz), 2.89-2.82 (2H, m), 2.72 (1H, dt, J = 3.5, 11.0 Hz), 2.47-2.41 (2H, m), 2.34 (6H, s), 2.24 (3H, s), 2.09-2.02 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.86 (1H, m), 1.75-1.71 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.57 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.41 (1H, br-d, J = 12.0 Hz), 1.32-1.20 (19H, m), 1.11 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.07 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.94 (3H, d, J = 6.0 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1159.6763 (C59H95N6O17 [M+H]+ の計算値 1159.6748).
【0201】
(13)化合物KK13の合成
【0202】
【化31】
【0203】
KK07 (1.0 eq.) のメタノール溶液に室温及びアルゴン雰囲気下で4-エチニルピリジン (2.0 eq.)を加えた。反応混合物を同じ室温で5時間撹拌した。反応混合物にTBTA (1.0 eq.) 及び [Cu(MeCN)4]PF6 (1.0 eq.) を加えた。15時間撹拌後、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる残留物の精製により、KK13を得た(収率93%)。
【0204】
化合物 KK13: 黄色固体; 融点 171-172 °C; 1H NMR (500 MHz, CD3OD) d 9.19 (1H, s), 8.64 (2H, br-s), 7.99-7.98 (2H, m), 7.92-7.91 (2H, m), 7.65-7.64 (2H, m), 5.43 (1H, d, J = 3.5 Hz), 5.28 (1H, d, J = 10.5 Hz), 5.07 and 4.78 (2H, ABq, J = 11.5 Hz), 4.90 (1H), 4.49 (1H, d, J = 7.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 6.5 Hz), 4.20 (1H, dq, J = 6.0, 9.5 Hz), 3.85 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.82 (1H, m), 3.76-3.64 (5H, m), 3.56 (1H, dd, J = 4.0, 10.0 Hz), 3.44 (1H, dd, J = 9.5, 9.5 Hz), 3.34 (3H, s), 3.26 (1H, dd, J = 7.5, 10.0 Hz), 3.03 (1H, d, J = 10.0 Hz), 2.90-2.84 (2H, m), 2.72 (1H, dt, J = 4.0, 11.0 Hz), 2.48-2.41 (2H, m), 2.35 (6H, s), 2.24 (3H, s), 2.09-2.02 (2H, m), 1.95 (1H, br-s), 1.86 (1H, m), 1.76-1.71 (2H, m), 1.64 (1H, m), 1.57 (1H, dd, J = 4.5, 15.0 Hz), 1.42 (1H, br-d, J = 12.5 Hz), 1.32-1.20 (19H, m, 1.11 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.07 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.94 (3H, d, J = 6.5 Hz), 0.89 (3H, t, J = 7.5 Hz); HRMS (ESI-TOF) m/z 1145.6621 (C58H93N6O17 [M+H]+の計算値 1145.6592).
【0205】
実施例2 抗菌活性評価
実施例1で製造した化合物KK01~KK13の抗菌活性を試験した。アジスロマイシンについても抗菌活性を評価した。試験したいずれの細菌も非結核性抗酸菌であり、Mycobacterium avium ATCC25291及びMycobacterium intracellilare JCM6384は非薬剤耐性菌、Mycobacterium avium B-1657及びMycobacterium intracellilare B-1639はマクロライド耐性菌である。
【0206】
ATCC 25291はAmerican Type Culture Collection (ATCC)、JCM6384は理化学研究所バイオリソース研究センターより入手した。B-1657およびB-1639は、それぞれATCC 25291及びJCM6384をエリスロマイシンを含む寒天培地上で培養し、耐性を有するシングルコロニーのひとつとして選抜した。遺伝子型の確認のため、これらの株のゲノムDNAをテンプレートとし、2本のプライマー5_23S_MAC(配列5’-ATCGAGAGCCGATGAAGG)および3_23S_MAC(配列5’-TTCCAGGTCTGGCCTATCG)を用いて23S rRNAをコードするrrl遺伝子をPCRにて増幅した。得られたPCR断片を、3_23S_MACをプライマーに用いたサンガーシークエンスに供し、B-1657およびB-1639がそれぞれrrl遺伝子の2059番目、2058番目 (E. coli numbering)にAからCの変異を有している事を確認した。
【0207】
抗菌試験は微量液体希釈法を用いて行った。液体培地としてMiddlebrook 7H9 brothのpHを7.4に調整し、Middlebrook ADC Enrichmentを加えた培地を使用した。これに各被検菌を100,000cfu/mlとなるように植菌し、マイクロプレートに分注した。この時各ウェルに2倍希釈系列でアジスロマイシンおよびアジスロマイシン誘導体の各化合物を加え、摂氏37度で静置培養した。14日後、培養液の濁度の増加を目視で確認する事により被検菌の生育を評価し、被検菌の生育を阻害する最少濃度(MIC)を各薬剤の抗菌活性の指標とした。
【0208】
表1に抗菌試験の結果を示す。
【0209】
化合物KK07~KK13は薬剤耐性菌M. avium B-1657に対し、アジスロマイシンよりも高い抗菌活性を示した。化合物KK13はM. intracellilare B-1639に対しても抗菌活性を示した。
【0210】
さらに、化合物KK07~KK13はM. avium ATCC25291及びM. intracellilare JCM6384に対しても抗菌活性を示し、化合物KK07、KK11、KK13のM. avium ATCC25291及びM. intracellilare JCM6384に対する抗菌活性はアジスロマイシンのものよりも高かった。
【0211】
化合物KK01~KK05はM. avium ATCC25291とM. intracellilare JCM6384に対してアジスロマイシンよりは弱いが抗菌活性を示した。化合物KK06はM. avium ATCC25291とM. intracellilare JCM6384のいずれに対する抗菌活性も弱かった。化合物KK01~KK06は、化合物KK04がM. avium B-1657に対して弱い抗菌活性を示すことを除き、薬剤耐性菌に対する抗菌活性を有しなかった。
【0212】
【表1】
図1
図2
図3