(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172776
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】コンクリートの打設高さの計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20241205BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20241205BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01B7/00 101Z
E21D11/10
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090737
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】523070388
【氏名又は名称】ESEコンサルティング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鵜山 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 和正
(72)【発明者】
【氏名】犬走 望
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼ 利博
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
2F063
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155AA07
2D155AA08
2D155LA13
2D155LA15
2E172AA05
2E172DB13
2E172HA03
2F063AA14
2F063BA14
2F063CA10
2F063DA01
2F063DA05
2F063HA04
(57)【要約】
【課題】打設高さを容易に計測可能なコンクリートの打設高さの計測方法を提供する。
【解決手段】コンクリートC1の打設高さH1の計測方法は、トンネル1の内周面1Sと型枠2との間の打設領域3において、上方から下方に向けてセンサーケーブル20を配置し、打設領域3にコンクリートC1を打設しながらセンサーケーブル20を用いてTDR波形を取得し、TDR波形において、コンクリートC1の打設面CS1における空気とコンクリートC1との間の誘電特性の差異による変化に基づいて、コンクリートC1の打設高さH1を計測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周面と型枠との間の打設領域において、上方から下方に向けてセンサーケーブルを配置し、
前記打設領域にコンクリートを打設しながら前記センサーケーブルを用いてTDR波形を取得し、
前記TDR波形において、前記コンクリートの打設面における空気と前記コンクリートとの間の誘電特性の差異による変化に基づいて、前記コンクリートの打設高さを計測する
ことを特徴とするコンクリートの打設高さの計測方法。
【請求項2】
前記TDR波形の取得と並行して前記TDR波形の下降変曲点を検出し、前記下降変曲点の値に基づいて前記打設高さを表示する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの打設高さの計測方法。
【請求項3】
前記打設領域は、前記トンネルの天端を境として幅方向の一方の側に位置する第1打設領域と、前記幅方向の他方の側に位置する第2打設領域と、を含み、
前記センサーケーブルは、前記第1打設領域に配置される第1センサーケーブルであり、
前記第2打設領域の上方から下方に向けて第2センサーケーブルを配置し、
前記第1打設領域及び前記第2打設領域の両方に前記コンクリートを打設しながら、前記第1センサーケーブルを用いて第1TDR波形を取得するとともに、前記第2センサーケーブルを用いて第2TDR波形を取得し、
前記第1TDR波形に基づいて、前記第1打設領域における前記コンクリートの打設高さを計測するとともに、前記第2TDR波形に基づいて、前記第2打設領域における前記コンクリートの打設高さを計測する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリートの打設高さの計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設高さの計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工では、トンネルの内周面とセントル(型枠)との間の打設領域にコンクリートが充填される。トンネル覆工では、コンクリートが空洞等を発生させることなく確実に充填されたか否かを把握する必要がある。例えば、特許文献1には、トンネルの覆工の未充填箇所を特定するための未充填箇所の検出装置が記載されている。
【0003】
