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  • 特開-粘着剤及び粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172744
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】粘着剤及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 139/00 20060101AFI20241205BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
C09J139/00
C09J11/02
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090671
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】祝 旭美
(72)【発明者】
【氏名】清水 格
(72)【発明者】
【氏名】竹内 塁
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB02
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA06
4J004FA08
4J040BA202
4J040DF031
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040MA09
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA05
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】粘着剤層を備えた粘着シートであって、対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力を維持でき、対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく容易に剥離できる粘着シートと、前記粘着剤層を形成するための粘着剤と、の提供。
【解決手段】マイクロカプセルが分散された粘着剤であって、前記粘着剤は、Tgが-60~-40℃であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位(a1)と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位(a2)と、を有し、アルキル基の炭素数が4以上であるアクリル樹脂(A)を含有し、アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、構成単位(a1)の量の割合が50~99.5質量%、構成単位(a2)の量の割合が0.5~5質量%であり、マイクロカプセルは、その外殻がポリウレアからなり、常温で液状の可塑剤(Z)を内包する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルが分散された粘着剤であって、
前記粘着剤は、ガラス転移温度が-60~-40℃であるアクリル樹脂(A)を含有し、
前記アクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位(a1)と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位(a2)を有し、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキルエステルを構成しているアルキル基の炭素数が4以上であり、
前記アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、前記構成単位(a1)の量の割合が、50~99.5質量%であり、
前記アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、前記構成単位(a2)の量の割合が、0.5~5質量%であり、
前記マイクロカプセルの外殻はポリウレアからなり、
前記マイクロカプセルは、常温で液状の可塑剤(Z)を内包する、粘着剤。
【請求項2】
前記粘着剤において、前記アクリル樹脂(A)の含有量に対する、前記可塑剤(Z)の含有量の割合が、0.5~30質量%である、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
粘着剤層を備えた粘着シートであって、
前記粘着シートは、基材と、前記基材上に設けられた前記粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層は、請求項1又は2に記載の粘着剤を用いて形成され、かつ前記マイクロカプセルを含有している、粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚さに対する、前記マイクロカプセルの中位径の割合が、65~105%である、請求項3に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層を備えた粘着シートは、粘着ラベル又は粘着テープ等として、幅広く利用されている。一部の粘着シートにおいては、その貼付の対象物に対して、貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態が維持されるのに対し、対象物から剥離するときには、対象物に粘着剤層が残存することなく、容易に剥離できることが、望まれる場合がある。
【0003】
対象物からの剥離時に、容易に剥離できる粘着シートとしては、アクリル系粘着剤中にマイクロカプセルが分散され、前記マイクロカプセルが、前記アクリル系粘着剤の架橋剤と軟化剤を内包し、かつ加圧により破壊される粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備えたものが開示されている(特許文献1参照)。この粘着シートを用いた場合には、これを対象物に貼付したときに、粘着剤層に加えられる圧力によって、マイクロカプセルが破壊され、マイクロカプセルから放出された架橋剤が軟化剤とともに粘着剤層中に広がり、アクリル系粘着剤を架橋することによって、粘着剤層の粘着性が徐々に消失するとともに凝集性が向上し、粘着シートの対象物からの剥離が容易になると推測される。
【0004】
対象物からの剥離時に、容易に剥離できる粘着剤としては、マイクロカプセルが分散され、前記マイクロカプセルが、前記粘着剤に対する軟化剤を内包し、かつ周波数振動が加えられることで破壊されるものも開示されている(特許文献2参照)。この粘着剤を用いた場合には、粘着剤に対して周波数振動が加えられることで、マイクロカプセルが破壊され、マイクロカプセルから放出された軟化剤が、粘着剤中に浸透することで、粘着剤の粘着力が低下し、粘着剤の対象物からの剥離が容易になると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-34051号公報
【特許文献2】特開2001-214148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で開示されている粘着シートにおいては、粘着剤層の粘着性の消失までに長期間を要するため、望みどおりのタイミングで粘着シートを容易に剥離できないという問題点があった。さらに、架橋剤によって粘着剤が架橋され、粘着シートを対象物へ貼付した後の、粘着シートの粘着力が増大するために、粘着シートを対象物から剥離するときには、粘着剤層の凝集破壊が生じ、対象物に粘着剤層の一部が残存し易いという問題点があった。
【0007】
一方、特許文献2で開示されている粘着剤は、その対象物からの剥離を容易にするために、周波数振動を加える必要があり、特殊な操作が必要であるという問題点があった。
【0008】
本発明は、粘着剤層を備えた粘着シートであって、対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持でき、目的とする任意のタイミングで対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく容易に剥離できる粘着シートと、前記粘着剤層を形成するための粘着剤と、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] マイクロカプセルが分散された粘着剤であって、前記粘着剤は、ガラス転移温度が-60~-40℃であるアクリル樹脂(A)を含有し、前記アクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位(a1)と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位(a2)を有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキルエステルを構成しているアルキル基の炭素数が4以上であり、前記アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、前記構成単位(a1)の量の割合が、50~99.5質量%であり、前記アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、前記構成単位(a2)の量の割合が、0.5~5質量%であり、前記マイクロカプセルの外殻はポリウレアからなり、前記マイクロカプセルは、常温で液状の可塑剤(Z)を内包する、粘着剤。
【0010】
[2] 前記粘着剤において、前記アクリル樹脂(A)の含有量に対する、前記可塑剤(Z)の含有量の割合が、0.5~30質量%である、[1]に記載の粘着剤。
[3] 粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記粘着シートは、基材と、前記基材上に設けられた前記粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層は、[1]又は[2]に記載の粘着剤を用いて形成され、かつ前記マイクロカプセルを含有している、粘着シート。
[4] 前記粘着剤層の厚さに対する、前記マイクロカプセルの中位径の割合が、65~105%である、[3]に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着剤層を備えた粘着シートであって、対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持でき、目的とする任意のタイミングで対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく容易に剥離できる粘着シートと、前記粘着剤層を形成するための粘着剤と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◇粘着剤
本発明の一実施形態に係る粘着剤は、マイクロカプセルが分散された粘着剤であって、前記粘着剤は、ガラス転移温度が-60~-40℃であるアクリル樹脂(A)を含有し、前記アクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位(a1)と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位(a2)を有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキルエステルを構成しているアルキル基の炭素数が4以上であり、前記アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、前記構成単位(a1)の量の割合が、50~99.5質量%であり、前記アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、前記構成単位(a2)の量の割合が、0.5~5質量%であり、前記マイクロカプセルの外殻はポリウレアからなり、前記マイクロカプセルは、常温で液状の可塑剤(Z)を内包する。
【0014】
本実施形態の粘着剤は、上記のように、分散状態のマイクロカプセルと、アクリル樹脂(A)と、を含有しており、前記マイクロカプセルが、ポリウレアからなる外殻によって、常温で液状の可塑剤(Z)を内包し、前記アクリル樹脂(A)が特定範囲のガラス転移温度を有し、特定範囲の種類の構成単位を特定範囲の量で有している。このような粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、その対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持できる。その一方で、目的とする任意のタイミングで、その対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に残存することなく容易に剥離できる。このような粘着剤層を備えた粘着シートも、その中の粘着剤層によって、対象物に貼付したときに、同様に、貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持でき、目的とする任意のタイミングで、その対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく容易に剥離できる。
