IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社チームパワーソリューションの特許一覧

特開2024-172720染毛剤、染毛剤ペーストおよび染毛方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172720
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】染毛剤、染毛剤ペーストおよび染毛方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241205BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/10
A61K8/85
A61K8/25
A61K8/49
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090621
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】523204684
【氏名又は名称】株式会社チームパワーソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】中西 洋子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD091
4C083AD092
4C083BB41
4C083BB48
4C083BB53
4C083CC36
4C083DD22
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】
二酸化チタンを用いることなく、染毛後直ちに安定した仕上がり色を発色させ、かつ色持ちのよい染毛剤および染毛方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の染毛剤は、ヘナ粉末およびインディゴ粉末を主成分とする染毛料と、乳酸オリゴマーである発色媒体と、この発色媒体による染毛料の発色性を向上させるSi成分である発色助剤を含有することを特徴とする。
前記発色媒体は、前記染毛料100重量部に対して2~8重量部添加することが好ましい。
前記発色媒体と発色助剤の総量を100質量%としたとき、発色助剤の割合は、10~40質量%であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘナ粉末およびインディゴ粉末を主成分とする染毛料と、乳酸オリゴマーである発色媒体と、この発色媒体による染毛料の発色性を向上させるSi成分である発色助剤を含有することを特徴とする染毛剤。
【請求項2】
前記発色媒体が、前記染毛料100重量部に対して2~8重量部添加された請求項1の染毛剤。
【請求項3】
前記発色媒体が、前記染毛料100重量部に対して4~6重量部添加された請求項1の染毛剤。
【請求項4】
前記発色媒体と発色助剤の総量を100質量%としたとき、発色助剤の割合が、10~40質量%である請求項2の染毛剤。
【請求項5】
前記発色媒体と発色助剤の総量を100質量%としたとき、発色助剤の割合が、23~34質量%である請求項2の染毛剤。
【請求項6】
前記染毛料の主成分におけるヘナ粉末対インディゴ粉末の質量比が、40~15:60~85である請求項1の染毛剤。
【請求項7】
海藻と野草と樹木葉などの野草植物群から抽出した野生植物ミネラルを含有する請求項1の染毛剤。
【請求項8】
香料を含有する請求項1の染毛剤。
【請求項9】
前記香料が、粉末であるラベンダーまたはラベンダーエキスである請求項8の染毛剤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかの染毛剤を、30℃~45℃程度のお湯に溶融して形成した染毛剤ペースト。。
【請求項11】
防腐剤が添加された請求項10の染毛剤ペースト。
【請求項12】
前記防腐剤が、ローズマリーエキス、山椒エキス、スイカズラエキス、グレープフルーツエキス、プルサチラコレアナエキスの内少なくとも1種である請求項11の染毛剤ペースト。
【請求項13】
請求項10~12の何れかの染毛剤ペーストを、毛髪に塗布して行う染毛方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤、染毛剤ペーストおよび染毛方法に関し、さらに詳細には、ヘナおよびインディゴを主成分とする染毛剤、染毛剤ペーストおよび染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛用組成物には、染毛力に優れるとともに、多彩な色調を表現できるため、合成染料であるp-フェニレンジアミン系やアミノフェノール系の酸化染料が染料成分として広く用いられていた。しかし、この種の酸化染料は皮膚障害が懸念され、又生態系に悪影響を及ぼす環境ホルモンであること、及び発がん性やアレルギー誘発性が懸念されることが指摘されている。
【0003】
他方、安全性が高いとされるHC染料や塩基性染料等の直接染料も用いられている。直接染料を用いた染毛剤は、中性域での染毛が可能であることから、アルカリによる毛髪の損傷がなく、又過酸化水素などの酸化剤が不要であるため、皮膚刺激や目に入ることによって引き起こされる事故のおそれがなく、酸化染料を用いた染毛剤に比較して比較的安全性の高い染毛剤とされている。
【0004】