特許文献1の検出装置は、被覆導線と、測定装置本体と、を備える。被覆導線は、トンネルの内周面に沿って周方向にほぼ一周に亘って配置される。測定装置本体は、被覆導線にパルス波を印加するとともに、当該パルス波が反射した反射パルス波を検出する。特許文献1の検出装置では、コンクリートと空気との誘電特性の違いによる特性インピーダンスの変化によってパルス波の一部が反射した反射パルス波を検出することで、空気溜まりを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トンネル覆工では、打設領域におけるコンクリートの打設高さを計測することが要求される。打設高さの計測のために、特許文献1のようにトンネルの周方向の一周に亘って被覆導線を配置すると、空気と比較してコンクリートのパルス波の損失係数が大きいため、トンネルが大きくなる程パルス波の減衰が大きくなる。この場合、特性インピーダンスの変化による反射パルス波を検出することが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するコンクリートの打設高さの計測方法は、トンネルの内周面と型枠との間の打設領域において、上方から下方に向けてセンサーケーブルを配置し、前記打設領域にコンクリートを打設しながら前記センサーケーブルを用いてTDR波形を取得し、前記TDR波形において、前記コンクリートの打設面における空気と前記コンクリートとの間の誘電特性の差異による変化に基づいて、前記コンクリートの打設高さを計測する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンクリートの打設高さを容易に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、トンネルの軸方向と直交する断面構造を示す模式図である。
【
図4】
図4は、コンクリート打設時のTDR波形を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図4のTDR波形を微分した微分波形を示すグラフである。
【
図6】
図6は、トンネル内の軸方向の構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、表示部に表示される画面の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、コンクリートを打設する前のTDR波形を示すグラフである。
【
図9】
図9は、コンクリート打設時のTDR波形とコンクリートを打設する前のTDR波形との差分波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、コンクリートの打設高さの計測方法の一実施形態について
図1~
図9を参照して説明する。
[トンネル及び型枠の構成]
図1に示すように、コンクリートの打設高さの計測方法の一実施形態では、トンネル1の内周面1Sに対してコンクリートC1を覆工する際のコンクリートC1の打設高さH1を計測する。トンネル1の内周面1Sは、例えば、断面視で半円状などの任意の形状を有する。コンクリートC1は、トンネル1の内周面1Sと型枠2との間の打設領域3に打設される。型枠2は、例えば、トンネル覆工に用いられるセントルである。型枠2は、トンネル1の内周面1Sに対して所定の間隔を空けて配置される。型枠2の形状は、トンネル1の内周面1Sの形状や内周面1Sを覆うコンクリートC1に要求される厚さに応じて決定される。
【0010】
打設領域3は、第1打設領域3Aと、第2打設領域3Bとを含む。第1打設領域3A及び第2打設領域3Bは、トンネル1のトンネル軸方向と直交する断面視において、トンネル1の天端1Tを境とした2つの領域である。第1打設領域3Aは、トンネル1の天端1Tを境として、トンネル1の幅方向の一方の側(紙面左側)に位置する。第2打設領域3Bは、トンネル1の天端1Tを境として、トンネル1の幅方向の他方の側(紙面右側)、すなわち、第1打設領域3Aと反対側に位置する。
【0011】
型枠2は、複数の圧入口2Aを備える。打設領域3には、圧入口2Aを介してコンクリートC1が打設される。例えば、複数の圧入口2Aは、上下方向において互いに異なる位置に配置される。打設領域3には、高さの異なる圧入口2AからコンクリートC1が打設される。また、型枠2には、第1打設領域3Aに面する圧入口2Aと、第2打設領域3Bに面する圧入口2Aとが配置される。したがって、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bに対して同時にもしくは各別にコンクリートC1を打設できる。なお、型枠2は、上下方向だけでなくトンネル1のトンネル軸方向においても、複数の箇所に圧入口2Aを備えてもよい。
【0012】
[計測システム]
コンクリートC1の打設高さH1は、計測システム10によって計測される。コンクリートC1の打設高さH1は、打設領域3の最下部からコンクリートC1が備える打設面CS1までの距離である。計測システム10は、センサーケーブル20と、接続ケーブル30と、切換部31と、計測部40と、制御端末50と、を備える。
【0013】
センサーケーブル20は、一例として、フィーダーケーブルである。センサーケーブル20は、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの各々において、トンネル1の内周面1Sに沿って上方から下方に向けて配置されている。以下では、第1打設領域3Aに配置されたセンサーケーブル20を第1センサーケーブル20Aとし、第2打設領域3Bに配置されたセンサーケーブル20を第2センサーケーブル20Bとする。また、第1センサーケーブル20Aと第2センサーケーブル20Bとを区別しない場合には、単にセンサーケーブル20とする。
【0014】
センサーケーブル20は、例えば、トンネル1の内周面1Sに沿って貼り付けられている。センサーケーブル20は、上端20Uと、下端20Lとを備える。上端20Uは、打設領域3におけるトンネル1の天端1Tの近傍に配置される。上端20Uは、センサーケーブル20の基端である。下端20Lは、打設領域3の下端近傍に配置される。下端20Lは、センサーケーブル20の先端である。センサーケーブル20は、上端20Uにおいて接続ケーブル30に接続される。センサーケーブル20には、接続ケーブル30を介して計測部40からのパルス波が印加される。
