(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172790
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蒸気加熱回転機
(51)【国際特許分類】
A47J 43/046 20060101AFI20241205BHJP
A47J 27/04 20060101ALI20241205BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A47J43/046
A47J27/04 B
A47J27/04 Z
A47J27/00 109L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090759
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】温 岩
【テーマコード(参考)】
4B053
4B055
【Fターム(参考)】
4B053AA01
4B053BA12
4B053BA14
4B053BA19
4B053BB02
4B053BC14
4B053BE03
4B053BE12
4B053BK54
4B053BK57
4B055AA22
4B055BA34
4B055CD15
4B055CD59
4B055DB03
4B055DB12
4B055GD02
(57)【要約】
【課題】家庭で調理物を攪拌しながら蒸気加熱できる装置を提供する。
【解決手段】原料が投入される容器と、
前記容器内で回転するブレードと、
前記ブレードを回転させるモータと、
水を貯留できる水タンクと、
前記水タンクから前記容器内まで連結される送水パイプと、
前記水タンクから前記送水パイプを通して水を送るポンプと、
前記送水パイプと前記容器を同時に加熱できるヒータと、
前記モータと、前記ポンプと前記ヒータを制御する制御器を有する蒸気加熱回転機は、原料を攪拌しながら蒸気加熱でき、代替肉である大豆ミートさえ家庭で作製することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料が投入される容器と、
前記容器内で回転するブレードと、
前記ブレードを回転させるモータと、
水を貯留できる水タンクと、
前記水タンクから前記容器内まで連結される送水パイプと、
前記水タンクから前記送水パイプを通して水を送るポンプと、
前記送水パイプと前記容器を同時に加熱できるヒータと、
前記モータと、前記ポンプと前記ヒータを制御する制御器を有する蒸気加熱回転機。
【請求項2】
前記水タンクには水位計が設けられている請求項1に記載された蒸気加熱回転機。
【請求項3】
前記制御器は前記ポンプの水量を変化させることができる請求項1に記載された蒸気加熱回転機。
【請求項4】
前記制御器は前記送水パイプから蒸気が送られている間は、前記ブレードを間欠回転させる請求項1に記載された蒸気加熱回転機。
【請求項5】
前記制御器は、前記ポンプを稼働させず前記ヒータを稼働させる請求項1に記載された蒸気加熱回転機。
【請求項6】
前記容器の側壁に付着した前記ブレードによる破砕物を剥がすコネ羽根を有する請求項1に記載された蒸気加熱回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気加熱しながら調理できる調理器に関するものである。特にこの蒸気加熱回転機を使うことで、大豆を原料として代替肉となりえる大豆ミートを作製することができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には鍋の内底部に装着して調理物を載置するための蒸し器用中底において、中底本体を貫通孔を有しないで、鍋の内側面との間に隙間ができない大きさの板状とし、中底本体の外周縁の一部に高温の乾燥蒸気が通過するための切欠き部を設けた蒸し器用中底が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された蒸し器用中底は、中底上に載置された調理物を蒸気で加熱することはできるものの、単に蒸気加熱するだけであり、調理物を攪拌しながら加熱できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、蒸気加熱しながらブレードで調理物を破断、粉砕、攪拌といった加工が可能な調理器(以後「蒸気加熱回転機」と呼ぶ。)を提供するものである。
