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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172775
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両の制御装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/445 20180101AFI20241205BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241205BHJP
   B60W 50/035 20120101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F9/445 130
B60R16/02 660T
B60W50/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090736
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八瀬 大介
(72)【発明者】
【氏名】前田 修
(72)【発明者】
【氏名】山口 昭
【テーマコード(参考)】
3D241
5B376
【Fターム(参考)】
3D241BA64
3D241BA65
3D241BB72
3D241CC03
3D241CC17
3D241CD21
3D241CE04
3D241DA05Z
5B376AA12
5B376AC11
5B376GA08
(57)【要約】
【課題】複数のECUのうちの何れかのECUの機能低下時に、機能低下したECUの機能継続を、車両のユーザが必要とする機能を損うことなく部品の増加を伴わずに実現する、車両の制御装置、およびその制御方法を提供する。
【解決手段】車両の制御装置(1)は、複数のECU(101、201,301)を備え、これらのECUのうちの何れかが機能低下したと、ユーザ操作ログ(5031)とECUの実行状況ログ(5032)に基づいて、機能低下したECUの制御プログラムからユーザが使用しない機能を削除した縮退用制御プログラム(208)を選択し、当該選択した縮退用制御プログラム(208)を、機能低下したECU以外の別のECUの空きリソース(207)に転送し、当該別のECUにより機能低下したECUの機能の少なくとも一部を機能継続させるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置に接続され、互いに異なる制御プログラムを実行する複数のECUを備え、前記複数のECUは、それぞれ、前記制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、を有し、前記複数のECUがそれぞれ前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御するように構成された車両の制御装置であって、
前記複数のECUのうちの少なくとも一つの機能低下を検出する機能低下検出部と、
前記車両のユーザによる前記車載装置に対する操作ログを取得するユーザ操作ログ取得部と、
前記複数のECUの実行状況ログを取得する実行状況ログ取得部と、
前記機能低下検出部が、前記複数のECUのうちの何れかが機能低下したことを検出したとき、前記ユーザ操作ログ取得部により取得されたユーザ操作ログと、前記実行状況ログ取得部により取得された実行状態ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択し、当該選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記機能低下したECUとは別のECUにおける前記空きリソースに転送するプログラム転送部と、
を備え、
前記別のECUにより、前記転送された前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行することにより、前記機能低下したECUの前記制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続するように構成されている、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記プログラム転送部は、
前記別のECUの前記空きリソースが、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するのに不足であるときは、前記ユーザ操作ログと前記実行状態ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記別のECU用としての縮退用制御プログラムを選択し、当該選択した前記別のECU用としての縮退用制御プログラムを、前記別のECUの制御プログラム実行リソースに転送するように構成され、
前記別のECUは、
前記制御プログラム実行リソースが、前記転送された前記別のECU用としての縮退用制御プログラムを実行する縮退用制御プログラム実行リソースとなることで縮小され、当該リソースの縮小により前記別のECUの前記空きリソースが拡大され、当該拡大された空きリソースに、前記プログラム転送部から、前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムが転送される、
ように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
ユーザ操作ログ取得部により取得した前記ユーザ操作ログと、前記実行状況ログ取得部により取得した前記実行状況ログと、前記複数のECU用として設けられ前記制御プログラムの機能を制限させた複数の縮退用制御プログラム群と、を保存するストレージを備え、
前記ユーザ操作ログと、前記実行状況ログと、は前記ストレージから読み出され、
前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムは、前記ストレージに保存された前記縮退用制御プログラム群のうちから選択される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記複数のECUは、3つ以上のECUを含み、
前記プログラム転送部は、
前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記機能低下したECU以外の別の複数のECUのうちの最も大きな空きリソースを有するECUを、前記選択された機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUとして決定し、
当該決定したECUの前記空きリソースに、前記選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを転送するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記複数のECUは、3つ以上のECUを含み、
前記プログラム転送部は、
前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記機能低下したECU以外の別の複数のECUのうちの最も大きな空きリソースを有するECUを、前記選択された機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUとして決定し、
当該決定したECUの前記空きリソースに、前記選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを転送するように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記プログラム転送部は、