【0015】
接続ケーブル30は、センサーケーブル20よりも外部の誘電率の変化の影響を受けにくい給電線である。接続ケーブル30は、一例として、同軸ケーブルである。接続ケーブル30は、切換部31を介して、センサーケーブル20と計測部40とを繋ぐ。接続ケーブル30は、一端が打設領域3内でセンサーケーブル20と接続され、かつ、他端が打設領域3の外部において切換部31に接続される。以下では、第1センサーケーブル20Aに接続される接続ケーブル30を第1接続ケーブル30Aとし、第2センサーケーブル20Bに接続される接続ケーブル30を第2接続ケーブル30Bとする。また、第1接続ケーブル30Aと第2接続ケーブル30Bとを区別しない場合には、単に接続ケーブル30とする。
【0016】
切換部31には、第1接続ケーブル30A及び第2接続ケーブル30Bと計測部40とが接続される。切換部31は、計測部40からのパルス波が第1接続ケーブル30Aに印加される状態と、計測部40からのパルス波が第2接続ケーブル30Bに印加される状態と、を切り換える。切換部31は、例えば、高周波リレーである。
【0017】
計測部40は、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射率測定法)測定装置である。計測部40は、打設領域3にコンクリートC1が打設されている最中に、切換部31及び接続ケーブル30を介してセンサーケーブル20にパルス波を印加するとともに、センサーケーブル20において当該パルス波が反射した反射パルス波を検出する。計測部40からのパルス波は、センサーケーブル20の基端側である上端20U側から先端側である下端20L側に向けて印加される。計測部40は、上端20Uから下端20Lまでの間で反射された反射パルス波を測定することで、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1を通過することに起因する局所的な反射を検出する。
【0018】
制御端末50は、例えば、ラップトップ型のコンピュータであるが、タブレット等の持ち運び可能な他の端末であってもよい。制御端末50は、計測部40が検出した反射パルス波の強度に基づいてTDR波形を取得する。制御端末50は、TDR波形に基づいて、コンクリートC1の打設高さH1を計測する。制御端末50において、打設高さH1の計測は、TDR波形の取得と並行して行われる。制御端末50は、計測した打設高さH1を表示する表示部54を備える。制御端末50は、計測した打設高さH1をリアルタイムで表示部54に表示する。
【0019】
[センサーケーブル]
図2に示すように、センサーケーブル20は、帯状を有する長尺の電線である。センサーケーブル20は、一例として、300Ωの特性インピーダンスを有するフィーダーケーブルである。センサーケーブル20は、一対の芯線21と、各芯線21を覆う一対の被覆部22と、被覆部22同士を繋ぐ連結部23とを備える。
【0020】
芯線21は、銅線などの金属線である。一対の芯線21は、一定の間隔W1で離間した状態で互いに平行に配置される。なお、センサーケーブル20の先端である下端20Lでは、一対の芯線21が相互に接続されていない開放端となるように構成されている。例えば、センサーケーブル20の下端20Lには、一対の芯線21が互いに導通しないように絶縁性のテープ等が設けられている。
【0021】
被覆部22及び連結部23は、例えば、絶縁性の樹脂によって一体に構成される。被覆部22は、径方向の厚さがほぼ均一な円筒状を有する。被覆部22は、芯線21を通過するパルス波の減衰を抑制する。連結部23は、例えば、被覆部22の外径よりも厚さが小さい偏平な帯状を有する。なお、連結部23が省略されて被覆部22同士が直接繋がれてもよい。
【0022】
センサーケーブル20には、所定のパルス波が印加されることにより、周囲に電磁界領域が形成される。被覆部22の内部には、最も強い電磁界領域が形成される。そのため、パルス波エネルギーの大部分が被覆部22内を伝播することで、パルス波が有するエネルギーの減衰が抑制される。
【0023】
被覆部22の外側の近傍には、第1電磁界領域24が形成される。第1電磁界領域24の外側には、第1電磁界領域24よりも電磁力が弱い第2電磁界領域25が形成される。第2電磁界領域25は、一例として、一対の芯線21の間隔W1の2倍程度の範囲まで分布している。
【0024】
パルス波が進行する際に、第1電磁界領域24や第2電磁界領域25において誘電特性が異なる箇所が存在する場合には、当該箇所において反射パルス波が生じる。打設されたコンクリートC1と空気との間では、誘電特性に大きな差異がある。打設領域3に配置されたセンサーケーブル20にパルス波が印加されると、コンクリートC1と空気との境界である打設面CS1の近傍を通過する際に反射パルス波が生じる。
【0025】
[計測部]
図3に示すように、計測部40は、印加部41と、検出部42とを備える。印加部41は、センサーケーブル20の上端20Uにパルス波を発生させる電圧を接続ケーブル30に印加する。検出部42は、センサーケーブル20の上端20Uから下端20Lまでの間で反射された反射パルス波の強度を検出する。
【0026】
印加部41は、切換部31によって、第1センサーケーブル20Aと第2センサーケーブル20Bとに対して各別にパルス波を印加する。印加部41が第1接続ケーブル30Aを介して第1センサーケーブル20Aにパルス波を印加するとき、検出部42は、第1センサーケーブル20Aで生じた反射パルス波の強度を時間軸で検出する。印加部41が第2接続ケーブル30Bを介して第2センサーケーブル20Bにパルス波を印加するとき、検出部42は、第2センサーケーブル20Bで生じた反射パルス波の強度を時間軸で検出する。