例えば、HC染料や塩基性染料は、化学反応を起こすことなく毛髪に染着するため、繰り返し染毛しても毛髪のダメージが少ない。しかし、その染色効果は持続性に乏しく、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすい。
【0005】
最近、ヘナが染料として注目されている。ヘナは有効成分として2-ヒドロキシ-1, 4-ナフトキノンを含み、インドやイランなどの熱帯地方に産するミソハギ科の潅木であるLawsoniainermisの葉を乾燥し粉砕して得られるオレンジからブラウン系の天然染料である。
【0006】
例えば、ヘナ粉末とヘナ抽出液の一方又は両方を1~40重量%含有し、水分、油分、活性剤、トリートメント剤、HC染料、塩基性染料を含有するクリーム状の染毛剤組成物が提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、ヘナ粉末20~90重量%、インド藍の葉の乾燥粉末80~20重量%を配合し、水と混練してペースト状にして使用するようにした染毛剤が提案されている(特許文献2)。
【発明の開示】
【0008】
ヘナ粉末を主成分とする染毛剤では、染毛剤のペーストを毛髪に塗布し、30°C~35°C程度の温度で10~30分間程度加温するか、キャップをかぶせて水分の蒸発を防ぎながら1時間程度保持した後、シャンプーし、ドライヤーで乾燥させるようにしているが、安定した発色までに時間がかかり、染毛後数日経過しないと、安定した仕上がり色を確認できない。
【0009】
かかる問題点に鑑み、ヘナを用いた染毛において染毛後直ちに安定した仕上がり色を発色させることのできるようにした染毛用組成物を提供することを課題として、特許文献3(特許第5684686号)では、次のような染毛用組成物を提案している。
【0010】
この特許公報で提案された染毛用組成物は、ヘナ粉末100重量部に対し、表面にリン酸カルシウム微粒子及びシルク微粒子を吸着させた二酸化チタン粉末0.0075重量部~0.015重量部を配合したものである。
【0011】
すなわち、上記特許公報で提案された染毛組成物の特徴の1つは表面にリン酸カルシウム微粒子及びシルク微粒子を吸着させた二酸化チタン粉末をヘナ粉末に配合するようにした点にある。
【0012】
この二酸化チタン粉末の役割は、二酸化チタンの光触媒反応によって、毛髪に超親水性を付与することにより、ヘナの主成分であるポリフェノール類が毛髪内部に迅速に浸透して毛髪組織に結合するとともに、仕上がり色を呈するので、染毛後直ちに安定した仕上がり色を発色させることができるとしている。
【0013】
本発明の発明者の研究では、ヘナにインディゴを加えた染料における発色においても、この二酸化チタンの機能が発揮されることを確認した。
しかしながら、近年、以上の二酸化チタンは、EU等では、二酸化チタンを化学物質として使用する場合、安全と看做すことはもはや出来ないとして、食品に関してではあるが、使用が禁止されており、近々に、この染毛剤や化粧品についても使用が禁止される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010-1278号公報
【特許文献2】特開2003-300845号公報
【特許文献3】特許第5684686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、二酸化チタンを用いることなく、染毛後直ちに安定した仕上がり色を発色させ、かつ色持ちのよい染毛剤および染毛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の染毛剤、染毛剤ペーストおよび染毛方法は、下記(1)~(13)の構成を有するものである。
(1)
ヘナ粉末およびインディゴ粉末を主成分とする染毛料と、乳酸オリゴマーである発色媒体と、この発色媒体による染毛料の発色性を向上させるSi成分である発色助剤を含有することを特徴とする染毛剤。
(2)
前記発色媒体が、前記染毛料100重量部に対して2~8重量部添加された前記(1)の染毛剤。
(3)
前記発色媒体が、前記染毛料100重量部に対して4~6重量部添加された前記(1)の染毛剤。
(4)
前記発色媒体と発色助剤の総量を100質量%としたとき、発色助剤の割合が、10~40質量%である前記(2)の染毛剤。
(5)
前記発色媒体と発色助剤の総量を100質量%としたとき、発色助剤の割合が、23~34質量%である前記(2)の染毛剤。
(6)
前記染毛料の主成分におけるヘナ粉末対インディゴ粉末の質量比が、40~15:60~85である前記(1)の染毛剤。
(7)
海藻と野草と樹木葉などの野草植物群から抽出した野生植物ミネラルを含有する前記(1)の染毛剤。
(8)
香料を含有する前記(1)の染毛剤。
(9)
前記香料が、粉末であるラベンダーまたはラベンダーエキスである前記(8)の染毛剤。
(10)
前記(1)~(9)のいずれかの染毛剤を、30℃~45℃程度のお湯に溶融して形成した染毛剤ペースト。
(11)
防腐剤が添加された前記(10)の染毛剤ペースト。
(12)
前記防腐剤が、ローズマリーエキス、山椒エキス、スイカズラエキス、グレープフルーツエキス、プルサチラコレアナエキスの内少なくとも1種である前記(11)の染毛剤ペースト。
(13)
前記(10)~(12)の何れかの染毛剤ペーストを、毛髪に塗布して行う染毛方法。
【発明の効果】
【0017】
本染毛剤においては、二酸化チタンに変わる発色触媒として、乳酸オリゴマーを用いたので、人体に害を及ぼすことなく、一度染めで、ライトブラウン、ブラウン、ダークブラウン、ソフトブラック等の染毛を行うことができ、しかも色の定着性が良いという効果がある。
