IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガス絶縁開閉装置 図1
  • 特開-ガス絶縁開閉装置 図2
  • 特開-ガス絶縁開閉装置 図3
  • 特開-ガス絶縁開閉装置 図4
  • 特開-ガス絶縁開閉装置 図5
  • 特開-ガス絶縁開閉装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172748
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガス絶縁開閉装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/035 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02B13/035 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090676
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】山本 真司
【テーマコード(参考)】
5G017
【Fターム(参考)】
5G017BB01
5G017DD05
(57)【要約】
【課題】接触子の開閉動作に伴い変位するアーク接点の動作不良を防止すること。
【解決手段】開閉装置(10)は、絶縁性ガスが充填される空間内に設けられる固定側接触子(14)と、空間内にて固定側接触子に対し開閉動作する可動側接触子(13)とを備えている。固定側接触子は、可動側接触子と接離可能な固定側主接点(16)と、可動側接触子の開閉動作方向に変位可能に設けられ、且つ、可動側接触子から離間する際にアークが発生するアーク接点(17)とを含んでいる。開閉装置は、内周面にてアーク接点の外周面が摺動することでアーク接点の変位を案内する摺動部(30)と、アーク接点と摺動部の内周面との間への異物(D)の侵入を規制する異物捕獲部(35)とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスが充填される空間内に設けられる固定側接触子と、
前記空間内にて前記固定側接触子に対し開閉動作する可動側接触子とを備えたガス絶縁開閉装置であって、
前記固定側接触子は、前記可動側接触子と接離可能な固定側主接点と、
前記可動側接触子の開閉動作方向に変位可能に設けられ、且つ、前記可動側接触子から離間する際にアークが発生するアーク接点とを含み、
内周面にて前記アーク接点の外周面が摺動することで前記アーク接点の変位を案内する摺動部と、
前記アーク接点と前記摺動部の内周面との間への異物の侵入を規制する異物捕獲部とを備えていることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記異物捕獲部は、変位する前記アーク接点の外周面に摺動しつつ、前記可動側接触子の開閉動作に追従して開閉動作方向に変形可能な多孔質体を含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
前記摺動部を支持して前記開閉動作方向に交差する方向に配設される隔壁部を更に備え、
前記異物捕獲部は、前記隔壁部との接触が維持された状態で取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
前記異物捕獲部は、多孔質体と、前記可動側接触子の開閉動作方向へ前記多孔質体を変位可能に支持する弾性体とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
前記アーク接点は、閉路状態で先端が前記可動側接触子と接触し、
前記異物捕獲部は、前記アーク接点の先端側外周面を含む位置に設けられ、且つ、アークの発生による蒸発によってアークを冷却する材質とされることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項6】
前記アーク接点は、開路状態にて、環状をなす前記固定側主接点の内部に位置し、
前記異物捕獲部は、開路状態の前記アーク接点の外周面と前記固定側主接点の内周面とを閉塞することを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置に関し、特に、受配電設備用に用いられるガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるガス絶縁開閉装置にあっては、操作装置により駆動される可動接触子と、固定アーク接触子と、ガイド部材の内周面に沿って軸方向に移動可能な可動導体とを備えている。閉路状態から操作装置により可動接触子を駆動すると、可動導体は、可動接触子の開離動作に伴って可動接触子の先端と接触しながら移動する。