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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172725
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20241205BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20241205BHJP
   A62C 33/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
A62C33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090642
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB02
2E189EB05
2E189LB03
(57)【要約】
【課題】薄型化された収納スペースに、隣接する消火栓装置との放水範囲の重複が可能な所定長の消火用ホースを折れ曲がることなく巻き込んで引出自在に収納することを可能とする。
【解決手段】消火栓装置10は、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cで構成される。第1筐体11aには、放水用ノズル66を含む消火栓機器が消火栓扉14の開放により操作可能に設けられる。第2筐体11bには、消火器19が消火器扉16の開放により取出し可能に収納され、電装扉18に赤色表示灯22等の電装機器が配置される。第3筐体11bには、傾斜開口面80を有する長円の円筒体のホース巻付け部78が配置される。ホース巻付け部78には、第1筐体11aから引き込まれた消火用ホース62が複数列で往復重ね巻きされて引出自在に収納され、消火用ホース62の先端は、第1筐体11a内に保持された放水用ノズル66に接続される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、
消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が前記監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、
前記装置本体と前記監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記装置本体として、
前記所定の機器として、前記消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、前記所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が配置された第1筐体と、
前記第1筐体と共に前記トンネル壁面に沿うように前記第1筐体の所定の側面に配置され、前記所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、前記消火器を取り出し可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び前記所定の電装機器が設けられた電装扉が配置された第2筐体と、
を備え、
更に、前記装置本体と前記監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に前記第1筐体と前記第2筐体を設置することで前記第1筐体と前記第2筐体を前記監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に前記消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納された第3筐体を架台上に備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記第3筐体は、
筐体内の奥行側に配置され、前記消火用ホースが外巻きされるホース巻付け部と、
前記ホース巻付け部の手前上部に形成されたホース引出空間と、
を備え、
前記消火用ホースが前記ホース巻付け部に複数列の往復重ね巻きで収納されることを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
請求項3記載の消火栓装置において、
前記ホース巻付け部は、前記筐体内部の背面に固定されて前方に延在した横に長い長円の円筒体であって、前記円筒体の開口面は、上面前方から斜め下向きの奥行方向に向けて切欠きされた傾斜開口面であることを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記ホース巻付け部は、前記長円の両側の直径が、少なくとも前記消火用ホースの最小湾曲径であることを特徴とする消火栓装置。
【請求項6】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記円筒体の上面張出部分の開口端に、外巻きされた前記消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項7】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記円筒体の切欠きされた下面張出部分に、前記消火用ホースが外巻きされる際に位置して前記消火用ホースの下側の重ね巻き位置を位置決めし、前記消火用ホースの外巻き終了後に前記下面張出部分から前記円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2のホース抑え部が配置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項8】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記ホース巻付け部は、前記円筒体に替えて、前記円筒体の上面から両側面の前方への張出部分に対応した複数個所の所定位置に、前記張出部分の張出幅に対応した長さを有する円筒形又は円柱形のホース支持部が前方へ延在したことを特徴とする消火栓装置。
【請求項9】
請求項8記載の消火栓装置において、
前記ホース支持部は、少なくとも、前記円筒体の両側の半円部分と、上下中心線との交点の上側位置及び左右中心線との交点位置、並びに前記円筒体における上面の直線部分の所定位置から延在したことを特徴とする消火栓装置。
【請求項10】
請求項8記載の消火栓装置において、
前記ホース支持部の先端に、外巻きされた前記消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項11】
請求項8記載の消火栓装置において、
前記円筒体の切欠きされた下面張出部分に対応した位置に、前記消火用ホースが外巻きされる際に位置して前記消火用ホースの下側の重ね巻き位置を位置決めし、前記消火用ホースの外巻き終了後に前記下面張出部分から前記円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2のホース抑え部が配置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項12】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記ホース巻付け部は、前記円筒体の上面が斜め上向きの傾斜面であることを特徴とする消火栓装置。
【請求項13】
請求項8記載の消火栓装置において、
前記ホース支持部は、斜め上向きに傾斜配置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項14】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記第1筐体の下面及び前記第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、
前記第3筐体内に収納される消火用ホースは、巻き始めとなる一端側が前記第1筐体の内部に設けられた消火栓弁を含むバルブ類の配管の出口側に接続されて前記第1筐体の下面に形成されたホース引出口及び前記第3筐体の上面に形成されたホース引出口を経由して前記第3筐体の内部に引き込まれ、巻き終わりとなる他端側が前記第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び前記第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して前記第1筐体の内部に引き込まれて前記第1筐体の内部に着脱自在に保持された放水用ノズルに接続されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項15】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記第3筐体は、前記消火用ホースを外部から内部に収納するための開口に、開閉自在に設けられたホース収納扉が配置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項16】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記監視員通路の路面から前記第1筐体及び前記第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、
前記監視員通路の路面から前記第1筐体及び前記第2筐体の最下部までの高さは、前記法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置することを特徴とする消火栓装置。
【請求項17】
請求項2記載の消火栓装置において、
法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する前記第1筐体に設けられた所定の操作対象は、前記消火栓扉の開閉操作部、前記放水用ノズル、前記消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部を含み、
前記法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する前記第2筐体に設けられた所定の操作対象は、前記消火器扉の開閉操作部、前記消火器の操作部及び前記電装機器の操作部を含むことを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に露出して設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。例えば、消火栓装置は、前傾式の消火栓扉(前傾扉)を備えた筐体内部の消火栓収納部に、先端に放水ノズルを装着した消火用ホースや消火栓弁を含むバルブ類等が収納され、また、消火器扉を備えた筐体内部の消火器収納部に、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的にトンネル長手方向、例えば、50メートル間隔で、監視員通路が設けられたトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、シールド工法等により造られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや労力の関係から困難であることから、消火栓装置を監視員通路に露出した状態で設置することが要求されている。
【0004】
このため、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する構造として、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置の装置本体を取付固定する壁掛け構造が提案されており、当該壁掛け構造の架台は、壁面に固定される主支持部と消火栓装置の装置本体の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、壁掛け構造による消火栓装置の設置は、トンネル壁面への消火栓装置の取り付けに工数と時間が掛かる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置の装置本体を取付固定する、いわゆる据置き構造を採用することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-279294号公報
