IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-表示システムおよび光学積層体 図1
  • 特開-表示システムおよび光学積層体 図2
  • 特開-表示システムおよび光学積層体 図3
  • 特開-表示システムおよび光学積層体 図4
  • 特開-表示システムおよび光学積層体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172755
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】表示システムおよび光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241205BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241205BHJP
   G02B 25/00 20060101ALI20241205BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
G02B25/00
G03B35/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090688
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 栞奈
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2H059
2H087
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H059AC08
2H087KA00
2H087LA12
2H087PA02
2H087PA17
2H087PB02
2H087TA01
2H087TA03
2H087TA04
2H149BA02
2H149BA04
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DA33
2H149DA35
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA07
2H149EA19
2H149FA03W
2H149FA05Y
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA66
2H149FD47
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
(57)【要約】      (修正有)
【課題】VRゴーグルの視認性を向上する表示システムを提供すること。
【解決手段】画像を表示する表示システムであって、偏光部材有する表示素子と、前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子からの光を反射する反射型偏光部材と、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、前記表示素子と前記ハーフミラーとの間に配置される第1のλ/4部材と、前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間に配置される第2のλ/4部材と、前記偏光部材と前記第1のλ/4部材との間に配置される光学補償部材と、を備え、前記光学補償部材の遅相軸が前記偏光部材の吸収軸と略直交または略平行となるように配置される光学補償層を含む、表示システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、
偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、
前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、
前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、
前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、
前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、
前記偏光部材と前記第1のλ/4部材との間の光路上に配置される光学補償部材と、
を備え、
前記光学補償部材が、遅相軸を有し、前記遅相軸が前記偏光部材の吸収軸と略直交または略平行となるように配置される光学補償層を含む、
表示システム。
【請求項2】
前記光学補償部材が、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す第1の光学補償層と、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す第2の光学補償層とを、前記偏光部材側からこの順に含む、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記偏光部材の吸収軸と前記反射型偏光部材の反射軸とが、略直交である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記偏光部材の吸収軸と前記反射型偏光部材の反射軸とが、略平行である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項5】
前記光学補償部材の厚みが、200μm以下である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項6】
前記光学補償部材の厚みのばらつきが、2μm以下である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項7】
偏光部材と、光学補償部材と、第1のλ/4部材と、をこの順に含み、
前記光学補償部材が、遅相軸を有し、前記遅相軸が前記偏光部材の吸収軸と略直交または略平行となるように配置される光学補償層を含み、
前記偏光部材の吸収軸と前記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が、40°~50°である、光学積層体。
【請求項8】
前記光学補償部材が、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す第1の光学補償層と、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す第2の光学補償層とを、前記偏光部材側からこの順に含む、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第1のλ/4部材の前記光学補償部材が配置される側と反対側に保護部材をさらに含む、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記光学補償部材の厚みが、200μm以下である、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記光学補償部材の厚みのばらつきが、2μm以下である、請求項7に記載の光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システムおよび当該表示システムに用いられ得る光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