【0015】
<<マイクロカプセル>>
前記粘着剤は、分散状態のマイクロカプセルを含有する。
前記マイクロカプセルの外殻は、ポリウレアからなる。外殻は壁材とも称され、本実施形態においては、壁材の構成成分がポリウレアである、ともいえる。
【0016】
前記ポリウレアは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物と、の重縮合物であれば、特に限定されない。
【0017】
前記マイクロカプセルは、加圧されることによって破壊される感圧性を有する。
粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、粘着シート(マイクロカプセル)が過剰に加圧されない限り、粘着シートは高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。一方で、粘着シートを対象物から剥離する段階では、マイクロカプセルが加圧されることによって速やかに破壊され、放出された可塑剤(Z)が後述のように粘着剤層の粘着力を低下させることによって、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に粘着シートを剥離できる。すなわち、このときの剥離は、典型的には、対象物と粘着剤層との界面で生じる。
【0018】
<ポリイソシアネート化合物>
前記ポリイソシアネート化合物が、その1分子中に有するイソシアネート基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2又は3個であることが好ましい。
【0019】
前記ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体(本明細書においては、「ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体」と称することがある)と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(本明細書においては、「ポリメリックMDI」と称することがある)であることが好ましい。
すなわち、前記ポリウレアは、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体とポリアミン化合物との重縮合物、並びに、ポリメリックMDIとポリアミン化合物との重縮合物をともに含んでいることが好ましい。マイクロカプセルが、このようなポリウレアからなる外殻を有することで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。一方で、粘着シートを対象物から剥離する段階では、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に粘着シートを剥離できる。
【0020】
[ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体]
ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体のうち、脂肪族ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体(脂肪族ポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体)としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等の脂肪族ジイソシアネート-TMPアダクト体等が挙げられる。
【0021】
ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体のうち、芳香族ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体(芳香族ポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体)としては、例えば、トリレン-2,4-ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレン-2,6-ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(本明細書においては、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体を「TDI-TMPアダクト体」と称することがある)、キシリレン-1,3-ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、キシリレン-1,4-ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等の芳香族ジイソシアネート-TMPアダクト体等が挙げられる。
【0022】
前記ポリウレアの形成時に用いる前記ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体(換言すると、ポリウレアが有する、前記ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0023】
[ポリメリックMDI]
前記ポリメリックMDIは、下記一般式(P1)で表される。
【0024】
【化1】
(式中、nは0以上の整数である。)
【0025】
一般式(P1)中、nは0以上の整数であればよく、例えば、0~300であってもよい。
【0026】
ポリメリックMDIのNCO含有量は、適宜調節でき、例えば、30~33質量%であってもよい。
【0027】
ポリメリックMDIは、常温で液状あり、その25℃での粘度は、特に限定されないが、150~250mPa・sであることが好ましい。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0028】
前記ポリウレアの形成時に用いるポリメリックMDI(換言すると、ポリウレアが有する、ポリメリックMDIから誘導された構成単位)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0029】
前記ポリウレアは、前記ポリイソシアネート化合物から誘導された構成単位として、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位を1種のみ有し、かつポリメリックMDIから誘導された構成単位を2種以上有していてもよいし、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位を2種以上有し、かつポリメリックMDIから誘導された構成単位を1種のみ有していてもよいし、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位及びポリメリックMDIから誘導された構成単位をともに1種のみ有していてもよいし、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位及びポリメリックMDIから誘導された構成単位をともに2種以上有していてもよい。
【0030】
前記ポリアミン化合物との重縮合反応の反応性が高く、より堅牢な前記ポリウレアを形成できる点では、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体は、芳香族ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体であることが好ましく、芳香族ジイソシアネート-TMPアダクト体であることがより好ましく、TDI-TMPアダクト体であることがさらに好ましい。
【0031】
前記ポリウレアにおいて、ポリメリックMDIから誘導された構成単位の量に対する、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位の量は、0.6~12質量倍であることが好ましく、0.8~10質量倍であることがより好ましく、1~8.5質量倍であることがさらに好ましい。このようなポリウレアを用いることで、本発明の効果がより高くなる。すなわち、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持でき、粘着シートを対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に粘着シートを剥離できる。
【0032】
<ポリアミン化合物>
前記ポリアミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0033】
前記ポリアミン化合物は、有機多価アミン化合物であることが好ましい。
前記有機多価アミン化合物で好ましいものとしては、例えば、脂肪族炭化水素の2個以上の水素原子(-H)がアミノ基(-NH)で置換された構造を有する脂肪族多価アミン化合物;前記脂肪族多価アミン化合物の1個又は2個以上のメチレン基(-CH-)が、式「-NH-」で表される基で置換された構造を有するNH置換脂肪族多価アミン化合物等が挙げられる。
【0034】
前記ポリアミン化合物は、環状脂肪族炭化水素基を有している脂肪族多価アミン化合物であることが好ましく、環状脂肪族炭化水素基及び鎖状脂肪族炭化水素基をともに有している脂肪族多価アミン化合物であることがより好ましく、シクロアルカンの環骨格を構成している互いに異なる2個以上の炭素原子に結合している水素原子が、アミノアルキル基で置換された構造を有する前記有機多価アミン化合物であることがさらに好ましい。
このような有機多価アミン化合物としては、例えば、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0035】
前記ポリウレアの形成時に用いる前記アミン化合物(換言すると、ポリウレアが有する、前記アミン化合物から誘導された構成単位)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0036】
前記ポリウレアは、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体と、環状脂肪族炭化水素基及び鎖状脂肪族炭化水素基をともに有している脂肪族多価アミン化合物と、の重縮合物、並びに、ポリメリックMDIと、環状脂肪族炭化水素基及び鎖状脂肪族炭化水素基をともに有している脂肪族多価アミン化合物と、の重縮合物をともに含んでいることが、特に好ましい。
このようなポリウレアにおいて、構成単位の全量に対する、ポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位と、ポリメリックMDIから誘導された構成単位と、環状脂肪族炭化水素基及び鎖状脂肪族炭化水素基をともに有している脂肪族多価アミン化合物から誘導された構成単位と、の合計量の割合(([ポリウレア中のポリイソシアネート化合物-TMPアダクト体から誘導された構成単位の量(質量部)]+[ポリウレア中のポリメリックMDIから誘導された構成単位の量(質量部)]+[ポリウレア中の環状脂肪族炭化水素基及び鎖状脂肪族炭化水素基をともに有している脂肪族多価アミン化合物から誘導された構成単位の量(質量部)])/[ポリウレア中の構成単位の全量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持でき、粘着シートを対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に粘着シートを剥離できる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0037】
<可塑剤(Z)>
前記マイクロカプセルは、可塑剤(Z)を内包する。すなわち、可塑剤(Z)は前記マイクロカプセルの芯物質である。
マイクロカプセルが内包する可塑剤(Z)は、常温で液状であれば、特に限定されない。
【0038】
可塑剤(Z)は、前記粘着剤中、及び通常の状態の後述する粘着剤層中では、マイクロカプセルに内包され、前記粘着剤及び粘着剤層に対して、作用を及ぼさない。その一方で、例えば、指による擦過若しくは押圧、又はいずれかの器具による擦過若しくは押圧等、粘着剤層に対する簡単な加圧操作によって、マイクロカプセルが破壊され、粘着剤層中に可塑剤(Z)が放出されると、この可塑剤(Z)の作用によって、粘着剤層の粘着力が低下する。粘着剤層中に放出された可塑剤(Z)は、粘着剤層内のアクリル樹脂(A)の構造中に入り込み、粘着剤層の粘着力を低下させると推測される。
