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特開2024-172753光学積層体、光学積層体の製造方法および光学積層体の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172753
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光学積層体、光学積層体の製造方法および光学積層体の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241205BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20241205BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241205BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241205BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241205BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/11
H10K50/10
H10K59/10
H10K50/86
B32B7/023
C09J133/00
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090686
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁雷
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 丈治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
3K107
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB00
2H149BA02
2H149BA05
2H149BA12
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA05
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02Y
2H149FA02Z
2H149FA03W
2H149FA03Z
2H149FA05Y
2H149FA05Z
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA13Z
2H149FA42Z
2H149FA66
2H149FB08
2H149FC02
2H149FD33
2H149FD46
2K009AA02
2K009CC09
2K009CC24
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF02
4F100AA20
4F100AK21
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK45
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00B
4F100DE01
4F100EJ37
4F100GB48
4F100JK06
4F100JL111
4F100JL11B
4F100JN00A
4F100JN00D
4F100JN06
4F100JN06E
4F100JN10
4F100JN10C
4F100JN18
4F100JN18E
4F100YY00B
4J040DF021
4J040EF282
4J040FA132
4J040JB09
4J040KA12
4J040KA16
4J040LA01
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】光学特性の測定を良好に行うことができる光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体は、光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、光学軸を有する第二光学部材と、をこの順に備え、前記第一光学部材は、前記偏光部材側に対し、接着層を介して25N/25mm以下の接着力で積層される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、光学軸を有する第二光学部材と、をこの順に備え、
前記第一光学部材は、前記偏光部材側に対し、接着層を介して25N/25mm以下の接着力で積層される、
光学積層体。
【請求項2】
保護部材をさらに備え、前記保護部材は、前記第一光学部材または前記第二光学部材の前記偏光部材が配置されない側に配置され、
前記保護部材は、基材と表面処理層とを有する積層フィルムである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記積層フィルムの前記表面処理層は反射防止機能を有する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記接着層は、(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物で形成される、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第一光学部材または前記第二光学部材を表示素子本体に隣接して配置させる、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、を備える第一積層体を準備することと、
前記第一積層体に対して第1の測定を行い第1の評価結果を得ることと、
前記偏光部材側に光学軸を有する第二光学部材を積層して第二積層体を得ることと、
前記第二積層体に対して第2の測定を行い第2の評価結果を得ることと、
を有する、光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第2の測定を、所望の形状にカットされた前記第二積層体に対して行う、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2の測定を、前記第二積層体から前記第一光学部材を剥離した状態で行う、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第二積層体から前記第一光学部材を剥離する際の剥離力は、25N/25mm以下である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の評価結果および前記第2の評価結果から第3の評価結果を得ること、をさらに有する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、光学軸を有する第二光学部材と、をこの順に備える光学積層体の評価方法であって、
