(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172758
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】照明光学系、露光装置、照射方法、及び部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090704
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 理
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 公一
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197BA04
2H197BA05
2H197BA09
2H197BA10
2H197CA05
2H197CA17
2H197CB12
2H197DB10
2H197HA03
2H197HA08
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】露光の解像度の向上を実現することが可能な照明光学系、露光装置、照射方法、及び部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一形態に係る照明光学系は、光源部からの光を対象物に照射する照明光学系であって、インテグレータ光学系と、インプットレンズと、バンドパスフィルタと、アパーチャと、コンデンサレンズとを具備する。インテグレータ光学系は、光源部から出射される光の光路上に配置され、対象物に照射される光の照度分布を均一化する。インプットレンズは、インテグレータ光学系の光入射側に配置される。バンドパスフィルタは、インプットレンズとインテグレータ光学系との間に配置される。アパーチャは、インテグレータ光学系の光出射側に配置される。コンデンサレンズは、アパーチャから出射された光を対象物に照射する。またアパーチャのサイズは、対象物に照射される光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部からの光を対象物に照射する照明光学系であって、
前記光源部から出射される光の光路上に配置され、前記対象物に照射される光の照度分布を均一化するインテグレータ光学系と、
前記インテグレータ光学系の光入射側に配置されたインプットレンズと、
前記インプットレンズと前記インテグレータ光学系との間に配置されたバンドパスフィルタと、
前記インテグレータ光学系の光出射側に配置されたアパーチャと、
前記アパーチャから出射された光を前記対象物に照射するコンデンサレンズと
を具備し、
前記アパーチャのサイズは、前記対象物に照射される前記光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される
照明光学系。
【請求項2】
光源部からの光を対象物に照射する照明光学系であって、
前記光源部から出射される光の光路上に配置され、前記対象物に照射される光の照度分布を均一化するインテグレータ光学系と、
前記インテグレータ光学系の光入射側に配置されたインプットレンズと、
前記インプットレンズと前記インテグレータ光学系との間に配置されたバンドパスフィルタと、
前記インテグレータ光学系から出射された光を前記対象物に照射するコンデンサレンズと
を具備し、
前記インテグレータ光学系の光出射面のサイズは、前記対象物に照射される前記光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される
照明光学系。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照明光学系であって、
前記バンドパスフィルタは、半値幅が10nm以下である
照明光学系。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の照明光学系であって、さらに、
前記インテグレータ光学系から前記コンデンサレンズまでの光路上に配置され、前記インテグレータ光学系から出射された光を、前記光路に沿って前記コンデンサレンズに向かって進む第1の分割光と、前記光路から外れた方向に進む第2の分割光とに分割するビームスプリッタと、
前記第2の分割光が入射する位置に配置され、光の状態を検出するセンサ部を具備する
照明光学系。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の照明光学系を含む露光装置であって、
前記照明光学系は、露光用マスクに光を照射するように構成される
露光装置。
【請求項6】
請求項6に記載の露光装置であって、さらに、
前記露光用マスクに対し15mm以内に配置されたマスキングブレードを具備し、
前記マスキングブレードにより、照射される光を部分的に遮光するように構成される
露光装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の照明光学系を含む露光装置であって、さらに、
マスキングブレードと、前記マスキングブレードの開口部から出射された光を露光用マスクに投影するマスキングブレード投影光学系とを具備し、
前記照明光学系は、前記マスキングブレードの開口部に光を照射するように構成される
露光装置。
【請求項8】
請求項6に記載の露光装置であって、さらに、
前記光が照射された前記露光用マスクのパターンを露光対象物に投影する投影光学系を具備する
露光装置。
【請求項9】
対象物に光を照射する照射方法であって、
光源部から光を出射させ、
インプットレンズにより前記光源部から出射される光を屈折させ、
バンドパスフィルタにより、前記インプットレンズにより屈折された光の波長帯域を制限してインテグレータ光学系に入射させ、
前記インテグレータ光学系により、前記対象物に照射される光の照度分布が均一になるように前記波長帯域が制限された光を出射させ、
前記インテグレータ光学系の光出射側に配置されたアパーチャにより光束を整形してコンデンサレンズに入射させ、
前記コンデンサレンズにより、前記対象物上の前記アパーチャのサイズよりも小さいサイズの照射領域に光を照射する
照射方法。
【請求項10】
対象物に光を照射する照射方法であって、
光源部から光を出射させ、
インプットレンズにより前記光源部から出射される光を屈折させ、
バンドパスフィルタにより、前記インプットレンズにより屈折された光の波長帯域を制限してインテグレータ光学系に入射させ、
