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特開2024-172763シールドコネクタおよびワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172763
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シールドコネクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/648 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01R13/648
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090715
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 大成
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FB21
5E021FC21
5E021FC40
5E021LA01
5E021LA10
5E021LA15
5E021LA21
(57)【要約】
【課題】電線に対する固着力を向上することができるシールドコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】シールドコネクタ1は、電線Wの端末に設けられた端子10を内側に保持するインナハウジング20と、電線Wの絶縁被覆W2の周囲を覆うスリーブ30と、インナハウジング20を内側に収容する筒状部41、筒状部41と一体に形成されスリーブ30の外周側に加締められる一対の第1バレル片部42を有したシールドシェル40と、一対の第1バレル片部42とスリーブ30との間に介在される外側シールド部51、外側シールド部51と折り返し部53を介して接続されスリーブ30と絶縁被覆W2との間に介在される内側シールド部52を有した編組体50と、を備え、一対の第1バレル片部42の内面には、外側シールド部51と軸線方向Xに係止される第1凹凸部45が設けられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に設けられた端子を内側に保持する絶縁性のインナハウジングと、
前記インナハウジングに対して前記電線の軸線方向にずれて位置され、当該電線の絶縁被覆の周囲を覆うスリーブと、
導電性の金属によって筒状に形成され前記インナハウジングを内側に収容する筒状部と、前記筒状部と一体に形成され前記スリーブの外周側に加締められる一対の第1バレル片部と、を有したシールドシェルと、
前記一対の第1バレル片部と前記スリーブとの間に介在される外側シールド部と、前記外側シールド部と折り返し部を介して接続され前記スリーブと前記絶縁被覆との間に介在される内側シールド部と、を有した編組体と、
を備え、
前記一対の第1バレル片部の内面には、前記外側シールド部と前記軸線方向に係止される第1凹凸部が設けられる、
シールドコネクタ。
【請求項2】
前記スリーブの外面には、前記外側シールド部と前記軸線方向に係止される第2凹凸部が設けられる、
請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記第2凹凸部は、前記第1凹凸部と噛み合う形状である、
請求項2に記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
導電性を有し、端末に端子が設けられた電線と、
前記電線の端末に設けられたシールドコネクタと、を備え、
前記シールドコネクタは、
前記端子を内側に保持する絶縁性のインナハウジングと、
前記インナハウジングに対して前記電線の軸線方向にずれて位置され、当該電線の絶縁被覆の周囲を覆うスリーブと、
導電性の金属によって筒状に形成され前記インナハウジングを内側に収容する筒状部と、前記筒状部と一体に形成され前記スリーブの外周側に加締められる一対の第1バレル片部と、を有したシールドシェルと、
前記一対の第1バレル片部と前記スリーブとの間に介在される外側シールド部と、前記外側シールド部と折り返し部を介して接続され前記スリーブと前記絶縁被覆との間に介在される内側シールド部と、を有した編組体と、
を備え、
前記一対の第1バレル片部の内面には、前記外側シールド部と前記軸線方向に係止される第1凹凸部が設けられる、