前記第一光学部材と、前記偏光部材と、を備える第一積層体に対して第1の測定を行い第1の評価結果を得ることと、
前記偏光部材と、前記第二光学部材と、を備える第二積層体に対して第2の測定を行い第2の評価結果を得ることと、
を有する、評価方法。
【請求項12】
前記第1の評価結果および前記第2の評価結果から第3の評価結果を得ること、をさらに有する、請求項11に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、光学積層体の製造方法および光学積層体の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されており、視認性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VRゴーグルでは、例えば、視認性の向上の観点から、多数の光学部材が用いられ得る。これらの光学部材は、予め、積層された状態で(光学積層体として)VRゴーグル内に搭載され得る。しかし、光学積層体の光学特性の測定が困難となる場合がある。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、光学特性の測定を良好に行うことができる光学積層体の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.本発明の実施形態による光学積層体は、光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、光学軸を有する第二光学部材と、をこの順に備え、前記第一光学部材は、前記偏光部材側に対し、接着層を介して25N/25mm以下の接着力で積層される。
2.上記1に記載の光学積層体は、保護部材をさらに備えてもよい、上記保護部材は、上記第一光学部材または上記第二光学部材の上記偏光部材が配置されない側に配置されてもよい。上記保護部材は、基材と表面処理層とを有する積層フィルムであってもよい。
3.上記2に記載の光学積層体において、上記積層フィルムの上記表面処理層は反射防止機能を有してもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の光学積層体において、上記接着層は、(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物で形成されてもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の光学積層体において、上記第一光学部材または上記第二光学部材を表示素子本体に隣接して配置させてもよい。
【0008】
6.本発明の実施形態による光学積層体の製造方法は、光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、を備える第一積層体を準備することと、前記第一積層体に対して第1の測定を行い第1の評価結果を得ることと、前記偏光部材側に光学軸を有する第二光学部材を積層して第二積層体を得ることと、前記第二積層体に対して第2の測定を行い第2の評価結果を得ることと、を有する。
7.上記6に記載の製造方法において、上記第2の測定を、所望の形状にカットされた上記第二積層体に対して行ってもよい。
8.上記6または7に記載の製造方法において、上記第2の測定を、上記第二積層体から上記第一光学部材を剥離した状態で行ってもよい。
9.上記8に記載の製造方法において、上記第二積層体から上記第一光学部材を剥離する際の剥離力は、25N/25mm以下であってもよい。
10.上記6から9のいずれかに記載の製造方法は、上記第1の評価結果および上記第2の評価結果から第3の評価結果を得ること、をさらに有してもよい。
【0009】
11.本発明の実施形態による評価方法は、光学軸を有する第一光学部材と、偏光部材と、光学軸を有する第二光学部材と、をこの順に備える光学積層体の評価方法であって、前記第一光学部材と、前記偏光部材と、を備える第一積層体に対して第1の測定を行い第1の評価結果を得ることと、前記偏光部材と、前記第二光学部材と、を備える第二積層体に対して第2の測定を行い第2の評価結果を得ることと、を有する。
12.上記11に記載の評価方法は、上記第1の評価結果および上記第2の評価結果から第3の評価結果を得ること、をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態による光学積層体によれば、光学特性の測定を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1つの実施形態に係るVRゴーグルの表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る光学積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図3A】1つの実施形態に係る光学積層体の製造工程を示す図である。
図3B図3Aに続く図である。
図3C図3Bに続く図である。
図3D図3Cに続く図である。
図3E図3Dに続く図である。
図4】1つの実施形態に係る第二積層体を上から見た図である。
図5A】第1の測定の変形例を示す図である。
図5B】第2の測定の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0013】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0014】
A.表示システム
図1は本発明の1つの実施形態に係るVRゴーグルの表示システムの概略の構成を示す模式図である。図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、レンズ部位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、レンズ部位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0015】
ハーフミラー、もしくは、第一レンズ部から前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、レンズ部位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0016】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0017】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0018】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0019】