前記インテグレータ光学系により、前記対象物に照射される光の照度分布が均一になるように前記波長帯域が制限された光をコンデンサレンズに入射させ、
前記コンデンサレンズにより、前記対象物上の前記インテグレータ光学系の光出射面のサイズよりも小さいサイズの照射領域に光を照射する
照射方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の照明光学系を含む装置を用いて光を照射する工程を含む
部品の製造方法。
【請求項12】
請求項12に記載の部品の製造方法であって、
前記照明光学系を含む装置は、露光装置であり、
前記光を照射する工程は、露光用マスクのパターンを投影する工程を含む
部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系、露光装置、照射方法、及び部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置(投影露光装置)を用いて、マスク(原版)に形成されているパターンを基板上に転写する技術が広く実施されている。
露光装置では、照明光学系を介してマスクに光を照明し、投影光学系を介してマスクのパターンの像を基板上に投影する。
投影光学系に投影レンズを有する結像光学系が用いられる場合、光源の輝線スペクトルの波長範囲と投影レンズの色収差により、基板上に投影される像の解像度が低下するという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するための技術として、特許文献1には、バンドパスフィルタをインテグレータレンズの光入射面側に配置し(インテグレータレンズよりも光源側に配置し)、収差補正されている波長の光だけを通すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにバンドパスフィルタを用いることで、基板上に投影される像の解像度低下をある程度は抑制することが可能である。
一方で、近年では、配線パターン等の微細化がますます進み、露光精度のさらなる向上が求められている。すなわち、露光の解像度(分解能)を向上させるための技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、露光の解像度の向上を実現することが可能な照明光学系、露光装置、照射方法、及び部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る照明光学系は、光源部からの光を対象物に照射する照明光学系であって、インテグレータ光学系と、インプットレンズと、バンドパスフィルタと、アパーチャと、コンデンサレンズとを具備する。
前記インテグレータ光学系は、前記光源部から出射される光の光路上に配置され、前記対象物に照射される光の照度分布を均一化する。
前記インプットレンズは、前記インテグレータ光学系の光入射側に配置される。
前記バンドパスフィルタは、前記インプットレンズと前記インテグレータ光学系との間に配置される。
前記アパーチャは、前記インテグレータ光学系の光出射側に配置される。
前記コンデンサレンズは、前記アパーチャから出射された光を前記対象物に照射する。
また前記アパーチャのサイズは、前記対象物に照射される前記光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される。
【0008】
この照明光学系では、インテグレータ光学系の光出射側に配置されたアパーチャのサイズが、対象物に照射される光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される。また、インテグレータ光学系の光入射側にインプットレンズが配置され、インプットレンズとインテグレータ光学系との間にバンドパスフィルタが配置される。
これにより、バンドパスフィルタの光の入射角度依存性の影響を十分に抑制することが可能となる。この結果、バンドパスフィルタのフィルタ特性を十分に発揮させることが可能となる。
本照明光学系を用いて露光装置を構成することで、露光の解像度を向上させることが可能となる。もちろん、本照明光学系を、光を照射する他の装置に適用することも可能である。
【0009】
本発明の他の形態に係る照明光学系は、光源部からの光を対象物に照射する照明光学系であって、インテグレータ光学系と、インプットレンズと、バンドパスフィルタと、コンデンサレンズとを具備する。
前記インテグレータ光学系は、前記光源部から出射される光の光路上に配置され、前記対象物に照射される光の照度分布を均一化する。
前記インプットレンズは、前記インテグレータ光学系の光入射側に配置される。
前記バンドパスフィルタは、前記インプットレンズと前記インテグレータ光学系との間に配置される。
前記コンデンサレンズは、前記インテグレータ光学系から出射された光を前記対象物に照射する。
また前記インテグレータ光学系の光出射面のサイズは、前記対象物に照射される前記光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される。
【0010】
この照明光学系では、インテグレータ光学系の光出射面のサイズが、対象物に照射される光の照射領域のサイズよりも大きくなるように構成される。また、インテグレータ光学系の光入射側にインプットレンズが配置され、インプットレンズとインテグレータ光学系との間にバンドパスフィルタが配置される。
これにより、バンドパスフィルタの光の入射角度依存性の影響を十分に抑制することが可能となる。この結果、バンドパスフィルタのフィルタ特性を十分に発揮させることが可能となる。
本照明光学系を用いて露光装置を構成することで、露光の解像度を向上させることが可能となる。もちろん、本照明光学系を、光を照射する他の装置に適用することも可能である。
【0011】
前記バンドパスフィルタは、半値幅が10nm以下であってもよい。
【0012】
前記照明光学系は、さらに、ビームスプリッタと、センサ部とを具備してもよい。
前記ビームスプリッタは、前記インテグレータ光学系から前記コンデンサレンズまでの光路上に配置され、前記インテグレータ光学系から出射された光を、前記光路に沿って前記コンデンサレンズに向かって進む第1の分割光と、前記光路から外れた方向に進む第2の分割光とに分割する。
前記センサ部は、前記第2の分割光が入射する位置に配置され、光の状態を検出する。
【0013】