前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUの決定を、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ECUの決定の時点以降のリソース実行状況を推測して行なうように構成され、
前記ECUの決定の時点以降にわたって前記決定したECUのリソースが不足しないようにする、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記プログラム転送部は、
前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUの決定を、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ECUの決定の時点以降のリソース実行状況を推測して行なうように構成され、
前記ECUの決定の時点以降にわたって前記決定したECUのリソースが不足しないようにする、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
車載装置に接続された少なくとも3つのECUを備え、前記それぞれのECUは、制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、をそれぞれ有し、前記それぞれのECUが前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御する車両の制御装置の制御方法であって、
前記それぞれのECUのうちの何れか1つが機能低下したことを検出する第1のステップと、
前記車載装置に対する前記車両のユーザによる操作に関するユーザ操作ログと、前記それぞれのECUの実行状況に関する実行状況ログと、に基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第2のステップと、
前記機能低下したECU以外の第1の別のECUの空きリソースが前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第1の判定を行なう第3のステップと、
前記第1の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの前記空きリソースへ転送する第4のステップと、
前記第1の判定の結果が否定であるとき、前記機能低下したECU以外の第2の別のECUの空きリソースが、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第2の判定を行なう第5のステップと、
前記第2の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第2の別のECUの前記空きリソースへ転送する第6のステップと、
前記第2の判定の結果が否定であるとき、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第7のステップと、
前記第7のステップにより選択した前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの制御プログラム実行リソースへ転送する第8のステップと、
前記第8のステップの実行の後、前記第2のステップにより選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの空きリソースへ転送する第9のステップと、
を備え、
前記第4のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第6のステップを経て、前記第2の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第9のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させる、
ことを特徴とする車両の制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両の制御装置、及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制御を司る制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を有するECU(Electric Control Unit)と称される制御装置により実現される場合がある。制御装置としてのECUでは、ROMに格納されている制御プログラムがCPUにより実行されることで機能が実現される。ここで、CPUとROMとRAMをまとめて、リソースと称する。
【0003】
車両の制御装置におけるECUは、故障、又はリプログラミング(以下、リプロ、と称する)によるROMに格納されている制御プログラムの書き換え作業、により、機能低下(機能喪失を含む。以下同様)することがあり、この場合、当該機能低下した機能を継続させる手段がなければ、車両のユーザは、その機能を使用することができない。
【0004】
そこで、通常時に使用しているECUとは別に、バックアップ用ECU、又はリプロに際して用意するバックアップ用ROM、を設け、通常時に使用しているECUが機能低下した場合に、バックアップ用ECU、又はバックアップ用ROM、を使用して、機能低下した機能を機能継続させる構成をとることが考えられるが、車両に通常時には使用しないバックアップ用ECU、又はバックアップ用ROM、を用意する必要があり、部品増大による価格上昇、および重量増加による燃費への悪影響、といった別の課題が発生する。
【0005】
一方、特許文献1には、故障したECUの制御プログラムの少なくとも一部を、正常なECUで実行されていた制御プログラムの少なくとも一部と置き換えることで、バックアップ用ECUを必要とせずに、故障したECUの制御プログラムの少なくとも一部の機能を、正常なECUにより継続させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-89382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された従来の技術によれば、バックアップ用ECUを必要とせずに、故障したECUの制御プログラムの少なくとも一部の機能を、正常なECUにより継続させることができるが、正常なECUの制御プログラムで実現していた機能の少なくとも一部が使用できなくなるという課題がある。特許文献1に開示された従来の技術の例では、自動運転制御の機能を継続させるために、マルチメディアプログラムの全部が使用できなくなると記載されており、車両のユーザは、車両のマルチメディア機能を使用できなくなるという課題があった。
【0008】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、複数のECUのうちの何れかのECUの機能低下時に、車両のユーザが使用したい機能を機能継続しながら、機能低下したECUの機能継続を部品の増加を伴わずに実現する車両の制御装置、およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される車両の制御装置は、
車載装置に接続され、互いに異なる制御プログラムを実行する複数のECUを備え、前記複数のECUは、それぞれ、前記制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、を有し、前記複数のECUがそれぞれ前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御するように構成された車両の制御装置であって、
前記複数のECUのうちの少なくとも一つの機能低下を検出する機能低下検出部と、
前記車両のユーザによる前記車載装置に対する操作ログを取得するユーザ操作ログ取得部と、
前記複数のECUの実行状況ログを取得する実行状況ログ取得部と、
