(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172723
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ΔΣ変調器
(51)【国際特許分類】
H03M 3/04 20060101AFI20241205BHJP
H03M 1/46 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H03M3/04
H03M1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090633
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大東 睦夫
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB03
5J022AB04
5J022BA02
5J022BA06
5J022CF01
5J064BA03
5J064BB14
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC16
(57)【要約】
【課題】AD変換精度を向上させ、消費電力を抑制する。
【解決手段】ΔΣ変調器40において、ループフィルタ41は入力アナログ信号Uと多ビット量子化器47の出力信号V
1とから、多ビット量子化器47の入力信号を生成する。出力フィルタ54は、多ビット量子化器47の出力信号V
1と逐次比較AD変換器48の出力信号V
2とから多ビット量子化器47の量子化誤差E
1を除去するように演算することにより、出力デジタル信号Wを生成する。ここで、逐次比較AD変換器48の入力信号Yの絶対値は多ビット量子化器47の量子化誤差E
1の絶対値に等しい。逐次比較AD変換器48に設けられた容量DA変換器30を構成する容量素子群C
1~C
M-1のうちで最も上位のビットに対応する容量素子C
M-1の一端は固定電圧に接続されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力アナログ信号を出力デジタル信号に変換するΔΣ変調器であって、
多ビット量子化器と、
前記入力アナログ信号と前記多ビット量子化器の出力信号とから前記多ビット量子化器の入力信号を生成するループフィルタと、
逐次比較AD(Analog-to-Digital)変換器と、
前記多ビット量子化器の出力信号と前記逐次比較AD変換器の出力信号とから前記多ビット量子化器の量子化誤差を除去するように演算することにより、前記出力デジタル信号を生成する出力フィルタとを備え、
前記ΔΣ変調器は、前記逐次比較AD変換器の入力信号の絶対値が前記多ビット量子化器の量子化誤差の絶対値に等しくなるように構成され、
前記逐次比較AD変換器は、容量DA(Digital-to-Analog)変換器または抵抗ラダーDA変換器を含み、
前記容量DA変換器を構成する容量素子群または前記抵抗ラダーDA変換器を構成する抵抗素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子または抵抗素子については、印加される電圧または電流が固定されている、ΔΣ変調器。
【請求項2】
前記逐次比較AD変換器は、容量DA変換器を含み、
前記多ビット量子化器は、Lビット(Lは2以上の整数)のデジタル信号を生成し、
前記逐次比較AD変換器は、Lより大きいビット数のデジタル信号を生成し、
前記容量DA変換器を構成する容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子からL-1個の容量素子の一端は固定電圧に接続され、残りの容量素子の一端の電圧は切替スイッチによって切り替えることができる、請求項1に記載のΔΣ変調器。
【請求項3】
前記逐次比較AD変換器は、容量DA変換器を含み、
前記多ビット量子化器は、Lビット(Lは3以上の整数)のデジタル信号を生成し、
前記逐次比較AD変換器は、Lより大きいビット数のデジタル信号を生成し、
前記容量DA変換器を構成する容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子からL-2個の容量素子の一端は固定電圧に接続され、残りの容量素子の一端の電圧は切替スイッチによって切り替えることができる、請求項1に記載のΔΣ変調器。
【請求項4】
前記容量DA変換器を構成する容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子からL-1個の容量素子の各容量値の和は、寄生容量がない場合の理想的な値から前記寄生容量を差し引いた値に等しい、請求項2に記載のΔΣ変調器。
【請求項5】
前記容量DA変換器を構成する容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子からL-2個の容量素子の各容量値の和は、寄生容量がない場合の理想的な値から前記寄生容量を差し引いた値に等しい、請求項3に記載のΔΣ変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ΔΣ変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4357083号(特許文献1)は、1ビット量子化器を用いつつも量子化誤差を削減可能な、いわゆるMASH(multistage noise-shaping)方式の多段ΔΣ変調器を開示する。具体的にこの文献のΔΣ変調器は、入力アナログ信号が入力される入力端子と、出力デジタル信号を出力する出力端子と、1ビット量子化器と、1ビットDA(Digital-to-Analog)変換器と、入力積分回路列と、遅延素子と、第二減算器と、多ビット量子化器(すなわち、ナイキスト型AD(Analog-to-Digital)変換器)と、微分器と、加算器とを備える。
