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特開2024-172757コイルセグメントの位置決め具及びそれを用いたコイルセグメントの位置決め装置並びにコイルセグメントの位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172757
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】コイルセグメントの位置決め具及びそれを用いたコイルセグメントの位置決め装置並びにコイルセグメントの位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20241205BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02K15/04 E
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090695
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】門脇 洸人
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ12
5H615SS10
5H615SS16
(57)【要約】
【課題】コイルセグメントの端部の位置決めの作業効率を向上させるとともに、溶接されるべき端部対を確実に接触させる。
【解決手段】コイルセグメントの位置決め具は、ステータコア13の中心軸を中心として放射状に設けられ、ステータコアの端面から突出したコイルセグメント12の径方向で対向する複数の端部対12a,12aを対毎に区画して進入可能な切り欠き21aaが径方向に複数列を形成するように両側にそれぞれ設けられた複数のクランプ片21と、複数のクランプ片を径方向に移動可能に支持する支持枠22と、周方向に連続する複数のクランプ片21を選択的に移動させて隣接するクランプ片をずらすか又は一致させる移動手段23とを備える。クランプ片は中心軸に向かうに従って幅が狭まる傾斜片部21aと、傾斜片部に連続して径方向外側に連続して幅が等しい等幅部21bとをそれぞれ有し、傾斜片部の両側に切り欠きがそれぞれ形成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア(13)の中心軸を中心として放射状に設けられ前記ステータコア(13)の端面から突出したコイルセグメント(12)の端部(12a)の内それぞれ前記ステータコア(13)の径方向で対向する端部(12a)の対により構成される複数の端部対(12a,12a)を対毎に区画して進入可能な切り欠き(21aa)が前記径方向に複数列を形成するように両側にそれぞれ設けられた複数のクランプ片(21)と、
放射状に設けられた前記複数のクランプ片(21)を前記ステータコア(13)の径方向に移動可能に支持する支持枠(22)と、
前記ステータコア(13)の周方向に連続する前記複数のクランプ片(21)を選択的に移動させて隣接する前記クランプ片(21)をずらすか又は一致させる移動手段(23)と
を備えたコイルセグメントの位置決め具。
【請求項2】
クランプ片(21)がステータコア(13)の中心軸に向かうに従って幅が狭まる傾斜片部(21a)と、前記傾斜片部(21a)に連続して前記ステータコア(13)の径方向外側に連続して幅が等しい等幅部(21b)とをそれぞれ有し、
前記傾斜片部(21a)の両側に切り欠き(21aa)がそれぞれ形成された請求項1記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項3】
クランプ片(21)の等幅部(21b)を収容し前記クランプ片(21)のステータコア(13)の周方向における移動を制限する凹溝(22b)が支持枠(22)に形成された請求項2記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項4】
移動手段がクランプ片(21)の等幅部(21b)に重なるカムリング(23)を備え、前記等幅部(21b)にカムピン(21ba)が設けられ、前記カムピン(21ba)が移動可能なカム孔(23a,23b)が複数のクランプ片(21)に対向して前記カムリング(23)に周方向に連続して複数形成された請求項3記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項5】
支持枠(22)にクランプ片(21)の傾斜片部(21a)が対向する中央孔(22a)が形成され、
ステータコア(13)の径方向及び周方向の双方に連続するコイルセグメント(12)の端部対(12a,12a)を対毎に区画して挿入可能な挿入孔(24a)が設けられた誘い治具(24)が前記中央孔(22a)に設けられた請求項2記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項6】
挿入孔(24a)が方形状を成して形成され、前記挿入孔の周方向の内面がクランプ片(21)に向かうに従って狭まるように傾斜して設けられた請求項5記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項7】
支持枠(22)に等幅部(21b)が支持されて傾斜片部(21a)が誘い治具(24)に支持された放射状を成す複数のクランプ片(21)の内端にステータコア(13)の径方向に延びる長孔(21c)がそれぞれ形成され、
前記長孔(21c)に挿通可能なピン(26d)が前記複数のクランプ片(21)に対応して誘い治具(24)に複数設けられた請求項5又は6記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項8】