前記機能低下検出部が、前記複数のECUのうちの何れかが機能低下したことを検出したとき、前記ユーザ操作ログ取得部により取得されたユーザ操作ログと、前記実行状況ログ取得部により取得された実行状態ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択し、当該選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記機能低下したECUとは別のECUにおける前記空きリソースに転送するプログラム転送部と、
を備え、
前記別のECUにより、前記転送された前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行することにより、前記機能低下したECUの前記制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続するように構成されている、
ようにしたものである。
【0010】
また、本願に開示される車両の制御装置の制御方法は、
車載装置に接続された少なくとも3つのECUを備え、前記それぞれのECUは、制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、をそれぞれ有し、前記それぞれのECUが前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御する車両の制御装置の制御方法であって、
前記それぞれのECUのうちの何れか1つが機能低下したことを検出する第1のステップと、
前記車載装置に対する前記車両のユーザによる操作に関するユーザ操作ログと、前記それぞれのECUの実行状況に関する実行状況ログと、に基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第2のステップと、
前記機能低下したECU以外の第1の別のECUの空きリソースが前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第1の判定を行なう第3のステップと、
前記第1の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの前記空きリソースへ転送する第4のステップと、
前記第1の判定の結果が否定であるとき、前記機能低下したECU以外の第2の別のECUの空きリソースが、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第2の判定を行なう第5のステップと、
前記第2の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第2の別のECUの前記空きリソースへ転送する第6のステップと、
前記第2の判定の結果が否定であるとき、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第7のステップと、
前記第7のステップにより選択した前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの制御プログラム実行リソースへ転送する第8のステップと、
前記第8のステップの実行の後、前記第2のステップにより選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの空きリソースへ転送する第9のステップと、
を備え、
前記第4のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第6のステップを経て、前記第2の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第9のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させる、
ようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される車両の制御装置によれば、複数のECUのうちの何れかのECUの機能低下時に、車両のユーザが使用したい機能を機能継続しながら、機能低下したECUの機能継続を部品の増加を伴わずに実現する車両の制御装置、およびその制御方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1による車両の制御装置における、正常時のシステムの全体構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1による車両の制御装置における、機能低下したECUの機能の継続を、機能低下していない別のECUで行なう実施例1によるシステムの全体構成の一例を示す構成図である。
図3】実施の形態1による車両の制御装置における、機能低下したECUの機能の継続を、機能低下していない別のECUで行なう実施例2によるシステムの全体構成の別の例を示す構成図である。
図4】実施の形態1による車両の制御装置における、機能低下したECUの機能の継続を、機能低下していない別のECUで行なう実施例3でのプログラム転送判断を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願の実施の形態1について図に基づいて説明する。各図において同一又は相当する部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による車両の制御装置における、正常時のシステムの全体構成を示す構成図である。図1において、車両の制御装置1は、第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301と、機能低下検出部401と、プログラム転送部402と、ユーザ操作ログ取得部403と、実行状況ログ取得部404と、ストレージ501と、を備えている。
【0015】
第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301とは、通信経路601を介してセンサおよびアクチュエータなどの車載装置602と接続されており、それぞれ車載装置602から各種情報が入力され、個別の制御プログラムを実行して車載装置602における制御対象を制御する。ここで、車載装置602は、たとえば、車両駆動用の電動機又は内燃機関、各種のアクチュエータ、ステアリング装置、ナビゲーション装置、音響機器、などを一括して総称したものである。
【0016】
第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301とは、それぞれ、CPU、RAMおよびROMを有する制御装置であるが、物理的に互いに独立した複数の構成としてもよいし、物理的に一つの構成としその中で機能的に独立していてもよい。なお、以下の説明では、各ECUにおけるCPU、ROM、RAMを、まとめてリソースと称する。
【0017】
第1のECU101は、第1の制御プログラム実行リソース102を備え、当該第1の制御プログラム実行リソース102により、第1の制御プログラム103を実行する。また、第1の制御プログラム実行リソース102とは別に、未使用の第1のECUの空きリソース104が設けられている。第1のECU101は、たとえば、車載装置602のうちの、車両駆動用の内燃機関又は車両駆動用の電動機、車両のステアリング装置、などの車両の駆動および走行に関する制御を司るものとするが、これに限られるものではない。
【0018】
第2のECU201は、第2の制御プログラム実行リソース202を備え、当該第2の制御プログラム実行リソース202により、第1の制御プログラム103とは機能が異なる第2の制御プログラム203を実行する。また、第2の制御プログラム実行リソース202とは別に、未使用の第2のECUの空きリソース204が設けられている。第2のECU201は、たとえば、車載装置602のうちの空調関連機器、照明機器などの制御を司るものとするが、これに限られるものではない。
