(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172735
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】横編機
(51)【国際特許分類】
D04B 35/10 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
D04B35/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090658
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】羽山 徹
(72)【発明者】
【氏名】向井 光作
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054KA05
4L054NA01
4L054NA02
4L054NA03
4L054NA05
(57)【要約】
【課題】前面のカバーが前方へ傾斜していても、動作を調整する際に作業者が容易に操作パネルに近付くことができて、操作パネルの操作性を向上させ得る横編機を提供する。
【解決手段】天井板12の左右方向中央に入力部61及び表示パネル62を有する操作パネル6を設けた横編機1において、天井板12の天板部15の下方に、操作パネル6を前後方向へスライドさせるスライド手段7を設ける。スライド手段7に、互いにスライド自在なアウタレール71及びインナレール72と、両レール71,72間で転動するスライドボール74とを設ける。天井板12に対する前後方向の4つのスライド位置において操作パネル6を位置保持する位置保持手段8を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機本体の天井板に設けられた操作パネルを備える横編機において、
前記天井板に対し前記操作パネルを前後方向へスライドさせるスライド手段が設けられていることを特徴とする横編機。
【請求項2】
前記スライド手段は、前記天井板の天板部の下方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の横編機。
【請求項3】
前記天井板に対する前後方向の1つ又は複数のスライド位置において前記操作パネルを位置保持する位置保持手段が設けられており、
前記位置保持手段による前記操作パネルの位置保持は、当該操作パネルの入力部への操作力よりも大きな外力の作用により解除されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の横編機。
【請求項4】
前記位置保持手段は、
前後方向へ延びる押圧面を有し、かつこの押圧面に1つ又は複数の窪みが前記操作パネルのスライド位置に対応して設けられた押圧受け部と、
前記押圧面に対し押圧した状態で当該押圧面を滑走しつつ前記窪みに嵌り込む押圧ボールを有するボールプランジャとを備え、
前記押圧受け部及び前記ボールプランジャのいずれか一方が前記操作パネル側に設けられ、他方が前記天井板側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の横編機。
【請求項5】
前記操作パネルは、前記天井板の左右方向中央に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の横編機。
【請求項6】
前記スライド手段は、
互いに前後方向にスライド自在に支持されたアウタレール及びインナレールと、
前記アウタレール及びインナレールの間で転動するスライドボールとを備え、
前記アウタレール及びインナレールのいずれか一方が前記操作パネル側に設けられ、他方が前記天井板側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の横編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針床の長手方向を編幅方向とする横編機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機は、針床に多数の針溝を並設し、各針溝に収容される編針を歯口に進退させて編地を編成する。編針の駆動は編幅方向に往復走行するキャリッジが搭載するカムによって行われる。横編機の編地編成では、品質の良い編地を編成するために調整が必要な場合がある。調整時には、キャリッジ速度を通常編成時の速度よりも低速に切換えて、編針の動作を確認したりする必要がある。
【0003】
近年、運転状況の切換えを含む各種操作や運転状況のパネル表示が可能な操作パネルを備える横編機も用いられている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1の操作パネルは編幅方向の一方側に固定され、前面のカバーは前方へ傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国意匠登録CN301531021S号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の前面のカバーのように、前方へ傾斜していると、横編機の動作を操作パネルに近付いて調整する作業者が、前面のカバーによって操作パネルに近付き難いことがあり、操作パネルの操作性が損なわれる。
【0006】
本発明の目的は、前面のカバーが前方へ傾斜していても、横編機の動作を調整する際に作業者が容易に操作パネルに近付くことができて、操作パネルの操作性を向上させることができる横編機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、横編機本体の天井板に設けられた操作パネルを備える横編機において、前記天井板に対し前記操作パネルを前後方向へスライドさせるスライド手段を設けることを特徴としている。
【0008】
また、本発明で、前記スライド手段を、前記天井板の天板部の下方に設けることを特徴としてもよい。
【0009】