誘い治具(24)は、
挿入孔(24a)が形成されて長孔(21c)が形成されたクランプ片(21)の内端を除く傾斜辺部(21a)を支持するリング部材(25)と、
前記リング部材(25)に設けられて前記クランプ片(21)の内端を上下から挟む支持具(26)と
を有し、
前記支持具(26)にピン(26d)が貫通して設けられた請求項7記載のコイルセグメントの位置決め具。
【請求項9】
スロットにコイルセグメント(12)が装着されたステータコア(13)を中心軸が鉛直になるように取付ける取付具(16)と、
前記ステータコア(13)の上端面から突出した前記コイルセグメント(12)の端部(12a)を位置決めする請求項1又は2記載のコイルセグメントの位置決め具(20)と、
前記コイルセグメントの位置決め具(20)を前記取付具(16)の所定の位置に載置させる載置手段と
を備えたコイルセグメントの位置決め装置。
【請求項10】
載置手段が、取付具又はコイルセグメントの位置決め具(20)に形成された突起(20b)と、前記コイルセグメントの位置決め具又は前記取付具(16)に形成されて前記突起(20b)が挿入可能な孔(16g)と、を有する請求項9記載のコイルセグメントの位置決め装置。
【請求項11】
ステータコア(13)の端面から突出したコイルセグメント(12)の端部(12a)のうちそれぞれ前記ステータコア(13)の径方向で対向する端部(12a)の対により構成される複数の端部対(12a,12a)を位置決めする方法であって、
前記ステータコア(13)の端面から突出した前記コイルセグメント(12)の端部(12a)のうちそれぞれ前記ステータコア(13)の径方向で対向する端部(12a)の対により構成される複数の端部対(12a,12a)を対毎に区画して進入可能な切り欠き(21aa)が両側にそれぞれ設けられた複数のクランプ片(21)を前記ステータコア(13)の中心軸を中心として放射状に設け、
前記ステータコア(13)の端面から突出した前記コイルセグメント(12)の端部(12a)の前記ステータコア(13)の径方向に複数列を形成する端部対(12a,12a)を対毎に区画して隣接する前記クランプ片(21)の間の対向する切り欠き(21aa)に進入させ、
前記ステータコア(13)の周方向に互いに隣接するクランプ片(21)を前記ステータコア(13)の径方向にずらすことによりずれる切り欠き(21aa)により前記各端部対(12a,12a)を挟んで前記径方向に相互に接触させる
ことを特徴とするコイルセグメントの位置決め方法。
【請求項12】
ステータコア(13)の端面から突出したコイルセグメント(12)の端部(12a)のうちそれぞれ前記ステータコア(13)の径方向で対向する端部(12a)の対により構成される端部対(12a,12a)を対毎に区画して挿入可能な挿入孔(24a)が前記ステータコア(13)の周方向に連続して設けられた誘い治具(24)を用い、
前期各端部対(12a,12a)を前記挿入孔(24a)に挿入させて前記ステータコア(13)の周方向の位置を揃えた前記各端部対(12a,12a)を前記クランプ片(21)の間の対向する切り欠き(21aa)に進入させる請求項11記載のコイルセグメントの位置決め方法。
【請求項13】
周方向に互いに隣接するクランプ片(21)のずらしが、放射状に設けられた複数のクランプ片(21)に重ねたカムリング(23)を前記ステータコア(13)の軸心回りに回転させることにより行われる請求項11又は12記載のコイルセグメントの位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機等の回転電機又はトランス等の電磁機器に用いられるコイルを構成するコイルセグメントの端部の位置を決めるコイルセグメントの位置決め具及びそれを用いたコイルセグメントの位置決め装置並びにコイルセグメントの位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、回転電機のステータでは、断面が矩形の平角線をU字状に折り曲げて形成したコイルセグメントをコアのスロットに挿入し、コアの端面から突出したコイルセグメントの端部をコアの径方向で隣り合う層毎に周方向に逆向きに折り曲げ、径方向で対向する端部同士を電気的に接続することにより複数のコイルセグメントが直列に繋がったコイルを形成することが知られている。
【0003】
コイルセグメントを構成する平角線は、エナメルやポリイミド樹脂等からなる絶縁被膜が形成されており、コイルセグメントの端部はそのような絶縁被膜を剥離した剥離部とし、この剥離部同士がコアの径方向で突き合わせられた状態でアーク溶接やレーザ溶接等により接合される。
【0004】
コアの端面から突出したコイルセグメントの一対の端部は、コアの径方向で隣り合う層に位置しており、それぞれコアの周方向に反対向きに且つ斜めに折り曲げられるツイスト加工では、剥離部はコアの軸方向に沿った直線形状に維持される。
【0005】
このように折り曲げ後にコアの径方向で対向する剥離部同士を電気的に接続することにより、複数のコイルセグメントが直列に接続された、コアを略一周するコイルを形成することができる。
【0006】
そして、一周目の終わりのコイルセグメントと二周目の始めのコイルセグメントとを接続することによりいわゆる周回移りがなされ、これが繰り返されることにより、環状に配置された複数のコイルセグメントが直列に接続され、コアを複数回周回するコイルを形成することができる。
【0007】
