(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172793
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空調制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/62 20180101AFI20241205BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20241205BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/79
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090762
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】折戸 真理
(72)【発明者】
【氏名】古橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悠文
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB03
3L260AB11
3L260AB14
3L260AB15
3L260BA02
3L260BA08
3L260CA12
3L260HA01
3L260JA18
(57)【要約】
【課題】適切な空調制御を支援することができる空調制御システムを提供する。
【解決手段】空調制御システムは、対象空間内の空気調和を行う空調手段と、対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される対象空間内の空気環境に関する物理量の情報を対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、情報取得手段によって取得した環境情報に応じて空調手段を制御する制御手段と、を備える。本開示に係る空調制御システムは、携帯端末が屋外に出ると、携帯端末の内部においてセンサによって検出する物理量に関する校正動作を実行することを特徴とするものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間内の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量の情報を前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備える空調制御システムであって、
前記携帯端末が屋外に出ると、前記携帯端末の内部において前記センサによって検出する物理量に関する校正動作を実行することを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記センサによって検出する特定の物理量は検出時におけるセンサの状態に応じた情報として定義され、当該情報に応じて前記空調手段を前記制御手段によって制御することを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記対象空間内に第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末とが存在する場合において、第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末との一方が前記情報取得手段に対して情報を送信している場合には他方は情報の送信を停止していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記対象空間内に第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末とが存在する場合において、第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末との一方が前記情報取得手段に対して送信する情報と他方が送信する情報とは互いに別の種類の情報であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記制御手段が前記情報取得手段によって取得した温度の情報を用いて前記空調手段を制御する場合において、当該温度の情報は、前記空調手段によって生成される気流が直接的に当たるエリアの外に存在する前記携帯端末から取得する情報であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人が携帯するセンサによって取得した環境情報に応じてリアルタイムでの空調制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような従来技術においては、消費電力および通信量等の問題から短い時間間隔での情報の取得が難しく、センサの校正が考慮されておらず、また、センサによって検出される物理量の定義が不明確でもある。このように、特許文献1に示されるような従来技術においては、環境情報を高精度で取得することができておらず、適切な空調制御を行うことが難しいという課題がある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。