(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172738
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】定着パッド
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090662
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 幸宗
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 槙佑
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033BA11
2H033BB04
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】経時での摺動部材の剥がれが防止された、耐久性の高い定着パッドを提供する。
【解決手段】本発明は、トナー定着装置において、加圧ロールと対向して配置される定着パッド10であって、基材11と、基材11の加圧ロールと対向する側の面上に、接着剤12及び摺動部材13をこの順に備え、摺動部材13が、フッ素繊維を含む、少なくとも一枚の織物又は編物からなり、摺動部材13上に、シリコーンオイルを0.0128g/cm
2塗布し、所定の加熱条件で加熱後の、摺動部材13の接着力が、0.35N以上である定着パッド10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー定着装置において、加圧ロールと対向して配置される定着パッドであって、
基材と、前記基材の前記加圧ロールと対向する側の面上に、接着剤及び摺動部材をこの順に備え、
前記摺動部材が、フッ素繊維を含む、少なくとも一枚の織物又は編物からなり、
前記摺動部材上にシリコーンオイルを0.0128g/cm2塗布した後、前記定着パッドを下記2つの加熱条件のいずれで加熱しても、下記測定条件で測定される前記摺動部材の接着力が、0.35N以上である定着パッド。
<加熱条件>
条件1:220℃雰囲気で48時間加熱する。
条件2:240℃雰囲気で48時間加熱する。
<測定条件>
接着された摺動部材の長さ方向の一端をクリップで固定し、他端に向かって、180度方向に剥離するときの接着力を以下の条件で測定する。
評価速度:300mm/min
評価時間:50sec
測定データ:伝熱板側面に穴が形成された位置の接着力を避けた、10秒間の接着力の平均値
【請求項2】
前記接着剤が、シリコーンゴム接着剤である請求項1記載の定着パッド。
【請求項3】
前記摺動部材の厚さが、300μm以上1000μm以下である請求項1記載の定着パッド。
【請求項4】
前記基材が、アルミニウム又は銅である請求項1記載の定着パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、記録媒体上に転写されたトナーを、加圧と同時に加熱することにより、記録媒体にトナーを定着させる定着装置が装備されている。従来、定着装置は、定着ローラに巻き掛けられた無端ベルトを加熱し、その定着ローラと対抗する加圧ローラとの間で、トナーが転写された記録媒体を圧接し、トナーを熱溶融させることによって、トナーを定着させていた。
近年、定着ローラの代わりに、定着パッドを用いて、定着パッドと加圧ローラとの間に掛けられた定着ベルトを介して定着を行う定着装置が注目されている。例えば、特許文献1には、摺動部材の表面にフッ素繊維等からなる織物又は編物を摺動方向と平行に巻きつけて接着固定した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、摺動部材と、摺動部材に接して配置される定着ベルトとの間の摩擦を軽減して摺動性を上げる等の理由で、摺動部材の表面に潤滑剤が塗布される場合がある。このような場合、経時で潤滑剤が織物又は網物に浸み込み、接着剤まで到達し、接着剤の効力を低下させ、摺動部材が剥がれるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、経時での摺動部材の剥がれが防止された、耐久性の高い定着パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トナー定着装置において、加圧ロールと対向して配置される定着パッドであって、基材と、基材の加圧ロールと対向する側の面上に、接着剤及び摺動部材をこの順に備え、摺動部材が、フッ素繊維を含む、少なくとも一枚の織物又は編物からなり、摺動部材上にシリコーンオイルを0.0128g/cm2塗布した後、定着パッドを下記2つの加熱条件のいずれで加熱しても、下記測定条件で測定される摺動部材の接着力が、0.35N以上である定着パッドである。
