(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172732
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】エレベーターのドア異常検出システムおよびエレベーターのドア異常検出方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241205BHJP
B66B 13/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B13/14 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090654
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】本江 綾華
【テーマコード(参考)】
3F304
3F307
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA05
3F304BA16
3F304CA15
3F307BA02
(57)【要約】
【課題】ドア異常検出装置の検出の精度を向上させることができるエレベーターのドア異常検出システムを得る。
【解決手段】このエレベーターのドア異常検出システムは、エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定装置5と、給油器設置判定装置5の判定結果およびエレベータードア101が開閉動作をする際にドアモータ102に発生するトルクの値に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出するドア異常検出装置4と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータードアに給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定装置と、
前記給油器設置判定装置の判定結果および前記エレベータードアが開閉動作をする際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、前記エレベータードアに異常が発生したことを検出するドア異常検出装置と、
を備えているエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項2】
前記給油器設置判定装置による前記給油器が設置されたか否かの判定は、前記エレベータードアに前記給油器が設置された時を示す情報に基づいて行われる請求項1に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項3】
前記給油器設置判定装置による前記給油器が設置されたか否かの判定は、前記エレベータードアに前記給油器が設置された時が、判定する時から予め設定された期間だけ遡った時までの間の期間にあるか否かによって行われる請求項2に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項4】
前記ドア異常検出装置による前記エレベータードアに異常が発生したことの検出は、エレベーターの診断運転において行われており、
前記給油器設置判定装置による前記給油器が設置されたか否かの判定は、前記エレベータードアに前記給油器が設置された時が、今回の前記エレベーターの診断運転が行われた時から前回の前記エレベーターの診断運転が行われた時までの間の期間にあるか否かによって行われる請求項2または請求項3に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項5】
前記エレベータードアに前記給油器が設置された時を示す情報を含む保守作業情報を記憶する保守作業情報記憶装置を備え、
前記給油器設置判定装置は、前記保守作業情報記憶装置に記憶されている前記保守作業情報を用いて、前記エレベータードアに前記給油器が設置されたか否かを判定する請求項2または請求項3に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項6】
前記ドア異常検出装置には、第1閾値と、前記第1閾値よりも大きい第2閾値とが予め設定されており、
前記ドア異常検出装置は、前記エレベータードアに前記給油器が設置されていないと前記給油器設置判定装置が判定した場合に、前記第1閾値と前記トルクの値とを用いて前記エレベータードアに異常が発生したか否かを判定し、前記エレベータードアに前記給油器が設置されたと前記給油器設置判定装置が判定した場合に、前記第2閾値と前記トルクの値とを用いて前記エレベータードアに異常が発生したか否かを判定する請求項1または請求項2に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項7】
前記エレベータードアの開閉動作の回数を示す情報を記憶する開閉回数情報記憶装置を備え、
前記ドア異常検出装置は、前記給油器設置判定装置の判定結果、前記エレベータードアの開閉動作の回数を示す情報および前記エレベータードアが開閉動作をする際に前記ドアモータに発生する前記トルクの値に基づいて、前記エレベータードアに異常が発生したことを検出する請求項1または請求項2に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
【請求項8】
エレベータードアに給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定工程と、
前記給油器設置判定工程の判定結果および前記エレベータードアが開閉動作をする際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、前記エレベータードアに異常が発生したことを検出するドア異常検出工程と、