本開示の目的は、適切な空調制御を行うことを支援できる空調制御システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調制御システムは、対象空間内の空気調和を行う空調手段と、前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量の情報を前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、を備える。本開示に係る空調制御システムは、前記携帯端末が屋外に出ると、前記携帯端末の内部において前記センサによって検出する物理量に関する校正動作を実行することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る空調制御システムによれば、適切な空調制御を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る空調制御システムが有する空調装置の斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る空調装置の吹出口近傍を拡大して示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る空調制御システムの動作例を説明するフロー図である。
【
図5】実施の形態1に係る推論装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1における環境制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る空調制御システムを実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。なお、本開示は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。この実施の形態に係る空調制御システムは、対象空間内の空気調和を行うものである。対象空間1は、例えば、1つの部屋の内部空間である。対象空間の具体例として、オフィスの会議室等の内部空間が挙げられる。
【0011】
この実施の形態に係る空調制御システムは、対象空間内の空気調和を行う空調手段として、空調制御機器200を備えている。空調制御機器200の例として、対象空間には、空調装置201が設けられている。空調制御システムは、空調制御機器200として、他に例えば
図1に示すように、送風機202、換気機器203および調湿機器204等の機器を含んでいてもよい。
【0012】
空調装置201は、対象空間内の空気調和を行うことで、対象空間内の主に温熱的環境を制御する機器である。送風機202は、対象空間内に気流を生成することで、対象空間の空気環境を制御する機器である。換気機器203は、対象空間内の空気を換気することで、対象空間1の空気環境を制御する機器である。調湿機器204は、対象空間内の空気中に含まれる水分量を調節することで、対象空間の空気環境を制御する機器である。調湿機器204は、例えば、加湿器又は除湿機等である。
【0013】
図2は、実施の形態1に係る空調制御システムが有する空調装置201の斜視図である。この実施の形態の空調装置201は、空気調和装置の室内機である。空調装置201は、対象空間1に係る部屋の壁面又は天井面に設置される。空調装置201は、冷房運転及び暖房運転の一方又は両方を含む空調運転が可能である。また、空調装置201は、除湿運転、加湿運転、送風運転のいずれか1つ以上の運転を可能としてもよい。
【0014】
室内機である空調装置201は、冷媒が流れる配管を介して、室外機と接続されている。この配管及び室外機の図示を、本開示では省略している。また、空気調和装置が空調運転を実行するために必要な冷凍サイクルを構成する各機器及び対象空間内に空気を吹き出すための送風ファン等の図示も、本開示では省略している。冷凍サイクルを構成する機器には、例えば、熱交換器及び圧縮機等が含まれる。
【0015】
図2に示すように、空調装置201は、筐体20を備えている。空調装置201の筐体20は、略直方体形を呈する箱状に形成されている。空調装置201の筐体20の下部には、矩形状又は正方形状の下面パネル21が設けられている。下面パネル21には、吸込口22が形成されている。吸込口22は、外部から筐体20の内部に空気を取り込むための開口である。吸込口22には、図示しないフィルタが搭載されている。
図2に示す構成例では、吸込口22は、下面パネル21の中央に配置されている。
【0016】
また、下面パネル21には、吹出口23が形成されている。吹出口23は、筐体20の内部から外部へと空気を排出するための開口である。図示の構成例では、下面パネル21には、4つの吹出口23が形成されている。4つの吹出口23は、
図2に示すように、吸込口22の周囲に配置されている。4つの吹出口23は、それぞれ、下面パネル21の各辺に沿って設けられている。
【0017】
図3は、実施の形態1に係る空調装置201の吹出口23近傍を拡大して示す斜視図である。
図2及び
図3に示すように、空調装置201は、上下ルーバー24及び左右ルーバー25を備えている。上下ルーバー24及び左右ルーバー25は、吹出口23のそれぞれに設けられている。上下ルーバー24は、吹出口23から吹き出される空気の上下方向の吹き出し角度を調整するためのものである。左右ルーバー25は、吹出口23から吹き出される空気の左右方向の吹き出し角度を調整するためのものである。
