(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172816
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】生理用物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/472 20060101AFI20241205BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20241205BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20241205BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20241205BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61F13/472 100
A61F13/53 300
A61F13/534 110
A61F13/511 100
A61F13/511 300
A61F13/514 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090803
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛沢 彩香
(72)【発明者】
【氏名】長島 啓介
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200AA15
3B200BA01
3B200BA13
3B200BA14
3B200BB03
3B200BB17
3B200CA19
3B200DA13
3B200DA16
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB04
3B200DB12
3B200DB18
3B200DC04
3B200DD10
3B200DE04
3B200DF17
(57)【要約】
【課題】本発明は、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品であって、フィット性と吸液前後における装着快適性とを高めることが可能な生理用物品に関する。
【解決手段】本発明の一形態に係る生理用物品において、吸収体は、吸水性繊維を主体として含み非吸水性繊維を含むエアレイド層と、非吸水性繊維を主体として含む液透過層と、を含む積層体を有する。積層体は、第1積層部と第2積層部とを有する。第1積層部は、肌側に配置されたエアレイド層である第1エアレイド層と、非肌側に配置されたエアレイド層である第2エアレイド層と、第1及び第2エアレイド層の間に配置された液透過層である第1液透過層と、を有する。第2積層部は、肌側に配置されたエアレイド層である第3エアレイド層と、非肌側に配置されたエアレイド層である第4エアレイド層と、第3及び第4エアレイド層の間に配置された液透過層である第2液透過層と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の肌側に配置された表面シートと、前記吸収体の非肌側に配置された裏面シートと、を備え、前記表面シートを凸状に変形させた状態で着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品であって、
前記吸収体は、
吸水性繊維を主体として含み、かつ、非吸水性繊維を含む複数のエアレイド層と、
非吸水性繊維を主体として含む複数の液透過層と、を含む積層体を有し、
前記積層体は、
第1積層部と、前記第1積層部の非肌側に配置された第2積層部と、を有し、
前記第1積層部は、
肌側に配置された前記エアレイド層である第1エアレイド層と、
非肌側に配置された前記エアレイド層である第2エアレイド層と、
前記第1及び第2エアレイド層の間に配置された前記液透過層である第1液透過層と、を有し、
前記第2積層部は、
肌側に配置された前記エアレイド層である第3エアレイド層と、
非肌側に配置された前記エアレイド層である第4エアレイド層と、
前記第3及び第4エアレイド層の間に配置された前記液透過層である第2液透過層と、を有する
生理用物品。
【請求項2】
前記吸収体は、高吸水性材料をさらに有し、
前記高吸水性材料は、前記第1液透過層と前記第2エアレイド層との間、又は前記第2液透過層と前記第4エアレイド層との間、の少なくとも一方に配置される
請求項1に記載の生理用物品。
【請求項3】
前記第1液透過層に含まれる前記非吸水性繊維は、親水化剤を含む
請求項1又は2に記載の生理用物品。
【請求項4】
前記第1液透過層の坪量は、前記第1及び第2エアレイド層各々の坪量よりも低い
請求項1から3のいずれか一項に記載の生理用物品。
【請求項5】
前記積層体に含まれる全ての前記液透過層の坪量の合計は、70g/m2以上110g/m2以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載の生理用物品。
【請求項6】
前記生理用物品の厚みは、3mm以上9mm以下である
請求項5に記載の生理用物品。
【請求項7】
前記複数のエアレイド層各々における非吸収性繊維の含有量は、20質量%以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の生理用物品。
【請求項8】
前記表面シートは、肌側に突出した複数の凸部を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の生理用物品。
【請求項9】
前記表面シートは、非吸水性繊維を主体として含む不織布で構成される
請求項1から8のいずれか一項に記載の生理用物品。
【請求項10】
前記裏面シートの非肌対向面に配置された指挿入部材をさらに備える