を備えているエレベーターのドア異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのドア異常検出システムおよびエレベーターのドア異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア異常検出装置を備えたエレベーターのドア異常検出システムが知られている。ドア異常検出装置は、エレベータードアが開閉する際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、エレベータードアに異常が発生したことを検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターの保守点検作業において、エレベータードアに給油器を設置する工程が含まれる場合がある。エレベータードアに給油器が設置された場合に、給油器が設置された時からある程度の期間が経過するまでの間において、エレベータードアと給油器との間に発生する摩擦力が増加する。エレベータードアと給油器との間に発生する摩擦力が増加することによって、エレベータードアが開閉する際にドアモータに発生するトルクの値が上昇する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたエレベーターのドア異常検出システムの構成では、エレベータードアに給油器を設置することによってエレベータードアと給油器との間に発生する摩擦力が増加した場合に、ドア異常検出装置がエレベータードアに異常が発生したと誤検出してしまうおそれがあるという問題点があった。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ドア異常検出装置の検出の精度を向上させることができるエレベーターのドア異常検出システムおよびエレベーターのドア異常検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベーターのドア異常検出システムは、エレベータードアに給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定装置と、給油器設置判定装置の判定結果およびエレベータードアが開閉動作をする際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、エレベータードアに異常が発生したことを検出するドア異常検出装置と、を備えている。
本開示に係るエレベーターのドア異常検出方法は、エレベータードアに給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定工程と、給油器設置判定工程の判定結果およびエレベータードアが開閉動作をする際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、エレベータードアに異常が発生したことを検出するドア異常検出工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るエレベーターのドア異常検出システムおよびエレベーターのドア異常検出方法によれば、ドア異常検出装置の検出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムを示すブロック図である。
【
図2】
図1のエレベーターのドア異常検出システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2に係るエレベーターのドア異常検出システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムを示すブロック図である。エレベーターのドア異常検出システムは、エレベーター1と、遠隔監視装置2と、診断運転情報取得装置3と、ドア異常検出装置4と、給油器設置判定装置5と、保守作業情報記憶装置6と、を備えている。
【0011】
エレベーター1は、エレベータードア101と、ドアモータ102と、エレベーター制御盤103と、を備えている。
【0012】
エレベータードア101は、図示しないかごドアと、図示しない乗場ドアと、を備えている。かごドアは、図示しないかご出入口を開閉する。乗場ドアは、図示しない乗場出入口を開閉する。かごドアおよび乗場ドアは、互いに連動して開閉動作を行う。
【0013】
ドアモータ102が駆動することによって、かごドアおよび乗場ドアのそれぞれが開閉動作を行う。言い換えれば、ドアモータ102が駆動することによって、エレベータードア101が開閉動作を行う。
【0014】
エレベーター制御盤103は、ドアモータ102の駆動を制御する。エレベーター制御盤103には、後述する診断運転指令が入力される。エレベーター制御盤103に診断運転指令が入力されることによって、エレベーター制御盤103は、エレベーターの診断運転を行う。
【0015】
エレベーターの診断運転には、エレベータードア101の異常を検出するための運転が含まれている。エレベータードア101の異常を検出するための運転では、エレベーター制御盤103は、ドアモータ102を駆動させて、エレベータードア101に開閉動作を行わせる。また、エレベータードア101の異常を検出するための運転では、エレベーター制御盤103は、エレベータードア101が開閉動作を行う際にドアモータ102に発生するトルクの値を測定する。
【0016】
エレベーターの診断運転において測定されたドアモータ102のトルクの値は、診断運転情報として、エレベーター制御盤103から出力される。
【0017】
遠隔監視装置2は、エレベーター制御盤103に接続されている。診断運転情報取得装置3は、遠隔監視装置2を介して、エレベーター制御盤103に接続されている。
【0018】
診断運転情報取得装置3は、予め設定されたタイミングで診断運転指令を出力する。診断運転情報取得装置3から出力された診断運転指令は、遠隔監視装置2を介して、エレベーター制御盤103に入力される。
【0019】
エレベーター制御盤103から出力された診断運転情報は、遠隔監視装置2を介して、診断運転情報取得装置3に入力される。
【0020】