本発明の一形態に係る露光装置は、前記照明光学系を含む。
前記照明光学系は、露光用マスクに光を照射するように構成される。
【0014】
前記露光装置は、さらに、前記露光用マスクに対し15mm以内に配置されたマスキングブレードを具備し、前記マスキングブレードにより、照射される光を部分的に遮光するように構成されてもよい。
【0015】
本発明の他の形態に係る露光装置は、前記照明光学系を含む。
また前記露光装置は、さらに、マスキングブレードと、前記マスキングブレードの開口部から出射された光を露光用マスクに投影するマスキングブレード投影光学系とを具備する。前記照明光学系は、前記マスキングブレードの開口部に光を照射するように構成される。
【0016】
前記露光装置は、さらに、前記光が照射された前記露光用マスクのパターンを露光対象物に投影する投影光学系を具備してもよい。
【0017】
本発明の一形態に係る照射方法は、対象物に光を照射する照射方法であって、光源部から光を出射させることを含む。
インプットレンズにより前記光源部から出射される光を屈折させる。
バンドパスフィルタにより、前記インプットレンズにより屈折された光の波長帯域を制限してインテグレータ光学系に入射させる。
前記インテグレータ光学系により、前記対象物に照射される光の照度分布が均一になるように前記波長帯域が制限された光を出射させる。
前記インテグレータ光学系の光出射側に配置されたアパーチャにより光束を整形してコンデンサレンズに入射させる。
前記コンデンサレンズにより、前記対象物上の前記アパーチャのサイズよりも小さいサイズの照射領域に光を照射する。
【0018】
本発明の他の形態に係る照射方法は、対象物に光を照射する照射方法であって、光源部から光を出射させることを含む。
インプットレンズにより前記光源部から出射される光を屈折させる。
バンドパスフィルタにより、前記インプットレンズにより屈折された光の波長帯域を制限してインテグレータ光学系に入射させる。
前記インテグレータ光学系により、前記対象物に照射される光の照度分布が均一になるように前記波長帯域が制限された光をコンデンサレンズに入射させる。
前記コンデンサレンズにより、前記対象物上の前記インテグレータ光学系の光出射面のサイズよりも小さいサイズの照射領域に光を照射する。
【0019】
本発明の一形態に係る部品の製造方法は、前記照明光学系を含む装置を用いて光を照射する工程を含む。
【0020】
前記照明光学系を含む装置は、露光装置であってもよい。この場合、前記光を照射する工程は、露光用マスクのパターンを投影する工程を含んでもよい。なお、前記照明光学系を含む装置は、投影光学系の無い他の露光装置や、光を照射する他の装置であってもよい。本願の基本的な構成は、投影光学系を含む構成である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、露光の解像度の向上を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】本発明の露光装置の他の実施形態の構成例を示す模式図である。
【
図3】第1の実施形態に係る照明光学系の構成例を示す模式図である。
【
図4】バンドパスフィルタのフィルタ特性(透過率特性)と、照明光学系から出射される光のスペクトルの一例を示すグラフである。
【
図5】アパーチャ及び照射領域のサイズについて説明するための模式図である。
【
図6】アパーチャ及び照射領域のサイズについて説明するための模式図である。
【
図7】照明光学系内の各位置にバンドパスフィルタを配置した場合の光の入射角度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】第2の実施形態に係る照明光学系の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[露光装置の基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る露光装置の構成例を示す模式図である。
露光装置1は、照明光学系2と、マスクステージ3と、投影光学系4と、ワークステージ5とを有する。
照明光学系2、マスクステージ3、投影光学系4、及びワークステージ5は、照明光学系2の光軸Oの方向に沿って、この順番で並ぶように配置される。
【0025】
以下、
図1に示すように、照明光学系2の光軸Oの方向をZ方向とする。また、Z方向に直交し、図中の紙面垂直方向に延在する方向をX方向とする。また、また、Z方向及びX方向の各々に直交し、図中の上下に延在する方向をY方向とする。
【0026】
マスクステージ3は、露光用マスク(以下、単にマスクと記載する)7を保持する。本実施形態では、照明光学系2の光軸Oに直交するように、マスク7が配置される。マスク7には、所定のパターンが形成されている。
マスク7の詳しい構成は限定されない。また、マスクステージ3の詳しい構成も限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0027】
ワークステージ5は、ワークとして基板8を保持する。本実施形態では、照明光学系2の光軸Oに直交するように、基板8が配置される。また基板8は、マスク7に対して光学的に共役な位置に配置される。
典型的には、ワークステージ5は、移動可能に構成される。例えば、ワークステージ5が駆動することで、基板8上の露光の対象となる領域が移動しステップアンドリピート方式で露光(逐次露光)される。また、ワークステージ5が露光領域から退避することで、露光の対象となる基板8が交換される。
【0028】
照明光学系2は、マスクステージ3に保持されたマスク7に光を照射する。
照明光学系2は、本発明に係る照明光学系の一実施形態として構成されている。
照明光学系2の詳しい構成については、後に説明する。
【0029】
投影光学系4は、ワークステージ5に配置された基板8に、マスク7に形成されているパターンの像を投影する。すなわち、投影光学系4は、光が照射されたマスク7のパターンを基板8に投影する。
投影光学系4は、投影レンズを有する結像光学系として構成される。投影光学系4の詳しい構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0030】
図2は、本発明の露光装置の他の実施形態の構成例を示す模式図である。
図2に示す露光装置10では、照明光学系2と、マスクステージ3(マスク7)との間に、マスキングブレード11と、マスキングブレード投影光学系12とが配置される。マスキングブレード11、及びマスキングブレード投影光学系12は、照明光学系2の光軸Oの方向に沿って、この順番で並ぶように配置される。