【0039】
可塑剤(Z)としては、例えば、炭素数1~18の一塩基酸若しくは炭素数1~18の多塩基酸と、ポリアルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコール以外の炭素数20以下の1価アルコールと、のモノエステル、ジエステル又はトリエステル等のエステル;炭素数12~18の飽和脂肪酸又は炭素数12~18の不飽和脂肪酸と、ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール以外の2~4価アルコールと、のエステル;ヒドロキシ酸と、一塩基酸若しくはアルコールと、のジエステル、トリエステル又はテトラエステル等のエステル;不飽和部位が過酸化物等でエポキシ化された脂肪酸エステル;リン酸エステル等が挙げられる。
【0040】
炭素数1~18の一塩基酸若しくは炭素数1~18の多塩基酸と、ポリアルキレングリコール以外の炭素数20以下の1価アルコールと、のエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、トリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0041】
炭素数1~18の一塩基酸若しくは炭素数1~18の多塩基酸と、ポリアルキレングリコールと、のエステルとしては、例えば、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、アジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
炭素数12~18の飽和脂肪酸又は炭素数12~18の不飽和脂肪酸と、ポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール以外の2~4価アルコールと、のエステルを構成する、前記炭素数12~18の飽和脂肪酸又は炭素数12~18の不飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
前記エステルを構成する前記ポリアルキレングリコールは、公知のものであってよく、その具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
前記エステルを構成する、前記ポリアルキレングリコール以外の2~4価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシ酸と、一塩基酸若しくはアルコールと、のエステルとしては、例えば、乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、2-ヒドロキシミリスチン酸メチル、12-ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、リシノール酸エチル、o-アセチルリシノール酸メチル、o-アセチルリシノール酸ブチル、クエン酸トリエチル、o-アセチルクエン酸トリブチル、o-アセチルクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0044】
不飽和部位が過酸化物等でエポキシ化された脂肪酸エステルとしては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油等のエポキシ化油脂;炭素数8~18の不飽和脂肪酸がエポキシ化された化合物と、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールと、のエステル等が挙げられる。
【0045】
リン酸エステルとしては、例えば、亜リン酸又はリン酸と、炭素数2~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールと、のエステルが挙げられる。このようなエステルとして、より具体的には、例えば、トリブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0046】
上記の中でも、好ましい可塑剤(Z)としては、例えば、エーテルエステル系可塑剤(エーテル結合及びエステル結合をともに有する可塑剤);脂肪酸エステル等のエステル系可塑剤(エステル結合を有し、エーテル結合を有しない可塑剤)等が挙げられる。
【0047】
可塑剤(Z)の分子量は、100~700であることが好ましい。
【0048】
マイクロカプセルが内包する可塑剤(Z)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0049】
前記粘着剤において、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、可塑剤(Z)の含有量の割合([粘着剤の可塑剤(Z)の含有量(質量部)]/[粘着剤のアクリル樹脂(A)の含有量(質量部)]×100)は、0.5~30質量%であることが好ましく、1.5~20質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付した後、対象物から剥離する段階で、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に粘着シートを剥離できる。前記割合が前記上限値以下であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階で、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。
【0050】
アクリル樹脂(A)の含有量に対する、可塑剤(Z)の含有量の割合が、上記の条件を満たす前記粘着剤においては、マイクロカプセルが内包する可塑剤(Z)が、前記割合(前記粘着剤における、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、可塑剤(Z)の含有量の割合)を満たすことが好ましい。
【0051】
前記粘着剤において、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、マイクロカプセルの含有量の割合([粘着剤のマイクロカプセルの含有量(質量部)]/[粘着剤のアクリル樹脂(A)の含有量(質量部)]×100)は、1.5~40質量%であることが好ましく、2.5~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付した後、対象物から剥離する段階で、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に粘着シートを剥離できる。前記割合が前記上限値以下であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階で、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。
ここで、「マイクロカプセルの含有量」とは、例えば、粘着剤の製造時に、後述するマイクロカプセルの水分散体を用いる場合には、この水分散体中の水以外の成分の総含有量と同等となる場合がある。
【0052】
前記マイクロカプセルの中位径は、6.5~19μmであることが好ましく、9~16μmであることがより好ましく、例えば、9~14μm、及び11~16μmのいずれかであってもよい。
マイクロカプセルの中位径が前記下限値以上であることで、後述する粘着剤層の厚さに対して、マイクロカプセルの大きさを適度な範囲で近付けることが容易となる、その場合には、粘着シートを対象物に貼付した後、対象物から剥離する段階で、特殊な操作を必要とせずに、対象物に対する粘着剤層の粘着力をより容易に低減できる、そして、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に対象物から粘着シートを剥離できる。
マイクロカプセルの中位径が前記上限値以下であることで、後述する粘着剤層の厚さに対して、マイクロカプセルの大きさを同等以下とすることが容易となる。その場合には、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階で、より高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。
【0053】
本明細書において、「中位径」とは、特に断りのない限り、粒子について、粒度分布計を用いて測定された、体積粒度分布の中位径を意味する。
【0054】
前記マイクロカプセルにおいて、マイクロカプセルの粒子径に対する、前記外殻の厚さの割合([マイクロカプセルの外殻の厚さ(μm)]/[マイクロカプセルの粒子径(μm)]×100)は、3~20%であることが好ましく、4~18%であることがより好ましく、5~15%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階で、マイクロカプセルに内包された可塑剤(Z)のマイクロカプセルからの染み出しを、より高度に抑制でき、より高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。前記割合が前記上限値以下であることで、粘着シートを対象物に貼付した後、対象物から剥離する段階で、粘着シートに対する加圧によって、より多くの量のマイクロカプセルを破壊でき、内包されたより多くの量の可塑剤(Z)をマイクロカプセルから放出させることができ、より容易に粘着シートを剥離できる。
【0055】
マイクロカプセルの外殻の厚さと、マイクロカプセルの粒子径は、マイクロカプセルを液体窒素等の冷媒を用いて極めて低温にまで冷却した(凍結させた)冷却物を用い、その断面を作製し、走査電子顕微鏡等を用いて、その作製した断面において測定できる。マイクロカプセルの断面を作製するときには、例えば、後述するマイクロカプセルの水分散体の塗工物を乾燥させ、得られた乾燥物を冷却し、この冷却物を裁断することで、マイクロカプセルの断面を作製してもよい。
【0056】
上記の方法で、マイクロカプセルにおける、マイクロカプセルの粒子径に対する、マイクロカプセルの外殻の厚さの割合を算出するときには、実施例でも後述するとおり、前記断面中の複数個のマイクロカプセルにおいて、前記割合を算出し、その複数個の算出値の平均値を前記割合として採用することが好ましい。
また、その場合には、実施例でも後述するとおり、複数個のマイクロカプセルでの前記割合の算出値のうち、上位の複数個の算出値(最大の算出値から、大きい順に特定の大きさまでの複数個の算出値)と、下位の複数個の算出値(最小の算出値から、小さい順に特定の大きさまでの複数個の算出値)と、を排除して得られた平均値を採用することが好ましい。このようにすることで、より高精度に前記割合(平均値)を算出できる。
また、その場合には、実施例でも後述するとおり、排除する上位の算出値の数を、排除する下位の算出値の数よりも多くすることが好ましい。このようにすることで、さらに高精度に前記割合(平均値)を算出できる。その理由は、マイクロカプセルの中心から大きく外れた端部の近傍で裁断されたマイクロカプセルにおいては、前記割合が、実状を反映せずに不当に大きくなってしまうためであり、マイクロカプセルの断面の作製時には、このような断面を作製し易いからである。このようなマイクロカプセルの断面に基づいた算出値を多めに排除することで、高精度な平均値を算出できる。
【0057】
前記マイクロカプセルは、公知の方法で製造できる。
例えば、界面重縮合法を適用する場合には、水と、乳化剤と、を含有する第1溶液に、可塑剤(Z)と、前記ポリイソシアネート化合物と、を含有する第2溶液を加えて、乳化液を得る工程(本明細書においては、「乳化工程」と略記することがある)と、前記乳化液に、前記ポリアミン化合物を加えて、重縮合反応を行う工程(本明細書においては、「重縮合工程」と略記することがある)と、を有する製造方法によって、マイクロカプセルを製造できる。この場合には、重縮合工程を行ことで、マイクロカプセルが水分散体として得られる。ただし、界面重縮合法は、これに限定されない。
【0058】
得られたマイクロカプセルは、例えば、マイクロカプセルの生成反応を行って得られた反応液中に分散されている分散体の状態で、又は、前記分散体に対して公知の後処理を行って得られた後処理済み分散体の状態で、粘着剤の製造に用いることができる。このような分散体としては、例えば、上記の界面重縮合法における重縮合工程で得られた、マイクロカプセルの水分散体が挙げられる。
得られたマイクロカプセルは、例えば、前記反応液から取り出して、必要に応じて公知の方法で洗浄した後に、乾燥させて得られた乾燥物の状態で、粘着剤の製造に用いることもできる。
【0059】
<<アクリル樹脂(A)>>
前記粘着剤が含有するアクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導された構成単位(a1)と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位(a2)を有する。