このようなコイルセグメントの剥離部同士の溶接にあっては、対向する剥離部同士のコアの周方向の位置ずれの修正と、コアの径方向の位置ずれの修正が必要であり、このコイルセグメントの剥離部同士の位置を決める装置として、対向するセグメントの端部対を挿入する挿入窓を有する環状のプレートを2枚用い、各プレートを逆方向に回転させてセグメントの端部対を拘束して、コアの周方向及び径方向の位置決めを一挙的に行うセグメント位置決め装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この装置の各プレートの挿入窓は、スロット形状に対応した開口形状でスロット数に対応した数配置されている。従って、1つの挿入窓には、1つのスロット内に配置される数のセグメントの端部からなるセグメント端部対群が挿入される。
【0009】
そして、各プレートを回転したときに互いに接近する各プレートの挿入窓の辺縁には、対向する位置に突出部が設けられており、セグメントの端部対が突出部同士のオーバラップによって区画される領域で挟まれて拘束されることによって位置決めがなされるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-130577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、環状のプレートを2枚用い、各プレートを逆方向に回転させてセグメントの端部を拘束することは、そのセグメントの端部をコアの周方向に位置決めすることに適してはいるけれども、そのセグメントの端部をコアの径方向に位置決めすることには限界があった。
【0012】
即ち、コアの中心軸を回転中心としてプレートを回転させると、そのプレートに形成されてセグメントの端部が挿通された挿入窓も周方向に移動するので、そのセグメントの端部も周方向に移動して位置決めされるので、そのセグメントの端部をコアの周方向に位置決めすることに適してはいる。
【0013】
一方、溶接されるセグメントの端部はコアの径方向に接触させて対を成す端部対を溶接するので、端部対をコアの径方向にも位置決めして接触させなければならない。けれども、その溶接端部は被覆を剥離する必要もあり、その剥離のばらつきを考慮して挿通窓が形成されるために、周方向に移動する挿入窓に挿通された端部を径方向に移動させて接触させることは限界があり、その端部対を確実に接触させることは困難であった。
【0014】
また、従来技術におけるプレートでは、各挿入窓が1つのスロット内に配置される全てのセグメントの端部を挿入できるように単一穴として開口されているので、ツイスト加工後にコアの径方向で対向するセグメントの端部対の位置がある程度ばらついても、挿入されるべきセグメントの端部対群の挿入が可能となる。
【0015】
けれども、各セグメントの端部対の位置がばらついた状態で挿入された場合、各セグメントの端部対が上記突出部で区画される領域に正確に位置付けられるとは限らず、実際には溶接されるべきセグメントの端部対間に突出部が進入して分離され、本来的に溶接予定の端部対を接触させることが困難になるという未だ解決すべき課題も残存していた。
【0016】
本発明の目的は、コイルセグメントの端部の位置決めの作業効率を向上させるとともに、溶接されるべき端部対を確実に接触させ得るコイルセグメントの位置決め具及びそれを用いたコイルセグメントの位置決め装置並びにコイルセグメントの位置決め方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のコイルセグメントの位置決め具は、ステータコアの中心軸を中心として放射状に設けられステータコアの端面から突出したコイルセグメントの端部のうちそれぞれステータコアの径方向で対向する端部の対により構成される複数の端部対を対毎に区画して進入可能な切り欠きが径方向に複数列を形成するように両側にそれぞれ設けられた複数のクランプ片と、放射状に設けられた複数のクランプ片をステータコアの径方向に移動可能に支持する支持枠と、ステータコアの周方向に連続する複数のクランプ片を選択的に移動させて隣接するクランプ片をずらすか又は一致させる移動手段とを備える。
【0018】
クランプ片がステータコアの中心軸に向かうに従って幅が狭まる傾斜片部と、傾斜片部に連続してステータコアの径方向外側に連続して幅が等しい等幅部とをそれぞれ有する場合、その傾斜片部の両側に切り欠きがそれぞれ形成されたことが好ましく、クランプ片の等幅部を収容しクランプ片のステータコアの周方向における移動を制限する凹溝が支持枠に形成されたことも好ましい。
【0019】
移動手段がクランプ片の等幅部に重なるカムリングを備える場合、等幅部にカムピンが設けられ、カムピンが移動可能なカム孔が複数のクランプ片に対向してカムリングに周方向に連続して複数形成される。
【0020】
支持枠にクランプ片の傾斜片部が対向する中央孔が形成される場合、ステータコアの径方向及び周方向の双方に連続するコイルセグメントの端部対を対毎に区画して挿入可能な挿入孔片が設けられた誘い治具が中央孔に設けられることが好ましく、挿入孔片が方形状を成して形成されている場合、挿入孔の周方向の内面がクランプ片に向かうに従って狭まるように傾斜して設けられることが好ましい。
【0021】
そして、支持枠に等幅部が支持されて傾斜片部が誘い治具に支持された放射状を成す複数のクランプ片の内端にステータコアの径方向に延びる長孔がそれぞれ形成された場合、長孔に挿通可能なピンが複数のクランプ片に対応して誘い治具に複数設けられることが好ましく、誘い治具は、挿入孔が形成されて長孔が形成されたクランプ片の内端を除く傾斜辺部を支持するリング部材と、リング部材に設けられてクランプ片の内端を上下から挟む支持具とを有する場合、支持具にピンが貫通して設けられる。
【0022】