【特許文献2】特開2019-000196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、据置き型の消火栓装置にあっては、監視員通路の路面上の所定の高さに消火栓装置の装置本体を設置するための架台は一般的にアングル材を箱形に組み合わせた型枠構造である。その架台のアングル材を剥き出しにしておくことは従来の壁面埋込型と比べ見栄えに問題があり、型枠構造の周囲に板部材等によるカバーを配置して剥き出しとなったアングル材を隠すことも考えられるが、見栄えの悪さを解消するためだけに追加構造を設ける意義は薄い。
【0008】
また、架台の内部空間を監視員通路から立ち上げた給水配管を消火栓装置の装置本体に引き込むための配管スペースに利用しているが、それでも架台の内部空間の大部分は空き空間として残っており、架台が設置された空間に存在する空き空間が十分に活用されていない問題もある。
【0009】
そこで、消火栓装置と監視通路との間のスペースをホース収納部に利用することが考えられるが、監視員通路の通路幅の制約を低減するために、消火栓装置は可能な限り薄型化する必要がある。ここで、消火栓装置に収納又は配置される奥行寸法が最も大きくなる機器は消火器であることから、消火器を収納可能な奥行幅として、例えば、250mm程度に薄型化が可能となる。
【0010】
しかしながら、消火栓装置の薄型化に伴い、消火栓装置と監視員通路との間となるホース収納スペースも同様に薄型化されるが、50m間隔で配置されている隣接する消火栓装置との放水範囲の重複を可能とする、少なくとも30mの消火用ホースを折れ曲がることなく巻き回して引出自在に収納する必要があり、このためのホース収納構造をどのようにするかが課題となる。
【0011】
本発明は、薄型化された収納スペースに、隣接する消火栓装置との放水範囲の重複が可能な所定長の消火用ホースを折れ曲がることなく巻き込んで引出自在に収納することを可能とする消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火栓装置)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、
消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、
装置本体と監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納されたことを特徴とする。
【0013】
(消火栓装置の構造)
装置本体として、
所定の機器として、消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が配置された第1筐体と、
第1筐体と共にトンネル壁面に沿うように第1筐体の所定の側面に配置され、所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器を取り出し可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び所定の電装機器が設けられた電装扉が配置された第2筐体と、
を備え、
更に、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に第1筐体と第2筐体を設置することで第1筐体と第2筐体を監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納された第3筐体を架台上に備える。
【0014】
(ホース外巻き収納構造)
第3筐体は、
筐体内の奥行側に配置され、消火用ホースが外巻きされるホース巻付け部と、
ホース巻付け部の手前上部に形成されたホース引出空間と、
を備え、
消火用ホースがホース巻付け部に複数列の往復重ね巻きで収納される。
【0015】
(長円形円筒体のホース巻付け部)
ホース巻付け部の第1実施形態は、筐体内部の背面に固定されて前方に延在した横に長い長円の円筒体であって、円筒体の開口面は、上面前方から斜め下向きの奥行方向に向けて切欠きされた傾斜開口面である。
【0016】
(長円両側の直径)
ホース巻付け部は、長円の両側の直径が、少なくとも消火用ホースの最小湾曲径である。
【0017】
(円筒体の上側部分の第1ホース抑え部)
円筒体の上面張出部分の開口端に、外巻きされた消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置される。
【0018】
(円筒体の下側部分の第2ホース抑え部)
円筒体の切欠きされた下面張出部分に、消火用ホースが外巻きされる際に位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置を規制し、消火用ホースの外巻き終了後に下面張出部分から円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2のホース抑え部が配置される。
【0019】
(円筒体に替えて支持部材を延在させたホース巻付け部)
ホース巻付け部の第2実施形態は、円筒体に替えて、円筒体の上面から両側面の前方への張出部分に対応した複数個所の所定位置に、張出部分の張出幅に対応した長さを有する円筒形又は円柱形のホース支持部が前方へ延在する。
【0020】
(ホース支持部の配置位置)
ホース支持部は、少なくとも、円筒体の両側の半円部分と、上下中心線との交点の上側位置及び左右中心線との交点位置、並びに円筒体における上面の直線部分の所定位置から延在する。
【0021】
(ホース重ね巻きの上側部分の第1ホース抑え部)
ホース支持部の先端に、外巻きされた消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置される。
【0022】
(ホース重ね巻きの下側部分の第2ホース抑え部)
円筒体の切欠きされた下面張出部分に対応した位置に、消火用ホースが外巻きされる際に位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置を位置決めし、消火用ホースの外巻き終了後に下面張出部分から円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2のホース抑え部が配置される。
【0023】
(円筒体の上向き傾斜面)
ホース巻付け部は、円筒体の上面が斜め上向きの傾斜面である。
【0024】
(ホース支持の上向き傾斜配置)
ホース支持部は、斜め上向きに傾斜配置される。
【0025】
(消火用ホースの巻入れ巻出し構造)
第1筐体の下面及び第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、
第3筐体内に収納される消火用ホースは、巻き始めとなる一端側が第1筐体の内部に設けられた消火栓弁を含むバルブ類の配管の出口側に接続されて第1筐体の下面に形成されたホース引出口及び第3筐体の上面に形成されたホース引出口を経由して第3筐体の内部に引き込まれ、巻き終わりとなる他端側が第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して第1筐体の内部に引き込まれて第1筐体の内部に着脱自在に保持された放水用ノズルに接続される。
【0026】
(第3筐体のホース収納扉)
第3筐体は、消火用ホースを外部から内部に収納するための開口に、開閉自在に設けられたホース収納扉が配置される。
【0027】
(適正操作範囲に対応した第1筐体及び第2筐体の設置高さ)
監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、
監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最下部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置する。
【0028】
(適正操作範囲に位置する操作対象)
法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する第1筐体に設けられた所定の操作対象は、消火栓扉の開閉操作部、放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部を含み、
法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲に位置する第2筐体に設けられた所定の操作対象は、消火器扉の開閉操作部、消火器の操作部及び電装機器の操作部を含む。
【発明の効果】
【0029】
(消火栓装置の効果)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納されたため、装置本体と監視員通路の路面との間のスペースを消火用ホースの収納に有効活用することができ、また、装置本体側でのホース収納スペースが不要となり、これに伴い装置本体の縦幅(高さ)が低減され、装置全体として小型化が可能となる。
【0030】
(消火栓装置の構造による効果)
また、装置本体として、所定の機器として、消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が配置された第1筐体と、第1筐体と共にトンネル壁面に沿うように第1筐体の所定の側面に配置され、所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器を取り出し可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び所定の電装機器が設けられた電装扉が配置された第2筐体と、を備え、更に、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に第1筐体と第2筐体を設置することで第1筐体と第2筐体を監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納された第3筐体を架台上に備えたため、第3筐体が第1筐体と第2筐体を監視員通路上の所定高さに取付け固定する機能と消火用ホースを収納するホース収納部の機能とを果たし、第1筐体及び第2筐体と監視通路の間のスペースを消火用ホースの収納に有効活用することができ、また、消火用ホースが第3筐体に収納されたことで、消火栓収納部となる第1筐体での消火用ホースの収納スペースが不要となり、これに伴い第1筐体及び第2筐体の縦幅(高さ)が低減され、装置全体として小型化が可能となる。
【0031】
(ホース外巻き収納構造の効果)
また、第3筐体は、筐体内の奥行側に配置され、消火用ホースが外巻きされるホース巻付け部と、ホース巻付け部の手前上部に形成されたホース引出空間と、を備え、消火用ホースがホース巻付け部に複数列の往復重ね巻きで収納されるため、第3筐体内に、隣接する消火栓装置との放水範囲の重複を可能とする所定長、例えば、30mの消火用ホースを、引出自在に収納することが可能となる。
【0032】
(長円形円筒体のホース巻付け部による効果)
また、ホース巻付け部の第1実施形態は、筐体内部の背面に固定されて前方に延在した横に長い長円の円筒体であって、円筒体の開口面は、上面前方から斜め下向きの奥行方向に向けて切欠きされた傾斜開口面であるため、円筒体の上面部分及び両側の半円部分に沿って簡単且つ容易に円筒体に消火用ホースを外巻きする作業が可能となる。また、円筒体の下側部分は傾斜開口面の形成により下側部分が存在しておらず、消火用ホースの下側部分は円筒体上面部分から吊下げられたフリーな状態にあり、道路利用者が消火用ホースを上側に位置する第1筐体に向けて前方の斜め上方に引き出す場合に、円筒体の下側部分に消火用ホースが当たって引き出せなることがなく、外巻きされている消火用ホースの滑らかな巻出しが可能となる。