【0003】
1ビット量子化器は、上記入力端子と出力端子との間の信号経路に配設され、アナログ信号を量子化して量子化デジタル信号を出力する。1ビットDA変換器は、当該量子化デジタル信号を量子化アナログ信号に変換する。入力積分回路列は、1組または複数組の減算器とその出力を積分する積分器とが1段にあるいは多段に接続され、初段の減算器は上記入力アナログ信号から量子化アナログ信号を減算し、2段目以降の減算器は前段の積分器の出力信号から量子化アナログ信号を減算し、最終段の積分器の出力信号を上記1ビット量子化器へ出力する。遅延素子は、1ビットDA変換器から入力積分回路列までの量子化アナログ信号の信号経路に配設される。第二減算器は、上記1ビット量子化器に入力されるアナログ信号から上記量子化アナログ信号を減算する。多ビット量子化器(すなわち、ナイキスト型A/D変換器)は、当該第二減算器のアナログ出力を量子化して量子化第二デジタル信号を出力する。微分器は、当該多ビット量子化器の出力を上記入力積分回路列の段数と同次元だけ微分する。加算器は、上記量子化デジタル信号に当該微分器の出力を加算して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、MASH方式の多段ΔΣ変調器においてさらに量子化誤差を削減するために、1ビット量子化器を多ビット量子化器の変更することを検討した。その際に、ΔΣ変調器全体での消費電力を抑制することを考慮して本開示のΔΣ変調器を想到するに至った。
【0006】
本開示のその他の課題および特徴は、以下の発明を実施するための形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、入力アナログ信号を出力デジタル信号に変換するΔΣ変調器が提供される。ΔΣ変調器は、多ビット量子化器と、ループフィルタと、逐次比較AD変換器と、出力フィルタとを備える。ループフィルタは、入力アナログ信号と多ビット量子化器の出力信号とから多ビット量子化器の入力信号を生成する。出力フィルタは、多ビット量子化器の出力信号と逐次比較AD変換器の出力信号とから多ビット量子化器の量子化誤差を除去するように演算することにより、出力デジタル信号を生成する。ΔΣ変調器は、逐次比較AD変換器の入力信号の絶対値が多ビット量子化器の量子化誤差の絶対値に等しくなるように構成される。逐次比較AD変換器は、容量DA(Digital-to-Analog)変換器または抵抗ラダーDA変換器を含む。容量DA変換器を構成する容量素子群または抵抗ラダーDA変換器を構成する抵抗素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子または抵抗素子については、印加される電圧または電流が固定されている。
【発明の効果】
【0008】
上記の一実施形態によれば、逐次比較AD変換器の容量DA変換器を構成する容量素子群または抵抗ラダーDA変換器を構成する抵抗素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子または抵抗素子については、印加される電圧または電流が固定されている。これにより、冗長なAD変換を排除し、消費電力を抑制できる。また、その容量素子または抵抗素子を利用してΔΣ変調器の精度劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1によるΔΣ変調器の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の逐次比較AD変換器の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図2の逐次比較AD変換器の比較例としての逐次比較AD変換器の構成を示す回路図である。
【
図4】多ビット量子化器の量子化誤差が取り得る電圧範囲を示す図である。
【
図5】実施の形態2のΔΣ変調器において、逐次比較AD変換器の構成例を示す回路図である。
【
図6】実施の形態3によるΔΣ変調器の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。実施の形態1では、本開示のΔΣ変調器の基本原理を説明するために、上記の特許第4357083号(特許文献1)を一部変更した構成について説明する。実施の形態2では、逐次比較AD変換器の容量DA変換器の変換誤差を低減するための構成について説明する。実施の形態3では、多ビット量子化器のためのループフィルタの構成を変更することにより、上記特許文献1における第2減算器を取り除いたΔΣ変調器の構成を説明する。なお、実施の形態2において実施の形態1と同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
【0011】
実施の形態1.