本発明のコイルセグメントの位置決め装置は、スロットにコイルセグメントが装着されたステータコアを中心軸が鉛直になるように取付ける取付具と、ステータコアの上端面から突出したコイルセグメントの端部を位置決めする上記コイルセグメントの位置決め具と、コイルセグメントの位置決め具を取付具の所定の位置に載置させる載置手段とを備える。
【0023】
この場合、載置手段が、取付具又はコイルセグメントの位置決め具に形成された突起と、コイルセグメントの位置決め具又は取付具に形成されて突起が挿入可能な孔とを有することが好ましい。
【0024】
一方、別の本発明は、ステータコアの端面から突出したコイルセグメントの端部のうちそれぞれステータコアの径方向で対向する端部の対により構成される複数の端部対を位置決めする方法である。
【0025】
その特徴ある点は、ステータコアの端面から突出したコイルセグメントの端部のうちそれぞれステータコアの径方向で対向する端部の対により構成される複数の端部対を対毎に区画して進入可能な切り欠きが両側にそれぞれ設けられた複数のクランプ片をステータコアの中心軸を中心として放射状に設け、ステータコアの端面から突出したコイルセグメントの端部の径方向に複数列を形成する端部対を対毎に区画して隣接するクランプ片の間の対向する切り欠きに進入させ、ステータコアの周方向に互いに隣接するクランプ片をステータコアの径方向にずらすことによりずれる切り欠きにより該各端部対を挟んで径方向に相互に接触させるところにある。
【0026】
ステータコアの端面から突出したコイルセグメントの端部のうちそれぞれステータコアの径方向で対向する端部の対により構成される端部対を対毎に区画して挿入可能な挿入孔がステータコアの周方向に連続して設けられた誘い治具を用いる場合、各端部対を挿入孔に挿入させてステータコアの周方向の位置を揃えた各端部対をクランプ片の間の対向する切り欠きに進入させることができる。
【0027】
そして、周方向に互いに隣接するクランプ片のずらしは、放射状に設けられた複数のクランプ片に重ねたカムリングをステータコアの軸心回りに回転させることにより行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、複数のクランプ片を放射状に設け、コイルセグメントの端部の径方向に複数列を形成する複数の端部対を対毎に区画して隣接するクランプ片の間の対向する切り欠きに挿入し、ステータコアの周方向に互いに隣接するクランプ片をステータコアの径方向にずらすことによりずれる切り欠きにより該各端部対を挟むので、その端部対は径方向に相互に接触することに成る。よって、本発明では、端部対が離間することに起因する溶接不良を減少させて、その溶接精度を高めることが可能となる。
【0029】
また、切り欠きに対向して重合する誘い治具を設ければ、その挿入孔に複数の端部対を挿入させることにより周方向のずれは解消するので、挿入孔に挿通された端部対を切り欠きに挿入することにより、コイルセグメント端部の位置決めの作業効率を向上させることが可能になる。
【0030】
更に、放射状に設けられた複数のクランプ片にカムリングを重ね、そのカムリングをステータコアの軸心回りに回転させることにより、周方向に互いに隣接するクランプ片をずらす様にすれば、複数のクランプ片を同時にずらすことが可能となり、そのクランプ片に形成された切り欠きによりコイルセグメントの各端部対を挟んで容易にそれらを接触させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明実施形態のコイルセグメントの位置決め装置を示す正面図である。
図2】そのクランプ片の動きを示す図3に対応する拡大図である。
図3】そのクランプ片の並びを示す図5のE部拡大図である。
図4】その支持枠に支持されたクランプ片を示す図7のF部拡大図である。
図5】そのコイルセグメントの位置決め具の上面図である。
図6】その位置決め具から補助リングを除いた上面を示す図1のA-A線断面図である。
図7】そこからカムリングを除いた上面を示す図1のB-B線断面図である。
図8】そこから複数のクランプ片を除いた上面を示す図1のC-C線断面図である。
図9】その位置決め具の底面を示す図1のD-D線断面図である。
図10】コイルセグメントの端部対の挿入状態を示す図3のG-G線断面図である。
図11】そのコイルセグメントを有するステータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1に、本発明におけるコイルセグメントの位置決め装置10を示す。このコイルセグメントの位置決め装置10は、ステータコア13を支持する取付具16と、その取付具16に載置されて、ステータコア13の一方の端縁から突出するコイルセグメント12の溶接すべき端部12aを位置決めするコイルセグメントの位置決め具20とを備える。
【0034】
取付具16が支持するステータコア13は、電気自動車等に用いられる回転電機のステータ11を構成するものである場合を示し、図11に、この実施の形態における被溶接物であるインナーロータ型のステータ11を示す。
【0035】
即ち、このステータ11は、複数のコイルセグメント12がステータコア13に配置されたものであって、この複数のコイルセグメント12は、略四角断面形状を有する角線をそのスロットに挿通可能に波型にそれぞれ形成される。そして、これら複数のコイルセグメント12は、端部12aが上方に来るように、ステータコア13の内周に軸方向に延びて形成されたスロット(図示せず)に挿通されて配置される。
【0036】
図1に戻って、この取付具16は、複数のコイルセグメント12がスロット(図示せず)に装着された状態のステータコア13を支持するものであって、この取付具16は、そのステータ11を、その中心軸を鉛直にして支持する様に構成される。
【0037】