その後、可動接触子が固定アーク接触子から開離すると、開路状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-236459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したガス絶縁開閉装置では、アークによる各接触子の損傷によって異物が発生し、該金属異物がガイド部材と可動導体との間や、可動導体と固定アーク接触子との間に入り込み易くなる。このため、可動導体の移動に抗する摩擦力が大きくなって可動導体の動作不良が発生する、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、接触子の開閉動作に伴い変位するアーク接点の動作不良を防止することができるガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスが充填される空間内に設けられる固定側接触子と、前記空間内にて前記固定側接触子に対し開閉動作する可動側接触子とを備えたガス絶縁開閉装置であって、前記固定側接触子は、前記可動側接触子と接離可能な固定側主接点と、前記可動側接触子の開閉動作方向に変位可能に設けられ、且つ、前記可動側接触子から離間する際にアークが発生するアーク接点とを含み、内周面にて前記アーク接点の外周面が摺動することで前記アーク接点の変位を案内する摺動部と、前記アーク接点と前記摺動部の内周面との間への異物の侵入を規制する異物捕獲部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異物捕獲部を備えているので、アークの発生によって異物が発生しても、アーク接点と摺動部の内周面との間に異物が入り込むことを規制でき、アーク接点の動作不良を防止することができる。これにより、固定側接触子におけるアークの発生位置を安定してアーク接点にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。
図2】第1の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の閉路状態の概略部分断面図である。
図3】第2の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。
図4】第2の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の閉路状態の概略部分断面図である。
図5】第3の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。
図6】第4の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置(以下、単に「開閉装置」という)について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「前」、「後」、各図に矢印にて示した方向を基準として用いる。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。図2は、第1の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の閉路状態の概略部分断面図である。図1及び図2に示すように、開閉装置10は、主回路を形成する導体(支持導体)11を備え、導体11は不図示の筐体の内部空間内に設けられる。該内部空間内には、六フッ化硫黄(SF6)や、乾燥空気等の絶縁性ガスが充填される。
【0011】
また、開閉装置10は、筐体の内部空間内に設けられる可動側接触子13及び固定側接触子14を備えている。固定側接触子14は導体11に支持及び通電され、該導体11と共に回路を構成する不図示の導体に可動側接触子13が通電される。本実施の形態では、可動側接触子13及び固定側接触子14によって回路を開閉する断路器を構成している。
【0012】
可動側接触子13は、前後方向に延出する丸軸状に形成され、導体11と略同一中心軸上に配設される。可動側接触子13は、不図示の操作機構によって前後方向に動作する。操作機構は、適宜な回転機構やシリンダ等の駆動源からの駆動力をレバーやリンク機構を介して可動側接触子13に伝達する。
【0013】
可動側接触子13は、図1に示す開路状態では前方に位置して固定側接触子14と離間し、図2に示す閉路状態では後方に位置して先端側(後端側)で固定側接触子14と接触する。よって、可動側接触子13は、固定側接触子14に対して進退する開閉動作可能に設けられ、可動側接触子13の開閉動作方向が前後方向と平行となる。
【0014】
固定側接触子14は、可動側接触子13と接離可能な固定側主接点16及びアーク接点17を備え、アーク接点17は、前後方向に変位可能に設けられている。固定側接触子14は、導体11の前端部(一端部)に設けられる支持部18を介して支持される。
【0015】
固定側接触子14の固定側主接点16は、詳細な図示を省略するが、可動側接触子13の外径よりも若干小さい開口径を有する環状導体により構成される。固定側主接点16は、周方向に所定間隔毎に複数の溝を形成したり、複数の片状体を周方向に並べて設けたりすることで、径方向に可撓性あるいは弾性を発揮するよう設けられる。よって、固定側主接点16は、図2に示す閉路状態にて、後退位置となる可動側接触子13の先端側外周面に適度の接触圧をもって接触して通電可能となっている。
