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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172774
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】欠陥検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20241205BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20241205BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N25/72 K
G01N21/88 Z
G01J5/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090735
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊熊 駿
【テーマコード(参考)】
2G040
2G051
2G066
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040AB08
2G040BA14
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA06
2G040EA06
2G040EC01
2G040HA01
2G040HA05
2G040ZA05
2G051AB02
2G051BA06
2G051BB07
2G051CA04
2G066AC20
2G066BA23
2G066CA02
2G066CA04
(57)【要約】
【課題】検査対象物の内部に生じた欠陥を効率良く検査することが課題。
【解決手段】欠陥検査システムは、光源部13aから赤外線帯域の複数の波長からなる周波数スペクトラムを持つ照射光L0を照射する。その後、照射光L0は、フィルタ13bによりサーマルカメラが検知する波長帯域の波長を透過させないように処理された照射光L2を検査対象物60に照射する。そして、欠陥検査システムは、検査対象物60から放射された赤外線放射光R2と照射光L2が検査対象物60の表面で反射した反射光L3とがサーマルカメラ14に入力されるが、反射光L3は、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の周波数スペクトラムが存在しないため、サーマルカメラ14は、赤外線放射光R2のうち、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の光のみを検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を加熱し、該検査対象物の内部に熱が拡散する過程で生ずる温度差を用いて前記検査対象物の内部の欠陥を検出する欠陥検査システムであって、
前記検査対象物に光を照射して該検査対象物を加熱する光源と、
前記検査対象物を撮像する赤外線撮像装置と、
前記光源と前記検査対象物の間に配設され、前記赤外線撮像装置により検知される波長帯域の光を遮断するフィルタと
を備えたことを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項2】
前記フィルタは、
前記光源から照射された光のうち前記赤外線撮像装置により検知される波長帯域の下限値よりも短い第1の波長以上の光を遮断することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項3】
前記フィルタは、
7μm以上の波長の光を遮断するサファイヤ窓であることを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査システム。
【請求項4】
前記フィルタは、
前記光源から照射された光のうち前記赤外線撮像装置により検知される波長帯域の下限値よりも短い第1の波長よりも長い波長の光を遮断することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項5】
前記フィルタは、
前記第1の波長を可変する可変フィルタであることを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査システム。
【請求項6】
前記光源及び前記赤外線撮像装置を制御して、所定の表示部に前記検査対象物の欠陥領域を表示する欠陥検査装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の欠陥検査システム。
【請求項7】
前記欠陥検査装置は、
前記光源を制御する光源制御手段と、
前記赤外線撮像装置を制御する撮像制御手段と、
前記赤外線撮像装置により撮像された赤外線画像に基づいて、前記検査対象物の欠陥領域を特定する処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段による画像処理結果を所定の表示部に表示制御する表示制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の欠陥検査システム。