【0033】
(長円両側の直径の効果)
また、ホース巻付け部は、長円の両側の直径が、少なくとも消火用ホースの最小湾曲径であるため、消火用ホースとして保形ホースが用いられた場合に、消火用ホースは折れ曲がることなく滑らかにホース巻付け部に外巻きされることが可能となる。
【0034】
(円筒体の上側部分の第1ホース抑え部による効果)
また、円筒体の上面張出部分の開口端に、外巻きされた消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置されたため、消火用ホースが円筒体の上面部分に沿って複数列で往復して重ね巻きされる場合、円筒体の開口面側からの消火用ホースの脱落が防止され、消火用ホースが確実に外巻きで収納されることが可能となる。一方、第1ホース抑え部は、消火用ホースが引き出される際に消火用ホースが当たると外側に変形可能な可撓性の部材、例えば、ゴム等で作られており、円筒体からの消火用ホースの巻出しを妨げることがない。
【0035】
(円筒体の下側部分の第2ホース抑え部の効果)
また、円筒体の切欠きされた下面張出部分に、消火用ホースが外巻きされる際に位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置を規制し、消火用ホースの外巻き終了後に下面張出部分から円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2のホース抑え部が配置されたため、消火用ホースが円筒体に複数列で往復して重ね巻きされる場合、切欠きされている円筒体の下面部分に第2ホース抑え部が位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置が規制されることで、円筒面に沿った消火用ホースの外巻きが可能となる。また、円筒体に対する消火用ホースの外巻きが終了した場合、円筒体の下面部分に位置する第2ホース抑え部は、背面側に回動して退避し、消火用ホースが引き出される場合に妨げとなることが防止可能となる。
【0036】
(円筒体に替えて支持部を延在させたホース巻付け部の効果)
また、ホース巻付け部の第2実施形態は、円筒体に替えて、円筒体の上面から両側面の前方への張出部分に対応した複数個所の所定位置に、張出部分の張出幅に対応した長さを有する円筒形又は円柱形のホース支持部が前方へ延在するため、ホース巻付け部の構造が簡単となり、コスト低減が可能となる。
【0037】
(ホース支持部の配置位置の効果)
また、ホース支持部は、少なくとも、円筒体の両側の半円部分と、上下中心線との交点の上側位置及び左右中心線との交点位置、並びに円筒体における上面の直線部分の所定位置から延在するため、ホース支持部となる、例えば、ホース支持ポールが、少なくとも5本配置されるだけで、円筒体と同等のホース巻付け部としての機能が実現可能となる。
【0038】
(ホース重ね巻きの上側部分の第1ホース抑え部の効果)
また、ホース支持部の先端に、外巻きされた消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置されたため、円筒体の第1ホース抑え部と同様に、ホース支持部に沿って消火用ホースが外巻きされる場合のホース支持部からの脱落が防止され、また、消火用ホースが引き出される際に消火用ホースが当たると変形することで、消火用ホースの巻出しを妨げることがない。
【0039】
(ホース重ね巻きの下側部分の第2ホース抑え部の効果)
また、円筒体の切欠きされた下面張出部分に対応した位置に、消火用ホースが外巻きされる際に位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置を位置決めし、消火用ホースの外巻き終了後に下面張出部分から円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2のホース抑え部が配置されたため、円筒体の場合と同様に、円筒体の下面に相当する部分に第2ホース抑え部が位置することで、消火用ホースのホース支持部に沿った確実な外巻きが可能となり、また、ホース支持部に沿った消火用ホースの外巻きが終了した場合、背面側に回動して消火用ホースが引き出される場合に妨げとなることが防止可能となる。
【0040】
(円筒体の上向き傾斜面の効果)
また、ホース巻付け部は、円筒体の上面が斜め上向きの傾斜面であってもよく、消火用ホースが外巻きされる場合に、傾斜面となった上面部分に外巻きされる消火用ホースの脱落が抑止され、より確実な消火用ホースの外巻きが可能となる。
【0041】
(ホース支持の上向き傾斜配置の効果)
また、ホース支持部は、斜め上向きに傾斜配置されてもよく、円筒体の場合と同様に、消火用ホースが外巻きされる場合に、傾斜配置されたホース支持部に沿って外巻きされる消火用ホースの脱落が抑止され、より確実な消火用ホースの外巻きが可能となる。
【0042】
(消火用ホースの巻入れ巻出し構造の効果)
また、第1筐体の下面及び第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、第3筐体内に収納される消火用ホースは、巻き始めとなる一端側が第1筐体の内部に設けられた消火栓弁を含むバルブ類の配管の出口側に接続されて第1筐体の下面に形成されたホース引出口及び第3筐体の上面に形成されたホース引出口を経由して第3筐体の内部に引き込まれ、巻き終わりとなる他端側が第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して第1筐体の内部に引き込まれて第1筐体の内部に着脱自在に保持された放水用ノズルに接続されるため、上側に位置する第1筐体に配置されている消火栓機器と、下側に位置する第3筐体に収納されている消火用ホースとの間が最短距離で接続され、消火用ホースが第1筐体を経由して外部へ滑らかに引き出されることが可能となる。
【0043】
(第3筐体のホース収納扉の効果)
第3筐体は、消火用ホースを外部から内部に収納するための開口に、開閉自在に設けられたホース収納扉が配置されたため、消火活動を終了した後の第3筐体へのホース巻き戻し作業を、ホース収納扉を開いて簡単且つ容易に行うことが可能となる。
【0044】
(適正操作範囲に対応した装置本体の縦幅の効果)
また、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最下部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置するため、第1筐体に設けられた所定の操作対象、例えば、消火栓扉の開閉操作部、放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部、並びに第2筐体に設けられた所定の操作対象、例えば、消火器扉の開閉操作部、消火器の操作部及び電装機器の操作部は、どの位置に設けられたとしても必ず適正操作範囲に位置し、消火栓装置の設計の自由度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】監視員通路の路面上に設置された消火栓装置の実施形態を、正面から示した説明図である。
図2図1の消火栓装置の筐体構造を組立分解状態で示した説明図である。
図3図1の消火栓装置を左側面から示した説明図である。
図4】第3筐体に消火用ホースを収納する第1実施形態のホース外巻き収納構造を有する消火栓装置の内部構造を、第1筐体及び第3筐体の筐体前面を開放して正面から示した説明図である。
図5図4の消火栓装置の内部構造を右側面から見た3箇所の断面で示した説明図である。
図6】第3筐体を取出して示した説明図である。
図7】第3筐体に配置されるホース巻付け部を取出して示した説明図である。
図8】第3筐体のホース巻付け部に対するホース外巻きを右側面から見た断面で示した説明図である。
図9図1の消火栓装置を、消火栓扉を開いた状態で正面から示した説明図である。
図10】消火栓扉開閉機構を消火栓装置の右側面から見た断面で示した説明図である。
図11図1の消火栓装置を、第3筐体のホース収納扉を開いた状態で正面から示した説明図である。
図12】第3筐体に消火用ホースを収納する第2実施形態のホース外巻き収納構造を有する消火栓装置の内部構造を、第1筐体及び第3筐体の筐体前面を開放して正面から示した説明図である。
図13図12の消火栓装置の内部構造を右側面から見た3箇所の断面で示した説明図である。
図14図12の第3筐体のホース支持ポールに対するホース外巻きを右側面から見た断面で示した説明図である。
図15】第1及び第2実施形態のホース巻付け部に対し下側をフリーとした消火用ホースの外巻きを、第3筐体の右側面から見た断面で示した説明図である。
図16】第1及び第2実施形態のホース巻付け部の上側を傾斜させた消火用ホースの外巻きを、第3筐体の右側面から見た断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明に係る消火栓装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0047】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出して設置される消火栓装置に関するものである。
【0048】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火用ホース等の消火栓機器、赤色表示灯や発信機等の電装機器、端子箱及び消火器等が設置又は収納されたものであり、消火栓装置が設置された消火栓設備を含む概念である。
【0049】
また、実施形態の消火栓装置は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上に、当該トンネル壁面に近接又は当接するように設置されたものであり、監視員通路に消火栓装置を露出した状態で設置する「壁掛け構造」や「据置き構造」により設置された消火栓装置を含むものである。
【0050】
実施形態の消火栓装置は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路上に露出した状態で当該トンネル壁面に近接又は当接して設置される消火栓装置であって、消火用ホースを除く所定の機器が設けられた装置本体が監視員通路の路面上方の所定の高さに設置され、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納されたことを基本構成とするものである。このため、消火栓装置の装置本体と監視員通路の路面との間のスペースをホース収納に有効活用することができ、また、装置本体側での消火用ホースの収納スペースが不要となり、これに伴い装置本体の縦幅(高さ)が低減され、装置全体として小型化が可能となる。
【0051】
また、実施形態の装置本体は、第1筐体、第2筐体及び第3筐体で構成されるものである。第1筐体は、所定の機器として、消火用ホースを除く所定の消火栓機器が設けられると共に、所定の消火栓機器を操作可能とする開口に開閉自在に設けられた消火栓扉が配置される。第2筐体は、第1筐体と共にトンネル壁面に沿うように第1筐体の所定の側面に配置され、所定の機器として、少なくとも消火器及び所定の電装機器が設けられると共に、消火器を取り出し可能とする開口に開閉自在に設けられた消火器扉及び所定の電装機器が設けられた電装扉が配置される。第3筐体は、装置本体と監視員通路の路面との間の空間に設置され、自身の上面側に第1筐体と第2筐体を設置することで第1筐体と第2筐体を監視員通路の路面上方の所定の高さに設置し、内部に消火用ホースが外巻きされて引出自在に収納される。
【0052】
このため、第3筐体が第1筐体と第2筐体を監視員通路上の所定高さに取付け固定する機能と消火用ホースを収納するホース収納部の機能を果たし、第1筐体及び第2筐体と監視員通路との間のスペースをホース収納に有効活用することが可能となる。
【0053】