<加熱条件>
条件1:220℃雰囲気で48時間加熱する。
条件2:240℃雰囲気で48時間加熱する。
<測定条件>
接着された摺動部材の長さ方向の一端をクリップで固定し、他端に向かって、180度方向に剥離するときの接着力を以下の条件で測定する。
評価速度:300mm/min
評価時間:50sec
測定データ:伝熱板側面に穴が形成された位置の接着力を避けた、10秒間の接着力の平均値
【0006】
接着剤は、シリコーンゴム接着剤であることが好ましい。
【0007】
摺動部材の厚さは、300μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0008】
基材は、アルミニウム又は銅であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経時での摺動部材の剥がれが防止された、耐久性の高い定着パッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の定着パッドの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の定着パッドを備えたトナー定着装置の概略断面図である。
【
図3】本発明の定着パッドの他の実施形態を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の定着パッドを備えた画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0012】
[定着パッド]
本発明の定着パッドは、トナー定着装置20(
図2参照)における、加圧ロール23と対向して配置される定着パッド10である。
定着パッドの一実施形態について
図1を参照して説明する。
図1は定着パッドの長手方向に直交する方向(短手方向)の断面を示している。
図1に示すように、定着パッド10は、基材11と、基材11の加圧ロールと対向する側の面11a上に、接着剤12及び摺動部材13をこの順に備えるものである。基材11と摺動部材13とは接着剤12で接着されている。以下、基材11の加圧ロールと対向する側の面11aは、摺動部材13と接する面ともいう。
以下、各構成の詳細を説明する。
【0013】
(基材)
基材11は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、銅、鉄、ステンレス鋼、真鍮、硫黄快削鋼(SUM)、及びこれらの金属の表面にニッケル、亜鉛めっきを施したものを用いることができる。熱伝導性の観点から、アルミニウム又は銅が好ましい。
基材11は、1つの材質で構成されていてもよく、2以上の材質から構成されていてもよい。また、基材11は、積層構造でもよい。
【0014】
図1に示す基材11においては、加圧ローラ23との間でニップを形成する領域は平坦であって、全体でU字状であるが、
図3に示すように、基板11全体が円弧状であってもよい。基材11がU字状又は円弧状であることにより、定着ベルト10が、定着パット10の角に引っ掛かることなく良好に摺動することができる。
【0015】
基材11の長手方向の長さは、特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。例えば、一態様において、基材11の長手方向の長さは200mm以上400mm以下が好ましく、250mm以上370mm以下がより好ましい。
【0016】
基材11の短手方向は、特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。例えば、基材11の短手方向は、8mm以上30mm以下であることが好ましく、15mm以上25mm以下であることがより好ましい。
【0017】
基材11の厚さは、強度と熱伝導性の観点から、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上0.6mm以下であることがより好ましい。
【0018】
(接着剤)
接着剤12は、摺動部材13と基材11とを良好に接着させる観点から、シリコーンゴム接着剤であることが好ましい。シリコーンゴム接着剤としては一液硬化型ゴムが好ましく、一液型液状シリコーンゴム、一液型シリコーンRTVゴム等が挙げられる。
市販のものとしては、KE-1880(信越化学工業株式会社製)、KE-1833(信越化学工業株式会社製)、TSE322(モメンティブジャパン製)等が挙げられる。
【0019】
(摺動部材)
摺動部材13は、フッ素繊維を含む、少なくとも1枚の織物又は編物からなる。平滑性を長期に亘って維持する観点から、織物が好ましい。フッ素繊維の織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。
