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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172751
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】倉庫制御装置及び倉庫制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20241205BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65G1/00 501Z
G05B19/418 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090683
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】片岡 雅生
(72)【発明者】
【氏名】石坂 知広
【テーマコード(参考)】
3C100
3F022
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA47
3C100BB02
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB22
3C100BB25
3F022AA05
3F022EE02
3F022JJ01
3F022JJ07
3F022JJ11
3F022MM13
(57)【要約】
【課題】待機ステーションでパレットが長時間待機することを防止して、加工システム全体の稼働率を向上させることのできる倉庫制御装置を提供する。
【解決手段】倉庫制御装置1は、加工機5A、5Bが設けられた複数の加工ラインのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、複数の工程で加工される材料を積載するパレットの番号とを含む加工スケジュールを記憶するメモリ10と、加工スケジュールに基づいて、開始時刻が早い順に複数の工程を実行する順番を設定し、パレットが格納された倉庫3からパレットを出庫させる出庫時刻を開始時刻の所定時間前に設定し、出庫時刻にしたがって、パレットを、倉庫3から待機ステーション13A、13Bへ出庫させる制御を実行するプロセッサ20とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機が設けられた複数の加工ラインのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、前記複数の工程で加工される前記材料を積載するパレットの番号とを含む加工スケジュールを記憶するメモリと、
前記加工スケジュールに基づいて、前記開始時刻が早い順に前記複数の工程を実行する順番を設定し、前記パレットが格納された倉庫から前記パレットを出庫させる出庫時刻を前記開始時刻の所定時間前に設定し、前記出庫時刻にしたがって、前記パレットを、前記倉庫から、前記加工機へ前記材料を搬入するピッキングステーションの前に設けられている待機ステーションへ出庫させる制御を実行するプロセッサと、
を備える倉庫制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記所定時間を、前記倉庫から前記待機ステーションまで前記パレットが移動する移動時間に設定する、
請求項1に記載の倉庫制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記所定時間を、前記材料の1枚の加工時間に設定する、
請求項1に記載の倉庫制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記材料を前記加工機で加工する加工時間の実測値と、前記加工スケジュールを作成するために想定された加工時間の予想値との差が所定値より大きい場合には、前記出庫時刻を再設定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の倉庫制御装置。
【請求項5】
加工機が設けられた複数の加工ラインのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、前記複数の工程で加工される前記材料を積載するパレットの番号とを含む加工スケジュールに基づいて、前記開始時刻が早い順に前記複数の工程を実行する順番を設定する処理と、
前記パレットが格納された倉庫から前記パレットを出庫させる出庫時刻を前記開始時刻の所定時間前に設定する処理と、