、視認性の向上等が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明はVRゴーグルの視認性の向上を実現し得る表示システムの提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の1つの局面によれば、ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、上記表示素子の前方に配置され、上記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、上記表示素子と上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、上記表示素子と上記第一レンズ部との間に配置され、上記表示素子から出射された光を透過させ、上記反射型偏光部材で反射された光を上記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、上記表示素子と上記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、上記ハーフミラーと上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、上記偏光部材と上記第1のλ/4部材との間の光路上に配置される光学補償部材と、を備え、上記光学補償部材が、遅相軸を有し、上記遅相軸が上記偏光部材の吸収軸と略直交または略平行となるように配置される光学補償層を含む、表示システムが提供される。
[2]上記[1]に記載の表示ステムにおいて、上記光学補償部材が、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す第1の光学補償層と、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す第2の光学補償層とを、上記偏光部材側からこの順に含んでよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の表示システムにおいて、上記偏光部材の吸収軸と上記反射型偏光部材の反射軸とが、略直交であってよい。
[4]上記[1]または[2]に記載の表示システムにおいて、上記偏光部材の吸収軸と上記反射型偏光部材の反射軸とが、略平行であってよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の表示システムにおいて、上記光学補償部材の厚みが、200μm以下であってよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の表示システムにおいて、上記光学補償部材の厚みのばらつきが、2μm以下であってよい。
[7]本発明の別の局面によれば、偏光部材と、光学補償部材と、第1のλ/4部材と、をこの順に含み、上記光学補償部材が、遅相軸を有し、上記遅相軸が上記偏光部材の吸収軸と略直交または略平行となるように配置される光学補償層を含み、上記偏光部材の吸収軸と上記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が、40°~50°である、光学積層体が提供される。
[8]上記[7]に記載の光学積層体において、上記光学補償部材が、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す第1の光学補償層と、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す第2の光学補償層とを、上記偏光部材側からこの順に含んでよい。
[9]上記[7]または[8]に記載の光学積層体において、上記第1のλ/4部材の上記光学補償部材が配置される側と反対側に保護部材をさらに含んでよい。
[10]上記[7]から[9]のいずれかに記載の光学積層体において、上記光学補償部材の厚みが、200μm以下であってよい。
[11]上記[7]から[10]のいずれかに記載の光学積層体において、上記光学補償部材の厚みのばらつきが、2μm以下であってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態による表示システムによれば、VRゴーグルの視認性の向上を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図2図1に示す表示システムの1つの実施形態における光の進行と偏光状態の変化の一例を説明する概略図である。
図3図1に示す表示システムのレンズ部よりも後方部分の具体的な構成の一例を示す模式的な断面図である。
図4】厚みのばらつきの測定方法を説明するための図である。
図5】実施例における積層体の透過率測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特段の言及がない限り、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。また、本明細書において、「略平行」は、0°±10°の範囲を包含し、好ましくは0°±5°の範囲内であり、より好ましくは0°±3°の範囲内であり、さらに好ましくは0°±1°の範囲内である。「略直交」は、90°±10°の範囲を包含し、好ましくは90°±5°の範囲内であり、より好ましくは90°±3°の範囲内であり、さらに好ましくは90°±1°の範囲内である。
【0011】
A.表示システム
図1は本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24と、を備えている。表示素子12は、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面12aを有する。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。また、表示システム2は、上記偏光部材と第一位相差部材20との間の光路上に配置されている光学補償部材28(図1では図示せず)をさらに備えている。
【0012】
ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0013】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0014】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0015】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0016】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0017】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0018】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0019】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0020】
図示しないが、表示システム2は、反射型偏光部材14の前方に吸収型偏光部材(代表的には、吸収型偏光フィルム)を含んでいてもよい。反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材の透過軸と吸収型偏光部材の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。これにより、反射型偏光部材14を透過した第3の直線偏光は、そのまま吸収型偏光部材を透過することができる。