【0018】
上下ルーバー24は、矩形の板状を呈する部材である。上下ルーバー24の一端は、吹出口23の縁部のうちの、下面パネル21の中央側の部分に、回動可能に取り付けられている。この一端を軸にして上下ルーバー24が回動することで、吹出口23から吹き出される空気の上下方向の吹き出し角度が変更される。
【0019】
特に
図3に示すように、左右ルーバー25は、矩形の板状を呈する複数枚の部材によって構成されている。この矩形の板状を呈する複数枚の部材は、吹出口23の長手方向に垂直な方向に沿うように配置されている。左右ルーバー25の一端は、吹出口23の縁部の奥側部分に、回動可能に取り付けられている。この一端を軸にして左右ルーバー25が回動することで、吹出口23から吹き出される空気の左右方向の吹き出し角度が変更される。
【0020】
以上のように構成された上下ルーバー24及び左右ルーバー25は、吹出口23から室内に空気が吹き出される方向を変更可能な風向変更手段の一例である。この実施の形態における空調装置201は、上下ルーバー24の向きと左右ルーバー25の向きとの組み合わせを変更することで、様々な方向への送風が可能である。
【0021】
また、上下ルーバー24の向きが最も上向きにされることで、吹出口23は当該上下ルーバー24によって閉塞される。この実施の形態における空調装置201は、複数の吹出口23のうちの一部の吹出口23を上下ルーバー24によって閉塞することで、当該一部の吹出口からの送風を停止することが可能である。
【0022】
筐体20の内部には、吸込口22から吹出口23へと通じる風路が形成されている。吸込口22から吹出口23へと通じる風路内には、熱交換器及び送風ファンが設置されている。熱交換器は、風路を流れる空気と冷媒との間での熱交換によって、当該空気を加熱又は冷却する。熱交換器によって空気が加熱されるか冷却されるかは、空調装置201が実行する空調運転の種類に依る。熱交換器は、空気を加熱又は冷却することで、当該空気の温度及び湿度等を調整し、調和空気を生成する。具体的には、暖房運転時には、熱交換器は、空気を加熱する。冷房運転時には、熱交換器は、空気を冷却する。また、送風運転時には、熱交換器を通過した空気は、常温の調和空気として生成される。
【0023】
送風ファンは、吸込口22から吹出口23へと向かう空気流を筐体20の内部の風路中に生成するためのものである。送風ファンが動作すると、吸込口22から空気が吸い込まれ、吹出口23から空気が吹き出される。吸込口22から吸い込まれた空気は、空調装置201の筐体20の内部の風路を、熱交換器、送風ファンの順に通過する。送風ファンを通過した空気、すなわち調和空気は、吹出口23から吹き出される。暖房運転時には、吹出口23から温風が吹き出される。冷房運転時には、吹出口23から冷風が吹き出される。送風運転時には、吹出口23から常温の風が吹き出される。この際、吹出口23から空気が吹き出される方向は、送風ファンの風下側に配置された上下ルーバー24及び左右ルーバー25により調整される。空調装置201は、様々な温度の空気を様々な方向へ送風することができる。
【0024】
この実施の形態に係る空調制御システムは、対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末10に含まれるセンサの検出結果に応じて空調制御機器200による空調制御を行うことを特徴としている。これにより、実際に人がいる空間の情報に応じた適切な空調制御が実現される。空調制御システムは、例えば、温熱快適性および知的生産性を向上させるように、空調制御機器200を動作させる。
【0025】
携帯端末10には、対象空間内の空気環境に関する物理量を検出するセンサとして、環境情報センサ11が含まれる。なお、携帯端末10には、複数種類の物理量を検出可能な環境情報センサ11が含まれてもよいし、種類の異なる複数の環境情報センサ11が含まれていてもよい。環境情報センサ11は、例えば、温度、湿度、二酸化炭素濃度、臭気性分量および粉塵量等の空気環境に関する物理量を検出する。
【0026】
この実施の形態に係る空調制御システムは、環境制御装置100を備えている。環境制御装置100は、空調制御機器200である空調装置201、送風機202、換気機器203および調湿機器204のそれぞれと通信可能である。環境制御装置100と空調制御機器200のそれぞれとの通信は、有線方式であっても無線方式であってもよい。環境制御装置100は、空調制御機器200である空調装置201、送風機202、換気機器203および調湿機器204のそれぞれの動作を制御する。
【0027】
環境制御装置100は、情報取得部101、制御内容決定部110及び制御部120を備えている。情報取得部101は、情報源から情報を取得する情報取得手段である。情報取得部101は、情報源である携帯端末10から、環境情報センサ11によって検出された物理量の情報を対象空間内の環境情報として取得する。環境制御装置100と携帯端末10とは、無線通信を行う。携帯端末10から環境制御装置100の情報取得部101へは、無線通信で情報の送信が行われる。
【0028】
なお、携帯端末10には、例えば、生体情報を取得するための生体情報センサ13が含まれていてもよい。生体情報センサ13には、例えば、皮膚温度を計測する温度センサあるいは熱画像センサが含まれてもよい。生体情報センサ13には、例えば、呼吸および心拍に関する情報を取得するミリ波センサあるいはドップラセンサが含まれてもよい。生体情報センサ13には、例えば、脳波を計測する脳波センサあるいは活動量を計測する活動量センサが含まれてもよい。