レンズ部位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。レンズ部位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、レンズ部位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。レンズ部位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0020】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、レンズ部位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0021】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光はレンズ部位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、レンズ部位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0022】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0023】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸とレンズ部位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0024】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0025】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0026】
図示しないが、表示システム2は、反射型偏光部材14の前方に配置される吸収型偏光部材を備えていてもよい。反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得る。
【0027】
B.光学積層体
本発明の実施形態による光学積層体は、例えば、上記表示システムに備えられる光学部材を含むことができる。具体的には、光学積層体は、偏光部材(例えば、反射型偏光部材、吸収型偏光部材)、λ/4部材等の位相差部材、保護部材等の光学部材、および、隣り合う部材を一体化するための接着層を含むことができる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る光学積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。光学積層体100は、偏光部材12bと、偏光部材12bの片側に配置される第一位相差部材20と、偏光部材12bのもう片側に配置される第二位相差部材30と、を備えている。偏光部材12bは、上記表示素子(表示素子12)に含まれ得る偏光部材に対応し得る。第二位相差部材30は、表示素子12に含まれ得る位相差部材に対応し得る。例えば、第二位相差部材30は、λ/4部材を含む。偏光部材12bの吸収軸と第二位相差部材30に含まれるλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12が有機ELディスプレイである場合、偏光部材12bと共にλ/4部材を設けることにより、有機ELディスプレイに含まれ得る金属層による外光反射や背景の映り込み等の問題を解消し得る。加えて、表示システム2における表示素子12からの光漏れによる反射の問題を解消し得る。第二位相差部材30がλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材30はλ/4部材に相当し得る。
【0029】
偏光部材12bと第一位相差部材20とは、接着層41を介して積層されている。偏光部材12bと第二位相差部材30とは、接着層42を介して積層されている。第二位相差部材30の偏光部材12bが配置されていない側には、接着層(例えば、粘着剤層)40が設けられている。接着層40により、光学積層体100は表示素子12の本体(例えば、有機ELパネル)に貼り付け可能とされている。第一位相差部材20の偏光部材12bが配置されていない側には、保護部材50が設けられている。第一位相差部材20と保護部材50とは、接着層43を介して積層されている。
【0030】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、ny<nzとなる場合があり得る。第1のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。第一位相差部材20は、光学軸を有し得る。具体的には、第一位相差部材20は、遅相軸および進相軸を有し得る。
【0031】
第1のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第1のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0032】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第1のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0033】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0034】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、10μm~70μmであってもよく、20μm~60μmであってもよい。
【0035】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0036】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0037】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0038】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0039】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0040】
液晶配向固化層で構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、1μm~8μmであってもよく、1μm~6μmであってもよく、1μm~4μmであってもよい。
【0041】
偏光部材12bとしては、例えば、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。偏光部材12bは、代表的には、少なくとも吸収型偏光膜を含み、吸収型偏光膜の片側または両側に接着層を介して保護層を積層して構成されてもよい。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0042】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0043】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0044】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0045】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0046】