【0006】
具体的に本発明の蒸気加熱回転機は、
原料が投入される容器と、
前記容器内で回転するブレードと、
前記ブレードを回転させるモータと、
水を貯留できる水タンクと、
前記水タンクから前記容器内まで連結される送水パイプと、
前記水タンクから前記送水パイプを通して水を送るポンプと、
前記送水パイプと前記容器を同時に加熱できるヒータと、
前記モータと、前記ポンプと前記ヒータを制御する制御器を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る蒸気加熱回転機は、水タンク中の水を加熱し、温水、熱湯若しくは高温蒸気として容器内の原料(調理物)に供給し、且つブレードで原料を破断、破砕、粉砕、攪拌、捏ねといった加工ができる。つまり原料を焦がすことなくペースト状にすることができる。例えば、大豆を茹で、蒸気加熱しながら加工できるので、穀物の加工に好適である。特に大豆を原料とする大豆ミートの作製には好適に利用できる。
【0008】
大豆ミートの作製では、お湯で乾燥大豆に吸水させ、蒸気で容器内の大豆を蒸す工程が必要となるが、本発明に係る蒸気加熱回転機は、容器を加熱する際のヒータと、蒸気を作るための加熱に用いるヒータを兼用している。したがって、容器の底の温度を保持しながら効果的に蒸すことができ、大豆ミートの水分調節も行うことができる。また、容器加熱と蒸気生成を1つのヒータで行うので、コンパクトな構成で蒸気加熱回転機を形成できる。
【0009】
本蒸気加熱回転機は、上記の構成において、水タンクには水位計が設けられている。したがって、原料の加工に必要な水の量を正確に計測することができ、水量不足や水量過多となることを防止することができる。したがって、本蒸気加熱回転機は、排水系の構成を省略するができ、装置全体の構成のコンパクト化に寄与する。
【0010】
また、本蒸気加熱回転機は、上記の構成において、ポンプの送水量を変化させることができる。この構成によって、お湯、熱湯および蒸気の生成に対してヒータの温度を調節する手間がなくなる。具体的には、容器に供給する水の温度を高くする場合は、送水量を減らし、容器に供給する水の温度を下げる場合は、送水量を増す。このような構成によってヒータ温度をPIDで制御する必要がなくなると共に、容器に供給する水の温度調整が容易になり、無駄に使用する水量も減少する。
【0011】
また、本蒸気加熱回転機は、上記の構成において、容器内に蒸気を供給している間は、ブレードを間欠回転させる。蒸気加熱する際は、蒸気が直接当たる部分と当たらない部分で温度差ができるが、ブレードを間欠回転させることで、原料全体に満遍なく蒸気を当てることができ、均一な加熱を実現することができる。また、蒸気が出ている間は容器の加熱もされるのでブレードの間欠運転は、原料の焦げ付き防止にも役立つ。
【0012】
また、本蒸気加熱回転機は、上記の構成において、送水を行わない状態でヒータに通電することができる。このように送水を行わずにヒータに通電することで、容器の加熱に用いることのできる熱量が増え、容器内により高い熱量を供給することができる。そのためスープ料理といった通常の加熱調理器としても利用できる。
【0013】
また、本蒸気加熱回転機は、上記の構成において、容器の内壁に付着したブレードによる破砕物を剥がすコネ羽根を有する。このコネ羽根によって、容器の内壁に付着した原料の破砕物を剥がして落下させ、より均一な攪拌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の蒸気加熱回転機の構成を示す図である。
【
図2】本発明の蒸気加熱回転機の1実施例の一部を示す図である。
【
図4】ヒータ、熱伝導体、送水パイプの構成を示す図である。
【
図5】蒸気加熱回転機のヒータのサブルーチンを示すフロー図である。
【
図6】蒸気加熱回転機のポンプのサブルーチンを示すフロー図である。