また、消火用ホースが第3筐体に収納されたことで、消火栓収納部となる第1筐体での消火用ホースの収納スペースが不要となり、これに伴い第1筐体及び第2筐体の縦幅(高さ)が低減され、装置全体としての小型化が可能となる。
【0054】
第3筐体は、筐体内の奥行側に配置され、消火用ホースが外巻きされるホース巻付け部と、ホース巻付け部の手前上部形成されたホース引出空間とを備え、消火用ホースがホース巻付け部に複数列で往復重ね巻きして収納される。ここで、「消火用ホースが複数列で往復重ね巻き」とは、「消火用ホースが奥行方向に複数列に並べて縦回りに外巻きされると共に、高さ方向に複数回重ねて縦回りに往復して外巻きされる」ことを意味する。
【0055】
このような消火用ホースの外巻き収納構造により、隣接する消火栓装置との放水範囲の重複を可能とする所定長、例えば、30mの消火用ホースを、引出自在に収納することが可能となる。
【0056】
また、ホース外巻き収納構造は、第1実施形態として、ホース巻付け部が筐体内部の背面に固定されて前方に延在した横に長い長円の円筒体であって、円筒体の開口面は、上面前方から斜め下向きの奥行方向に向けて切欠きされた傾斜開口面となっている。このため、消火用ホースを円筒体の上面部分及び両側の半円部分に沿って、簡単且つ容易に外巻きすることが可能となる。
【0057】
また、前方に位置する円筒体の開口面が傾斜開口面となっている理由は、円筒体に外巻きされた消火用ホースが引き出される際に、円筒体の下面部分に消火用ホースが当たって消火用ホースの巻出しが妨げられることを防止するためである。即ち、円筒体の下面部分は傾斜開口面の形成により下側部分が存在しておらず、消火用ホースの下側部分は円筒体の上面部分から吊下げられたフリーな状態にあり、消火用ホースが上側に位置する第1筐体に向けて前方の斜め上方に引き出される場合に、円筒体の下面部分に消火用ホースが当たって消火用ホースの巻出しが妨げられることがなく、外巻きされている消火用ホースを滑らかに引き出すことが可能となる。
【0058】
また、ホース巻付け部は、長円の両側の直径が、少なくとも消火用ホースの最小湾曲径となっている。このため、消火用ホースとして保形ホースが用いられた場合に、消火用ホースは折れ曲がることなく滑らかにホース巻付け部に外巻きされることが可能となる。ここで、「最小湾曲径」とは、消火用ホースに保形ホースが用いられた場合に、折れ曲がることなく湾曲可能な最小直径を意味する。
【0059】
また、消火用ホースが円筒体に複数列で往復して重ね巻きされる場合、円筒体の上面開口側に支えがないと、重ね巻きされている消火用ホースが円筒体から外れて脱落し、良好な外巻きが困難となる。
【0060】
そこで、円筒体の上面張出部分の開口端に、外巻きされた消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置される。このため、消火用ホースが複数列で往復して重ね巻きされる場合に、円筒体の開口面側からの消火用ホースの脱落が防止され、消火用ホースが確実に外巻きされて収納されることが可能となる。一方、第1ホース抑え部は、消火用ホースが引き出される際には消火用ホースの巻出しの妨げになることから、消火用ホースの巻出しに伴い、消火用ホースが当たると外側に変形可能な可撓性の部材、例えば、ゴム等で作られており、円筒体からの消火用ホースの巻出しを妨げることがない。
【0061】
また、消火用ホースが円筒体に複数列で往復して重ね巻きされる場合、円筒体の下面は傾斜開口面の形成により下側部分が存在せず、消火用ホースの下側の外巻きする位置が定まらない。
【0062】
そこで、円筒体の張出部分の下側に、消火用ホースが外巻きされる際に位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置を規制する第2ホース抑え部が配置される。このため、円筒体の張出部分の下側に第2ホース抑え部が位置し、消火用ホースの下側の重ね巻き位置が規制されることで、円筒体の傾斜開口面の形成により存在しない円筒体の下側部分についても円筒面に沿った消火用ホースの外巻きが可能となる。
【0063】
一方、円筒体に対する消火用ホースの外巻きが終了した後、第2ホース抑え部は不必要となり、また、消火用ホースの巻出しの妨げとなる。そこで、第2ホース抑え部は背面側に回動する構造となっており、消火用ホースの外巻きが終了した場合、円筒体の下面部分に位置する第2ホース抑え部が背面側に回動して退避することで、消火用ホースが引き出される場合に妨げとなることを防止可能とする。
【0064】
また、ホース外巻き収納構造の第2実施形態として、前述した第1実施形態のホース巻付け部を構成する円筒体に替えて、円筒体の上面から両側面の前方への張出部分に対応した複数個所の所定位置に、張出部分の張出幅に対応した長さを有する円筒形又は円柱形のホース支持部、例えば、ホース支持ポールが前方へ延在した構造となる。このため、円筒体に比べ複数本のホース支持部がホース外巻き経路に沿って背面から前方に延在する簡単な構造で済み、コスト低減が可能となる。
【0065】
また、ホース支持部は、少なくとも、円筒体の両側の半円部分と、上下中心線との交点の上側位置及び左右中心線との交点位置、並びに円筒体における上面の直線部分の所定位置から延在する。このため、ホース支持部となる、例えば、ホース支持ポールが、少なくとも5本配置されるだけで、円筒体と同等のホース巻付け部としての機能が実現可能となる。
【0066】
また、第2実施形態のホース外巻き収納構造にあっても、円筒体を設けた場合と同様に、ホース支持部の先端に、外巻きされた消火用ホースの側面を支えると共に、当該消火用ホースが引き出される際に外側に変形する第1ホース抑え部が配置される。このため、消火用ホースが外巻きされる場合ホース支持部からの脱落を防止し、また、消火用ホースが引き出される際に消火用ホースが当たると変形することで、消火用ホースの巻出しを妨げることがない。
【0067】
また、第2実施形態のホース外巻き収納構造にあっても、円筒体を設けた場合と同様に、円筒体の傾斜開口面の形成により存在しない円筒体の下面張出部分に対応した位置に、消火用ホースが外巻きされる際に位置して消火用ホースの下側の重ね巻き位置を規制し、消火用ホースの外巻き終了後に下面張出部分から円筒体の奥行側となる背面側に回動して離脱する第2ホース抑え部が配置される。このため、円筒体の下面に相当する部分に第2ホース抑え部が位置することで、消火用ホースの確実な外巻きを可能し、また、ホース支持部に沿った消火用ホースの外巻きが終了した場合、背面側に回動して消火用ホースが引き出される場合に妨げとなることが防止可能となる。
【0068】
また、第1実施形態のホース巻付け収納構造(ホース巻付け部)は、円筒体の上面が斜め上向きの傾斜面であってもよく、消火用ホースが外巻きされる場合に、傾斜面となった上面部分に外巻きされる消火用ホースの脱落が抑止され、より確実な消火用ホースの外巻きが可能となる。
【0069】
また、第2実施形態のホース巻付け収納構造(ホース支持部)も、円筒体の上面張出部分に対応した位置に配置されたホース支持部が、斜め上向きに傾斜配置されてもよく、円筒体の場合と同様に、消火用ホースが外巻きされる場合に、傾斜配置されたホース支持部に外巻きされる消火用ホースの脱落が抑止され、より確実な消火用ホースの外巻きが可能となる。
【0070】
また、第1筐体の下面及び第3筐体の上面の各々に、相互に対応したホース引出口が形成され、第3筐体内に収納される消火用ホースは、巻き始めとなる一端側が第1筐体の内部に設けられた消火栓弁を含むバルブ類の配管の出口側に接続されて第1筐体の下面に形成されたホース引出口及び第3筐体の上面に形成されたホース引出口を経由して第3筐体の内部に引き込まれ、巻き終わりとなる他端側が第3筐体の上面に形成されたホース引出口及び第1筐体の下面に形成されたホース引出口を経由して第1筐体の内部に引き込まれて第1筐体の内部に着脱自在に保持された放水用ノズルに接続される。
【0071】
このため、上側に位置する第1筐体に配置されている消火栓機器と、下側に位置する第3筐体に収納されている消火用ホースとの間が最短距離で接続され、消火用ホースが第1筐体を経由して外部へ滑らかに引き出されることが可能となる。
【0072】
また、第3筐体は、消火用ホースを外部から内部に収納するための開口に、開閉自在に設けられたホース収納扉が配置される。このため、消火活動を終了した後の第3筐体へのホース巻き戻し作業を、ホース収納扉を開いて簡単且つ容易に行うことが可能となる。
【0073】
また、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最上部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の上限高さ以下に位置し、監視員通路の路面から第1筐体及び第2筐体の最下部までの高さは、法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さ以上に位置する。従って、本出願時における法的に規定された道路利用者の立ち面からの適正操作範囲の下限高さは800mmであり、上限高さは1500mmであるため、第1筐体及び第2筐体は監視員通路の路面から高さ800mm~1500mmの適正操作範囲内に位置することになる。
【0074】
また、第1筐体に設けられた適正操作範囲内に配置される所定の操作対象は、消火栓扉の開閉操作部、放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作部、外部からホースが接続される給水栓及び消火ポンプ起動操作部を含む。
【0075】
また、第2筐体に設けられた適正操作範囲内に配置される所定の操作対象は、消火器扉の開閉操作部、消火器の操作部及び電装機器の操作部を含む。
【0076】
尚、「設ける」、「配置」、「設置」、「収納」の用語は、それぞれの用語が表現として代替し得る他の用語を包括し得るものであり、その他にも「取付」、「取付固定」、「装着」等、用語の意味合いから代替し得る用語の意味合いを含み得る概念である。
【0077】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、消火栓装置が監視員通路の路面上に露出して配置される「据置き構造」とし、「消火栓装置の装置本体としての第1筐体及び第2筐体、消火栓装置の架台及びホース収納部として機能する第3筐体を備えるもの」であり、第3筐体の外巻きホース収納構造を「ホース支持部(円筒体)を設けた第1実施形態」と「円筒体に替えて複数本のホース支持部(ホース支持ポール)が背面から起立した第2実施形態」とに分けて説明する。
【0078】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置の実施形態について説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.消火栓装置の構造
b.消火栓装置の設置
c.消火栓装置の薄型化
d.消火栓装置の高さ低減
e.消火栓装置内部構造
e1.第1筐体の内部構造
e2.第2筐体の内部構造
f.第3筐体のホース外巻き収納構造の第1実施形態
f1.ホース巻付け部の円筒体構造
f2.第1ホース抑え部
f3.第2ホース抑え部
f4.消火用ホースの外巻き作業
f5.消火栓扉の開閉機構
f6.消火用ホースの引出し
f7.消火用ホースの巻戻し作業
g.第3筐体のホース外巻き収納構造の第2実施形態
g1.ホース支持ポールを用いたホース巻付け構造
g2.消火用ホースの外巻き作業
g3.消火用ホースの引出し
h.外巻きホース下側のフリー巻き
i.外巻きホース上側の傾斜配置
j.本発明の変形例。
【0079】
[a.消火栓装置の構造]
まず、消火栓装置の構造について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置された消火栓装置を正面(前面)から示した図1、及び図1の消火栓装置の筐体構造を組立分解状態で示した図2を参照する。
【0080】