ドア異常検出装置4は、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。ドア異常検出装置4は、診断運転情報取得装置3に接続されている。エレベータードア101に異常が発生したことをドア異常検出装置4が検出する場合に、ドア異常検出装置4は、診断運転情報取得装置3から診断運転情報を取得する。ドア異常検出装置4によるエレベータードア101に異常が発生したことの検出は、エレベーターの診断運転において行われる。
【0021】
保守作業情報記憶装置6には、保守作業情報が記憶されている。保守作業情報には、エレベータードア101に給油器が設置された時を示す情報が含まれている。また、保守作業情報には、エレベーターの診断運転が行われた時を示す情報が含まれている。
【0022】
給油器設置判定装置5は、エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを判定する。給油器設置判定装置5は、保守作業情報記憶装置6に接続されている。エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを給油器設置判定装置5が判定する場合に、給油器設置判定装置5は、保守作業情報記憶装置6から保守作業情報を取得する。給油器設置判定装置5による給油器が設置されたか否かの判定は、エレベータードア101に給油器が設置された時を示す情報およびエレベーターの診断運転が行われた時を示す情報に基づいて行われる。
【0023】
具体的には、今回のエレベーターの診断運転が行われた時から前回のエレベーターの診断運転が行われた時までの間の期間を給油器設置判定期間とする。給油器設置判定期間は、エレベーターの診断運転が行われた時を示す情報から給油器設置判定装置5によって算出される。給油器設置判定装置5による給油器が設置されたか否かの判定は、エレベータードア101に給油器が設置された時が給油器設置判定期間にあるか否かによって行われる。
【0024】
ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5に接続されている。エレベータードア101に異常が発生したことをドア異常検出装置4が検出する場合に、ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5から給油器設置判定装置5の判定結果を取得する。
【0025】
ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5の判定結果および診断運転情報に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。
【0026】
具体的には、ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5の判定結果およびエレベータードア101が開閉動作をする際にドアモータ102に発生するトルクの値に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。
【0027】
ドア異常検出装置4には、第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値とが予め設定されている。エレベータードア101に給油器が設置されていないと給油器設置判定装置5が判定する場合に、ドア異常検出装置4は、第1閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。ドアモータ102に発生するトルクの値が第1閾値よりも大きい場合に、ドア異常検出装置4は、エレベータードア101に異常が発生したと判定する。ドアモータ102に発生するトルクの値が第1閾値以下である場合に、ドア異常検出装置4は、エレベータードア101に異常が発生していないと判定する。
【0028】
一方、エレベータードア101に給油器が設置されたと給油器設置判定装置5が判定する場合に、ドア異常検出装置4は、第2閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。ドアモータ102に発生するトルクの値が第2閾値よりも大きい場合に、ドア異常検出装置4は、エレベータードア101に異常が発生したと判定する。ドアモータ102に発生するトルクの値が第2閾値以下である場合に、ドア異常検出装置4は、エレベータードア101に異常が発生していないと判定する。
【0029】
次に、エレベーターのドア異常検出システムの動作について説明する。
図2は、
図1のエレベーターのドア異常検出システムの動作を示すフローチャートである。まず、ステップS101において、ドア異常検出装置4が診断運転情報取得装置3から診断運転情報を取得する。
【0030】
その後、ステップS102において、給油器設置判定装置5が保守作業情報記憶装置6から保守作業情報を取得する。
【0031】
その後、ステップS103において、給油器設置判定装置5は、保守作業情報を用いて、エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを判定する。
【0032】
ステップS103において、エレベータードア101に給油器が設置されていないと給油器設置判定装置5が判定した場合に、エレベーターのドア異常検出システムの処理は、ステップS104に進む。ステップS104では、ドア異常検出装置4は、第1閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。
【0033】
一方、ステップS103において、エレベータードア101に給油器が設置されたと給油器設置判定装置5が判定した場合に、エレベーターのドア異常検出システムの処理は、ステップS105に進む。ステップS105では、ドア異常検出装置4は、第2閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。以上により、エレベーターのドア異常検出システムのフローが終了する。
【0034】