【0031】
マスキングブレード11は、開口サイズを自由に制御することが可能な遮光部材として構成される。
図2に示すように照明光学系2は、マスキングブレード11の開口部に光を照射する。マスキングブレード投影光学系12は、マスキングブレード11の開口部から出射される光をマスク7に照射し、マスキングブレード11の開口部をマスク7に投影する。
【0032】
例えば、マスキングブレード11を制御することで、マスキングブレード11の像をマスク7上に結像させ、遮光したい領域を形成することが可能となる。従って、マスキングブレード11を制御することで、マスク7に照射される光の照射領域のサイズ、形状、位置等を制御することが可能である。
また、マスキングブレード11を制御することで、マスク7に複数のパターンが形成されている場合等において、必要なパターンのみに光を照射し、そのパターンのみを基板8に露光するといったことが可能となる。
マスキングブレード11及びマスキングブレード投影光学系12の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0033】
図1及び
図2に示す露光装置1及び10は、本発明に係る照明光学系を含む装置の一実施形態に相当する。また基板8は、露光対象物の一実施形態に相当する。
【0034】
図1に示す露光装置1において、マスクステージ3は、露光用マスクを保持するマスク保持部として機能する。
照明光学系2は、露光用マスクに光を照射する照明光学系として機能する。
【0035】
図2に示す露光装置10において、マスクステージ3は、露光用マスクを保持するマスク保持部として機能する。
図2に示す露光装置10では、本発明の照明光学系の一実施形態として構成された照明光学系2が、マスキングブレード11の開口部を照明する。
またマスキングブレード投影光学系12は、マスキングブレード11の開口部から出射された光を露光用マスクに投影する光学系として機能する。すなわち、マスキングブレード投影光学系12により、マスキングブレード11の開口像が、マスク7に投影される。
【0036】
[照明光学系2の構成]
図1及び
図2に示す照明光学系2の構成例として、第1及び第2の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係る照明光学系2Aの構成例を示す模式図である。
照明光学系2Aは、光源部14と、インテグレータレンズ15と、インプットレンズ16と、バンドパスフィルタ17と、アパーチャ(開口絞り)18と、コンデンサレンズ19とを有する。
光源部14、インテグレータレンズ15、インプットレンズ16、バンドパスフィルタ17、アパーチャ18、及びコンデンサレンズ19は、光軸Oを基準として構成される。
【0037】
照明光学系2Aにより、光源部14からの光(光線)Lを対象物に照射することが可能となる。
図1に示す露光装置1が構成される場合には、対象物はマスク7となる。
図2に示す露光装置10が構成される場合には、対象物はマスキングブレード11となる。
以下、対象物がマスク7である場合を例に挙げて説明する。
【0038】
光源部14は、ランプ20と、集光ミラー21とを有する。
本実施形態では、ランプ20として、ショートアーク型の水銀ランプが用いられる。ランプ20からは、例えば、輝線として、波長365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)等を含む光が出射される。
【0039】
集光ミラー21は、ランプ20から出射された光Lを反射し、光軸Oに沿って集光する。
本実施形態では、集光ミラー21の反射面は、光軸Oを中心軸とする回転楕円面の一部分で構成されている。また、本実施形態では、集光ミラー21の一方の焦点(第1の焦点)が光軸O上に位置するように、集光ミラー21が配置される。そして、集光ミラー21の第1の焦点付近に、ランプ20の発光点が配置される。従って、ランプ20は、発光点が光軸O上に位置するように配置される。
【0040】
本発明の適用について、光源部14の構成は限定されず、水銀ランプ以外の光源が用いられてもよい。例えば、異なる波長帯域の光を出射する光源が用いられてもよいし、LED(Light Emitting Diode)等の固体光源が用いられてもよい。
【0041】
インテグレータレンズ15は、光源部14から出射される光Lの光路上に配置され、マスク7に照射される光Lの照度分布を均一化する。インテグレータレンズ15は、複数のレンズセグメントを縦横に並べて構成されており、フライアイレンズとも呼ばれる。レンズセグメントを、波面分割要素と呼ぶことも可能である。
【0042】
光源部14から出射してマスク7に照射される光の照射領域の形状は、インテグレータレンズ15を構成するレンズセグメントの形状と相似形をなす。インテグレータレンズ15は、光入射面15aが集光ミラー21の他方の焦点(第2の焦点)か、その近傍に位置するように配置される。
【0043】
図3に示すように、インテグレータレンズ15の各レンズセグメントからは、光Lが発散光として出射される。すなわち、インテグレータレンズ15からは、光Lが発散光として出射する。
【0044】
インテグレータレンズ15は、本発明のインテグレータ光学系の一実施形態として機能する。インテグレータレンズ15の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
また、本発明に係るインテグレータ光学系の一実施形態として、複数のレンズ素子で構成されるインテグレータレンズ以外の光学部品が用いられてもよい。例えば、インテグレータ光学系として、光学ロッド等が用いられてもよい。
【0045】
インプットレンズ16は、インテグレータレンズ15の光入射側に配置される。本実施形態では、インプットレンズ16は、全体で正の屈折力を有するように構成される。
【0046】
バンドパスフィルタ17は、インプットレンズ16とインテグレータレンズ15との間に配置される。バンドパスフィルタ17は、所定の波長帯域の光を透過させ、他の波長帯域の光を遮蔽する。すなわち、バンドパスフィルタ17は、入射する光の波長帯域を制限することが可能である。
【0047】
アパーチャ18は、インテグレータレンズ15の光出射側に配置される。具体的には、アパーチャ18は、インテグレータレンズ15の光出射面15bの近傍に配置される。