【0027】
[制御端末]
図3に示すように、制御端末50は、制御部51と、記憶部52と、操作部53と、表示部54と、通信部55とを備える。
【0028】
制御部51は、例えば、制御端末50が備える各部の動作を制御する。さらに、制御部51は、切換部31のスイッチングや、計測部40の印加部41及び検出部42の動作を制御する。制御部51は、例えば、CPUやMPU等、ソフトウェアによって各種の処理を実行するプロセッサを含む。
【0029】
記憶部52は、一時メモリと、不揮発性メモリとを備える。一時メモリは、制御端末50が処理するデータを一時的に記憶する。一時メモリは、一例として、RAMである。不揮発性メモリは、例えばフラッシュメモリ、HDD、またはSSDである。
【0030】
不揮発性メモリには、例えば、トンネル1の断面形状についてのデータであるトンネル断面情報が記憶されている。不揮発性メモリには、打設高さ計測プログラムが記憶されている。制御部51は、打設高さ計測プログラムを実行することで、切換部31や計測部40の動作を制御する。
【0031】
制御部51は、打設高さ計測プログラムを実行することで、演算部51Aとして機能する。演算部51Aは、計測部40が検出した反射パルス波の強度に基づいてTDR波形を取得するとともに、TDR波形に基づいて打設高さH1を計測する。
【0032】
演算部51Aは、打設面CS1における空気とコンクリートC1との間の誘電特性の差異によるTDR波形のなかの変化に基づいて打設高さH1を計測する。言い換えれば、演算部51Aは、TDR波形において、打設面CS1における空気とコンクリートC1との間の誘電特性の差異による反射パルス波の強度の変化に基づいて打設高さH1を計測する。なお、TDR波形において、反射パルス波の強度は、入射パルス波の強度に対する反射パルス波の強度の比である反射係数ρに換算されてもよい。
【0033】
操作部53は、キーボードやポインティングデバイス等、作業者が制御端末50を操作するための入力デバイスである。表示部54は、各種情報を表示するディスプレイである。制御端末50は、一例として、操作部53及び表示部54が一体となったタッチパネルを備えてもよい。通信部55は、有線または無線通信を介して切換部31や計測部40との通信を担う。
【0034】
[TDR波形]
図4に示すように、グラフ100の波形101は、演算部51Aが取得するTDR波形の一例である。グラフ100の波形101は、打設領域3にコンクリートC1を打設しながら取得されるコンクリートC1の打設時のTDR波形である。グラフ100の縦軸は、入射したパルス波の振幅に対する反射パルス波の振幅の比である反射係数ρを表す。グラフ100の横軸は、計測部40からの距離D、すなわち、接続ケーブル30及びセンサーケーブル20内の位置を表す。したがって、波形101では、計測部40が検出した反射パルス波の強度を表す反射係数ρが、接続ケーブル30及びセンサーケーブル20内の位置に対応付けられている。
【0035】
なお、横軸の計測部40からの距離Dは、パルス波の伝播時間と、センサーケーブル20及び接続ケーブル30の各々におけるパルス波の伝播速度とに基づいて算出される。制御端末50には、センサーケーブル20におけるパルス波の伝播速度と、接続ケーブル30におけるパルス波の伝播速度とが予め設定されている。例えば、センサーケーブル20におけるパルス波の伝播速度及び接続ケーブル30におけるパルス波の伝播速度は、記憶部52に記憶されている。パルス波の伝播時間は、計測部40によって取得される。
【0036】
波形101における点P0から点P1までの部分は、接続ケーブル30内の反射係数ρを表す。点P0は、接続ケーブル30と切換部31との接続部分に対応する。点P1は、接続ケーブル30とセンサーケーブル20の上端20Uとの接続部分に対応する。計測部40から接続ケーブル30に印加されたパルス波は、接続ケーブル30に対応する点P0から点P1の間において、反射パルス波をほとんど生じさせずにセンサーケーブル20の上端20Uに向かって伝播する。
【0037】
波形101における点P1から点P3までの部分は、センサーケーブル20内の反射係数ρを表す。波形101における点P1と点P3との間の点P2は、センサーケーブル20において、コンクリートC1の打設面CS1と同じ高さに位置する部分である。点P3は、センサーケーブル20の先端である下端20Lに対応する。
【0038】
波形101における点P1から点P2までの部分は、センサーケーブル20において、コンクリートC1の打設面CS1の上方に位置する部分の反射係数ρを表す。点P1から点P2までの間において、センサーケーブル20の電磁界領域には、空気が存在している。接続ケーブル30を伝播するパルス波がセンサーケーブル20の上端20U(点P1)に達すると、センサーケーブル20と接続ケーブル30との誘電特性の違いにより反射係数ρが増加する。波形101は、点P1の近傍で急峻な立ち上がりを示した後、点P2に近づくにつれて緩やかに反射係数ρが増加していく。
【0039】
波形101における点P2から点P3までの部分は、センサーケーブル20において、コンクリートC1の打設面CS1の下方に位置する部分の反射係数ρを表す。点P2から点P3までの間において、センサーケーブル20の電磁界領域には、コンクリートC1が存在している。センサーケーブル20を伝播するパルス波がコンクリートC1の打設面CS1(点P2)に達すると、空気とコンクリートC1との誘電特性の差異による特性インピーダンスの変化によって反射係数ρが減少する。すなわち、点P2は、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達した際に、打設面CS1における空気とコンクリートC1との間の誘電特性の差異によって、TDR波形の縦軸の値(反射係数ρ)が変化する変化点である。