【0021】
例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸と第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0022】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0023】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0024】
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%、好ましくは45%~47%であり得る。反射型偏光部材の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。反射型偏光部材としては、例えば、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)が挙げられる。反射型偏光フィルムの市販品としては、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0025】
以下、図2を参照しながら、表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とが、互いに略直交に配置されている実施形態における光の進行と偏光状態の変化について、具体的に説明する。図2(a)は当該実施形態における光の進行の一例を説明する概略図であり、図2(b)は当該実施形態において各部材を透過することまたは各部材に反射されることによる光の偏光状態の変化の一例を説明する概略図である。図2中、表示素子12に付された実線の矢印および破線の矢印はそれぞれ、表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸方向および透過軸方向を示す。第一位相差部材20および第二位相部材22に付された矢印はそれぞれ、第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材および第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸方向を示す。反射型偏光部材14に付された実線の矢印および破線の矢印はそれぞれ、反射軸方向および透過軸方向を示す。当該実施形態において、表示素子12に含まれ得る偏光部材を介して前方に出射される第1の直線偏光の偏光方向と反射型偏光部材14の反射軸方向とは、略平行である。表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸と第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは約45°である。第1のλ/4部材の遅相軸と第2のλ/4部材の遅相軸とは、互いに略直交に配置されている。
【0026】
表示素子12から偏光部材を介して第1の直線偏光として出射される光Lは、第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材によって第1の円偏光に変換される。第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16(図2では図示せず)を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第1の直線偏光と偏光方向が平行である第2の直線偏光に変換される。第2の直線偏光は、その偏光方向が反射型偏光部材14の反射軸と同方向(略平行)である。よって、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14によってハーフミラー18に向けて反射される。
【0027】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換される。第2の円偏光の回転方向は、第1の円偏光の回転方向と同方向である。第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射されて、第2の円偏光と逆方向に回転する第3の円偏光に変換される。ハーフミラー18で反射された第3の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光の偏光方向は、第2の直線偏光の偏光方向と直交しており、反射型偏光部材14の透過軸と同方向(略平行)である。よって、第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過することができる。反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0028】
以上のように、上記実施形態による表示システムによれば、表示素子12から前方に出射された光は、レンズを介して拡大して視認され、また、第1のλ/4部材を透過し、反射型偏光部材およびハーフミラーでの反射により第2のλ/4部材を計3回透過した後に反射型偏光部材14を透過して視認される。このような表示システムにおいて、反射型偏光部材14に対して斜めに入射する光に関しては、軸関係(例えば、偏光部材と反射型偏光部材との軸関係)がずれて、光漏れが生じ得る。これに対し、本発明の実施形態によれば、偏光部材と第1のλ/4部材との間に光学補償部材を配置する。これにより、上記光軸関係のずれを補償することができ、結果として、反射型偏光部材14における光漏れ、特に斜め方向の光漏れを好適に抑制することができる。よって、本発明の実施形態によれば、反射型偏光部材14で反射されるべき光が漏れて、残像(いわゆる、ゴースト)としてユーザに視認されることが好適に抑制され得る。光学補償部材については、D項で詳述する。
【0029】
図2では、第1のλ/4部材の遅相軸と第2のλ/4部材の遅相軸とが互いに略直交に配置されているが、略平行に配置されていてもよい。例えば、第1のλ/4部材の遅相軸および第2のλ/4部材の遅相軸がいずれも、表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは約45°の角度をなすように配置されてもよい。この場合、図2に示す例とは異なり、表示素子12に含まれ得る偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは互いに略平行に配置され得る。このような構成の表示システムにおいても、偏光部材と第1のλ/4部材との間に光学補償部材を配置することにより、上記光軸関係のずれを補償することができ、結果として、反射型偏光部材14における光漏れ、特に斜め方向の光漏れを好適に抑制することができる。
【0030】
表示システム2において、第一位相差部材20とハーフミラー18との間には空間が形成され得る。この場合、第一位相差部材20および光学補償部材は、表示素子12に一体に設けられることが好ましい。このような形態によれば、例えば、各部材の取扱い性に優れ得る。
【0031】
図3(a)および(b)はそれぞれ、図1に示す表示システムのレンズ部よりも後方部分(すなわち、ハーフミラー18よりも表示素子12側部分)の具体的な構成の一例を示す模式的な断面図である。具体的には、図3(a)および(b)はそれぞれ、表示素子12に含まれ得る偏光部材から上記ハーフミラー18の後方の空間までに配置される部材を含む積層構造(光学積層体)の一例を示している。