【
図7】蒸気加熱回転機のモータのサブルーチンを示すフロー図である。
【
図8】蒸気加熱回転機を使った大豆ミートを調理する処理フロー例を示す図である。
【
図9】蒸気加熱回転機を使ったスープなどの汁物を調理する処理フロー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「上」とは重力方向で上に向かう方向であり、「下」はその逆方向である。
【0016】
図1に本発明に係る蒸気加熱回転機1の構成を示す。また、
図2には、蒸気加熱回転機1の1実施例の一部断面を示す。また
図3は、
図2の下方からの斜視図を示し、
図4は、
図3の容器底面部分のヒータおよび水パイプの部分だけの斜視図を示す。
図1に示した構成が
図2~
図4では省略された部分もある。逆に
図2~4には
図1に開示されていない部分もある。以下主として
図1を参照しながら
図2~4も参照しつつ、蒸気加熱回転機1の構成を説明する。なお、蒸気加熱回転機1には
図1~
図4に図示されていない電源部があり、適宜必要な箇所に電力が供給される。
【0017】
蒸気加熱回転機1は、容器10、蓋体12、水タンク14、機構部16で構成される。機構部16には、ヒータ20、熱伝導体22、モータ24、ポンプ26、制御器28が含まれる。なお、
図2では機構部16の一部は省略されている。水タンク14からは送水パイプ30が蓋体12まで延設されている。なお、送水パイプ30は、蓋体12の脱着に伴って、途中で接続が切れるように構成されていてもよい。
【0018】
容器10の中には回転軸32が設置されている。回転軸32にはブレード34、およびコネ羽根36が取り付けられる。また、回転軸32は蓋体12中にも延設されており、蓋体12中に配置された攪拌羽根38も回転軸32に接続される。以下各要素について詳説する。
【0019】
容器10は、原料(調理物)が投入され加工される、底面10bと側壁10sを有する器である。上方は開口している。容器10の形状は特に限定されないが、側壁10sに沿って回転する回転体(コネ羽根36)があるので、断面円形が好ましい。なお、容器10上方と下方で断面の大きさが異なっていてもよい。底面10bは発熱させることができる。また、容器10は、洗浄の利便性から機構部16および蓋体12とは、着脱できる構成であるのが望ましい。
【0020】
容器10の中央には、回転軸32が設けられており、回転軸32にはブレード34が固定されている。ブレード34は、刃側と峰側を有する刀形状が望ましいが、両方とも刃であってもよい。回転軸32には下方と上方に貫通孔40dおよび貫通孔40u(以後両方の貫通孔をまとめて呼ぶ場合は「貫通孔40」と呼ぶ。)が形成されており、この貫通孔40からは蒸気若しくはお湯が吐出される。
図2では、回転軸32の下方に上下2箇所ずつ計4カ所の貫通孔40dがあり、ブレード34は貫通孔40dのさらに上下に配置されている。また、回転軸32の上方には貫通孔40uが設けられている。このように貫通孔40とブレード34は複数個あってもよい。
【0021】
図1を参照し、容器10の上部ではこの回転軸32にコネ羽根36が連結されている。コネ羽根36は容器10の側壁10sと接触して側壁10sに付着した破砕物を掻き取る(剥ぎ取る)ことで、投入した原料をできるだけ均一に加工する。
【0022】
容器10の底面10bは熱伝導性の高い材料(主として金属材料)で形成されている。容器10の底面10bの内底面10baは、平に形成されている一方、外底面10bbは中央から側壁10sに向かって傾斜した形状に形成されている。容器10の底面10bは、容器10の下に配置されているヒータ20からの熱で底面10bが加熱され温度が上がる。容器10の外底面10bbに設けられた傾斜はヒータ20との接触を確実にするためである。
【0023】
容器10の上部には蓋体12が配置されている。蓋体12は、中が空洞で高さ方向に一定の厚みを有し、中に具材を入れておくことができる。具材は原料の加工時に投入される添加物であり、塩、コショウ、醤油、油といった調味料だけでなく、香味野菜や果物、穀物、さらに肉類や魚類であってもよい。
【0024】