請求項1から9のいずれかの一項に記載の生理用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品が知られている。このような生理用物品は、一般的な生理用ナプキンよりも身体との密着性が高く、タンポンよりも心理的抵抗感を軽減できるという特徴を有する。一方で、このような生理用物品は、デリケートな陰唇間に密着して使用されるため、痛みなどの装着違和感が生じやすかった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、着用者への異物感を低減させる等の観点から、裏面シート側に配置された体液保管層と、表面シート側に配置され、体液保管層よりも柔軟な陰唇追従層と、を有する吸収体を備えた陰唇間パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の陰唇間パッドでは、吸収容量を高めるために体液保管層の坪量を高くすると、吸液後に体液保管層の剛直感が高まり、装着違和感が高まる懸念があった。その一方で、体液保管層の坪量を低くすると、吸収容量が低下することに加えて陰唇間パッドが薄くなり、陰唇間へのフィット性が低下するという懸念があった。
【0006】
本発明は、着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品であって、フィット性と吸液前後における装着快適性とを高めることが可能な生理用物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る生理用物品は、吸収体と、前記吸収体の肌側に配置された表面シートと、前記吸収体の非肌側に配置された裏面シートと、を備え、前記表面シートを凸状に変形させた状態で着用者の陰唇間に挟んで使用される。
前記吸収体は、
吸水性繊維を主体として含み、かつ、非吸水性繊維を含む複数のエアレイド層と、
非吸水性繊維を主体として含む複数の液透過層と、を含む積層体を有する。
前記積層体は、
第1積層部と、
前記第1積層部の非肌側に配置された第2積層部と、を有する。
前記第1積層部は、
肌側に配置された前記エアレイド層である第1エアレイド層と、
非肌側に配置された前記エアレイド層である第2エアレイド層と、
前記第1及び第2エアレイド層の間に配置された前記液透過層である第1液透過層と、を有する。
前記第2積層部は、
肌側に配置された前記エアレイド層である第3エアレイド層と、
非肌側に配置された前記エアレイド層である第4エアレイド層と、
前記第3及び第4エアレイド層の間に配置された前記液透過層である第2液透過層と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る着用者の陰唇間に挟んで使用される生理用物品によれば、フィット性と吸液前後における装着快適性とを高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生理用物品を示す平面図であり、生理用物品を平坦に広げた平坦形状の構成を示す図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した上記平坦形状の生理用物品の断面図である。
【
図3】上記生理用物品の、
図2と同様の位置における断面を示す図であり、上記生理用物品が横方向中央で屈曲された屈曲形状の構成を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る生理用物品の断面図である。
【
図5】本発明の比較例に係る生理用物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
[生理用物品の全体構成]
図1に示す生理用物品1は、着用者の左右の陰唇間に挟んで使用され、着用者の経血を吸収することが可能に構成される。本明細書において、吸収対象の経血等の体液を「液」とも称する。生理用物品1は、一般的な生理用ナプキンなどの他の生理用物品と併用されてもよいし、単体で使用されてもよい。
【0012】
生理用物品1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、生理用物品1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。本明細書において、「横方向Y中央」とは、生理用物品1を横方向Yに2等分する縦中心線CL上の部分を意味する。「横方向Y中央部」とは、生理用物品1を横方向Yに3等分した中央の部分を意味する。「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。本明細書において、「縦方向X前方」とは、縦方向Xにおける前方、つまり着用者の腹側に向かう方向を意味する。「縦方向X後方」とは、縦方向Xにおける後方、つまり着用者の背側に向かう方向を意味する。本明細書において、厚み方向Zにおける肌側とは、生理用物品1の着用時に着用者側に配置される側を意味する。厚み方向Zにおける非肌側とは、生理用物品1の着用時に着衣側に配置される側を意味する。
【0013】
生理用物品1は、
図1に示すように、パッド状に構成される。
図1及び
図2には、生理用物品1をXY平面上に沿って広げた形状を示す。このような平坦な形状を、生理用物品1の平坦形状と称する。一方で、生理用物品1は、
図3に示すように、横方向Y中央で屈曲された形状で陰唇間に装着される。これを生理用物品1の屈曲形状と称する。本明細書において、縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zは、特に説明のない場合、平坦形状における縦方向X、横方向Y及び厚み方向Zをいうものとする。
【0014】
図2に示すように、生理用物品1は、吸収体4と、表面シート2と、裏面シート3と、を備える。
図2に示す例において、生理用物品1は、裏面シート3と、吸収体4と、表面シート2と、がこの順に厚み方向Zに積層された構成を有する。生理用物品1の各部材は、例えば、接着剤Hやヒートシール等によって適宜接合されている。
【0015】
吸収体4は、肌側から液を吸収して保持する。吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。本実施形態において、吸収体4は、複数のシートの積層構造を有する。吸収体4の詳細な構成については、後述する。