【0032】
光学積層体100A、100Bは、偏光部材(吸収型偏光部材)10と、光学補償部材28と、第一位相差部材20と、をこの順に含んでいる。光学積層体100A、100Bにおいて、第一位相差部材20の光学補償部材28が設けられている側と反対側には保護部材30が設けられている。保護部材30は、光学積層体100A、100Bの最表面に位置し得る。また、光学積層体100A、100Bにおいて、偏光部材10の光学補償部材28が設けられている側と反対側には粘着剤層40が設けられている。光学積層体100A、100Bは、粘着剤層40により表示素子12の構成部材と貼り合わせられて、表示素子12と一体化され得る。
【0033】
光学積層体100A、100Bにおいて、代表的には、各部材は接着層を介して積層されている。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。具体的には、接着層は、接着剤層であってもよいし、粘着剤層であってもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmである。例えば、偏光部材10、光学補償部材28、第一位相差部材20、および保護部材30はそれぞれ、粘着剤層を介して積層されている。
【0034】
以下、上記光学積層体を構成する各部材について具体的に説明する。
【0035】
B.偏光部材
偏光部材10は、代表的には吸収型偏光部材である。吸収型偏光部材は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0036】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0037】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0038】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0039】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0040】
吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0041】
C.第一位相差部材
図示例において、第一位相差部材20は、第1のλ/4部材20aに加えて、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す部材(いわゆる、ポジティブCプレート)20bを含んでいる。第一位相差部材20は、第1のλ/4部材20aとポジティブCプレート20bとの積層構造を有している。図示例のように、第一位相差部材20において、第1のλ/4部材20aがポジティブCプレート20bより光学補償部材28側に位置していることが好ましい。第1のλ/4部材20aとポジティブCプレート20bとは、代表的には接着層(例えば接着剤層)を介して積層されている。
【0042】
C-1.第1のλ/4部材
第1のλ/4部材20aは、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第1のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。第1のλ/4部材のRe(550)、波長分散特性、および偏光部材10との軸関係は、A項で記載したとおりである。
【0043】
第1のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第1のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0044】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第1のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0045】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0046】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0047】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0048】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0049】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0050】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0051】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0052】
液晶配向固化層で構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0053】
C-2.ポジティブCプレート
ポジティブCプレート20bの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-20nm~-200nmであり、より好ましくは-30nm~-180nmであり、さらに好ましくは-40nm~-160nmであり、特に好ましくは-50nm~-140nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0054】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得るが、ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0055】
D.光学補償部材
光学補償部材28は、視野角変化に伴う偏光部材10と反射型偏光部材14との光軸関係のずれを補償し得る。光学補償部材28は、遅相軸を有する光学補償層を少なくとも1つ含む。遅相軸を有する光学補償層は、その遅相軸が偏光部材10の吸収軸と略直交または略平行となるように配置される。このような構成によれば、表示素子12から第1の直線偏光として出射された光は、その偏光状態を実質的に変化させることなく光学補償部材28を通過することができる。なお、本明細書中、「遅相軸を有する光学補償層」とは、Re(550)が10nm以上である光学補償層を意味する。
【0056】
図3(a)に示される実施形態において、光学補償部材28は、第1の光学補償層28aを含む。具体的には、光学補償部材28は、第1の光学補償層28aから構成されている。本実施形態において、第1の光学補償層28aは、代表的には、屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示す部材(いわゆる、Zプレート)である。本実施形態において、第1の光学補償層28aは、遅相軸が偏光部材10の吸収軸と略直交または略平行となるように配置され得る。
【0057】
図3(b)に示される実施形態において、光学補償部材28は、第1の光学補償層28aと第2の光学補償層28bとを含む。具体的には、光学補償部材28は、第1の光学補償層28aと第2の光学補償層28bとが偏光部材10側からこの順に積層された積層構造を有する。第1の光学補償層28aと第2の光学補償層28bとは、代表的には、接着層(例えば、接着剤層)を介して積層されている。