【発明の実施の形態】
【0018】
本発明の実施の形態による染毛剤は、ヘナ粉末およびインディゴ粉末を主成分とする染毛料と、乳酸オリゴマーである発色媒体と、この発色媒体による染毛料の発色性を向上させるSi成分である発色助剤を含有する。
【0019】
前記ヘナとしては、ローソニア(ローソン)1.0%以上、好ましくは、1.5%以上、サンド含有量2.0%以下のもちいることが好ましい。このヘナとしては、一般社団法人自然ヘナ・シロダーラ研究会認定の「AAA(トリプルエー)ランクのもの(ローソニア(ローソン)1.7%以上、サンド含有量1.0%以下)を用いることが特に好ましい。
インディゴ粉末としては、市販の天然ものを用いることができる。
【0020】
前記染毛料の主成分におけるヘナ粉末対インディゴ粉末の質量比は、染め上がりの色に調整されるが、40~15:60~85程度である。
ちなみに、ライトブラウンの場合40:60、ブラウンの場合30:70、ダークブラウンの場合20:80、ソフトブラックの場合15:80程度である。
【0021】
前記発色媒体としての乳酸オリゴマーとしては、直鎖状重合乳酸、環状重合乳酸があるが、本発明では、環状重合乳酸を用いるのが好ましく、植物由来のものが好ましく、このような環状重合乳酸は、市販もしくは市場に流通しているので、入手が比較的容易である。
【0022】
この発色媒体は、染毛料100重量部に対して2~8重量部、特に4~6重量部添加されることが望ましい。上記の範囲を下回ったとしても、発色までの時間が長時間を要する等の問題が存在するだけであるが、一度染めの効果を考えると、所定時間(例えば、30分)内での発色が望ましく、この点からは前記範囲を下回らない方がよい。また、上記範囲を超えた場合には、発色性等の効果の更なる向上が見込まれず、コストパフォーマンスが大幅に悪化するので、上記の範囲を超えない方がよい。
【0023】
発色助剤としてのSi成分は、結晶性のものでも、非結晶性のものでも何れであって良く、シリカ(SiO)であってもよい。
前記発色媒体と発色助剤の総量を100質量%としたとき、発色助剤の割合は、10~40質量%、特に23~34質量%であることが好ましい。この範囲であると、良好な発色効果等が得られ、また高価な発色媒体としての環状重合乳酸の必要な量を減らすことができ、コスト面からの効果も高い。
【0024】
本発明の実施の形態による染毛剤は、海藻と野草と樹木葉などの野草植物群から抽出した野生植物ミネラルを含有することが好ましい。この野生植物ミネラルとしては、株式会社健蘇社が商品名「BIE野生植物ミネラルマグマン」で発売しているものを用いて望ましい。
【0025】
本発明の実施の形態による染毛剤は、香料を含有することが好ましい。この香料としては、任意のものを用いることができるが、植物由来のものが好ましく、例えば、粉末であるラベンダーまたはラベンダーエキスを
挙げることが出来る。
【0026】
本発明の実施の形態における染毛剤ペーストは、30℃~45℃程度のお湯に溶融して形成することができる。この時用いるお湯の量は、染毛剤固形分に対して3~5倍程度の量であることが好ましい。
【0027】
このような染毛剤ペーストは、腐敗防止のため、防腐剤を添加することが望ましい。添加量は、適量でよい。
前記防腐剤としては、植物由来のものを用いることが好ましく、例えば、ローズマリーエキス、山椒エキス、スイカズラエキス、グレープフルーツエキス、プルサチラコレアナエキスの内少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
本発明の実施の形態における染毛剤ペーストを染毛方法は、上述のような染毛剤ペーストを、毛髪に塗布し、所定時間(例えば30分)経過後、染髪(染毛剤を洗い流す)し、乾燥して完了である。
【0029】
以下、実施例について説明する。
実施例の染毛剤ペーストの調整。
先ず、表1に示したように、ヘナ粉末とインディゴ粉末を調整して染料のサンプルを作り、次いで、これに発色媒体としての乳酸オリゴマーおよび発色助剤としてのシリカ(Si成分)を、表1に示すように添加して、実施例1~10のサンプルとしての染毛剤を作成した。実施例1で、発色媒体としての乳酸オリゴマーおよび発色助剤としてのシリカ(Si成分)を添加しなかったものを比較例1のサンプルとした、以上のサンプルに、染毛剤固形分に対して約4倍の約40℃のお湯を加え、良く練って染毛剤ペーストのサンプルを作成した。
【0030】
実験は、白髪の人毛100本を束ねた試験体に、前記サンプルの染毛剤ペーストをまんべんなく行き渡るように塗布し、発色を見極めたのち洗い流し、乾燥し、完成したものについて発色性および耐耐食性について判断した。
発色性については、それぞれの色の見本品との比較で判断した。耐食性は、アルカリ温泉水を用い、これで、サンプルをもみ洗いして脱色したか否かで判断した。その結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】

表1から分かるように、染料100gに対して発色媒体を5g、発色助剤を2gがベストモードで、発色媒体、発色助剤をそれ以上加えても、効果の向上は見込まれず、コスト高になるだけであった。
なお、実施例10においては、10本ほど試験体を試して見たが、試験体によっては、乾燥直後は緑味がかかったりして発色性が完全とは思われないものが存在したので、評価を○とした。毛髪の個体差によるものと考えられる。
【0033】
以上により、本発明の効果が明らかである。