【0016】
表面シート2は、吸収体4の肌側に配置され、例えば不織布等の液透過性のシート材として構成される。液透過性のシート材は、陰唇間パッド、生理用ナプキンなどの生理用物品の表面シートとして使用可能なシート材であれば特に限定されない。例えば、表面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。また、表面シート2は、コットン繊維等の天然繊維を含んでいてもよい。
【0017】
裏面シート3は、吸収体4の非肌側に配置される。裏面シート3は、経血の漏れを抑制する観点から、例えば、液難透過性及び/又は撥水性等の機能を有するシート材で構成されることが好ましい。このようなシート材としては、生理用ナプキンなどの生理用物品の裏面シートとして使用可能なシート材であれば特に限定されず、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布との積層シート等が挙げられる。さらに、裏面シート3は、装着快適性を高める観点から、通気性及び/又は透湿性を有することが好ましい。なお、裏面シート3の非肌対向面3aには、後述する指挿入部材6が配置されていてもよい。また、裏面シート3の非肌対向面3aには、下着に固定するための、粘着剤、フック材などのずれ止め材が配置されていてもよい。
【0018】
図2に示す例において、生理用物品1は、横方向Y側部の防漏性を高める等の観点から、一対のサイドシート5をさらに備えることが好ましい。一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y外側に配置される。サイドシート5の材料としては、表面シート2よりも親水性が小さいシート材料が好ましく、具体的には、表面シート2よりも親水性の低い不織布、フィルム、及び不織布とフィルムとの積層シート等が挙げられる。
【0019】
上記構成の生理用物品1は、
図3に示すように、表面シート2を凸状に変形させた状態で着用者の陰唇間に挟んで使用される。このため、装着時の経血の漏れや漏れへの不安感を防ぐ観点からは、凸状に変形させた状態における生理用物品1の左右の領域が、着用者の左右の陰唇に対してフィットして、十分な装着圧を及ぼすことが好ましい。その一方で、着用者の動作に応じて陰唇の形状は大きく変化するため、生理用物品1は、陰唇内壁やその周囲のデリケートな粘膜に柔軟に接することが好ましい。さらに、生理用物品1が経血を吸収した吸液後においても、フィット性や柔軟性が維持できることが好ましい。これらの観点から、吸収体4は、以下のような特徴的な構成を有する。
【0020】
[吸収体の構成]
本実施形態において、吸収体4は、複数のエアレイド層7と、複数の液透過層8と、を含む積層体40を有する。吸収体4は、
図2に例示するように、積層体40で構成されてもよいし、あるいは、積層体40を被覆する被覆材をさらに有していてもよい。積層体40の各層は、
図2に例示するように、例えば接着剤Hで接合されていることが好ましい。なお、
図2~4の断面図は、積層構造を示すために、厚み方向Zの厚さを強調して示している。また、
図3では、接着剤Hの図示を省略している。
【0021】
複数のエアレイド層7は、それぞれ、エアレイド不織布からなる層である。エアレイド不織布は、一般に、見掛け密度が低く嵩高い構成を有し、ふんわりと柔らかい感触を有する。エアレイド層7は、それぞれ、吸水性繊維を主体として含み、かつ、非吸水性繊維を含む。本明細書において、ある構成要素がある材料を「主体として含む」とは、当該構成要素における当該材料の含有量が50質量%以上であることを意味する。このため、エアレイド層7における吸水性繊維の含有量は、50質量%以上であり、嵩高くふんわりとした感触を高める観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。また、エアレイド層7における吸水性繊維の含有量は、吸液後において非吸水性繊維による濡れ感の低減や剛直感の抑制などの作用を得る観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。なお、エアレイド層7における非吸水性繊維の含有量の好適な範囲については、後述する。
【0022】
複数のエアレイド層7は、同一の構成繊維を含む同一のエアレイド不織布で構成されてもよいし、異なる構成繊維を含む異なるエアレイド不織布で構成されてもよい。構成繊維の違いとしては、原料、繊維の構造、繊度、繊維長等が挙げられる。但し、安定した作用効果を得る観点や、製造のコストや手間を抑える観点から、複数のエアレイド層7は、同一のエアレイド不織布で構成されることが好ましい。
【0023】
本明細書における吸水性繊維とは、吸水性を有し、吸い上げた水を保持することができる繊維を意味する。より具体的に、吸水性繊維は、公定水分率(温度20℃湿度65%の環境で繊維が有する水分率)が5質量%以上の繊維である。吸水性繊維の具体例としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、吸水性繊維の公定水分率は7質量%以上であることがより好ましい。
【0024】
本明細書において、非吸水性繊維とは、上述の吸水性を有しない、又は吸水性の低い繊維を意味し、具体的には、上記公定水分率が5質量%未満の繊維である。なお、非吸水性繊維の公定水分率は3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
非吸水性繊維の具体例としては、例えば熱可塑性樹脂を主体として含む繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、熱可塑性樹脂を主体として含む非吸水性繊維としては、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型等の複合繊維、中空繊維、分割繊維、異形断面繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。このうち、非吸水性繊維は、ふんわりとした柔らかい感触を得る観点から、中空繊維を含むことが好ましい。