[ΔΣ変調器の構成例]
図1は、実施の形態1によるΔΣ変調器10の構成例を示すブロック図である。
図1を参照して、ΔΣ変調器10は、入力積分回路列11と、多ビット量子化器15と、多ビットDA変換器17と、遅延素子18と、第2減算器19と、逐次比較AD変換器20と、微分器21と、加算器16とを備える。入力積分回路列11、多ビットDA変換器17、および遅延素子18によって、多ビット量子化器15のためのループフィルタ25が構成される。
【0012】
入力積分回路列11は、直列接続されたN段の入力積分回路12_1,…,12_Nを含む。
図1の場合には、2段の入力積分回路12_1,12_2(N=2)が設けられている。各入力積分回路12は、第1減算器13および積分器14を含む。
図1の例では、ループフィルタ25の次数が2次(N=2)であるので、いわゆる2-0 MASH方式のΔΣ変調器が示されている。
【0013】
具体的に初段の入力積分回路12_1の第1減算器13_1は、ΔΣ変調器10の入力信号xからフィードバック信号v18を減算する。初段の入力積分回路12_1の積分器14_1は、上記第1減算器13_1の減算結果を積分する。2段目以降の入力積分回路12_i(2≦i≦N)の第1減算器13_iは、前段の入力積分回路12_i-1の積分器14_i-1の積分結果からフィードバック信号v18を減算する。この入力積分回路12_iの積分器14_iは、上記第1減算器13_iの減算結果を積分する。最終段の入力積分回路12_Nの積分器14_Nの積分結果は、入力積分回路列11の出力信号v11として出力される。
【0014】
多ビット量子化器15は、入力積分回路列11の出力信号v11を多ビット(ビット数をLとする)の第1デジタル信号y15に変換する。多ビット量子化器15の量子化誤差をe15とする。
【0015】
多ビットDA変換器17は、多ビット量子化器15によって生成された多ビットの第1デジタル信号y15をアナログ信号v17に変換する。
【0016】
遅延素子18は、多ビットDA変換器17によって生成されたアナログ信号v17を1サンプル時間だけ遅延させることにより、上記のフィードバック信号v18を生成する。
【0017】
第2減算器19は、多ビットDA変換器17によって生成されたアナログ信号v17を、入力積分回路列11の出力信号v11から減算することにより、差分アナログ信号v19を生成する。
【0018】
逐次比較AD変換器20は、第2減算器19から出力された差分アナログ信号v
19をAD変換することにより、差分デジタル信号y
20を生成する。逐次比較AD変換器20の量子化誤差をe
20とする。逐次比較AD変換器20の詳細な構成例については、
図2を参照して後述する。
【0019】
微分器21は、逐次比較AD変換器20によって生成された差分デジタル信号y
20を、入力積分回路列11の段数Nと同次元(=N)だけ微分し、さらに係数倍することより第2デジタル信号y
21を生成する。
図1の場合、N=2である。また、係数は、逐次比較AD変換器20の構成に応じて決まる。
図1の場合、係数は1/2である。係数の決定方法の詳細については
図2~
図4を参照して後述する。
【0020】
加算器16は、多ビット量子化器15によって生成された第1デジタル信号y15と、微分器21によって生成された第2デジタル信号y21とを加算することにより、ΔΣ変調器10の出力信号y1を生成する。微分器21と加算器16とによって出力フィルタ22が構成される。
【0021】
[逐次比較AD変換器の構成例]
図2は、
図1の逐次比較AD変換器20の構成例を示す回路図である。
図2を参照して、逐次比較AD変換器20は、容量DA変換器30と、開閉スイッチ31と、配線32と、比較器33と、逐次近似レジスタ(SAR:Successive Approximation Resister)34とを備える。
【0022】
逐次近似レジスタ34は、逐次比較AD変換器20の出力ビット数をMとすると、M-1個の容量素子C1,…,CM-1と、M-2個の切替スイッチS1,…,SM-2とを備える。最も容量が小さい第1番目の容量素子C1の容量をCとすると、第2番目に容量が小さい容量素子C2の容量は2Cである。以下同様に、第i番目の容量素子Ciの容量は2i-1Cであり、最も容量が大きい容量素子CM-1の容量は、2M-2Cである。切替スイッチS1,…,SM-2は、容量素子C1,…,CM-2にそれぞれ対応する。なお、Cpは寄生容量を表す。
【0023】
次に上記の構成要素の接続について説明する。開閉スイッチ31は、入力電圧Vinが入力されるノードと配線32の一端との間に接続される。配線32の他端は比較器33の入力ノードに接続される。最も容量が大きい容量素子CM-1の第1電極は配線32に接続され、容量素子CM-1の第2電極は基準電圧(零電圧)を与えるグランドGND、または正の参照電圧Vref、または負の参照電圧-Vrefに接続される。すなわち、容量素子CM-1の第2電極は固定電圧に接続される。容量素子C1,…,CM-2の第1電極は配線32に接続され、容量素子C1,…,CM-2の第2電極はそれぞれ対応する切替スイッチS1,…,SM-2に接続される。切替スイッチS1,…,SM-2の各々は、対応する容量素子の第2電極を参照電圧Vrefおよび-Vrefのうちの選択された一方に接続する。