アクリル樹脂(A)は、粘着性樹脂として作用する。
【0060】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。
【0061】
アクリル樹脂(A)を形成する前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキルエステル(換言すると、構成単位(a1)中のアルキルエステル。以下、同様。)を構成しているアルキル基の炭素数は、4以上であり、4~12であることが好ましい。
炭素数4以上の前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状構造(直鎖状構造、分岐鎖状構造)及び環状をともに有していてもよい。
【0062】
アクリル樹脂(A)を形成する前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0063】
アクリル樹脂(A)を形成する前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。これは、アクリル樹脂(A)中の構成単位(a1)が、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる、ことと同義である。
【0064】
アクリル樹脂(A)は、構成単位(a2)として、アクリル酸から誘導された構成単位と、メタクリル酸から誘導された構成単位と、のいずれか一方のみを有していてもよいし、両方を有していてもよい。
【0065】
アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、構成単位(a1)の量の割合([アクリル樹脂(A)中の構成単位(a1)の量(質量部)]/[アクリル樹脂(A)中の構成単位の全量(質量部)]×100)は、50~99.5質量%であり、例えば、65~99.5質量%、80~99.5質量%、及び90~99.5質量%のいずれかであってもよいし、50~95質量%、及び50~80質量%のいずれかであってもよいし、65~95質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、マイクロカプセルが破壊されていない段階では、粘着シートの対象物に対する高い粘着力を維持でき、安定して貼付状態を維持できる。前記割合が前記上限値以下であることで、アクリル樹脂(A)が構成単位(a2)等の構成単位(a1)以外の構成単位を有していることにより得られる効果が、より高くなる。
【0066】
アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、構成単位(a2)の量の割合([アクリル樹脂(A)中の構成単位(a2)の量(質量部)]/[アクリル樹脂(A)中の構成単位の全量(質量部)]×100)は、0.5~5質量%であり、例えば、0.5~3.5質量%、及び0.5~2.5質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着剤に凝集力を付与でき、粘着シートを対象物に貼付したときに、マイクロカプセルが破壊されていない段階では、安定して貼付状態を維持できる。前記割合が前記上限値以下であることで、粘着剤の柔軟性を維持でき、粘着シートを対象物に貼付したときに、マイクロカプセルが破壊されていない段階では、粘着シートの対象物に対する高い粘着力を維持できる。また、アクリル樹脂(A)が構成単位(a1)等の構成単位(a2)以外の構成単位を有していることにより得られる効果が、より高くなる。
【0067】
アクリル樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a1)と、構成単位(a2)と、のいずれにも該当しない構成単位(a3)を有していてもよいし、有していなくてもよい。アクリル樹脂(A)を、構成単位(a3)を有するものとすることで、アクリル樹脂(A)の特性を調節できる。
【0068】
構成単位(a3)を誘導するモノマーは、アルキルエステルを構成しているアルキル基の炭素数が4以上である前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、のいずれにも該当しない他のモノマーであり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、の両方と共重合可能であれば、特に限定されない。
【0069】
前記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、その中のアルキルエステルを構成しているアルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、のいずれにも該当しない他の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0070】
前記アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルが挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が4以上である前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、アルキル基の炭素数が1~3である前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、のいずれかにおいて、アルキルエステルを構成しているアルキル基中の1個の水素原子が水酸基で置換された構造を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等)が挙げられる。
前記他の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル等が挙げられる。
【0071】
アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、構成単位(a3)の量の割合([アクリル樹脂(A)中の構成単位(a3)の量(質量部)]/[アクリル樹脂(A)中の構成単位の全量(質量部)]×100)は、0~49.5質量%であることが好ましい。前記割合が高いほど、アクリル樹脂(A)の構成単位(a3)を有していることにより得られる特性が、より強くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、アクリル樹脂(A)が構成単位(a1)及び(a2)を有していることにより得られる効果が、より高くなる。
【0072】
アクリル樹脂(A)において、構成単位の全量に対する、構成単位(a1)と、構成単位(a2)と、構成単位(a3)と、の合計量の割合(([アクリル樹脂(A)中の構成単位(a1)の量(質量部)]+[アクリル樹脂(A)中の構成単位(a2)の量(質量部)]+[アクリル樹脂(A)中の構成単位(a3)の量(質量部)])/[アクリル樹脂(A)中の構成単位の全量(質量部)]×100)は、100質量%を超えない。
【0073】
アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、-60~-40℃であり、例えば、-60~-50℃、-50~-40℃、及び-57~-47℃のいずれかであってもよい。ガラス転移温度がこのような範囲であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階で、高い粘着力で安定して貼付状態を維持できる。
【0074】
本明細書において、アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、すべてFOXの式を用いて算出した値である。このとき用いる各モノマーの単独重合体のガラス転移温度を、以下に示す。
[モノマーの単独重合体のガラス転移温度]
アクリル酸2-エチルヘキシルの単独重合体:-70℃
アクリル酸ブチルの単独重合体:-52℃
アクリル酸メチルの単独重合体:8℃
メタクリル酸メチルの単独重合体:105℃
アクリル酸の単独重合体:106℃
メタクリル酸の単独重合体:186℃
【0075】
後述するように、粘着剤の製造時においては、アクリル樹脂(A)をそのエマルションの形態で用いる(配合する)ことが好ましい。アクリル樹脂(A)のエマルションは、マイクロカプセルの水分散体との混和性が良好であり、粘着剤中でマイクロカプセルを高い均一性で分散させることができる。アクリル樹脂(A)のエマルションは、アクリル樹脂(A)を公知の乳化重合法により合成することで、得られる。
【0076】
粘着剤の製造時に、アクリル樹脂(A)をそのエマルション(アクリル樹脂エマルション)として配合する場合には、アクリル樹脂エマルションにおいて、アクリル樹脂エマルションの総質量に対する、固形分の含有量の割合([アクリル樹脂エマルションの固形分の含有量(質量部)])/[アクリル樹脂エマルションの総質量(質量部)]×100)は、40~65質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であるアクリル樹脂エマルションを用いることで、目的とする特性を有する粘着剤を、より容易に製造できる。
ここで、「固形分」とは、常温及び常圧下で、固体状である成分を意味する。
本明細書においては、前記割合を単に「アクリル樹脂エマルションの固形分の含有量の割合」と称することがある。
【0077】
<<他の成分>>
本実施形態の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記マイクロカプセルと、アクリル樹脂(A)と、のいずれにも該当しない他の成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
前記粘着剤が含有する前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記粘着剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0078】
前記粘着剤が含有する前記他の成分としては、例えば、粘着付与樹脂が挙げられる。
粘着剤が粘着付与樹脂を含有することで、粘着剤の粘着力が向上し、さらに粘着剤の貼付性がより安定する。
【0079】
粘着付与樹脂としては、公知のものを使用できる。
前記粘着剤が含有する粘着付与樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
粘着付与樹脂は、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂又は芳香族系炭化水素樹脂であることが好ましく、ロジン系樹脂であることがより好ましく、重合ロジンエステル樹脂であることがさらに好ましい。
【0080】
前記粘着剤において、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、粘着付与樹脂の含有量の割合([粘着剤の粘着付与樹脂の含有量(質量部)]/[粘着剤のアクリル樹脂(A)の含有量(質量部)]×100)は、0~15質量%であることが好ましい。
【0081】
後述するように、前記粘着剤の製造時においては、粘着付与樹脂をその水分散体の形態で用いる(配合する)ことが好ましい。そして、アクリル樹脂(A)のエマルションと、マイクロカプセルの水分散体と、粘着付与樹脂の水分散体と、を配合することが好ましい。
【0082】
前記粘着剤の製造時に、前記アクリル樹脂エマルション(アクリル樹脂(A)のエマルション)を用いる場合には、アクリル樹脂エマルション中の水等の溶媒(分散媒)が、前記他の成分として挙げられる。
前記粘着剤の製造時に、前記マイクロカプセルの水分散体を用いる場合には、前記水分散体中の水(溶媒、分散媒)が、前記他の成分として挙げられる。
前記粘着剤の製造時に、前記粘着付与樹脂の水分散体を用いる場合には、前記水分散体中の水(溶媒、分散媒)が、前記他の成分として挙げられる。
【0083】
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、溶液中で溶質を溶解させることが可能な成分だけなく、分散液中で分散媒となる成分も、「溶媒」と称する。
【0084】
前記粘着剤が含有する前記他の成分のうち、粘着付与樹脂と、溶媒と、のいずれにも該当しないものとしては、例えば、中和剤、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤、防腐剤、可塑剤、充填剤、着色剤、シランカップリング剤、架橋剤等の添加剤;アクリル樹脂(A)と、粘着付与樹脂と、のいずれにも該当しない他の樹脂;が挙げられる。これら他の成分は、公知のものであってよい。
【0085】