ここで、図1及び図2の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置10の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は本発明の実施形態となる図3図16においても同様となる。
【0081】
図1に示すように、消火栓装置10は、監視員通路34の路面上に設置され、消火栓装置10の筐体は、図2に示すように、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cに分割されている。
【0082】
ここで、第1筐体11aの内部は、消火用ホースを除く消火栓機器が収納されるバルブ類収納部46となる。第2筐体11bの内部は、隔壁45により左右に仕切られており、右側が電装機器収納部45aとなり、左側が消火器収納部45bとなる。第3筐体11cの内部は、消火用ホースが収納されるホース収納部48となり、架台32の上に設置される。
【0083】
また、第1筐体11aの底面左側(下面左側)にはホース引出開口42aが形成され、第1筐体11aの下側に配置される第3筐体11cの上面には、ホース引出開口42aに対応してホース引出開口42bが形成されている。
【0084】
また、第1筐体11aの底面右側には配管通し穴43aが形成され、第1筐体11aの下側に配置される第3筐体11cの上面と底面には、配管通し穴43aに対応して配管通し穴43b,43cが形成されている。尚、第3筐体11cの配管通し穴43cを通る配管の接続作業が可能となるように、第3筐体11cの右側面に作業開口が形成された扉構造か、又は右側面を着脱自在な板部材で閉鎖した構造となっている。
【0085】
また、第1筐体11aの左側面上側には通線開口44aが形成され、第1筐体11aの左側に配置される第2筐体11bの右側面上側には、通線開口44aに対応して通線口44bが形成されている。通線口44a,44bは、第1筐体11aに外部から引き込まれた配線ケーブルを第2筐体11b側に通して端子箱25a,25bに接続するために設けている。
【0086】
図1に示すように、第1筐体11aの前面には化粧枠12aが装着されている。化粧枠12aの扉開口の下側には、扉開閉ハンドル1410の操作でロックが解除された場合に、ヒンジ14aを軸として、監視員通路34の路面に対し垂直となる位置に垂直回り(下向き)に開く消火栓扉14が配置されている。
【0087】
化粧枠12aの扉開口の上側には、ヒンジ15aを軸として垂直回り(上向き)に開く保守扉15が配置されている。上向きに開いた保守扉15は、扉内側に配置されたステー(支持棒)により開放状態が保持可能となっている。
【0088】
第1筐体11aの内部となるバルブ類収納部46には、後述するように、消火栓弁などを含むバルブ類、消火用ホースが接続された放水用ノズル、消火栓弁の開閉操作レバーを含む消火栓機器が収納されている。
【0089】
第2筐体11bの前面には化粧枠12bが装着されている。化粧枠12bの右側の扉開口にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、その左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きすることで、内部の端子箱25a,25bへのアクセスが可能となる補助扉20が配置されている。
【0090】
実施形態にあっては、補助扉20が配置され、従来よりも電装機器収納部45aが拡大されたため、従来では消火器収納部の内部後面に配置されていた端子箱25a,25bが補助扉20の内部後面に配置することが可能となっている。
【0091】
電装扉18には、電装機器として、例えば、赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ28が配置され、扉内側には電話ジャック26配置されている。赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。また、発信機24は、例えば、火災等の発生時に押されてスイッチがオンすると発信信号を送信し、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力され、防災受信盤からの応答信号を受信した消火栓装置10は、赤色表示灯22を点滅させると共に、応答ランプ28を点灯させる。
【0092】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱25aと低圧用の端子箱25bが、例えば、上下方向に並べて配置されている。高圧用の端子箱25aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱25bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ28及び電話ジャック26を接続する。
【0093】
また、第2筐体11bに装着された化粧枠12bの左側の扉開口には、扉開閉ハンドル1610の操作でロックが解除された場合に、ヒンジ16aにより左向きに横開きする消火器扉16が配置され、扉内部となる消火器収納部45bには、例えば、2本の消火器19が収納されている。また、消火器扉16には覗き窓17が設けられ、外部から消火器の有無が確認可能となっている。
【0094】
第3筐体は、筐体内に消火用ホースが外巻きにより収納されており、また、左右方向で連結固定した第1筐体11aと第2筐体11bを、監視員通路34の路面上方の所定の高さにトンネル壁面に当接又は近接して取付固定する機能を果たしている。
【0095】
第3筐体11cの前面には、化粧枠12cが装着されている。化粧枠12cの扉開口には、扉開閉ハンドル3010の操作でロックが解除された場合に、ヒンジ30aを軸として、監視員通路34の路面に対し垂直となる位置に垂直回り(下向き)に開くホース収納扉30が配置されている。ホース収納扉30が配置される扉開口のサイズは任意であるが、消火栓装置10が使用された後に、復旧作業員が消火用ホース62を第3筐体11c内部に巻き戻す作業を行うのに十分なサイズであり、例えば、扉開口の縦幅(上下方向の幅)は第3筐体11cの前面の縦幅の半分程度の縦幅であり、扉開口の横幅(左右方向の幅)は第3筐体11c内部に形成されたホース収納部48の左右内側面に外部から手が届く程度の横幅である。
【0096】
[b.消火栓装置の設置]
次に、監視員通路に対する消火栓装置の設置について説明する。当該説明にあっては、図1及び図2に加え、図1の消火栓装置を左側面から示した図3を参照する。
【0097】
図3に示すように、シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には、道路38がトンネル長手方向(図1の左右方向)に構築され、道路38に沿ったトンネル壁面35の下側に、道路38に対し所定高さの監視員通路34が構築されている。監視員通路34の内部はダクトとなっており、内部には給水本管40やケーブルが敷設され、給水本管40から分岐した給水配管36が監視員通路34の路面上に取り出される。給水配管36には引込配管37が接続され、引込配管37は第3筐体11c内を上下方向に通り第3筐体11cの上側に位置する第1筐体11aの内部に引き込まれている。
【0098】
シールド工法によるトンネル壁面35は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路34の路面上にトンネル壁面35に近接させて架台32の上に第3筐体11cが設置され、連結された第1筐体11a及び第2筐体11bが第3筐体11c上に取付固定されることで、第1筐体11aと第2筐体11bが監視員通路34の路面上の所定高さに設置される。また、第1筐体11aと第2筐体11bの上部は筐体支持部材41によりトンネル壁面35に固定され、前方へ倒れないようになっている。
【0099】
ここで、監視員通路34の路面から消火栓装置10に配置された発信機24や放水用ノズル等を含む全ての操作対象までの高さが、法的に定められた適正操作範囲に入るように、第3筐体11cの高さが設定される。監視員通路34の路面を道路利用者の立ち面とした場合には、公知のように、法的に定められた適正操作範囲は、路面からの下限高さH1が800mm、上限高さH2が1500mmであり、適正操作範囲の高さ幅Hwは700mmとなっている。
【0100】
本実施形態にあっては、第1筐体11a及び第2筐体11bに配置されている操作対象の全てが適正操作範囲内に入るように、監視員通路34の路面から第1筐体11aと第2筐体11bの底面までの高さ(=架台32の高さ+第3筐体11cの高さ)が設定されている。当該高さは、操作対象の全てが適正操作範囲内に入っていれば任意であるが、例えば、適正操作範囲の下限高さH1と同じ800mmであれば、第1筐体11a及び第2筐体11bに配置されている操作対象の全てが、どの位置に配置されても下限高さ以上の位置に配置されるようになる。
【0101】
[c.消火栓装置の薄型化]
次に、消火栓装置の薄型化について説明する。図3に示すように、監視員通路34の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面35からの突出(出っ張り)による監視員通路34の通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10は可能な限り薄型化されている。
【0102】
消火栓装置10の薄型化は、消火栓装置10の内部に収納される機器に合わせて最適化されることとなる。実施形態にあっては、消火栓装置10の内部に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第2筐体11bに収納される消火器であり、消火栓装置10の奥行幅(前後方向の厚さ)は消火器が収納できるサイズまで薄型化が可能であるから、消火栓装置10の奥行幅は、第2筐体11bに収納される消火器の外径に対応した所定の奥行幅に設定される。
【0103】
消火栓装置10の第2筐体11bに収納される消火器は、例えば、薬剤量6kgの20型消火器であり、20型消火器の外径は160~180mm程度であるから、収納された消火器が第2筐体11bに接触しないように隙間が確保されると、消火栓装置10の最小奥行幅は、例えば、200mm~250mm程度の範囲内の、例えば、250mmに設定され、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cの奥行幅は全て250mmに設定されることになる。これに対して、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込設置する従来の消火栓装置の奥行幅は300mm以上であることから、実施形態の消火栓装置10は奥行幅が従来の消火栓装置よりも低減され、消火栓装置10の薄型化が可能となる。
【0104】
[d.消火栓装置の高さ低減]
次に、消火栓装置の高さ低減について説明する。図3に示すように、架台32と第3筐体11cにより、筐体底面が監視員通路34の路面上の高さH1に設置される第1筐体11a及び第2筐体11bの高さ幅(縦幅)は、第1筐体11a及び第2筐体11bに収納される機器の中で高さが最大となる機器が収納可能となる必要最小限の高さ幅に設定される。実施形態にあっては、第1筐体11aは消火用ホースを収納する必要がないことから、高さが最大となる機器は、前述した薄型化の場合と同様に、第2筐体11bに収納される消火器であり、第2筐体11bの高さ幅(縦幅)は、消火器が収納できる最小高さ幅に設定される。
【0105】
前述した薄型化の場合と同様に、第2筐体11bに薬剤量6kgの20型消火器を収納する場合には、20型消火器の高さは600mm程度であるから、収納された消火器が第2筐体11bの内部上面に接触しないように隙間を確保すると、第2筐体11bの高さは、例えば、700mmに設定され、第1筐体11a及び第2筐体11bの高さ幅は適正操作範囲の高さ幅Hw(=700mm)以下の高さに設定でき、監視員通路34の路面から第1筐体11aと第2筐体11bの上面までの高さを適正操作範囲の上限高さH2(=1500mm)以下にすることを可能とする。これにより、第1筐体11a及び第2筐体11bに配置されている操作対象の全てが、どの位置配置されても上限高さ以下の位置に配置されることになる。
