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特開2024-172754塗工方法および光学積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172754
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】塗工方法および光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20241205BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241205BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20241205BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241205BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B05D1/28
B32B7/12
B32B37/12
B05D7/00 A
B05D7/00 H
B05D7/24 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090687
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁雷
(72)【発明者】
【氏名】梶原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AC25
4D075AC29
4D075AC34
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075BB05Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB48
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA35
4D075EB14
4D075EB22
4F100AR00A
4F100AR00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100CB00B
4F100CB00C
4F100CC00B
4F100CC00C
4F100EH46B
4F100EH46C
(57)【要約】
【課題】画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による塗工方法は、連続して搬送されるシート状の光学部材に対して、接着層形成材料を含む塗液を、グラビア塗工装置を用いて塗工する方法であって、前記グラビア塗工装置は、前記塗液が付着する塗工領域を外周面に有し、前記光学部材の搬送に連動して回転するグラビアロールと、周回する前記塗工領域に前記塗液を供給する塗液供給部を側面に有するチャンバーと、前記塗液供給部と前記塗工領域の表面との間の隙間を塞ぐシールブレードと、を備え、前記シールブレードは、前記チャンバー内側に向かって突出し、前記塗工領域に接触する突出部を有し、前記チャンバー内において、前記グラビアロールは、前記シールブレードの前記突出部の先端よりも内側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して搬送されるシート状の光学部材に対して、接着層形成材料を含む塗液を、グラビア塗工装置を用いて塗工する方法であって、
前記グラビア塗工装置は、
前記塗液が付着する塗工領域を外周面に有し、前記光学部材の搬送に連動して回転するグラビアロールと、
周回する前記塗工領域に前記塗液を供給する塗液供給部を側面に有するチャンバーと、
前記塗液供給部と前記塗工領域の表面との間の隙間を塞ぐシールブレードと、を備え、
前記シールブレードは、前記チャンバー内側に向かって突出し、前記塗工領域に接触する突出部を有し、
前記チャンバー内において、前記グラビアロールは、前記シールブレードの前記突出部の先端よりも内側に位置する、
塗工方法。
【請求項2】
前記チャンバーには、前記塗液で満たされない空間が形成されている、請求項1に記載の塗工方法。
【請求項3】
前記塗液の上面と前記チャンバー内壁との距離は0.1cm以上である、請求項2に記載の塗工方法。
【請求項4】
前記チャンバーの前記塗液が貯留される液溜部の容積Bに対する、前記液溜部内の前記塗液の体積Aの比A/Bは、0.5~0.99である、請求項2に記載の塗工方法。
【請求項5】
前記シールブレードは、前記グラビアロールの近傍に配置されたブレード支持部に着脱可能に固定される取付部と、前記ブレード支持部から前記グラビアロールに向かって突出し、前記塗工領域に接触する突出部と、を有し、
前記突出部の長さは20mm以下である、請求項1に記載の塗工方法。
【請求項6】
前記突出部の長さXに対する、前記シールブレードと前記グラビアロールとの接触部から前記シールブレードの前記突出部の先端までの距離Yの比Y/Xは、0.5以下である、請求項5に記載の塗工方法。
【請求項7】
前記グラビアロールの回転速度は、10回/分~300回/分である、請求項1に記載の塗工方法。
【請求項8】
請求項1に記載の塗工方法により、第一光学部材に接着層形成材料の塗工層を形成することと、
前記塗工層を介して、前記第一光学部材に第二光学部材を積層することと、
を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の塗工方法により、前記第二光学部材に接着層形成材料の塗工層を形成することをさらに含み、
互いの前記塗工層を貼り合わせることにより、前記積層を行う、請求項8に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項10】
前記塗工層の形成と前記積層とを連続して行う、請求項8に記載の光学積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工方法および光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されており、高精細化等の視認性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VRゴーグルでは、レンズを介して画像を視認することから、VRゴーグル内に存在する微小な異物(例えば、気泡)は視認されやすい傾向にある。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る光学積層体の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.本発明の実施形態による塗工方法は、連続して搬送されるシート状の光学部材に対して、接着層形成材料を含む塗液を、グラビア塗工装置を用いて塗工する方法であって、前記グラビア塗工装置は、前記塗液が付着する塗工領域を外周面に有し、前記光学部材の搬送に連動して回転するグラビアロールと、周回する前記塗工領域に前記塗液を供給する塗液供給部を側面に有するチャンバーと、前記塗液供給部と前記塗工領域の表面との間の隙間を塞ぐシールブレードと、を備え、前記シールブレードは、前記チャンバー内側に向かって突出し、前記塗工領域に接触する突出部を有し、前記チャンバー内において、前記グラビアロールは、前記シールブレードの前記突出部の先端よりも内側に位置する。