【請求項8】
前記検査対象物は、非金属材料と比較して放射率が低い金属からなる低放射率材料であることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の内部に生じた欠陥を効率良く検査することができる欠陥検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線カメラを用いて検査対象物の検査を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、光源から照射した光のうち赤外線カメラが感知する波長の光だけを検査対象物に照射し、検査対象物による反射光を赤外線カメラで検知して赤外線画像を取得する赤外検査装置が開示されている。
【0003】
このように、上記特許文献1のものは、赤外線カメラが感知する波長の光を検査対象物に照射し、その反射光を赤外線カメラで検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-304298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、光源からの光の一部が検査対象物で反射する反射光を用いて、検査対象物の表面に生ずる欠陥を検査するものであるため、検査対象物の内部に生じた欠陥を検査することができない。
【0006】
検査対象物の内部に生じた欠陥を検査するためには、反射光ではなく赤外線放射光を検知する必要がある。例えば、検査対象物の表面に熱を与え、検査対象物の内部に熱が拡散する過程で欠陥部と健全部で生ずる温度差を検知することにより、検査対象物の内部に生じた欠陥を検査することができる。
【0007】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、検査対象物の内部に生じた欠陥を効率良く検査することができる欠陥検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、検査対象物を加熱し、該検査対象物の内部に熱が拡散する過程で生ずる温度差を用いて前記検査対象物の内部の欠陥を検出する欠陥検査システムであって、前記検査対象物に光を照射して該検査対象物を加熱する光源と、前記検査対象物を撮像する赤外線撮像装置と、前記光源と前記検査対象物の間に配設され、前記赤外線撮像装置により検知される波長帯域の光を遮断するフィルタとを備えた。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記フィルタは、前記光源から照射された光のうち前記赤外線撮像装置により検知される波長帯域の下限値よりも短い第1の波長以上の光を遮断する。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記フィルタは、7μm以上の波長の光を遮断するサファイヤ窓である。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記フィルタは、前記光源から照射された光のうち前記赤外線撮像装置により検知される波長帯域の下限値よりも短い第1の波長よりも長い波長の光を遮断する。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記フィルタは、前記第1の波長を可変する可変フィルタである。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記光源及び前記赤外線撮像装置を制御して、所定の表示部に前記検査対象物の欠陥領域を表示する欠陥検査装置をさらに備えた。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記欠陥検査装置は、前記光源を制御する光源制御手段と、前記赤外線撮像装置を制御する撮像制御手段と、前記赤外線撮像装置により撮像された赤外線画像に基づいて、前記検査対象物の欠陥領域を特定する処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段による画像処理結果を所定の表示部に表示制御する表示制御手段とを備えた。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記検査対象物は、非金属材料と比較して放射率が低い金属からなる低放射率材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検査対象物の内部に生じた欠陥を効率良く検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係る欠陥検査システムの概要を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る欠陥検査システムのシステム構成を示す図である。