【0016】
導体11の前端部には、電界集中を防止するシールド19が固定側主接点16を覆うように設けられている。シールド19には開口19aが形成され、開口19aは、可動側接触子13の外径より大きい開口径に形成されている。よって、可動側接触子13の先端(後端)側がシールド19の開口19a内を前後方向に通過可能となっている。
【0017】
固定側接触子14のアーク接点17は、固定側主接点16の開口径よりも小さい外径を有する丸軸状の接点本体21と、接点本体21の後端に連なって接点本体21より大径の円板状をなす基部22とを備えている。アーク接点17における接点本体21は、図2に示す閉路状態にて、先端(前端)が可動側接触子13の先端と接触して通電可能となる。また、接点本体21は、可動側接触子13の外径より小さい外径に形成されている。
【0018】
支持部18は、導体11の前端部を開口するよう形成される第1収容部23と、第1収容部23の後方に形成される隔壁部25と、隔壁部25の後方に形成される第2収容部26とを備えている。第1収容部23及び第2収容部26は、導体11の中心軸を中心軸として前後方向に延出する丸穴状に形成され、隔壁部25の開口25aは、前後方向から見て円形に形成される。
【0019】
第1収容部23は、アーク接点17における接点本体21の一部と、後述する異物捕獲部35とを収容している。第1収容部23は、接点本体21の外周面から径方向に所定間隔を隔てて形成される内周面部27を備えている。よって、内周面部27は、前後方向に延出しつつアーク接点17の外周を囲う位置に設けられる。内周面部27(第1収容部23)は後部にて隔壁部25に連なっている。
【0020】
ここで、支持部18は、導体11の前端部から前方に突出する環状突部28を更に備え、環状突部28によって内周面部27の前方領域が形成される。環状突部28は、固定側主接点16の内周に接触して支持しており、固定側主接点16が環状突部28によって導体11と通電可能となっている。
【0021】
第1収容部23は、可動側接触子13の外径より大きい内径に形成されている。よって、第1収容部23は、固定側主接点16を貫通した可動側接触子13の後端(先端)側を受容可能に設けられる。
【0022】
隔壁部25は、第1収容部23及び第2収容部26を仕切るよう、前後方向に直交(交差)する方向に配設される。隔壁部25の開口25aは、第1収容部23及び第2収容部26の内径より小さく、アーク接点17における接点本体21の外径より若干大きい開口径に形成されている。
【0023】
支持部18にあっては、隔壁部25の開口25aに埋設されるよう支持される摺動部30を更に備えている。摺動部30は、低摩擦摺動部材となるウェアリング等によって構成され、アーク接点17の接点本体21が内部に挿通される環状に設けられる。よって、摺動部30は、接点本体21の外径と略同一の開口径に形成され、接点本体21の径方向にてアーク接点17を支持している。また、摺動部30は、内周面にて前後方向に変位する接点本体21の外周面が摺動し、かかる摺動によってアーク接点17の前後方向の変位を案内する。
【0024】
第2収容部26は、アーク接点17の基部22及び接点本体21の後端側に加え、ばね部材31を収容している。ばね部材31は、本実施の形態では、圧縮コイルばねにより構成され、後端側は第2収容部26の後部を閉塞するように設けられる押さえ部材32によって固定される。ばね部材31は、押さえ部材32とアーク接点17の基部22との間に配設される。この状態で、ばね部材31は、自然長より圧縮されて蓄勢され、アーク接点17を前方に変位する方向に弾性力を付与している。
【0025】
第2収容部26の内径は、アーク接点17における基部22の外径と略同一に形成されている。よって、第2収容部26の内周面にアーク接点17の基部22が接触した状態が維持され、アーク接点17が基部22及び第2収容部26の内周面によって導体11と通電可能となっている。
【0026】
また、第2収容部26は前部にて隔壁部25に連なり、隔壁部25における開口25aの開口径はアーク接点17における基部22の外径より小さくなる。よって、図1の開路状態にて、ばね部材31の弾性力により隔壁部25の後面に基部22の前面が押さえ付けられると、アーク接点17の前方への変位が規制されて前後方向にて位置決めされる。
【0027】
本実施の形態の開閉装置10は、第1収容部23にてアーク接点17の接点本体21の周りに設けられる異物捕獲部35を更に備えている。異物捕獲部35は、合成樹脂を用いた多孔質体を含んで形成され、合成樹脂としては、メラミン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン等を例示することができる。
【0028】
異物捕獲部35は、筒状に形成されて内周面が接点本体21の外周面に接触しつつ、接点本体21の外周面と非固定とされる。よって、異物捕獲部35の内周面に接点本体21の外周面が摺動可能としつつ、それらの間が閉塞された状態に維持される。また、異物捕獲部35は、多孔質体を含んで形成されることで、前後方向に収縮及び膨張するように弾性的に変形可能に設けられる。