前記出庫時刻にしたがって、前記パレットを、前記倉庫から、前記加工機へ前記材料を搬入するピッキングステーションの前に設けられている待機ステーションへ出庫させる処理と、
をプロセッサが実行する倉庫制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫制御装置及び倉庫制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の加工機により材料の加工を連続して行うライン加工システムが記載されている。特許文献1のライン加工システムでは、複数の加工機をパラレルに配置し、加工機の各工程で加工する材料をそのつど倉庫から出庫し、各工程の加工が完了するごとに製品を倉庫へ入庫する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-285804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の加工機で同じ材料を加工する場合には、同じ材料を載せたパレットが1枚しかないと、いずれかの加工機では材料待ちをしなければならない場合がある。特に、加工機に待機ステーションが設けられている場合には、材料を載せたパレットを待機ステーションで待機させている間は、他の加工機でその材料が必要になっても加工を開始することができない。したがって、待機ステーションでパレットを長時間待機させておくと、他の加工機で待ち時間が発生することになり、加工システム全体の稼働率を低下させてしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、加工機が設けられた複数の加工ラインのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、前記複数の工程で加工される前記材料を積載するパレットの番号とを含む加工スケジュールを記憶するメモリと、前記加工スケジュールに基づいて、前記開始時刻が早い順に前記複数の工程を実行する順番を設定し、前記パレットが格納された倉庫から前記パレットを出庫させる出庫時刻を前記開始時刻の所定時間前に設定し、前記出庫時刻にしたがって、前記パレットを、前記倉庫から、前記加工機へ前記材料を搬入するピッキングステーションの前に設けられている待機ステーションへ出庫させる制御を実行するプロセッサと、を備える倉庫制御装置である。
【0006】
本発明の他の一態様は、加工機が設けられた複数の加工ラインのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、前記複数の工程で加工される前記材料を積載するパレットの番号とを含む加工スケジュールに基づいて、前記開始時刻が早い順に前記複数の工程を実行する順番を設定する処理と、前記パレットが格納された倉庫から前記パレットを出庫させる出庫時刻を前記開始時刻の所定時間前に設定する処理と、前記出庫時刻にしたがって、前記パレットを、前記倉庫から、前記加工機へ前記材料を搬入するピッキングステーションの前に設けられている待機ステーションへ出庫させる処理と、をプロセッサが実行する倉庫制御方法である。
【0007】
本発明の一態様に係る倉庫制御装置及びその方法によれば、パレットを倉庫から出庫させる出庫時刻を、工程の開始時刻の所定時間前に設定したので、待機ステーションでパレットを長時間待機させることがなくなる。これにより、加工システム全体の稼働率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、加工システム全体の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る倉庫制御装置を備えた加工システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、一実施形態に係るライン制御装置による加工ライン制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、一実施形態に係るライン制御装置によって読み取られる工程表の一例を示す図である。
図4図4は、一実施形態に係るライン制御装置によって作成された加工スケジュールの一例を示す図である。
図5図5は、一実施形態に係る倉庫制御装置による倉庫制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、一実施形態に係る倉庫制御装置によって作成されたパレット出庫スケジュールの一例を示す図である。
図7図7は、一実施形態に係る倉庫制御装置によって出庫時刻が設定されたパレット出庫ファイルの一例を示す図である。
図8図8は、一実施形態に係る倉庫制御装置によって開始時刻が補正された加工スケジュールの一例を示す図である。