第1の光学補償層28aと第2の光学補償層28bとの組み合わせとしては、例えば、第1の光学補償層28aが、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す部材であり、第2の光学補償層28bが、屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す部材である組み合わせが挙げられる。
より具体的には、第1の光学補償層28aが、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す部材(いわゆる、ネガティブBプレート)であり、第2の光学補償層28bが、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す部材(いわゆる、ポジティブBプレート)である組み合わせ、および、第1の光学位補償層28aが、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す部材(いわゆる、ポジティブAプレート)であり、第2の光学補償層28bが、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す部材(いわゆる、ポジティブCプレート)である組み合わせが挙げられる。前者の組み合わせにおいては、第1の光学補償層28aの遅相軸および第2の光学補償層28bの遅相軸がともに、偏光部材10の吸収軸と略直交となるように配置され得る。後者の組み合わせにおいては、第1の光学補償層28aの遅相軸が、偏光部材10の吸収軸と略直交となるように配置され得る。
あるいは、第1の光学補償層28aが、ネガティブBプレートであり、第2の光学補償層28bが、ポジティブCプレートである組み合わせ、または、第1の光学位補償層28aが、ポジティブAプレートであり、第2の光学補償層28bが、ポジティブBプレートである組み合わせであってもよい。これらの組み合わせにおいては、遅相軸を有する光学補償が、偏光部材10の吸収軸と略直交となるように配置され得る。
【0058】
光学補償部材の厚みは、例えば200μm以下、好ましくは5μm~170μm、より好ましくは10μm~150μmである。厚みが上記範囲内であると、表示システムの薄型化および軽量化に寄与し得るとともに、厚みのばらつきを小さくすることができる。なお、光学補償部材が2つ以上の光学補償層を含む場合、上記光学補償部材の厚みは、光学補償層間に介在する接着層を含む全体厚みである。
【0059】
光学補償部材の厚みのばらつきは、例えば2μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.7μm以下である。このような厚みのばらつきによれば、面内位相差および厚み方向の位相差の均一性を向上させることができ、結果として、反射型偏光部材での光抜け等をより好適に抑制することができる。ここで、厚みのばらつきは、光学補償部材全体としての厚みのばらつきであり、光学補償部材の面内に位置する第一部位の厚みと、第一部位から任意の方向(例えば、上方向、下方向、左方向および右方向)に、所定の間隔(例えば、5mm~15mm)をあけた位置の厚みを測定することにより求めることができる。
【0060】
D-1.Zプレート
第1の光学補償層28aとしてのZプレートは、上記のとおり、屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示す。Zプレートの面内位相差Re(550)は、例えば200nm~350nm、好ましくは230nm~320nm、より好ましくは250nm~300nmである。ZプレートのNz係数は、例えば0.2~0.8、好ましくは0.3~0.7、より好ましくは0.4~0.6である。Zプレートは、逆分散波長特性を示してもよく、正の波長分散特性を示してもよく、フラットな波長分散特性を示してもよい。
【0061】
Zプレートは、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。Zプレートは、例えば、樹脂フィルムで構成されている。Zプレートを構成する樹脂としては、例えば、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリールエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフマル酸エステル系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂およびポリウレタン系樹脂が挙げられる。このような樹脂は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0062】
Zプレートを構成する樹脂として、好ましくはシクロオレフィン系樹脂が挙げられ、より好ましくはノルボルネン系樹脂が挙げられる。ノルボルネン系樹脂として具体的には、特開2006―208925号公報に記載される「ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂」が挙げられる。
【0063】
Zプレートは、例えば、上記した樹脂を主成分とする高分子フィルムの両面に高収縮性フィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)を貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で、加熱延伸することにより作製できる。高収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、Zプレートの厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記高分子フィルムの両面に高収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、特に制限はないが、上記高分子フィルムと上記高収縮性フィルムとの間に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層を設けて接着する方法が挙げられる。
【0064】
Zプレートの厚みは、例えば20μm~200μm、また例えば30μm~150μmである。
【0065】
D-2.ネガティブBプレート
第1の光学補償層28aとしてのネガティブBプレートは、上記のとおり、屈折率特性がnx>ny>nzの関係を示す。ネガティブBプレートの面内位相差Re(550)は、例えば60nm~190nm、好ましくは80nm~170nm、より好ましくは100nm~150nmである。ネガティブBプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば60nm~200nm、好ましくは80nm~180nm、より好ましくは100nm~160nmである。ネガティブBプレートのNz係数は、例えば1.1~3.0であり、好ましくは1.1~2.7である。ネガティブBプレートは、逆分散波長特性を示してもよく、正の波長分散特性を示してもよく、フラットな波長分散特性を示してもよい。
【0066】