【0040】
波形101は、点P2の近傍で急峻な立ち下がりを示した後、略一定の反射係数ρを維持したまま点P3に達する。そして、センサーケーブル20の下端20Lが開放端となっていることから、パルス波が下端20Lに達すると反射パルス波が生じるため、点P3以降では反射係数ρが増加する。
【0041】
以上より、波形101において、センサーケーブル20のなかで反射係数ρが減少した点P2における距離Dの値を特定することで、打設領域3内の打設面CS1の位置、すなわち、コンクリートC1の打設高さH1を算出できる。例えば、演算部51Aは、センサーケーブル20の全長とトンネル断面情報とを対応させたうえで、センサーケーブル20において点P2と対応する位置を特定することで、コンクリートC1の打設高さH1を算出する。
【0042】
[下降変曲点の検出]
波形101の点P2は、TDR波形としての波形101の下降変曲点に相当する。詳細には、波形101の点P1から点P2までの部分は、上に凸の形状を有する。波形101の点P2から点P3までの部分は、下に凸の形状を有する。言い換えれば、波形101は、点P2において、上に凸の形状から下に凸の形状に切り替わる。演算部51Aは、波形101の下降変曲点を検出することで、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達した際の距離Dの値を特定することができる。
【0043】
図5に示すグラフ200の波形201は、グラフ100の波形101を距離Dで微分した微分波形である。波形101の点P2において反射係数ρが減少すると、波形201では、反射係数ρを微分した縦軸の値が最小値を示す。言い換えれば、波形201において、反射係数ρを微分した値が最小値を示す点P4における距離Dの値が、波形101の点P2における距離Dの値に対応する。
【0044】
波形101を微分した波形201において、反射係数ρを微分した縦軸の値が最小値を示す点P4を検出することで、グラフ100の波形101の下降変曲点を検出できる。そして、下降変曲点における距離Dの値に基づいて、コンクリートC1の打設高さH1を算出できる。
【0045】
[コンクリートの打設高さの測定方法]
以下、計測システム10を用いたコンクリートC1の打設高さH1の測定方法を説明する。
【0046】
まず、打設領域3において、上方から下方に向けてセンサーケーブル20を配置する。詳細には、第1接続ケーブル30Aが接続された第1センサーケーブル20Aを第1打設領域3Aの上方から下方に向けて配置する。そして、第2接続ケーブル30Bが接続された第2センサーケーブル20Bを第2打設領域3Bの上方から下方に向けて配置する。
【0047】
センサーケーブル20は、接続ケーブル30に接続される上端20Uが天端1Tの近傍に位置するように、トンネル1の内周面1Sに取り付けられる。接続ケーブル30は、天端1Tの近傍からトンネル1のトンネル軸方向に沿って打設領域3の外側に導出されて打設領域3の外側に位置する切換部31に接続される。なお、打設領域3において、トンネル1の内周面1Sは、樹脂製の被覆シートによって覆われてもよい。この場合、センサーケーブル20は、内周面1Sを覆う被覆シートに対して取り付けられる。
【0048】
次に、打設領域3にコンクリートC1を打設しながら、計測システム10を用いて打設高さH1の計測を行う。詳細には、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方において、下方に位置する圧入口2Aから順にコンクリートC1を打設する。例えば、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bには、同時にコンクリートC1が打設される。制御部51は、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの各々における打設高さH1の計測を行う。
【0049】
制御部51は、切換部31及び印加部41を制御することで、第1センサーケーブル20A及び第2センサーケーブル20Bの何れか一方にパルス波を印加する。演算部51Aは、検出部42が検出した反射パルス波の強度に基づいてTDR波形を取得する。演算部51Aは、TDR波形の取得と並行して、TDR波形における下降変曲点を検出することで、下降変曲点の距離Dの値に基づいて打設高さH1を計測する。制御部51は、計測した打設高さH1を表示部54に即時に表示する。
【0050】
なお、制御部51は、打設領域3へのコンクリートC1の打設開始から、打設領域3の全体にコンクリートC1が打設されるまで、打設高さH1の計測を継続して行う。制御部51は、打設高さH1の計測結果が更新される度に、表示部54に表示する打設高さH1の計測結果を更新する。
【0051】
制御部51は、切換部31を制御することで、第1打設領域3Aの打設高さH1の計測と、第2打設領域3Bの打設高さH1の計測とを交互に行う。言い換えれば、制御部51は、切換部31を制御することで、第1打設領域3Aの打設高さH1を計測する状態と、第2打設領域3Bの打設高さH1を計測する状態と、を所定の時間ごとに切り替える。これにより、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方にコンクリートC1を打設しながら、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方の打設高さH1を計測できる。