図9図9は、一実施形態に係る倉庫制御装置によって生成されたパレット出庫ファイルの一例を示す図である。
図10図10は、一実施形態に係る倉庫制御装置による倉庫制御処理の一例を示すタイミングチャートである。
図11図11は、従来の倉庫制御処理の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[加工システム]
以下、図面を参照し、本実施形態に係る倉庫制御装置を備えた加工システムについて説明する。図1は、倉庫制御装置を備えた加工システムの構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る加工システム100は、倉庫制御装置1と、倉庫3と、加工機5A、5Bと、搬入装置7A、7Bと、ライン制御装置9A、9Bとを備える。尚、倉庫制御装置1と、加工機5A、5Bと、搬入装置7A、7Bと、ライン制御装置9A、9Bとは、互いにネットワークを介して接続されている。
【0011】
本実施形態に係る倉庫制御装置1は、加工機5A、5Bが設けられた複数の加工ラインA、Bのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、複数の工程で加工される材料を積載するパレットPの番号とを含む加工スケジュールを記憶するメモリ10と、加工スケジュールに基づいて、開始時刻が早い順に複数の工程を実行する順番を設定し、パレットPが格納された倉庫3からパレットPを出庫させる出庫時刻を開始時刻の所定時間前に設定し、出庫時刻にしたがって、パレットPを、倉庫3から、加工機5A、5Bへ材料を搬入するピッキングステーション11A、11Bの前に設けられている待機ステーション13A、13Bへ出庫させる制御を実行するプロセッサ20と、を備える。
【0012】
倉庫制御装置1は、倉庫3の在庫管理を行う端末であり、材料や製品が積載されたパレットPの入出庫を制御している。特に、プロセッサ20は、パレットPを倉庫3から出庫させる出庫時刻を、工程の開始時刻の所定時間前に設定している。また、プロセッサ20は、所定時間を、倉庫3から待機ステーション13A、13BまでパレットPが移動する移動時間に設定してもよい。プロセッサ20は、所定時間を、ピッキングステーション11A、11Bと待機ステーション13A、13Bとの間でパレットPを交換する交換時間を移動時間に加算した時間に設定してもよい。プロセッサ20は、所定時間を、材料の1枚の加工時間に設定してもよい。
【0013】
倉庫制御装置1は、メモリ10と、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ20と、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ10と各種のインターフェースは、バスを介してプロセッサ20に接続されている。プロセッサ20によってメモリ10に格納されたプログラムを実行することにより、倉庫制御装置1は、倉庫3から加工機5A、5BへパレットPを出庫させる制御を実行する。
【0014】
本実施形態に係る加工システム100は、加工機5A、5Bが設けられた加工ラインが複数設置されている。加工ラインA、Bには、加工機5A、5Bへ材料を搬入するピッキングステーション11A、11Bの前に材料が積載されたパレットPを待機させておく待機ステーション13A、13Bが設けられている。
【0015】
倉庫3は、材料がパレットPに積載されて格納された自動倉庫であり、出庫時刻になると、倉庫制御装置1の指示にしたがってクレーンCがパレットPを出庫用の搬送台車15へ移動させ、パレットPを加工機5A、5Bへ出庫する。加工機5A、5Bでの加工が完了すると、加工された製品を載せたパレットPが入庫用の搬送台車17に載せられて倉庫3へ移動し、クレーンCがパレットPを倉庫3に格納する。
【0016】
加工機5A、5Bは、加工ラインAと加工ラインBにそれぞれ設けられ、材料に対して所定の加工を行うことによって、材料から製品を製造する。例えば、加工機5A、5Bは、材料に対してレーザビームを照射してレーザ加工を行うレーザ加工機、パンチとダイとからなる金型により材料に対してパンチ加工を行うパンチ加工機、或いは、これらの複合機である。加工機5A、5Bには、それぞれNC装置(数値制御(Numerical Control)装置)が設けられており、このNC装置が、搬入装置7A、7Bとライン制御装置9A、9Bと通信して、加工機5A、5Bを制御する。
【0017】