ワイヤハーネス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシールドコネクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、電線の端末に設けられた端子を内側に保持するインナハウジングと、電線の絶縁被覆の周囲を覆うスリーブと、インナハウジングを内側に収容する筒状部およびスリーブの外周側に加締められるバレル片部を有したシールドシェルと、バレル片部とスリーブとの間に介在される外側シールド部および外側シールド部と折り返し部を介して接続されスリーブと絶縁被覆との間に介在される内側シールド部を有した編組体と、を備えたシールドコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のシールドコネクタでは、例えば、電線に対する固着力向上の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電線に対する固着力を向上することができるシールドコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るシールドコネクタは、電線の端末に設けられた端子を内側に保持する絶縁性のインナハウジングと、前記インナハウジングに対して前記電線の軸線方向にずれて位置され、当該電線の絶縁被覆の周囲を覆うスリーブと、導電性の金属によって筒状に形成され前記インナハウジングを内側に収容する筒状部と、前記筒状部と一体に形成され前記スリーブの外周側に加締められる一対の第1バレル片部と、を有したシールドシェルと、前記一対の第1バレル片部と前記スリーブとの間に介在される外側シールド部と、前記外側シールド部と折り返し部を介して接続され前記スリーブと前記絶縁被覆との間に介在される内側シールド部と、を有した編組体と、を備え、前記一対の第1バレル片部の内面には、前記外側シールド部と前記軸線方向に係止される第1凹凸部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシールドコネクタおよびワイヤハーネスは、一対の第1バレル片部の内面には、外側シールド部と軸線方向に係止される第1凹凸部が設けられる。この構成により、シールドコネクタおよびワイヤハーネスは、例えば、電線が軸線方向に沿って引っ張られた場合に、編組体の外側シールド部がシールドシェルの第1凹凸部に引っ掛かるため、当該編組体および端子を含む電線全体の軸線方向への移動(抜け)を抑制することができる。この結果、シールドコネクタおよびワイヤハーネスは、電線に対する固着力を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るワイヤハーネスに適用されるシールドコネクタの例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るシールドコネクタのモジュールの例示的な斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るシールドコネクタのモジュールの例示的な分解斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るシールドコネクタのシールドシェルの例示的な斜視図であって、一対の第1バレル片部および一対の第2バレル片部の圧着前の状態を示した図である。
図5図5は、実施形態に係るシールドコネクタのスリーブおよび編組体の例示的な分解斜視図である。
図6図6は、実施形態に係るシールドコネクタのモジュールの例示的な断面図である。
図7図7は、実施形態に係るシールドコネクタのモジュールの例示的な組立方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るワイヤハーネスWHに適用されるシールドコネクタ1の斜視図であり、図2は、シールドコネクタ1のモジュール3の斜視図である。図1、2に示される本実施形態のシールドコネクタ1は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、シールドコネクタ1等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。
【0011】
本実施形態のワイヤハーネスWHは、例えば、導電性を有しそれぞれの端末に端子10(図6参照)が設けられた二つの電線Wと、当該複数の電線Wの端末に設けられたシールドコネクタ1と、を備えている。シールドコネクタ1は、例えば、複数の電線Wと一体化されるモジュール3(図2参照)と、モジュール3と係合されるアウタハウジング2(図1参照)と、を含んで構成される。アウタハウジング2は、モジュール3を内側に保持するものであり、絶縁性を有する合成樹脂材料等によって形成される。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、プロテクタや、グロメット、固定具等を含んで構成されてもよい。
【0012】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、および第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、シールドコネクタ1の延在方向、シールドコネクタ1に対する電線Wの挿通方向、シールドコネクタ1に挿通された電線Wの延在方向等に相当する。幅方向Yは、典型的には、シールドコネクタ1の幅方向(左右方向、側方)に相当する。高さ方向Zは、典型的には、シールドコネクタ1の高さ方向(上下方向)に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、電線Wがシールドコネクタ1に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0013】