【0052】
例えば、まず、制御部51は、切換部31を制御することで、第1センサーケーブル20Aにパルス波を印加して取得された第1TDR波形に基づいて第1打設領域3Aの打設高さH1を計測する。次に、制御部51は、第2センサーケーブル20Bにパルス波を印加して取得された第2TDR波形に基づいて第2打設領域3Bの打設高さH1を計測する。このような処理を繰り返すことにより、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方の打設高さH1を1つの計測部40を用いて計測できる。
【0053】
図6に示すように、トンネル1の覆工は、トンネル1がトンネル軸方向に所定の長さで区切られた打設区間ごとに行われる。
図6では、打設領域3へのコンクリートC1の打設が完了した第1打設区間S1と、打設領域3にコンクリートC1を打設している状態の第2打設区間S2とを図示している。なお、
図6では、トンネル1のトンネル軸方向の構成として、打設領域3内のコンクリートC1、センサーケーブル20、及び、接続ケーブル30のトンネル軸方向の位置を模式的に表している。各打設区間において、センサーケーブル20は、打設領域3におけるトンネル軸方向の中央に配置される。
【0054】
打設領域3へのコンクリートC1の打設が完了した第1打設区間S1では、コンクリートC1の内部にセンサーケーブル20及び接続ケーブル30が埋められている。また、接続ケーブル30のなかで打設領域3から外部に導出された部分は、コンクリートC1の打設が完了した後に切断される。したがって、計測システム10を用いた計測方法では、打設区間ごとに新たなセンサーケーブル20及び接続ケーブル30が用いられる。
【0055】
[表示部]
図7には、コンクリートC1の打設中において、表示部54に表示される画像の一例を示す。表示部54に表示される画像は、例えば、計測時間表示領域54Aと、打設高さ表示領域54Bと、トンネル断面表示領域54Cとを備える。
【0056】
計測時間表示領域54Aには、打設高さH1の計測が行われた時刻が表示される。打設高さ表示領域54Bには、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの打設高さH1が各別に表示される。トンネル断面表示領域54Cには、トンネル断面情報に基づいたトンネル1の断面形状が表示される。トンネル断面表示領域54Cには、トンネル1の断面形状に加えて、トンネル1の断面内での打設面CS1の位置を示す打設面表示部54Dが表示される。なお、打設高さH1の計測結果が更新されると、表示部54に表示される画像も更新される。したがって、表示部54には、打設高さH1の計測結果がリアルタイムで表示される。
【0057】
[実施形態の作用]
打設領域3において、センサーケーブル20を上方から下方に向けて配置することで、印加部41からのパルス波がセンサーケーブル20の上方から下方に向けて入力される。したがって、センサーケーブル20において、パルス波の損失係数が小さい空気側からパルス波の損失係数が大きいコンクリートC1側に向かってパルス波の減衰が少ない状態で伝播する。
【0058】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)打設領域3において、上方から下方に向けて配置されたセンサーケーブル20を用いてTDR波形を取得することで、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達するまでのパルス波の減衰を低減することができる。仮に、センサーケーブル20の下端20Lに接続ケーブル30を接続するとともに、パルス波をセンサーケーブル20の下方から上方に向けて入力した場合、打設されたコンクリートC1側からパルス波が伝播する。この場合、空気と比較してコンクリートC1におけるパルス波の損失係数が大きいため、パルス波の強度が低下することによって、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達した際のTDR波形の変化が小さくなる。したがって、上記実施形態によれば、TDR波形において、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達した際のTDR波形の変化を容易に捉えることができる。
【0059】
(2)トンネル1の天端1Tから下方に向けて、トンネル1の内周面1Sに沿ってセンサーケーブル20を取り付けることで、天端1Tの近傍においても、トンネル1の内周面1S側までコンクリートC1が充填されたことを確認できる。
【0060】
(3)TDR波形における下降変曲点の検出によって、パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達した際のTDR波形の変化をより正確に捉えることができる。また、TDR波形における下降変曲点の検出をTDR波形の取得と並行して行うことで、リアルタイムでの打設高さH1の表示が可能となる。
【0061】
(4)第1打設領域3Aに第1センサーケーブル20Aを配置するとともに、第2打設領域3Bに第2センサーケーブル20Bを配置することで、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方において、コンクリートC1の打設高さH1を計測できる。
【0062】