【0024】
逐次近似レジスタ34は、開閉スイッチ31の開閉を制御するとともに、比較器33の比較結果に応じて切替スイッチS1,…,SM-2の各々を切り替える。逐次近似レジスタ34は2分探索アルゴリズムに基づいて入力電圧Vinに対応するデジタル出力Doutを決定する。
【0025】
[逐次比較AD変換器の動作]
図2の逐次比較AD変換器20の動作を説明するに先立ち、比較例の逐次比較AD変換器120の構成とその動作について説明する。
【0026】
図3は、
図2の逐次比較AD変換器20の比較例としての逐次比較AD変換器120の構成を示す回路図である。
図3の逐次比較AD変換器120の容量DA変換器130は、容量素子群C
1,…,C
M-1のうちで最も容量が大きい容量素子C
M-1に対応する切替スイッチS
M-1をさらに含む点で
図2の容量DA変換器30と異なる。最も容量が大きい容量素子C
M-1の第1電極は配線32に接続され、容量素子C
M-1の第2電極は切替スイッチS
M-1に接続される。切替スイッチS
M-1は、容量素子C
M-1の第2電極を参照電圧Vrefおよび-Vrefのうちの選択された一方に接続する。
【0027】
図3のその他の点は
図2の場合と同様であるので、同一または対応する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0028】
次に、
図3の逐次比較AD変換器120の動作について説明する。以下では、容量素子C
1,…,C
M-1の各々の電極のうち、配線32に接続されている電極を第1電極と称し、反対側の電極を第2電極と称する。また、簡単のためにビット数M=2とする。この場合、容量DA変換器130には、1個の容量素子C
1と対応する切替スイッチS
1とが設けられている。
【0029】
(i)まず、逐次近似レジスタ34は、切替スイッチS1によって容量素子C1の第2電極をVrefまたは-Vrefに接続した状態で、開閉スイッチ31を閉状態にする。これにより、入力電圧Vinが配線32を介して比較器33に入力される。開閉スイッチ31を開くと、入力電圧Vinが容量素子C1にサンプリングされる。逐次近似レジスタ34は、このときの比較器33の出力(すなわち、配線32の電圧が正か負か)によって、入力電圧Vinに対応する1ビット目の値を決定する。
【0030】
(ii)次に、切替スイッチS1によって容量素子C1の第2電極を-VrefまたはVrefに接続することにより、配線32の電圧はVin-2VrefまたはVin+2Vrefになる。逐次近似レジスタ34は、このときの比較器33の出力(すなわち、配線32の電圧が正か負か)によって、入力電圧Vinに対応する2ビット目の値を決定する。
【0031】
図2および
図3では簡単のために逐次比較AD変換器20,120は単相入力であるかのように記載しているが、実際には、比較器33は差動入力の比較器として構成され、入力電圧Vinは正側入力電圧Vinpと負側入力電圧Vinnとを有する差動電圧である。比較器33の正側入力端子に対して、容量素子群C
1~C
M-1を含む正側の容量DA変換器130pが接続される。比較器33の負側入力端子に対して、容量素子群C
1~C
M-1を含む負側の容量DA変換器130nが接続される。
【0032】
(i)まず、逐次近似レジスタ34は、正側の容量DA変換器130pの容量素子群C1~CM-1の各第2電極をVrefまたは-Vrefに接続する。さらに、逐次近似レジスタ34は、負側の容量DA変換器130nの容量素子群C1~CM-1の各第2電極を対応する正側の容量素子の第2電極と同じ電圧に接続する。したがって、比較器33の差動入力にはコモン電圧が入力される。この状態で、正側および負側の開閉スイッチ31を介して差動入力電圧Vinp,Vinnがサンプリングされる。逐次近似レジスタ34は、このときの比較器33の出力に基づいて差動入力電圧Vinp,Vinnに対応する最上位ビット(MSB)を決定する。
【0033】
(ii)次に、逐次近似レジスタ34は、上記の比較器33の出力に応じて、正側の容量DA変換器130pの容量素子CM-1および負側の容量DA変換器130nの容量素子CM-1のいずれか一方の第2電極の電圧を切り替える。逐次近似レジスタ34は、この状態での比較器33の出力から第2番目のビット値を決定する。
【0034】
(iii)以下同様に、逐次近似レジスタ34は、容量の大きいほうから(すなわち、より上位のビットに対応する容量素子から)、正側または負側のうちの一方の容量素子の第2電極の電圧を順に切り替えながら比較器33の出力を検出する。これにより、各ビットの値が決定される。
【0035】
なお、単相の入力電圧VinのAD変換を行う場合には、容量素子C1~CM-1に対応する切替スイッチS1~SM-1の各々がVref,-Vrefの他に中間のコモン電圧(グランド電圧)に接続されるように構成される。この場合、逐次近似レジスタ34は、各C1~CM-1の第2電極をコモン電圧に接続した状態で入力電圧Vinのサンプリングを行う。別形態として、容量素子C1~CM-1の各々は等しい容量に2分割されており、2分割された各容量の一方をVrefに接続し、他方を-Vrefに接続することによって、擬似的にコモン電圧を作り出してもよい。