【0029】
また、携帯端末10は、例えば、人の自己申告から生体情報、心理情報および個人属性等を取得可能に構成されてもよい。また、生体情報、心理情報および個人属性等は、例えば、人が操作するリモコン30から取得してもよい。
【0030】
制御内容決定部110は、情報取得部101により取得された各種の情報に基づいて、空調制御機器200の制御内容を決定する。制御部120は、制御内容決定部110で決定された制御内容に従って、空調制御機器200の動作を制御する。本実施の形態において、制御内容決定部110および制御部120は、情報取得部101によって取得した環境情報に応じて空調制御機器200を制御する。なお、制御内容決定部110および制御部120は、例えば、情報取得部101によって携帯端末10あるいはリモコン30から取得した生体情報、心理情報および個人属性等に応じて空調制御機器200を制御してもよい。
【0031】
生体情報および心理情報の両方による制御を行う場合には、空調制御機器200を制御する際にどちらの情報を用いるか設定可能としてもよい。これにより、例えば、ストレス等の心理情報が生体情報として現れやすい人と現れにくい人との双方に適切に対応可能となる。また、心理情報の取得は、対象空間内の全ての人から行う必要はなく、環境の変更の要望のある人のみが携帯端末10あるいはリモコン30から要望を入力すればよい。環境の変更の要望のある人が携帯端末10あるいはリモコン30から要望を入力した時点で、在室者全体の生体情報に応じて空調制御機器200を制御してもよい。
【0032】
心理情報および個人属性に応じた制御を行う場合において、対象空間内の在室者の全ての位置における環境を空調制御機器200によって適切にすることが難しい場合がある。例えば、暑がりの人と寒がりの人とが近くにいる場合には、両人の希望を満たす環境を同じ位置に実現することが難しい。そこで、例えば、空調制御システムによって各人の心理情報および個人属性に応じたエリアを生成した上で、各人へおすすめのエリアの情報を報知してもよい。
【0033】
各種の情報に応じた制御内容を決定する制御内容決定部110は、
図1に示すように、記憶部111および制御機器決定部114を備えている。記憶部111には、情報取得部101により取得された携帯端末10からの情報が記憶される。
【0034】
制御機器決定部114は、制御する空調制御機器200及びその制御内容を決定する。例えば、制御機器決定部114は、対象空間内における携帯端末10の位置から所定の範囲内に存在する空調制御機器200について、携帯端末10から取得した情報に基づいて制御を行うと決定する。携帯端末10の位置情報はGPSあるいはビーコン等を用いて取得してもよいし、携帯端末10と環境制御装置100との近距離無線通信における電波強度を利用することで取得してもよい。
【0035】
以上のように構成された制御機器決定部114及び制御部120は、情報取得手段によって携帯端末10から取得した環境情報に応じて空調手段を制御する制御手段である。携帯端末10内のセンサは対象空間内を移動するため、例えば、固定センサでは取得できなかった温度ムラなどの情報を取得できる。携帯端末10から取得した環境情報に応じて空調手段を制御することで、実際の環境を反映した適切な空調制御が可能である。なお、環境情報に応じて空調手段を制御する際には、携帯端末を持った人が特定の位置に所定の時間だけ留まってから制御を開始するとよい。
【0036】
そして、本実施の形態に係る空調制御システムは、環境情報をより高精度で取得して、より適切な空調制御を実現するために、携帯端末10に含まれる環境情報センサ11の校正動作を実行することを特徴としている。より具体的には、携帯端末10が屋外に出ると、携帯端末10の内部において環境情報センサ11によって検出する物理量に関する校正動作を実行する。これにより、環境情報をより高精度で取得して、より適切な空調制御を実現することができる。
【0037】
携帯端末10が屋外に出たか否かの判定は、例えば、携帯端末10の位置情報を用いて環境制御装置100等の外部機器が行ってもよいし、携帯端末10自身が行ってもよい。環境制御装置100等の外部機器から携帯端末10へ校正動作の指示を行ってもよいし、携帯端末10自身が外部からの指示を受けずに校正動作を行ってもよい。
【0038】
例えば、環境情報センサ11が空気環境に関する物理量として二酸化炭素濃度を検出する場合には、携帯端末10が屋外に出ると、二酸化炭素濃度が予め設定された400ppm等の基準濃度であるとしてもよい。また、環境情報センサ11が空気環境に関する物理量として温度あるいは湿度を検出する場合には、外部機関等から取得される気象情報と連携して校正を行ってもよい。気象情報の取得は、例えば、携帯端末10自身が行ってもよいし、環境制御装置100等の外部機器によって行われてもよい。
【0039】
図4は、実施の形態1に係る空調制御システムの動作例を説明するフロー図である。まず、携帯端末10が屋外にあるか定期的に判定する(ステップS101)。携帯端末10が屋外にあると判定された場合、携帯端末10の内部において環境情報センサ11によって検出する物理量に関する校正動作を実行する(ステップS102)。ステップS101およびステップS102の処理は、継続的に実行される。