【0025】
液透過層8は、それぞれ、非吸水性繊維を主体として含み、経血を透過させる作用を有する。液透過層8における非吸水性繊維の含有量は、50質量%以上であり、経血の保持を抑制して透過を促進する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0026】
液透過層8は、良好な液透過性を得る観点から、不織布で構成されることが好ましい。液透過層8を構成する不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。液透過層8は、液透過性及び柔軟性を得る観点から、例えばエアスルー不織布で構成されることが好ましい。
【0027】
複数の液透過層8は、同一の製法及び同一の構成繊維を含む同一の不織布で構成されてもよいし、異なる製法及び/又は異なる構成繊維を含む不織布で構成されてもよい。但し、安定した作用効果を得る観点や、製造のコストや手間を抑える観点から、複数の液透過層8は、同一の不織布で構成されることが好ましい。
【0028】
本実施形態において、吸収体4の積層体40は、第1積層部41と、第1積層部41の非肌側に配置された第2積層部42と、を有する。第1積層部41及び第2積層部42は、それぞれ、複数のエアレイド層7及び複数の液透過層8の積層構造を有している。本実施形態において、第1積層部41及び第2積層部42は、同一の積層構造を有しているが、異なる積層構造を有していてもよい。
【0029】
第1積層部41は、肌側に配置されたエアレイド層7である第1エアレイド層7aと、非肌側に配置されたエアレイド層7である第2エアレイド層7bと、第1及び第2エアレイド層7a,7bの間に配置された液透過層8である第1液透過層8aと、を有する。つまり、第1積層部41では、肌側から非肌側に向かって、第1エアレイド層7a、第1液透過層8a及び第2エアレイド層7bが、順に配置されている。
【0030】
第2積層部42は、肌側に配置されたエアレイド層7である第3エアレイド層7cと、非肌側に配置されたエアレイド層7である第4エアレイド層7dと、第3及び第4エアレイド層7c,7dの間に配置された液透過層8である第2液透過層8bと、を有する。つまり、第2積層部42では、肌側から非肌側に向かって、第3エアレイド層7c、第2液透過層8b及び第4エアレイド層7dが、順に配置されている。
【0031】
上記構成の生理用物品1では、吸収体4が少なくとも6層の積層構造を有する。これにより、生理用物品1では、同一の坪量の1層構造の吸収体を備えた生理用物品と比較して、吸収体4の曲げ剛性を低下させて、剛直感を低下させることができる。特に、上記構成においては、柔軟で嵩高いエアレイド層7を少なくとも4層配置することで、生理用物品1にふんわり感と外力に対する柔軟性とを付与することができる。
【0032】
具体的に、第1エアレイド層7aを吸収体4の肌側に配置することで、生理用物品1の肌側のふんわり感を高めることができる。また、第4エアレイド層7dを吸収体4の非肌側に配置することで、装着時に吸収体4が屈曲形状に変形した場合、第4エアレイド層7dが曲げ応力を緩衝しやすくなる。これにより、装着時に左右の陰唇間の隙間が変化した場合にも、吸収体4が柔軟に変形しやすくなる。また、中間の第2エアレイド層7b及び第3エアレイド層7cの積層構造においては、これらを合計した坪量の1枚のエアレイド層と比較して、同等の液保持性を有しつつ、曲げ剛性を低下させることができる。これにより、吸収体4の液保持性を高めつつ、柔軟性を向上させることができる。
【0033】
また、上記構成の生理用物品1において、液透過層8は、非吸水性繊維を主体とするため、エアレイド層7よりも液保持性が低くなり得る。また、エアレイド層7も、吸水性繊維によって適度な液保持性を有する一方で、非吸水性繊維によって吸液後の過度な液の保持を抑制することができる。このように、吸収体4では、液透過層8及びエアレイド層7の過度な液の保持を抑制することで、吸液後においても吸収体4のふんわり感や柔軟性を維持することができる。また、装着時の屈曲形状の液透過層8では、横方向Y中央部における繊維間距離が狭くなり得る。このような屈曲形状の液透過層8は、経血の粘性が高い場合でも、毛管作用や重力等の影響により、経血の非肌側への移行を促進することができる。このような作用は、非肌側に配置された第2液透過層8bで顕著に発揮され、肌側から遠い位置への経血の移行をより効果的に促進することができる。これにより、吸収体4の肌側におけるドライ感やふんわり感を維持させることができ、かつ、表面シート2の濡れ感を抑制できる。したがって、上記構成の生理用物品1によれば、吸液後における装着快適性を維持することができる。
【0034】
さらに、上記構成の生理用物品1では、吸収体4が少なくとも6層の積層構造を有することで、適度な厚みを有し得る。これにより、装着時において生理用物品1が屈曲形状となった場合に、生理用物品1が平坦形状へ戻ろうとする弾性力を発揮でき、左右の陰唇内壁に装着圧を付加しやすくなる。つまり、上記構成の生理用物品1においては、外力に対する柔軟性が高いことで陰唇の変形に追従しつつも、左右の陰唇内壁にフィットした状態を維持することができる。これにより、本実施形態の生理用物品1によれば、フィット性と吸液前後における装着快適性とを両立することが可能となる。
【0035】
[吸収体の詳細な構成例]
本実施形態において、吸収体4は、高吸水性材料9をさらに有していてもよい(
図2参照)。高吸水性材料9は、例えば高吸水性ポリマーを含む。高吸水性ポリマーの具体例としては、例えば、デンプン、架橋カルボキシメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらのなかでも、例えば、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体が好ましい。これらの高吸水性ポリマーは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。高吸水性材料9の形状は、生理用ナプキンなどの吸収性物品に用いられる種々のものを特に制限なく用いることができ、例えば、粒状、繊維状、塊状、粉状などが挙げられる。なお、