また、本発明で、前記天井板に対する前後方向の1つ又は複数のスライド位置において前記操作パネルを位置保持する位置保持手段を設ける。そして、前記位置保持手段による前記操作パネルの位置保持を、当該操作パネルの入力部への操作力よりも大きな外力の作用により解除することを特徴としてもよい。
【0010】
また、本発明で、前記位置保持手段に、前後方向へ延びる押圧面を有し、かつこの押圧面に1つ又は複数の窪みが前記操作パネルのスライド位置に対応して設けられた押圧受け部と、前記押圧面に対し押圧した状態で当該押圧面を滑走しつつ前記窪みに嵌り込む押圧ボールを有するボールプランジャとを備える。そして、前記押圧受け部及び前記ボールプランジャのいずれか一方を前記操作パネル側に設け、他方を前記天井板側に設けることを特徴としてもよい。
【0011】
更に、本発明で、前記操作パネルを、前記天井板の左右方向中央に設けることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明で、前記スライド手段に、互いに前後方向にスライド自在に支持されたアウタレール及びインナレールと、前記アウタレール及びインナレールの間で転動するスライドボールとを備える。そして、前記アウタレール及びインナレールのいずれか一方を前記操作パネル側に設け、他方を前記天井板側に設けることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、天井板に対し操作パネルを前後方向へスライドさせるスライド手段を設けることで、横編機の動作を調整する際に操作パネルを前方へスライドさせると、作業者が容易に操作パネルに近付くことができ、操作パネルの操作性を向上させることができる。しかも、操作パネルの不使用時に、メンテナンス作業の妨げにならないように後方へスライド移動させて退避させておくこともできる。
【0014】
また、本発明によれば、スライド手段を天井板の天板部の下方に設けることで、天板部上においてスライド手段によって阻害されることなく糸パッケージを設置することができる。
【0015】
また、本発明によれば、天井板に対する前後方向の1つ又は複数のスライド位置において位置保持手段により操作パネルを位置保持させておくと、入力部への操作力では位置保持が解除されることなく入力操作を円滑に行うことができる。また、位置保持手段による操作パネルの位置保持を、入力部への操作力よりも大きな外力の作用により解除することで、操作パネルの位置保持の解除を円滑に行うことができる。
【0016】
また、本発明によれば、前後方向へ延びる押圧受け部の押圧面をボールプランジャの押圧ボールが滑走しつつ窪みに嵌り込むことで、操作パネルをスライド位置で円滑に位置保持することができる。しかも、押圧面を滑走する押圧ボールによって操作パネルを小さな抵抗でスライドさせることができる。
【0017】
更に、本発明によれば、操作パネルを天井板の左右方向中央に設けることで、操作パネルに対し左右どの位置からでもアクセスし易くなって操作性の向上をさらに図ることができる。
【0018】
また、本発明によれば、互いに前後方向にスライド自在なアウタレール及びインナレールと両レール間で転動するスライドボールとでスライド手段を構成することで、操作パネルを小さい力で円滑にスライドさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る横編機の構成を簡略化して前方から示す正面図である。
【
図2】
図1のA-A線で切断した操作パネルの後端スライド位置での天井板の縦断側面図である。
【
図3】操作パネルの前端停止位置での天井板の縦断側面図である。
【
図4】スライド手段を前方から視た拡大正面図である。
【
図5】
図2のB-B線で切断したスライド手段の縦断正面図である。
【
図6】スライド手段の押圧受け部及びボールプランジャを側方から視た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図6は本発明の実施の形態に係る横編機1で、主として操作パネル6に関する構成を、簡略化して示す。各図で対応する部分は、同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。また、説明の便宜上、図示を省略する部分がある。
【実施例0021】
図1に示す横編機1は、横編機本体10を備え、同図の横方向を編幅方向として、多数の針溝が併設される針床2を有している。キャリッジ3は、駆動部4からのベルトを介する駆動などで、編幅方向に往復走行しながら、搭載するカムで各針溝に収容される編針を歯口に進退させて編地を編成する。針床2や駆動部4などの横編機本体10の各部は、フレーム11で支持される。天井板12の上方に、天ばね支持部13が架設される。天ばね支持部13は、編地編成の際に編針に供給する編糸の張力を調整する天ばね装置を並べて支持する。なお、
図1において、紙面手前奥方向を前後方向とし、これに直交する紙面横方向を左右方向とし、紙面上下方向を上下方向とする。
【0022】
天井板12は、糸パッケージを多数載置するためにも使用される。横編機1の運転状態などの制御は、フレーム11で支持される制御部5で行われる。横編機本体10の正面側には、開閉可能な安全カバー14が設けられる。編地の編成は、デザインシステムなどで作成される編成データに従う自動運転として、安全カバー14を閉じている状態の通常編成で行われる。通常編成は、編地を効率的に編成することが可能な、たとえば1.2m/sのキャリッジ走行速度で行われる。
【0023】
横編機本体10は、天井板12上に設けられた操作パネル6を備えている。操作パネル6は、各種操作を入力する入力部61(
図4に表れる)を備える。この入力部61には、当該入力部61への操作に基づく動作状態などを表示する表示パネル62が設けられている。表示パネル62は、画像の表示とともに、タッチパネルとしての入力機能も有している。入力部61は、各種スイッチなどを備える。操作パネル6と制御部5とは通信可能とされている。制御部5は、入力部61への操作に基づく横編機1の動作状態の制御と、表示パネル62での表示を行わせる。