加工ラインA、Bには、パレットPから加工機5A、5Bへ材料を搬入するピッキングステーション11A、11Bと、ピッキングステーション11A、11Bへ移動する前にパレットPを待機させておく待機ステーション13A、13Bがそれぞれ設けられている。また、加工ラインA、Bには、加工機5A、5Bで加工された製品をパレットPに搬出する集積ステーション19A、19Bと、集積ステーション19A、19Bへ移動する前にパレットPを待機させておく待機ステーション21A、21Bがそれぞれ設けられている。尚、本実施形態では、加工機及び加工ラインが2つの場合を例示しているが、3つ以上であってもよい。
【0018】
搬入装置7A、7Bは、ライン制御装置9A、9Bから取得した加工スケジュールにしたがって、ピッキングステーション11A、11BにあるパレットPから材料を1枚ずつ加工機5A、5Bへ搬入する。搬入装置7A、7Bは、それぞれPLC(Programmable Logic Controller)を備えており、PLCは、加工機5A、5Bへ材料を搬入するように制御する。尚、加工機5A、5Bで加工された製品は、図示していない集積装置によって集積ステーション19A、19BにあるパレットPへ搬出される。
【0019】
ライン制御装置9A、9Bは、加工機5A、5Bが設けられた複数の加工ラインA、Bのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、複数の工程で加工される材料を積載するパレットPの番号とを含む加工スケジュールを作成する。
【0020】
ライン制御装置9A、9Bは、加工ラインA、Bのスケジュール管理を行う端末である。具体的に、ライン制御装置9A、9Bは、各加工ラインの各工程で必要となる材料またはパレットPの番号を記録した工程表を取得し、加工開始時刻に各工程の加工時間を積算していくことによって加工スケジュールを作成する。ライン制御装置9A、9Bは、作成した加工スケジュールを、倉庫制御装置1と搬入装置7A、7Bと加工機5A、5Bへ送信して、加工ラインA、Bの加工スケジュールを管理する。
【0021】
ライン制御装置9A、9Bは、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリと各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ライン制御装置9A、9Bは、ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行することにより、加工ラインA、Bのスケジュールを管理する制御を実行する。
【0022】
[加工ライン制御処理]
次に、本実施形態に係るライン制御装置9A、9Bによる加工ライン制御処理を説明する。図2は、加工ライン制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0023】
図2に示すように、ステップS101において、ライン制御装置9A、9Bは、加工ラインA、Bで実行される各工程で必要となる材料を記録した工程表を読み取る。図3に示すように、工程表には、加工ラインA、Bで実行される各工程について、加工される材料を載せたパレットと、加工される材料の枚数が記録されている。工程表は、CAM(Computer Aided Manufacturing)やデータベースなどから取得してもよいし、管理者がライン制御装置9A、9Bに入力してもよい。
【0024】
ステップS103において、ライン制御装置9A、9Bは、各工程の加工時間と加工ラインA、Bの総加工時間を算出する。ライン制御装置9A、9Bは、材料1枚当たりの加工時間に加工枚数を乗算して各工程の加工時間を算出し、算出した各工程の加工時間を加算して総加工時間を算出する。材料1枚当たりの加工時間は、加工スケジュールを作成するために想定された加工時間の予想値であり、CAMで予め算出されている。
【0025】
ステップS105において、ライン制御装置9A、9Bは、各工程の時刻を算出する。具体的に、ライン制御装置9A、9Bは、加工機5A、5Bが加工を開始する加工開始時刻に各工程の加工時間を加算していくことによって各工程の開始時刻と終了時刻を算出する。
【0026】
ステップS107において、ライン制御装置9A、9Bは、ステップS105で算出した各工程の開始時刻と終了時刻とに基づいて加工スケジュールを作成し、作成した加工スケジュールを倉庫制御装置1と加工機5A、5Bと搬入装置7A、7Bに送信する。例えば、図4に示すように、ライン制御装置9Aは、加工ラインAの加工スケジュール50Aを作成し、ライン制御装置9Bは、加工ラインBの加工スケジュール50Bを作成する。加工スケジュール50A、50Bには、各工程の開始時刻及び終了時刻と、各工程で加工される材料を積載したパレットの番号が記録されている。
【0027】