図3は、シールドコネクタ1のモジュール3の分解斜視図である。図3に示されるように、電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆W2と、を含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。本実施形態の導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線であるが、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0014】
電線Wは、軸線方向Xに沿って線状に延在し、軸線方向X(延在方向)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。また、電線Wは、例えば、導体部W1の断面形状(軸線方向Xと交差する断面形状)が略円形状、絶縁被覆W2の断面形状が略円環形状に形成されており、全体として略円形状の断面形状に形成される。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆W2が剥ぎ取られており、当該絶縁被覆W2から露出している導体部W1に端子10が取り付けられる。
【0015】
端子10は、例えば、導電性を有する金属材で構成された雌型の端子金具であり、後述するインナハウジング20の内部に保持される。端子10は、例えば、不図示の相手側コネクタの端子と接続される電気接続部10aと、電線Wの導体部W1と圧着される電線圧着部10bと、を含んで構成される。電気接続部10aと電線圧着部10bとは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。すなわち、端子10は、一枚の板金を、電気接続部10a、および電線圧着部10bの各部に対応した形状にあわせて打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。端子10は、圧着端子等とも称される。
【0016】
電気接続部10aは、シールドコネクタ1と嵌合する相手側コネクタの端子と電気的に接続される部分である。本実施形態の電気接続部10aは、相手側コネクタのタブ端子(雄端子)と接続されるフォーク端子(雌端子)として構成される。端子10は、例えば、軸線方向Xの一方(電線Wとは反対側)から他方に向かって、電気接続部10a、電線圧着部10bの順で並んで相互に連結される。端子10は、例えば、高速通信用の端子として機能する。
【0017】
電線圧着部10bは、電線Wの一方の端末に露出した導体部W1と端子10とを圧着する部分である。電線圧着部10bは、例えば、一対のバレル片部10b1と、一対のバレル片部10b1を連結する底壁と、を含んで構成される。電線圧着部10bは、一対のバレル片部10b1の間に配置される導体部W1の外側を包んで当該導体部W1に対して加締められ圧着される。ここでは、電線圧着部10bは、いわゆるBクリンプと称される加締め圧着がなされるものとして示されているが、この例には限定されない。なお、図3では、便宜上、電線圧着部10bの一対のバレル片部10b1が閉じた圧着後の状態が示されている。
【0018】
シールドコネクタ1のモジュール3は、例えば、インナハウジング20と、スリーブ30と、シールドシェル40と、編組体50と、シース70と、を含んで構成される。シールドコネクタ1は、例えば、ハイブリッド自動車や、電気自動車等の車両において、インバータからモータへ電力を供給する電力供給用の電線Wを有するワイヤハーネスWH等に用いられる。シールドコネクタ1は、電線Wの端末に設けられた端子10を保持すると共に、相手側コネクタの端子と接続されることで、当該端子10を介して電線Wと相手側コネクタとを電気的に接続することができる。
【0019】
インナハウジング20は、幅方向Yに並んだ二つの電線Wの端子10を内側に保持するものであり、絶縁性を有する合成樹脂材料等によって形成される。インナハウジング20は、例えば、端子10を内側に収容する本体部21と、本体部21に対して端子10をロックするロックレバー部22と、を有している。本体部21は、全体としては軸線方向Xに沿って延在する略楕円の筒状に形成される。本体部21の内部には、端子10が挿通される二つの端子挿通部23が設けられている。端子挿通部23は、端子10に沿って軸線方向Xに延びると共に、幅方向Yに互いに仕切られている。
【0020】
ロックレバー部22は、例えば、本体部21に対して幅方向Yに沿って延びる回転中心を有したヒンジ部を介して回転可能に支持されている。ロックレバー部22は、本体部21に保持された二つの端子10が当該本体部21から外れることを防止するものである。ロックレバー部22は、ヒンジ部の回転中心回りの回転により、本体部21に対して端子10をロックする閉位置(図3参照)と、本体部21に対する端子10のロックを解除する開位置(図7参照)と、の間で開閉可能である。
【0021】