以上説明したように、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムは、給油器設置判定装置5と、ドア異常検出装置4と、を備えている。給油器設置判定装置5は、エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを判定する。ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5の判定結果およびエレベータードア101が開閉動作をする際にドアモータ102に発生するトルクの値に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。この構成によれば、エレベータードア101に給油器が設置されたことによってエレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力が増加した場合に、ドア異常検出装置4がエレベータードア101に異常が発生したと誤検出することを抑制することができる。その結果、ドア異常検出装置4の検出の精度を向上させることができる。
【0035】
また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、給油器設置判定装置5による給油器が設置されたか否かの判定は、エレベータードア101に給油器が設置された時を示す情報に基づいて行われる。この構成によれば、エレベータードア101に給油器を設置することによってエレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力が増加する期間を設定することができる。これにより、ドア異常検出装置4の検出の精度を向上させることができる。
【0036】
また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、ドア異常検出装置4によるエレベータードア101に異常が発生したことの検出は、エレベーター1の診断運転において行われている。給油器設置判定装置5による給油器が設置されたか否かの判定は、エレベータードア101に給油器が設置された時が給油器設置期間にあるか否かによって行われる。この構成によれば、エレベータードア101に給油器を設置することによってエレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力が増加する期間を設定することができる。これにより、ドア異常検出装置4の検出の精度を向上させることができる。
【0037】
また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、ドア異常検出装置4には、第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値とが予め設定されている。エレベータードア101に給油器が設置されていないと給油器設置判定装置5が判定した場合に、ドア異常検出装置4は、第1閾値とトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。一方、エレベータードア101に給油器が設置されたと給油器設置判定装置5が判定した場合に、ドア異常検出装置4は、第2閾値とトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。この構成によれば、エレベータードア101に給油器を設置することによってエレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力の増加に対応して、ドア異常検出装置4がエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定することができる。
【0038】
また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムは、保守作業情報記憶装置6を備えている。保守作業情報記憶装置6は、エレベータードア101に給油器が設置された時を示す情報を含む保守作業情報を記憶する。給油器設置判定装置5は、保守作業情報記憶装置6に記憶されている保守作業情報を用いて、エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを判定する。この構成によれば、エレベータードア101に給油器が設置された時を示す情報を給油器設置判定装置5に自動的に入力することができる。その結果、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する保守点検の作業効率を向上させることができる。
【0039】
また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出方法は、給油器設置判定工程と、ドア異常検出工程と、を備えている。給油器設置判定工程では、エレベータードア101に給油器が設置されたか否かを判定する。ドア異常検出工程では、給油器設置判定工程の判定結果およびエレベータードア101が開閉動作をする際にドアモータ102に発生するトルクの値に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。この構成によれば、エレベータードア101に給油器が設置されたことによってエレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力が増加した場合に、ドア異常検出装置4がエレベータードア101に異常が発生したと誤検出することを抑制することができる。その結果、ドア異常検出装置4の検出の精度を向上させることができる。
【0040】