第二位相差部材30に含まれるλ/4部材(第3のλ/4部材と称する場合がある)の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第3のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。第3のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。第二位相差部材30は、光学軸を有し得る。具体的には、第二位相差部材30は、遅相軸および進相軸を有し得る。
【0047】
第3のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第3のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成される第3のλ/4部材については、上記第1のλ/4部材と同様の説明を適用することができる。第1のλ/4部材と第3のλ/4部材とは、構成(例えば、形成材料、厚み、光学特性等)が同じの部材であってもよく、異なる構成の部材であってもよい。
【0048】
保護部材50は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。
【0049】
保護部材50は、好ましくは基材と表面処理層とを有する積層フィルムである。表面処理層を有する保護部材は、その基材が第一位相差部材20側に位置するように配置され得る。表面処理層の厚みは、例えば0.5μm~10μmであり、1μm~7μmであってもよく、2μm~5μmであってもよい。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、反射防止機能を有することが好ましい。この場合、保護部材50の反射率は、5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下である。なお、反射率は、分光光度計(例えば、日立ハイテクノロジー社製の「U-4100」)を用いて測定することができる。
【0050】
図示しないが、光学積層体100は、任意の適切な屈折率特性を有する他の位相差部材を含んでいてもよい。例えば、光学積層体100は、偏光部材12bと第一位相差部材20との間に配置される他の位相差部材を含んでいてもよい。また例えば、第一位相差部材20および/または第二位相差部材30は、任意の適切な屈折率特性を有する他の位相差部材を含んでいてもよい。具体的には、第一位相差部材20および/または第二位相差部材30は、nz>nx≧nyの関係を示す他の位相差部材を含んでいてもよい。
【0051】
隣接する部材どうしは接着層を介して積層され得る。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。具体的には、接着層は、接着剤層であってもよいし、粘着剤層であってもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmである。本明細書において、隣接とは、直接隣り合っているだけでなく、接着層を介して隣り合っていることも包含する。
【0052】
光学積層体100は、任意の適切な順序で構成部材を積層することにより得ることができる。1つの実施形態においては、第一位相差部材20と偏光部材12bとを積層した後、偏光部材12bに第二位相差部材30を積層して光学積層体100を得る。
【0053】
図3Aから図3Eは、1つの実施形態に係る光学積層体の製造工程を示す図である。図3Aは、接着層43を用いて保護部材50が予め積層された第一位相差部材20を準備した状態を示している。次に、接着層(例えば、粘着剤層)41を介して第一位相差部材20を偏光部材12bに積層し、図3Bに示すように第一積層体101を得る。ここで、予め偏光部材12bに接着層42が形成された状態で、偏光部材12bと第一位相差部材20との積層が行われてもよい。
【0054】
次に、図3Cに示すように、第一積層体101に対し、その光学特性について第1の測定を行い第1の評価結果を得る。第1の測定の際、第一積層体101の形状は特に限定されない。具体的には、第1の測定時の第一積層体101の形状は、長尺状であってもよいし、枚葉状であってもよい。例えば、長尺状の第一積層体101の一部を切り出して得た枚葉状の試験片を、第1の測定に供してもよい。試験片は、例えば、略四角形状とされる。
【0055】
第1の測定の測定装置としては、例えば、例えば、王子計測機器株式会社製のKOBRA、Axometrics社製のAxoScanが挙げられる。第1の測定により、第1の評価結果を得る。第1の測定により、第一位相差部材20の位相差値(例えば、面内位相差)を評価することができる。また、第1の測定により、偏光部材12bの吸収軸と第一位相差部材20の光学軸(例えば、遅相軸、進相軸)とのなす角度を評価することができる。例えば、偏光部材12bの吸収軸と第一位相差部材20の光学軸とが所定の角度をなしているか否かを確認することができる。
【0056】
次に、接着層42を介して偏光部材12b(第一積層体101)に第二位相差部材30を積層し、図3Dに示すように、第二積層体102(光学積層体100)を得る。ここで、予め第二位相差部材30に接着層40が形成された状態で、第二位相差部材30と偏光部材12bとの積層が行われてもよい。
【0057】
次に、図3Eに示すように、第二積層体102に対し、その光学特性について第2の測定を行い第2の評価結果を得る。第2の測定の際、第二積層体102は、所望の形状にカットされている(例えば、チップ化されている)。所望の形状としては、代表的には、VRゴーグル等の最終製品に搭載されるときの形状(最終形状と称する場合がある)が挙げられる。図4は、1つの実施形態に係る第二積層体を上から見た図である。図示例では、第二積層体102は、略四角形状であり、四角形の角が切り欠かれて形成されている。第2の測定は、例えば、第二積層体102の外周の直線部102bを用いて測定装置の基準部に位置合わせすることにより行う。なお、第二積層体102の形状はこれに限定されない。
【0058】
第2の測定は、第二積層体102から第一位相差部材20の一部を剥離した状態で行ってもよいし、第二積層体102から第一位相差部材20の全部を剥離した状態で行ってもよい。具体的には、偏光部材12bと第二位相差部材30とを備え、第一位相差部材20を含まない積層部分102aに、測定装置の基準部を位置合わせして第2の測定を行う。
【0059】
第2の測定の測定装置としては、例えば、王子計測機器株式会社製のKOBRA、Axometrics社製のAxoScanが挙げられる。第2の測定により、第2の評価結果を得る。第2の測定により、第二位相差部材30の位相差値(例えば、面内位相差)を評価することができる。また、第2の測定により、偏光部材12bの吸収軸と第二位相差部材30の光学軸(例えば、遅相軸、進相軸)とのなす角度を評価することができる。例えば、偏光部材12bの吸収軸と第二位相差部材30の光学軸とが所定の角度をなしているか否かを確認することができる。さらに、第2の測定により、最終形状における偏光部材12bの吸収軸の位置、角度を評価することができる。