【0106】
[e.消火栓装置の内部構造]
次に、消火栓装置の内部構造について説明する。当該説明にあっては、第3筐体に消火用ホースを収納する第1実施形態のホース外巻き収納構造を有する消火栓装置の内部構造を、第1筐体及び第3筐体の筐体前面を開放して正面(前面)から示した図4を参照する。
【0107】
(e1.第1筐体の内部構造)
最初に、バルブ類収納部となる第1筐体11aの内部構造について説明する。第1筐体11aの内部のバルブ類収納部46は、消火栓機器を収納する従来の消火栓収納部から消火用ホースを収納するホース収納部としての機能が取り除かれたものに相当する。
【0108】
図2に示した第1筐体11aの右側底面の配管通し穴43aに、第3筐体11cの配管通し穴43bを通して引き込まれた引込配管37が分岐配管52に接続され、分岐配管52の分岐側には給水栓50が接続されている。分岐配管52の主管側の配管54はコの字形状に配置され、配管54の途中には消火栓弁56及び自動調圧弁58が順次接続されている。
【0109】
消火栓弁56に設けられた連動ボックス72は、第1筐体11a内部の前側に格子状に配置されたフレーム64の右側に設けられた操作ボックス68とワイヤー連結されており、操作ボックス68の消火栓弁開閉レバー70の開閉操作に伴う回転を、ワイヤーを介して連動ボックス72に伝達して消火栓弁56を開閉する、公知のワイヤーリンク機構が設けられている。
【0110】
自動調圧弁58は、消火用ホース62へ供給される消火用水の圧力を、所定圧力を保つように調整する。自動調圧弁58に続く配管54は、左側面付近で下方に屈曲し、左側底面付近に設けられたホース継手60により第3筐体11cに収納された消火用ホース62に接続されている。ホース継手60の種類や構造は任意であるが、例えば、公知の町野式継手により、消火用ホース62が配管54に着脱自在に接続される。
【0111】
第1筐体11a内部の前側に配置されたフレーム64にはホース取出口65が形成されており、第3筐体11cから図2に示したホース引出開口42a,42bを通って第1筐体11a内に引き込まれた消火用ホース62の先端には放水用ノズル66が装着されている。
【0112】
ノズル取出口65の上側横方向に配置されたフレーム64にはノズルホルダー67が吊下げられた状態に配置され、放水用ノズル66はホース取出口65の内側に位置した状態でノズルホルダー67に着脱自在に保持されている。このため、道路利用者が消火栓を使用する場合、ノズルホルダー67から放水用ノズル66を取出すことで、消火用ホース62はホース取出口65を通って引き出されることになる。また、第3筐体に外巻きで収納されている消火用ホース62の滑らかな引出しを可能とするため、ホース取出口65は可能な範囲で十分に広い横幅(左右幅)であることが望ましい。
【0113】
尚、図2に示したホース引出開口42a,42bの開口縁には、消火用ホース62の接触による摩耗や傷付きを防止するため、例えば、パイプ状のフレーム部材を用いた枠取りが施されている。
【0114】
操作ボックス68の内部には、ポンプ起動連動スイッチ74が設けられている。ポンプ起動連動スイッチ74は、消火栓弁開閉レバー70が開位置に操作された場合にオンし、防災受信盤へポンプ起動信号を送信して消火ポンプ設備を起動させる。
【0115】
また、給水栓50の右側には、ポンプ起動スイッチ75が設けられている。ポンプ起動スイッチ75は、消防隊員が給水栓50にホースを連結して消火を行う際に、押込み操作でオンし、防災受信盤へポンプ起動信号を送信して消火ポンプ設備を起動させる。
【0116】
(e2.第2筐体の内部構造)
続いて、第2筐体11bの内部構造について説明する。
【0117】
第2筐体11bの内部は、図2に示したように、隔壁45により電装機器収納部45aと消火器収納部45bに分けられている。前述したように、電装機器収納部45aの前面の扉開口に設けられた電装扉18には赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ28が配置され、電装扉18の裏面には電話ジャック26が配置され、補助扉20の内部となる筐体背面には図1に示したように端子箱25a,25bが配置されている。また、消火器収納部45bには、2本の消火器19が収納されている。
【0118】
[f.第3筐体のホース外巻き収納構造の第1実施形態]
続いて、第3筐体のホース外巻き収納構造の第1実施形態について説明する。当該説明にあっては、図4及び図4の消火栓装置の内部構造を右側面から見た3箇所の断面で示した図5を参照する。尚、図5(A)は図4の切断線a-aの断面を示し、図5(B)は図4の切断線b-bの断面を示し、図5(C)は図4の切断線c-cの断面を示す。
【0119】
図4に示すように、第3筐体11cの右端部には、監視員通路34から立ち上げられた給水配管36を第1筐体11a側の分岐配管52に連結する引込配管37が配置されており、引込配管37の左側に配置された仕切板77と第3筐体11cの左側との間にホース収納部48が形成されている。
【0120】
第3筐体11cのホース収納部48にはホース巻付け部78が配置され、消火用ホース62が外巻きにより引出自在に収納されている。ホース巻付け部78に対する消火用ホース62の外巻きは、図5(A)(B)に示すように、複数列の往復重ね巻きであり、保形ホースが用いられた30mの消火用ホース62を収納可能な奥行方向の列数及び縦方向の重ね巻き回数となっている。
【0121】
また、ホース巻付け部78から上部に配置されている第1筐体11aに向けて消火用ホース62が引き出されるための空き空間として、ホース巻付け部78の前方上部にホース引出空間48aが形成されている。
【0122】
ホース巻付け部78の上面側の左右2個所には、第1ホース抑え部82が設けられている。第1ホース抑え部82は、ホース巻付け部78に外巻きされている消火用ホース62の前方側を支えている。
【0123】
ホース巻付け部78の下面側には、第2ホース抑え部84が設けられている。第2ホース抑え部84は、下端を軸に背面側の鉛直位置と前方に張り出した水平位置との間で上下方向に回動自在に軸支されている。このため、消火用ホース62がホース巻付け部78に外巻きされる場合に、第2ホース抑え部84は、前方に張り出した水平位置に回動操作されてホース巻付け部78の下面側に対するホース巻付け位置を位置決めし、外巻きが終了した場合に図示の背面側の鉛直位置に回動操作されて退避する。なお、「鉛直」とは、厳密に対象に対して鉛直であることを限定するものではなく、対象に対して略鉛直であるものを含むものであり、「水平」の場合も同様となる。
【0124】
(f1.ホース巻付け部の円筒体構造)
次に、ホース巻付け部の円筒体構造について説明する。当該説明にあっては、第3筐体を取出して示した図6、及び第3筐体に配置されるホース巻付け部を取出して示した図7、第3筐体のホース巻付け部に対するホース外巻きを右側面から見た断面で示した図8を参照する。なお、図6(A)は第3筐体の正面を示し、図6(B)は図6(A)の切断線d-dの断面を示す。また、図7(A)はホース巻付け部の正面を示し、図7(B)は図7(A)の左側面を示し、図7(C)(D)は図7(A)の切断線e-eの断面を示す。
【0125】
図6(A)及び図7(A)に示すように、ホース巻付け部78は、第3筐体11c内の背面に固定されて前方に延在した横に長い長円の円筒体であり、円筒体の開口面は、上面前方から斜め下向きの奥行方向に向けて切欠きされた傾斜開口面80となっている。このためホース巻付け部78を構成する円筒体は、上面部78aと左右の半円部78bの一部を有するが、傾斜開口面80が形成されたことで下面部が存在しない形状となっている。
【0126】
このように、傾斜開口面80の形成により円筒体の下面部が存在しない形状となっていることで、ホース巻付け部78に外巻き(複数列で往復して重ね巻き)されている消火用ホース62が引き出される場合に、消火用ホース62が円筒体の下面部に妨げられて(引っかかって)引き出せなくなる状態が回避できる。
【0127】
また、ホース巻付け部78における両側(左右)の半円部78bの直径は、少なくとも消火用ホース62の最小湾曲径となっている。実施形態は、消火用ホース62として外径40mmの保形ホースが使用されており、その最小湾曲径は任意であるが、例えば、340mmでよく、余裕を持たせて、400mmとなっている。
【0128】
また、ホース巻付け部78の上面部78aの横幅(左右幅)も任意であるが、十分に長い1ターン当りのホース長を確保するため、ホース収納部48の左端から仕切壁37までの横幅(左右幅)が例えば2000mm、半円部78bの半径が例えば200mm、半円部78b側壁内面との空き間隔が、ホース重ね巻き数に対応して、例えば、200mmであれば、上面部78aの横幅は、例えば、1200mmとなる。
【0129】
このため、ホース巻付け部78に消火用ホース62が外巻きされた場合の1ターン当りのホース長は、ホース外径を40mmとした場合、重ね巻き回数を層数で示すと、1層目で約3.6m、2層目で約3.9m、3層目で約4.2mとなる。
【0130】
また、ホース巻付け部78の上面部78aの奥行幅は、外径40mmの消火用ホースを4列に外巻き可能とすると160mmとなり、このため、ホース収納部48(第3筐体11c)の奥行幅が、例えば、250mmであれば、ホース巻付け部78の前方に奥行幅90mmのホース引出し空間を形成する空き空間が形成される。
【0131】
また、ホース巻付け部78に対する複数列の往復重ね巻きは、図5(A)(B)に示すように、例えば、1層目は4列、2層目は3列となり、以下、これを繰り返している。
【0132】
したがって、1層目の4列のホース長は14.4m、2層目の3列のホース長は11.7mで累計26.1mとなり、ホース長30mまでは残り3.9mとなる。3層目の4列のホース長は16.8mで累計42.9mとなり、3層1列目で必要とするホース長30mの外巻きが完了する。
【0133】
(f2.第1ホース抑え部)
続いて、ホース巻付け部78の上面部78aに設けられた第1ホース抑え部82について説明する。図7(A)に示すように、第1ホース抑え部82は、ホース巻付け部78を構成する円筒体の上面部78aの張出部分となる開口端の左右2個所の所定位置に配置されている。
【0134】
第1ホース抑え部82の構造、形状、材質は任意であるが、例えば、図7(C)に示すL形の板状部材であり、ゴム等の変形可能な可撓性材質が使用される。第1ホース抑え部82は、固定部82bより上面部78aの開口端に下部が固定され、起立部82aにより上面部78aに外巻きされた消火用ホース62の開口面側を抑えて脱落しないように支える。一方、ホース収納部78から消火用ホース62が引き出される場合には、消火用ホース62の押圧を受ける場合があるが、この場合には、想像線で示すように外側へ湾曲してホースの引出しを妨げないように変形可能となっている。
【0135】
(f3.第2ホース抑え部)
続いて、ホース巻付け部78の下面側に設けられた第2ホース抑え部84について説明する。図7(A)に示すように、第2ホース抑え部84は、ホース巻付け部78を構成する円筒体の下面側となる背面の左右2個所の所定位置に配置されている。
【0136】
第2ホース抑え部84の構造、形状は任意であるが、例えば、図7(D)に示すように、所定長さの板部材である。第2ホース抑え部84は、下端がトルク蝶番86によりホース巻付け部78の背面に回動自在に軸支されている。トルク蝶番86は、第2ホース抑え部84をホース巻付け部78の背面に沿った鉛直位置と前方に張り出した水平位置との間で回動し、且つ、回動する場合にトルクが発生することで、第2ホース抑え部84を回動範囲の任意の位置に保持することができる。
【0137】
図6(B)に示したように、ホース巻付け部78の円筒体は傾斜開口面80の形成により円筒体の下面部分が存在しないため、作業員が消火用ホース62を外巻きする場合に、円筒体の下面位置が定まらず、ホース巻付け部78の下側のホース外巻きが整列されずにばらついてしまうことがある。