【0019】
第3のECU301は、第3の制御プログラム実行リソース302を備え、当該第3の制御プログラム実行リソース302により、第1の制御プログラム103および第2の制御プログラムとは機能が異なる第3の制御プログラム303を実行する。また、第3の制御プログラム実行リソース302とは別に、未使用の第3のECUの空きリソース304が設けられている。第3のECU301は、たとえば、車載装置602のうちの、ナビゲーションシステム、音響機器などに関する制御を司るものとするが、これに限られるものではない。
【0020】
機能低下検出部401は、第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301と、における動作状態を常に監視し、各ECUごとに故障を含む機能低下の有無を検出する。
【0021】
ユーザ操作ログ取得部403は、車両に対するユーザの操作状況、たとえば、アクセル開度、エアコン操作、ナビゲーションシステムの操作、などの車載装置602に対するユーザの操作の状況、操作履歴などに関するログを取得し、後述のストレージ501に保存する。
【0022】
実行状況ログ取得部404は、第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301とにおける、実行される機能、プログラムに含まれるが実行されていない機能、実行リソース、空きリソース、などの各ECUごとのリソースの状況をログとして取得し、ストレージ501に保存する。
【0023】
ストレージ501は、たとえば、フラッシュメモリ、HDD、DVD、CD、などにより構成され、車両の電源を遮断しても記憶内容はクリアされない。ストレージ501は、縮退用制御プログラム群502と、ログファイル503と、を保存する。
【0024】
ストレージ501に保存された縮退用制御プログラム群502は、第1の縮退用制御プログラム群5021と、第2の縮退用制御プログラム群5022と、第3の縮退用制御プログラム群5023と、を備えている。
【0025】
第1の縮退用制御プログラム群5021は、第1のECU101用としての縮退用制御プログラム群であり、第1のECU101が実行する複数の異なる機能ごとに生成された、第1のECU101用としての複数の第1の縮退用制御プログラムにより構成されている。たとえば、第1の縮退用制御プログラム群5021は、車両駆動用の電動機を制御するための電力変換装置、あるいは車両駆動用の内燃機関のスロットルアクチュエータの制御、電動パワーステアリング装置の制御、などの個々の機能に対応する複数の第1の縮退用制御プログラムにより構成されている。
【0026】
第2の縮退用制御プログラム群5022は、第2のECU201用としての縮退用制御プログラム群であり、第2のECU201が実行する複数の異なる機能ごとに生成された、第2のECU201用としての複数の第2の縮退用制御プログラムにより構成されている。たとえば、第2の縮退用制御プログラム群5022は、空調関連機器、照明機器、などの個々の機能に対応する複数の第2の縮退用制御プログラムにより構成されている。
【0027】
第3の縮退用制御プログラム群5023は、第3のECU301用としての縮退用制御プログラム群であり、第3のECU301が実行する複数の異なる機能ごとに生成された、第3のECU301用としての複数の第3の縮退用制御プログラムにより構成されている。たとえば、第3の縮退用制御プログラム群5023は、ナビゲーション装置、音響機器、などの個々の機能に対応する複数の第3の縮退用制御プログラムにより構成されている。
【0028】
なお、第1の縮退用制御プログラム群5021と、第2の縮退用制御プログラム群5022と、第3の縮退用制御プログラム群5023と、のうちの少なくとも一つは、あらかじめ複数の機能を組み合わせておいた縮退用制御プログラムを、機能の組み合わせ別に複数備えていてもよい。
【0029】
第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301と、のうちの何れかのECUが故障などにより機能低下したとき、当該機能低下したECUに代えて別のECUに機能低下したECUのユーザが望む特定の機能を継続させるために、前述の第1の縮退用制御プログラム群5021のうちから選択した1つ又は複数の第1の縮退用プログラムを、上記別のECUの空きリソースに転送して当該別のECUにより機能継続させることができる。その詳細については後述する。
【0030】
ストレージ501に保存されたログファイル503は、ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログ5032と、を備えている。ユーザ操作ログ5031は、ユーザ操作ログ取得部403が取得した、車載装置602に対するユーザの操作状況、たとえば、アクセル開度の状況、空調装置に対する操作状況、ナビゲーションシステムに対する操作状況、などのユーザの操作状況、に関する情報を示す。
【0031】
ストレージ501に保存された実行状況ログ5032は、実行状況ログ取得部404が取得した、第1のECUの実行状況ログ50321と、第2のECUの実行状況ログ50322と、第3のECUの実行状況ログ50323と、を備えている。
【0032】
プログラム転送部402は、機能低下検出部401が、第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301と、のうちの何れかのECUの機能低下を検出したとき、ストレージ501に保存ざれたユーザ操作ログ5031と実行状況ログ5032との情報に基づいて、第1の縮退用制御プログラム群5021と、第2の縮退用制御プログラム群5022と、第3の縮退用制御プログラム群5023と、のうちの何れかに含まれる縮退用制御プログラムを選択して、機能低下していない別のECUに転送する。
【0033】
前述の機能低下検出部401と、プログラム転送部402とは、各ECUと独立して存在してもよいし、各ECUにそれぞれ存在していてもよい。また、ユーザ操作ログ取得部403と、実行状況ログ取得部404とは、互に独立して存在してもよいし、一か所に存在していてもよい。さらに、ストレージ501は、複数に分割されていてもよいし、一つのみであってもよい。
【0034】
つぎに、以上のように構成された実施の形態1による車両の制御装置において、各ECUのうちの一つのECUが機能低下したとき、当該機能低下したECU以外の別のECUにより縮退用制御プログラムを実行して機能低下したECUの機能を継続させる実施例について説明する。
【0035】
(実施例1)
図2は、実施の形態1による車両の制御装置における、機能低下したECUの機能の継続を、機能低下していない別のECUで行なう実施例1によるシステムの全体構成の一例を示す構成図であって、第1のECU101の機能低下時に、第2のECU201により第1のECUの機能を継続させるようにしたものである。
【0036】
ここで、プログラム転送部402は、ユーザ操作ログ5031と実行状況ログ5032とに基づいて、機能低下したECU以外の別の複数のECUのうちの最も大きな空きリソースを有するECUを、選択された機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUとして決定し、当該決定したECUの空きリソースに、選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを転送するように構成されている。
【0037】
また、プログラム転送部402は、選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUの決定を、ユーザ操作ログ5031と実行状況ログ5032とに基づいて、ECUの決定の時点以降のリソース実行状況を推測して行なうように構成され、ECUの決定の時点以降にわたって決定したECUのリソースが不足しないようにしている。