図3では高吸水性材料9の図示を省略している。
【0036】
吸収体4が高吸水性材料9を有することで、高吸水性材料9が多くの経血を保持することができ、吸収体4の吸収容量を高めることができる。また、吸液や吸湿によってエアレイド層7が薄くなった場合にも、高吸水性材料9の膨潤により吸収体4の適度な厚みが維持され、左右の陰唇内壁への装着圧を維持することができる。これにより、吸液後にも、生理用物品1におけるフィット性をより確実に維持することができる。
【0037】
また、高吸水性材料9は、第1液透過層8aと第2エアレイド層7bとの間、又は第2液透過層8bと第4エアレイド層7dとの間、の少なくとも一方に配置されることが好ましい。このように、液透過層8の非肌側に経血との親和性の高い高吸水性材料9を配置することで、液透過層8における経血の透過を促進させることができる。したがって、吸液後におけるエアレイド層7及び液透過層8のふんわり感及び柔軟性をより効果的に維持することができる。
【0038】
本実施形態において、第1液透過層8aに含まれる非吸水性繊維は、親水化剤を含むことが好ましい。これにより、第1液透過層8aに含まれる非吸水性繊維の親水性を高め、非吸水性繊維間における経血の浸入と非肌側への移行を促すことができる。したがって、吸液後において、表面シート2における濡れ感の低下や、肌側におけるふんわり感の維持が可能となる。したがって、吸液後においてより快適な装着感を提供することができる。
【0039】
親水化剤は、例えば、非吸水性繊維の表面に処理されてもよいし、非吸水性繊維の製造時に繊維に練りこまれてもよい。親水化剤は、衛生用品に使用される一般的な親水化剤であれば特に限定されない。親水化剤としては、例えば、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0040】
また、第2液透過層8bに含まれる非吸水性繊維も、同様に、親水化剤を含むことが好ましい。これにより、第2液透過層8bにおける経血の透過を促すことができ、経血を非肌側により移行させやすくなる。したがって、吸液後におけるふんわり感や柔軟性をより維持しやすくなり、繰り返し吸液した後においてもより快適な装着感を維持することができる。
【0041】
本実施形態において、第1液透過層8aの坪量は、第1及び第2エアレイド層7a,7b各々の坪量よりも低いことが好ましい。これにより、経血が第1液透過層8aの透過に要する時間を短縮させることができ、経血の非肌側への移行を効果的に促進することができる。この結果、吸液後の表面シート2における濡れ感を低下させることができる。さらに、この構成により、第1及び第2エアレイド層7a,7bの坪量を相対的に高めることができ、肌側におけるふんわり感を得やすくなる。したがって、上記構成により、吸液後におけるふんわり感も維持しやすくなる。
【0042】
また、同様に、第2液透過層8bの坪量は、第3及び第4エアレイド層7c,7d各々の坪量よりも低いことが好ましい。これにより、第2液透過層8bが経血の非肌側への移行をより効果的に促進することができる。また、経血がより非肌側へ移行しやすくなり、吸液後における肌側のふんわり感をより維持しやすくなる。
【0043】
具体的に、各液透過層8の坪量は、吸液後におけるふんわり感を維持する観点から、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは30g/m2以上である。また、各液透過層8の坪量は、剛直感や過度な液の保持を抑制する観点から、好ましくは60g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下である。
【0044】
本実施形態において、積層体40に含まれる全ての液透過層8の坪量の合計は、吸収体4の厚みを確保して装着圧を高めつつ、吸液後におけるふんわり感を維持する観点から、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは70g/m2以上である。また、積層体40に含まれる全ての液透過層8の坪量の合計は、剛直感を抑制する観点から、好ましくは170g/m2以下、より好ましくは110g/m2以下である。
【0045】
一方、各エアレイド層7の坪量は、ふんわり感を高める観点から、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは35g/m2以上である。また、各エアレイド層7の坪量は、過度な液の保持や剛直感を抑制する観点から、好ましくは60g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下である。
【0046】
また、積層体40の坪量は、吸収体4の厚みを確保して装着圧を高める観点から、好ましくは200g/m2以上、より好ましくは230g/m2以上である。積層体40の坪量をこのような範囲とすることで、装着圧を高めて良好なフィット性を得ることができる。また、積層体40の坪量は、剛直感を抑制する観点から、好ましくは400g/m2以下、より好ましくは350g/m2以下である。
【0047】
本実施形態において、各エアレイド層7における非吸水性繊維の含有量は、吸液後におけるエアレイド層7の過度な液の保持を抑制してふんわり感やドライ感を維持する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、当該非吸水性繊維の含有量は、吸水性繊維の含有量を十分に確保する観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。これにより、生理用物品1全体の厚みを十分に確保することができ、装着時における装着圧を高め、フィット性を向上させることができる。また、生理用物品1全体の厚みを十分に確保することで、装着時に左右の陰唇間へ挟み込みやすくなり、装着時の利便性も高めることができる。