【0036】
図2の本実施形態の逐次比較AD変換器20の動作も基本的には上記と同様である。ただし、容量DA変換器30を構成する容量素子群C
1~C
M-1のうちで最も容量が大きい、すなわち最も上位のビットに対応する容量素子C
M-1の第2電極が固定電圧であるVrefまたは-Vrefまたは零電圧に接続されている点で、
図3の比較例の場合と異なる。したがって、逐次近似レジスタ34は、サンプリングされた入力電圧Vinに基づいて最上位ビット(MSB)の値を決定した後、容量素子C
M-2の第2電極の接続を切り替えることにより、第2ビット目の値を決定する。
【0037】
[ΔΣ変調器の動作]
上述した逐次比較AD変換器20の動作に基づいて、
図1のΔΣ変調器10の動作について説明する。
【0038】
図1のΔΣ変調器10の特徴の一つは、入力積分回路列11の出力信号v
11が1ビット量子化器でなく多ビット量子化器15で量子化される点にある。ΔΣ変調器は、1ビット量子化器を使用した場合に最も優れた線形性が得られるが、1ビット量子化器に代えて多ビット量子化器を使用した場合においても、ダイナミックエレメントマッチング等の様々な方法で線形性を向上させることができる。
【0039】
多ビット量子化器15から出力される多ビットの第1デジタル信号y15は、量子化誤差e15を用いて次式(1)で表される。
【0040】
【0041】
上記の第1デジタル信号y15は、多ビットDA変換器17によってアナログ信号v17に変換される。第2減算器19は、入力積分回路列11の出力信号v11からアナログ信号v17を減算することにより、次式(2)で表される差分アナログ信号v19を生成する。差分アナログ信号v19は逐次比較AD変換器20に入力される。
【0042】
【0043】
上式(2)に示すように、逐次比較AD変換器20の入力信号v19の絶対値は、多ビット量子化器15の量子化誤差の絶対値に等しい。ここで、多ビット量子化器15の量子化誤差e15が取り得る電圧範囲と逐次比較AD変換器20の変換範囲との関係について説明する。
【0044】
図4は、多ビット量子化器15の量子化誤差e
15が取り得る電圧範囲を示す図である。以下の説明において、多ビット量子化器15の参照電圧をVref,-Vrefとする。
【0045】
図4を参照して、多ビット量子化器15の量子化精度L(すなわち、出力される第1デジタル信号y
15のビット数L)が1の場合、量子化誤差e
15が取り得る電圧範囲は、-Vref~Vrefである。量子化精度Lが2の場合、量子化誤差e
15が取り得る電圧範囲は、-Vref/2~Vref/2である。量子化精度が1増えるごとに、量子化誤差e
15が取り得る電圧範囲は半減する。
【0046】
通常、逐次比較AD変換器20に用いられる参照電圧は、多ビット量子化器15に用いられる参照電圧と同じ参照電圧生成回路によって生成されるため、Vrefと-Vrefである。したがって、多ビット量子化器15の量子化精度Lが1の場合には、逐次比較AD変換器20には全コードに対応する電圧が入力されることになる。
【0047】
一方、多ビット量子化器15の量子化精度Lが2の場合には、逐次比較AD変換器20には半分のコードに対応する電圧しか入力されない。したがって、1ビット余分にAD変換してAD変換結果に冗長性持たせる結果となり、AD変換に無駄が生じる。参照電圧をVref/2、-Vref/2に変更すれば、逐次比較AD変換器20の全コードを使用できるが、そうすると、新たな参照電圧生成回路が必要になり、回路面積および消費電力が増加してしまう。
【0048】
本実施の形態のΔΣ変調器10における逐次比較AD変換器20の場合には、
図2を参照して説明したように、容量DA変換器30を構成する容量素子群C
1~C
M-1のうちで最も容量が大きい、すなわち最も上位のビットに対応する容量素子C
M-1の第2電極が固定電圧に接続される。したがって、量子化精度Lが2の場合には、逐次比較AD変換器20の変換範囲は-Vref/2~Vref/2となり、参照電圧を-Vref/2とVref/2に変更した場合と同じ結果になる。したがって、本実施の形態の場合には、新たな参照電圧生成回路を必要とせずに無駄な変換を排除でき、逐次比較AD変換器20の消費電力も低減できる。逐次比較AD変換器20の量子化誤差e
20を用いると、差分アナログ信号v
19のAD変換結果である差分デジタル信号y
20は次式(3)で表される。
【0049】
【0050】
ここで、容量素子群C
1~C
M-1のうちで最も上位のビットに対応する容量素子C
M-1の第2電極が固定電圧に接続されない
図3の比較例の逐次比較AD変換器120の変換結果に比べて、本実施の形態のL=2の場合の逐次比較AD変換器20の変換結果は2倍の値になる。したがって、上式(3)において、係数2が掛かっている。このため、次の微分器21において係数1/2が乗算される。すなわち、微分器21から出力される第2デジタル信号y
21は、次式(4)で表される。
【0051】
【0052】