【0029】
更に、異物捕獲部35の後端面は、隔壁部25の前面との接触が維持された状態で取り付けられる。よって、異物捕獲部35が前後方向に変形する際、異物捕獲部35の後端面の前後位置が維持されるので、異物捕獲部35の前端位置が前後方向にて変化するようになる。また、異物捕獲部35が変形しても、異物捕獲部35の後端面と隔壁部25の前面との間が閉塞された状態に維持される。
【0030】
以上の構成において、図2に示す閉路状態では、可動側接触子13が後方に移動して固定側主接点16の内部に挿入される。また、可動側接触子13の後端がアーク接点17の前端に接触してアーク接点17が後方に押し込まれ、アーク接点17が後退位置となってばね部材31が圧縮される。閉路状態では、ばね部材31の弾性力によってアーク接点17における接点本体21の前端が可動側接触子13の後端を押圧するよう圧接され、且つ、可動側接触子13の先端側外周面に固定側主接点16が適度の接触圧をもって接触される。
【0031】
閉路状態では、可動側接触子13、固定側主接点16、環状突部28を経由して導体11に流れる通電経路と、可動側接触子13、アーク接点17の接点本体21、基部22、第2収容部26の内面(形成面)を経由して導体11に流れる通電経路とが形成される。
【0032】
また、閉路状態では、可動側接触子13の後端が第1収容部23内に配置され、可動側接触子13によって押し込まれて異物捕獲部35の前後幅が小さくなるよう圧縮変形される。そして、可動側接触子13の後端に異物捕獲部35が接触した状態となりつつ、異物捕獲部35の内周面に接点本体21の外周面が接触した状態が維持される。よって、摺動部30とアーク接点17の接点本体21との摺動部分は、前方から異物捕獲部35によって閉塞される。
【0033】
閉路状態から図1に示す開路状態とするには、可動側接触子13が図2に示す位置から前方に移動される。かかる移動の初期段階では、ばね部材31の弾性力によってアーク接点17も可動側接触子13の移動に追従して前方に変位し、可動側接触子13とアーク接点17との電気的な接続が維持される。一方、可動側接触子13の前方移動によって、可動側接触子13が固定側主接点16の内部から抜け出ると、可動側接触子13から固定側主接点16が切り離される。従って、固定側接触子14では、固定側主接点16を経由する通電経路は遮断され、アーク接点17を経由する通電経路にて電流が流れる。
【0034】
アーク接点17(接点本体21)の前端が固定側主接点16の前端より前方となる前進位置に変位すると、アーク接点17の基部22が隔壁部25に当接してアーク接点17の前方への変位が停止される。この状態で、可動側接触子13の前方の移動が継続され、可動側接触子13からアーク接点17が離間される。可動側接触子13からアーク接点17が離間する際、それらの間にアークARが発生する。よって、固定側接触子14において、アークARの発生位置がアーク接点17となり、固定側主接点16にアークARが発生することを防止することができる。これにより、固定側主接点16を保護して長寿命化を図ることができる。
【0035】
可動側接触子13からアーク接点17が離間し、アークARが消弧した開路状態では、異物捕獲部35に外力が加わらず、閉路状態に比べ、異物捕獲部35の前後幅が拡大し、異物捕獲部35の前端が固定側主接点16の開口より後方近傍まで膨張するよう変形する。開路状態から図2に示す閉路状態とする場合、異物捕獲部35が可動側接触子13によって再度押し込まれて異物捕獲部35の前後幅が小さくなるよう圧縮変形される。よって、異物捕獲部35は、可動側接触子13の開閉動作を繰り返しても、該開閉動作に追従して変形可能となっている。
【0036】
開路状態においても、異物捕獲部35の後端に隔壁部25が接触し、異物捕獲部35の内周面に接点本体21の外周面が接触した状態が維持される。よって、摺動部30とアーク接点17の接点本体21との摺動部分は、前方から異物捕獲部35によって閉塞される。
【0037】
ここで、開閉装置10にあっては、各接触子13、14周りの空間内に粒子状の異物D(図1参照)が飛散する場合がある。異物Dとしては、アークARの発生によって生じる金属(酸化物も含む)が液体や固体として飛散する物を例示でき、幅広い粒径となることが想定される。かかる異物Dが、仮に摺動部30の内周面とアーク接点17との間に入り込んでしまうと、摩擦による負荷が増大してアーク接点17に動作不良が生じる。
【0038】
アーク接点17に動作不良が生じる仮定では、開路状態から閉路(投入)する場合、可動側接触子13が固定側接触子14の各接点16、17に接触できずに通電不良が生じたり、可動側接触子13を動作する操作機構に大きな負荷が加わる、という問題がある。また、閉路状態から開路(遮断)する場合、アーク接点17が動作せず、シールド19や固定側主接点16がアークARによって損傷する、という問題がある。
【0039】