アパーチャ18のサイズ(開口サイズ)を適宜制御することで、マスク7に照射される光Lの視角(コリメーション半角とも呼ばれる)を制御することが可能となる。すなわち、アパーチャ18により、光束を整形することが可能である。
典型的には、光軸方向(光軸Oの延在方向)から見たアパーチャ18の形状(開口の形状)は、円形状からなる。もちろんこれに限定されず、楕円形状や矩形状等の開口が形成されてもよい。
【0048】
コンデンサレンズ19は、複数のレンズ22で構成され、インテグレータレンズ15から出射され、アパーチャ18を通過した光Lをマスク7に照射する。本実施形態では、3枚のレンズ22a~22cにより、コンデンサレンズ19が構成される。また、全体で正の屈折力(光学的パワー)を有するように、コンデンサレンズ19が構成される。
【0049】
図3に示すように、インテグレータレンズ15からアパーチャ18を介して発散光として光Lが出射される。当該光Lは、3枚のレンズ22a~22cからなるコンデンサレンズ19により、正の屈折力により屈折されてマスク7に照射される。
3枚のレンズ22a~22cの各々の、光入射面及び光出射面の形状や、屈折力等は限定されず、適宜設計されてよい。例えば、負の屈折力を有するレンズにより光束が拡大された後に、正の屈折力を有するレンズにより光束が集光されるといった構成が採用されてもよい。また、コンデンサレンズ19を構成する複数のレンズ22の数も限定されず、任意の数のレンズが用いられてもよい。
その他、各レンズ22の材料等も限定されず、任意に設計されてよい。
【0050】
図4は、バンドパスフィルタ17のフィルタ特性(透過率特性)と、照明光学系2Aから出射される光Lのスペクトルの一例を示すグラフである。
図中の「フィルタ透過率」が、バンドパスフィルタ17の透過率特性に相当する。また図中の「照明系スペクトル」が、照明光学系2Aから出射される光Lのスペクトルに相当する。また
図4に示すグラフは、実際の測定結果を元にして作成したグラフである。
【0051】
図4に示すように、本実施形態では、バンドパスフィルタ17は、ランプ20の輝線の波長365nm(i線)が、透過帯域の中心波長となるように設計されている。またバンドパスフィルタ17は、半値幅が10nm以下の狭帯域バンドパスフィルタとして構成されている。
本実施形態では、例えば、半値幅が7nm程度のフィルタ特性を有するバンドパスフィルタ17が用いられる。
【0052】
[露光の解像度を向上させるための検討]
本発明者は、露光の解像度を向上させるために、
図1に示す投影光学系4に含まれる投影レンズの色収差による影響の低減について検討を重ねた。狭帯域バンドパスフィルタ17を用いて、露光に用いられる光Lの波長帯域を制限することで、色収差による影響を低減することが可能である。一方で、狭帯域バンドパスフィルタ17の透過帯域が狭すぎると、露光に必要な波長帯域の光が得られなくなり、光量が不足する。
【0053】
この点を考慮して検討した結果、まず半値幅が10nm以下の狭帯域バンドパスフィルタを用いることで、投影レンズの色収差の影響を十分に低減させつつ、適正な露光を実現することが可能となる点を見出した。例えば、半値幅が6nmから10nmまでの範囲となるバンドパスフィルタを用いることで、高い効果が期待できることが分かった。
【0054】
さらに、本発明者は、露光の解像度の向上について、検討を重ねた。
図4には、波長365nm(i線)をピーク波長とする波長350nmから波長380nmまでの帯域の紫外線が、入射角度θ=0°で入射する場合の透過率特性が図示されている。また、
図4には、波長365nm(i線)をピーク波長とする波長350nmから波長380nmまでの帯域の紫外線が、入射角度θ=10°で入射する場合の透過率特性が図示されている。
入射角度θ=0°における透過率特性と、入射角度θ=10°における透過率特性とを比べてみると、バンドパスフィルタ17に入射する光線の入射角度θが大きくなると、透過率特性が短波長側にシフトすることが分かる。
【0055】
このように、バンドパスフィルタ17の透過率特性は、入射する光線の入射角度に依存する入射角度依存性を有する。例えば、透過率特性は光線の入射角度が大きくなるほど、短波長側に大きくシフトしてしまうため、必要な波長光の一部がカットされて光量(光強度)が低下したり、設計波長(露光波長)からズレた光が漏れて露光に使われてしまうといったことが起こり得る。このような現象は、露光の解像度の低下に繋がってしまう。
【0056】
色収差の影響を低減させるために半値幅が10nm以下の狭帯域のバンドパスフィルタ17が用いられる場合は、入射角度依存性による透過率特性のシフト量をできるだけ小さく抑えることが重要となる。
【0057】
本発明者は、バンドパスフィルタ17に入射する光線の入射角度分布に着目し、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度の範囲(入射角度のばらつき)を小さくすることが可能な照明光学系2の構成を新たに考案した。バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度の範囲(入射角度のばらつき)を小さくすることで、透過率特性のシフトをできるだけ抑えることが可能となり、露光の解像度の向上を実現することが可能となった。
【0058】
なお、
図4には、バンドパスフィルタ17が配置されない場合の、照明光学系2Aから出射される光Lのスペクトルが図示されている(フィルタ無し)。また、
図4には、バンドパスフィルタ17が配置された場合の、照明光学系2Aから出射される光Lのスペクトルが図示されている(フィルタ有り)。
バンドパスフィルタ17に入射する光線の入射角度範囲を小さく設定することで、所望とする波長帯域の光Lを露光に用いることが可能となり、露光の解像度を向上させることが可能となる。
【0059】
図3に示すように、照明光学系2は、アパーチャ18のサイズが、マスク7に照射される光Lの照射領域Sのサイズよりも大きくなるように構成される。なお、
図2に示す露光装置10が構成される場合には、アパーチャ18のサイズが、マスキングブレード11に照射される光Lの照射領域Sのサイズよりも大きくなるように構成される。
【0060】
図5及び
図6は、アパーチャ18及び照射領域Sのサイズについて説明するための模式図である。
図5に示すように、アパーチャ18のサイズは、開口の形状が円形の場合には、直径により規定することが可能である。また