2.上記1に記載の塗工方法において、上記チャンバーには、上記塗液で満たされない空間が形成されていてもよい。
3.上記2に記載の塗工方法において、上記塗液の上面と上記チャンバー内壁との距離は0.1cm以上であってもよい。
4.上記2または3に記載の塗工方法において、上記チャンバーの上記塗液が貯留される液溜部の容積Bに対する、前記液溜部内の上記塗液の体積Aの比A/Bは、0.5~0.99であってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の塗工方法において、上記シールブレードは、上記グラビアロールの近傍に配置されたブレード支持部に着脱可能に固定される取付部と、前記ブレード支持部から上記グラビアロールに向かって突出し、上記塗工領域に接触する突出部と、を有してもよく、前記突出部の長さは20mm以下であってもよい。
6.上記5に記載の塗工方法において、上記突出部の長さXに対する、上記シールブレードと上記グラビアロールとの接触部から上記シールブレードの前記突出部の先端までの距離Yの比Y/Xは、0.5以下である、請求項5に記載の塗工方法。
7.上記1から6のいずれかに記載の塗工方法において、上記グラビアロールの回転速度は、10回/分~300回/分であってもよい。
【0008】
8.本発明の実施形態による光学積層体の製造方法は、上記1から7のいずれかに記載の塗工方法により、第一光学部材に接着層形成材料の塗工層を形成することと、前記塗工層を介して、前記第一光学部材に第二光学部材を積層することと、を含む。
9.上記8に記載の製造方法は、上記1から7のいずれかに記載の塗工方法により、上記第二光学部材に接着層形成材料の塗工層を形成することをさらに含んでもよく、互いの前記塗工層を貼り合わせることにより、上記積層を行ってもよい。
10.上記8または9に記載の製造方法において、上記塗工層の形成と上記積層とを連続して行ってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態による塗工方法によれば、画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る光学積層体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る塗工方法に用いるグラビア塗工装置の塗工部の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図2図1に示す塗工部の部分拡大図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る塗工方法に用いるグラビア塗工装置の塗工部の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図4】VRゴーグルの表示システムの一例の概略の構成を示す模式図である。
図5】光学積層体の詳細の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0012】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0013】
[グラビア塗工装置]
図1は本発明の第一実施形態に係る塗工方法に用いるグラビア塗工装置の塗工部の概略の構成を示す模式的な断面図であり、図2図1に示す塗工部の部分拡大図である。
【0014】
塗工部6は、チャンバー50、グラビアロール60などで構成されている。
【0015】
チャンバー50は、塗液を貯留する貯留槽(図示せず)と送液配管51を介して接続されており、貯留槽からチャンバー50に塗液が供給される。貯留槽はまた、返液配管52を介してチャンバー50と接続されており、チャンバー50内の塗液は、返液配管52を通じて貯留槽にかえされ得る。このように、塗工時、塗液は、貯留槽とチャンバー50との間を循環し得る。
【0016】
チャンバー50は、グラビアロール60に沿って配置されている。チャンバー50の側面(グラビアロール60と対向する側面)には、グラビアロール60に対応して凹部(塗液供給部)50aが形成されており、塗液は、チャンバー50を介してグラビアロール60に供給される。
【0017】
凹部50aの下側には、シールブレード53が配置されている。凹部50aの下側には、平坦なブレード支持面を有するブレード支持部50bが凹部50aの下縁に沿って設けられている。ブレード支持部50bには、ボルトで締結することによって押付具54が着脱自在に装着されている。ブレード支持部50bと押付具54の間に、シールブレード53の基端側の部分(取付部53b)が挟み込まれることにより、シールブレード53がチャンバー50に着脱可能に固定されている。
【0018】
シールブレード53は、塗工領域61の表面と凹部50aとの間の隙間を塞ぐ帯板形状の部材である。シールブレード53の先端側の部分(突出部53a)は、ブレード支持部50bからグラビアロール60に向かって突出して塗工領域61に接触している。
【0019】
チャンバー50は、シールブレード53が塗工領域61に押し付けられるように、グラビアロール60に横付けされる。そうすることにより、グラビアロール60とチャンバー50との間に、塗液が貯留される空間(液溜部)55が形成される。塗工時、液溜部55は塗液で満たされ得るため、液溜部55に面する塗工領域61は常に塗液に接触した状態となり、グラビアロール60に塗液が供給される。
【0020】
グラビアロール60は、横長な円柱形状を有している。グラビアロール60は、例えば、耐摩耗性の観点から、その表面はセラミック等で形成されている。グラビアロール60の直径は、例えば10mm~1000mmである。グラビアロール60は、搬送されるシート状の光学部材Sの表面に接する状態で設置されている。例えば、グラビアロール60は、横軸回りに回転自在な状態で不図示のフレームに支持されている。そして、光学部材Sとの接触部位において、光学部材Sの搬送方向と逆方向に外周面が周回するように、例えば、不図示のモータの駆動により、光学部材Sの搬送に連動して回転駆動される。グラビアロールの回転速度は、例えば10回/分~300回/分であり、好ましくは35回/分~100回/分である。
【0021】
グラビアロール60外周面の塗工領域61には、代表的には、一様な模様状に配置された多数の凹み(セル)が形成されている。グラビアロール60の回転に伴って周回する塗工領域61に、チャンバー50から塗液が連続的に供給され、塗工領域61に付着した塗液は、搬送される光学部材Sの表面に転写され得る。
【0022】
チャンバー50内(液溜部55)において、グラビアロール60に接触するシールブレード53の突出部53aの先端(刃先)よりも、グラビアロール60の方が内側に位置している。このような位置関係を採用することにより、塗工領域61に付着する塗液に含まれる気泡を少なくすることができる。気泡が発生する場合であっても、気泡のサイズを小さくすることができる。具体的には、シールブレード53の突出部53aの長さ(突出度合い)を小さくすることで、シールブレード53自体の振動を抑制して塗液における気泡の発生を抑制することができる。