【0060】
第1の評価結果および第2の評価結果から、計算等により第3の評価結果を得てもよい。例えば、第1の評価結果および第2の評価結果から、最終形状における第一位相差部材20および第二位相差部材30の光学軸の位置、角度を評価することができる。具体的には、偏光部材12bの吸収軸と第一位相差部材20の光学軸とのなす角度、偏光部材12bの吸収軸と第二位相差部材30の光学軸とのなす角度、および、最終形状における偏光部材12bの吸収軸の位置、角度の評価結果から、最終形状における第一位相差部材20および第二位相差部材30の光学軸の位置、角度を評価することができる。なお、上記1の評価結果、第2の評価結果および第3の評価結果は、最終的に得られる光学積層体100に対し、王子計測機器株式会社製のKOBRA、Axometrics社製のAxoScan等の測定装置を用いて光学特性(例えば、位相差値、光学軸)の測定を行っても得ることはできない。
【0061】
第二積層体102から第一位相差部材20を剥離する際の剥離力は、好ましくは25N/25mm以下であり、より好ましくは15N/25mm以下である。このような剥離力によれば、第一位相差部材20の剥離および第2の測定を円滑に行うことができる。このような剥離力は、例えば、偏光部材12bと第一位相差部材20との間に配置される接着層の接着力を調整することにより達成され得る。この場合、偏光部材12bと第一位相差部材20との間に配置される接着層の隣接する部材に対する接着力は、好ましくは25N/25mm以下であり、より好ましくは15N/25mm以下である。図示例では、第一位相差部材20に隣接して配置される接着層41の表面を境に、第二積層体102から第一位相差部材20を剥離している。具体的には、第一位相差部材20は、偏光部材12b側(偏光部材12bを含む積層部)に対し、接着層41を介して25N/25mm以下の接着力で積層されていることが好ましい。
【0062】
第二積層体102から第一位相差部材20を剥離する際の剥離力は、好ましくは2N/25mm以上である。例えば、偏光部材12bと第一位相差部材20との間に配置される接着層の隣接する部材に対する接着力は、好ましくは2N/25mm以上である。剥離力(接着力)は、例えば、幅25mm、長さ150mmのサイズに切り出したサンプルを、万能引張試験機にて剥離速度300mm/分、剥離角度90°で長さ方向に剥離したときの剥離力(N/25mm)を、23±5℃、50±10%RHの環境下で測定することにより求められる。
【0063】
上記剥離力(接着力)を満足し得る接着層としては、粘着剤層が採用され得る。1つの実施形態においては、上記剥離力(接着力)を満足し得る接着層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物で形成される粘着剤層であり得る。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0064】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、代表的には、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数2~14、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~9のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを主成分として含む。
【0065】
一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分において、一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、例えば50重量%~98重量%であり、好ましくは60重量%~90重量%であり、より好ましくは70重量%~80重量%である。
【0067】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、好ましくは窒素含有モノマーをさらに含む。上記モノマー成分において、窒素含有モノマーの含有割合は、例えば0.1重量%~35重量%であり、好ましくは3重量%~30重量%であり、より好ましくは5重量%~25重量%である。窒素含有モノマーの含有割合が上記範囲内であれば、加熱環境下および/または高湿環境下での耐久性に優れる粘着剤層が得られ得る。
【0068】
窒素含有モノマーは、モノマー構造中に1以上の窒素原子を含有する重合性モノマーであり、イミド基含有モノマー、アミド基含有モノマー等を好ましく例示できる。なかでも、アミド基含有モノマーがより好ましい。上記モノマー成分において、アミド基含有モノマーの含有割合は、例えば3重量%~15重量%、好ましくは5重量%~10重量%である。窒素含有モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
イミド基含有モノマーとしては、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、イタコンイミド等が挙げられる。
【0070】
アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0071】
その他の窒素含有モノマーとしては、アミノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリル、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0072】
モノマー成分は、その他の重合性モノマーを含むことができる。その他の重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー等が挙げられ、これらは凝集力、耐熱性等の向上に寄与し得る。また例えば、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマー等が挙げられ、これらは接着力の向上に寄与し得るとともに、架橋化基点として働く官能基を有する。これらの重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0074】
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0075】
リン酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。
【0076】
ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0077】
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0078】
酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0079】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0080】
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0081】
ビニルエーテルモノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0082】
上記モノマー成分において、上記その他の重合性モノマーの含有割合は、例えば0.1重量%~10重量%であり、好ましくは0.2重量%~7重量%であり、より好ましくは0.5重量%~5重量%である。
【0083】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば60万以上であり、好ましくは150万以上であり、より好ましくは160万以上であり、さらに好ましくは180万以上である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば300万以下であり、好ましくは250万以下である。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0084】
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含み、好ましくは過酸化物およびイソシアネート系架橋剤をさらに含む。
【0085】
過酸化物の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.02重量部~2重量部であり、好ましく0.04重量部~1.5重量部であり、より好ましくは0.05重量部~1重量部である。過酸化物の配合量が上記範囲内であると、耐久性および接着性に優れた粘着剤層が得られ得る。
【0086】
イソシアネート系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.02重量部~2重量部であり、好ましくは0.04重量部~1.5重量部であり、より好ましくは0.05重量部~1重量部である。イソシアネート系架橋剤の配合量が上記範囲内であると、凝集力および接着性に優れた粘着剤層が得られ得る。
【0087】
粘着剤組成物には、接着力、耐久力を上げる目的でシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.01重量部~1重量部、好ましくは0.02重量部~0.6重量部、より好ましくは0.05重量部~0.3重量部である。
【0088】
偏光部材12bと第二位相差部材30との間に配置される接着層の第二位相差部材30側に隣接する部材に対する接着力は、例えば2N/25mm~30N/25mmであり、好ましくは2N/25mm~25N/25mmである。1つの実施形態においては、偏光部材12bと第二位相差部材30との間に配置される接着層の第二位相差部材30側に隣接する部材に対する接着力は、15N/25mm以上であってもよく、25N/25mm以上であってもよい。このような剥離力によれば、例えば、第2の測定に際して、第一位相差部材20を選択的に剥離することができる。
【0089】
図3に示す例では、第一位相差部材20と偏光部材12bとを積層して第一積層体101を得た後、偏光部材12bに第二位相差部材30を積層して第二積層体102を得ているが、この順序が逆であってもよい。具体的には、偏光部材12bと第二位相差部材30とを積層して第一積層体101を得た後、偏光部材12bに第一位相差部材20を積層して第二積層体を得てもよい。この場合、図5Aに示すように、偏光部材12bおよび第二位相差部材30を有する第一積層体101に対し上記第1の測定を行い得る。第1の測定により、第二位相差部材30の位相差値を評価することができる。また、第1の測定により、偏光部材12bの吸収軸と第二位相差部材30の光学軸とのなす角度を評価することができる。そして、図5Bに示すように、上記第2の測定は、第二積層体102から第二位相差部材30を剥離した状態で行うことができ、上記第二積層体から第一位相差部材を剥離する際の剥離力(接着力)の説明は、第二積層体から第二位相差部材を剥離する場合に適用することができる。第2の測定により、第一位相差部材20の位相差値を評価することができる。また、第2の測定により、偏光部材12bの吸収軸と第一位相差部材20の光学軸とのなす角度を評価することができる。本変形例は、例えば、より厳密に光学特性の管理が求められ得る第一位相差部材20を剥離しない点で好ましい。
【実施例0090】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、位相差値および剥離力(接着力)は下記の測定方法により測定した値である。また、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<位相差値>
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製のKOBRA)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
<剥離力>
幅25mm、長さ150mmのサイズに切り出したサンプルを、万能引張試験機(ミネベア社製、製品名:TGI-1kNB)にて剥離速度300mm/分、剥離角度90°で長さ方向に剥離したときの剥離力(N/25mm)を、23±5℃、50±10%RHの環境下で測定した。
【0091】
[実施例1]
(λ/4部材の作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0092】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み48μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムのRe(550)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0093】
(保護部材の作製)
ラクトン環構造を有するアクリルフィルムに、下記に示す反射防止層形成材料を塗布して80℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み0.1μmの反射防止層が形成されたアクリルフィルム(厚み44μm)を得た。
【0094】
(反射防止層形成材料)
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)100重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)、フッ素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、ターシャリーブチルアルコール、メチルイソブチルケトンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加し、全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成材料を調製した。