ネガティブBプレートは、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。ネガティブBプレートは、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂等が挙げられる。このような樹脂は、単独でまたは組み合わせて使用できる。上記樹脂フィルムは、好ましくは、ノルボルネン系樹脂および/またはセルロース系樹脂を含む。これらの樹脂および樹脂フィルムの延伸方法の詳細については、例えば、特開2018-205485号公報等に記載されている。この公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0067】
ネガティブBプレートの厚みは、例えば10μm~80μm、また例えば15μm~60μmである。
【0068】
D-3.ポジティブAプレート
第1の光学補償層28aとしてのポジティブAプレートは、上記のとおり、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。ここで、「ny=nz」はnyとnzとが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。具体的には、ポジティブAプレートのNz係数は、0.9を超え1.1未満であり得る。ポジティブAプレートの面内位相差Re(550)は、例えば60nm~190nm、好ましくは80nm~170nm、より好ましくは100nm~150nmである。ポジティブAプレートは、逆分散波長特性を示してもよく、正の波長分散特性を示してもよく、フラットな波長分散特性を示してもよい。
【0069】
ポジティブAプレートは、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態において、ポジティブAプレートは、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。樹脂フィルムおよびその延伸方法としては、上記ネガティブBプレートを構成する樹脂フィルムおよびその延伸方法を採用することができる。延伸温度、延伸倍率等の延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の特性を有するポジティブAプレートを得ることができる。別の実施形態において、ポジティブAプレートは、液晶配向固化層で構成されている。液晶配向固化層を形成する液晶化合物および液晶配向固化層の形成方法は、C-1項で記載したとおりである。
【0070】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されるポジティブAプレートの厚みは、例えば10μm~70μmであり、好ましくは20μm~60μmである。液晶配向固化層で構成されるポジティブAプレートの厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0071】
D-4.ポジティブBプレート
第2の光学補償層28bとしてのポジティブBプレートは、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す。ポジティブBプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm~60nm、好ましくは15nm~55nm、より好ましくは20nm~45nmである。ポジティブBプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば-250nm~-10nm、好ましくは-200nm~-20nm、より好ましくは-150nm~-60nmである。ポジティブBプレートのNz係数は、例えば-4.0~-1.0、好ましくは-3.5~-1.5、より好ましくは-3.0~-2.0である。ポジティブBプレートは、逆分散波長特性を示してもよく、正の波長分散特性を示してもよく、フラットな波長分散特性を示してもよい。
【0072】
ポジティブBプレートは、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。ポジティブBプレートは、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。ポジティブBプレートを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、負の固有複屈折を示すポリマーが好ましく用いられ得る。負の固有複屈折を示すポリマーと正の固有複屈折を示すポリマーとを組み合わせて用いてもよい。負の固有複屈折を示すポリマーを用いることにより、nz>nx>nyの屈折率特性を示す位相差部材であって、遅相軸方向の均一性に優れた位相差部材を簡便に得ることができる。ここで、「負の固有複屈折を示す」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その延伸方向の屈折率が相対的に小さくなることをいう。換言すると、延伸方向と直交する方向の屈折率が大きくなることをいう。
【0073】
負の固有複屈折を示すポリマーとしては、例えば、芳香環やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合や官能基が、側鎖に導入されたポリマーが挙げられる。具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、フマル酸エステル系樹脂が挙げられ、好ましくはスチレン系樹脂およびフマル酸エステル系樹脂が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
上記スチレン系樹脂として、好ましくは、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-マレイミド共重合体、ビニルエステル-マレイミド共重合体、オレフィン-マレイミド共重合体が挙げられる。
【0075】
上記フマル酸エステル系樹脂として、好ましくは、フマル酸エステル-(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。
【0076】
上記負の固有複屈折を示すポリマーとしては、下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有するポリマーも好ましく例示される。このようなポリマーは、より一層、高い負の複屈折を示し、かつ、耐熱性、機械的強度に優れ得る。このようなポリマーは、例えば、出発原料のマレイミド系モノマーのN置換基として、少なくともオルト位に置換基を有するフェニル基を導入したN-フェニル置換マレイミドを用いることにより得ることができる。
【化1】
上記一般式(I)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、カルボン酸、カルボン酸エステル、水酸基、ニトロ基、または炭素数1~8の直鎖もしくは分枝のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し(ただし、RおよびRは、同時に水素原子ではない)、RおよびRは、水素または炭素数1~8の直鎖もしくは分枝のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し、nは、2以上の整数を表す。
【0077】
ポジティブBプレートは、上記樹脂を含む樹脂フィルムを任意の適切な延伸条件で延伸することによって得られ得る。
【0078】
ポジティブBプレートの厚みは、例えば1μm~30μm、好ましくは2μm~20μm、より好ましくは3μm~10μmである。