また蓋体12には具材を混合するための攪拌羽根38が設けられている。攪拌羽根38は、蓋体12の底面に近接(若しくは接触)し、蓋体12内にセットされた具材を攪拌し、また容器10に投入する。攪拌羽根38は蓋体12内部の回転軸32Lに固定されている。また、蓋体12の底面には具材を容器10内に投入する具材投入口12hが設けられている。具材投入口12hは具材投入口蓋12hLによって閉じられており、具材を投入する際に具材投入口蓋12hLが移動し、具材投入口12hが開く。なお、具材投入口蓋12hLは、モータ、磁石を利用した方法で開閉される。この開閉は後述する制御器28からの指示信号Ccによって行うことができる。
【0025】
蓋体12内の回転軸32Lはコネ羽根36が固定されている回転軸32と嵌合し、回転軸32が回転することで、コネ羽根36と攪拌羽根38は同期して回転する。一方、ブレード34とコネ羽根36および攪拌羽根38が連結している部分は、ワンウェイクラッチ42(
図2参照)で連結されている。すなわち、回転軸32が一方に回転する際には、ブレード34だけが回転し、コネ羽根36と攪拌羽根38には回転力が伝わらない。回転軸32が逆方向に回転する際にはブレード34、コネ羽根36および攪拌羽根38が回転することができる。このような構成にすることで、ブレード34とコネ羽根36および攪拌羽根38という3種類(実質的には2種類)の回転体を1つのモータ24で別々に回転させることができる。
【0026】
容器10の下側には機構部16が設けられる。機構部16には、モータ24、ヒータ20、ポンプ26、制御器28が含まれる。モータ24は回転軸32と嵌合する駆動軸24Dを有する。つまりモータ24の駆動軸24Dは回転軸32を回転させることができる。モータ24は駆動軸24Dを左右別々の回転方向に回転させることができる。また、モータ24は回転数も変化させることができる。なお、モータ24の回転方向および回転数を制御するための回路はモータ24として扱うことができる。モータ24は制御器28からの指示信号Cmによってその動きが制御される。
【0027】
ヒータ20は容器10の下方に配置される。容器10の底面10bに対して、モータ24の駆動軸24Dを中央に通した上で、できるだけ均一に熱を加えることができるように馬蹄形に形成されるのが望ましい。ヒータ20上部には熱伝導体22が配置されている。熱伝導体22は、熱伝導性の高い材料が用いられ、容器10の底面10bに接触し、容器10の底面10bに熱を伝える。熱伝導体22には、温度センサ48が備えられ、通知信号Stによって、熱伝導体22の温度を制御器28に通知する。熱伝導体22の温度は容器10の外底面10bbの温度と見なすことができる。
【0028】
図3では、モータ24の駆動軸24Dが挿設される開口16Hの周囲に馬蹄形のヒータ20とその下の送水パイプ30が配置されているのが見て取れる。また
図4はヒータ20の部分だけを取り出して示したものである。
【0029】
図4を参照して、ここでは熱伝導体22がヒータ20の周囲を囲った構成のものが示されている。
図4の熱伝導体22の上面22uは中央から周囲に向かって傾斜が設けられており、容器10の外底面10bbの傾斜に当接しやすくなっている。ヒータ20のON/OFFは制御器28からの指示信号Chによって制御される。
【0030】
再び、
図1を参照し、容器10の横には水タンク14が備えられている。水タンク14には水位計46が設けられており、通知信号SLによって水タンク14内の水位を制御器28に通知する。このような構成にすることで、制御器28はどれだけの水を容器10内に送り込んだかを知ることができる。
【0031】
水タンク14からは蓋体12の中央まで送水パイプ30が配置される。送水パイプ30は水タンク14の下方からポンプ26を介して、ヒータ20の下面を接触しながら通過し、容器10の側壁10sを上がり、蓋体12に至る。水タンク14からの水は、蓋体12の中央から回転軸32の中を通り、貫通孔40から容器10内に供給される。つまり送水パイプ30はヒータ20の下面でヒータ20からの熱量を受け取り加熱される。ポンプ26は制御器28からの指示信号Cpによって、送水レートが調節できるように形成される。