最終的に、ΔΣ変調器10の出力信号y1は、多ビット量子化器15から出力される第1デジタル信号y15と、微分器21から出力される第2デジタル信号y21との和である。具体的には、上式(1)および(4)を用いて次式(5)で表される。
【0053】
【0054】
上式(5)に示すように、ΔΣ変調器10の出力信号y1では、多ビット量子化器15での量子化誤差e15が消えて逐次比較AD変換器20の量子化誤差e20のみが残る。言い替えると、出力フィルタ22は、多ビット量子化器15の出力y15と逐次比較AD変換器20の出力y20とから多ビット量子化器15の量子化誤差e15を消去するように構成される。また、逐次比較AD変換器20の出力ビット数Mを多ビット量子化器15の出力ビット数Lよりも大きくすることにより、量子化誤差e15よりも量子化誤差e20を小さくできるので、ΔΣ変調器10を利用したΔΣAD変換器の変換精度を向上させることができる。
【0055】
なお、多ビット量子化器15の量子化精度Lが3である場合、
図2の逐次比較AD変換器20の容量DA変換器30において、容量素子C
M-2の第2電極も固定電圧に接続すればよい。この場合、逐次比較AD変換器20において冗長なAD変換を排除でき、AD変換結果は参照電圧を-Vref/4とVref/4に変更した場合と同じ結果になる。この場合、前述の式(3)の係数は4になり、微分器21では微分結果を1/4倍する必要がある。
【0056】
しかしながら、多ビット量子化器15に製造誤差があったり雑音の影響があったりすると、多ビット量子化器15の量子化誤差e15の電圧範囲が想定範囲を超えてしまうことになる。そこで、比較器33の量子化精度Lが3の場合であっても、逐次比較AD変換器20の容量DA変換器30を構成する容量素子群C1~CM-1のうちで最も上位のビットに対応する容量素子CM-1の第2電極のみを基準電圧に固定するのが望ましい。逐次比較AD変換器20で1ビット分の余分のA/D変換を行って冗長性を持たせることにより、多ビット量子化器15の製造誤差および雑音の影響を吸収できる。この結果、ΔΣ変調器10を利用したΔΣAD変換器の変換精度の劣化を抑制できる。
【0057】
[実施の形態1のまとめ]
以上をまとめると、実施の形態1のΔΣ変調器10は、入力アナログ信号xを出力デジタル信号y1に変換するΔΣ変調器であって、多ビット量子化器15と、ループフィルタ25と、逐次比較AD変換器20と、出力フィルタ22とを備える。
【0058】
ループフィルタ25は、入力アナログ信号xと多ビット量子化器15の出力信号y15とから多ビット量子化器15の入力信号v11を生成する。出力フィルタ22は、多ビット量子化器15の出力信号y15と逐次比較AD変換器20の出力信号y20とから多ビット量子化器15の量子化誤差e15を除去するように演算することにより、出力デジタル信号y1を生成する。逐次比較AD変換器20は、容量DA変換器30を含む。
【0059】
ここで、ΔΣ変調器は、逐次比較AD変換器20の入力信号v19の絶対値が多ビット量子化器15の量子化誤差e15の絶対値に等しくなるように構成される。具体的に実施の形態1の場合には、多ビット量子化器15の出力信号y15をDA変換することによって得られたアナログ信号v17を、多ビット量子化器15の入力信号v11から減算する第2減算器19が設けられる。
【0060】
ここで、逐次比較AD変換器20の容量DA変換器30を構成する容量素子群C1~CM-1のうちで最も上位のビットに対応する容量素子CM-1の一端は固定電圧に接続されている。
【0061】
より詳細には、第1の態様において、多ビット量子化器15は、Lビット(Lは2以上の整数)のデジタル信号を生成する。逐次比較AD変換器20は、Lより大きいビット数Mのデジタル信号を生成する。そして、逐次比較AD変換器20の容量DA変換器30を構成する容量素子群C1~CM-1のうちで最も上位のビットに対応する容量素子CM-1からL-1個の容量素子CM-1~CM-L+1の一端は固定電圧に接続され、残りの容量素子の一端は切替スイッチSによって電圧が切り替えられるように構成される。これにより、冗長なAD変換を排除でき、消費電力を抑制できる。
【0062】
第2の態様において、多ビット量子化器15は、Lビット(Lは3以上の整数)のデジタル信号を生成する。逐次比較AD変換器20は、Lより大きいビット数Mのデジタル信号を生成する。そして、逐次比較AD変換器20の容量DA変換器を構成する容量素子群C1~CM-1のうちで最も上位のビットに対応する容量素子CM-1からL-2個の容量素子CM-1~CM-L+2の一端は固定電圧に接続され、残りの容量素子の一端は切替スイッチによって電圧が切り替えられるように構成される。このように1ビット分の余分のA/D変換を行って冗長性を持たせることにより、多ビット量子化器15の製造誤差および雑音の影響を吸収できる。
【0063】
なお、逐次比較AD変換器20の容量DA変換器30に代えて抵抗ラダーDA変換器を用いてもよい。この場合も、抵抗ラダーDA変換器を構成する抵抗素子群のうちで最も上位のビットに対応する抵抗素子群に印加される電圧または電流は固定されている。
【0064】
実施の形態2.