前記粘着剤が前記架橋剤を含有する場合には、架橋剤は、粘着剤中の各種共重合体の分散粒子同士を粒子間架橋させることが可能である。
例えば、前記共重合体が、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された構成単位を有する場合には、架橋剤として、イソシアネート化合物、チタンアルコキシド化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等を用いることができる。
例えば、前記共重合体が、カルボニル基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された構成単位を有する場合には、架橋剤として、アミン類、ヒドラジド化合物等を用いることができる。
例えば、前記共重合体が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された構成単位を有する場合には、架橋剤として、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、酸化亜鉛等の金属化合物等を用いることができる。
【0086】
前記他の樹脂は、公知のものであってよい。
前記他の樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が-60~-40℃の範囲外(-60℃未満、-40℃超)であるアクリル樹脂が挙げられる。なかでも、前記粘着剤が、ガラス転移温度が-40℃超であるアクリル樹脂を含有する場合には、粘着剤の凝集力と接着力がより高くなる。
【0087】
前記粘着剤において、前記溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記マイクロカプセルと、アクリル樹脂(A)と、の合計含有量の割合(([粘着剤のマイクロカプセルの含有量(質量部)]+[粘着剤のアクリル樹脂(A)の含有量(質量部)])/[粘着剤の溶媒以外の成分の総含有量(質量部)]×100)は、80質量%以上であること好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、及び97質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持でき、粘着シートを対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく、容易に粘着シートを剥離できる、という効果が、より高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0088】
<<粘着剤の特性>>
本実施形態の粘着剤を用いて得られた乾燥被膜(0.06g)を、40℃の酢酸エチル(200mL)に24時間浸漬し、次いで、溶解せずに残った残分を取り出して乾燥させることで、不溶成分(本明細書においては、「酢酸エチル不溶成分」と称することがある)を得たとき、粘着剤の乾燥被膜において、粘着剤の乾燥被膜の総質量に対する、前記不溶成分の含有量の割合([粘着剤の乾燥被膜中の酢酸エチル不溶成分の量(質量部)]/[粘着剤の乾燥被膜の総質量(質量部)]×100)は、30~60質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、粘着剤の凝集力が増大し、粘着シートにおいて、粘着剤層のはみ出しが抑制される効果が高く、粘着シートの加工性が向上し、粘着シートの再剥離性が向上する。前記割合が前記上限値以下であることで、粘着シート(粘着剤層)の粘着力が向上する。そのため、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。
酢酸エチルに浸漬する前記乾燥被膜は、後述する粘着剤層の形成方法で形成できる。すなわち、乾燥被膜は後述する粘着シート中の粘着剤層であってよい。
【0089】
<<粘着剤の製造方法>>
本実施形態の粘着剤は、前記マイクロカプセルと、アクリル樹脂(A)と、必要に応じて前記他の成分と、を配合し、これら配合成分を十分に撹拌することで製造できる。
粘着剤の製造時における、各成分の配合順序は特に限定されない。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよいし、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
各成分は、単独で配合してもよいし、他の成分との混合物として配合してもよい。例えば、溶媒を配合する場合には、溶媒は、マイクロカプセル、アクリル樹脂(A)、又は溶媒以外の前記他の成分とあらかじめ混合された状態で配合してもよいし、これらの成分と混合されていない状態で単独で配合してもよい。
【0090】
各成分の配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、配合成分の種類等に応じて適宜調節すればよいが、通常は、15~30℃であることが好ましい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、例えば、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択できる。
配合成分を撹拌する時間は、製造する粘着剤の総量や撹拌方法等に応じて、適宜調節すればよく、例えば、10分~2時間であってもよい。
【0091】
例えば、先の説明のように、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、可塑剤(Z)の含有量の割合が、0.5~30質量%である前記粘着剤を製造する場合には、このような含有量の割合となるように、マイクロカプセルの配合量と、アクリル樹脂(A)の配合量を、調節すればよい。
【0092】
◇粘着シート
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、基材と、前記基材上に設けられた粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層は、上述の本発明の一実施形態に係る粘着剤を用いて形成され、かつ前記マイクロカプセルを含有している。
本実施形態の粘着シートは、前記粘着剤層を備えていることで、対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階では、高い粘着力でより安定して貼付状態を維持でき、粘着シートを対象物から剥離する段階では、特殊な操作を必要とせずに、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に剥離できる。
【0093】
図1は、本実施形態の粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0094】
ここに示す粘着シート1は、基材11と、基材11上に設けられた粘着剤層12と、を備え、粘着剤層12は、上述の本発明の一実施形態に係る粘着剤を用いて形成されており、かつ前記マイクロカプセルを含有している。図1においては、粘着剤層12中のマイクロカプセルの図示を省略している。
より具体的には、粘着シート1において、基材11の一方の面(粘着剤層12側の面)11aと、粘着剤層12の一方の面(基材11側の面)12bとは、直接接触している。
粘着剤層12の他方の面(基材11側とは反対側の面)12aは、露出面であり、粘着シート1の貼付対象物に対する貼付面である。
【0095】
本実施形態の粘着シートは、図1に示す粘着シート1に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で、図1に示すものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、図1に示す粘着シート1は、基材11と粘着剤層12を備えているが、本実施形態の粘着シートは、基材と、粘着剤層と、のいずれにも該当しない他の層を備えていてもよい。前記他の層の種類とその配置位置は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。例えば、図1に示す粘着シート1において、粘着剤層12の他方の面12aは、露出面であるが、公知の剥離紙又は剥離フィルムが設けられていてもよい。
ただし、本実施形態の粘着シートにおいては、基材及び粘着剤層が互いに直接接触して設けられていることが好ましい。
【0096】
<<基材>>
前記粘着シートが備えている前記基材の材質は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記基材の材質としては、例えば、耐水紙、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等の紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂等が挙げられる。
【0097】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
通常、基材は1層からなるもので十分である。
【0098】
本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0099】
基材の厚さは、基材の形状がシート状又はフィルム状である限り、特に限定されないが、10~300μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、30~150μmであることが特に好ましい。基材の厚さが前記下限値以上であることで、粘着シートの強度がより大きくなる。基材の厚さが前記上限値以下であることで、基材の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、粘着シートの取り扱い性がより良好となる。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0100】
基材としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法で製造したものを用いてもよい。
【0101】
<<粘着剤層>>
前記粘着シートが備えている前記粘着剤層は、上述の本発明の一実施形態に係る粘着剤を用いて形成され、かつ前記マイクロカプセルを含有していれば、特に限定されない。
【0102】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
通常、粘着剤層は1層からなるもので十分である。
【0103】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、3~30μmであることが好ましく、5~25μmであることがより好ましく、10~20μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚さが前記下限値以上であることで、粘着剤層の構造をより安定して保持できる。粘着剤層の厚さが前記上限値以下であることで、粘着剤層の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、粘着シートの取り扱い性がより良好となる。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0104】
粘着剤層の厚さは、紙厚測定器を用いて測定できる。
このとき、実施例で後述するように、粘着剤層の表面において、複数箇所の測定点を、これらの位置に偏りが出ないように任意に選択し、これら複数箇所の測定点において、粘着剤層の厚さを測定し、これら測定値のうちの最大値及び最小値を除いた2つ以上の測定値の平均値を算出し、この平均値を粘着剤層の厚さとして採用することができる。このようにすることで、粘着剤層の厚さがより高精度に求められる。前記測定点は、4箇所以上(例えば、4~6箇所)である。
粘着剤層の厚さは、粘着剤層が何らかのフィルム又はシートと積層されている積層物の状態でも、測定できる。その場合には、上述の方法で前記積層物の厚さを求め、上述の方法で、粘着剤層を積層する前の前記フィルム又はシートの厚さも求め、前記積層物の厚さから前記フィルム又はシートの厚さを減じる([積層物の厚さ]-[フィルム又はシートの厚さ]を算出する)ことで、粘着剤層の厚さがより高精度に求められる。この場合の前記フィルム又はシートとしては、例えば、粘着シートを構成する基材、剥離紙又は剥離フィルム等が挙げられる。
【0105】
前記フィルム又はシートの質量を予め測定しておき、前記積層物の質量を測定し、前記積層物の質量から前記フィルム又はシートの質量を減じる([積層物の質量]-[フィルム又はシートの質量]を算出する)ことで、前記積層物中の粘着剤層の量を求められる。そして、粘着剤層の量を粘着剤層の表面積で除する([粘着剤層の量]/[粘着剤層の表面積]を算出する)ことで、前記フィルム又はシート上での、単位面積あたりの粘着剤層の量を求められる。
【0106】