シールドシェル40は、インナハウジング20を内側に収容することによって、電線Wから発生するノイズがシールドシェル40の外部に漏れることを抑制するものである。また、シールドシェル40は、例えば、後述する編組体50と電気的に接続されることで電線Wをグランド(接地)するためのグランド端子としても機能する。具体的には、シールドコネクタ1が相手側コネクタと嵌合し、端子10と、相手側コネクタが保持する相手側の高速通信用の端子とが電気的に接続され、シールドシェル40と、相手側コネクタが保持する相手側グランド端子とが電気的に接続されることで、シールドシェル40がグランド端子として機能する。シールドシェル40は、例えば、筒状部41と、一対の第1バレル片部42と、一対の第2バレル片部43と、基部44と、を含んで構成される。シールドシェル40は、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電性を有する金属材料によって形成される。
【0022】
図4は、シールドコネクタ1のシールドシェル40の斜視図であって、一対の第1バレル片部42および一対の第2バレル片部43の圧着前の状態を示した図である。図4に示されるように、筒状部41は、シールドシェル40のうち上述したインナハウジング20が内側に挿入される部分である。筒状部41は、例えば、インナハウジング20の外周面に沿った略楕円の筒状に形成される。筒状部41には、軸線方向Xの他方から電線Wの端子10が装着された状態のインナハウジング20が挿入される。また、筒状部41は、先端部に向かうにつれて縮径されており、当該縮径部分との当接によってインナハウジング20の軸線方向Xの一方への移動(抜け)が制限される。
【0023】
一対の第1バレル片部42および一対の第2バレル片部43は、電線Wの端末に対して加締められ圧着される部分である。一対の第1バレル片部42および一対の第2バレル片部43は、筒状部41と一体に形成されると共に、当該筒状部41に対して基部44を介して接続される。基部44は、軸線方向Xに沿って延在し、シールドシェル40の圧着前の状態において、略U字状に形成される一対の第1バレル片部42および一対の第2バレル片部43の底壁となる部分である。シールドシェル40は、例えば、軸線方向Xの他方から一方に向かって、一対の第2バレル片部43、一対の第1バレル片部42、および筒状部41の順で並んで相互に連結される。
【0024】
一対の第2バレル片部43は、電線Wの端末における後述するシース70(図6参照)とシールドシェル40とを圧着する部分である。一対の第2バレル片部43は、例えば、基部44から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、基部44と共にシース圧着部としての後バレルを構成している。一対の第2バレル片部43は、圧着加工前の状態において、U字状に形成される後バレルの側壁となる部分である。一対の第2バレル片部43は、電線Wのシース70に対して加締められ圧着される前の状態では、基部44に対して曲げ加工が施され当該基部44とあわせて略U字状に成形されている。
【0025】
本実施形態の一対の第2バレル片部43は、シース70に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように基部44側の根元から先端までの長さが設定されている。すなわち、一対の第2バレル片部43は、圧着加工後の状態(図2参照)において、それぞれの先端部の間に隙間が形成される。一対の第2バレル片部43は、基部44との間に配置されたシース70の外側を包んで当該シース70に対して加締められ圧着される。
【0026】
一対の第1バレル片部42は、電線Wの端末における後述するスリーブ30(図6参照)とシールドシェル40とを圧着する部分である。一対の第1バレル片部42は、例えば、基部44から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、基部44と共にスリーブ圧着部としての前バレルを構成している。一対の第1バレル片部42は、圧着加工前の状態において、U字状に形成される前バレルの側壁となる部分である。一対の第1バレル片部42は、電線Wのスリーブ30に対して加締められ圧着される前の状態では、基部44に対して曲げ加工が施され当該基部44とあわせて略U字状に成形されている。
【0027】
本実施形態の一対の第1バレル片部42は、スリーブ30に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように基部44側の根元から先端までの長さが設定されている。すなわち、一対の第1バレル片部42は、圧着加工後の状態(図2参照)において、それぞれの先端部の間に隙間が形成される。一対の第1バレル片部42は、基部44との間に配置されたスリーブ30および後述する編組体50の外側シールド部51の外側を包んでスリーブ30に対して加締められ圧着される。
【0028】
また、本実施形態のシールドシェル40は、一対の第1バレル片部42の内面に第1凹凸部45(図4参照)が設けられている。第1凹凸部45は、軸線方向Xに互いに間隔をあけて設けられた複数の凹部45aと、当該凹部45aを間に挟むように軸線方向Xに互いに間隔をあけて設けられた複数の凸部45bと、を含んで構成される。第1凹凸部45は、例えば、前バレルを構成する基部44、および一対の第1バレル片部42に渡って設けられるように周方向(幅方向Y)に沿って連続的に延びている。第1凹凸部45は、後述する編組体50の外側シールド部51(図6参照)と軸線方向Xに係止される機能を有している。第1凹凸部45は、例えば、一対の第1バレル片部42の外面側からプレス加工等の各種加工が施されることによって一体に形成される。