[実施の形態2の課題]
実施の形態1では逐次比較AD変換器20の利得を1と仮定した。しかしながら、通常、逐次比較AD変換器20には利得誤差が存在するため利得は1にならない。前述した特許第4357083号(特許文献1)ではこの利得誤差が考慮されていない。逐次比較AD変換器20の利得をG(≠1)とすると、前述の式(3)、(4)および(5)は次式(6A)、(6B)および(6C)にそれぞれ書き直される。
【0065】
【0066】
上式(6C)に示すように、ΔΣ変調器10の出力信号y1に多ビット量子化器15の量子化誤差e15の項が残る。このため、ΔΣ変調器10を利用したΔΣAD変換器の変換精度が劣化してしまう。
【0067】
また、逐次比較AD変換器20には、主に開閉スイッチ31と比較器33とに起因した寄生容量C
pが存在する。
図2において、開閉スイッチ31を介して印加された入力電圧Vinに基づく電荷は、容量素子C
1,…,C
M-1の第1電極以外に寄生容量C
pにも分配される。このため、逐次比較AD変換器20の利得が減少するので、最終的なΔΣAD変換器の変換精度が劣化する。実施の形態2では、これらの問題の解決手段を提供する。
【0068】
[逐次比較AD変換器の構成]
図5は、実施の形態2のΔΣ変調器において、逐次比較AD変換器20Aの構成例を示す回路図である。
図5の逐次比較AD変換器20Aは、容量素子群C
1~C
M-1のうちで最も上位のビットに対応する、第2電極が固定電圧に接続された容量素子C
M-1に代えて容量素子C’
M-1が用いられる点で
図2の逐次比較AD変換器20と異なる。容量素子C’
M-1の容量をC’
M-1とすると、容量C’
M-1は次式(7)に示すように理想的な容量C
M-1から寄生容量C
pを差し引いた値に等しい。
【0069】
【0070】
これにより、寄生容量Cpに容量素子C’M-1の容量C’M-1を加算した容量を、理想的な容量CM-1に等しくできるので、寄生容量Cpの影響を排除して逐次比較AD変換器20Aの利得を1に近付けることができる。結果として、ΔΣAD変換器の変換精度の劣化を抑制できる。
【0071】
また、多ビット量子化器15の量子化精度Lが3であり、容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子C’M-1の第2電極とその次のビットに対応する容量素子C’M-2の第2電極とが固定電圧に接続されている場合には、容量素子C’M-1の容量C’M-1と容量素子C’M-2の容量C’M-2とを次式(8)示すように設定すればよい。
【0072】
【0073】
多ビット量子化器15の量子化精度Lが3であっても、容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子C’M-1の第2電極のみが基準電圧に固定されている場合には、容量素子C’M-1の容量C’M-1は上式(7)のように設定すればよい。
【0074】
[実施の形態2のまとめ]
以上をまとめると、第1の態様では、多ビット量子化器15はLビット(Lは2以上の整数)のデジタル信号を生成し、逐次比較AD変換器20Aの容量DA変換器30Aの容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子からL-1個の容量素子C’M-1~C’M-L+1の一端が固定電圧に接続され、残りの容量素子の一端は切替スイッチによって電圧が切り替えられるように構成されている。この場合、上記のL-1個の容量素子C’M-1~C’M-L+1の各容量値の和は、寄生容量Cpがない場合の理想的な値から寄生容量Cpを差し引いた値に等しく設定される。
【0075】
第2の態様では、多ビット量子化器15は、Lビット(Lは3以上の整数)のデジタル信号を生成し、逐次比較AD変換器20Aの容量DA変換器30Aの容量素子群のうちで最も上位のビットに対応する容量素子からL-2個の容量素子C’M-1~C’M-L+2の一端は固定電圧に接続され、残りの容量素子の一端は切り替えスイッチによって電圧が切り替えられるように構成されている。この場合、上記のL-2個の容量素子C’M-1~C’M-L+2の各容量値の和は、寄生容量Cpがない場合の理想的な値から寄生容量Cpを差し引いた値に等しく設定される。
【0076】
上記のように、容量素子の容量値を設定することにより、寄生容量Cpの影響を排除して逐次比較AD変換器20Aの利得を1に近付けることができる。結果として、ΔΣAD変換器の変換精度の劣化を抑制できる。
【0077】
実施の形態3.