具体的に、この実施の形態における取付具16は、台板16aと、その台板16aに短支柱16bを介して設けられてその上面にステータコア13の下端面が載置されてそのステータコア13を下方から支持するコア支持板16cと、そのコア支持板16cに中支柱16dを介して設けられてコア支持板16cと共にステータコア13の上側の周囲を挟むリング状のコア押さえ板16eとを備える。
【0038】
そして、コア支持板16cに搭載されたステータコア13の上面周囲をコア押さえ板16eにより挟むと、ステータコア13に配置されたコイルセグメント12の端部12aはステータコア13の上面から上方に突出するように構成される。
【0039】
ここで、図1に示す符号9は、このコイルセグメントの位置決め装置10が取付けられる図示しない溶接装置の回転台9を示し、その符号9aは、その回転台9の上面に上方に向けて設けられた位置決めピン9aを示す。
【0040】
この実施の形態におけるコイルセグメントの位置決め装置10は、このような回転台9に取付けられるものを示し、図1に示す符号16fは、そのピン9aを挿通させるように台板16aに形成されたピン孔16fであって、この台板16aのピン孔16fにピン9aを挿通させることにより、ステータコア13を支持する取付具16を図示しない溶接装置の回転台9の正規の位置に設置可能に構成されるものとする。
【0041】
このような取付具16に載置される位置決め具20は、そのコイルセグメント12の端部12aの位置を決めて溶接し得るように、取付具16が支持するステータコア13の上方から突出した複数のコイルセグメント12の溶接する端部12aを把持して固定するものである。
【0042】
ここで、図11に示す様に、被溶接物であるステータ11において、コイルセグメント12は、ステータコア13に周方向に複数配置されるとともに径方向にも複数重なり合った状態で収容されるので、その溶接すべき端部12aは、径方向に複数連続するとともに、そのように径方向に複数連続するものが、周方向にも連続して形成されるものとし、位置決め具20は、その溶接すべき端部12aの全てを固定するものとされる。
【0043】
図1に戻って、具体的に、この位置決め具20は、ステータコア13の中心軸を中心として放射状(図7)に設けられた複数のクランプ片21と、それら複数のクランプ片21をステータコア13の径方向に移動可能に支持する支持枠22と、それら複数のクランプ片21を選択的にステータコア13の径方向に移動させる移動手段23とを備える。
【0044】
ここで、溶接すべき端部12aは、ステータコア13の径方向に複数連続するものが、周方向にも連続して形成されるものであり(図11)、このクランプ片21は、径方向に連続するコイルセグメント12の溶接されるべき複数の端部対12a,12aの、周方向の数に等しい数、即ち、ステータコア13の図示しないスロットの数だけ準備される(図7)。
【0045】
図4に示す様に、この実施の形態におけるクランプ片21は、ステータコア13の中心軸に向かうに従って幅が狭まる傾斜片部21aと、その傾斜片部21aに連続してステータコア13の径方向外側に連続して幅が等しい等幅部21bとを有するものを示す。
【0046】
図7に示す様に、このようなクランプ片21をステータコア13の中心軸を中心として放射状に設けられた状態で支持する支持枠22は、その複数のクランプ片21の傾斜片部21aに対向する中央孔22aを有するドーナツ状の円盤であって、傾斜片部21aに連続してステータコア13の径方向外側に連続するクランプ片21の等幅部21bを支持する様に構成される。
【0047】
具体的には、図8に示す様に、クランプ片21の等幅部21bがステータコア13の径方向に移動可能に収容される凹溝22bが中央孔22aに開放される様に放射状に形成され、図1の拡大図に示す様に、この凹溝22bの深さはクランプ片21の厚さより僅かに深く形成される。これにより、この凹溝22bは、支持枠22がクランプ片21の等幅部21bの周方向における移動を制限するものとなる(図7)。
【0048】
図1の拡大図及び図9に示す様に、この支持枠22を含むコイルセグメントの位置決め具20は、取付具16の所定の位置に載置されるものであるので、この支持枠22には、載置手段を構成する取付脚20aがその下面に取付けられる。この取付脚20aには下方に向かって突出する突起20bが形成され、取付具16におけるコア押さえ板16eには、その突起20bが挿入可能な孔16gが形成される。
【0049】
そして、この支持枠22を含むコイルセグメントの位置決め具20は、取付脚20aにおける突起20bをコア押さえ板16eにおける孔16gに挿入させるように載置することにより、取付具16の所定の位置に正確に載置される様に構成される。
【0050】
図1の拡大図に示す様に、ドーナツ状を成す支持枠22の内周には段部22cが形成され、この段部22cには、支持枠22において放射状に設けられた複数のクランプ片21の傾斜片部21aに重合する誘い治具24が装着される。
【0051】
図における誘い治具24は、放射状に設けられた複数のクランプ片21の内端を除く傾斜片部21aに重合して支持するリング部材25と、このリング部材25に設けられてクランプ片21の内端を上下から挟む支持具26とを備えるものを示す。
【0052】
具体的に説明すると、誘い治具24を構成するリング部材25は、ドーナツ状の円盤であって、その外周が段部22cに装着され、その状態でクランプ片21に対向する上面が支持枠22の凹溝22bの底部と面一になるように構成される(図1の拡大図)。これにより、支持枠22において等幅部21bが放射状に設けられた複数のクランプ片21の傾斜片部21aは、その支持枠22の内周に設けられたリング部材25(誘い治具24)に重合するように構成される。