フッ素繊維としては、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリフルオルエチレン繊維が好ましい。
ポリテトラフルオロエチレンの材料としては、テトラフルオロエチレンのホモポリマー、又は全体の90モル%以上、好ましくは95モル%以上がテトラフルオロエチレンであるコポリマーが挙げられる。上記テトラフルオロエチレンに共重合可能な単量体としては、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフッ化ビニル化合物やさらにプロピレン、エチレン、イソブチレン、スチレン、アクリロニトリルなどのビニル化合物が挙げられる。摺動面の低摩擦化の観点からテトラフルオロエチレン単位の含有量は多い方が好ましく、ホモポリマーであることがより好ましい。
【0020】
フッ素繊維は、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸のいずれもであってもよい。モノフィラメント又はマルチフィラメントからなる繊維の総繊度としては、50~2000dtexが好ましく、さらに好ましくは100~1000dtexの範囲内であることが好ましい。繊維の総繊度が50dtex以上であると繊維の強力が強くなり、糸切れに対する抵抗性が増す。2000dtex以下であれば繊維を並列配置させたときの表面の凹凸が少ないので、摺動性への影響がなく、かつ、柔軟性が高いので摺動部材の形状に沿いやすくなる。
【0021】
-粗さパラメータの測定-
レーザー顕微鏡(VK-1000、株式会社キーエンス製)を用い、摺動部材の表面をレーザーで透過し、解析ソフトの線粗さ測定にて、繊維の編み込みの谷の位置にならないように水平線を引き、以下の各種粗さパラメータの観察をした。
【0022】
--輪郭曲線要素の平均長さRSm--
摺動部材13の、輪郭曲線要素の平均長さRSmは、100μm以上1000μm以下であることが好ましく、300μm以上800μm以下であることがより好ましい。
輪郭曲線要素の平均長さRSmとは、目開きの横方向(摺動部材の平面方向)の大きさを意味する。平均長さRSmが100μm以上であることにより、空間に潤滑剤が適度に保持され、1000μm以下であることにより、潤滑剤が浸み込みにくくなる。
【0023】
--二乗平均平方根高さRq--
摺動部材13の、二乗平均平方根高さRqは、1μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。
二乗平均平方根高さRqとは、目開きの高さ方向の大きさを意味する。二乗平均平方根高さRqが1μm以上であることにより、空間に潤滑剤が適度に保持され、40μm以下であることにより、潤滑剤が浸み込みにくくなる。
【0024】
摺動部材13は、上記の織物又は編物をからなる摺動部材13を熱プレス加工、冷間プレス加工したものであることが好ましい。熱プレス加工は、公知の熱プレス加工機で行うことができる。加熱温度は、摺動部材13の材質にもよるが、100℃以上200℃以下であることが好ましい。圧力は、摺動材料13の材質及び所望の厚さによるが、2MPa以上10MPa以下であることが好ましい。
摺動部材13に熱プレス加工等がされていることにより、より平滑な摺動面13aを得ることができ、高品質な画像を得ることができる。
【0025】
-厚さ-
摺動部材13の厚さt13は、300μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0026】
定着パッド10は、定着ベルトとの摺動性向上の観点から、摺動部材13の表面にシリコーンオイルが塗布される場合がある。定着装置での環境温度は200℃を超えることが多い。しかしながら、本発明の定着パッド10を用いた定着装置においては、このような高温条件にあっても、シリコーンオイルの浸み込みがないため接着剤の性能が低下することなく、高い接着性を維持することができる。
【0027】
(接着力)
摺動部材13の基材11との接着力は、0.35N以上である。好ましくは、0.45N以上であり、より好ましくは0.50N以上である。
接着力の測定は以下のように行う。
まず、定着パッド10を少なくとも2つ用意する。次に、定着パッド10の摺動部材13上に、シリコーンオイルを0.0128g/cm2塗布する。次に、定着パッド10の一方を下記加熱条件1で加熱し、他方を加熱条件2で加熱する。加熱後の定着パッド10について、下記の測定条件で接着力を測定する。なお、加熱機器を下記温度に設定することにより、雰囲気及び定着部材が下記温度に加熱される。
<加熱条件>
条件1:220℃雰囲気で48時間加熱する。
条件2:240℃雰囲気で48時間加熱する。
