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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172728
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】穿刺深度ガイド
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090648
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】桂川 裕偉
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF42
4C160FF45
(57)【要約】
【課題】穿刺デバイスの刺入深さを示すガイドであって、成形が容易であり、かつ簡単な操作で機能する穿刺深度ガイドを提供する。
【解決手段】穿刺深度ガイド100は、穿刺デバイス1を軸方向に摺動可能な調節通孔120と、穿刺デバイスを保持可能な保持通孔130と、前記調節通孔120と保持通孔130を連通させるスライド空間140とを備え、前記穿刺デバイスと係合する通孔が、前記調節通孔120と保持通孔130との間でスライド空間140を経て切り替え可能に形成される。そして、前記スライド空間は前記調節通孔と保持通孔の交点131と該調節通孔120の一方端部、及び、前記交点と保持通孔130の一方端部をそれぞれ結ぶ線、並びに、穿刺深度ガイドの外形線とで矩形に区画される第一の断面と、該第一の断面と前記交点を支点として点対称である第二の断面に形成される、前記交点131を支点として回動可能なスリットであることが好ましい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内のターゲットに経皮的にアクセスする穿刺デバイスの任意の位置に設定し、該穿刺デバイスに対して刺入深度を指標する穿刺深度ガイドにおいて、
穿刺デバイスを軸方向に摺動可能な調節通孔と、
穿刺デバイスを保持可能な保持通孔と、
前記調節通孔と保持通孔を連通するスライド空間と、を備え、
前記穿刺デバイスと係合する通孔が、前記調節通孔と保持通孔との間でスライド空間を経て切り替え可能であることを特徴とする穿刺深度ガイド。
【請求項2】
前記調節通孔の最小径は前記保持通孔の最大径よりも大きな径を備えることを特徴とする請求項1の穿刺深度ガイド。
【請求項3】
前記調節通孔の開口部はテーパー状に形成される請求項1の穿刺深度ガイド。
【請求項4】
前記穿刺深度ガイドは筒状に形成されることを特徴とする請求項1の穿刺深度ガイド。
【請求項5】
前記穿刺深度ガイドの両端部にはフランジが備えられる請求項4の穿刺深度ガイド。
【請求項6】
前記調節通孔と保持通孔は直行して連通する請求項1の穿刺深度ガイド。
【請求項7】
前記スライド空間は、前記調節通孔と保持通孔の交点を支点とした回動操作により、前記調節通孔と保持通孔とを切り替え可能なスリット形状である、請求項1乃至6のいずれかの穿刺深度ガイド。
【請求項8】
前記スリットは、前記調節通孔と保持通孔の交点と該調節通孔の一方端部、及び、前記交点と該保持通孔の一方端部をそれぞれ結ぶ線、並びに、前記穿刺深度ガイドの外形線とで矩形に区画される第一の断面と、前記交点を支点として該第一の断面と点対称な第二の断面とに形成される請求項7の穿刺深度ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内のターゲット部位に経皮的にアクセスする穿刺デバイスに対し、刺入深さを指標する穿刺深度ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、神経周辺への局所麻酔を行う神経ブロックやカテーテルの挿入を誘導する穿刺針の刺入などといった、経皮的に人体内のターゲット部位に穿刺デバイスをアクセスする際、その刺入深さを把握する手段として、穿刺デバイスの針管の外周面に長手方向に摺動可能な穿刺深度ガイド(指標)を設置する方法が一般的に用いられている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来の穿刺深度ガイドは操作時に軽い力で摺動する程度の摩擦嵌めで穿刺デバイスに固定されている場合が一般的であり、穿刺深度ガイドの自重や予期しない外力によって位置がずれてしまう場合や、逆に、穿刺デバイスと穿刺深度ガイドとの篏合がきつく操作時に強い力が必要な場合がある。
【0004】