図6に示すように、開口の形状が矩形の場合には、X-Y2方向の対辺方向長さの平均値により規定することが可能である。またアパーチャ18の形状が正方形の場合は対辺方向長さで規定できる。
【0061】
照射領域Sのサイズについても同様である。
図5に示すように、照射領域Sのサイズは、照射領域Sの形状が円形の場合には、直径により規定することが可能である。また
図6に示すように、照射領域Sの形状が矩形の場合には、X-Y2方向の対辺方向長さの平均値により規定することが可能である。また照射領域Sの形状が正方形の場合は、対辺方向長さで規定できる。
【0062】
図3に示すように、アパーチャ18の規定したサイズが照射領域Sの規定したサイズよりも大きくなる構成において、光源部14とインテグレータレンズ15との間に、インプットレンズ16とバンドパスフィルタ17とを配置する。インプットレンズ16は、インテグレータレンズ15の光入射側に配置される。バンドパスフィルタ17は、インプットレンズ16とインテグレータレンズ15との間に配置される。
インプットレンズ16は、全体で正の屈折力を有するように構成され、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布を制御している。
【0063】
図7は、照明光学系2A内の各位置にバンドパスフィルタ17を配置した場合の光Lの入射角度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。本シミュレーションでは、光軸Oの方向(Z方向)に沿って入射する光Lの入射角度を0°とし、入射角度分布を算出した。
【0064】
図7にて「集光ミラー~インプットレンズ間」と図示されたグラフは、光源部14の集光ミラー21とインプットレンズ16との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布のシミュレーション結果である。
【0065】
「インプットレンズ~インテグレータレンズ間」と図示されたグラフは、インプットレンズ16とインテグレータレンズ15との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布のシミュレーション結果である。
【0066】
「インテグレータレンズ~コンデンサレンズ間」と図示されたグラフは、インテグレータレンズ15の光出射面15b全面から出てさらにアパーチャ18を通過する全ての光Lの出射角度分布のシミュレーション結果である。当該グラフは、インテグレータレンズ15(アパーチャ18)とコンデンサレンズ19との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布のシミュレーション結果になる。
【0067】
「コンデンサレンズのレンズ~レンズ間」と図示されたグラフは、コンデンサレンズ19として構成されている複数のレンズ22の間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布のシミュレーション結果である。具体的には、コンデンサレンズ19のレンズ22aとレンズ22bとの間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の光Lの入射角度分布のシミュレーション結果である。
【0068】
「コンデンサレンズ~マスク(MB)間」と図示されたグラフは、コンデンサレンズ19とマスク7との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布のシミュレーション結果である。なお、
図2に示す露光装置10が構成される場合には、コンデンサレンズ19とマスキングブレード(
図7ではMBと記載されている)11との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合の、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度分布のシミュレーション結果となる。
【0069】
図7に示すように、バンドパスフィルタ17を、インプットレンズ16とインテグレータレンズ15との間に配置した場合、入射角度分布の範囲は1.5°~10°となり角度範囲及び最大入射角度ともに最も小さくなる。すなわち、アパーチャ18の規定したサイズが照射領域Sの規定したサイズよりも大きくなる構成において、光源部14とインテグレータレンズ15との間にインプットレンズ16を配置し、その後段にバンドパスフィルタ17を配置する。これにより、バンドパスフィルタ17に入射する光線の入射角度分布を小さくすることが可能となり、入射角度依存性による透過率特性のシフトを十分に抑えることが可能となる。
【0070】
この結果、投影レンズの色収差を十分に低減させることが可能となり、また所望とする波長帯域の光Lにより露光を行うことが可能となり、露光の解像度を十分に向上させることが可能となる。
【0071】
なお、
図3に示すθ1は、インテグレータレンズ15の光入射面15aの中心(光軸O上の位置)に入射する光Lの最大入射角度である。インテグレータレンズ15の光入射側にインプットレンズ16を配置することで、インテグレータレンズ15の光入射面15aに入射する光Lの光入射角度分布を、最大入射角度θ1を超えない角度にそろえることが可能となる。すなわち、中心位置以外の場所も含めた光入射面15の全面に入射する光Lの最大入射角度を、中心位置に入射する光Lの最大入射角度θ1と同じ角度にそろえることが可能となる。
【0072】
この結果、インプットレンズ16とインテグレータレンズ15との間に配置されるバンドパスフィルタ17に入射する光Lの入射角度の範囲と最大入射角度を他の場所に配置した場合と比較して最も小さくすることが可能となる。特にバンドパスフィルタ17を光源部14とインプットレンズ16の間に配置した場合よりも、光Lの入射角度の範囲及び最大入射角度がともに小さくなっているのは、インプットレンズ16を配置することによる効果である。このことは、インプットレンズ16を配置しない構成の照明光学系と比較した場合にも同様に認められる効果となる。
【0073】
図3に示すθ2は、インテグレータレンズ15の光出射面15bの中心(光軸O上の位置)から出射される光Lの最大出射角度である。本実施形態では、インテグレータレンズ15の光出射面15bの中心から出射される光Lは、アパーチャ18の中心から出射される光Lとも言える。インテグレータレンズ15(アパーチャ18)とコンデンサレンズ19との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合、本例では、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの光入射角度分布のうちの最大入射角度は