図3図3は、図2に示した欠陥検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、図2に示した欠陥検査システムの光学系を説明するための説明図である。
図5図5は、図2に示した欠陥検査システムが照射する光源の周波数スペクトラムの一例を示す図である。
図6図6は、図2に示した欠陥検査システムのサーマルカメラが検知する周波数スペクトラムの一例を示す図である。
図7図7は、図3に示した欠陥検査装置の処理手順を示したフローチャートである。
図8図8は、図3に示した欠陥検査装置の検査対象表面画像、検査画像及び欠陥画像の一例を示す図である。
図9図9は、変形例の概要を示す図である。
図10図10は、実施形態2に係る欠陥検査システムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る欠陥検査システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態1では、サーマルカメラが検知する波長帯域の波長を透過させないフィルタを光源装置と検査対象物の間に配設した場合について説明する。また、実施形態2では、サーマルカメラが検知する波長帯域の波長を透過させないフィルタを光源装置と検査対象物の間に配設するとともに、検査対象物とサーマルカメラの間にサーマルカメラが検知する波長帯域の波長のみを透過させるフィルタを配設した場合について説明する。
【0019】
[実施形態1]
<欠陥検査システムの概要>
本実施形態1に係る欠陥検査システムの概要について説明する。図1は、実施形態1に係る欠陥検査システムの概要を説明するための説明図である。本実施形態1に係る欠陥検査システムは、検査対象物60に赤外線を照射し検査対象物60を加熱し、加熱により生じる検査対象物60の内部の欠陥部と健全部の温度差を利用するアクティブサーモグラフィ法を用いて、検査対象物60の欠陥部を精度よく検出するためのシステムである。
【0020】
図1(a)に示すように、従来の欠陥検査システムでは、光源部13aから赤外線帯域の複数の波長からなる周波数スペクトラムを持つ照射光L0を照射する。検査対象物60は、照射された照射光L0により加熱される。その後、従来の欠陥検査システムは、検査対象物60から放射された赤外線放射光R1と照射光L0が検査対象物60の表面で反射した反射光L1とがサーマルカメラ14に入力される。
【0021】
そして、サーマルカメラ14は、所定の波長帯域の波長の光を検知する。ここでは、サーマルカメラ14が検知する波長帯域は、波長λdより大きく波長λeより小さい波長の光としている。ここで、サーマルカメラ14が検知する波長帯域には、照射光L0が検査対象物60の表面で反射した反射光L1と、検査対象物60の赤外線放射光R1とが存在するため、サーマルカメラ14は、反射光L1と赤外線放射光R1とを検知し、赤外線放射光R1を精度よく計測することができない。なお、ここでは、反射光L1と赤外線放射光R1を別々に記述しているが、実際には、反射光L1と赤外線放射光R1の合成された強度が検知される。
【0022】
一方、図1(b)に示すように、本発明の欠陥検査システムは、光源部13aから赤外線帯域の複数の波長からなる周波数スペクトラムを持つ照射光L0を照射する。その後、照射光L0は、フィルタ13bによりサーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長を透過させないように処理される。具体的には、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の下限値をλdとすると、該λdよりも短い所定の波長λcよりも短い波長帯域の光が透過され、所定の波長λc以上の波長帯域の光は透過されない照射光L2として、検査対象物60に照射される。
【0023】
検査対象物60は、照射された照射光L2により加熱される。そして、欠陥検査システムは、検査対象物60から放射された赤外線放射光R2と照射光L2が検査対象物60の表面で反射した反射光L3とがサーマルカメラ14に入力される。そして、サーマルカメラ14は、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長の光を検知する。
【0024】
ここで、サーマルカメラ14が検知する波長帯域には、照射光L2が検査対象物60の表面で反射した反射光L3の周波数スペクトラムが存在しないため、検査対象物60の赤外線放射光R2を精度よく計測することができる。
【0025】
<欠陥検査システムのシステム構成>
次に、本実施形態1に係る欠陥検査システムのシステム構成について説明する。図2は、実施形態1に係る欠陥検査システムのシステム構成を示す図である。図2に示すように、欠陥検査システムは、欠陥検査装置10と、光源装置13と、サーマルカメラ14とを有する。
【0026】
欠陥検査装置10は、光源装置13と、サーマルカメラ14とを制御し、赤外線を用いた検査画像から欠陥画像を生成する装置である。光源装置13は、検査対象物60に所定の波長帯域を持つ光を照射する装置である。光源装置13は、光源部13aと、フィルタ13bを有する。