前記粘着剤層の厚さに対する、前記マイクロカプセルの中位径の割合([マイクロカプセルの中位径(μm)]/[粘着剤層の厚さ(μm)]×100)は、43~127%であることが好ましく、60~107%であることがより好ましく、例えば、60~93%、及び73~107%のいずれかであってもよい。
前記割合が前記下限値以上であることで、粘着シートを対象物に貼付した後、対象物から剥離する段階で、特殊な操作を必要とせずに、対象物に対する粘着剤層の粘着力をより容易に低減できる、そして、対象物に粘着剤層が残存することなく、より容易に対象物から粘着シートを剥離できる。
前記割合が前記上限値以下であることで、粘着シートを対象物に貼付したときに、貼付後の初期段階で、より高い粘着力でより安定して貼付状態を維持できる。
【0107】
<<粘着シートの製造方法>>
本実施形態の粘着シートは、基材上に粘着剤層を設けることで、製造できる。
より具体的には、剥離紙又は剥離フィルムの一方の面上に、前記粘着剤を塗工し、塗工後の前記粘着剤を乾燥させることで、剥離紙又は剥離フィルムの一方の面上に、粘着剤層を形成し、前記粘着剤層の露出面(剥離紙又は剥離フィルム側とは反対側の面)に、前記基材の一方の面を貼り合わせることで、剥離紙又は剥離フィルム付きの前記粘着シートを製造できる。
前記基材の一方の面上に、前記粘着剤を塗工し、塗工後の前記粘着剤を乾燥させることで、基材の一方の面上に、粘着剤層を形成することでも、前記粘着シートを製造できる。この場合には、前記粘着剤層の露出面(基材側とは反対側の面)に、剥離紙又は剥離フィルムの一方の面を貼り合わせることで、剥離紙又は剥離フィルム付きの粘着シートを製造できる。
【0108】
上記のいずれの製造方法においても、粘着剤の塗工は、例えば、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター等の各種コーター;ワイヤーバーコーター等の装置を用いる公知の方法により、行うことができる。
【0109】
上記のいずれの製造方法においても、粘着剤の乾燥は、送風乾燥、加熱送風乾燥(加熱乾燥)等、公知の方法により、行うことができる。
乾燥温度、乾燥時間等の乾燥条件は、乾燥方法に応じて適宜設定できる。例えば、乾燥温度は80~120℃であってもよく、乾燥時間は1分~24時間であってもよい。
【実施例0110】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されない。
【0111】
[実施例1]
<<粘着剤の製造>>
<マイクロカプセルの製造>
以下に示す界面重縮合法により、目的とするマイクロカプセルを製造した。
すなわち、蒸留水(171.4g)にポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「JP-24」)(8.6g)を添加し、50℃で1時間撹拌して溶液とし、これを25℃まで冷却することにより、濃度が4.8質量%のポリビニルアルコール水溶液(前記第1溶液)を得た。
【0112】
別途、常温下で、表1に示す可塑剤(Z)-1(ADEKA社製「アデカサイザーRS-700」)(65g)に、TDI-TMPアダクト体(三井化学社製「タケネート(登録商標)D-103」)(25g)と、ポリメリックMDI(東ソー社製「ミリオネートMR-200」、NCO含有量31.3質量%)(5g)を添加し、得られたものが透明になるまで撹拌することにより、これらの成分がすべて溶解している混合溶液(前記第2溶液)を得た。
【0113】
常温下で、前記ポリビニルアルコール水溶液の全量に、前記混合溶液の全量を添加し、得られた混合液を、ホモジナイザー(プライミクス社製)を用いて、回転数3000rpmの条件で3分撹拌することにより、乳化液を得た(前記乳化工程)。
【0114】
得られた乳化液の全量に、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(東京化成社製)(6.8g)と、蒸留水(40g)とを添加し、80℃で、回転数500rpmでアンカー翼を2時間回転させて、反応液を撹拌することにより、界面重縮合を行った(前記重縮合工程)。
【0115】
以上により、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンと、TDI-TMPアダクト体と、の重縮合物、及び、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンと、ポリメリックMDIと、の重縮合物、を含むポリウレアからなる外殻を有し、芯物質として前記可塑剤(Z)-1を内包したマイクロカプセルを、水分散体として得た。
【0116】
<マイクロカプセルの評価>
[マイクロカプセルの形成性の評価]
上記で得られた水分散体を上質紙上に塗工し、オーブンを用いて、105℃で1分乾燥させた。
次いで、走査電子顕微鏡(SEM、日本電子社製)を用いて、1000倍の倍率で、得られた乾燥物を観察した。そして、外殻の形成度合いを確認することにより、マイクロカプセルの形成性を、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:外殻が正常に形成されており、マイクロカプセルが正常に形成されている。
B:外殻が正常に形成されておらず、マイクロカプセルが形成されていない。
【0117】
[マイクロカプセルの中位径の測定]
粒度分布測定装置(シスメックス社製「CDA-1000X」)と、上記で得られた水分散体を用い、マイクロカプセルの中位径を測定した。結果を表1に示す。
【0118】
[マイクロカプセルにおける、マイクロカプセルの粒子径に対する、マイクロカプセルの外殻の厚さの割合の算出]
上記の「マイクロカプセルの形成性の評価」時に得られた、上質紙上の乾燥物を、液体窒素中に20秒間浸漬して冷却した。そして、この冷却した乾燥物を、カッターを用いて断裁した。
次いで、走査電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて、1000倍の倍率で、裁断物の断面を観察した。
そして、取得した撮像データの中から、断裁されたマイクロカプセルを無作為に30個選択し、これらマイクロカプセルにおいて、外殻の厚さと粒子径を測定した。そして、これら30個のすべてのマイクロカプセルにおいて、マイクロカプセルの粒子径に対する、マイクロカプセルの外殻の厚さの割合を算出した。さらに、これら30個の算出値のうち、上位18個の算出値(最大の算出値から、18番目に大きい算出値までの、18個の算出値)と、下位2個の算出値(最小の算出値と、2番目に小さい算出値と、の2個の算出値)を除いた、残りの10個の算出値の平均値を求め、この平均値を、このマイクロカプセルにおける、マイクロカプセルの粒子径に対する、マイクロカプセルの外殻の厚さの割合として採用した。結果を表1中の「[マイクロカプセルの外殻の厚さ(μm)]/[マイクロカプセルの粒子径(μm)]×100(%)」の欄に示す。
【0119】
<アクリル樹脂(A)-1の合成>
アクリル酸2-エチルヘキシル(30質量部)、アクリル酸ブチル(64質量部)、メタクリル酸メチル(5質量部)及びアクリル酸(1質量部)に、分子量調整剤としてチオグリコール酸オクチル(0.09質量部)、乳化剤としてニューコール707SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩の水溶液、有効成分30%、日本乳化剤社製)(5.0質量部)、及びイオン交換水(24.5質量部)を添加し、撹拌することで、乳化物を得た。得られた乳化物を滴下ロートに入れた。
撹拌機、冷却管、温度計及び前記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水(24.5質量部)を仕込み、フラスコ内部の空気を窒素ガスで置換し、撹拌しながら、内温を78℃まで昇温し、濃度が3質量%の過硫酸カリウム水溶液(2.1質量部)を添加した。5分後、前記滴下ロートから、上記で得られた乳化物の滴下を開始し、これと並行して、濃度が3質量%の過硫酸カリウム水溶液(6.3質量部)を別の滴下口から3時間かけて滴下した。
これらの滴下の終了後、4つ口フラスコの内温を78℃に保ったまま、さらに内容物を撹拌しながら4時間熟成し、その後冷却し、アンモニア水で中和し、さらに水で希釈することで、固形分の含有量の割合が55質量%のアクリル樹脂(A)-1のエマルションを得た。アクリル樹脂(A-1)のガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
【0120】
<粘着剤の製造>
常温下で、上記で得られたマイクロカプセルの水分散体と、アクリル樹脂(A)-1のエマルションと、粘着付与樹脂の水分散体「スーパーエステルE-788」(荒川化学社製、重合ロジンエステルの水分散体、固形分50質量%)と、を配合した。このとき、アクリル樹脂(A)-1の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、アクリル樹脂(A)-1の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、7.2質量%とした。さらに、得られた配合物に消泡剤、レベリング剤、防腐剤を加え、粘度調整剤を加えて、配合物の粘度を4000mPa・s(BL型粘度計、#4ローター使用、60rpmにて測定)に調整することで、水性の粘着剤を得た。得られた粘着剤の乾燥被膜において、乾燥被膜の総質量に対する、酢酸エチルに対する不溶成分の含有量の割合は、45質量%であった。
【0121】
<<粘着シートの製造>>
上記で得られた粘着剤を、剥離紙の剥離処理面上に塗工し、105℃で2分、加熱乾燥させることで、前記剥離紙上に粘着剤層(厚さ15μm)を形成した。
粘着剤層の厚さは、以下の方法で測定した。すなわち、上記の剥離紙と粘着剤層との積層物の表面において、5箇所の測定点を、これらの位置に偏りが出ないように任意に選択した。そして、紙厚測定器(シチズン社製「MEI-11」)を用いて、これら5箇所の測定点において、前記積層物の厚さを測定し、これら測定値のうちの最大値及び最小値を除いた3つの測定値の平均値を算出し、この平均値を前記積層物の厚さとして採用した。
別途、粘着剤層を積層する前の前記剥離紙についても、前記積層物の場合と同様に、厚さ(剥離紙の3つの厚さの測定値の平均値)を求めておき、前記積層物の厚さから剥離紙の厚さを減じる([積層物の厚さ]-[剥離紙の厚さ]を算出する)ことで、粘着剤層の厚さを求めた。
【0122】
次いで、基材として上質紙(厚さ65μm)を用い、前記粘着剤層の露出面(剥離紙側とは反対側の面)を、前記上質紙の一方の面と貼り合わせることで、上質紙と、前記上質紙上に設けられた前記粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層の前記上質紙側とは反対側の面に剥離紙を備えた、剥離紙付き粘着シートを得た。この剥離紙付き粘着シートを、温度23℃、相対湿度50%(50%RH)の条件下で、24時間静置保管した。
【0123】
得られた剥離紙付き粘着シートにおいて、無作為に断面を形成し、確認したところ、粘着剤層は、先に確認した中位径のマイクロカプセルを、正常に含有していることを確認できた。
【0124】
<<粘着シートの評価>>
<[マイクロカプセルの中位径]/[粘着剤層の厚さ]の算出>
[マイクロカプセルの中位径]/[粘着剤層の厚さ]の値を算出した。結果を表1中の「粘着剤層の厚さに対する中位径の割合(%)」の欄に示す。
【0125】
<粘着シートの初期粘着性能の評価>
[粘着シートの初期粘着力の測定]
上記の静置保管後の粘着シートから、大きさが25mm×100mmの切片を切り出し、剥離紙を取り除いて、試験片とした。この試験片中の、新たに生じた粘着剤層の露出面(上質紙側とは反対側の面)の全面を、金属板に固定されたポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(厚さ100μm)の一方の面に重ね合わせた。そして、この試験片及びPET製フィルムの積層物において、質量2kgのロールを、試験片の長手方向において1往復転がすことにより、試験片及びPET製フィルムを十分に貼り合わせた。以上により、評価用積層シートを作製した。
【0126】
次いで、直ちに、この評価用積層シートにおいて、試験片中の上質紙をPET製フィルムから剥離した。このとき、剥離速度を300mm/minとし、剥離によって生じた2つの剥離面同士の為す角度が180°となるように、180°剥離を行った。そして、この180°剥離のときの剥離力を測定し、これを粘着シートの初期粘着力として採用し、下記基準に従って、その水準を判定した。結果を表1に示す。
[判定基準]
A:粘着シートの初期粘着力が7N/25mm以上であり、初期粘着力が極めて高い。
B:粘着シートの初期粘着力が6N/25mm以上7N/25mm未満であり、初期粘着力が高い。