【0095】
(偏光部材の作製)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚み30μmの長尺状のPVA系樹脂フィルムを、30℃の温水中に浸漬し、膨潤させながらPVA系樹脂フィルムの長さが元長の2.0倍となるように一軸延伸を行った。次いで、0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)で、30℃のヨウ素溶液中に浸漬し、PVA系樹脂フィルムの長さが元長の3.0倍となるように一軸延伸しながら染色した。その後、ホウ酸4重量%、ヨウ化カリウム5重量%の水溶液中で、PVA系樹脂フィルムの長さが元長の6倍となるように延伸した。さらに、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(ヨウ素含浸浴)でヨウ素イオン含浸処理を行った後、60℃のオーブンで4分間乾燥し、厚み12μmの偏光部材を得た。
【0096】
(他の位相差部材1)
以下のとおり、nz>nx>nyの屈折率特性を有するポジティブBプレートを作製した。
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えたオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名「メトローズ60SH-50」)48重量部、蒸留水15601重量部、フマル酸ジイソプロピル8161重量部、アクリル酸3-エチル-3-オキセタニルメチル240重量部および重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート45重量部を入れ、窒素バブリングを1時間行った後、攪拌しながら49℃で24時間保持することにより、ラジカル懸濁重合を行なった。次いで、室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマーを蒸留水で2回およびメタノールで2回洗浄した後、減圧乾燥して、フマル酸エステル系樹脂を得た。
得られたフマル酸エステル系樹脂を、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトンが50重量%/50重量%)に溶解して固形分濃度20重量%の溶液とした。さらに、フマル酸エステル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてトリブチルトリメリテート5重量部を添加して、ドープを得た。支持体フィルムとして、厚み75μmで、幅1350mmのポリエステル(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート共重合体)の二軸延伸フィルムを用いた。支持体フィルムの巻回体を製膜装置の繰出し部にセットし、支持体フィルムを繰り出して下流側に搬送しながら、支持体フィルム上に得られたドープを乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布して、140℃で乾燥させて積層体を得た。
得られた積層体を、延伸装置の繰出し部にセットし、積層体を繰り出して下流側に搬送しながら、温度140℃の延伸炉内で自由端一軸延伸を行った。延伸後の積層体から支持体フィルムを剥離し、ポジティブBプレート(厚み5μm、Re(550):35nm、Rth(550):-85nm)を得た。
【0097】
(他の位相差部材2)
nx>ny>nzの屈折率特性を有するネガティブBプレートを準備した。
ネガティブBプレートとして、シクロオレフィン系樹脂フィルムの延伸フィルム(日本ゼオン社製、商品名:ZT12、厚み:18μm、Re(550):116nm、Rth(550):139nm)を準備した。
【0098】
(粘着剤層Aの作製)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91.5部、アクリル酸3部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.5部およびアクリロイルモルフォリン5部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行った。次いで、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度12重量%に調整し、重量平均分子量(Mw)250万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂社製)0.3部と、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名:コロネートL、東ソー社製)0.2部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業社製)0.2部を配合して、粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物を、剥離面にシリコーン処理が施されたはく離ライナーである、厚み38μmのPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF38)の剥離面に塗布し乾燥させて、厚み5μmの粘着剤層Aを形成した。
【0099】
(光学積層体の作製)
上記λ/4部材の片側に粘着剤を用いて上記保護部材を積層し、もう片側に上記粘着剤層Aを介して上記ポジティブBプレートを積層した。そして、ポジティブBプレートの表面に粘着剤を用いて上記ネガティブBプレートを積層し、さらに、粘着剤を用いて予め厚み5μmの粘着剤層Bが形成された上記偏光部材を積層し、第一積層体を得た。
得られた第一積層体の偏光部材側(粘着剤層B)に、予め厚み15μmの粘着剤層が形成された上記λ/4部材を積層し、光学積層体を得た。
【0100】
得られた光学積層体において、粘着剤層AのポジティブBプレートに対する接着力は5N/25mmであり、得られた光学積層体の光学特性の評価に際し、粘着剤層Aの表面を境に剥離を容易に行うことができた。
【0101】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の実施形態に係る塗工方法は、例えば、VRゴーグル等の画像表示装置に好適に採用され得る光学積層体の製造に用いられる。
【符号の説明】
【0103】
2 表示システム、4 レンズ部、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第一位相差部材、22 レンズ部位相差部材、24 第二レンズ部、28 吸収型偏光部材、30 第二位相差部材、40 接着層(粘着剤層)、41 接着層、42 接着層、43 接着層、50 保護部材、100 光学積層体、101 第一積層体、102 第二積層体。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B