【0048】
本実施形態において、エアレイド層7に含まれる吸水性繊維の繊維径は、十分な吸水性及びふんわり感を得つつ、剛直感を抑制する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下である。エアレイド層7に含まれる非吸水性繊維の繊度は、ふんわり感を付与しつつ、剛直感を抑制する観点から、好ましくは2dtex以上、より好ましくは3dtex以上であり、好ましくは8dtex以下、より好ましくは5dtex以下である。
【0049】
液透過層8に含まれる非吸水性繊維の繊度は、ふんわり感を付与しつつ、剛直感を抑制する観点から、好ましくは2dtex以上、より好ましくは3dtex以上であり、好ましくは8dtex以下、より好ましくは7dtex以下である。
【0050】
吸水性繊維の繊維径の測定方法について説明する。測定対象(エアレイド層7)を剃刀(例えばフェザー安全剃刃株式会社製片刃)で切断し、平面視四角形形状(8mm×4mm)の測定片を得る。この測定対象の切断の際には、その切断によって形成される測定片の切断面の構造が、切断時の圧力などによって破壊されないように注意する。好ましい測定対象の切断方法として、測定対象の切断に先立って、測定対象を液体窒素中に入れて十分に凍結させ、しかる後切断する方法が挙げられる。紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は30秒とする。測定片の切断面を、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。電子顕微鏡像より、繊維径及び/又は断面形状の違いから吸水性繊維を選別し、当該吸水性繊維の長手方向に対する幅方向の長さを10本測定し、その平均値を繊維径とする。なお、繊維の横断面が円形でない場合は、繊維の横断面の断面積を計測し、真円に換算した場合の直径を算出する。
【0051】
非吸水性繊維の繊度の測定方法について説明する。荷重がかかっていない状態の各層のシートから、50mm×100mm(面積5000mm2)の長方形状に切り出した測定用サンプルを作製する。次いで、測定用サンプルを断面視して、何れか一方の面から厚み方向Zに0.2mm間隔を空けた位置における繊維10本の繊維太さを、電子顕微鏡を用いて実測し、繊維太さ平均値Dn(μm)を算出する。次いで、上記一方の面から厚み方向Zに0.2mm間隔を空けた位置における繊維の構成成分を特定し、示差走査熱量測定器(DSC)を用いて、理論繊維存在密度Pn(g/cm3)を求める。得られた繊維太さ平均値Dn(μm)及び理論繊維存在密度Pn(g/cm3)から、繊維長さ10,000m当たりの重さ(g)を算出して、この算出された値を繊維の繊度(dtex)とする。
【0052】
本実施形態において、エアレイド層7は、ふんわり感及び柔軟性を高める観点から、嵩高な不織布で構成されることが好ましい。嵩高な不織布とは、不織布の構成繊維によって画成される空間部(繊維等の不織布構成材料が存在していない部分)を多数有しており、不織布の全体積に占める空間部の割合(空間占有率)が大きい不織布である。具体的に、嵩高な不織布の見かけ密度は、好ましくは0.01g/cm3以上、より好ましくは0.02g/cm3以上、そして、好ましくは0.2g/cm3以下、より好ましくは0.1g/cm3以下である。
【0053】
見かけ密度は、以下のように測定することができる。測定対象となる部材から、4cm2の範囲の部分を切断し、測定片を得る。測定片の切断面を、無荷重の状態でマイクロスコープ(KEYECE社製VHX-100)を用いて20~100倍の倍率で観察し、各部材の見かけ厚みを測定する。次いで、測定片の坪量を上述のように測定し、当該坪量を測定した見かけ厚みで除して、見かけ密度を測定する。各部材について5個の測定片の見かけ密度の平均値を算出し、各部材の見かけ密度とする。
【0054】
さらに、液透過層8も上記嵩高な不織布で構成されることが好ましい。これにより、柔軟性を高めるとともに、不織布内の空間部によって厚み方向Zの経血の透過を促進することができる。但し、不織布の密度勾配によってエアレイド層7から液透過層8への経血の移行を促進する観点から、液透過層8の見かけ密度は、エアレイド層7の見かけ密度よりも高いことが好ましい。
【0055】
[表面シートの構成例]
本実施形態において、表面シート2は、肌側に突出した複数の凸部2aを有していることが好ましい。凸部2aは、
図2等に示すように中実な構成でもよいし、非肌側に坪量の低い部分又は空間を有する構成でもよい。また、凸部2aの平面視における配置や形状も、特に限定されない。
【0056】
表面シート2が複数の凸部2aを有することで、装着時に、表面シート2と着用者の肌との接触面積を低減することができる。また、凸部2aにより、表面シート2に伸縮性を付与することもでき、左右の陰唇の形状が変化した場合にも、その変形に追従しやすくなる。これらにより、陰唇内壁やその周囲の粘膜などのデリケートゾーンと、表面シート2の擦れを抑制することができる。したがって、装着違和感をより効果的に低減させることができる。
【0057】
本実施形態において、表面シート2は、非吸水性繊維を主体として含む不織布で構成されることが好ましい。具体的に、表面シート2における非吸水性繊維の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、表面シート2における液保持性を低下させることができ、表面シート2上に排泄された経血を素早く非肌側へ透過させることができる。したがって、上記構成により、装着時における濡れ感をより一層効果的に抑制することができ、装着快適性をより向上させることができる。なお、表面シート2の非吸水性繊維も、必要に応じて親水化剤を含んでいてもよい。
【0058】