【0032】
図3では、水タンク14からの送水パイプ30がポンプ26を介して容器10の下のヒータ20に沿って配置され、容器10の上方に至る部分が見て取れる。
図2では、蓋体12の紙面裏側から蓋体12中央に送水パイプ30が配置されている点が示されている。また、
図4では、ヒータ20の下面に沿って送水パイプ30が配置されている。
【0033】
ヒータ20の下面では、送水パイプ30の周囲を覆うように形成された筒状体が熱伝導体22と一体に形成されており、送水パイプ30の部分はパイプヒータと言える。すなわち、容器10の外底面10bbに熱を伝える熱伝導体22と、送水パイプ30を加熱するパイプヒータが同一のヒータ20で形成されている。このように構成することで、容器10内の加熱と、お湯、熱湯、蒸気といった異なる水の状態の生成を1つのヒータ20で行うことができる。
【0034】
より具体的には、送水レートを少なくすれば単位体積の水はより長い時間ヒータ20から熱を受けることができ温度が高くなる。ゆっくりと送水することで、ヒータ20部分で水は沸騰蒸発し、蒸気となって容器10内に供給される。送水レートを高くすることで、生成される水は熱湯、お湯と状態を変えることができる。ヒータ20をOFFにすれば、容器10に供給される水は室温の水とすることができる。
【0035】
蒸気加熱回転機1は、水又はお湯を供給した後は、蒸気の供給を行うケースが多いと想定される。したがって、ヒータ20の温度を細かく設定できる構成より、ヒータ20はON/OFF切換だけとし、供給する水の温度は送水レートで調節する方が無駄がなく、簡易な構成とすることができる。
【0036】
制御器28は、MPU(Micro Processor Unit)とメモリおよび入出力器によって構成される。入出力部には、使用者による操作を制御器28に伝える入力部と、現在の蒸気加熱回転機1の状態を示す表示部が含まれる。制御器28は、少なくとも、モータ24、ポンプ26、具材投入口蓋12hL、ヒータ20に対して、指示信号Cm、Cp、Cc、Chにより動作を制御し、水位計46、温度センサ48からの通知信号SL、Stによって水タンク14内の水位およびヒータ20の温度を検出することができる。制御器28は内部にタイマーが含まれている。
【0037】
<動作の説明>
次に蒸気加熱回転機1の動作について説明する。蒸気加熱回転機1には、ヒータ制御、ポンプ制御、モータ制御の3つの基本制御がある。これらの制御は、上記の各要素部と制御器28によって実行される。ここではこれらの基本制御はサブルーチンとして供給されるとして説明を行う。
【0038】
図5にはヒータ制御の処理フローを示す。ヒータ制御のまとまった処理(サブルーチン)を「ヒータ(COMT,T
H)」と表す。ヒータ制御には、ON/OFFを示すパラメータCOMTと、ヒータをONにする時間を表すT
Hが指定される。なお、パラメータCOMTは「ON」、「OFF」もしくは「CONT」という3つの値が指定される。「ON]は続くパラメータT
Hで指定された時間の間ヒータ20に通電することを表し、「OFF」は通電を切断することを表す。「CONT」は、「OFF」に相当する信号を受信するまでヒータ20への通電を続けることを意味する。
【0039】
ヒータ制御が開示されると(ステップS300)、ヒータ20に通電される(ステップS302)。このステップでヒータ20の温度が上昇する。
【0040】
次に通電時間が「cont」か否かを判断する。パラメータTHは、通電時間Ht(具体的な通電時間)か、「cont」の何れかのパラメータが指定される。「cont」は、「OFF」信号に相当する信号があるまでヒータ20への通電を維持する。通電時間が「cont」であるか否かが判断される(ステップS304)。
【0041】
「cont」でない場合(ステップS304のN分岐)は、通電時間THが指定された通電時間Htになるまでその状態を維持する(ステップS306)。ステップS304で通電時間が「cont」であった場合(ステップS304のY分岐)は、パラメータCOMTが「OFF」となるまでその状態を維持する(ステップS308)。
【0042】