【0023】
シールブレード53の突出部53aの長さXは、例えば0mmを超え20mm以下であり、15mm以下であってもよい。突出部53aの長さXに対する、シールブレード53とグラビアロール60との接触部53cからシールブレード53の突出部53aの先端までの距離Yの比Y/Xは、例えば0を超え0.5以下であり、0.3以下であってもよく、0.1以下であってもよい。
【0024】
塗工時、チャンバー50内(液溜部55)には塗液で満たされない空間(空気溜め)56が形成されていることが好ましい。空気溜め56が形成されていることにより、塗液中に発生した気泡が抜けやすくなり、塗工領域61に付着する塗液に含まれる気泡を少なくすることができる。
【0025】
塗液の上面とチャンバー50の内壁50cとの距離は例えば0.1cm以上であり、1cm以上であってもよい。なお、塗液の上面とチャンバー50の内壁50cとの距離は、空気溜め56の高さに対応し得る。液溜部55の容積Bに対する、液溜部55内の塗液の体積Aの比A/Bは、例えば0.5~0.99である。
【0026】
シールブレード53の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下であり、0.5mm以下であってもよい。
【0027】
塗液は、接着層形成材料を含む。例えば、塗液は接着剤であってもよいし、粘着剤であってもよい。塗液の23℃における粘度は、例えば25mPa・s~50mPa・sであり、好ましくは27mPa・s~47mPa・sである。
【0028】
図3は、本発明の第二実施形態に係る塗工方法に用いるグラビア塗工装置の塗工部の概略の構成を示す模式的な断面図である。第二実施形態においては、液溜部55の上端部(上側内壁50c)が送液配管51よりも上方に位置するように液溜部55を形成している点が第一実施形態と異なる。こうすることで、塗液の循環を制御しなくてもチャンバー50内に空気溜め56が形成され得るようになる。
【0029】
[光学積層体]
代表的には、第一光学部材に、上記グラビア塗工装置を用いて接着層形成材料の塗工層を形成し、この塗工層を介して第二光学部材を積層し、光学積層体を得る。塗工層の厚みは、接着層形成材料の組成等に応じて異なるが、代表的には0.5μm~50μmであり、0.5μm~15μmであってもよい。第一光学部材と第二光学部材との積層に際し、第二光学部材にも、上記グラビア塗工装置を用いて接着層形成材料の塗工層が形成されていてもよい。この場合、第一光学部材に形成された塗工層と第二光学部材に形成された塗工層とを貼り合わせて積層を行ってもよい。
【0030】
例えば、製造効率の観点から、塗工層の形成と積層とを連続して行う。上記グラビア塗工装置を用いて塗工された塗工層中には気泡は少なく、塗工後すぐに積層を行うことができる。
【0031】
上記グラビア塗工装置を用いることにより、例えば、気泡の少ない光学積層体を得ることができる。光学積層体は、代表的には、画像表示装置に適用され得る。気泡の少ない光学積層体を搭載することにより、視認性に優れた画像表示装置が実現し得る。画像表示装置において、光学積層体に含まれる気泡が視認性に影響を及ぼす場合がある。具体的には、光学積層体に含まれる気泡は欠点として視認される場合がある。画像表示装置が高精細であるほど、画像表示装置を構成する部材の厳しい欠点管理が求められる。したがって、気泡の少ない光学積層体を用いることにより、画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る。中でも、VRゴーグルにおいては、気泡は拡大され得、欠点として視認されやすい傾向にあることから、気泡の少ない光学積層体を用いることにより、視認性の向上に大きく寄与し得る。
【0032】
図4はVRゴーグルの表示システムの一例の概略の構成を示す模式図であり、表示システムの各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第1のλ/4部材20と、第2のλ/4部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第1のλ/4部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第2のλ/4部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0033】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0034】
第1のλ/4部材20は、を第1のλ/4部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る。第1のλ/4部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0035】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0036】
第2のλ/4部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る。第2のλ/4部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0037】
第1のλ/4部材20から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材22から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0038】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材22により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材22から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0039】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0040】
表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第1のλ/4部材20の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第2のλ/4部材22の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0041】
第1のλ/4部材20の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材20は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材20のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0042】
