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  • 特開-レーザ照射システム 図1
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  • 特開-レーザ照射システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172783
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】レーザ照射システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241205BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090747
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】志村 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】召田 智也
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050GA02
(57)【要約】
【課題】本開示は、電極シートの製造における省エネルギー化に寄与できるレーザ照射システムを提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、電極シートの製造に用いられるレーザ照射システムであって、レーザ光を照射するレーザヘッドおよび上記レーザヘッドに取り付けられたレーザカバーを有する、レーザ装置と、上記レーザ装置と第1流路により接続された冷却水循環装置と、上記レーザ装置と第2流路により接続されたヒートポンプと、を備え、上記レーザカバーの部材が、銀、銅およびアルミのいずれかであり、上記第1流路によって、冷却水が、上記冷却水循環装置から上記レーザ装置に供給され、上記第2流路によって、上記レーザ装置の発熱により加熱された上記冷却水が、上記レーザ装置から上記ヒートポンプに供給される、レーザ照射システムを提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極シートの製造に用いられるレーザ照射システムであって、
レーザ光を照射するレーザヘッドおよび前記レーザヘッドに取り付けられたレーザカバーを有する、レーザ装置と、
前記レーザ装置と第1流路により接続された冷却水循環装置と、
前記レーザ装置と第2流路により接続されたヒートポンプと、を備え、
前記レーザカバーの部材が、銀、銅およびアルミのいずれかであり、
前記第1流路によって、冷却水が、前記冷却水循環装置から前記レーザ装置に供給され、
前記第2流路によって、前記レーザ装置の発熱により加熱された前記冷却水が、前記レーザ装置から前記ヒートポンプに供給される、レーザ照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極シートの製造に用いられるレーザ照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池の製造に用いられる電極シートの製造方法に関する技術として、搬送される集電体シートに対し、電極材料を塗布して塗工部を形成し、塗工部を乾燥して電極層を得る方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、搬送される長尺金属箔に対して活物質合剤を塗布し、活物質合剤の塗工部を形成する塗布工程と、塗布工程よりも前に実行され、長尺金属箔の短手方向に沿った合剤塗布場所の両端部よりも長尺金属箔の搬送方向上流側に位置する上記長尺金属箔の照射位置に対してレーザを照射する第1照射工程と、第1照射工程の後に実行され、塗布工程によって形成された塗工部において短手方向の両縁部にレーザを照射する第2照射工程と、第2照射工程よりも後に実行され、塗工部を温風などで乾燥する乾燥工程と、を備える電極の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-029256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極シートの製造においては、製造コストの観点から省エネルギー化が求められている。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電極シートの製造における省エネルギー化に寄与できるレーザ照射システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
電極シートの製造に用いられるレーザ照射システムであって、レーザ光を照射するレーザヘッドおよび上記レーザヘッドに取り付けられたレーザカバーを有する、レーザ装置と、上記レーザ装置と第1流路により接続された冷却水循環装置と、上記レーザ装置と第2流路により接続されたヒートポンプと、を備え、上記レーザカバーの部材が、銀、銅およびアルミのいずれかであり、上記第1流路によって、冷却水が、上記冷却水循環装置から上記レーザ装置に供給され、上記第2流路によって、上記レーザ装置の発熱により加熱された上記冷却水が、上記レーザ装置から上記ヒートポンプに供給される、レーザ照射システム。
【発明の効果】
【0008】
本開示においては、電極シートの製造における省エネルギー化に寄与できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示におけるレーザ照射システムの構成を例示する概略図である。
図2】本開示におけるレーザカバーを例示する概略平面図である。
図3】本開示における電極シートを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示におけるレーザ照射システムについて、詳細に説明する。
【0011】
本開示におけるレーザ照射システムは、電極シートの製造に用いられる。電極シートについては後述する。図1は、本開示におけるレーザ照射システムの構成を例示する概略図である。図1に示されるレーザ照射システム100は、レーザ光を照射するレーザヘッド11およびレーザヘッド11に取り付けられたレーザカバー12を有する、レーザ装置10と、レーザ装置10と第1流路P1により接続された冷却水循環装置20と、レーザ装置10と第2流路P2により接続されたヒートポンプ30と、を備えている。また、レーザカバー12の部材が、銀、銅およびアルミのいずれかである。さらに、レーザ照射システム100においては、第1流路P1によって、冷却水が、冷却水循環装置20からレーザ装置10に供給され、第2流路P2によって、レーザ装置10の発熱により加熱された冷却水が、レーザ装置10からヒートポンプ30に供給される。
【0012】
本開示によれば、レーザ装置の発熱により加熱された冷却水(暖水)を、ヒートポンプに供給するため、電極シートの製造の省エネルギー化に寄与することができる。