ステップS306とステップS308の条件が満たされた場合(それぞれのステップのY分岐)は、ヒータ20の通電を遮断し(ステップS310)、ヒータ制御の処理を終了する(ステップS312)。例えば、サブルーチンが呼ばれるメインルーチンに処理を戻す。
【0043】
図6には、ポンプ制御の処理フローを示す。ポンプ制御のまとまった処理(サブルーチン)を「ポンプ(Q,T
P)」と表す。ポンプ制御は送水レート「Q」と、送水時間「T
P」という2つのパラメータを持つ。ポンプ制御が開始すると(ステップS350)、送水レートQsで送水を開始する(ステップS352)。送水レートによって送水パイプ30を流れ容器10に供給される水の温度が決められる。次に送水時間T
Pが指定された具体的な値Ptになるまで同じ送水レートで送水する(ステップS354)。
【0044】
送水時間TPが時間Ptになったら送水を停止し(ステップS356)、ポンプ制御の処理を終了する(ステップS358)。
【0045】
図7には、モータ制御の処理フローを示す。モータ制御のまとまった処理(サブルーチン)を「モータ(ω,R
T)」と表す。モータ制御は回転数「ω」と、回転時間「R
T」という2つのパラメータを持つ。モータ制御が開始すると(ステップS400)、回転数ωaでモータ24を回転させる(ステップS402)。この際回転数「ω」は正負の値をとることができる。回転数が正の値は順回転で、ブレード34だけが回転する方向とする。回転数が負の値の場合は、逆回転で、ブレード34、コネ羽根36、攪拌羽根38の3枚が一緒に回転する方向である。
【0046】
次に回転時間が具体的に指定された値(時間)Mtになるまで回転を維持し(ステップS404)、回転時間がMtになったら(ステップS404のY分岐)、モータ24の回転を停止し(ステップS406)、モータ制御の処理を終了する(ステップS408)。
【0047】
以上のように蒸気加熱回転機1は、ヒータ制御、ポンプ制御、モータ制御とい3種類の制御を組合わせることで、レシピに沿った調理コースプログラムを用意することができる。
【0048】
以下には、一例として大豆を原料として大豆ミートの調理コースの一例を示す。大豆ミートは、大豆を蒸した後に細かく粉砕することで作ることができる。
【0049】
図8には、大豆ミートの製造工程の一例を示す。蒸気加熱回転機1をスタートさせる前に、規定量の大豆が容器10中に投入され、蓋体12が閉じられ、塩、砂糖、オリーブ等の具材が蓋体12中に投入されているものとする。大豆ミート製造コースがスタートしたら(ステップS100)、容器10内に所定量のお湯が供給される。お湯により原料の大豆に水を吸わせる(ステップS102)。
【0050】
この工程では、ヒータ(ON、CONT)によってヒータ20をONにし、ポンプ(Q1、TP1)によって、ポンプ26を稼働させ、送水レートQ1でTP1秒間水を送る。この時の送水レートQ1は、ヒータ20によって約60℃前後のお湯が容器10に供給される送水レートである。送水レートQ1と供給時間TP1秒を乗ずることによって容器10に供給されたお湯の量が正確に算出される。そして、所定量のお湯の供給が終了したらヒータ(OFF,CONT)によってヒータ20への通電を停止する。
【0051】
本発明に係る蒸気加熱回転機1では、排水系の機構を持っていないので、初期に供給するお湯の量は正確に測定する必要があるので、上記のようにお湯の供給量を正確に算出できるのでは有用である。また、水を容器10に供給してから容器10全体を加熱する構成ではなく、最初から所定温度のお湯を供給できる。
【0052】
次に蒸し工程を行う。蒸しの工程では、ヒータ20(ON、TH2)によってヒータをTH2秒間ONにする。そして、ポンプ(Q2、TP2)によって送水レートQ2の水をTP2秒間供給する。ここで送水レートQ2は容器10に供給される水が蒸気になる程度の送水レートである。ヒータ20の加熱時間TH2秒とポンプ26の送水時間TP2は同じであってよい。この2つのサブルーチンによって、容器10内にTP2秒間蒸気が供給され、蒸気加熱による蒸し工程が実施される。また、この間ヒータ20によって容器10自体も加熱されている(ステップS104)。