第2のλ/4部材22の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材22は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0043】
図示しないが、表示システム10は、反射型偏光部材14の前方に配置される吸収型偏光部材を備えていてもよい。反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得る。
【0044】
本発明の実施形態による光学積層体は、例えば、上記表示システムに備えられる部材を含むことができる。具体的には、光学積層体は、偏光部材(例えば、反射型偏光部材、吸収型偏光部材)、λ/4部材等の位相差部材、保護部材等の光学部材、および、隣り合う部材を一体化するための接着層を含むことができる。
【0045】
光学積層体に含まれる接着層は、上記グラビア塗工装置により接着層形成材料を含む塗液を塗工して形成される塗工層が硬化または固化した層であり得る。接着層が接着剤層である場合、その厚みは、代表的には0.5μm~5μmである。接着層が粘着剤層である場合、その厚みは、代表的には5μm~50μmである。接着層に含まれ得る気泡のサイズは、好ましくは20μm未満であり、より好ましくは15μm未満である。接着層に気泡が含まれていても、このようなサイズであれば、画像表示装置(例えば、VRゴーグル)において、極めて優れた視認性を達成し得る。なお、気泡のサイズは、例えば、光学顕微鏡等による観察により測定することができる。1つの実施形態においては、1つの接着層に含まれる全気泡のうち、サイズが20μm以上の気泡の数の割合は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0046】
図5は、光学積層体の詳細の一例を示す模式的な断面図である。光学積層体4は、第1のλ/4部材20と、第1のλ/4部材20の片側に配置される偏光部材12bと、第1のλ/4部材20のもう片側に配置される保護部材30と、を含んでいる。偏光部材12bは、上記表示素子(表示素子12)に含まれ得る偏光部材に対応し得る。偏光部材12bは、代表的には、少なくとも吸収型偏光膜を含み、吸収型偏光膜の片側または両側に接着層(図示せず)を介して保護層を積層して構成されてもよい。光学積層体4は、第1のλ/4部材20に加えて他の位相差部材32を含んでいる。図示例では、位相差部材32は、第1のλ/4部材20と偏光部材12bとの間に配置されているが、例えば、第1のλ/4部材20と保護部材30との間に配置されていてもよい。各部材は、接着層41、42、43を介して積層されている。図示しないが、光学積層体4は、さらに別の位相差部材を含んでいてもよい。例えば、偏光部材12bと位相差部材32との間にさらに別の位相差部材が接着層を介して配置されていてもよい。この場合、別の位相差部材は、吸収型偏光膜の保護層を兼ねていてもよい。上記表示システムにおいて、表示素子12に一体に設けられ得る光学積層体4は、特に厳しい欠点管理が求められる。光学積層体4に含まれる接着層の少なくとも一層は、上記グラビア塗工装置により接着層形成材料を含む塗液を塗工して形成され得る。こうして、光学積層体4は、厳しい欠点管理をクリアし、VRゴーグルにおいて、極めて優れた視認性を達成し得る。
【0047】
第1のλ/4部材20は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、ny<nzとなる場合があり得る。第1のλ/4部材20のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0048】
第1のλ/4部材20は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第1のλ/4部材20は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0049】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第1のλ/4部材20が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0050】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1のλ/4部材20に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1のλ/4部材20の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0051】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第1のλ/4部材20の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0052】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1のλ/4部材20においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1のλ/4部材20の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0053】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0054】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0055】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0056】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0057】
液晶配向固化層で構成される第1のλ/4部材20の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0058】
偏光部材12bとしては、例えば、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0059】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0060】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0061】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0062】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0063】
保護部材30は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。
【0064】