なお、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、今回のエレベーター1の診断運転が行われた時から前回のエレベーター1の診断運転が行われた時までの間の期間を給油器設置判定期間とした。また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、エレベータードア101に給油器が設置された時が給油器設置判定期間にあるか否かによって、給油器設置判定装置5による給油器が設置されたか否かの判定が行われる構成について説明した。しかしながら、これに限らない。例えば、判定する時から予め設定された期間だけ遡った時までの間の期間を給油器設置判定期間としてもよい。言い換えれば、エレベータードア101に給油器が設置された時が、判定する時から予め設定された期間だけ遡った時までの間の期間にあるか否かによって、給油器設置判定装置5による給油器が設置されたか否かの判定が行われる構成であってもよい。この構成であっても、ドア異常検出装置4の検出の精度を向上させることができる。また、この場合に、予め設定された期間としては、任意の値を設定することができる。
【0041】
また、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、ドア異常検出装置4が、第1閾値または第2閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する構成について説明した。給油器の油がエレベータードア101に馴染むことによって、エレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力の増加がなくなる。給油器の油の温度が変化することによって、給油器が設置された時から給油器の油がエレベータードア101に馴染むまでの時間が変化する。したがって、給油器がエレベータードア101に設置された時期、気温などの設置環境に対応して、第1閾値と第2閾値との間の第3閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する構成であってもよい。また、給油器がエレベータードア101に設置された時期、気温などの設置環境に対応して、給油器設置判定装置5に予め設定された期間が調整される構成であってもよい。
【0042】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係るエレベーターのドア異常検出システムを示すブロック図である。エレベーターのドア異常検出システムは、開閉回数情報記憶装置7を備えている。開閉回数情報記憶装置7には、エレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報が記憶されている。
【0043】
ドア異常検出装置4がエレベータードア101に異常が発生したことを検出する際に、ドア異常検出装置4は、開閉回数情報記憶装置7からエレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報を取得する。ドア異常検出装置4は、エレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報、および、エレベータードア101に給油器が設置された時を示す情報を用いて、エレベータードア101に給油器が設置された時からのエレベータードア101の開閉動作の回数を算出する。
【0044】
給油器の油がエレベータードア101に馴染むことによって、エレベータードア101と給油器との間に発生する摩擦力の増加がなくなる。エレベータードア101の開閉回数に対応して、給油器が設置された時から給油器の油がエレベータードア101に馴染むまでの時間が変化する。ドア異常検出装置4は、エレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。
【0045】
言い換えれば、ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5の判定結果、エレベータードア101に給油器が設置された時からのエレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報およびエレベータードア101が開閉動作をする際にドアモータ102に発生するトルクの値に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。
【0046】
具体的には、ドア異常検出装置4には、第4閾値が予め設定されている。エレベータードア101に給油器が設定されたと給油器設置判定装置5が判定する場合であって、エレベータードア101に給油器が設置された時からのエレベータードア101の開閉動作の回数が第4閾値よりも大きい場合に、ドア異常検出装置4は、第1閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。
【0047】
エレベータードア101に給油器が設定されたと給油器設置判定装置5が判定する場合であって、エレベータードア101に給油器が設置された時からのエレベータードア101の開閉動作の回数が第4閾値以下である場合に、ドア異常検出装置4は、第2閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。
【0048】
エレベータードア101に給油器が設定されていないと給油器設置判定装置5が判定した場合には、ドア異常検出装置4は、第1閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する。
【0049】
実施の形態2に係るエレベーターのドア異常検出システムにおけるその他の構成は、実施の形態1に係るエレベーターのドア異常検出システムの構成と同様である。
【0050】
以上説明したように、実施の形態2に係るエレベーターのドア異常検出システムは、エレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報を記憶する開閉回数情報記憶装置7を備えている。ドア異常検出装置4は、給油器設置判定装置5の判定結果、エレベータードア101の開閉動作の回数を示す情報およびエレベータードア101が開閉動作をする際にドアモータ102に発生するトルクの値に基づいて、エレベータードア101に異常が発生したことを検出する。この構成によれば、ドア異常検出装置4が第2閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する期間を短くすることができる。その結果、ドア異常検出装置4の検出の精度を向上させることができる。