【0079】
D-5.ポジティブCプレート
第2の光学補償層28bとしてのポジティブCプレートは、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。ポジティブCプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば-250nm~-10nm、好ましくは-200nm~-20nm、より好ましくは-150nm~-60nmである。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。ポジティブCプレートは、逆分散波長特性を示してもよく、正の波長分散特性を示してもよく、フラットな波長分散特性を示してもよい。
【0080】
ポジティブCプレートは、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態において、ポジティブCプレートは、液晶配向固化層で構成されている。液晶配向固化層を形成する液晶化合物およびその形成方法は、C-2項で記載したとおりである。別の実施形態において、ポジティブCプレートは、樹脂フィルムで構成されている。例えば、上記ポジティブBプレートを構成する負の固有複屈折を示すポリマーを含む樹脂フィルムは、製膜後そのまま(すなわち、無延伸の状態で)、ポジティブCプレートとして用いられ得る。負の固有複屈折を示すポリマーを含む樹脂溶液を用いて溶液製膜法によって製膜すると、支持体上で樹脂溶液が乾燥される際の体積収縮により応力が生じ、ポリマーの分子鎖が面内方向に配向する傾向がある。よって、複屈折発現性が高く、かつ、負の固有複屈折を示すポリマーを用いると、乾燥時の収縮作用により、大きな厚み方向複屈折を有する塗膜を支持体上に形成させることができ、当該塗膜を、そのままポジティブCプレートとして用いることができる場合がある。
【0081】
液晶配向固化層であるポジティブCプレートの厚みは、例えば0.5μm~10μm、好ましくは0.5μm~8μm、より好ましくは0.5μm~5μmである。樹脂フィルムであるポジティブCプレートの厚みは、例えば1μm~40μm、好ましくは2μm~35μm、より好ましくは3μm~20μmである。
【0082】
E.保護部材
保護部材30は、代表的には、基材を含む。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0083】
保護部材30は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。表面処理層を有する保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。具体的には、表面処理層が光学積層体の最表面に位置し得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、視認性を向上させる観点から、反射防止機能を有することが好ましい。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~10μmであり、さらに好ましくは2μm~7μmである。
【0084】
F.粘着剤層
粘着剤層40は、任意の適切な粘着剤で構成され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。具体的には、粘着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される。
【0085】
粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上、好ましくは3μm以上であり、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【実施例0086】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0087】
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<Re(λ)およびRth(λ)>
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
<偏光フィルムの単体透過率および偏光度>
分光光度計(大塚電子社製、「LPF-200」)を用いて、偏光フィルムの単体透過率Ts、平行透過率Tp、直交透過率Tcを測定した。これらのTs、TpおよびTcは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。得られたTpおよびTcから、下記式を用いて偏光フィルムの偏光度を求めた。
偏光度(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
<厚みのばらつき>
測定対象のフィルムを100mm×100mmのサイズに切り出して測定サンプルとした。図4に示すように、測定サンプルの中心と中心から上下左右に各々10mm離れた4点との計5点における厚みを測定し、最大値と最小値との差を厚みのばらつきとした。
【0088】
[製造例1:偏光フィルムAの作製]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(三菱ケミカル社製、商品名「ゴーセネックスZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光膜の単体透過率(Ts)が42.0%以上となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの吸収型偏光膜を形成した。
得られた吸収型偏光膜の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてのシクロオレフィン系樹脂フィルム(厚み:25μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系樹脂フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離した。
これによって、[シクロオレフィン系樹脂フィルム/吸収型偏光膜]の構成を有する偏光フィルムAを得た。偏光フィルムAの単体透過率(Ts)は43.4%であり、偏光度は99.993%であった。
【0089】
[製造例2:λ/4部材Aの作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.7倍で延伸した。
こうして、厚みが47μmで、Re(590)が143nmであり、Nz係数が1.2であるλ/4部材Aを得た。得られたλ/4部材AのRe(450)/Re(550)は0.856であった。
【0090】
[製造例3:光学補償部材Aの作製]
1.nx>ny>nzの屈折率特性を有するネガティブBプレートA
シクロオレフィン系樹脂フィルムの延伸フィルム(日本ゼオン社製、商品名:ZT12、厚み:約18μm、Re(550):116nm、Rth(550):139nm)を、ネガティブBプレートAとして用いた。
2.nz>nx>nyの屈折率特性を有するポジティブBプレートA