(5)切換部31を設けることで、1つの計測部40を用いて複数のセンサーケーブル20のTDR波形を取得することができる。これにより、第1打設領域3Aと第2打設領域3Bとで同時にコンクリートC1の打設を行う場合でも、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの各々におけるコンクリートC1の打設高さH1を、1つの計測部40によって計測できる。
【0063】
(6)センサーケーブル20と計測部40との間に接続ケーブル30を設けることで、計測部40から印加されたパルス波が打設領域3に達するまでに、パルス波の強度が減衰することを抑制できる。
【0064】
(7)センサーケーブル20としてフィーダーケーブルを用いることで、コンクリートC1の打設面CS1における空気とコンクリートC1との誘電特性の差異を、フィーダーケーブルの周囲に形成される電磁界領域によって検出することができる。
【0065】
[変更例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
・センサーケーブル20は、フィーダーケーブルに限定されず、コンクリートC1の打設面CS1における先行充填物質(空気)とコンクリートC1との誘電特性の差異を検出できるケーブルであればよい。
【0067】
・第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方に対して同時にコンクリートC1を打設するのではなく、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの一方にコンクリートC1を打設した後、他方にコンクリートC1を打設してもよい。この場合、第1打設領域3A及び第2打設領域3BのうちコンクリートC1が打設される方の打設領域3に配置されたセンサーケーブル20に接続された接続ケーブル30を、切換部31を介さず計測部40に直接繋いでもよい。すなわち、切換部31を省略してもよい。
【0068】
・第1接続ケーブル30A及び第2接続ケーブル30Bを、切換部31を介して計測部40に接続する構成に代えて、第1接続ケーブル30Aと第2接続ケーブル30Bとを、各別の計測部40に接続してもよい。この場合、センサーケーブル20の本数と同数の計測部40が用いられる。この場合、第1打設領域3Aの打設高さH1の計測と、第2打設領域3Bの打設高さH1の計測とを交互に行う必要が無くなる。すなわち、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの各々において、打設開始から打設完了までの工程の全体で打設高さH1の計測を行うことができる。
【0069】
・第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの両方にセンサーケーブル20を配置する場合を例示したが、第1打設領域3A及び第2打設領域3Bのうち一方にのみセンサーケーブル20を配置してもよい。
【0070】
・TDR波形の下降変曲点の値に基づいた打設高さH1の計測方法を例示したが、これに限定されず、TDR波形において、センサーケーブル20に対応する部分のなかで反射係数ρが減少する距離Dの値を特定できればよい。
【0071】
・パルス波がコンクリートC1の打設面CS1に達した際のTDR波形の変化をより正確に捉えるために、TDR波形に補正を行ってもよい。
図8、
図9を参照してTDR波形に補正を行う例を示す。
【0072】
図8に示すように、グラフ300の波形301は、打設領域3にコンクリートC1を打設する前に取得されるTDR波形である。グラフ300の縦軸は、打設領域3にコンクリートC1を打設する前の状態の反射係数ρである初期反射係数ρ0を表す。グラフ300の横軸は、計測部40からの距離Dを表す。波形301では、点P1から点P3までの間において、波形101における点P2のような反射係数ρの減少は見られない。
【0073】
図9に示すように、グラフ400の波形401は、コンクリートC1の打設時のTDR波形である波形101と、コンクリートC1を打設する前のTDR波形である波形301との差分を表す差分波形である。グラフ400の縦軸は、波形101における反射係数ρから波形301における初期反射係数ρ0を減算した値(ρ-ρ0)表す。グラフ400の横軸は、計測部40からの距離Dを表す。波形401中に示す点P5は、コンクリートC1の打設面CS1に相当する距離Dの値を有する。
【0074】
波形401では、点P5に達するまで反射係数ρと初期反射係数ρ0とが等しいため、ρ-ρ0の値は0となる。波形401では、点P5に達すると、波形101における点P2から点P3までの間に生じる反射係数ρの減少により、ρ-ρ0の値が減少する。したがって、波形401では、点P5に達すると縦軸が負の値をとる。このように、コンクリートC1の打設時のTDR波形を、コンクリートC1を打設する前のTDR波形によって補正することで、波形101における点P2から点P3までの間に生じる反射係数ρの減少が波形401中に明瞭に表れる。したがって、波形101のなかで反射係数ρが減少した点P2における距離Dの値を、より正確に検出することができる。
【0075】
・トンネル1の内周面1Sに沿ってセンサーケーブル20を配置する場合を例示したが、これに代えて、型枠2の頂部から下方に向けて型枠2の外周面に沿ってセンサーケーブル20を取り付けてもよい。この場合、センサーケーブル20の電磁界領域内に型枠2の金属部分が入り込まないように、型枠2の一部を樹脂製としてもよいし、型枠2とセンサーケーブル20との間に他の部材を介在させてもよい。この場合、型枠2を脱枠する際に、型枠2とともにセンサーケーブル20もコンクリートC1から外すことができるため、センサーケーブル20の再利用が可能となる。また、トンネル1の内周面1SとコンクリートC1との間にセンサーケーブル20が配置されないため、トンネル1の内周面1Sに対するコンクリートC1の密着性を高めることができる。