<測定条件>
接着された摺動部材の長さ方向の一端をクリップで固定し、他端に向かって、180度方向に剥離するときの接着力を以下の条件で測定する。
評価速度:300mm/min
評価時間:50sec
測定データ:伝熱板側面に穴が形成された位置の接着力を避けた、10秒間の接着力の平均値
【0028】
本発明の定着パッド10は、上記いずれの加熱条件で加熱されても、接着力が、0.35N以上という、強固な接着力を有するものである。つまり、定着装置のような高温の雰囲気でも、強固な接着力を維持することができ、摺動部材が剥がれず、耐久性の高い定着パッドを得ることができる。
【0029】
[定着パッドの作製方法]
定着パッドは、例えば、以下のように作製することができる。
まず、基材11の摺動部材13を接着する面11aをアルコール等で清掃する。
次に、基材11の大きさより大きく裁断した摺動部材13を作業台に載置し、その上に、バーコーター、スキージー等により、接着剤12を塗布する。
そして、接着剤12が塗布された摺動部材13と、その上に配置された基材11とを、基材11と同型の金型に設置して、加熱及び加圧しながら接着剤12を硬化させる(以下、プレス工程とも記載する。)。加熱温度は、摺動部材13の材質及び厚さによるが、100℃以上200℃以下であることが好ましい。また、圧力は、摺動材料の材質及び所望の厚さによるが、2MPa以上10MPa以下であることが好ましい。
上記プレス工程においては、1次プレス工程と2次プレス工程とを有することがより好ましい。2次プレス工程の圧力は、1次プレス工程の圧力より、大きいことが好ましい。
最後に、余分な摺動部材13を切除して、定着パッド10を完成させる。
【0030】
接着剤12により、基板11と摺動部材13とが強固に接着されるため、摺動部材13のずれ及び緩みがなく、高品質な画像を得ることができる。
【0031】
接着剤12の材質が、シリコーンゴムであると、伸びのある素材であることから摺動部材のずれに対し応力を吸収するという効果がある。さらに、定着ベルトと接触して使用される際に、柔軟に変形するため、定着ベルトへの負荷も低減することができる。
【0032】
その実施形態における定着パッド10は、摺動部材13が、基材11の加圧ロール23と対向する側の面11a全面に設けられている。面11a全面に設けられていることにより、定着ベルト10が、摺動部材13の角で引っ掛かることなく、良好に摺動することができる。
なお、摺動部材13は、面11a全面に設けられていなくてもよく、加圧ロール23と所望のニップ幅が確保できる領域に設けられていればよい。
【0033】
基材11の摺動部材13を接着する面11aに、接着剤12を塗布する前に、プライマーを塗布してプライマー層を設けてもよい。これにより、基材11と接着剤12の接着がより強固となる。プライマーとしては、NO.33(信越化学工業株式会社製)又は、NO.31(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0034】
本発明の定着パッド10は、
図4に示すように、画像形成装置のトナー定着装置20に用いられる。
定着パッド10は、加圧ローラ23と対向して配置され、所定のニップ幅で互いに圧接されている。加圧ローラ23は、軸体24の外周に弾性体25及び被覆層26を備え、駆動手段(不図示)によって回転駆動する。定着パッド10には定着ベルト21が巻き掛けられており、加圧ローラ23が回転することで、定着ベルト21は従動回転する。
定着パッド10は加熱装置22に接続されており、加熱装置22によって定着パッド10の摺動面13aが加熱されることで、定着ベルト21が加熱される。加圧ローラも、また加熱手段(不図示)によって加熱されている。定着ベルト21及び加圧ローラ23が加熱された状態で、定着ベルト21と加圧ローラ23との間に現像剤42が転写された記録媒体36が搬送されて圧接されると、現像剤42が加熱及び加圧されることにより、記録媒体36に定着される。
【0035】
[画像形成装置]
次に、本発明の像担持体用クリーニングローラを備えた画像形成装置の一実施形態について
図4を参照して説明する。
【0036】
図4に示すように、画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、像担持体31の周囲に配置された、帯電ローラ32、露光手段33、現像手段40、転写ローラ34、像担持体用クリーニングローラ35、記録媒体36の搬送方向下流側にトナー定着装置20を備えている。トナー定着装置20は、上記したように、加圧ローラ、加圧ローラと対向して配置された定着パッド10、加熱装置22、定着ベルト(無端ベルト)21を備えている。加圧ローラ23にも加熱装置(不図示)が接続されている。