また、表面シート2は、エンボス等の圧搾加工により形成された圧搾部を含んでいてもよいが、圧搾部の占める面積が大きい場合、表面シート2の伸長性が低下し得る。このため、表面シート2全体の面積に対する、表面シート2における圧搾部の面積の割合は、10%以下であることが好ましく、さらに表面シート2が圧搾部を有さないことがより好ましい。
【0059】
[指挿入部材の構成例]
図2及び
図3に示すように、生理用物品1は、屈曲形状の維持と陰唇間への挿入を補助する観点から、指挿入部材6を備えることが好ましい。指挿入部材6は、裏面シート3の非肌対向面3aに配置される。
図2及び
図3に示す例において、指挿入部材6は、シート材として構成される。指挿入部材6は、
図3に示すように、裏面シート3との間に着用者の指を挿入することが可能な指ポケットPを形成することができる。なお、図示の例では、指挿入部材6(及び
図5に示す指挿入部材30)を構成するシートが水平に記載されているが、実際には厚み方向Z肌側又は非肌側に若干撓んでいてもよい。
【0060】
指ポケットPは、着用開始前に着用者の指を挿入し、生理用物品1を陰唇間に装着するために用いられる。着用者の指は、例えば、生理用物品1の縦方向X前方部から後方部に挿入される。指の挿入により、指ポケットPが縦方向Xから見て略三角形状となるように広げられ、生理用物品1が肌側に屈曲し得る。この結果、生理用物品1は、
図3に示すように、横方向Y中央部が肌側に突出するように屈曲された屈曲形状となる。指ポケットPに指を挿入した着用者は、屈曲形状の生理用物品1を左右の陰唇間に挟み込ませ、生理用物品1を装着する。
【0061】
このように、指挿入部材6を配置することで、着用者に指の挿入位置を示すことができ、適切な位置に生理用物品1を装着させることができる。したがって、指挿入部材6により、装着違和感の発生をより確実に低減することができる。
【0062】
シート状の指挿入部材6は、例えば、一対の接合部6aによって、裏面シート3の非肌対向面3aと接合され得る。接合部6aは、非肌対向面3aの横方向Yにおける側部に配置されることが好ましい。接合部6aは、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤で構成され得る。一方で、指挿入部材6は、非肌対向面3aの横方向Y中央部の少なくとも一部とは接合されていない。これにより、指挿入部材6は、裏面シート3との間に、指を挿入可能な空間である指ポケットPを形成することができる。なお、シート状の指挿入部材6では、縦方向Xの一端側が開口されて、他方側が封鎖されていてもよいし、縦方向Xの両端部側が開口していてもよい。
【0063】
指挿入部材6を構成するシート材としては、静電気などに影響されず、個装時における製品の折り曲げ動作が加わった際にもシワや張り付きを起こさず、シート材が平面状態で指ポケットPを維持する観点から、例えば不織布、コーティング紙、フィルム、フィルムと不織布の積層シート等が挙げられる。
【0064】
本実施形態において、指挿入部材6は、伸縮性を有することが好ましい。これにより、例えば生理用物品1が平坦形状を維持しやすくなり、通常のナプキンに近い包装形態を採用することができる。これにより、ナプキンを使い慣れた着用者の利便性を向上させることができる。この場合、指挿入部材6は、例えば、エラストマーなどの伸縮性繊維を含む不織布等によって構成され得る。
【0065】
あるいは、指挿入部材6は、シート状に限定されず、ストリップ状に構成されてもよい。この場合、ストリップ状の指挿入部材6は、横方向Yに沿って延び、横方向Y両側で固定され、かつ横方向Y中央部で固定されずに配置されていてもよい。このようなストリップ状の指挿入部材6は、縦方向X両端が接合されておらず解放されている。これによっても、着用者に指の挿入位置を示すことができ、装着違和感の低減に寄与することができる。
【0066】
[生理用物品の寸法例]
生理用物品1は、コンパクトで快適な装着感と十分な吸収性とを実現する観点から、以下の寸法を有することが好ましい。なお、以下の寸法は、平坦形状における寸法とする。
生理用物品1の縦方向Xにおける最大寸法は、好ましくは8cm以上、より好ましくは10cm以上であり、好ましくは20cm以下、より好ましくは17cm以下である。生理用物品1の横方向Yにおける最小寸法は、好ましくは6cm以上であり、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下である。なお、生理用物品1の全体形状は、横方向Yにおける寸法が縦方向Xに沿ってほぼ一定でもよいし、一部が括れていてもよい。
【0067】
生理用物品1の厚み方向Zにおける厚みは、装着時における装着圧を高め、フィット性を向上させる観点から、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上である。また、当該厚みは、装着時における装着違和感を低減する観点から、好ましくは9mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0068】
生理用物品1の厚みの測定方法について説明する。測定対象物である生理用物品1を水平な場所に皺や折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm2の荷重下での厚みを測定する。本発明における厚みの測定には、例えば、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いることができる。このとき、厚み計の先端部と測定対象物における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm2となるようにプレートの大きさを調整することが好ましい。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
上述の実施例では、吸収体4の積層体40が第1積層部41及び第2積層部42を有する構成について説明したが、積層体40は3以上の積層部を有していてもよい。例えば、