そこで特許文献2に示すような、穿刺深度ガイド(調節式深度ストップ)であって、穿刺デバイス(カニューレシャフト)に対して移動可能な調節構成と、固定される固定構成との間で操作可能な穿刺深度ガイドが提案されている。この穿刺深度ガイドは、該穿刺深度ガイド本体の開口部に係合するようなねじ切りファスナを設け、ねじにより開口部の有効直径を調節したり、環状本体の一部を着脱可能な楔として、該楔の挿入具合で有効直径を変化させたりすることで、調節構成と固定構成との間で操作可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-175070号公報
【特許文献2】特開2019-514543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2における穿刺深度ガイドによると、穿刺デバイスに対して摺動可能な調節構成と、穿刺デバイスに対し固定する固定構成とを分けることにより、穿刺デバイスに対し確実な調節及び固定が可能である。しかし、前記穿刺深度ガイドの構成は複雑であり製造コストがかさむという点や、複雑な操作が必要であるという点で課題が残っている。
【0007】
そこで本発明は、穿刺デバイスの刺入深さを示すガイドであって、単純な構成で成形が容易であり、かつ簡単な操作で機能する穿刺深度ガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の穿刺深度ガイドは、穿刺デバイスの任意の位置に設定し、該穿刺デバイスに対して刺入深度を指標するデバイスであって、前記穿刺深度ガイドは、穿刺デバイスを軸方向に摺動可能な調節通孔と、穿刺デバイスを保持可能な保持通孔と、前記調節通孔と保持通孔を連通させるスライド空間と、を備え、前記穿刺デバイスと係合する通孔が、前記調節通孔と保持通孔との間でスライド空間を経て切り替え可能に形成される。
【0009】
前記穿刺深度ガイドは次の通り構成することが好ましい。
・前記調節通孔の最小径は前記保持通孔の最大径よりも大きな径を備える。
・前記調節通孔の開口部はテーパー状に形成される。
・前記穿刺深度ガイドは筒状に形成され、両端にフランジを備える。
【0010】
上述の実施の形態に加えて、前記調節通孔と保持通孔は直行して連通することが好ましく、また、前記スライド空間は前記調節通孔と保持通孔の交点を支点とした回動操作により、前記調節通孔と保持通孔とを切り替え可能であるスリット形状に形成されることが好ましい。具体的には、前記スリットは、前記調節通孔と保持通孔の交点と該調節通孔の一方端部、及び、前記交点と保持通孔の一方端部をそれぞれ結ぶ線、並びに、穿刺深度ガイドの外形線とで矩形に区画される第一の断面と、該第一の断面と前記交点を支点として点対称である第二の断面に形成されるもの等であっても良い。
【0011】
(作用)
前記手段の穿刺深度ガイドによれば、単純な構造である単一の部品のみから構成されるため、成形が容易で製造コストを抑えることができる。また、前記穿刺デバイスに対する位置を調節する際に用いる調節通孔と固定する際に用いる保持通孔は互いに連通しており、穿刺デバイスと係合する通孔の切り替えは、回動を含むスライド操作等の単純な操作のみで行えるため、使用者は片手での短時間の作業のみで切り替え可能である。
【発明の効果】
【0012】
前記手段によると、単純な構成で成形が容易で、かつ簡単な操作で機能する穿刺デバイスの穿刺深度ガイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の穿刺深度ガイドを備えた穿刺デバイスの斜視図。
図2】本発明の第一の実施の形態における穿刺深度ガイドの斜視図。
図3】前記形態の穿刺深度ガイドの上面図。
図4】前記形態の穿刺深度ガイドの側面図。
図5】前記形態の穿刺深度ガイドの断面図。
図6】前記形態の穿刺深度ガイドの回動の様子を示す説明図。
図7】前記形態の穿刺深度ガイドの回動の様子を示す断面図。
図8】本発明の第二の実施の形態における穿刺深度ガイドの斜視図。
図9】本発明の第三の実施の形態における穿刺深度ガイドの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の穿刺深度ガイドの第一の実施の形態について図面を参考に詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の穿刺深度ガイドを備えた穿刺デバイスの斜視図であり、図2は、本発明の第一の実施の形態における穿刺深度ガイドを示す斜視図、図3は前記形態の穿刺深度ガイドの上面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の穿刺深度ガイド100は、穿刺デバイス1の針管10において該針管10の外周面の任意の位置に設定することで、人体への刺入深さの目安を示すものである。図2に示すように前記穿刺深度ガイド100は、円筒状のガイド本体110に、針管10に対して長手方向に摺動するための調節通孔120と、該針管10に対して固定する保持通孔130と、前記調節通孔120及び保持通孔130を連通させるスリット140とを備えて構成される。前記穿刺深度ガイド100は、耐摩耗、耐衝撃、耐薬品性等に優れた熱可塑性樹脂で成形可能で、例えばポリエチレン等の射出成型により形成される。