【0138】
そこで、作業員は、ホース巻付け部78に消火用ホース62を外巻きする場合、第2ホース抑え部84を想像線で示す水平位置に回動操作し、ホース巻付け部78の下面側のホース外巻き位置を位置決めすることで、ホース巻付け部78の下側についても、上面部78aと同様に整列したホース外巻きが可能となる。
【0139】
また、消火用ホース62の外巻きが終了した後は、水平位置にある第2ホース抑え部84は、消火用ホース62が引き出される場合に妨げになることから、トルク蝶番86により水平位置から回動して背面側の鉛直位置に保持された退避状態となる。
【0140】
(f4.消火用ホースの外巻き作業)
次に、第3筐体11c内に配置したホース巻付け部に対する消火用ホースの外巻き作業について説明する。
【0141】
工場における製作工程で消火栓装置10の組立が完了した後に、第3筐体11cのホース収納扉30を開いて筐体内のホース巻付け部78に消火用ホース62を外巻きして収納する作業が行われる。なお、道路利用者が放水用ノズル66を取り出し、消火用ホース62を引き出して消火活動を行った後に、復旧作業として行われるホース巻戻し作業も同様となる。
【0142】
消火用ホース62の外巻き作業は、先ず、図8(A)に示すように、ホース巻付け部78の下面側にトルク蝶番86で軸支されている第2ホース抑え部84が水平位置に回動操作され、ホース外巻きの下面位置が位置決めされる。
【0143】
続いて、図8(B)に示すように、消火用ホース62の1層目がホース巻付け部78の後側(背面側)から前側へ4列に外巻きされ、続いて、2層目が1層目の外周に前側から後側へ3列に重ねて外巻きされ、更に、3列目が2層目の外周に後側から前側へ4列に重ねて外巻きされ、30m以上の消火用ホースの外巻きが完了する。
【0144】
消火用ホース62の外巻きが済んだならば、図8(C)に示すように、トルク蝶番86で軸支されている第2ホース抑え部84が回動操作されて背面位置に保持されることで、退避状態となる。
【0145】
(f5.消火栓扉の開閉機構)
続いて、消火栓扉の扉開閉機構について説明する。当該説明にあっては、図1の消火栓装置を、消火栓扉を開いた状態で正面(前面)から示した図9、及び消火栓扉の扉開閉機構を消火栓装置の右側面から見た断面で示した図10を参照する。尚、図10(A)は消火栓扉が閉鎖した状態(閉鎖位置)を示し、図10(B)は消火栓扉が180°開放した状態(開放位置)を示す。
【0146】
道路利用者が消火栓を使用して消火活動を行う際に、消火栓扉14の扉開閉ハンドル1410を操作してロックを解除すると、図9に示すように、消火栓扉14は下端のヒンジ14aを軸として下向きに開放し、第1筐体11a内に配置された放水用ノズル66、消火栓弁開閉レバー70、給水栓50及びポンプ起動スイッチ75が操作可能となる。
【0147】
図10(A)に示すように、消火栓扉14の扉開閉機構90は、軸となるヒンジ14aにより消火栓扉14を開閉自在に第1筐体11aの扉開口の下側に軸支しており、更に、緩衝装置として機能するダンパー96を備えている。ダンパー96は、シリンダ側となる一端が固定側軸部98により筐体内のフレーム64等に固定され、ロッド側となる他端が軸部92により消火栓扉14の下端部内側に設けられたダンパー取付部94に軸支されている。
【0148】
道路利用者が消火栓扉14を開放するために扉開閉ハンドル1410を手前に引いてロックを外すと、図10(B)に示すように、消火栓扉14は、ヒンジ14aを軸として下向きに180°回転して第3筐体11cの前面に相対する位置まで開き、監視員通路34の路面に対して垂直に位置する。尚、「垂直」とは、厳密に監視員通路の路面に対して垂直であることを限定するものではなく、監視員通路の路面に対して略垂直であるものを含む。
【0149】
(f6.消火用ホースの引出し)
続いて、消火栓装置を使用した消火活動での消火用ホースの引出しについて説明する。道路利用者が消火栓を使用して消火活動を行う際に、図9に示すように消火栓扉14を開き、ホース取出口65内にノズルホルダー67により保持されている放水用ノズル66を取出して消火用ホース62を引き出し、消火栓弁開閉レバー70を下側の開位置に操作し、放水用ノズル66から消火用水を放水しながら火災現場に向かうこととなる。
【0150】
このような消火用ホース62の引出しにあっては、図5(A)(B)に示すように、第3筐体11c内のホース巻付け部78に外巻きで収納されている消火用ホース62は、ホース巻付け部78から巻き出された後、前方上部のホース引出空間48aから第1筐体11a内を通り、ホース取出口65から火災現場となる前方道路側の右方向又は左方向に引き出される。
【0151】
この場合、第3筐体11c内のホース巻付け部78に外巻きされている消火用ホース62は、30m以上のホースの引出しを例にとると、図8(B)に示した巻き込み時の矢印で示す方向とは逆に、3層目の前面側の4列目から背面側の1列目に向かって引き出され、続いて、2層目の背面側の1列目から前面側の3列目に向かって引き出され、さらに、1層目の前面側の4列目から背面側の1列目に向かって引き出される。
【0152】
このような複数列の往復重ね巻きからのホースの引出しにあっては、全ての巻出し位置において消火用ホース62は、外巻きされている位置から第1筐体11aのホース取出口65となる前方の斜め上方に向かう引出力を受けて引き出され、ホース巻付け部78から確実に離脱して引き出される。
【0153】
また、ホース巻付け部78の下面側に位置する消火用ホース62の外巻き部分については、ホース巻付け部78の前方が傾斜開口面80となっているため、ホース巻付け部78に妨げられることがなく(引っかかることがなく)、前方の斜め上方へのホースの引出しが確実に行われる。即ち、消火用ホース62が引き出される場合に、ホース巻付け部78からホースが巻き出せなくなるような、所謂デッドポイントは存在しない。
【0154】
(f7.消火用ホースの巻戻し作業)
次に、消火栓の使用終了後に行う消火用ホースの巻戻し作業について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉開閉機構を消火栓装置の右側面から見た断面で示した図10、消火栓装置を、第3筐体のホース収納扉を開いた状態で正面から示した図11を参照する。
【0155】
復旧作作業員が消火用ホース62を巻き戻す場合には、図11に示すように、ホース収納扉30の操作ハンドル3010を操作してロックを解除し、ホース収納扉30を下向きに開いた状態とすると共に、図9に示すように、消火栓扉14を開く。この状態で外部に引き出されている消火用ホース62の先端の放水用ノズル66を取外して水抜きし、続いて、第1筐体11aのホース取出口65を介して外部に引き出しされている消火用ホース62を、ホース収納扉30の扉開口30bの消火栓扉14に覆われていない箇所を介して第3筐体11cの外側へ全て引き出し、その後、消火栓扉14を閉じた状態で、第3筐体11cの扉開口30bを介して消火用ホース62を巻き戻す作業を行う。
【0156】
消火用ホース62の第3筐体11cへの巻き戻し作業が終了したら、消火栓扉14を開いて、消火用ホース62の先端を第3筐体のホース引出開口42b及び第1筐体11aのホース引出開口42aを通して第1筐体11aの内部からホース取出口65を介して引き出し、放水用ノズル66を装着してノズルホルダー66に保持することで、作業を終了する。
【0157】
[g.第3筐体のホース外巻き収納構造の第2実施形態]
続いて、第3筐体のホース外巻き収納構造の第2実施形態について説明する。当該説明にあっては、第3筐体に消火用ホースを収納する第2実施形態のホース外巻き収納構造を有する消火栓装置の内部構造を、第1筐体及び第3筐体の筐体前面を開放して正面から示した図12図12の消火栓装置の内部構造を右側面から見た3箇所の断面で示した図13、及び図12の第3筐体のホース巻付け部に対するホース外巻きを右側面から見た断面で示した図14を参照する。なお、なお、図13(A)は図12の切断線f-fの断面を示し、図13(B)は図12の切断線g-gの断面を示し、図13(C)は図12の切断線h-hの断面を示す。また、図14(A)はホース外巻きの開始前を示し、図14(B)はホース外巻きの手順を示し、図14(C)はホース外巻きが終了した状態を示す。
【0158】
(g1.ホース支持ポールを用いたホース巻付け構造)
まず、第2実施形態におけるホース支持ポールを用いたホース収納構造について説明する。図12に示すように、第3筐体11cのホース収納部48には、図4に示した長円の円筒体構造を有するホース巻付け部78に替えて、ホース巻付け部78と同様な機能を実現する複数のホース支持ポール100が配置されている。
【0159】
ホース支持ポール100は円筒形又は円柱形の部材であり、外巻きされる消火用ホース62を支える所定位置に、筐体背面に固定されて前方に延在する所定長さの部材である。
【0160】
ホース支持ポール100の配置位置は、図4に示した円筒体を正面から見た場合の両側の半円部分と、上下中心線との交点の上側位置及び左右中心線との交点位置となる4箇所、並びに円筒体における上面の直線部分の所定位置、例えば、中央の1箇所の合計5か所に配置される。
【0161】
また、ホース支持ポール100の長さは、円筒体の上面部に対応した3箇所については、円筒体の奥行幅と同じ、例えば、外径40mmの消火用ホース62を4列に外巻きする奥行幅160mmと同じ長さとなる。これに対し、円筒体の半円部分の両側2個所のホース支持ポール100の長さは、図5に示した円筒体の傾斜開口面80に対応して、例えば、半分の長さ80mmとなる。
【0162】
また、ホース支持ポール100は、奥行側を背面に固定した片持ち構造となっているが、消火用ホース62の外巻きで加わる荷重に対し十分な支持強度を確保するため、図14(A)(B)に示すように、下側を三角形の梁部材で支えるようにして固定されている。また、円筒体の上面部に対応した3箇所に配置されたホース支持ポール100の先端には、図4の第1実施形態と同様に、第1ホース抑え部82が配置され、ホース支持ポール100に沿って外巻きされる消火用ホース62の開口面側を抑えて脱落しないように支えている。
【0163】
また、円筒体の下面側に対応した2個所には、図4の第1実施形態と同様に、第2ホース抑え部84が配置され、作業員は、ホース支持ポール100に沿って消火用ホース62を外巻きする場合、第2ホース抑え部84を水平位置に回動操作し、外巻きする消火用ホース62の下面側のホース外巻き位置を位置決めすることで、下面側につぃても、上面部側と同様に整列したホースの外巻きが可能となる。
【0164】
また、消火用ホース62の外巻きが終了した後は、水平位置にある第2ホース抑え部84は、消火用ホース62が引き出される場合に妨げとなることから、トルク蝶番86により水平位置から回動して背面側の鉛直位置に保持された退避状態となる。それ以外の構造は、図4乃至図11に示した第1実施形態の場合と同様となる。
【0165】
(g2.消火用ホースの外巻き作業)
次に、第3筐体11c内に配置したホース支持ポール100に対する消火用ホースの外巻き作業について説明する。
【0166】
工場における製作工程で消火栓装置10の組立が完了した後に、第3筐体11cのホース収納扉30を開いて筐体内のホース支持ポール100に沿って消火用ホース62を外巻きして収納する作業が行われる。
【0167】
消火用ホース62の外巻き作業は、先ず、図14(A)に示すように、ホース巻付け位置の下側にトルク蝶番86で軸支されている第2ホース抑え部84が水平位置に回動操作され、ホース外巻きの下面位置が位置決めされる。
【0168】
続いて、図14(B)に示すように、消火用ホース62の1層目がホース支持ポール100の後側(背面側)から前側へ4列に外巻きされ、続いて、2層目が1層目の外周に前側から後側へ3列に重ねて外巻きされ、更に、3層目が2層目の外周に後側から前側へ4列に重ねて外巻きされ、30m以上の消火用ホースの外巻きが完了する。