【0013】
カーボンニュートラルの観点から、排出されるCOを削減するため、電極層の乾燥にレーザ光を用いることが検討される。また、上述のように、金属箔(集電シート)上に塗布された活物質を含有する合材層を、レーザおよび温風により乾燥させることが想定される。この点、レーザ照射および温風の送風それぞれにエネルギーが通常必要とされる。これに対して、本開示におけるレーザ照射システムでは、レーザ装置の発熱を利用してヒートポンプから温風を発生させることができる。そのため、乾燥工程の省エネルギー化を図ることができ、効率的に電極シートを製造することができる。
【0014】
1.レーザ装置
本開示におけるレーザ装置は、レーザ光を照射するレーザヘッドおよびレーザヘッドに取り付けられたレーザカバーを有する。
【0015】
レーザヘッドは、通常、所定の曲率を有する光学レンズを内蔵している。レーザヘッドは、レーザ発振器から発振されて、光学レンズを介すことで、レーザ光を照射する。
【0016】
レーザカバーはレーザヘッドに取り付けられる部材である。具体的には、レーザヘッドのレーザ照射側(レーザ照射口)に取り付けられる部材である。
【0017】
図2に示すように、レーザカバー12は、通常、枠部12aおよび開口部12bを有している。開口部12bは、枠部12aの内縁で囲われた領域と捉えることができる。通常、厚さ方向において開口部12bは枠部12aを貫通している。レーザヘッドから照射されたレーザ光は開口部を通過して被照射体に照射される。一方、枠部はレーザを透過しない部分であり、レーザヘッドから照射されたレーザ光が枠部に吸収されることでレーザカバー(枠部)が発熱する。
【0018】
本開示におけるレーザカバーの部材は銀、銅およびアルミのいずれかである。銀、銅およびアルミは熱伝導率が高く、照射されるレーザ光によりレーザカバーが発熱し、後述する冷却水を効率的に加熱することができるからである。また、レーザカバーの表面は黒色にコーティングされていることが好ましい。レーザヘッドへのレーザ光の反射を抑制でき、かつ、レーザカバーをより発熱させやすくできるからである。なお、「レーザカバーの部材」および「レーザカバーの表面」とは、上記枠部の部材および上記枠部の表面を意味する。
【0019】
ここで、本開示におけるレーザ装置においては、開口部のサイズの異なるレーザカバーを使用することで、レーザヘッドから照射されるレーザ光の照射範囲を調整することができる。一般的に、製造される電極シートのサイズに応じてレーザ照射範囲(焦点距離)は調整される。レーザヘッドから被照射体への距離を調整して焦点距離を変更する場合、レーザ装置などの設備自体を調整する必要がある。これに対して、レーザカバーを用いることで、開口部のサイズが異なるレーザカバーに取り換えるだけで照射範囲を変更することができ、より簡便な調整ができるという利点がある。
【0020】
レーザ装置は、レーザヘッドおよびレーザカバーのセットを、1つ有していてもよく、複数有していてもよい。
【0021】
レーザ装置が照射するレーザ光の照射条件は、特に限定されない。レーザ光のエネルギー密度は、例えば、0.1W/cm以上、2.0W/cm以下である。
【0022】
2.冷却水循環装置
本開示における冷却水循環装置は、レーザ装置と第1流路により接続されている。また、図1に示すように、通常、冷却水循環装置20は第3流路P3によりタンク40と接続され、第3流路P3を介して、タンク40に貯蔵された冷却水が、冷却水循環装置20に供給される。
【0023】
冷却水循環装置は、特に限定されず、従来公知の装置とすることができる。
【0024】
第1流路は、冷却水循環装置からレーザ装置に向けて冷却水が供給される流路である。第1流路は、冷却水を、レーザ装置のレーザヘッドに供給してもよく、レーザカバーに供給してもよく、レーザヘッドおよびレーザカバーの両方に供給してもよい。なお、第1流路がレーザ装置と接していれば、「冷却水がレーザ装置に供給された」と捉えることができる。第1流路はレーザ装置の内部を貫通するように設けられていてもよく、第1流路がレーザ装置の外面を這うように設けられていてもよい。
【0025】
第1流路の部材は特に限定されず、配管に用いられる一般的な部材とすることができる。
【0026】
3.ヒートポンプ
本開示におけるヒートポンプは、レーザ装置と第2流路により接続されている。ヒートポンプは、暖水レーザ装置の発熱により加熱された冷却水(暖水)を利用して温風を発生させる装置である。言い換えると、ヒートポンプは、暖水の熱エネルギーを利用して、温風を発生させる装置である。
【0027】
ヒートポンプの構造は、上述した暖水を利用すること以外は、従来公知のヒートポンプと同様とすることができる。
【0028】
第2流路は上述した第1流路と連通した流路であってもよい。また、第2流路の部材は特に限定されず、配管に用いられる一般的な部材とすることができる。
【0029】
図1に示すように、ヒートポンプ30に供給され、温風の発生に利用された暖水は、第3流路P3によりタンク40へ供給される。
【0030】
4.その他
図1に示すように、本開示におけるレーザ照射システム100は、冷却水循環装置20に供給する冷却水、および、ヒートポンプ30から供給された暖水(加熱された上記冷却水)を貯留するタンク40を有していてもよい。タンク40は、第3流路P3により冷却水循環装置20およびヒートポンプ30と接続されている。
【0031】
5.レーザ照射システム
本開示におけるレーザ照射システムは、電極シートの製造に用いられる。図3は、本開示における電極シートの一例を示す概略断面図である。図3に示すように、電極シート200は、集電シート201と、集電シート201の一方の面に形成された電極層202と、を有する。図3においては、電極層は間欠的に形成されている。なお、図示しないが、集電シートの両面に電極層が形成されていてもよい。また、電極シートは、電極層毎に裁断されていてもよい。
【0032】
このような電極シートは、電池の製造に用いられ、正極側の電極シートであってもよく、負極側の電極シートであってもよい。つまり、集電シートおよび電極層は、正極集電体および正極活物質層であってもよく、負極集電体および負極活物質層であってもよい。本開示における電極シートが正極側の電極シートの場合、負極側の電極シートおよびセパレータと組み合わされて、電極体を形成する。同様に、本開示における電極シートが負極側の電極シートの場合、正極側の電極シートおよびセパレータと組み合わされて、電極体を形成する。
【0033】
電極シートが用いられる電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0034】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0035】
11 …レーザヘッド
12 …レーザカバー
10 …レーザ装置
20 …冷却水循環装置
30 …ヒートポンプ
40 …タンク
100 …レーザ照射システム
P1 …第1流路
P2 …第2流路
P3 …第3流路
図1
図2
図3