【0017】
ガイド本体110は、筒体111と該筒体111の両端部にフランジ112を備えて成形される。該筒体111の外径及び高さは穿刺デバイス1の大きさに合わせ、手技を妨げることのない任意の寸法に設定される。また前記フランジ112は、前記筒体111に強度を与え、該筒体111とフランジ112とで生まれる段差により把持・操作が行いやすい程度の大きさに設定される。本形態においては、前記筒体111は外径3mm、高さ10mmに設定され、前記フランジ112はそれぞれ外径4.5mm、幅2mmに設定される。
【0018】
前記ガイド本体110の形状は筒状に限定されず、その他の実施例として、例えば断面形状が多角形又は楕円形である柱体や球体等であっても良い。
【0019】
調節通孔120は、針管10に対する穿刺深度ガイド100の位置を調節するため、該針管10を長手方向に摺動するための通孔で、該調節通孔120は、前記ガイド本体110の径方向中心部に、軸方向と平行に、該ガイド本体110を貫通するように設けられる。該調節通孔120の径は、前記針管10に対し穿刺深度ガイド100が軽い力で摺動し、自重で大きく動くことのない程度として、該針管10のゲージサイズの外径規格と同じ寸法もしくは外形寸法に対し0.01mmから0.05mm程度だけ大きい寸法に設定される。
【0020】
前記調節通孔120の開口部121にはテーパー部122を設けても良い。該テーパー部122によると開口部121が広くなり、針管10がテーパー部122に沿って挿入されることから、前記調節通孔120への穿刺デバイス1の挿入をスムーズに行うことができる。
【0021】
保持通孔130は、針管10に対し穿刺深度ガイド100を固定する際に該針管10を保持・固定する通孔で、ガイド本体110の軸方向中心部に、調節通孔120と直行して連通するよう該ガイド本体110の径方向と平行に、ガイド本体110を貫通して形成される。該保持通孔130の径は、穿刺深度ガイド100を用いる針管10を確実に把持できる径で、針管10のゲージサイズにより設定される。本形態においては、該針管10のゲージサイズの外径規格より0.1mm程度小さい寸法で形成される。
【0022】
スリット140は、前記針管10の任意の位置において穿刺深度ガイド100を回動可能にするもので、第一のスリット141及び第二のスリット142の2つのスリットより構成される。図5に示すように、第一のスリット141は前記調節通孔120と保持通孔130の交点113から、該調節通孔120上端部、及び、該保持通孔130の一方端部をそれぞれ結ぶ線、並びに、ガイド本体110の外径とで矩形に区画される第一の断面に形成され、第二のスリット142は該交点113に対し該第一の断面と点対称である第二の断面に形成される。
【0023】
図4に示すように、該スリット140の幅L1、L2は、ガイド本体110の両端においては該調節通孔120の径に対し0.05mmから0.1mm程度小さい幅L1で、穿刺深度ガイド100の中央部側においては、保持通孔130の径と同じ幅L2で形成される。すなわち、該スリット140の幅は、ガイド本体110の両端における幅L1から中央側における幅L2にかけて滑らかに狭まるように形成され、保持通孔130と連通する。
【0024】
前記構成によると、調節通孔120の径と比較してスリット140の幅が狭いため、針管10が調節通孔120からスライド空間140に移動する際に一定以上の外力を必要とする。そのため、穿刺深度ガイド100が針管10に対して自由に回動することを防ぐことができる。
【0025】
図6は、本発明の穿刺深度ガイド100の穿刺針に対する回動の様子を示した説明図、図7は本発明の穿刺深度ガイド100の穿刺針に対する回動の様子を示した断面図で、それぞれAは調節形態を、Bは回動操作を、Cは固定形態を示している。
【0026】