【0038】
この実施例1では、ユーザ操作ログ5031とECUの実行状況ログ5032との情報に基づいて、機能低下していないECUと機能低下したECUとの双方からユーザが使用しない機能を除外して車両負荷を制限し、機能低下していないECUと機能低下したECUとの双方に存在するユーザが継続使用を望む機能を継続させることができる。
【0039】
図2において、機能低下検出部401は、第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301と、の異常の有無を常時検視しているが、いま、第1のECU101の第1の制御プログラム実行リソース102が何らかの原因で機能低下し、第1の制御プログラム103を実行できなくなっていることを検出したとする。図2では、機能低下して第1の制御プログラム103の実行ができなくなった第1のECU101に、×印を付してある。
【0040】
第1のECU101の機能低下を検出した機能低下検出部401は、プログラム転送部402を起動させる。起動したプログラム転送部402は、ストレージ501におけるログファイル503を読み出し、下記1から7の処理を行なう。
【0041】
1.ログファイル503におけるユーザ操作ログ5031と、ログファイル503における実行状況ログ5032のうちの第1のECUの実行状況ログ50321と、に基づいて、第1のECU101における第1の制御プログラム実行リソース102と、未使用の第1のECUの空きリソース104と、の推移を確認する。
【0042】
2.ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログ5032における第2のECUの実行状況ログ50322と、に基づいて、第2のECU201における第2の制御プログラム実行リソース202(図1参照)と、未使用の第2のECUの空きリソース204(図1参照)と、の推移を確認する。
【0043】
3.ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログ5032における第1のECUの実行状況ログ50321とから、第1のECU101で実行されていた機能と、第1の制御プログラム103に含まれているが実行されていなかった機能と、を確認する。
【0044】
4.ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログにおける第2のECUの実行状況ログ50322とから、第2のECU201で実行されている機能と、第2の制御プログラム203(図1参照)に含まれるが実行されていない機能と、を確認する。
【0045】
なお、上記1、2、3、4、に示す処理は、上記の記載順序の通りでなくてもよい。
【0046】
5.上記3、4による確認に基づいて、機能低下した第1のECU101で実行していた第1の制御プログラムの機能のうちから、別のECUにより機能継続させる必要のある機能を有する第1の縮退用制御プログラムを選択するとともに、当該第1の縮退用制御プログラムを実行可能なリソースを確保する。
【0047】
ここで、リソースには限りがあるので、縮退用制御プログラムに必要になる機能は、転送先のリソース内に収まる必要がある。したがって、プログラム転送部402は、縮退用制御プログラム群502のうちから、使用頻度が低い機能を有する縮退用制御プログラムを除外し、又は、あらかじめ準備した優先順位に基づいて優先順位の低い縮退用制御プログラムを除外して、機能継続させる必要のある機能を有する第1の縮退用制御プログラムを選択する。図2に示す例では、その第1の縮退用制御プログラムとして、第1の縮退用制御プログラム群5021のうちから第1の縮退用制御プログラム208を選択した例を示している。
【0048】
また、第1の縮退用制御プログラム208を実行するリソースとして、第2のECUの空きリソース204(図1参照)を決定する。ここで、第2のECUの空きリソース204(図1参照)が、前述の選択した第1の縮退用制御プログラム208を実行することができるか否かを確認する。当該確認の結果、第2のECUの空きリソース204のままでは、前述の選択した第1の縮退用制御プログラム208を実行することができないことが判明したので、第2のECU201における第2の制御プログラム実行リソース202(図1参照)を縮小し、元の第2のECUの空きリソース204より拡大した第2のECUの空きリソース207を確保する。
【0049】
具体的には、使用頻度が低い機能を有する縮退用制御プログラムを除外し、又は、あらかじめ準備した優先順位に基づいて優先順位の低い縮退用制御プログラムを除外して、必要な機能のみを有する第1の縮退用制御プログラム208を、縮退用制御プログラム群502の中から選択し、当該選択した第1の縮退用制御プログラム208を実行するリソースを第2の縮退用制御プログラム実行リソース205とする。つまり、元の第2の制御プログラム実行リソース202(図1参照)を縮小して新たな第2の縮退用制御プログラム実行リソース205とすることで、元の第2のECUの空きリソース204(図1参照)を拡大し、新たな第2のECUの空きリソース207を確保するものである。
【0050】
6.最後に、第2のECU201の第2の縮退用制御プログラム実行リソース205に第2の縮退用制御プログラム206を転送するとともに、第2のECUの空きリソース207に第1の縮退用制御プログラム208を転送する。
【0051】
第2のECU201は、プログラム転送部402により転送された第2の縮退用制御プログラム206と、第1の縮退用制御プログラム208と、を実行する。第2の縮退用制御プログラム206と、第1の縮退用制御プログラム208とは、前述のようにログファイル503に基づいて機能が選択されているので、車両のユーザが必要とする機能を、必要とする車両負荷状況で実行される。
【0052】
なお、あらかじめ定められている第2のECUの空きリソース204(図1参照)が十分あり、当該第2のECUの空きリソース204にて第1の縮退用制御プログラム208を実行することができる場合は、第2の制御プログラム実行リソース202と、第2のECUの空きリソース204と、をそのままにして、第1の縮退用制御プログラム208を第2のECUの空きリソース204へ転送して実行することができる。この考え方を第3のECU301で実施したものが、次に述べる実施例2である。
【0053】
(実施例2)
図3は、実施の形態1による車両の制御装置における、機能低下したECUの機能の継続を、機能低下していない別のECUで行なう実施例2によるシステムの全体構成の別の例を示す構成図であって、第1のECU101の機能低下時に、第3のECU301により第1のECUの機能を継続させるようにしたものである。
【0054】
ここで、プログラム転送部402は、ユーザ操作ログ5031と実行状況ログ5032とに基づいて、機能低下したECU以外の別の複数のECUのうちの最も大きな空きリソースを有するECUを、選択された機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUとして決定し、当該決定したECUの空きリソースに、選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを転送するように構成されている。
【0055】
また、プログラム転送部402は、選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUの決定を、ユーザ操作ログ5031と実行状況ログ5032とに基づいて、ECUの決定の時点以降のリソース実行状況を推測して行なうように構成され、ECUの決定の時点以降にわたって決定したECUのリソースが不足しないようにしている。