【0051】
なお、実施の形態2に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、ドア異常検出装置4が、第1閾値または第2閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する構成について説明した。しかしながら、これに限らない。例えば、エレベータードア101に給油器が設置された時からのエレベータードア101の開閉動作の回数に対応して、第1閾値と第2閾値との間の第3閾値とドアモータ102に発生するトルクの値とを用いてエレベータードア101に異常が発生したか否かを判定する構成であってもよい。この場合に、エレベータードア101の開閉動作の回数が大きくなるにつれて、ドア異常検出装置4では、第3閾値が第1閾値に近い値にする。この構成によれば、ドア異常検出装置4の検出の精度をさらに向上させることができる。
【0052】
また、各実施の形態に係るエレベーターのドア異常検出システムでは、遠隔監視装置2を介して、エレベーター制御盤103と診断運転情報取得装置3とが互いに接続されている構成について説明した。しかしながら、これに限らず、遠隔監視装置2を介さずに、エレベーター制御盤103と診断運転情報取得装置3とが互いに接続されている構成であってもよい。
【0053】
以上、好ましい各実施の形態に係るエレベーターのドア異常検出システムおよび方法について説明したが、上述した各実施の形態に係るエレベーターのドア異常検出システムおよび方法に制限されることはない。特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した各実施の形態に係るエレベーターのドア異常検出システムおよび方法に種々の変形および変換を加えることができる。
【0054】
(付記1)
エレベータードアに給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定装置と、
前記給油器設置判定装置の判定結果および前記エレベータードアが開閉動作をする際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、前記エレベータードアに異常が発生したことを検出するドア異常検出装置と、
を備えているエレベーターのドア異常検出システム。
(付記2)
前記給油器設置判定装置による前記給油器が設置されたか否かの判定は、前記エレベータードアに前記給油器が設置された時を示す情報に基づいて行われる付記1に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
(付記3)
前記給油器設置判定装置による前記給油器が設置されたか否かの判定は、前記エレベータードアに前記給油器が設置された時が、判定する時から予め設定された期間だけ遡った時までの間の期間にあるか否かによって行われる付記2に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
(付記4)
前記ドア異常検出装置による前記エレベータードアに異常が発生したことの検出は、エレベーターの診断運転において行われており、
前記給油器設置判定装置による前記給油器が設置されたか否かの判定は、前記エレベータードアに前記給油器が設置された時が、今回の前記エレベーターの診断運転が行われた時から前回の前記エレベーターの診断運転が行われた時までの間の期間にあるか否かによって行われる付記2または付記3に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
(付記5)
前記エレベータードアに前記給油器が設置された時を示す情報を含む保守作業情報を記憶する保守作業情報記憶装置を備え、
前記給油器設置判定装置は、前記保守作業情報記憶装置に記憶されている前記保守作業情報を用いて、前記エレベータードアに前記給油器が設置されたか否かを判定する付記2から付記4までの何れか一項に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
(付記6)
前記ドア異常検出装置には、第1閾値と、前記第1閾値よりも大きい第2閾値とが予め設定されており、
前記ドア異常検出装置は、前記エレベータードアに前記給油器が設置されていないと前記給油器設置判定装置が判定した場合に、前記第1閾値と前記トルクの値とを用いて前記エレベータードアに異常が発生したか否かを判定し、前記エレベータードアに前記給油器が設置されたと前記給油器設置判定装置が判定した場合に、前記第2閾値と前記トルクの値とを用いて前記エレベータードアに異常が発生したか否かを判定する付記1から付記5までの何れか一項に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
(付記7)
前記エレベータードアの開閉動作の回数を示す情報を記憶する開閉回数情報記憶装置を備え、
前記ドア異常検出装置は、前記給油器設置判定装置の判定結果、前記エレベータードアの開閉動作の回数を示す情報および前記エレベータードアが開閉動作をする際に前記ドアモータに発生する前記トルクの値に基づいて、前記エレベータードアに異常が発生したことを検出する付記1から付記6までの何れか一項に記載のエレベーターのドア異常検出システム。
(付記8)
エレベータードアに給油器が設置されたか否かを判定する給油器設置判定工程と、
前記給油器設置判定工程の判定結果および前記エレベータードアが開閉動作をする際にドアモータに発生するトルクの値に基づいて、前記エレベータードアに異常が発生したことを検出するドア異常検出工程と、
を備えているエレベーターのドア異常検出方法。
【符号の説明】
【0055】
1 エレベーター、2 遠隔監視装置、3 診断運転情報取得装置、4 ドア異常検出装置、5 給油器設置判定装置、6 保守作業情報記憶装置、7 開閉回数情報記憶装置、101 エレベータードア、102 ドアモータ、103 エレベーター制御盤。