【0040】
携帯端末10が屋外にない場合には、当該携帯端末10によって環境情報を取得して(ステップS103)、取得した環境情報に応じて空調制御を行う(ステップS104)。ステップS101およびステップS102の処理は、すなわち、携帯端末10が屋外にあるかの判定および構成動作は、空調制御の実行中にも継続的に実行される。また、ステップS103の環境情報の取得およびステップS104の空調制御も継続的に実行され、リアルタイムでの環境情報に応じて空調制御が行われる。
【0041】
次に、以上のように構成された空調制御システムのいくつかの具体的な変形例について説明する。
【0042】
例えば、環境情報センサ11および生体情報センサ13等のセンサによって検出する特定の物理量は検出時における当該センサの状態に応じた情報として定義されてもよい。例えば、センサが温度を検出する場合、この温度は室温あるいは皮膚温の何れかとして定義され得る。例えば、携帯端末10が首から下げられている場合には、センサが検出する温度は室温として定義されてよい。また、携帯端末10がポケット等に入っている場合には、センサが検出する温度は皮膚温として定義されてよい。センサの状態は、例えば、携帯端末10の位置情報等から判定されてもよいし、当該センサの検出値等から判定されてもよい。例えば、センサの検出した温度が閾値を超える場合には当該温度は皮膚温であると定義し、センサの検出した温度が閾値以下の場合には当該温度は室温であると定義してもよい。検出された特定の物理量に対してセンサの状態に応じた定義がされることで、より適切な空調制御を実現することができる。また、例えば、上記のような例においては、室温を検出するセンサと皮膚温を検出するセンサとをそれぞれ設ける必要がなくなり、機器構成を簡略化することができる。
【0043】
対象空間内に複数の携帯端末10、例えば、第1の携帯端末10と第2の携帯端末10とが存在する場合において、当該第1の携帯端末10と第2の携帯端末10との一方が情報取得部101に対して情報を送信している場合には他方は情報の送信を停止してもよい。第1の携帯端末10と第2の携帯端末10とが輪番で情報を送信するようにしてもよいし、一方のみが継続して情報を送信するようにしてもよい。温度、湿度および二酸化炭素濃度等の空気環境に関する物理量の検出結果は、それぞれの携帯端末10の間で大きく相違するものではない。そこで、本変形例のように、任意の端末のみを情報取得に用いてもよい。携帯端末10から送信する情報の総量を削減することで、通信量の制限に対応しつつリアルタイムでの環境情報の取得が実現される。
【0044】
また、対象空間内に複数の携帯端末10、例えば、第1の携帯端末10と第2の携帯端末10とが存在する場合において、当該第1の携帯端末10と第2の携帯端末10との一方が情報取得部101に対して送信する情報と他方が送信する情報とは互いに別の種類の情報であってもよい。例えば、第1の携帯端末10は二酸化炭素濃度の情報を送信して、第2の携帯端末10は二酸化炭素濃度以外の温度等の情報を送信するとしてもよい。本変形例によれば、携帯端末10から送信する情報の総量を削減することで、通信量の制限に対応しつつリアルタイムでの環境情報の取得が実現される。また、環境情報の取得および送信に必要な電力を削減することもできる。このとき、各携帯端末10は、二種類以上の環境情報を取得可能であってもよいし、一種類の環境情報を取得可能であってもよい。本変形例においては、例えば、携帯端末10の構成の制約によって一種類の情報の取得および送信しかできない場合にも、複数の携帯端末10それぞれに別の役割を持たせることで、複数種類の環境情報を取得することができる。また、例えば、対象空間内に第1の携帯端末10と第2の携帯端末10と第3の携帯端末10とが存在して2種類の環境情報を用いる場合には、第1の携帯端末10は第1の環境情報を送信し、第2の携帯端末10は第2の環境情報を送信し、第3の携帯端末10は情報を送信しない、としてもよい。
【0045】
環境情報センサ11および生体情報センサ13等のセンサによって検出した温度の情報を用いて空調制御機器200を制御する場合において、当該温度の情報は、空調制御機器200によって生成される気流が直接的に当たるエリアの外に存在する携帯端末10から取得する情報としてもよい。気流が直接的に当たるエリアに存在する携帯端末10から取得可能な温度情報は、信頼性が低い可能性がある。本例であれば、より信頼性の高い情報を用いて、適切な空調制御を行うことができる。このとき、気流が直接的に当たるエリアに存在する携帯端末10からは、温度以外の情報を取得してもよい。
【0046】
携帯端末10は、対象空間を含む建物内を移動することができる。すなわち、建物内の温度分布等の情報を得ることができる。そこで、携帯端末10から取得される情報を用いることで、建物内の異常検知を行ってもよい。例えば、温度勾配に以上が生じている箇所を特定してもよい。これにより、例えば、ドアおよび窓の開けっ放し、隙間風の流入あるいは空調装置201の故障等を検知することができる。
【0047】
また、
図5は、実施の形態1に係る推論装置70の構成を示すブロック図である。空調制御システムの機能の一部、特に、携帯端末10および環境制御装置100の機能を実現するに当たっては、推論装置70を活用するとよい。推論装置70を用いることで、より適切な推定および学習を自動的に実行することが可能となる。