【0056】
図3において、機能低下検出部401は、第1のECU101と、第2のECU201と、第3のECU301と、の異常の有無を常時検視しているが、いま、第1のECU101の第1の制御プログラム実行リソース102が何らかの原因で機能低下し、第1の制御プログラム103を実行できなくなっていることを検出したとする。図3では、機能低下して第1の制御プログラム103の実行ができなくなった第1のECU101に、×印を付してある。
【0057】
第1のECU101の機能低下を検出した機能低下検出部401は、プログラム転送部402を起動させる。起動したプログラム転送部402は、ストレージ501におけるログファイル503を読み出し、下記8から14の処理動作を行なう。
【0058】
8.ログファイル503におけるユーザ操作ログ5031と、ログファイル503における実行状況ログ5032のうちの第1のECUの実行状況ログ50321と、に基づいて、第1のECU101における第1の制御プログラム実行リソース102と、未使用の第1のECUの空きリソース104と、の推移を確認する。
【0059】
9.ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログ5032における第3のECUの実行状況ログ50323と、に基づいて、第3のECU301における第3の制御プログラム実行リソース302と、未使用の第3のECUの空きリソース304と、の推移を確認する。
【0060】
10.ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログ5032における第1のECUの実行状況ログ50321とから、第1のECU101で実行されていた機能と、第1の制御プログラム103に含まれているが実行されていなかった機能と、を確認する。
【0061】
11.ユーザ操作ログ5031と、実行状況ログにおける第3のECUの実行状況ログ50323とから、第3のECU301で実行されている機能と、第3の制御プログラム303に含まれるが実行されていない機能と、を確認する。
【0062】
なお、上記8、9、10、11、に示す処理は、上記の記載順序の通りでなくてもよい。
【0063】
12.上記10、11による確認に基づいて、機能低下した第1のECU101で実行していた第1の制御プログラムの機能のうちから、別のECUにより機能継続させる必要のある機能を有する第1の縮退用制御プログラムを選択するとともに、当該第1の縮退用制御プログラムを実行可能なリソースを決定する。
【0064】
ここで、前述したように、リソースには限りがあるので、縮退用制御プログラムに必要になる機能は、転送先のリソース内に収まる必要がある。したがって、プログラム転送部402は、縮退用制御プログラム群502のうちから、使用頻度が低い機能を有する縮退用制御プログラムを除外し、又は、あらかじめ準備した優先順位に基づいて優先順位の低い縮退用制御プログラムを除外して、機能継続させる必要のある機能を有する第1の縮退用制御プログラムを選択する。図3に示す例では、その第1の縮退用制御プログラムとして、第1の縮退用制御プログラム群5021のうちから第1の縮退用制御プログラム208を選択した例を示している。
【0065】
また、上記第1の縮退用制御プログラム208を実行するリソースとして、第3のECUの空きリソース304を決定する。ここで、第3のECUの空きリソース304に前述の選択した第1の縮退用制御プログラム208を実行することが出来るか否かを確認する。当該確認の結果、第3のECUの空きリソース304が、前述の選択した第1の縮退用制御プログラム208を実行することができることが判明し、第3のECUの空きリソース304をそのまま前述の選択した第1の縮退用制御プログラム208を実行するリソースとして決定する。
【0066】
13.最後に、第3のECUの空きリソース304に第1の縮退用制御プログラム208を転送する。
【0067】
第3のECU301は、転送された第1の縮退用制御プログラム208を実行する。第1の縮退用制御プログラム208は、前述のようにログファイル503に基づいて機能が選択されているので、車両のユーザが必要とする機能を、必要とする車両負荷状況で実行される。第3の制御プログラム303は、正常時と同じであるため、ユーザに不都合が生じることはない。
【0068】
前述の実施例1では、第1の縮退用制御プログラム208を第2のECU201で実行可能か否かを確認し、第2のECU201のままでは第1の縮退用制御プログラム208を実施できないことを確認したが、第2のECU201の中でリソースの調整を行ない、第2のECU201により第1の縮退用制御プログラム208を実行するようにしている。また、実施例2では、第1の縮退用制御プログラム208を第3のECU301で実行可能か否かを確認し、第3のECU301のままで第1の縮退用制御プログラム208を実施できることを確認し、第3のECU301のリソースを調整することなく、第3のECU301により第1の縮退用制御プログラム208を実行するようにしている。
【0069】
(実施例3)
実施例3は、第1のECU101の機能低下時に、第2のECU201と第3のECU301との空きリソースの確認に基づいて、第2のECU201と第3のECU301とのうちの何れかのECUより第1のECUの機能を継続させるようにしたものである。
【0070】
第2のECUの空きリソース204と、第3のECUの空きリソース304と、の何れを先に確認するかは、車載装置602のうちの制御対象の物理的な距離、空きリソースの多さなどに基づき、予め優先順位を決めておくことが考えられるが、実施例3では第2のECUの空きリソースを先に確認するようにしている。
【0071】
図4は、実施の形態1による車両の制御装置における、機能低下したECUの機能の継続を、機能低下していない別のECUで行なう実施例3でのプログラム転送判断を示すフローチャートである。図4に示すプログラム転送判断の動作は、CPUにおける所定演算周期(例えば100[ms])のメインルーチン内のサブルーチンとして実行される。
【0072】
図4において、まずステップS401では、ストレージ501からログファイル503を読み出し、ユーザ操作ログ5031と、各ECUの実行状況ログを得る。
【0073】
つぎに、ステップS402では、ステップS401で取得したログに基づき、第1のECU101の第1の制御プログラム実行リソース102と、未使用の第1のECUの空きリソース104の推移と、を確認し、さらにユーザ操作ログに基づき、第1のECU101で実行されている機能と、第1の制御プログラムに含まれているが実行されていない機能と、を確認し、これらの確認に基づいて第1の縮退用制御プログラム208を選択する。
【0074】
つぎに、ステップS403において、ステップS402にて選択した第1の縮退用制御プログラム208が第2のECU201の空きリソース204で実行可能か判定し、実行可能であれば(YES)、ステップS404に進み、実行可能でなければ(NO)、ステップS405に進む。
【0075】
ステップS403からステップS404に進むと、第2のECUの空きリソース204に第1の縮退用制御プログラム208を転送し、処理を終了する。第2のECU201は、転送された第1の縮退用制御プログラム208を実行するとともに、第2の制御プログラム203を実行する。
【0076】
一方、ステップS403からステップS405に進むと、選択した第1の縮退用制御プログラム208が第3のECU301の空きリソース304で実行可能か否かを判定し、実行可能であれば(YES)、ステップS406に進み、実行可能でなければ(NO)、ステップS407に進む。
【0077】
ステップS405からステップS406に進むと、第3のECUの空きリソース304に第1の縮退用制御プログラム208を転送し、処理を終了する。第3のECU301は、転送された第1の縮退用制御プログラム208を実行するとともに、第3の制御プログラム303を実行する。