これに対し、第1の実施の形態では、異物捕獲部35を設けたので、多孔質体に形成される微小な多数の空孔や表面にて異物Dが吸着、捕集される。言い換えると、異物捕獲部35を形成する多孔質体は、発生し得る異物Dの粒径に応じて該異物Dが通過しないサイズの空孔を備えて形成される。これにより、異物捕獲部35によって、アーク接点17と摺動部30の内周面との間への異物Dの侵入が規制され、それらの間で摩擦による負荷が増大することを回避してアーク接点17の動作不良を防止することができる。
【0040】
アーク接点17の動作不良を防止可能とすることで、固定側接触子14におけるアークARの発生位置を安定してアーク接点17にすることができ、シールド19や固定側主接点16がアークARによって損傷することを防ぐことができる。また、投入時の各接触子13、14の通電不良の発生を回避できる他、可動側接触子13を動作する操作機構に意図しない負荷が加わることを防止することができる。
【0041】
しかも、第1の実施の形態では、異物捕獲部35がアーク接点17における接点本体21の外周面に摺動して接触した状態を維持し、更には、異物捕獲部35の後端に隔壁部25が接触した状態を維持している。これにより、摺動部30とアーク接点17の接点本体21との摺動部分は、前方から異物捕獲部35によって閉塞され、異物捕獲部35と接点本体21との間等から摺動部30の内部に異物Dが侵入することを規制できる。
【0042】
また、異物捕獲部35が可動側接触子13の開閉動作に追従して前後方向に変形するので、異物捕獲部35の前後長さを所定長さ確保しても、可動側接触子13やアーク接点17を良好に動作させることができる。
【0043】
続いて、本発明の前記以外の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、説明する実施の形態より前に記載された実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0044】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態について図3及び図4を参照して説明する。図3は、第2の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。図4は、第2の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の閉路状態の概略部分断面図である。図3及び図4に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、異物捕獲部40の構成を変更している。第2の実施の形態において、異物捕獲部40は、多孔質体41と、弾性体42とを備えている。
【0045】
多孔質体41は、第1の実施の形態の異物捕獲部35を形成する多孔質体と同様の材質により構成してもよいし、該異物捕獲部35の多孔質体とは異なり、前後方向に弾性的に変形しない材質としてもよい。かかる材質としては、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂とする他、鉱物、セラミックとすることが例示できる。
【0046】
多孔質体41は、内部にアーク接点17の接点本体21が貫通する環状に形成されている。多孔質体41の内周面は、接点本体21の外周面に接触し、接点本体21の外周面に摺動可能とされる。多孔質体41の外周面は、第1収容部23の内周面部27に接触し、内周面部27に摺動可能とされる。よって、多孔質体41は、接点本体21の外周面と内周面部27との間を閉塞しつつ、前後方向に移動可能に設けられる。
【0047】
弾性体42は、本実施の形態では、圧縮コイルばねにより構成され、アーク接点17の接点本体21を挿通しつつ後端側が隔壁部25によって固定される。弾性体42は、前端側にて多孔質体41を支持している。
【0048】
図3に示す開路状態では、弾性体42が自然長となって多孔質体41が図示された前後方向の位置に位置決めされる。一方、図4に示す閉路状態では、可動側接触子13によって多孔質体41がアーク接点17と共に後方に押し込まれ、弾性体42が前後方向にて圧縮されて蓄勢される。閉路状態から開路(遮断)すると、可動側接触子13の前方への移動と共に弾性体42の蓄勢力によって多孔質体41が前方に移動する。よって、弾性体42は、前後方向へ多孔質体41を変位可能に支持している。
【0049】
第2の実施の形態にあっても、異物捕獲部40が多孔質体41を備え、多孔質体41によって異物D(図1参照)を捕集することができる。また、多孔質体41が接点本体21の外周面と内周面部27との間を閉塞するので、アーク接点17と摺動部30の内周面との間への異物Dの侵入を規制でき、アーク接点17の動作不良を防止することができる。