【0048】
推論装置70は、データ取得部71および推論部72を備えている。学習済モデル記憶部80には、学習済モデルが記憶されている。学習済モデル記憶部80に記憶される学習済モデルは、データ取得部71への入力データから推論をするためのものである。学習済モデル記憶部80に記憶される学習済モデルは、例えば、学習装置により生成される。学習済モデル記憶部80は、例えば、推論装置70と通信可能に設けられたサーバ装置等に備えられる。また、学習済モデル記憶部80を推論装置70に設けてもよい。
【0049】
推論装置70のデータ取得部71は、推論装置70への入力データを取得する。入力データは、例えば、携帯端末10から取得される環境情報および生体情報等である。
【0050】
推論装置70の推論部72は、学習済モデル記憶部80に記憶されている学習済モデルを用いて、データ取得部71が取得した入力データから、各種の推定等を行う。推論部72は、データ取得部71が取得した入力データを、学習済モデルに入力することで、入力データから推論される推定結果を出力することができる。このようにして、推論部72は、入力データから各種の推定をするための学習済モデルを用いて、データ取得部71が取得した入力データから推定結果を出力する。
【0051】
また、推論装置70は、モデル更新部73をさらに備えていてもよい。推論装置70のモデル更新部73は、推論部72から出力された推定結果に基づいて、学習済モデルを更新する。このモデルの更新の際、データ取得部71は、推論部72から推定結果が出力された後に、入力データを再度取得する。そして、モデル更新部73は、データ取得部71により再度取得された入力データを用いて、学習済モデル記憶部80に記憶されている学習済モデルを更新する。モデル更新部73は、学習装置による学習済モデルの生成と同様の処理により、学習済モデルを更新できる。モデル更新部73により更新された学習済モデルは、学習済モデル記憶部80に記憶され、次回の推論部72による推論に利用される。学習済モデルの更新にあたっての推定結果の評価は、ユーザによって入力される主観の評価情報を用いて行ってもよい。
【0052】
また、
図6は、実施の形態1における環境制御装置100の機能を実現する構成の一例を示す図である。環境制御装置100の機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ131及びメモリ132を備えていてもよい。処理回路は、専用ハードウェア133であってもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア133として形成され、かつ、当該処理回路はさらにプロセッサ131及びメモリ132を備えていてもよい。同図に示す例においては、処理回路の一部は専用ハードウェア133として形成されている。また、同図に示す例において、処理回路は、プロセッサ131及びメモリ132をさらに備えている。
【0053】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア133である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ131及び少なくとも1つのメモリ132を備える場合、環境制御装置100の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0054】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ132に格納される。プロセッサ131は、メモリ132に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ131は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ132には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0055】
このようにして、環境制御装置100の処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、環境制御装置100の各機能を実現することができる。環境制御装置100の処理回路が少なくともプロセッサ131及びメモリ132を備える場合、環境制御装置100においてメモリ132に記憶されたプログラムをプロセッサ131が実行し、環境制御装置100のハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、環境制御装置100が備える各部の機能が実現される。なお、空調制御システムが備える空調制御機器200は、単一の環境制御装置100により動作が制御される構成に限定されるものではない。空調制御システムが備える空調制御機器200は、複数の装置が連携することで動作を制御されてもよい。
【0056】
上述したように、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記の実施の形態および変形例を任意に組み合わせてもよいし、任意の構成要素の変形または省略が可能である。以下に、本開示の諸態様の例を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