ステップS201において、搬入装置7A、7Bは、ライン制御装置9A、9Bから送信された加工スケジュールを受信する。同様に、ステップS301において、加工機5A、5Bは、ライン制御装置9A、9Bから送信された加工スケジュールを受信する。尚、搬入装置7A、7Bと加工機5A、5Bは、それぞれ図3の工程表を予め取得している。
【0028】
ステップS203において、搬入装置7A、7Bは、ステップS201で受信した加工スケジュールにしたがって、待機ステーション13A、13Bからピッキングステーション11A、11Bへパレットを移動させてパレットを交換する。
【0029】
ステップS205において、搬入装置7A、7Bは、ステップS203でパレットの交換が完了すると、加工機5A、5Bへ加工開始の指示を送信する。
【0030】
ステップS303において、加工機5A、5Bは、ステップS205で送信された加工開始の指示を受信すると、加工スケジュールにしたがって材料の加工を開始する。この後、加工機5A、5Bは、1枚目の加工が終了すると、加工開始時刻と加工終了時刻をライン制御装置9A、9Bへ送信する。図3の工程表に記録された枚数の材料が加工されると、加工機5A、5Bは、材料の加工を終了する。
【0031】
ステップS207において、搬入装置7A、7Bは、加工機5A、5Bで加工が開始されると、材料を1枚ずつ加工機5A、5Bへ搬入する。そして、図3の工程表に記録された枚数の材料が搬入されると、搬入装置7A、7Bは、材料の搬入を終了する。
【0032】
ステップS109において、ライン制御装置9A、9Bは、加工機5A、5Bから受信した加工開始時刻と加工終了時刻との時間差を算出して、材料を加工機5A、5Bで加工する加工時間の実測値を算出する。ライン制御装置9A、9Bは、1枚の材料の加工が終了する毎に1枚の材料を加工するための加工時間の実測値を算出する。
【0033】
ステップS111において、ライン制御装置9A、9Bは、ステップS109で算出した加工時間の実測値と、加工スケジュールを作成するために想定された加工時間の予想値との差が、所定の閾値より大きいか否かを判定する。そして、加工時間の実測値と加工時間の予想値との差が閾値より大きい場合にはステップS113に進み、閾値以下の場合には本実施形態に係る加工ライン制御処理を終了する。例えば、加工スケジュールを作成するときに1枚の材料を加工する加工時間の予想値が10分で計算され、閾値が1分に設定されていた場合に、実測値が9分より小さいか11分より大きい場合にはステップS113へ進む。一方、実測値が9分以上、11分以下である場合には、加工スケジュールを修正する必要はないので、加工ライン制御処理を終了する。
【0034】
ステップS113において、ライン制御装置9A、9Bは、ステップS109で算出した加工時間の実測値に基づいて各工程の時刻を算出する。具体的に、ライン制御装置9A、9Bは、材料1枚当たりの加工時間の実測値に加工枚数を乗算して各工程の加工時間を算出し、算出した各工程の加工時間を加算して総加工時間を算出する。そして、ライン制御装置9A、9Bは、加工機5A、5Bが加工を開始する加工開始時刻に各工程の加工時間を加算していくことによって各工程の開始時刻と終了時刻を算出する。
【0035】
ステップS115において、ライン制御装置9A、9Bは、ステップS113で算出した各工程の開始時刻と終了時刻とに基づいて加工スケジュールを再作成する。そして、再作成した加工スケジュールを倉庫制御装置1と加工機5A、5Bと搬入装置7A、7Bに送信して、本実施形態に係る加工ライン制御処理を終了する。
【0036】
[倉庫制御処理]
次に、本実施形態に係る倉庫制御装置1のプロセッサ20による倉庫制御処理を説明する。図5は、倉庫制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0037】
図5に示すように、ステップS401において、プロセッサ20は、ライン制御装置9A、9Bで作成された加工スケジュールを取得すると、メモリ10に記憶させる。そして、プロセッサ20は、取得した加工スケジュールに基づいて加工ラインA、Bで必要となるパレットを、加工ライン毎に割り当てる。すなわち、プロセッサ20は、図3の工程表を予め取得しており、工程表に記録されている加工ラインA、Bで使用されるパレットを認識する。
【0038】
ステップS403において、プロセッサ20は、加工ラインAの加工スケジュールと加工ラインBの加工スケジュールを1つにまとめ、開始時刻が早い順に各工程を並べて、工程を実行する順番を設定する。例えば、図4に示す加工ラインAの加工スケジュール50Aと加工ラインBの加工スケジュール50Bがある場合には、図6に示すように、これらの加工スケジュールを1つにまとめて開始時刻が早い順に各工程を並べる。この順に工程を実行する順番を設定してパレット出庫スケジュール60を作成する。開始時刻が同じである場合には、同一の順番が設定されている。