【0027】
光源部13aは、赤外線帯域の複数の波長からなる周波数スペクトラムを持つ光を照射する。赤外線の加熱用光源としては、例えば、ハロゲンランプが用いられている。フィルタ13bは、光源部13aが照射する光を構成する複数の波長の光から後述するサーマルカメラ14が検知する波長帯域の光を除去するフィルタである。フィルタ13bは、サーマルカメラ14の検知する波長帯域の下限値よりも短い波長λdより長い波長の光を除去するローパスフィルタである。また、フィルタ13bは、サーマルカメラ14が検知する波長帯域内の波長の光のみを除去するバンドリジェクションフィルタであってもよい。
【0028】
サーマルカメラ14は、検査対象物60が放射する遠赤外線を検知することで、対象物の温度を検知している。温度が高いほど遠赤外線の強さは強くなり、温度が低いほど遠赤外線は弱くなる。サーマルカメラ14は、遠赤外線の強さに基づいて出力を電気信号に変換する。例えば、赤外線の強さを8ビットのデジタル信号で表現すると、検知する遠赤外線の強度に基づいて0から255の信号に変換する。
【0029】
<欠陥検査装置10の構造>
次に、欠陥検査装置10の構造について説明する。図3は、図2に示した欠陥検査装置10の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、欠陥検査装置10は、表示部11、入力部12、光源装置13、サーマルカメラ14、記憶部15及び制御部16を有する。
【0030】
表示部11は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。入力部12は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。光源装置13及びサーマルカメラ14は、すでに説明したので、ここでは詳細の説明を省略する。
【0031】
記憶部15は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスであり、検査画像データ15a及び欠陥画像データ15bを記憶する。検査画像データ15aは、検査対象物60の温度を表わす画像であり、サーマルカメラ14にて撮像される。欠陥画像データ15bは、検査画像データ15aの画素値を所定の閾値より大きいか否かを判定し生成する欠陥を示す画像データである。
【0032】
制御部16は、欠陥検査装置10の全体を制御する制御部であり、光源制御部16aと、撮像処理部16bと、画像処理部16cと、表示制御部16dとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、光源制御部16aと、撮像処理部16bと、画像処理部16cと、表示制御部16dとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0033】
光源制御部16aは、検査対象物60を加熱するために、光源装置13の光源部13aをオン/オフ制御を行う制御部である。光源装置13のフィルタ13bは、所定の波長よりも短い波長帯域の光を透過させ、かつ、所定の波長よりも長い波長帯域の光を透過させないフィルタである。
【0034】
撮像処理部16bは、光源装置13から赤外線が照射された後に、加熱された検査対象物60から放射される赤外線放射光を用いて検査対象物60の加熱の状態をサーマルカメラ14により撮像させるよう制御する処理部である。画像処理部16cは、検査対象物60の内部欠陥を可視化して表示するための画像処理を行う処理部である。具体的には、画像処理部16cは、ノイズ処理及び閾値処理などを行う。ノイズ除去においては、公知の積分処理、平滑化処理などを行う。
【0035】
閾値処理においては、撮像処理部16bで取得した検査画像データ15aの複数の画素値において、各画素値が所定の閾値以上か否かを判定し、所定の閾値以上である場合には、例えば、画素値を255に、所定の閾値以上でない場合には、例えば画素値を0にする処理を行う。表示制御部16dは、画像処理部16cで処理された画像を表示部11に表示制御する処理部である。
【0036】
<欠陥検査システムの光学系>
次に、欠陥検査システムの光学系について説明する。図4は、図2に示した欠陥検査システムの光学系を説明するための説明図である。図4に示すように、欠陥検査システムの光学系は、光源部13aと、フィルタ13bと、サーマルカメラ14とを有する。
【0037】
光源部13aは、検査対象物60を加熱するために赤外線を照射する。光源部13aが照射する赤外線は、赤外線帯域の複数の波長から構成される周波数スペクトラムの照射光L0(図5(a)参照)を照射する。光源部13aには、例えば、ハロゲンランプ等が用いられ、照射光L0には、中赤外線帯域及び遠赤外線帯域の波長の光を含む。
【0038】