【0078】
一方、ステップS405からステップS407に進むと、ステップS407では、以下の処理を行なう。まず、第1のECU101の第1の制御プログラム実行リソース102、および未使用の第1のECUの空きリソース104の推移、第2のECU201の第2の制御プログラム実行リソース202、および未使用の第2のECUの空きリソース204の推移を確認する。
【0079】
つぎに、ユーザ操作ログと第1のECUの実行状況ログ50321とに基づいて、第1のECU101で実行されていた機能および第1の制御プログラム103に含まれるが実行されていない機能と、を確認し、さらに、ユーザ操作ログと第2のECUの実行状況ログ50322とに基づいて、第2のECUで実行されていた機能および第2の制御プログラム203に含まれるが実行されていない機能と、とを確認する。
【0080】
つぎに、上記各確認に基づいて、縮退用制御プログラムに必要になる機能と、使用できる第2のECU201のリソースを決定する。ここで、リソースには限りがあるので、縮退用制御プログラムに必要になる機能は、決定したリソース内に収まるようにする必要がある。リソースに収まらない場合は、ログファイル503に基づいて、縮退用制御プログラム群502のうちから、使用頻度が低い機能を有する縮退用制御プログラムを除外し、又は、あらかじめ準備した優先順位に基づいて優先順位の低い縮退用制御プログラムを除外して、上記決定したリソース内に収まる第2の縮退用制御プログラム206と第1の縮退用制御プログラム208を選択する。
【0081】
つぎに、ステップS408では、ステップS407によりリソース内に収まるよう調整済のため、第2のECU201の元の第2の制御プログラム実行リソースに第2の縮退用制御プログラム206を転送し、かつ第2のECU201の元の空きリソースに第1の縮退用制御プログラム208を転送して、処理を終了する。ここで、元の第2の制御プログラム実行リソースは第2の縮退用制御プログラム実行リソースとなり、元の第2のECUの空きリソースは第1の縮退用制御プログラム実行リソースとなる。
【0082】
第2のECU201は、転送された第1の縮退用制御プログラム208を実行するとともに、第2の縮退用制御プログラム206を実行する。
【0083】
以上述べた実施例3は、車載装置に接続された少なくとも3つのECUを備え、前記それぞれのECUは、制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、をそれぞれ有し、前記それぞれのECUが前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御する車両の制御装置の制御方法を示している。
【0084】
すなわち、本願に係る車両の制御装置の制御方法は、以下の通りである。
【0085】
それぞれのECUのうちの何れか1つが機能低下したことを検出する第1のステップと、前記車載装置に対する前記車両のユーザによる操作に関するユーザ操作ログと、前記それぞれのECUの実行状況に関する実行状況ログと、に基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第2のステップ(図4にステップS402に相当する)と、
前記機能低下したECU以外の第1の別のECUの空きリソースが前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第1の判定を行なう第3のステップ(図4のステップS403に相当する)と、前記第1の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの前記空きリソースへ転送する第4のステップ(図4のいステップS404に相当する)と、
前記第1の判定の結果が否定であるとき、前記機能低下したECU以外の第2の別のECUの空きリソースが、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第2の判定を行なう第5のステップ(図4のステップS405に相当する)と、
前記第2の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第2の別のECUの前記空きリソースへ転送する第6のステップ(図4のステップS406に相当する)と、
前記第2の判定の結果が否定であるとき、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第7のステップ(図4のステップS407に相当する)と、
前記第7のステップにより選択した前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの制御プログラム実行リソースへ転送する第8のステップ(図4のステップ408に相当する)と、
前記第8のステップの実行の後、前記第2のステップにより選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの空きリソースへ転送する第9のステップ(図4には図示せず)と、
を備え、
前記第4のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第6のステップを経て、前記第2の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第9のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させる車両の制御装置の制御方法。
【0086】
以上述べたように、実施の形態1による車両の制御装置によれば、機能低下したECUの機能継続を別のECUで実行する際、ユーザ操作ログとECUの実行状況ログに基づいて機能低下したECUにおけるユーザが使用しない機能を削除した縮退用制御プログラムを選択し、当該選択した縮退用制御プログラムを別のECUに転送して実行するようにしたので、部品増大、重量増加を伴うことなく、ユーザが使用したい機能を機能継続しながら、機能低下したECUの機能継続とを行なうことができる。
【0087】
本願は、例示的な実施の形態及び実施例を記載しているが、記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【0088】
つぎに、本願に開示した車両の制御方装置、およびその制御方法の態様を、以下に付記として記載する。
(付記1)
車載装置に接続され、互いに異なる制御プログラムを実行する複数のECUを備え、前記複数のECUは、それぞれ、前記制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、を有し、前記複数のECUがそれぞれ前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御するように構成された車両の制御装置であって、
前記複数のECUのうちの少なくとも一つの機能低下を検出する機能低下検出部と、
前記車両のユーザによる前記車載装置に対する操作ログを取得するユーザ操作ログ取得部と、
前記複数のECUの実行状況ログを取得する実行状況ログ取得部と、
前記機能低下検出部が、前記複数のECUのうちの何れかが機能低下したことを検出したとき、前記ユーザ操作ログ取得部により取得されたユーザ操作ログと、前記実行状況ログ取得部により取得された実行状態ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択し、当該選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記機能低下したECUとは別のECUにおける前記空きリソースに転送するプログラム転送部と、
を備え、