【0039】
ステップS405において、プロセッサ20は、パレットを倉庫3から出庫させる出庫時刻を設定する。尚、図2のステップS115で加工スケジュールが再作成されている場合には、プロセッサ20は出庫時刻を再設定する。プロセッサ20は、まず実行する順番が1番の工程の開始時刻を、最初のパレットの出庫時刻に設定する。例えば、図7に示すように、実行する順番が1番の工程A1と工程B1の開始時刻が9:00なので、パレット101とパレット201の出庫時刻を9:00に設定する。
【0040】
3番目以降の工程では、プロセッサ20は、パレットの出庫時刻を、各工程の開始時刻の所定時間前に設定する。例えば、図7に示すように、実行する順番が3番の工程A2の開始時刻が9:50なので、パレット102の出庫時刻を5分前の9:45に設定する。所定時間の5分はパレットの出庫時間であり、倉庫3から待機ステーション13Aまでパレットが移動する移動時間である。実行する順番が4番以降の工程についても同様にパレットの出庫時刻を設定する。
【0041】
尚、所定時間は、ピッキングステーション11A、11Bと待機ステーション13A、13Bとの間でパレットを交換する交換時間を、倉庫3から待機ステーション13A、13Bまでパレットが移動する移動時間に加算した時間であってもよい。さらに、所定時間は、材料の1枚の加工時間であってもよい。ただし、1枚の材料の加工時間が、移動時間、または移動時間と交換時間との合計時間よりも短い場合には、所定時間を、移動時間、または移動時間と交換時間との合計時間よりも長くなるように設定する。
【0042】
こうして出庫時刻が設定または再設定されると、プロセッサ20は、工程A1と工程B1の出庫時刻を9:00に設定したため、図8に示すように工程A1と工程B1の開始時刻を所定時間の5分ずらして9:05に補正し、終了時刻も5分ずらして補正する。その後の工程の開始時刻と終了時刻も同じように5分ずつずらしていく。
【0043】
ステップS407において、プロセッサ20は、異なる加工ラインで実行される複数の工程の間でパレットの出庫時刻が重なっているか否かを判定する。そして、出庫時刻が重なっている場合にはステップS409へ進み、出庫時刻が重なっていない場合にはステップS411へ進む。例えば、図8に示すように、実行する順番が1番の工程A1と工程B1の出庫時刻は、いずれも9:00なので重なっている。また、実行する順番が5番の工程A4と工程B2の出庫時刻は、いずれも10:25なので重なっている。
【0044】
ステップS409において、プロセッサ20は、出庫時刻が重なっている工程の開始時刻を所定時間だけ移動させて開始時刻を補正し、開始時刻の補正に合わせて出庫時刻を補正する。所定時間は、上述したように出庫時間(移動時間)であるが、移動時間と交換時間との合計時間または材料1枚の加工時間であってもよい。例えば、図8に示すように、出庫時刻が重なっている工程A1と工程B1のうち、工程B1の開始時刻9:05に所定時間の5分を加算して、図9に示すように開始時刻を9:10に補正する。そして、開始時刻を5分ずらしたので、終了時刻も5分ずらして10:40に補正し、出庫時刻も開始時刻の5分前の9:05に補正する。一方、工程B1の開始時刻を補正したことにより、工程B2の開始時刻と終了時刻も5分ずれて10:40と11:40に補正されるので、工程B2の出庫時刻は開始時刻10:40の5分前の10:35に補正される。その結果、工程B2の出庫時刻は、工程A4の出庫時刻10:30と重ならなくなるので、工程B2の開始時刻を補正する必要はなくなる。
【0045】
ステップS411において、プロセッサ20は、ステップS409で開始時刻と出庫時刻を補正した結果、図9に示すパレット出庫ファイルを生成する。図9に示すように、パレット出庫ファイルには、パレットの出庫順(工程の実行順)と、工程の開始時刻及び終了時刻と、パレット番号と、出庫時刻が記録されている。生成されたパレット出庫ファイルは、メモリ10や図示していないデータベースに格納される。
【0046】
ステップS413において、プロセッサ20は、メモリ10からパレット出庫ファイルを読み込んで出庫時刻になったか否かを判定する。そして、出庫時刻になった場合にはステップS415へ進み、出庫時刻になっていない場合には継続して出庫時刻になったか否かを判定する。
【0047】
ステップS415において、プロセッサ20は、出庫時刻になったパレットの出庫処理を実行する。具体的に、プロセッサ20は、倉庫3に格納されているパレットをクレーンで搬送台車15へ移動させて、加工機5A、5Bへ出庫する。