フィルタ13bは、所定の波長よりも短い波長の光を透過し、かつ、所定の波長よりも長い波長の光を透過させないフィルタである。例えば、所定の波長が7μmである場合には、7μmよりも短い波長の光を透過し、かつ、7μmよりも長い波長の光を透過させない。このフィルタ13bに光源部13aの照射光L0を通過させると、7μmより長い波長(フィルタ領域)の光が遮断された照射光L2となる(図5(b))。フィルタ13bには、例えば、サファイヤ窓等が使用される。
【0039】
検査対象物60は、フィルタ13bを透過した光源部13aから照射された照射光L2で加熱される。検査対象物60は、加熱により検査対象物60の内部の欠陥部と健全部とに温度差が生じる。欠陥検査システムは、サーマルカメラ14を用いて、検査対象物60が加熱により放射する赤外線放射光R2を計測する。
【0040】
サーマルカメラ14には、フィルタ13bを透過した光源部13aから照射された照射光L2の反射光L3と、検査対象物60が放射する赤外線放射光R2とが入力される(図6(a))。サーマルカメラ14が検知する波長帯域は、λdからλeであるため、λcよりも波長の長い光が除去された反射光L3は、サーマルカメラ14には検知されず、検査対象物60の赤外線放射光R2のサーマルカメラ14が検知する波長帯域の光が検知される(図6(b)参照)。このように、検査対象物60を加熱するために照射した赤外線の影響を受けずに、サーマルカメラ14が検出する波長帯域の赤外線放射光R2のみを検知することが可能で、検査対象物60の内部の欠陥部と健全部との温度差を精度よく計測することができる。
【0041】
<欠陥検査装置10の処理手順>
次に、欠陥検査装置10の処理手順について説明する。図7は、図3に示した欠陥検査装置10の処理手順を示したフローチャートである。図7に示すように、欠陥検査装置10は、光源から光を照射する(ステップS101)。
【0042】
そして、欠陥検査装置10は、所定時間光を照射したか否かを判定する(ステップS102)。欠陥検査装置10は、所定時間光を照射していない場合は(ステップS102:No)、所定時間経過するまで、待機する。欠陥検査装置10は、所定時間光を照射した場合は(ステップS102:Yes)、サーマルカメラ14を制御し、検査画像を取得する(ステップS103)。
【0043】
その後、欠陥検査装置10は、検査画像のノイズ除去を行い(ステップS104)、検査画像の各画素値が所定の閾値以上か否かを判定することにより欠陥画像の生成を行う(ステップS105)。そして、欠陥検査装置10は、欠陥画像を表示部11に表示し(ステップS106)、一連の処理を終了する。
【0044】
<欠陥検査装置10の処理画像>
次に、欠陥検査装置10の処理画像について説明する。図8は、図3に示した欠陥検査装置10の検査対象表面画像、検査画像及び欠陥画像の一例を示す図である。図8(a)に示すように、検査対象物60の可視光画像では、検査対象物60の内部欠陥を検出することができない。
【0045】
欠陥検査装置10は、サーマルカメラ14を用いて検査対象物60から放射される赤外線放射光を撮像することにより、検査対象物60の内部の欠陥部と、健全部との温度差を検査画像として撮像する(図8(b))。サーマルカメラ14は、検査対象物60からの赤外線放射光R2の強度が高い(温度が高い)場合には、白く撮像され、赤外線放射光R2の強度が低い(温度が低い)場合には、黒く撮像される。
【0046】
そして、欠陥検査装置10は、検査画像の画素値が所定の閾値よりも大きい場合には、例えば、グレースケールにおいて画素値を0(黒)に、検査画像の画素値が所定の閾値よりも小さい場合には、例えば、グレースケールにおいて画素値を255(白)に変換することにより欠陥画像を生成する(図8(c))。
【0047】
上述してきたように、本実施形態1では、欠陥検査システムは、光源部13aで赤外線を照射し、フィルタ13bでサーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長を遮断した照射光L2を生成し、検査対象物60に照射する。そして、サーマルカメラ14は、検査対象物60からの赤外線放射光R2と、照射された照射光L2の反射光L3とを受光する。反射光L3には、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長は存在しないため、サーマルカメラ14は、検査対象物60から放射された赤外線放射光R2のサーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長のみを検知することができる。
【0048】
なお、実施形態1の欠陥検査システムは、検査対象物60が金属材料(例えば、表面が研磨されたアルミニウム、ステンレススチールなど)のように、非金属材料(例えば、アスファルト、コンクリート、砂など)と比較して放射率が低い低放射率材料の場合には、ハロゲンランプの映り込みが顕著であるため、より効果がある。また、本実施形態1の欠陥検査システムを適用することにより、例えば、低放射率材料の表面に黒い塗料を塗るなどの黒体化することなく、内部欠陥を検出することができる。
【0049】
<変形例>