保護部材30は、好ましくは、基材に加え、基材上に形成される表面処理層を有していてもよい。表面処理層を有する保護部材は、その基材が第1のλ/4部材20側に位置するように配置され得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、反射防止機能を有することが好ましい。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0065】
位相差部材32は、任意の適切な屈折率特性を有し得る。例えば、位相差部材32の屈折率特性はnz>nx≧nyの関係を示す。nz>nx≧nyの関係を示す部材32を用いることにより、光抜け(例えば、斜め方向の光抜け)を防止し得る。
【0066】
上記屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す位相差部材32の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-260nm~-10nmであり、より好ましくは-230nm~-15nmであり、さらに好ましくは-215nm~-20nmである。1つの実施形態においては、位相差部材32は、その屈折率がnx=nyの関係を示す、いわゆる、ポジティブCプレートである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。例えば、Re(550)が10nm未満である場合も包含する。別の実施形態においては、位相差部材32は、その屈折率がnx>nyの関係を示す。この場合、位相差部材32の面内位相差Re(550)は、好ましくは10nm~150nmであり、より好ましくは10nm~80nmである。
【0067】
屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す位相差部材32は、任意の適切な材料で形成され得る。好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびフィルムの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0042]に記載の液晶化合物および形成方法が挙げられる。この場合、厚みは、好ましくは0.1μm~5μmであり、より好ましくは0.5μm~4μmである。
【0068】
別の好ましい具体例として、屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す位相差部材32は、特開2012-32784号公報に記載のフマル酸ジエステル系樹脂で形成された位相差フィルムであってもよい。この場合、厚みは、好ましくは5μm~50μmであり、より好ましくは10μm~35μmである。
【0069】
上記別の位相差部材は、例えば、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す。屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す位相差部材の面内位相差Re(550)は、好ましくは80nm~150nmであり、より好ましくは90nm~140nmであり、さらに好ましくは100nm~130nmである。Nz係数は、例えば1.1~3.0である。
【実施例0070】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、面内位相差および粘度は下記の測定方法により測定した値である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<面内位相差Re(λ)>
フィルムの幅方向中央部および両端部を、一辺が当該フィルムの幅方向と平行となるようにして幅50mm、長さ50mmの正方形状に切り出して試料を作製した。この試料を、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での面内位相差を測定した。
<粘度>
粘度は、動的粘弾性測定装置(東機産業社製のTV-25型粘度計)を用いて23℃にて測定した。
【0071】
[実施例1]
(λ/4部材の作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0072】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み47μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムのRe(550)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0073】
(接着剤の調製)
ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」)62重量部と、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」)25重量部と、PEG400#ジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレート9EG-A」)7重量部と、BASF社製の商品名「イルガキュア907」3重量部と、日本化薬社製の商品名「KAYACURE DETX-S」3重量部とを、60分間混合して、粘度27~47mPa・sの接着剤を調製した。
【0074】
(塗工層の作製)
上記λ/4部材(延伸フィルム)に、硬化後の厚みが1.5~2.5μmとなるように図1に示すグラビア塗工装置を用いて上記接着剤を塗工し、塗工層を形成した。塗工に際し、図2に示す、シールブレード53の突出部53aの長さXを15mmとし、厚み0.2mmのシールブレードを用いた。シールブレード53とグラビアロール60との接触部53cからシールブレード53の突出部53aの先端までの距離Yは5mmであった。
【0075】
[比較例1]
接着剤の塗工に際し、図2に示す、シールブレードの突出部53aの長さXを24mmとし、厚み0.3mmのシールブレードを用いたこと以外は実施例1と同様にして、λ/4部材に塗工層を形成した。シールブレード53とグラビアロール60との接触部53cからシールブレード53の突出部53aの先端までの距離Yは14mmであった。
【0076】
実施例1および比較例1で得られた塗工層の気泡の数(個)を、光学顕微鏡観察によりカウントした。評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の実施形態に係る塗工方法は、例えば、VRゴーグル等の画像表示装置に好適に採用され得る光学積層体の製造に用いられる。
【符号の説明】
【0080】
2 表示システム、4 光学積層体、6 塗工部、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第1のλ/4部材、22 第2のλ/4部材、24 第二レンズ部、30 保護部材、32 位相差部材、41 接着層、42 接着層、43 接着層、50 チャンバー、50a 凹部、50b ブレード支持部、50c 内壁、51 送液配管、52 返液配管、53 シールブレード、53a 突出部、53b 取付部、54 押付具、55 液溜部、56 空気溜め、60 グラビアロール、61 塗工領域。
図1
図2
図3
図4
図5