前記別のECUにより、前記転送された前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行することにより、前記機能低下したECUの前記制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続するように構成されている、
ことを特徴とする車両の制御装置。
(付記2)
前記プログラム転送部は、
前記別のECUの前記空きリソースが、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するのに不足であるときは、前記ユーザ操作ログと前記実行状態ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記別のECU用としての縮退用制御プログラムを選択し、当該選択した前記別のECU用としての縮退用制御プログラムを、前記別のECUの制御プログラム実行リソースに転送するように構成され、
前記別のECUは、
前記制御プログラム実行リソースが、前記転送された前記別のECU用としての縮退用制御プログラムを実行する縮退用制御プログラム実行リソースとなることで縮小され、当該リソースの縮小により前記別のECUの前記空きリソースが拡大され、当該拡大された空きリソースに、前記プログラム転送部から、前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムが転送される、
ように構成されている、
ことを特徴とする(付記1)に記載の車両の制御装置。
(付記3)
ユーザ操作ログ取得部により取得した前記ユーザ操作ログと、前記実行状況ログ取得部により取得した前記実行状況ログと、前記複数のECU用として設けられ前記制御プログラムの機能を制限させた複数の縮退用制御プログラム群と、を保存するストレージを備え、
前記ユーザ操作ログと、前記実行状況ログと、は前記ストレージから読み出され、
前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムは、前記ストレージに保存された前記縮退用制御プログラム群のうちから選択される、
ことを特徴とする(付記1)又は(付記2)に記載の車両の制御装置。
(付記4)
前記複数のECUは、3つ以上のECUを含み、
前記プログラム転送部は、
前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記機能低下したECU以外の別の複数のECUのうちの最も大きな空きリソースを有するECUを、前記選択された機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUとして決定し、
当該決定したECUの前記空きリソースに、前記選択した機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを転送するように構成されている、
ことを特徴とする(付記1)から(付記3)のうちの何れか一項に記載の車両の制御装置。
(付記5)
前記プログラム転送部は、
前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行するECUの決定を、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ECUの決定の時点以降のリソース実行状況を推測して行なうように構成され、
前記ECUの決定の時点以降にわたって前記決定したECUのリソースが不足しないようにする、
ことを特徴とする(付記4)に記載の車両の制御装置。
(付記6)
車載装置に接続された少なくとも3つのECUを備え、前記それぞれのECUは、制御プログラムを実行する制御プログラム実行リソースと、未使用の空きリソースと、をそれぞれ有し、前記それぞれのECUが前記制御プログラムを実行することにより、前記車載装置のうちの制御対象を制御する車両の制御装置の制御方法であって、
前記それぞれのECUのうちの何れか1つが機能低下したことを検出する第1のステップと、
前記車載装置に対する前記車両のユーザによる操作に関するユーザ操作ログと、前記それぞれのECUの実行状況に関する実行状況ログと、に基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第2のステップと、
前記機能低下したECU以外の第1の別のECUの空きリソースが前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第1の判定を行なう第3のステップと、
前記第1の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの前記空きリソースへ転送する第4のステップと、
前記第1の判定の結果が否定であるとき、前記機能低下したECU以外の第2の別のECUの空きリソースが、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを実行可能か否か、の第2の判定を行なう第5のステップと、
前記第2の判定の結果が肯定であるとき、前記選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第2の別のECUの前記空きリソースへ転送する第6のステップと、
前記第2の判定の結果が否定であるとき、前記ユーザ操作ログと前記実行状況ログとに基づいて、前記ユーザが必要とする機能を含む前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを選択する第7のステップと、
前記第7のステップにより選択した前記第1の別のECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの制御プログラム実行リソースへ転送する第8のステップと、
前記第8のステップの実行の後、前記第2のステップにより選択した前記機能低下したECU用としての縮退用制御プログラムを、前記第1の別のECUの空きリソースへ転送する第9のステップと、
を備え、
前記第4のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第6のステップを経て、前記第2の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させ、又は、
前記第9のステップを経て、前記第1の別のECUにより、前記機能低下したECUの制御プログラムによる機能のうちの少なくとも一部の機能を機能継続させる、
ことを特徴とする車両の制御装置の制御方法。
【符号の説明】
【0089】
1 車両の制御装置、101 第1のECU、
102 第1の制御プログラム実行リソース、103 第1の制御プログラム、
104 第1のECUの空きリソース、201 第2のECU、
202 第2の制御プログラム実行リソース、203 第2の制御プログラム、
204 第2のECUの空きリソース、
205 第2の縮退用制御プログラム実行リソース、
206 第2の縮退用制御プログラム、207 第2のECUの空きリソース、
208 第1の縮退用制御プログラム、301 第3のECU、
302 第3の制御プログラム実行リソース、303 第3の制御プログラム、
304 第3のECUの空きリソース、401 機能低下検出部、
402 プログラム転送部、403 ユーザ操作ログ取得部、
404 実行状況ログ取得部、501 ストレージ、
502 縮退用制御プログラム群、503 ログファイル、601 通信経路、
5021 第1の縮退用制御プログラム群、5022 第2の縮退用制御プログラム群、
5023 第3の縮退用制御プログラム群、5031 ユーザ操作ログ、
5032 実行状況ログ、50321 第1のECUの実行状況ログ、
50322 第2のECUの実行状況ログ、50323 第3のECUの実行状況ログ、
601 通信経路、602 車載装置
図1
図2
図3
図4