【0053】
この蒸気の供給の間Tint秒間の状態維持とモータ(ω1、RT1)を繰り返すことで、Tint秒毎に回転数ω1でRT1秒間ブレード34が回転する。つまり、蒸気加熱している際にブレード34を間欠運転する。このような動作によって原料の均一な蒸しができることになる。ここでN回は、1以上の整数回を表す。また、Tint秒とRT1秒をN回繰り返すと、TH2秒(若しくはTP2秒)と等しくなる。
【0054】
次に粉砕工程では、ヒータ(ON、TH3)によってヒータ20をTH3秒間通電する。その間にモータ(ω2、RT2)およびモータ(-ω3、RT3)によって、回転数ω2の正回転をRT2秒間行い回転数ω3の逆回転をRT3秒間行う工程をM回繰り返す。つまり、順方向の回転でブレード34だけを高速回転させ、逆方向の回転でブレード34、コネ羽根36、攪拌羽根38をゆっくり回転させる。ブレード34だけの高速回転で原料の粉砕を行い、コネ羽根36、攪拌羽根38も一緒にゆっくり回転させることで、容器10の側壁10sに付着した粉砕粉を掻き落とす(ステップS106)。
【0055】
また、このモータ24の繰り返し動作の間に具材投入口蓋12hLを開くように指示を出す。これは指示信号Ccによって行うことができる。このようにすることで、容器10の側壁10sに付着した粉砕粉を掻き落とながら、具材を原料に投入し、原料の粉砕と粉砕された原料と具材との攪拌を行うことができる。
【0056】
なお、具材投入のタイミングは特に限定されるものではないが、粉砕がある程度進んだ状態で投入するのが好ましい。また、粉砕が進むにつれて、ω2と-ω3(正逆の回転数)の値は変化させてもよい。
【0057】
以上のように、大豆ミートの製造レシピではヒータ20、ポンプ26、モータ24の3種の制御を組合わせることで、実施することができる。
【0058】
次にスープなどの汁物の加熱、攪拌ができる調理モードの処理フローの例を
図9に示す。このフローがスタートすると(ステップS200)、入力待ちになる(ステップS202)。使用者による入力があると(ステップS202のY分岐)、「終了」、「ヒータON」、「ヒータOFF」、「モータON」、「モータOFF」の何れの指示であるかを判断する。入力が「終了」の場合(ステップS204のY分岐)は処理は終了する(ステップS206)。
【0059】
入力が「ヒータON」であった場合(ステップS208)は、ヒータ(ON,CONT)が実行される(ステップS210)。ヒータ(ON,CONT)は、通電時間を決めず、単にヒータ20に通電する処理である。
【0060】
入力が「ヒータOFF」であった場合(ステップS212)は、ヒータ(OFF,CONT)が実行される(ステップS214)。ヒータ(OFF,CONT)は、ヒータ20の通電を切断する処理である。
【0061】
入力が「モータON」であった場合(ステップS216)は、モータ(ω4、RT4)が実行される(ステップS218)。モータ(ω4、RT4)は、回転数ω4でRT4秒間モータ24を回転させブレード34を回転させる処理である。この際の回転数ω4は、スープなどの場合、ゆっくりと攪拌させる程度の回転数であるのが好ましい。
【0062】
入力が「モータOFF」であった場合(ステップS220)はモータ(0,0)が実行される(ステップS222)。モータ(0,0)は、回転数をゼロにする処理であり、モータ24を停止させる処理である。
【0063】
以上のようにこの調理モードでは、容器10への加熱(ヒータ20)のON/OFFと、モータ24の回転数がゼロまたはω4を独立して制御できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る蒸気加熱回転機は、家庭で蒸気加熱する調理器として好適に利用することができる。特に代替肉となる大豆ミートの作製には高い効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 蒸気加熱回転機
10 容器
14 水タンク
20 ヒータ
24 モータ
26 ポンプ
28 制御器
30 送水パイプ
34 ブレード
36 コネ羽根
46 水位計