ところで、上記実施形態1では、フィルタ13bにおいてサーマルカメラ14が検知する波長帯域より長い所定の波長以上の波長の光を遮断する場合について説明したが、変形例では、フィルタ13bの所定の波長を可変し、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の下限値とフィルタ13bの所定の波長とのギャップを可変する場合について説明する。
【0050】
図9は、変形例の概要を示す図である。図9に示すように、光源装置13に配設されるフィルタ13bのフィルタ領域の下限の波長とサーマルカメラ14が検知する波長帯域の下限値と間のギャップを変えている。ここでは、フィルタ領域の下限の波長が6μmとし、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の下限値を8μmとしている。
【0051】
フィルタ13bは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタからなる。そして、該フィルタ13bは、操作者があらかじめ複数枚のフィルタの中から、光源装置13をオンにし、検査対象物60が加熱された後、サーマルカメラ14の検知出力が光源装置13をオン/オフした場合に変化が少ないフィルタを選択するようにしてもよい。
【0052】
また、フィルタ13bは、フィルタ領域の下限の波長が異なるフィルタを円盤状に配置し、該フィルタを回転させることにより、フィルタ領域の下限の波長を可変し、ギャップの幅を可変するようにしてもよい。
【0053】
このように、フィルタ領域の下限値の波長とサーマルカメラ14が検知する波長帯域の下限値の間のギャップを可変することにより、フィルタ13bを通過した照射光L2のサーマルカメラ検知領域への残留光の強度を下げることが可能であり、検査対象物60からの赤外線放射光R2を精度よく計測することができる。
【0054】
[実施形態2]
ところで、上記実施形態1では、光源装置13に所定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを配設する場合について説明したが、実施形態2では、光源装置13及びサーマルカメラ14にフィルタを配設する場合について説明する。
【0055】
<実施形態2に係る欠陥検査システムの概要>
図10は、実施形態2に係る欠陥検査システムの概要を示す図である。図10に示すように、実施形態2に係る欠陥検査システムは、光源部13aと、フィルタ13bと、サーマルカメラ14と、フィルタ14aとを有する。
【0056】
フィルタ14aは、検査対象物60とサーマルカメラ14の間に配設され、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長の光を透過し、かつ、該波長帯域以外の波長の光を透過させないフィルタである。フィルタ14aは、真空蒸着法を用いた光学薄膜コーティング技術を用いることにより生成する。
【0057】
上述してきたように、本実施形態2では、欠陥検査システムは、光源部13aで赤外線を照射し、フィルタ13bでサーマルカメラ14が検知する波長帯域の波長を遮断した照射光L2を生成し、検査対象物60に照射する。そして、サーマルカメラ14と検査対象物60の間に、サーマルカメラ14が検知する波長帯域の光を透過させ、該波長帯域以外の波長の光を透過させないフィルタ14aを配設し、サーマルカメラ14に検査対象物60から放射された赤外線放射光R2のサーマルカメラ14が検知する波長帯域の光のみを入力するようにする。
【0058】
なお、上記実施形態1及び実施形態2では、光源部13aから赤外線を照射した状態で検査対象物60の赤外線放射光R2の検知を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、光源部13aの赤外線照射と、サーマルカメラ14での検知のタイミングを変えて、サーマルカメラ14において、検査対象物60の赤外線放射光R2のみを検知するようにしてもよい。
【0059】
具体的には、光源部13aの赤外線照射をパルス状に断続的に照射し、サーマルカメラ14での検知を、光源部13aの赤外線照射が行われていないタイミングで検査対象物60の赤外線放射光R2のみを検知することにより、照射光L2の反射の影響を受けず検査対象物60の欠陥を検知するようにしてもよい。
【0060】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る欠陥検査システムは、検査対象物の内部に生じた欠陥を効率良く検査する場合に適している。
【符号の説明】
【0062】
10 欠陥検査装置
11 表示部
12 入力部
13 光源装置
13a 光源部
13b フィルタ
14 サーマルカメラ
14a フィルタ
15 記憶部
15a 検査画像データ
15b 欠陥画像データ
16 制御部
16a 光源制御部
16b 撮像処理部
16c 画像処理部
16d 表示制御部
60 検査対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10