図6のA及び図7のAにおいて、穿刺深度ガイド100は前記針管10に対し該穿刺深度ガイド100の位置を調整する調節形態であり、該針管10は前記調節通孔120を通っている。該調節通孔120は針管10の外径と同じ、もしくは外径に対し若干太径に形成されているため、該穿刺深度ガイド100の自重により針管10に対し大きく摺動することはなく、また、針管10と調節通孔120の摩擦抵抗は小さく摺動が滑らかである。そのため、使用者は穿刺深度ガイド100に対し大きな力を加える必要なく、穿刺デバイス1の穿刺深度の目安を決める穿刺深度ガイド100の位置を調節可能である。
【0027】
図6のB及び図7のBは、穿刺深度ガイド100が調節形態から固定形態に移る際の回動操作の様子を示している。前記穿刺深度ガイド100は、前記調節通孔120と保持通孔130を連通する第一のスリット141及び第二のスリット142が、該調節通孔120及び保持通孔130の交点113を基準として点対称に形成される。そのため、前記穿刺深度ガイド100を調節形態から固定形態に移す際、使用者は前記交点113を支点として該穿刺深度ガイド100を90度回動操作する単純な操作で、該針管10は第一のスリット141及び第二のスリット142を通り、前記調節通孔120から保持通孔130に移動する。すなわち使用者は、例えば親指と人差し指、二本の指のみの操作で調節形態と固定形態の切り替えが可能である。
【0028】
図6のC及び図7のCにおいて、穿刺深度ガイド100は針管10に固定され、穿刺デバイス1に対し穿刺深度の目安を表示する固定形態であり、該針管10は前記保持通孔130に配置されている。また、該保持通孔130は針管10の外径に対し若干小さく形成されているため、針管10との摩擦嵌めにより針管10を保持し固定状態を維持する。すなわち、穿刺深度ガイド100は、穿刺深度ガイド100の自重により針管10に対して移動することはなく、さらには予期せぬ外力や振動が加えられたとしても固定状態を維持可能である。
【0029】
図8及び図9は本発明の別の実施の形態を示すもので、いずれも本発明の調節通孔と保持通孔及びこれらをつなぐスライド空間の位置関係に関するものである。これらの形態におけるそれぞれの寸法や構成要素については、前記第一の実施の形態と基本的に同様であるため、同様部分の説明は省略し主に相違部分を記載する。
【0030】
図8は本発明の第二の実施の形態における穿刺深度ガイド200の斜視図である。本形態において、穿刺深度ガイド200は、ガイド本体210の軸方向と平行に形成された調節通孔220と、ガイド本体210の中心点において該調節通孔220と任意の角度θ(本形態においては30°)で交差する保持通孔230と、該調節通孔220及び保持通孔230の間を連通させるスライド空間240とよりなる。また、スライド空間240から保持通孔230の入口にかけて括れ部231を形成する。これにより、針管10を保持する際、保持通孔230による針管10の保持を維持し、該針管10が保持通孔230からスライド空間240に押し戻されることを防ぐことができる。
【0031】
前記ガイド本体210の両端面には、前記保持通孔230の開口部で該保持通孔230の軸方向と垂直方向に切り欠いた当接面212が形成されている。これによると、穿刺デバイス1を体表に対し角度をつけて穿刺しても、前記当接面212が皮膚と当接することにより、斜め方向での穿刺時も一定の操作性を保つことができる。
【0032】
図9は本発明の第三の実施の形態における穿刺深度ガイド300の斜視図である。本形態において調節通孔320及び保持通孔330は、筒状又は任意の形状のガイド本体310に該ガイド本体310の軸方向と平行に並列して形成される。また、前記調節通孔320及び保持通孔330はスライド空間であるスライド通路340により連通しており、調節形態と固定形態との切り替えが径方向のスライド操作のみで切り替え可能である。また第二の実施の形態と同様に、スライド通路340から保持通孔330の入口にかけて括れ部331を形成する。
【0033】
前記第一乃至第三の実施の形態の穿刺深度ガイドは、例示であり、本発明の趣意を変更するものでなければ、例えば、調節通孔と保持通孔がガイド本体の中心以外の点で交差する形態や、軸方向と平行でない調節通孔と保持通孔がスライド通路でつながっている形態など、針管が調節通孔から保持通孔へスライド移動が可能な形態であれば他の形態であっても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 穿刺デバイス
10 針管
100 穿刺深度ガイド
110 ガイド本体
111 筒体
112 フランジ
113 交点
120 調節通路
121 開口部
122 テーパー部
130 保持通孔
140 スリット
141 第一のスリット
142 第二のスリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9