実施の形態3では、多ビット量子化器のためのループフィルタの構成が実施の形態1の場合と異なる。これにより、実施の形態1のΔΣ変調器10で必要であった第2減算器19を除去することができる。以下、図面を参照して詳しく説明する。
【0078】
[ΔΣ変調器の構成例と動作]
図6は、実施の形態3によるΔΣ変調器40の構成例を示すブロック図である。
図6を参照して、ΔΣ変調器40は、2次のループフィルタ41と、多ビット量子化器47と、逐次比較AD変換器48と、出力フィルタ54とを備える。
図6のΔΣ変調器40は、2-0 MASH方式の多段ΔΣ変調器である。
図6において、多ビット量子化器47および逐次比較AD変換器48の構成は、実施の形態1,2の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0079】
ループフィルタ41は、減算器42,44と、積分器43,45と、加算器46と、1サンプル時間の遅延とダイレクトエレメントマッチングの一種であるDWA(Data Weighted Averaging)とを実行するユニット49と、多ビットDAC50とを含む。ループフィルタ41は、入力アナログ信号Uと多ビット量子化器47の出力信号V1との入力に基づいて、多ビット量子化器47の入力信号と逐次比較AD変換器48の入力信号とを生成する。
【0080】
より詳細には、多ビット量子化器47の出力信号V1は、ユニット49によって処理された後に、多ビットDAC50によってアナログ信号に変換される。減算器42は、入力アナログ信号Uから多ビットDAC50から出力されたアナログ信号を減算する。積分器43は、減算器42の減算結果を積分する。減算器44は、積分器43の積分結果Xから入力アナログ信号Uを減算する。積分器45は、減算器44の減算結果を積分する。加算器46は、積分器43の積分結果Xと積分器45との積分結果Yとを加算する。多ビット量子化器47には、加算器46の加算結果が入力される。また、逐次比較AD変換器48には、積分器45の積分結果Yが入力される。これらの入出力関係から、次式(9A)~(9C)が成立する。次式(9A)において、多ビット量子化器47の量子化誤差をE1としている。
【0081】
【0082】
上式(9A)~(9C)から、逐次比較AD変換器48の入力信号Yは、次式(10A)で表される。また、多ビット量子化器47の出力信号V1は、次式(10B)で表される。
【0083】
【0084】
上式(10A)に示すように、逐次比較AD変換器48の入力信号Yの絶対値は、多ビット量子化器47の量子化誤差E1の絶対値に等しい。また、上式(10B)から、多ビット量子化器47の出力信号V1において2次のノイズシェーピング特性が実現できている。
【0085】
逐次比較AD変換器48の量子化誤差をE2とすると、逐次比較AD変換器48の出力信号V2は、次式(11)で表される。実施の形態1で説明したように、逐次比較AD変換器48の容量DA変換器を構成する容量素子群のうち最も上位のビットに対応する容量素子CM-1の一端を固定電圧に接続したために、係数2が掛かっている。
【0086】
【0087】
出力フィルタ54は、多ビット量子化器47の出力信号V1に作用するデジタルフィルタ51と、逐次比較AD変換器48の出力信号V2に作用するデジタルフィルタ52と、加算器53とを含む。加算器53は、デジタルフィルタ51の出力とデジタルフィルタ52の出力とを加算することにより、ΔΣ変調器40の出力デジタル信号Wを生成する。
【0088】
デジタルフィルタ51の伝達関数H1およびデジタルフィルタ52に伝達関数H2は、加算器53の加算結果である出力デジタル信号Wから量子化誤差E1が除去されるように決定される。具体的には、デジタルフィルタ51の伝達関数H1は、次式(12A)に示されるように1サイクルだけ遅延させる機能を有する。デジタルフィルタ52に伝達関数H2は、次式(12B)に示されるように2次微分としての機能を有する。最終的な出力デジタル信号Wは、次式(12C)で表される。
【0089】
【0090】
式(12C)に示すように出力デジタル信号Wでは、多ビット量子化器47の量子化誤差E1が除去され、逐次比較AD変換器48の量子化誤差E2について2次のノイズシェーピング特性が実現できている。
【0091】
[実施の形態3のまとめ]
実施の形態3のΔΣ変調器40では、実施の形態1のΔΣ変調器10で必要であった第2減算器19を除去し、ループフィルタ41から逐次比較AD変換器48の入力信号が引き出される。この構成により、実施の形態3のΔΣ変調器40によれば、実施の形態1,2の効果に加えて、回路面積と消費電力の低減が実現できる。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
10,40 ΔΣ変調器、11 入力積分回路列、12 入力積分回路、13 第1減算器、14,43,45 積分器、15,47 多ビット量子化器、16,46,53 加算器、17,50 多ビットDA変換器、18 遅延素子、19 第2減算器、20,20A,48,120 逐次比較AD変換器、21,52 微分器、22,54 出力フィルタ、25,41 ループフィルタ,30,30A,130 容量DA変換器、31 開閉スイッチ、32 配線、33 比較器、34 逐次近似レジスタ、42,44 減算器、C0~CM-1 容量素子、Cp 寄生容量、GND グランド、L 多ビット量子化器の出力ビット数(量子化精度)、M 容量DA変換器の出力ビット数、N 入力積分回路列の段数、S0~SM-1 切替スイッチ。