【0053】
支持具26は、このドーナツ状のリング部材25の内周に設けられて、クランプ片21における傾斜片部21aのリング部材25の内周から中央に向かって突出した傾斜片部21aの内周端を支持する様に構成される。
【0054】
図1の断面図に示す様に、この支持具26は、放射状に設けられた複数のクランプ片21の内端を上下から挟むものであって、リング部材25の内周端に設けられた下リング部材26aと、その下リング部材26aにクランプ片21の内端を介して対向する上リング部材26bと、その上下のリング部材26a,26bの間に介在して、その上下のリング部材26a,26bの間をクランプ片21の厚さより広く維持してクランプ片21の移動を許容するスペーサ26cと、このスペーサ26cを介して上下のリング部材26a,26bを連結すると雌ねじ26eとを有する。
【0055】
支持具26に挟まれるクランプ片21の内端には径方向に延びる長孔21cが形成され、この長孔21cに遊挿可能なピン26dが上下のリング部材26a,26bを貫通して設けられる。図7に示す様に、このピン26dが長孔21cに遊挿されたクランプ片21は、この内端が周方向に移動することは禁止された状態で、ステータコア13の径方向に移動可能に設けられることになる。
【0056】
そして、ステータコア13の中心軸を中心として放射状に設けられたクランプ片21には、図2図4に示す様に、ステータコア13の端面から突出したコイルセグメント12の端部12aであって、ステータコア13の径方向で対向する端部12aの対により構成される複数の端部対12a,12aを対毎に区画して進入可能な切り欠き21aaが、径方向に複数列を形成するように両側にそれぞれ設けられる。
【0057】
具体的に、このクランプ片21は、放射状に設けられた状態で、図3及び図10に示す様に、その傾斜片部21aが隣接するクランプ片21の傾斜片部21aと僅かな隙間を空けるよう構成され、切り欠き21aaは、誘い治具24におけるリング部材25に重合する傾斜片部21aの両側にそれぞれ形成されるものとする。
【0058】
そして、そのクランプ片21は、溶接されるべき複数の端部対12a,12aの周方向の数に等しい数だけ準備されることから、その傾斜片部21aの両側に形成される切り欠き21aaは、周方向に隣接するクランプ片21の切り欠き21aaに対向して開口部を形成し、その開口部は、コイルセグメント12の端部12aが挿通可能な開放孔を構成するものとなる。
【0059】
一方、誘い治具24を構成するリング部材25は、コイルセグメント12の端部対12a,12aが進入する切り欠き21aaが形成される傾斜片部21aに対向して重合するものであるので、図8及び図9に示す様に、このリング部材25には、ステータコア13の端面から突出したコイルセグメント12の端部12の内、それぞれステータコア13の径方向で対向する端部12aにより構成される複数の端部対12a,12aを、対毎に区画して挿入可能な挿入孔24aが、ステータコア13の周方向に直列状に且つ径方向に複数列を成すように形成される。
【0060】
この挿入孔24aは方形状を成して形成され、図10に示す様に、ステータコア13に対向する下部がその周方向に拡大し、クランプ片21に臨む上面に向かってその周方向における幅を狭くして、その挿入孔24aを通過したコイルセグメント12の端部12aをクランプ片21の切り欠き21aaに導くようにその周方向の両壁はそれぞれ傾斜して形成される。
【0061】
一方、この挿入孔24aは、コイルセグメント12の溶接すべき端部対12a,12aに対向してステータコア13の径方向に複数形成されるけれども、その境は比較的薄く形成されて、クランプ片21の切り欠き21aaと切り欠き21aaとの境と略同一の厚さとされる。そして、コイルセグメント12の端部対12a,12aが径方向に接触せずに離間した状態であっても、その挿入孔24aを通過可能に形成される。
【0062】
これにより、挿入孔24aを通過したコイルセグメント12の端部12aは、図2に示す様に、クランプ片21の切り欠き21aaと隣接するクランプ片21の切り欠き21aaにより形成される開放孔に無理無く通過するように構成される。
【0063】
図1及び図6に示す様に、放射状に設けられた複数のクランプ片21を径方向に移動させる移動手段は、複数のクランプ片21の等幅部21bに重なるカムリング23であって、クランプ片21における等幅部21bにはカムピン21baが止めねじ21bb(図1の拡大図)によりそれぞれ設けられる。そして、クランプ片21の等幅部21bを支持する支持枠22には、その凹溝22bに止めねじ21bbが移動可能な収容溝22dが形成される。
【0064】
図6に示す様に、カムリング23には、カムピン21baが移動可能なカム孔23a,23bが複数のクランプ片21に対向して周方向に連続して複数形成される。
【0065】
具体的に、このカムリング23はステータコア13の中心軸を中心とする同心円状のドーナツ状のリング部材であって、支持枠22には、ステータコア13の中心軸を中心とする同心円状に配置されたカムリング23の外周に接触して、そのカムリング23を同心状に位置する防止ピン27が複数設けられる。この実施の形態では、ベアリングから成る防止ピン27が120度毎の3カ所に設けられる場合を示す。
【0066】
また、このカムリング23の周囲の支持枠22には、防止ピン27と別にスペーサ28が複数設けられる。この実施の形態では、防止ピン27の間に120度毎の3カ所に設けられる場合を示す。
【0067】
そして、防止ピン27はカムリング23の厚さに等しいか又はそれよりも薄いものが用いられ、スペーサ28はカムリング23の厚さより僅かに厚く形成されて、このスペーサ28を介して支持枠22にはカムリング23を覆う補助リング29が取付けられる。