【0024】
操作パネル6は、天井板12の左右方向中央に設けられ、操作パネル6に対し左右どの位置からでもアクセスし易くなって操作性の向上を図る上で有利なものとなる。なお、操作パネル6は、天井板12の左右方向中央部付近はもちろんのこと、天井板12の左右方向のどの位置に設けられていてもよい。
【0025】
天井板12の天板部15の下方には、天井板12に対し操作パネル6を前後方向へスライドさせる左右一対のスライド手段7,7(
図5に表れる)が設けられている。この各スライド手段7によって、糸パッケージが阻害されることなく天板部15上に設置することができる。そして、横編機1の動作を調整する際に操作パネル6をスライド手段7によって天井板12から離れる前方へスライドさせると、作業者が容易に操作パネル6に近付くことができ、操作パネル6の操作性を向上させることができる。
【0026】
図2~
図6は、スライド手段7に関連する構成を示す。スライド手段7は、操作パネル6を支持する支持フレーム63(操作パネル6側)と、天井板12の天板部15(天井板12側)との間に設けられている。支持フレーム63は、天板部15に対しスライド手段7によって前後方向へスライド自在に支持されている。支持フレーム63は、下方に開口する断面略コの字状に形成された状態で前後方向へ延び、その前端に上下方向へ延びる支持アーム64の下端が固着されている。支持アーム64の上端は、操作パネル6の後面より突出するブラケット65に左右方向へ延びる軸66を介して支持され、操作パネル6の上下方向への首振りを可能にしている。なお、支持アーム64の上端を、ブラケット65に左右方向へ延びる軸に加え上下方向へ延びる軸をも介して支持することで、操作パネル6の上下方向への首振りのみならず左右方向への首振りをも可能にしていてもよい。
【0027】
天板部15の下面の左右方向中央には、互いの垂直面同士を内側向きに面対向させた状態で前後方向へ延びる略L字状のL型ブラケット16,16の水平面がそれぞれ固着されている。各スライド手段7は、各L型ブラケット16の垂直面の内側面にそれぞれ固定されたアウタレール71と、支持フレーム63の左右両側の外側面にそれぞれ固定されたインナレール72とを備えている。更に、各スライド手段7は、両レール71,72の間で転動するスライドボール74を介して当該両レール71,72の間にスライド自在に設けられた中間レール73を備え、それぞれスライド自在な各レール71~73によって、操作パネル6を小さい力で円滑にスライドさせることができる。符号75は、各レール71~73の間においてスライドボール74を最適な位置に位置付けるためのリテーナである。なお、インナレール72を天井板12側に設け、アウタレール71を操作パネル6側に設けていてもよい。
【0028】
操作パネル6と天井板12との間には、天井板12に対する前後方向の4つのスライド位置において操作パネル6を位置保持する位置保持手段8が設けられている。位置保持手段8は、前後方向へ延びる略矩形断面形状の押圧受け部81と、押圧受け部81の下面82(押圧面)に対し押圧した状態で当該下面82を滑走する押圧ボール83を有するボールプランジャ84とを備え、操作パネル6を小さな抵抗でスライドさせることができる。
【0029】
図5に示すように、押圧受け部81は、右側のスライド手段7におけるアウタレール71の左方においてそれよりも前方に位置する支持フレーム63の下面に前端が固着されて後方へ延びている。ボールプランジャ84は、右側のスライド手段7におけるアウタレール71の左方においてそれよりも前方に位置する天板部15の下面に鉤状のブラケット17を介して固着されている。なお、押圧受け部81を天井板12側に固着し、ボールプランジャ84を操作パネル6側に固着していてもよい。
【0030】
押圧受け部81の下面82には、前後方向等間隔置きに4つの窪み85が操作パネル6の4つのスライド位置にそれぞれ対応して設けられている。ボールプランジャ84の押圧ボール83は、押圧受け部81の下面82の各窪み85に嵌り込むと、その都度、下面82での滑走が停止し、各スライド位置に応じた操作パネル6の位置保持を円滑に行うことができる。また、操作パネル6の不使用時などに、操作パネル6を天井板12に近付く後方へスライド移動させて最も前方の窪み85に押圧ボール83を嵌め込んでおくと、メンテナンス作業の妨げにならないように操作パネル6を退避させることもできる。なお、位置保持手段8により位置保持される操作パネル6のスライド位置は、4つに限らず、1つ以上であればいくつあってもよい。
【0031】
位置保持手段8は、入力部61への操作力では操作パネル6の位置保持が解除されることがなく、入力操作を円滑に行わせることができる。一方、位置保持手段8による操作パネル6の位置保持は、入力部61への操作力よりも大きな外力の作用、たとえば作業者によって操作パネル6を前後方向へ強制的にスライドさせるような外力を作用させることで、押圧ボール83が窪み85から抜け出して解除されるので、操作パネル6の位置保持の解除を円滑に行うことができる。
【0032】
なお、本実施例では、各レール71~73及びスライドボール74を備えた左右一対のスライド手段7,7を用いたが、アウタレール、インナレール及びスライドボールにより構成されたシンプルなスライド手段や、単一又は左右一対のリニアガイドを用いたスライド手段であってもよい。
【0033】
また、スライド手段7は手動に限らず、モータなどの駆動源により操作パネル6を自動で前後方向へスライドさせるようにしてもよい。その場合、操作パネル6のスライド位置での位置保持が電磁ブレーキなどの位置保持手段によって行われていてもよい。
【0034】
更に、位置保持手段8を任意の複数のスライド位置において押圧ねじなどの押圧力により操作パネル6が位置保持されるようにしてもよい。また、ボールプランジャ84の代わりにバネ付勢された爪を押圧面上の窪みや切欠などに嵌め込むことにより、位置保持手段8による操作パネル6の位置保持が行われるようにしてもよい。