図3に示すθ2と概略同じ角度になる。
【0074】
図3のθ3は、マスク7上の照射領域Sの縁部に入射する光Lの最大入射角度である。コンデンサレンズ19とマスク7との間にバンドパスフィルタ17を配置した場合、本例では、バンドパスフィルタ17に入射する光Lの光入射角度分布のうちの最大入射角度は
図3に示すθ3に近い値となる。
【0075】
[照射方法]
図3を参照して、本実施形態に係る照明光学系2Aによる、マスク7(マスキングブレード11)への光Lの照射方法について説明する。
光源部14から光Lを出射させる。
インプットレンズ16により、光源部14から出射される光Lを屈折させる。
バンドパスフィルタ17により、インプットレンズ16により屈折された光の波長帯域を制限してインテグレータレンズ15に入射させる。
インテグレータレンズ15により、マスク7(マスキングブレード11)に照射される光Lの照度分布が均一になるように、波長帯域が制限された光Lを出射させる。
インテグレータレンズ15の光出射側に配置されたアパーチャ18により光束を整形して、コンデンサレンズ19に入射させる。
コンデンサレンズ19により、マスク7(マスキングブレード11)上のアパーチャ18のサイズよりも小さいサイズの照射領域Sに光を照射する。
本照射方法により、投影レンズの色収差を十分に低減させることが可能となり、また所望とする波長帯域の光Lにより露光を行うことが可能となり、露光の解像度を十分に向上させることが可能となる。
【0076】
以上、本実施形態に係る照明光学系2Aでは、インテグレータレンズ15の光出射側に配置されたアパーチャ18の規定したサイズが、マスク7(マスキングブレード11)に照射される光Lの照射領域Sの規定したサイズよりも大きくなるように構成される。また、インテグレータレンズ15の光入射側にインプットレンズ16が配置され、インプットレンズ16とインテグレータレンズ15との間にバンドパスフィルタ17が配置される。
【0077】
これにより、バンドパスフィルタ17の光Lの入射角度依存性の影響を十分に抑制することが可能となる。この結果、バンドパスフィルタ17のフィルタ特性を十分に発揮させることが可能となる。
本照明光学系2Aを用いて露光装置1(10)を構成することで、露光の解像度を向上させることが可能となる。もちろん、本照明光学系2Aを、光を照射する他の装置に適用することも可能である。
【0078】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る照明光学系について説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した照明光学系2Aにおける構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0079】
図8は、第2の実施形態に係る照明光学系2Bの構成例を示す模式図である。
照明光学系2Bは、さらに、ビームスプリッタ23と、センサ部25とを有する。
【0080】
ビームスプリッタ23は、インテグレータレンズ15からコンデンサレンズ19までの光路上に配置され、インテグレータレンズ15から出射され、アパーチャ18を通過した光Lを、光路に沿ってコンデンサレンズ19に向かって進む第1の分割光L1と、光路から外れた方向に進む第2の分割光L2とに分割する。
【0081】
本実施形態では、ビームスプリッタ23を透過する光が、第1の分割光L1として、コンデンサレンズ19に向かって照射される。当該第1の分割光L1は、コンデンサレンズ19を介してマスク7に照射される。すなわち、第1の分割光L1は、露光に用いられる光となる。
一方で、ビームスプリッタ23により反射される光が、第2の分割光L2として、光路から外れた方向に進行する。従って、第2の分割光L2は、露光には用いられない。
【0082】
なお、
図8には、ビームスプリッタ23により反射される第2の分割光L2の光軸が模式的に図示されている。第2の分割光L2の光線自体は図示を省略している。そして、当該光軸に対して、第2の分割光L2の符号が付されている。
【0083】
ビームスプリッタ23は、露光に用いられる第1の分割光L1の光量が、第2の分割光L2の光量よりも大きくなるように構成される。すなわち本実施形態では、ビームスプリッタ23は、透過率が高く反射率が低い特性となるように構成される。
例えば、透過率92%~99%、反射率1%~8%といった、透過率が非常に高い特性からなるビームスプリッタ23が用いられる。
【0084】
例えば、透明基板の両面又は片面に、誘電体等からなる単層膜又は多層膜を適宜コーティングすることで、高透過率及び低反射率の特性を有するビームスプリッタ23を作成することが可能である。
高透過率及び低反射率の特性を実現させるために、例えば、反射率を2%程度に抑えることが可能な反射防止コートが表面に施されてもよい。その他、ビームスプリッタ23の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0085】
センサ部25は、照度モニタの受光器であり、第2の分割光L2が入射する位置に配置される。センサ部25の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0086】
センサ部25は照度モニタとして機能し検出した光は露光面照度を代表するように校正されている。そして、露光における積算露光量の制御に利用される。すなわち、設定した光量で露光されるよう
図8では省略しているシャッタの開時間が制御される。また、検出した光の照度値に応じてランプ20に入力される点灯電力を制御することで、ランプ20の経時劣化等による照度の低下を抑制する。例えば、露光装置の通常使用時において、ランプ20への点灯電力をある程度抑えた状態で露光を開始し、経時劣化等により、ランプ20の照度の低下がみられる場合には、点灯電力を増加して露光面照度を一定に維持する。
【0087】
なお、バンドパスフィルタ17を透過した光がビームスプリッタ23により第1の分割光L1と第2の分割光L2とに分割されるため、露光面におけるスペクトルと照度モニタの受光器に到達する光のスペクトルは同じになり、露光における積算露光量の制御を精度よく行うことが可能である。