【0068】
図5に示す様に、この補助リング29は内径がカムリング23のカム孔23a,23bより外側のカムリング23の周囲を覆うリング状を成して形成され、カムリング23のステータコア13の中心軸を中心とする回転を阻害しないように構成される。
【0069】
そして、カムリング23に形成された複数のカム孔23a,23bは、傾斜角度が異なるものが周方向に交互に形成され、このカムリング23が周方向に回転すると、ステータコア13の周方向に互いに隣接するクランプ片21が交互にステータコア13の径方向にずれ又は一致するように往復移動可能に構成される。
【0070】
また、この位置決め具20にはカムリング23を回転させるカムリング可動手段30が設けられる。図1及び図5に示す様に、この補助リング29には一部にカムリング23の上面を表出させる切り欠き29aが形成されて、その切り欠き29aにより現れたカムリング23には、可動手段30を構成する第一操作部材31が取付けられる。この第一操作部材31は、その上端が補助リング29の上面より上方に突出するようにカムリング23に取付けられ、この第一操作部材31から周方向に離間した補助リング29には第二操作部材32が取付けられる。
【0071】
そして、この可動手段30は、回転可能なカムリング23に設けられた第1操作部材31と、回転不能な補助リング29に設けられた第2操作部材32とを接近又は離間させるねじ部材33を備える。
【0072】
図では、第二操作部材32に第一操作部材31に向かうねじ孔32aが形成され、ねじ部材33はこのねじ孔32aに螺合され、その先端が第一操作部材31に回転可能であるけれども、軸方向に移動不能に係止されたものを示す。
【0073】
次に、このように構成されたコイルセグメントの位置決め装置を用いたコイルセグメントの位置決め方法を説明する。
【0074】
このコイルセグメントの位置決め装置10は、コイルセグメントの端部12aを溶接させる為に用いられるものであり、図11に示す様に、波形形状を成す複数のコイルセグメント12をステータコア13に予め配置し、図1に示す様に、そのステータコア13に配置された状態で複数のコイルセグメント12の端部12aを上側に向けた状態でそのステータコア13を取付具16に取付ける。
【0075】
即ち、ステータコア13の周方向に放射状に配置されたスロットにU字状のコイルセグメント12を挿入して形成されるコイルでは、ステータコア13の端面から突出した端部をステータコア13の径方向で隣り合う層毎に周方向にツイスト加工し、径方向で対向する端部12a同士を電気的に接続することになる。
【0076】
図11に、ツイスト加工後のコイルセグメント12の端部12aの例を示す。ただし、図示しないが、ツイスト加工機の精度が十分でない場合、ツイスト加工後に、各端部対12a,12aを構成する、ステータコア13の径方向で対向する端部12aの間の位置ずれが生じることがある。
【0077】
この端部12aの位置ずれは、端部対12a,12aを構成すべき1対の端部12aがステータコア13の径方向に離間して十分に近接していないという意味のずれであったり、端部対12a,12aの位置がステータコア13の周方向に合っていないという意味のずれであったり、それら両方であったりする。このようなずれが生じる場合には、その後の溶接が阻害される恐れがある。
【0078】
このずれを解消して溶接を確実にさせるために、コイルセグメント12の端部12aを上側に向けた状態でそのステータコア13を取付具16に取付け、ステータコア13が取付けられた取付具16にコイルセグメントの位置決め具20を更に搭載して、コイルセグメント12の端部12aを溶接に適した位置に決めることになる。
【0079】
即ち、ステータコア13の端面から突出したコイルセグメント12の端部12aのうち、ステータコア13の径方向で対向する1対の端部12a,12aによりそれぞれ構成される複数の端部対12a,12aを接続するのに先立って、各端部対12a,12aの位置決めを行う。
【0080】
具体的に、ステータコア13の取付具16への取付けは、そのコア支持板16cにコア13を支持させ、その状態でコア押さえ板16eにてステータコア13の周囲を挟むことにより行われる。そしてこの位置決め具20は、ステータコア13が取付けられた取付具16に上方から載置される。
【0081】
この載置に際して、図3に示す様に、放射状に設けられた複数のクランプ片21の中心軸からの位置を等しくして、周方向に隣接するクランプ片21の切り欠き21aaを対向させておく。即ち、切り欠き21aaが対向することにより形成される開口部を開放させて、コイルセグメント12の端部12aが挿通可能な状態にさせておく。この開口部の開放は、カムリング23を破線矢印で示す様に回転させて、隣接するクランプ片21のステータコアの中心軸からの距離を等しくしておくことにより可能となる。
【0082】
このような状態のコイルセグメントの位置決め具20を上方から取付具16に載置し、コイルセグメントの各端部対12a,12aを、その位置決め具20において放射状に設けられたクランプ片21の対向する切り欠き21aaにより形成される開口部に挿入させる。
【0083】
ここで、この位置決め具20には、切り欠き21aaが形成される傾斜片部21aに対向して重合する誘い治具24が設けられ、この誘い治具24には、ステータコア13の端面から突出したコイルセグメント12の端部12の内それぞれステータコア13の径方向で対向する端部12aにより構成される複数の端部対12a,12aを、対毎に区画して挿入可能な挿入孔24aが径方向に複数形成され、更にその複数の挿入孔24aはステータコア13の周方向に連続して形成される。