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えたオートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名「メトローズ60SH-50」)48重量部、蒸留水15601重量部、フマル酸ジイソプロピル8161重量部、アクリル酸3-エチル-3-オキセタニルメチル240重量部および重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート45重量部を入れ、窒素バブリングを1時間行った後、攪拌しながら49℃で24時間保持することにより、ラジカル懸濁重合を行なった。次いで、室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマーを蒸留水で2回およびメタノールで2回洗浄した後、減圧乾燥して、フマル酸エステル系樹脂を得た。
得られたフマル酸エステル系樹脂を、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトンが50重量%/50重量%)に溶解して固形分濃度20重量%の溶液とした。さらに、フマル酸エステル系樹脂100重量部に対し、可塑剤としてトリブチルトリメリテート5重量部を添加して、ドープを得た。支持体フィルムとして、厚み75μmで、幅1350mmのポリエステル(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート共重合体)の二軸延伸フィルムを用いた。支持体フィルムの巻回体を製膜装置の繰出し部にセットし、支持体フィルムを繰り出して下流側に搬送しながら、支持体フィルム上に得られたドープを乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布して、140℃で乾燥させて積層体を得た。
得られた積層体を、延伸装置の繰出し部にセットし、積層体を繰り出して下流側に搬送しながら、温度140℃の延伸炉内で自由端一軸延伸を行った。延伸後の積層体から支持体フィルムを剥離し、ポジティブBプレートA(厚み:約6μm、Re(550):35nm、Rth(550):-85nm)を得た。
3.光学補償部材A
上記ネガティブBプレートAの片面に硬化型接着剤層(厚み1μm)を介して上記ポジティブBプレートAを貼り合わせて、光学補償部材Aを得た。光学補償部材Aにおいて、ネガティブBプレートAの遅相軸とポジティブBプレートAの遅相軸とのなす角度は0°であった。
【0091】
光学補償部材Aの厚みおよびそのばらつき、ならびに、ネガティブBプレートAおよびポジティブBプレートA単独の厚みおよびそのばらつきを表1に示す。
【表1】
【0092】
[実施例1]
1.積層体1
ガラス板A(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm、180mm×250mm)に、アクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して上記偏光フィルムAのシクロオレフィン系樹脂フィルム側を貼り合わせた。
次いで、偏光フィルムAの吸収型偏光膜側にアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して光学補償部材AをネガティブBプレートAが吸収型偏光膜側となるように貼り合わせた。
次いで、光学補償部材AのポジティブBプレートA側にアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介してλ/4部材Aを貼り合わせた。
これにより、[ガラス板A/偏光フィルムA/光学補償部材A/λ/4部材A]の構成を有する積層体1を得た。積層体1において、偏光フィルムAの吸収軸とネガティブBプレートAおよびポジティブBプレートAの遅相軸とは直交しており、偏光フィルムAの吸収軸とλ/4部材Aの遅相軸とのなす角度は45°であった。
2.積層体2
ガラス板B(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm)に、アクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して別の偏光フィルムAのシクロオレフィン系樹脂フィルム側を貼り合わせた。
次いで、偏光フィルムAの吸収型偏光膜側にアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して反射型偏光フィルムA(日東電工社製の「APCF」)を、反射型偏光フィルムAの反射軸と吸収型偏光膜の吸収軸とが互いに平行に配置されるように、貼り合わせた。
これにより、[ガラス板B/偏光フィルムA/反射型偏光フィルムA]の構成を有する積層体2を得た。
3.積層体3
積層体1のλ/4部材A側に、ガラス板C(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm)、別のλ/4部材A、ガラス板D(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm)、および積層体2をこの順に、それぞれアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を介して貼り合わせた。なお、積層体2は反射型偏光フィルムAがガラス板D側となるように貼り合わせた。
これにより、積層体3を得た。積層体3の構成および各構成部材の軸角度(吸収軸角度、反射軸角度、および遅相軸角度)を表2に示す。表中、軸角度の+は時計回りを意味する。
【0093】
[比較例1]
積層体1の作製において、光学補償部材Aを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、積層体3Cを得た。積層体3Cの構成および各構成部材の軸角度(吸収軸角度、反射軸角度、および遅相軸角度)を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
<積層体の透過率測定>
上記積層体3および3Cを積層体1側が下となるようにバックライト上に置き、バックライトを点灯したときの各積層体の透過率を測定した。具体的には、以下のとおりである。
UV定電流制御電源(株式会社アイテックシステム社製「LPDCシリーズ」)で調光したUV-LED照射器をバックライトとして用いた。バックライト上に何もサンプルを置かなかった際および積層体3または3Cを置いた際の極角0°、30°および60°輝度を輝度角度分布測定装置(Autronic-MELCHERS社製「Conoscope」)で測定し、下記式から透過率を算出した。結果を図5に示す。
透過率(%)=積層体を置いた際の輝度/積層体を置かなかった際の輝度×100
【0096】
上記積層体3および3Cに関して測定した透過率は、本発明の実施形態における表示システムにおいて、反射型偏光部材およびその前方に設けられた吸収型偏光部材で反射および吸収されるべき光の光漏れを反映し得る。図5に示されるように、偏光部材と第1のλ/4部材との間に光学補償部材を配置することにより、斜め方向の光漏れが好適に抑制されることがわかる。
【0097】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の実施形態に係る表示システムは、例えば、VRゴーグル等の表示体に用いられ得る。
【符号の説明】
【0099】
2 表示システム、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第一位相差部材、22 第二位相差部材、24 第二レンズ部、28 光学補償部材、30 保護部材、100 光学積層体

図1
図2
図3
図4
図5