【0029】
図5は、シールドコネクタ1のスリーブ30および編組体50の分解斜視図であり、図6は、シールドコネクタ1のモジュール3の断面図である。図5、6に示されるように、編組体50は、導電性を有する金属材料を編み込むことによって形成され、内側に電線Wを収容した状態で組み付けられるものである。編組体50は、例えば、外側シールド部51と、外側シールド部51に対して折り返し部53を介して接続される内側シールド部52と、を含んで構成される。
【0030】
内側シールド部52は、軸線方向Xに沿って円筒状に形成され、スリーブ30と電線Wの絶縁被覆W2との間に介在されるものである。本実施形態では、複数の電線Wは、筒状部材60の内側に支持されており、この筒状部材60の周囲を内側シールド部52が覆っている。また、内側シールド部52は、外側シールド部51よりも軸線方向Xの長さが長い延長部分を有しており、この延長部分がシース70と筒状部材60との間に介在されるように組み付けられる。なお、内側シールド部52は、図5、6等では一部しか図示されておらず、実際には電線Wの全長に渡って当該電線Wを覆っており、これにより電線Wがシールド電線として構成される。
【0031】
外側シールド部51は、軸線方向Xに沿って円筒状に形成され、スリーブ30とシールドシェル40の一対の第1バレル片部42との間に介在されるものである。本実施形態では、外側シールド部51は、スリーブ30が内側シールド部52に対して加締められ圧着された後に、折り返し部53を介して折り返されてスリーブ30の外周側に重ねられる。そして、編組体50は、外側シールド部51の外周側に一対の第1バレル片部42が加締められることで、シールドシェル40、編組体50、およびスリーブ30が圧着されて固定される。このように、編組体50は、導通接続されている状態で配置されることで、シールドシェル40と電気的に接続される。
【0032】
スリーブ30は、例えば、編組体50と圧着されるシールドリング(加締めリング)として機能するものである。スリーブ30は、金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。また、スリーブ30は、例えば、上述した第1バレル片部42(前バレル)と略同様の、基部と一対のバレル片部とを含んで構成されるベース部31を有している。ベース部31は、編組体50と圧着される圧着加工前の状態(図7参照)において、略U字状に形成される。ベース部31は、編組体50に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように根元から先端までの長さが設定される。すなわち、ベース部31は、圧着加工後の状態(図5参照)において、それぞれの先端部の間に隙間が形成される。ベース部31は、編組体50の内側シールド部52の外側を包んで当該内側シールド部52に対して加締められ圧着される。
【0033】
また、本実施形態のスリーブ30は、ベース部31の外面に第2凹凸部32が設けられている。第2凹凸部32は、軸線方向Xに互いに間隔をあけて設けられた複数の凹部32aと、当該凹部32aを間に挟むように軸線方向Xに互いに間隔をあけて設けられた複数の凸部32bと、を含んで構成される。第2凹凸部32は、例えば、ベース部31の略全周に渡って設けられるように周方向(幅方向Y)に沿って連続的に延びている。第2凹凸部32は、上述した一対の第1バレル片部42の第1凹凸部45と共に、編組体50の外側シールド部51(図6参照)と軸線方向Xに係止される機能を有している。
【0034】
ここで、第2凹凸部32は、第1凹凸部45と噛み合う形状に形成される。すなわち、第2凹凸部32の凹部32aは、第1凹凸部45の凸部45bの外形形状に応じて当該凸部45bが嵌合可能な大きさ、形状の空間部として形成され、第1凹凸部45の凹部45aは、第2凹凸部32の凸部32bの外形形状に応じて当該凸部32bが嵌合可能な大きさ、形状の空間部として形成される。これにより、外側シールド部51に対する第1凹凸部45および第2凹凸部32の接触面積が増大して、外側シールド部51が第1凹凸部45と第2凹凸部32との間により強固に係止される。第2凹凸部32は、例えば、ベース部31の外面側からプレス加工等の各種加工が施されることによって一体に形成される。
【0035】
図7は、シールドコネクタ1のモジュール3の例示的な組立方法を説明する説明図である。図7に示されるように、モジュール3を組立てる場合、まず、スリーブ30を編組体50の内側シールド部52の外周側に加締めて圧着固定する(ステップS1)。この場合、スリーブ30は、シース70に対して軸線方向Xの一方にずれて設けられる。スリーブ30は、圧着加工前の状態では編組体50側に向けて開放される略U字状に形成され、圧着加工後の状態では編組体50の外周面に沿ったリング状に形成される。ステップS1は、第一ステップの一例である。
【0036】