【0084】
このため、図10に示す様に、位置決め具20をステータコア13の上方から取付具16に載置させるべく下降させると、端部対12a,12aは挿入孔24aに挿通された後に、クランプ片21の対向する切り欠き21aaにより形成される開口部に挿入されることになる。
【0085】
そして、誘い治具24における方形状の挿入孔24aは、周方向における両壁が傾斜しているので、図10(a)に示す様に、端部対12a,12aが周方向にずれていたとしても、その傾斜する両壁により端部対12a,12aは実線矢印で示す様に案内されてずれが解消された状態で通過して、図10(b)に示す様に、切り欠き21aaにより形成される開口部に挿入されることになる。
【0086】
よって、この誘い治具24により、端部対12a,12aが周方向にずれていたとしても、その端部対12a,12aを各挿入孔24aに対ごとに容易に挿入することができることになる。これにより、コイルセグメント12の端部12aの位置決めの作業効率を向上させることが可能になる。
【0087】
そして、図1に示すように、コイルセグメントの位置決め具20は、取付脚20aにおける突起20bをコア押さえ板16eにおける孔16gに挿入させるように載置することにより、取付具16の所定の位置に正確に載置させることができる。
【0088】
このようにコイルセグメントの位置決め具20を取付具16の所定の位置に載置させると、図3に示す様に、ステータコア13の端面から突出したコイルセグメント12の端部12aであって、その後溶接される端部12aは対毎に区画された状態で、隣接するクランプ片21の間の対向する切り欠き21aaから成る開口部に進入することになる。
【0089】
その後、図2に示すように、ステータコア13の周方向に互いに隣接するクランプ片21をステータコア13の径方向にずらすことによりずれる切り欠き21aaにより該各端部対12a,12aを挟んで径方向に相互に接触させる。
【0090】
この実施の形態では、放射状に設けられた複数のクランプ片21にカムリング23を重ねているので、この周方向に互いに隣接するクランプ片21のずらしは、放射状に設けられた複数のクランプ片21に重ねたカムリング23を実線矢印で示す様にステータコア13の軸心回りに回転させることにより行うことができる。
【0091】
具体的には、この位置決め具20にはカムリング可動手段30が設けられているので、このカムリング可動手段30によりカムリング23を回転させる。即ち、ねじ孔32aに螺合されたねじ部材33を回転させて、回転不能な補助リング29に設けられた第2操作部材32に対して第1操作部材31を接近又は離間させることにより、その第1操作部材31が取付けられたカムリング23を回転させる。
【0092】
すると、カムリング23に形成されたカム孔23a,23bに沿ってカムピン21baが移動し、このカムピン21baが取付けられたクランプ片21を、ステータコア13の径方向に一つ置きに移動させる。すると、ステータコア13の周方向に互いに隣接するクランプ片21は、そのいずれか一方がステータコア13の径方向にずれることになり、この様にずらすことにより、ずれる切り欠き21aaにより各端部対12a,12aを挟んで各端部対12a,12aの位置を決める。
【0093】
このように位置が決められた各端部対12a,12aは、隣接するクランプ片21の間の対向する切り欠き21aaから成る開口部に進入させた状態で離間していたとしても、径方向にずれる切り欠き21aaに挟まれた状態で位置が決められるので、それらは径方向に相互に接触することになる。
【0094】
特に、クランプ片21の傾斜片部21aに切り欠き21aaを形成するので、隣接するクランプ片21の間に生じる隙間は小さく成り、その傾斜片部21aに形成された切り欠き21aaを対向させた開口部に端部対12a,12aを挿通させてずらすので、それらを確実に接触させることが可能となる。
【0095】
このように端部12aの位置が決められた状態で、そのようなコイルセグメント12がスロットの挿入されているステータコア13は、このコイルセグメントの位置決め装置10とともに図示しない溶接装置に設置されて、それらの端部12aが溶接されることになる。
【0096】
そして、本発明では、クランプ片21をステータコア13の径方向にずらすことにより、ずれる切り欠きにより各端部対12a,12aを挟んで径方向に相互に接触させているので、各端部対12a,12aが離間することに起因する溶接不良は減少し、その溶接精度を高めることが可能となるのである。
【0097】
なお、上述した実施の形態では、ねじ部材33を備える可動手段30を用いてカムリング23を回転させたけれども、この可動手段は、カムリングを回転させ得る限りねじ部材33を備えることを必要としない。例えば、流体圧シリンダなどによりカムリング23を回転させるようにしても良い。このようにすれば、カムリング23の回転を自動化させることも可能となる。
【符号の説明】
【0098】
10 コイルセグメントの位置決め装置
12 コイルセグメント
12a コイルセグメントの端部
13 ステータコア
16 取付具
16g 孔(載置手段)
20 コイルセグメントの位置決め具
20b 突起(載置手段)
21 クランプ片
21a 傾斜片部
21aa 切り欠き
21b 等幅部
21ba カムピン
21c 長孔
22 支持枠
22a 中央孔
22b 凹溝
23 カムリング(移動手段)
23a,23b カム孔
24 誘い治具
24a 挿入孔
25 リング部材
26 支持具
26d ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11