C:粘着シートの初期粘着力が6N/25mm未満であり、初期粘着力が低い。
【0127】
[基材の初期の剥離様式の判定]
さらに、2つの剥離面を観察し、基材(上質紙)の初期の剥離様式を下記基準に従って判定した。結果を表1に示す。
[判定基準]
A:粘着剤層の凝集破壊、又は基材の破壊によって、基材が剥離しており、好ましい剥離様式であり、粘着シートの初期粘着力が高いことを反映しており、粘着シートの初期粘着性能が目的どおりに高い。
B:粘着剤層とPET製フィルムとの間の界面剥離によって、基材が剥離しており、好ましくない剥離様式であり、粘着シートの初期粘着力が低いことを反映しており、粘着シートの初期粘着性能が目的とは異なり低い。
【0128】
<粘着シートの解体時粘着性能の評価>
[粘着シートの解体時粘着力の測定]
別途、上記で得られたものと同じ試験片を作製し、この試験片中の粘着剤層の露出面(上質紙側とは反対側の面)の全面を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(厚さ100μm)の一方の面に貼り合わせた。これにより得られた試験片及びPET製フィルムの積層物中の、PET製フィルムの露出面に、金属板の角部を接触させ、約10MPaの圧力を加えながら、金属板を試験片の長手方向に沿って3回移動させ、前記積層物を擦過した。10MPaの圧力は、粘着剤層中のマイクロカプセルを破壊するために十分な圧力であることを、事前に確認しておいた。
次いで、この金属板で擦過後の前記積層物を、常温下で60分、静置保管した。
次いで、この静置保管後の前記積層物のうち、PET製フィルムの露出面を、金属板に固定し、上記の粘着シートの初期粘着力の測定時と同じ方法で、剥離力を測定し、これを粘着シートの解体時粘着力として採用し、下記基準に従って、その水準を判定した。結果を表1に示す。
なお、本明細書においては、このように、目的とする任意のタイミングで、粘着剤層をその対象物から剥離することで、粘着剤層と対象物との積層構造を解消することを、「解体」と称することがある。
[判定基準]
A:粘着シートの解体時粘着力が5.5N/25mm未満であり、解体時粘着力が極めて低い。
B:粘着シートの解体時粘着力が5.5N/25mm以上6.5N/25mm未満であり、解体時粘着力が低い。
C:粘着シートの解体時粘着力が6.5N/25mm以上であり、解体時粘着力が高い。
【0129】
[基材の解体時の剥離様式の判定]
さらに、2つの剥離面を観察し、基材(上質紙)の解体時の剥離様式を下記基準に従って判定した。結果を表1に示す。
[判定基準]
A:粘着剤層とPET製フィルムとの間の界面剥離によって、基材が剥離しており、好ましい剥離様式であり、粘着シートの解体時粘着力が低いことを反映しており、粘着シートの解体時粘着性能が目的どおりに低い。
B:粘着剤層の凝集破壊、又は基材の破壊によって、基材が剥離しており、好ましくない剥離様式であり、粘着シートの解体時粘着力が高いことを反映しており、粘着シートの解体時粘着性能が目的とは異なり高い。
【0130】
表1中の「[マイクロカプセルの含有量]/[アクリル樹脂(A)又は他のアクリル樹脂(A’)の含有量]×100(質量%)」とは、「粘着剤における、アクリル樹脂(A)又は他のアクリル樹脂(A’)の含有量に対する、マイクロカプセルの含有量の割合(質量%)」を意味する。これは表2以降の表においても同様である。
表1中の「[粘着付与樹脂の含有量]/[アクリル樹脂(A)又は他のアクリル樹脂(A’)の含有量]×100(質量%)」とは、「粘着剤における、アクリル樹脂(A)又は他のアクリル樹脂(A’)の含有量に対する、粘着付与樹脂の含有量の割合(質量%)」を意味する。これは表2以降の表においても同様である。
表1中の「[粘着剤の乾燥被膜中の酢酸エチル不溶成分の量]/[粘着剤の乾燥被膜の総質量]×100(質量%)」とは、「粘着剤の乾燥被膜における、粘着剤の乾燥被膜の総質量に対する、酢酸エチル不溶成分の含有量の割合」を意味する。これは表2以降の表においても同様である。
【0131】
<<粘着剤の製造、マイクロカプセルの製造及び評価、粘着剤の製造、並びに、粘着シートの製造及び評価>>
[実施例2]
マイクロカプセルの製造時に、蒸留水の使用量を171.4gに代えて172.8gとした点と、ポリビニルアルコールの使用量を8.6gに代えて7.2gとした点、以外は、実施例1の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。得られたマイクロカプセルは、その中位径の点で、実施例1で得られたマイクロカプセルとは異なっていた。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0132】
[実施例3]
マイクロカプセルの製造時に、蒸留水の使用量を171.4gに代えて173.7gとした点と、ポリビニルアルコールの使用量を8.6gに代えて6.3gとした点、以外は、実施例1の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。得られたマイクロカプセルは、その中位径の点で、実施例1で得られたマイクロカプセルとは異なっていた。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0133】
[実施例4]
マイクロカプセルの製造時に、蒸留水の使用量を171.4gに代えて174.6gとした点と、ポリビニルアルコールの使用量を8.6gに代えて5.4gとした点、以外は、実施例1の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。得られたマイクロカプセルは、その中位径の点で、実施例1で得られたマイクロカプセルとは異なっていた。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0134】
[実施例5]
マイクロカプセルの製造時に、可塑剤(Z)-1に代えて、表2に示す可塑剤(Z)-2(伊藤製油社製「リックサイザーC-101」)(65g)を用いた点と、前記乳化工程でのホモジナイザーの回転数を3000rpmに代えて6000rpmとした点、以外は、実施例1の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表2に示す。
【0135】
[実施例6]
マイクロカプセルの製造時に、前記乳化工程でのホモジナイザーの回転数を6000rpmに代えて3000rpmとした点以外は、実施例5の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表2に示す。
【0136】
[実施例7]
マイクロカプセルの製造時に、前記乳化工程でのホモジナイザーの回転数を6000rpmに代えて2000rpmとした点以外は、実施例5の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表2に示す。
【0137】
[実施例8]
マイクロカプセルの製造時に、前記乳化工程でのホモジナイザーの回転数を6000rpmに代えて1500rpmとした点以外は、実施例5の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表2に示す。
【0138】
[実施例9]
<<粘着剤の製造>>
<アクリル樹脂(A)-2の合成>
アクリル酸2-エチルヘキシル(30質量部)、アクリル酸ブチル(64質量部)、メタクリル酸メチル(5質量部)及びアクリル酸(1質量部)を用いるのに代えて、アクリル酸2-エチルヘキシル(78質量部)、アクリル酸メチル(20質量部)及びアクリル酸(2質量部)を用いた点以外は、上記のアクリル樹脂(A)-1の場合と同様の方法で、アクリル樹脂(A)-2を合成した。得られたアクリル樹脂(A)-2のエマルションにおいて、固形分の含有量の割合は55質量%であった。アクリル樹脂(A-2)のガラス転移温度を表3に示す。
【0139】
<粘着剤の製造>
常温下で、マイクロカプセルの水分散体と、アクリル樹脂(A)-2のエマルションと、粘着付与樹脂の水分散体「スーパーエステルE-788」(荒川化学社製、重合ロジンエステルの水分散体、固形分50質量%)と、を配合した。このとき、アクリル樹脂(A)-2の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、アクリル樹脂(A)-2の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、12.7質量%とした。さらに、得られた配合物に消泡剤、レベリング剤、防腐剤を加え、粘度調整剤を加えて、配合物の粘度を4000mPa・s(BL型粘度計、#4ローター使用、60rpmにて測定)に調整することで、水性の粘着剤を得た。得られた粘着剤の乾燥被膜の、酢酸エチルに対する不溶分は、53質量%であった。
【0140】
<<粘着シートの製造及び評価>>
上記で得られた粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表3に示す。
【0141】
<<粘着剤の製造、マイクロカプセルの製造及び評価、粘着剤の製造、並びに、粘着シートの製造及び評価>>
[実施例10]
マイクロカプセルの製造時に、蒸留水の使用量を171.4gに代えて172.8gとした点と、ポリビニルアルコールの使用量を8.6gに代えて7.2gとした点、以外は、実施例1の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。得られたマイクロカプセルは、その中位径の点で、実施例1で得られたマイクロカプセルとは異なっていた。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点と、乳化状態のアクリル樹脂(A)-1に代えて、乳化状態のアクリル樹脂(A)-2を用いた点、以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。このとき、アクリル樹脂(A)-2の量に対する、前記水分散体中の水以外の成分の総添加量の割合を、10質量%とした。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表3に示す。
【0142】
[実施例11]
マイクロカプセルの製造時に、前記乳化工程でのホモジナイザーの回転数を6000rpmに代えて3000rpmとした点以外は、実施例5の場合と同様に、マイクロカプセルを製造し、評価した。
そして、このマイクロカプセル(より具体的には、マイクロカプセルの水分散体)を用いた点と、乳化状態のアクリル樹脂(A)-1に代えて、乳化状態のアクリル樹脂(A)-2を用いた点、以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。このとき、アクリル樹脂(A)-2の量に対する、前記水分散体中の水以外の成分の総添加量の割合を、10質量%とした。
さらに、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表3に示す。
【0143】
[比較例1]
<<粘着剤の製造>>
<マイクロカプセルの製造>
蒸留水(159.2g)に、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)(0.7g)と、スチレン-無水マレイン酸共重合体(モンサント社製「スクリプセット(登録商標)520」)(5.1g)を添加し、80℃で2時間撹拌した後、25℃まで冷却することで、濃度が3.5質量%のスチレン-マレイン酸共重合体水溶液を得た。
【0144】
別途、常温下で、濃度が37質量%のホルムアルデヒド水溶液(富士フイルム和光純薬社製)(7.0g)に、蒸留水(20g)を添加することで、濃度が9.6質量%のホルムアルデヒド水溶液とし、ここに希水酸化ナトリウム水溶液を少量添加することで、前記ホルムアルデヒド水溶液のpHを9.0に調節した。
【0145】
常温下で、前記ホルムアルデヒド水溶液の全量に、メラミンモノマー(東京化成社製)(3.4g)を添加し、80℃で10分撹拌することで、メラミン-ホルムアルデヒド混合液を得た。
【0146】
常温下で、前記スチレン-マレイン酸共重合体水溶液の全量に、可塑剤(Z)-2(65g)を添加し、得られた混合液を、ホモジナイザー(プライミクス社製)を用いて、回転数3500rpmの条件で3分撹拌することにより、乳化液を得た。
【0147】
得られた乳化液の全量に、前記メラミン-ホルムアルデヒド混合液の全量を添加し、80℃で、回転数500rpmでアンカー翼を2時間回転させて、反応液を撹拌することにより、重縮合を行った。
次いで、反応液を25℃まで冷却した後、ここに希水酸化ナトリウム水溶液を少量添加することで、前記反応液のpHを7.0に調節した。
【0148】
以上により、メラミンからなる外殻を有し、芯物質として可塑剤(Z)-2を内包したマイクロカプセルを、水分散体として得た。
【0149】
<マイクロカプセルの評価>