次に、編組体50の外側シールド部51を折り返し部53で折り返してスリーブ30の外周側に重ねる(ステップS2)。この場合、外側シールド部51は、シース70に対して軸線方向Xの一方にずれて設けられる。また、外側シールド部51を折り返すことで、編組体50の内側に収容された電線Wの端子10が軸線方向Xの一方に露出する。ステップS2は、第二ステップの一例である。
【0037】
次に、インナハウジング20を電線Wの端子10に装着して取り付ける(ステップS3)。このとき、インナハウジング20のロックレバー部22を開位置から閉位置に移動させることによって、端子10をインナハウジング20の本体部21に対してロックする。ステップS3は、第三ステップの一例である。
【0038】
次に、インナハウジング20が取り付けられた電線Wに対してシールドシェル40を取り付ける(ステップS4)。この場合、インナハウジング20は、シールドシェル40の筒状部41に対して軸線方向Xの他方から挿入されて取り付けられる。また、シールドシェル40は、一対の第1バレル片部42の内側に外側シールド部51が配置されると共に、一対の第2バレル片部43の内側にシース70が配置される。ステップS4は、第四ステップの一例である。
【0039】
そして、一対の第1バレル片部42を外側シールド部51の外周側に加締めて圧着固定すると共に、一対の第2バレル片部43をシース70の外周側に加締めて圧着固定する(ステップS5)。このとき、外側シールド部51が一対の第1バレル片部42の内面に設けられた第1凹凸部45とスリーブ30の外面に設けられた第2凹凸部32との間に挟まれて軸線方向Xに係止される。ステップS5は、第五ステップの一例である。
【0040】
以上のように、本実施形態のシールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、シールドシェル40の一対の第1バレル片部42の内面には、編組体50の外側シールド部51と軸線方向Xに係止される第1凹凸部45が設けられる。この構成により、シールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、電線Wが軸線方向Xに沿って引っ張られた場合に、編組体50の外側シールド部51がシールドシェル40の第1凹凸部45に引っ掛かるため、当該編組体50および端子10を含む電線W全体の軸線方向Xへの移動(抜け)を抑制することができる。この結果、シールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHは、電線Wに対する固着力を向上することができる。
【0041】
また、本実施形態のシールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、スリーブ30の外面には、外側シールド部51と軸線方向Xに係止される第2凹凸部32が設けられる。この構成により、シールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、電線Wが軸線方向Xに沿って引っ張られた場合に、編組体50の外側シールド部51がスリーブ30の第2凹凸部32にさらに引っ掛かるため、当該編組体50および端子10を含む電線W全体の軸線方向Xへの移動(抜け)をより一層抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態のシールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、第2凹凸部32は、第1凹凸部45と噛み合う形状である。この構成により、シールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、電線Wが軸線方向Xに沿って引っ張られた場合に、編組体50の外側シールド部51がシールドシェル40の第1凹凸部45とスリーブ30の第2凹凸部32との間により強固に係止される。この結果、シールドコネクタ1およびワイヤハーネスWHは、編組体50および端子10を含む電線W全体の軸線方向Xへの移動(抜け)をより一層抑制でき、ひいては電線Wに対する固着力をより一層向上することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、シールドシェル40の第1凹凸部45、およびスリーブ30の第2凹凸部32は、それぞれ一対の第1バレル片部42、およびスリーブ30の周方向(幅方向Y)に沿って連続的に延びている場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、一対の第1バレル片部42、およびスリーブ30の周方向(幅方向Y)に沿って間欠的に設けられてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 シールドコネクタ
10 端子
20 インナハウジング
30 スリーブ
32 第2凹凸部
40 シールドシェル
41 筒状部
42 第1バレル片部
45 第1凹凸部
50 編組体
51 外側シールド部
52 内側シールド部
53 折り返し部
W 電線
W2 絶縁被覆
WH ワイヤハーネス
X 軸線方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7