【0076】
・計測時の作業性や計測部40及び制御端末50等の機器の設置に支障が無ければ、接続ケーブル30を設けずにセンサーケーブル20と計測部40(または切換部31)とを直接繋いでもよい。
【0077】
・第1打設領域3A及び第2打設領域3Bの各々において、トンネル軸方向に複数のセンサーケーブル20を配置してもよい。この場合、センサーケーブル20の本数に応じて複数の計測部40を使用してもよいし、切換部31を介して複数のセンサーケーブル20を計測部40に接続してもよい。
【0078】
・打設領域3の高さ方向において、製造ロットが異なるコンクリートC1を打設してもよい。この場合、制御部51は、計測した打設高さH1に基づいて、打設領域3の高さ方向の位置と、使用したコンクリートC1の製造ロットとを対応付けて記憶させてもよい。これにより、例えば、打設されたコンクリートC1に異常が認められた場合に、異常が認められたコンクリートC1の製造ロットを特定することができる。また、例えば、異常が認められたコンクリートC1と同一の製造ロットのコンクリートC1が打設された箇所を、表示部54において色等で区別して表示することでより容易に特定することができる。
【0079】
・
図1では、打設高さH1が打設領域3の最下部から打設面CS1までの垂直方向の距離である場合を例示した。これに代えて、打設領域3の最下部から打設面CS1までのトンネル1の周方向の長さL1(
図1参照)を打設高さとしてもよい。例えば、トンネル1の周方向において、打設領域3の最下部から打設面CS1までのトンネル1の内周面1Sに沿う長さを打設高さとしてもよい。例えば、トンネル1の周方向において、打設領域3の最下部から打設面CS1までの型枠2の外周面に沿う長さを打設高さとしてもよい。
【0080】
[付記]
上記実施形態及びその変更例によれば、さらに以下の技術的思想が導き出される。
(付記1)
トンネルの内周面と型枠との間の打設領域において、前記トンネルの天端から下方に向けて前記トンネルの内周面に沿ってセンサーケーブルを配置し、
前記打設領域にコンクリートを打設しながら前記センサーケーブルを用いてTDR波形を取得し、
前記TDR波形において、前記コンクリートの打設面における空気と前記コンクリートとの間の誘電特性の差異による変化に基づいて、前記コンクリートの打設高さを計測する
ことを特徴とするコンクリートの打設高さの計測方法。
【0081】
上記付記1によれば、トンネルの天端からトンネルの内周面に沿ってセンサーケーブルを配置することで、天端近傍においてもトンネルの内周面側までコンクリートが充填されたことを確認できる。
【0082】
(付記2)
トンネルの内周面と型枠との間の打設領域において、前記型枠の頂部から下方に向けて前記型枠に沿ってセンサーケーブルを配置し、
前記打設領域にコンクリートを打設しながら前記センサーケーブルを用いてTDR波形を取得し、
前記TDR波形において、前記コンクリートの打設面における空気と前記コンクリートとの間の誘電特性の差異による変化に基づいて、前記コンクリートの打設高さを計測する
ことを特徴とするコンクリートの打設高さの計測方法。
【0083】
上記付記2によれば、型枠の頂部から型枠に沿ってセンサーケーブルを配置することで、トンネルの内周面とコンクリートとの間にセンサーケーブルが配置されないため、トンネルの内周面に対するコンクリートの密着性を高めることができる。
【0084】
(付記3)
トンネルの内周面と型枠との間の打設領域において、上方から下方に向けてセンサーケーブルを配置し、
前記打設領域にコンクリートを打設しながら前記センサーケーブルを用いてTDR波形を取得し、
前記TDR波形において、前記コンクリートの打設面における空気と前記コンクリートとの間の誘電特性の差異による変化に基づいて、前記コンクリートの打設高さを計測する計測方法であって、
前記センサーケーブルは、一定の間隔で離間した状態で平行に配置される一対の芯線と、前記一対の芯線を覆う被覆部と、を備えるフィーダーケーブルである
ことを特徴とするコンクリートの打設高さの計測方法。
【0085】
上記付記3によれば、センサーケーブルとしてフィーダーケーブルを用いることで、コンクリートの打設面における空気とコンクリートとの誘電特性の差異を、フィーダーケーブルの周囲に形成される電磁界領域によって検出することができる。
【符号の説明】
【0086】
ρ…反射係数、ρ0…初期反射係数、C1…コンクリート、CS1…打設面、D…距離、H1…打設高さ、L1…長さ、P0~P5…点、S1…第1打設区間、S2…第2打設区間、W1…間隔、1…トンネル、1S…内周面、1T…天端、2…型枠、2A…圧入口、3…打設領域、3A…第1打設領域、3B…第2打設領域、10…計測システム、20…センサーケーブル、20A…第1センサーケーブル、20B…第2センサーケーブル、20L…下端、20U…上端、21…芯線、22…被覆部、23…連結部、24…第1電磁界領域、25…第2電磁界領域、30…接続ケーブル、30A…第1接続ケーブル、30B…第2接続ケーブル、31…切換部、40…計測部、41…印加部、42…検出部、50…制御端末、51…制御部、51A…演算部、52…記憶部、53…操作部、54…表示部、54A…計測時間表示領域、54B…打設高さ表示領域、54C…トンネル断面表示領域、54D…打設面表示部、55…通信部、100,200,300,400…グラフ、101,201,301,401…波形。