【0048】
ステップS417において、プロセッサ20は、パレット出庫ファイルに記録された加工スケジュールが終了したか否かを判定し、終了していない場合にはステップS413へ戻り、終了している場合には本実施形態に係る倉庫制御処理を終了する。
【0049】
ここで、図10を参照して、パレットの出庫処理の具体例を説明する。図10は、加工ラインA、Bで実行される各工程でのパレットの入出庫を示すタイミングチャートであり、図9に示すパレット出庫ファイルの出庫時刻にしたがってパレットが出庫されている。図10では、点線で区切られた材料1枚の加工時間が10分で、材料1枚の加工時間はすべて同一と仮定している。
【0050】
図10に示すように、加工ラインAでは、時刻9:00にパレット101が倉庫3から出庫されてピッキングステーション11Aに到着し、時刻9:05に工程A1の加工が開始されている。この後、時刻9:55にパレット101の材料の加工が終了し、パレット102の材料を加工する工程A2が開始される。このとき、倉庫制御装置1は、工程A2の開始時刻から所定時間前にパレット102の出庫時刻を設定している。具体的に、図10では、工程A2の開始時刻9:55の5分前である時刻9:50に、パレット102の出庫時刻が設定されている。所定時間の5分は、パレットの出庫時間であり、倉庫3から待機ステーション13Aまでパレット102が移動する移動時間である。パレット102は、時刻9:50になると倉庫3を出庫して待機ステーション13Aに移動する。
【0051】
また、時刻9:45には、工程A1の最後の1枚の材料がパレット101から加工機5Aへ搬入されるので、パレット101はピッキングステーション11Aから倉庫3へ移動して入庫される。パレットの入庫時間は5分であり、この入庫時間は、ピッキングステーション11Aから倉庫3へパレット101が移動するのに要する移動時間である。この後、パレット103の材料を加工する工程A3の開始時刻が10:15なので、その5分前である時刻10:10にパレット103の出庫時刻が設定されている。パレット103は、時刻10:10になると倉庫3を出庫して待機ステーション13Aに移動し、時刻10:15に待機ステーション13Aからピッキングステーション11Aに移動して工程A3が開始される。
【0052】
一方、加工ラインBでは、パレット101の出庫が完了した時刻9:05にパレット201が倉庫3から出庫してピッキングステーション11Bに到着し、時刻9:10に工程B1の加工が開始される。そして、時刻10:40に工程B1の加工が終了し、パレット103の材料を加工する工程B2が開始される。したがって、工程B2の開始時刻の5分前である時刻10:35にパレット103の出庫時刻が設定され、パレット103は時刻10:35に倉庫3を出庫して待機ステーション13Bに移動する。この後の工程についても同様にパレットの出庫処理が実行される。
【0053】
[実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る倉庫制御装置1は、加工機5A、5Bが設けられた複数の加工ラインのうちのいずれかの加工ラインで材料を加工する複数の工程の開始時刻と、複数の工程で加工される材料を積載するパレットの番号とを含む加工スケジュールを記憶するメモリ10と、加工スケジュールに基づいて、開始時刻が早い順に複数の工程を実行する順番を設定し、パレットが格納された倉庫3からパレットを出庫させる出庫時刻を開始時刻の所定時間前に設定し、出庫時刻にしたがって、パレットを、倉庫3から、加工機5A、5Bへ材料を搬入するピッキングステーション11A、11Bの前に設けられている待機ステーション13A、13Bへ出庫させる制御を実行するプロセッサ20と、を備える。これにより、待機ステーション13A、13Bにパレットを長時間待機させることがなくなるので、加工システム全体の稼働率を向上させることができる。
【0054】
特に、倉庫制御装置1では、図10のパレット103のように異なる加工ラインで同一のパレットが割り当てられている場合でも、待機ステーションでパレットを待機させる時間を短くできるので、加工システム全体の稼働率を向上させることができる。さらに、異なる加工ラインで同じ材料のパレットが割り当てられ、同じ材料のパレットが1つしかない場合でも、待機ステーションでパレットを待機させる時間を短くできるので、他の加工機で待ち時間が発生することを防止できる。
【0055】
例えば、従来の加工システムでは、待機ステーションを備えていると、次の工程で必要なパレットを先行出庫させていたので、他の加工機で待ち時間が発生していた。図11は、従来の加工システムで実行されるパレットの入出庫を説明するためのタイミングチャートであり、図3の工程表に記録された工程が実行される。