対象空間内の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量を、前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備える空調制御システムであって、
前記携帯端末が屋外にある時点で、前記携帯端末の内部において前記センサによって検出する物理量に関する校正動作を実行することを特徴とする空調制御システム。
(付記2)
前記センサによって検出する特定の物理量は検出時における前記センサの状態に応じた情報として定義され、当該情報に応じて前記空調手段を前記制御手段によって制御することを特徴とする付記1に記載の空調制御システム。
(付記3)
前記対象空間内に第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末とが存在する場合において、第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末との一方が前記情報取得手段に対して情報を送信している場合には他方は情報の送信を停止していることを特徴とする付記1または付記2に記載の空調制御システム。
(付記4)
前記対象空間内に第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末とが存在する場合において、第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末との一方が前記情報取得手段に対して送信する情報と他方が送信する情報とは互いに別の種類の情報であることを特徴とする付記1から付記3のいずれか一項に記載の空調制御システム。
(付記5)
前記制御手段が前記情報取得手段によって取得した温度の情報を用いて前記空調手段を制御する場合において、当該温度の情報は、前記空調手段によって生成される気流が直接的に当たるエリアの外に存在する前記携帯端末から取得する情報であることを特徴とする付記1から付記4のいずれか一項に記載の空調制御システム。
(付記6)
対象空間内の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量を、前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備える空調制御システムであって、
前記センサによって検出する特定の物理量は検出時における前記センサの状態に応じた情報として定義され、当該情報に応じて前記空調手段を前記制御手段によって制御することを特徴とする空調制御システム。
(付記7)
対象空間内の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量を、前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備える空調制御システムであって、
前記対象空間内に第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末とが存在する場合において、第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末との一方が前記情報取得手段に対して情報を送信している場合には他方は情報の送信を停止していることを特徴とする空調制御システム。
(付記8)
対象空間内の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量を、前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備える空調制御システムであって、
前記対象空間内に第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末とが存在する場合において、第1の前記携帯端末と第2の前記携帯端末との一方が前記情報取得手段に対して送信する情報と他方が送信する情報とは互いに別の種類の情報であることを特徴とする空調制御システム。
(付記9)
対象空間内の空気調和を行う空調手段と、
前記対象空間内にいる人が持ち運び可能な携帯端末に含まれるセンサによって検出される前記対象空間内の空気環境に関する物理量を、前記対象空間内の環境情報として当該携帯端末から取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した環境情報に応じて前記空調手段を制御する制御手段と、
を備える空調制御システムであって、
前記制御手段は前記情報取得手段によって取得した温度の情報を用いて前記空調手段を制御し、当該温度の情報は、前記空調手段によって生成される気流が直接的に当たるエリアの外に存在する前記携帯端末から取得する情報であることを特徴とする空調制御システム。
【符号の説明】
【0057】
10 携帯端末
11 環境情報センサ
13 生体情報センサ
20 筐体
21 下面パネル
22 吸込口
23 吹出口
24 上下ルーバー
25 左右ルーバー
30 リモコン
70 推論装置
71 データ取得部
72 推論部
73 モデル更新部
80 学習済モデル記憶部
100 環境制御装置
101 情報取得部
110 制御内容決定部
111 記憶部
114 制御機器決定部
120 制御部
131 プロセッサ
132 メモリ
133 専用ハードウェア
200 空調制御機器
201 空調装置
202 送風機
203 換気機器
204 調湿機器