現像手段40は、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。現像剤42は、一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
【0037】
トナー定着装置20は、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させる。加熱装置を備えている。この定着手段20は、記録体36を通過させる開口28を有する筐体27内に、定着パッド10と、無端ベルト21と、定着パッド10と対向して配置された加圧ローラ23とを備え、無端ベルト21を介して定着パッド10と加圧ローラ23とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。
【0038】
画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電ローラ32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給され、静電潜像が現像される。次いで、現像剤像は像担持体31と転写ローラ34との間に搬送される記録媒体36上に転写される。この記録媒体36はトナー定着装置20に搬送され、現像剤像が永久画像として記録媒体36に定着される。このようにして、記録媒体36に画像を形成することができる。現像剤像が転写された後の像担持体31は、帯電ローラ32の上流側に配設された像担持体用クリーニングローラ35によって、外周面に付着又は残存する現像剤が除去される。
【0039】
本実施形態の画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、像担持体に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上像形成装置、各色の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0040】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
【0041】
この発明に係る画像形成装置30は、上記実施形態に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、画像形成装置として、各種の画像形成装置が挙げられ、高速で画像を形成できる画像形成装置が好適に挙げられる。
【実施例0042】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
以下の材料を用いて、定着パッドを作製した。
基材:銅板
摺動部材:フッ素繊維、厚み500μm
作製前の摺動部材表面:輪郭曲線要素の平均長さRsm498.1μm、二乗平均平方根高さRq11.5μm
接着剤:絶縁接着剤(商品名「TSE322」、モメンティブジャパン社製)
銅板上に、接着剤を塗布し、200℃、2.5MPaで2分間プレス後、摺動部材を、摺動部材表面側を接着剤に接するように配置し、200℃、5MPaで、2分間プレスした。
【0044】
[実施例2から6及び比較例1から4]
摺動部材として、表面の輪郭曲線要素の平均長さRsm及び二乗平均平方根高さRqが表1に示すものを用いたこと以外は、実施例1と同様に定着パッドを作製した。
【0045】
[評価]
上記実施例及び比較例の定着パッドについて以下の評価をした。評価結果を表1に示す。
【0046】
(接着力の測定)
実施例又は比較例の定着パッドの摺動部材の表面に、以下の3種類のシリコーンオイルを、表1に示す組み合わせで、0.0128g/cm2塗布した。
・KF-968-100CS(信越化学工業株式会社製)
・KF-965-100CS(信越化学工業株式会社製)
・KF-965-1000CS(信越化学工業株式会社製)
【0047】
次に、シリコーンオイルを塗布した定着パッドを、以下の2つの条件で、表1に示す組み合わせで加熱した。
<加熱条件>
・220℃雰囲気で48時間加熱
・240℃雰囲気で48時間加熱
【0048】
<測定条件>
加熱取出し後、翌日に接着力を測定した。
接着された摺動部材の長さ方向の一端をクリップで固定し、他端に向かって、つまり180度方向に剥離するときの接着力を以下の測定条件で測定した。
測定器:電動計測スタンド(商品名「MH2-500N-V900」、株式会社イマダ製)
評価速度:300mm/min
評価時間:50sec
測定データ:伝熱板側面に穴が形成された位置の接着力を避けた、10秒間の接着力の平均値
【0049】
【0050】
表1に示すように、本発明の定着パッドは、高温の雰囲気でも、0.35N以上の強固な接着力を維持することができ、摺動部材が剥がれず、耐久性の高い定着パッドを得ることができる。