【0088】
図8に示すθ4は、光軸Oに対するビームスプリッタ23の反射面の、光軸Oに垂直な面に対する傾き角度である。本実施形態では、傾き角度θ4として、10°~30°の範囲内の値が用いられる。これにより、第2の分割光L2を適正にセンサ部25に導くことが可能となる。またセンサ部25を配置することによる装置の大型化を十分の抑えることが可能となる。もちろん、ビームスプリッタ23が配置される角度が限定される訳ではない。
【0089】
なお、
図3に示す第1の実施形態に係る照明光学系2A、
図8に示す第2の実施形態に係る照明光学系2Bにおいて、アパーチャ18を配置しない構成もあり得る。
例えば、
図1及び
図2に示すような投影光学系4を用いて投影露光が行われる場合等では、アパーチャ18が用いられる。一方で、投影露光が行われない場合等では、アパーチャ18が用いられないこともある。
また投影露光が行われる場合でも、インテグレータレンズ15のレンズセグメントを細かく構成し、アパーチャ18と同じ形状に配列することが可能であれば、アパーチャ18を省略することも可能である。
【0090】
アパーチャ18が用いられない場合、インテグレータレンズ15の光出射面15bのサイズ(例えばX-Y2方向の平均サイズ)が、照射領域Sの規定したサイズよりも大きくなるように構成される。そして、コンデンサレンズ19は、インテグレータレンズ15から出射された光をマスク7(マスキングブレード11)に照射する。
【0091】
アパーチャ18が用いられない場合の光Lの照射方法は、以下の通りとなる。
光源部14から光Lを出射させる。
インプットレンズ16により、光源部14から出射される光Lを屈折させる。
バンドパスフィルタ17により、インプットレンズ16により屈折された光の波長帯域を制限してインテグレータレンズ15に入射させる。
インテグレータレンズ15により、マスク7(マスキングブレード11)に照射される光Lの照度分布が均一になるように、波長帯域が制限された光Lをコンデンサレンズ19に入射させる。
コンデンサレンズ19により、マスク7(マスキングブレード11)上のインテグレータレンズ15の光出射面15bのX-Y2方向の平均サイズよりも小さい規定したサイズの照射領域Sに光を照射する。
アパーチャ18を用いない構成であっても、上記と同様な効果が発揮され、露光の解像度の向上を実現することが可能となる。
【0092】
[部品の製造方法]
本発明に係る部品の製造方法として、例えば、第1及び第2の実施形態に係る照明光学系2A、2Bを含む装置を用いて光を照射する工程を含む任意の方法を実施することが可能である。
例えば、
図3、
図8に示す照明光学系2A、2Bを含む装置として、
図1及び
図2の露光装置1(10)が構成される。そして、光を照射する工程として、露光マスクのパターンが投影されることで部品が製造される。
【0093】
露光装置1(10)を用いて露光を行うことで、所定のパターンが形成された種々の基板を、部品として製造することが可能となる。例えば、部品として、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等を製造することが可能である。
電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性あるいは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0094】
露光装置に限定されず、照明光学系2A、2Bを含む装置として、他の種々の装置が構成されてもよい。そして、当該装置により、光を照射する工程を含む、種々の部品を製造するための製造方法が実行されてもよい。
【0095】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0096】
図2に示す露光装置10のようにマスキングブレード11が用いられる場合に、マスキングブレード投影光学系12を用いることなく、マスク7の直近にマスキングブレード11を配置することも可能である。
【0097】
マスク7及びマスキングブレード11の配置の順番としては、典型的にはマスク7の照明光学系2側にマスキングブレード11が配置される。これに限定されず、マスク7のワークステージ5側にマスキングブレード11が配置されてもよい。
【0098】
光軸Oの方向においてマスキングブレード11及びマスク7の間の距離が大きすぎると、マスキングブレード11により遮光される遮光領域と、基板8に露光される露光領域との境界がぼやけてしまう。従って、マスキングブレード11及びマスク7の間の距離を十分に近づけることが重要となる。
【0099】
例えば、照明光学系2はマスク7を照射し、マスク7に対し15mm以内に配置されたマスキングブレード11は、照射する光を部分的に遮光するように構成する。これにより、マスキングブレード投影光学系12を用いることなく必要領域のみを露光することが可能となる。
なお、マスク7を基準として、照明光学系2側をマイナス側とし、ワークステージ5側をプラス側とすると、マスキングブレード11はプラス側かマイナス側のどちらかの15mm以内に配置される。この場合、マスキングブレード11はマスク7に対し±15mm以内に配置する構成と言える。
【0100】
なお、マスキングブレード11及びマスク7の各々は駆動するので、ある程度の間隔は必要となる。例えば、15mm以内の範囲で両者をできるだけ近づけつつ、互いに干渉しない適当な間隔を設定する。これにより、必要領域のみを露光することが可能となる。
【0101】
各図面を参照して説明した露光装置、照明光学系、バンドパスフィルタ等の照明光学系に含まれる各光学部品、等の各構成や、照射方法や部品の製造方法等の方法は、あくまで一実施形態であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本発明を実施するための他の任意の構成や方法が採用されてよい。
【符号の説明】
【0102】
L…光(光線)
L1…第1の分割光
L2…第2の分割光
1、10…露光装置
2(2A、2B)…照明光学系
3…マスクステージ
4…投影光学系
7…露光用マスク
8…基板
11…マスキングブレード
12…マスキングブレード投影光学系
14…光源部
15…インテグレータレンズ
16…インプットレンズ
17…バンドパスフィルタ
18…アパーチャ
19…コンデンサレンズ
23…ビームスプリッタ
25…センサ部