【0169】
消火用ホース62の外巻きが済んだならば、図14(C)に示すように、トルク蝶番86で軸支されている第2ホース抑え部84が回動操作されて背面位置に保持されることで、退避状態となる。
【0170】
(g3.消火用ホースの引出し)
続いて、第2実施形態のホース外巻き収納構造について、消火栓装置を使用した消火活動での消火用ホースの引出しについて説明する。道路利用者が消火栓を使用して消火活動を行う際には、図9に示すように消火栓扉14を開き、図12に示すように、ホース取出口65内にノズルホルダー67により保持されている放水用ノズル66を取出して消火用ホース62を引き出し、消火栓弁開閉レバー70を下側の開位置に操作し、放水用ノズル66から消火用水を放水しながら火災現場に向かうこととなる。
【0171】
このような消火用ホース62の引出しにあっては、図13(A)(B)に示すように、第3筐体11c内のホース支持ポール100に沿って外巻きで収納されている消火用ホース62は、ホース支持ポール100から巻き出された後、前方上部のホース引出空間48aから第1筐体11a内を通り、ホース取出口65から火災現場となる前方道路側の右方向又は左方向に引き出される。
【0172】
この場合、第3筐体11c内のホース支持ポール100に沿って外巻きされている消火用ホース62は、30m以上のホースの引出しを例にとると、図14(B)に示した巻き込み時の矢印で示す方向とは逆に、3層目の前面側の4列目から背面側の1列目に向かって引き出され、続いて、2層目の背面側の1列目から前面側の3列目に向かって引き出され、さらに、1層目の前面側の4列目から背面側の1列目に向かって引き出される。
【0173】
このような複数列の往復重ね巻きからのホースの引出しにあっては、全ての巻出し位置において消火用ホース62は、外巻きされている位置から第1筐体11aのホース取出口65となる前方の斜め上方に向かう引出力を受けて引き出され、ホース支持ポール100に沿った外巻き状態から確実に離脱して引き出される。
【0174】
また、ホース支持ポール100の下側に位置する消火用ホース62の外巻き部分については、上側のホース支持ポール100の長さに対し両側のホース支持ポール100が半分の長さとなっているため、両側のホース支持ポール100に妨げられることなく(引っかかることなく)、前方の斜め上方へのホースの引出しが確実に行われる。即ち、消火用ホース62が引き出される場合に、ホース支持ポール100からホースが巻き出されなくなるような、所謂デッドポイントは存在しない。尚、消火栓の使用終了後に行う消火用ホースの巻戻し作業は、第1実施形態の場合と同様となる。
【0175】
[h.外巻きホース下側のフリー巻き]
続いて、第1及び第2実施形態のホース外巻き収納構造における外巻きホース下側のフリー巻きについて説明する。当該説明にあっては、第1実施形態のホース巻付け部及び第2実施形態のホース支持ポールに対し下側をフリーとした消火用ホースの外巻きを、第3筐体の右側面から見た断面で示した図15を参照する。尚、図15(A)は第1実施形態を示し、図15(B)は第2実施形態を示す。
【0176】
第1実施形態を例にとると、図15(A)に示すように、ホース巻付け部78に対する消火用ホース62の外巻き状態において、ホース巻付け部78の下側については、第2ホース抑え部84が水平位置に回動して設定される下面位置ではなく、それより下側の位置を通るように巻き回されることで、ホース下側がフリーな状態となっている。
【0177】
このように、消火用ホース62の下側がフリーな状態となったホース外巻きは、1ターン当りのホース長を増加させることができ、複数列の往復重ね巻きにおけるターン数を低減することが可能となる。また、下側のホース外巻き位置の設定が必要ないことから、第2ホース抑え部84が省略できるメリットもある。
【0178】
図15(B)に示す第2実施形態についても同様であり、ホース支持ポール100に沿った消火用ホース62の外巻き状態において、ホース支持ポール100の下側については、第2ホース抑え部84が水平位置に回動して設定される下面位置ではなく、それより下側の位置、本実施形態では、3層目が筐体底面に位置するように巻き回されることで、ホース下側がフリーな状態となっている。
【0179】
[i.外巻きホース上側の傾斜配置]
続いて、第1及び第2実施形態のホース外巻き収納構造における外巻きホース上側の傾斜配置について説明する。当該説明にあっては、第1実施形態のホース巻付け部及び第2実施形態のホース支持ポールの上側が傾斜した消火用ホースの外巻きを、第3筐体の右側面から見た断面で示した図16を参照する。尚、図16(A)は第1実施形態を示し、図16(B)は第2実施形態を示す。
【0180】
第1実施形態を例にとると、図16(A)に示すように、ホース巻付け部78を構成する長円の円筒体の上面部が、前方の斜め上方に向けて傾斜した傾斜上面部780となっている。それ以外の構造は、図4乃至図11に示した第1実施形態と同様となる。このようにホース巻付け部78の上面側が傾斜上面部780となったことで、傾斜上面部780の部分に外巻きされる消火用ホース62の脱落が抑止され、より確実な消火用ホース62の外巻きが可能となる。
【0181】
図16(B)に示す第2実施形態についても同様であり、第1実施形態のホース巻付け部78の上面部に対応して配置されたホース支持ポールが、前方の斜め上方に向けて傾斜したホース支持傾斜ポール102となっている。それ以外の構造は、図12乃至図14に示した第2実施形態と同様となる。このようにホース巻付け位置の上側にホース支持傾斜ポール102が配置されたことで、ホース支持傾斜ポール102の部分に外巻きされる消火用ホース62の脱落が抑止され、より確実な消火用ホース62の外巻きが可能となる。
【0182】
[j.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0183】
(ノズルホルダー)
上記の実施形態は、放水用ノズルを着脱自在に保持するノズルホルダーは、第1筐体の前面側のフレームに配置されているが、これに限定されず、消火栓扉の裏面側に配置されてもよい。
【0184】
(消火栓弁開閉操作部)
上記の実施形態は、消火栓弁の開閉操作部を構成する消火栓弁開閉レバーを備えた操作ボックスは、第1筐体の前面側のフレームに配置されているが、これに限定されず、消火栓扉の裏面側に配置されてもよい。
【0185】
(壁掛け構造により設置された消火栓装置)
上記の実施形態は、左右方向で連結した第1筐体と第2筐体を、ホース収納部を備えた第3筐体上に設置して監視員通路の路面上の所定の高さに取付固定する据置き構造により設置された消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、トンネル壁面に設置された架台に、左右方向で連結した第1筐体と第2筐体を取付固定する壁掛け構造により設置された消火栓装置についても、第1筐体及び第2筐体と監視員通路の路面との間に、ホース収納部を備えた第3筐体が配置された構造であっても構わない。この場合、第3筐体は、壁掛け構造であっても、据置き構造であってもよく、また、第1筐体と第2筐体に対し第3筐体は連結配置されても、分離配置されてもよい。
【0186】
(消火栓装置の筐体)
上記の実施形態は、第2筐体に電装機器と消火器が設けられているが、これに限定されず、第2筐体が電装機器を収納する筐体と消火器を収納する筐体に分割された形態であってもよい。即ち、ホース収納部以外の筐体が、消火栓機器を収納する第1筐体、電装機器を収納する第2筐体、消火器を収納する第3筐体に分割され、左右方向で連結固定した第1乃至第3筐体を、ホース収納部を備えた第4筐体で監視員通路の路面上の所定高さに取付固定する据置き構造であってもよい。
【0187】
(ホース巻き戻し)
上記の実施形態では、下端を軸に垂直回り(上下回り)に回動自在に軸支された消火栓扉14を、ホース巻き戻しの際にはステーにより略水平に開いた状態に保持し、消火栓扉14に妨げられることなくホース収納扉30が開放可能であってもよく、また、上端を軸に垂直回り(上下回り)に開閉自在に軸支された消火栓扉14であってもよい。この場合、消火栓扉14の扉開閉ハンドル1410が操作されてロックが解除した場合、ガスダンパー等により消火栓扉14を上向きに回動して開放させる構造となる。q
このため、道路利用者が消火栓装置10を使用後に、復旧作業員が外部に引き出された消火用ホース62を巻き戻す作業を行う場合、消火栓扉14を開放した状態でホース収納扉30を開くだけで、ホース収納扉30の扉開口30bから第1筐体11aのホース取出口65を介して外部に引き出されている消火用ホース62を、ホース収納扉30の扉開口30bを経由して第3筐体11cの外側へ全て引き出した後に、第3筐体11c内に消火用ホース62を巻き戻す作業を行うことになる。
【0188】
また、ホース巻き戻しのために消火栓扉14を閉じてホース収納扉30を開放するための他の構造として、第1筐体11a内のホース取出口65に相対した消火栓扉14の中央上側の位置に下端を軸に開放自在に軸支した子扉を設け、子扉の扉開口は消火栓扉14の上端側に開放する構造であってもよい。
【0189】
復旧作業員が消火用ホース62を巻き戻す場合には、消火栓扉14が開いたまま子扉を開いて、消火用ホース62を子扉の扉開口の内側から外部へ引き出した状態として消火栓扉14を閉じ、子扉の扉開口を介して外部に引き出されている消火用ホース62を、開放したホース収納扉30の扉開口30bを介して第3筐体11cの外側へ全て引き出し、この状態で第3筐体11cの扉開口30bを介して消火用ホース62を巻き戻す作業を行うことになる。
【0190】
また、消火用ホースを巻き戻すための他の作業方法として、第1筐体11aのホース継手60から消火用ホース62を取り外した状態で、第1筐体11aのホース取出口65から第3筐体11cに収納されている消火用ホース62を全て外部に引き出し、続いて、消火用ホース62の後端を第3筐体11cのホース収納扉30の扉開口30bから入れて第1筐体11aのホース継手60に接続し、この状態で、第3筐体11cの扉開口30bを介して消火用ホース62を巻き戻す作業を行ってもよい。
【0191】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0192】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
11c:第3筐体
12a,12b,12c:化粧枠
14:消火栓扉
1410,1610:扉開閉ハンドル
15:保守扉
16:消火器扉
17:覗き窓
18:電装扉
19:消火器
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
26:電話ジャック
28:応答ランプ
30:ホース収納扉
32:架台
34:監視員通路
35:トンネル壁面
36:給水配管
37:引込み配管
38:道路
40:給水本管
42a,42b:ホース引出開口
43a,43b,43c:配管通し穴
44a,44b:通線開口
45:隔壁
45a:電装機器収納部
45b:消火器収納部
46:バルブ類収納部
48:ホース収納部
48a:ホース引出空間
50:給水栓
52:分岐配管
54:配管
56:消火栓弁
58:自動調圧弁
60:ホース継手
62:消火用ホース
64:フレーム
65;ホース取出口
66:放水用ノズル
67:ノズルホルダー
68:操作ボックス
70:消火栓弁開閉レバー
72:連動ボックス
74:ポンプ起動連動スイッチ
75:ポンプ起動スイッチ
76:ホースフレーム
77:仕切板
78:ホース巻付け部
78a:上面部
78b:半円部
780:傾斜上面部
80:傾斜開口面
82:第1ホース抑え部
84:第2ホース抑え部
86:トルク蝶番
90:扉開閉機構
92:ダンパー取付部
94:軸部
96:ダンパー
98:固定側軸部
100:ホース支持ポール
102:ホース支持傾斜ポール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16