上記で得られたマイクロカプセルについて、実施例1の場合と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0150】
<粘着剤の製造、並びに粘着シートの製造及び評価>
上記で得られたマイクロカプセルの水分散体を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造し、評価した。粘着剤の製造時には、実施例1の場合と同様に、アクリル樹脂(A)-1の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、アクリル樹脂(A)-1の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、7.2質量%とした。得られた粘着剤の乾燥被膜の、酢酸エチルに対する不溶分は、45質量%であった。
そして、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表4に示す。
【0151】
<<粘着剤の製造、マイクロカプセルの製造及び評価、粘着剤の製造、並びに、粘着シートの製造及び評価>>
[比較例2]
比較例1の場合と同様に、マイクロカプセルを、水分散体として製造した。
このマイクロカプセルの水分散体を用いた点と、アクリル樹脂(A)-1のエマルションに代えて、実施例9で得られたものと同じアクリル樹脂(A)-2のエマルションを用いた点、以外は、実施例1の場合と同様に、粘着剤を製造した。このとき、実施例9の場合と同様に、アクリル樹脂(A)-2の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、アクリル樹脂(A)-2の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、12.7質量%とした。得られた粘着剤の乾燥被膜の、酢酸エチルに対する不溶分は、53質量%であった。
そして、この粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表4に示す。
【0152】
[比較例3]
<<粘着剤の製造>>
<他のアクリル樹脂(A’)-1の合成>
アクリル酸2-エチルヘキシル(30質量部)、アクリル酸ブチル(64質量部)、メタクリル酸メチル(5質量部)及びアクリル酸(1質量部)を用いるのに代えて、アクリル酸2-エチルヘキシル(99質量部)及びアクリル酸(1質量部)を用いた点以外は、上記のアクリル樹脂(A)-1の場合と同様の方法で、他のアクリル樹脂(A’)-1を合成した。得られた他のアクリル樹脂(A’)-1のエマルションにおいて、固形分の含有量の割合は55質量%であった。他のアクリル樹脂(A’)-1のガラス転移温度を表4に示す。
【0153】
<粘着剤の製造>
常温下で、マイクロカプセルの水分散体と、他のアクリル樹脂(A’)-1のエマルションと、粘着付与樹脂の水分散体「スーパーエステルE-788」(荒川化学社製、重合ロジンエステルの水分散体、固形分50質量%)と、を配合した。このとき、他のアクリル樹脂(A’)-1の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、他のアクリル樹脂(A’)-1の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、7.2質量%とした。さらに、得られた配合物に消泡剤、レベリング剤、防腐剤を加え、粘度調整剤を加えて、配合物の粘度を4000mPa・s(BL型粘度計、#4ローター使用、60rpmにて測定)に調整することで、水性の粘着剤を得た。得られた粘着剤の乾燥被膜の、酢酸エチルに対する不溶分は、42質量%であった。
【0154】
<<粘着シートの製造及び評価>>
上記で得られた粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表4に示す。
【0155】
[比較例4]
<<粘着剤の製造>>
<他のアクリル樹脂(A’)-2の合成>
アクリル酸2-エチルヘキシル(30質量部)、アクリル酸ブチル(64質量部)、メタクリル酸メチル(5質量部)及びアクリル酸(1質量部)を用いるのに代えて、アクリル酸2-エチルヘキシル(75質量部)、アクリル酸メチル(19.5質量部)、メタクリル酸(3.5質量部)及びアクリル酸(2質量部)を用いた点と、チオグリコール酸オクチルの使用量を0.09質量部に代えて0.03質量部とした点、以外は、上記のアクリル樹脂(A)-1の場合と同様の方法で、他のアクリル樹脂(A’)-2を合成した。得られた他のアクリル樹脂(A’)-2のエマルションにおいて、固形分の含有量の割合は55質量%であった。他のアクリル樹脂(A’)-2のガラス転移温度を表4に示す。
【0156】
<粘着剤の製造>
常温下で、マイクロカプセルの水分散体と、他のアクリル樹脂(A’)-2のエマルションと、粘着付与樹脂の水分散体「スーパーエステルE-788」(荒川化学社製、重合ロジンエステルの水分散体、固形分50質量%)と、を配合した。このとき、他のアクリル樹脂(A’)-2の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、他のアクリル樹脂(A’)-2の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、12.7質量%とした。さらに、得られた配合物に消泡剤、レベリング剤、防腐剤を加え、粘度調整剤を加えて、配合物の粘度を4000mPa・s(BL型粘度計、#4ローター使用、60rpmにて測定)に調整することで、水性の粘着剤を得た。得られた粘着剤の乾燥被膜の、酢酸エチルに対する不溶分は、65質量%であった。
【0157】
<<粘着シートの製造及び評価>>
上記で得られた粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表4に示す。
【0158】
[比較例5]
<<粘着剤の製造>>
<他のアクリル樹脂(A’)-3の合成>
アクリル酸2-エチルヘキシル(30質量部)、アクリル酸ブチル(64質量部)、メタクリル酸メチル(5質量部)及びアクリル酸(1質量部)を用いるのに代えて、アクリル酸ブチル(79質量部)、メタクリル酸メチル(20質量部)及びアクリル酸(1質量部)を用いた点以外は、上記のアクリル樹脂(A)-1の場合と同様の方法で、他のアクリル樹脂(A’)-3を合成した。得られた他のアクリル樹脂(A’)-3のエマルションにおいて、固形分の含有量の割合は55質量%であった。他のアクリル樹脂(A’)-3のガラス転移温度を表5に示す。
【0159】
<粘着剤の製造>
常温下で、マイクロカプセルの水分散体と、他のアクリル樹脂(A’)-3のエマルションと、粘着付与樹脂の水分散体「スーパーエステルE-788」(荒川化学社製、重合ロジンエステルの水分散体、固形分50質量%)と、を配合した。このとき、他のアクリル樹脂(A’)-3の配合量に対する、マイクロカプセルの配合量(前記水分散体中の水以外の成分の総配合量)の割合を、10質量%とした。また、他のアクリル樹脂(A’)-3の配合量に対する、粘着付与樹脂の配合量の割合を、7.5質量%とした。さらに、得られた配合物に消泡剤、レベリング剤、防腐剤を加え、粘度調整剤を加えて、配合物の粘度を4000mPa・s(BL型粘度計、#4ローター使用、60rpmにて測定)に調整することで、水性の粘着剤を得た。得られた粘着剤の乾燥被膜の、酢酸エチルに対する不溶分は、65質量%であった。
【0160】
<<粘着シートの製造及び評価>>
上記で得られた粘着剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、粘着シートを製造し、評価した。
これらの結果を表5に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
【表5】
【0166】
上記結果から明らかなように、実施例1~11においては、粘着シートの初期粘着力が高く、これを反映して基材の初期の剥離様式が好ましく、粘着シートの初期粘着性能が高かった。一方で、実施例1~11においては、粘着シートの解体時粘着力が低く、これを反映して基材の解体時の剥離様式が好ましく、粘着シートの解体時粘着性能が低かった。
すなわち、実施例1~11の粘着シートは、対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持できるものであった。一方で、これら粘着シートは、目的とする任意のタイミングで対象物から剥離する段階では、金属板のような硬い物品で擦過するだけで粘着力が低下し、対象物に粘着剤層が残存することなく容易に剥離できるものであった。
【0167】
実施例1~11においては、アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が-55.9~-52.4℃であり、アクリル樹脂(A)において、構成単位(a1)の量の割合が78~94質量%であり、構成単位(a2)の量の割合が1~2質量%であり、マイクロカプセルの外殻がポリウレアからなり、マイクロカプセルが常温で液状の可塑剤(Z)を内包していた。
【0168】
なかでも、実施例2、3、6、7、9~11においては、粘着シートの初期粘着力及び解体時粘着力がいずれも、最も好ましい範囲であり、初期粘着性能及び解体時粘着性能がいずれも特に優れていた。
粘着剤層の厚さに対するマイクロカプセルの中位径の割合が、実施例1~11においては50~120%であった(マイクロカプセルの中位径が7.5~18μmであった)のに対し、実施例2、3、6、7、9~11においては70~100%であった(マイクロカプセルの中位径が10~15μmであった)。
【0169】
なお、実施例1~11の粘着剤において、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、可塑剤(Z)の含有量の割合は、5.9~6.1質量%であった。
実施例1~11の粘着剤の乾燥被膜において、その総質量に対する、酢酸エチルに対する不溶成分の含有量の割合は、45~53質量%であった。
実施例1~11の粘着剤において、アクリル樹脂(A)の含有量に対する、粘着付与樹脂の含有量の割合は、7.2~12.7質量%であった。
実施例1~11のマイクロカプセルにおいて、マイクロカプセルの粒子径に対する、マイクロカプセルの外殻の厚さの割合は、11.3~12.9%であった。
【0170】
これに対して、比較例1~2においては、粘着シートの解体時粘着力が高く、これを反映して基材の解体時の剥離様式が好ましくなく、粘着シートの解体時粘着性能が高かった。すなわち、比較例1~2の粘着シートは、目的とする任意のタイミングで対象物から剥離する段階では、金属板のような硬い物品で擦過しても粘着力が低下せず、対象物に粘着剤層が残存してしまい、容易に剥離できないものであった。
比較例1~2においては、マイクロカプセルの外殻がメラミンからなるものであった。
【0171】
比較例3においては、粘着シートの初期粘着力が低く、これを反映して基材の初期の剥離様式が好ましくなく、粘着シートの初期粘着性能が低かった。すなわち、比較例3の粘着シートは、対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持できないものであった。
比較例3においては、アクリル樹脂(A)ではなく他のアクリル樹脂(A’)を用いており、そのガラス転移温度が-69.1℃であった。
【0172】
比較例4においては、比較例1~2の場合と同様に、粘着シートの解体時粘着力が高く、これを反映して基材の解体時の剥離様式が好ましくなく、粘着シートの解体時粘着性能が高かった。すなわち、比較例4の粘着シートは、目的とする任意のタイミングで対象物から剥離する段階では、金属板のような硬い物品で擦過しても粘着力が低下せず、対象物に粘着剤層が残存してしまい、容易に剥離できないものであった。
比較例4においては、アクリル樹脂(A)ではなく他のアクリル樹脂(A’)を用いており、アクリル樹脂(A’)において、構成単位(a2)の量の割合が5.5質量%であった。
【0173】
比較例5においては、比較例3の場合と同様に、粘着シートの初期粘着力が低く、これを反映して基材の初期の剥離様式が好ましくなく、粘着シートの初期粘着性能が低かった。すなわち、比較例5の粘着シートは、対象物に対して貼付後の初期段階では、高い粘着力で安定して貼付状態を維持できないものであった。
比較例5においては、アクリル樹脂(A)ではなく他のアクリル樹脂(A’)を用いており、そのガラス転移温度が-30.9℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、対象物に対して貼付後の初期段階では粘着力が高く、貼付後の任意のタイミングで粘着力を低くできる粘着シートとして、利用可能である。
【符号の説明】
【0175】
1・・・粘着シート、11・・・基材、11a・・・基材の一方の面、12・・・粘着剤層
図1