【0050】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態について図5を参照して説明する。図5は、第3の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。図5に示すように、第3の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、主として、異物捕獲部45の形状及び形成位置を変更している。
【0051】
第3の実施の形態において、筒状となる異物捕獲部45は、前端がアーク接点17(接点本体21)の先端(前端)に揃う位置に形成される。よって、異物捕獲部45は、アーク接点17の先端側外周面を含む位置に設けられる。また、異物捕獲部45は、固定側主接点16の開口径より小さい外径に形成されている。
【0052】
異物捕獲部45は、第1の実施の形態の異物捕獲部35と同様に、異物捕獲部45の内周面に接点本体21の外周面が摺動可能とされ、前後方向に収縮及び膨張するように弾性的に変形可能に設けられる。また、異物捕獲部45は、アークARの発生により蒸発(アブレーション)することでアークARを冷却する材質となるエンジニアリングプラスチック等が用いられる。よって、第3の実施の形態においては、アークAR発生時の異物捕獲部45の蒸発によってアークARの消弧性能を高めることができる。
【0053】
第3の実施の形態にあっても、異物捕獲部45が多孔質体を備え、多孔質体によって異物D(図1参照)を捕集することができる。また、異物捕獲部45が摺動部30の前方を閉塞するので、アーク接点17と摺動部30の内周面との間への異物Dの侵入を規制でき、アーク接点17の動作不良を防止することができる。
【0054】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態について図6を参照して説明する。図6は、第4の実施の形態に係るガス絶縁開閉装置の開路状態の概略部分断面図である。図6に示すように、第4の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、主として、異物捕獲部47の形状及び形成位置を変更している。
【0055】
第4の実施の形態において、筒状となる異物捕獲部47は、アーク接点17(接点本体21)の先端(前端)側の一部領域に設けられる。異物捕獲部47の内周面は、接点本体21の外周面に固定とされ、アーク接点17の前後方向の変位と共に変位される。開路状態にてアーク接点17が前進位置に配置された状態で、異物捕獲部47の外周面は、固定側主接点16の内周面と接触する。よって、異物捕獲部47は、接点本体21の外周面と固定側主接点16の内周面との間を閉塞している。なお、異物捕獲部47の材質は、第1の実施の形態の異物捕獲部35及び第2の実施の形態の多孔質体41の何れの材質も採用することができる。また、異物捕獲部47の材質を第3の実施の形態の異物捕獲部45と同様にした場合、アークARの発生により蒸発(アブレーション)することでアークARを冷却し、アークARの消弧性能を高めることができる。
【0056】
第4の実施の形態にあっても、異物捕獲部47が多孔質体を備え、多孔質体によって異物D(図1参照)を捕集することができる。また、異物捕獲部47が固定側主接点16とアーク接点17との間を閉塞して摺動部30の前方を閉塞するので、アーク接点17と摺動部30の内周面との間への異物Dの侵入を規制でき、アーク接点17の動作不良を防止することができる。
【0057】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、向きなどについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0058】
上記各実施の形態において、可動側接触子13の先端(後端)側と、アーク接点17(接点本体21)の先端(前端)側とに永久磁石M(図1にて二点鎖線で図示)を埋設してもよい。永久磁石Mを設けることによって、発生したアークARを駆動することができ、アークARによる可動側接触子13及びアーク接点17の損傷を抑制することができる。
【0059】
また、上述した構成を開閉装置10の断路器に適用した場合を説明したが、断路器に限定されるものでなく、接地開閉器や、接地開閉器付断路器等にも適用することができる。
【0060】
また、上記各実施の形態にて、異物捕獲部35、40、45、47は、各接触子13、14の交換やメンテナンス時に、交換したり捕集した異物Dを除去したりできるようにするとよい。
【0061】
また、異物捕獲部35、40、45、47は、上記各実施の形態と同様に異物Dを捕集、吸着できる限りにおいて、多孔質体以外の材料によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :開閉装置(ガス絶縁開閉装置)
13 :可動側接触子
14 :固定側接触子
16 :固定側主接点
17 :アーク接点
25 :隔壁部
30 :摺動部
35 :異物捕獲部
40 :異物捕獲部
41 :多孔質体
42 :弾性体
45 :異物捕獲部
47 :異物捕獲部
AR :アーク
D :異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6