【0056】
図11に示すように、加工ラインAでは、時刻9:00にパレット101が倉庫3から出庫されてピッキングステーション11Aに到着し、時刻9:05に工程A1の加工が開始されている。この後、時刻9:55にパレット101の材料の加工が終了し、パレット102の材料を加工する工程A2が開始される。しかし、従来の加工システムでは、工程A1の開始から材料1枚の加工時間である10分後の時刻9:15に、次の工程A2のパレット102を先行出庫して、待機ステーション13Aに移動させている。同様に、加工ラインBでも工程B1の開始から10分後の時刻9:20に、次の工程B2のパレット103を先行出庫して、待機ステーション13Bに移動させている。
【0057】
したがって、パレット103は、時刻9:20に出庫して工程B2が開始される時刻10:40まで待機ステーション13Bで待機し、その後、ピッキングステーション11Bに移動して時刻11:30に倉庫3へ入庫されるまで、加工ラインBで利用されている。そのため、加工ラインAの工程A3は、工程B2よりも開始時刻が早いにもかかわらず、工程B2と同一のパレット103を利用するので、工程B2が終わるまで開始できずに待ち時間が発生している。その結果、図11に示す従来の加工システムでは、加工ラインAの全工程が終了する時刻は12:50になっている。
【0058】
一方、図10に示すタイミングチャートでは、工程B2の開始時刻の5分前にパレット103を待機ステーション13Bへ移動させればよい。そのため、加工ラインAでは、同じパレット103を利用する工程A3を待ち時間が発生することなく、時刻10:15に開始できる。その結果、本実施形態の加工システム100では、加工ラインAの全工程が終了する時刻は11:25になり、従来の加工システムと比較して1時間25分も早く全工程を終了することができる。
【0059】
このように本実施形態に係る倉庫制御装置1では、異なる加工ラインで同じ材料のパレットが割り当てられ、同じ材料のパレットが1つしかない場合でも、待機ステーションでの待機時間を短くすることができる。これにより、他の加工機で待ち時間が発生することを防止して、加工システム全体の稼働率を向上させることができる。
【0060】
本実施形態に係る倉庫制御装置1では、プロセッサ20が、所定時間を、倉庫3から待機ステーション13A、13Bまでパレットが移動する移動時間に設定する。これにより、待機ステーション13A、13Bにパレットを待機させる時間を最短にすることができるので、加工システム全体の稼働率を向上させることができる。
【0061】
本実施形態に係る倉庫制御装置1では、プロセッサ20は、所定時間を、ピッキングステーション11A、11Bと待機ステーション13A、13Bとの間でパレットを交換する交換時間を移動時間に加算した時間に設定する。これにより、パレットの交換時間を考慮して出庫時刻を設定できるので、工程の開始時刻に合わせてパレットの出庫時刻を正確に設定することができる。
【0062】
本実施形態に係る倉庫制御装置1では、プロセッサ20は、所定時間を、材料の1枚の加工時間に設定する。これにより、前の工程の最後の材料が加工されているときにパレットを待機ステーション13A、13Bへ出庫することができるので、余裕をもってパレットを待機ステーション13A、13Bへ移動させることができる。また、待機ステーション13A、13Bでのパレットの待機時間が不必要に長くなることも防止できる。
【0063】
本実施形態に係る倉庫制御装置1では、材料を加工機5A、5Bで加工する加工時間の実測値と、加工スケジュールを作成するために想定された加工時間の予想値との差が所定値より大きい場合には、出庫時刻を再設定する。これにより、実際の加工時間が予想値と異なっていた場合でも出庫時刻を修正することができるので、パレットを正確な出庫時刻に出庫することができる。
【0064】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0065】
1 倉庫制御装置
3 倉庫
5A、5B 加工機
7A、7B 搬入装置
9A、9B ライン制御装置
10 メモリ
11A、11B ピッキングステーション
13A、13B、21A、21B 待機ステーション
15、17 搬送台車
19A、19B 集積ステーション
20 プロセッサ
50A、50B 加工スケジュール
60 パレット出庫スケジュール
100 加工システム
C クレーン
P パレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11