図4に示す生理用物品1では、吸収体4の積層体40が、第1積層部41と、第2積層部42とに加えて、第3積層部43を有する。第3積層部43は、例えば、肌側に配置されたエアレイド層7である第5エアレイド層7eと、非肌側に配置されたエアレイド層7である第6エアレイド層7fと、第5及び第6エアレイド層7e,7fの間に配置された第3液透過層8cと、を有する。また、第3液透過層8cと第6エアレイド層7fの間には、高吸水性材料9が配置されていてもよい。このような構成であっても、上述の実施形態の同様の作用機序により、フィット性と吸液前後の装着快適性を高めることができる。
【0071】
また、積層体40は、上述のエアレイド層7及び液透過層8の他に、他の層を有していてもよい。例えば、積層体40は、高吸水性材料9を含有するシート材で構成された吸収性シート層を有していてもよいし、消臭、抗菌、賦香などの機能を有する機能層を有していてもよい。
【0072】
例えば、本発明の生理用物品において、指挿入部材6は必須の構成ではない。例えば、生理用物品は、指挿入部材6と同じ目的を達成するための他の構成を備えていてもよい。例えば、裏面シート3が指をあてるための指標部を有していてもよい。指標部は、視認可能なマークであってもよいし、触感の違いで認識されることが可能な部分であってもよい。この構成により、着用者が指標部に沿って指をあてることで屈曲形状を形成することができ、屈曲形状の生理用物品を陰唇間に挿入することができる。
【実施例0073】
[実施例1]
実施例1として、上述の
図1及び
図2に記載の生理用物品1と同様の構成を有する生理用物品のサンプルを作製した。まず、パルプエアレイド層を構成する第1シート材を準備した。第1シート材は、パルプエアレイド不織布であり、吸水性繊維としてパルプ繊維、非吸水性繊維として合成繊維(芯部ポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘部ポリエチレン(PE))を含んでいた。第1シート材の坪量は40g/m
2であった。
【0074】
続いて、液透過層を構成する第2シート材を準備した。第2シート材は、平坦なエアスルー不織布であり、非吸水性繊維として合成繊維(芯部ポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘部ポリエチレン(PE))を含んでいた。この非吸水性繊維の繊度は、2.4dtexであった。第2シート材の坪量は35g/m2であった。さらに、親水化剤を用いて第2シート材に親水化処理を行った。
【0075】
第1シート材及び第2シート材を積層し、吸収体を作製した。まず、第1シート材上に高吸水性ポリマーを配置し、その上に第2シート材、第1シート材を積層し、積層部を作製した。高吸水性ポリマーの坪量は、110g/m2とした。この積層部を2層重ねることで、第1積層部と第2積層部とを有する吸収体を作製した。
【0076】
そして、透湿性フィルムからなる裏面シート上に上記吸収体を配置し、さらに複数の凸部を有する表面シートと左右のサイドシートを重ねることで、
図1及び
図2に示すような実施例1の生理用物品サンプルを作製した。なお、このサンプルには、指挿入部材を配置しなかった。このサンプルの厚みは、5.1mmであった。
【0077】
[実施例2]
実施例1と異なるシート材を含む実施例2の生理用物品サンプルを作製した。第1シート材は、実施例1とは異なるパルプエアレイド不織布であり、吸水性繊維としてパルプ繊維、非吸水性繊維として合成繊維(芯部ポリプロピレン(PP)、鞘部ポリエチレン(PE))を含んでいた。第1シート材の坪量は40g/m2であった。第2シート材は、実施例1とは異なるエアスルー不織布であり、非吸水性繊維として、細径の熱接着性複合繊維(以下、「細径繊維」)と、中空繊維と、を含んでいた。細径繊維の繊度は、2dtexであった。中空繊維の繊度は7dtexであった。第2シート材の坪量は35g/m2であり、細径繊維と中空繊維の坪量の比(細径繊維:中空繊維)は、6:4とした。実施例1と同様に、親水化剤を用いて第2シート材に親水化処理を行った。
【0078】
続いて、実施例1と同様に、第1シート材上に高吸水性ポリマーを配置し、その上に第2シート材、第1シート材を積層し、積層部を作製した。この積層部を2層重ねることで、第1積層部と第2積層部とを有する吸収体を作製した。高吸水性ポリマーの坪量は、110g/m2とした。裏面シート、表面シート及びサイドシートを実施例1と同様に配置して、実施例2の生理用物品サンプルを作製した。このサンプルも、指挿入部材を配置しなかった。このサンプルの厚みは、4.7mmであった。
【0079】
[実施例3]
第1シート材、第2シート材及び第1シート材を含む積層部を、3層重ねた点以外は、実施例2と同様に実施例3の生理用物品サンプルを作製した。このサンプルの厚みは、6.2mmであった。
【0080】
[実施例4]
第2シート材の坪量を55g/m2に変更した以外は、実施例2と同様に実施例4の生理用物品サンプルを作製した。このサンプルの厚みは、5.3mmであった。
【0081】
[比較例1]
第1シート材、第2シート材及び第1シート材の積層構造を1層のみとした点以外は、実施例2と同様に比較例1の生理用物品サンプルを作製した。このサンプルの厚みは、3.0mmであった。
【0082】
[比較例2]
比較例2として、レーヨン、コットン、吸収紙、その他合成繊維を含む不織布で構成されたサンプルを作成した(
図5)。比較例2に係る生理用物品21は、
図5の断面図に示すように、表面シート22と、裏面シート23と、吸収体24と、を備えていた。吸収体24は、第1吸収性シート25と、第2吸収性シート26と、第3吸収性シート27と、を有していた。表面シート22は、スパンレース不織布であり、吸収性繊維としてレーヨン、非吸収繊維としてポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)の合成繊維を含んでいた。第1吸収性シート25は、吸水性繊維としてパルプ繊維、レーヨンを含んでいた。第2吸収性シート26は、吸収性繊維としてパルプ繊維、レーヨンを含んでいた。第3吸収性シート27は、表裏をスパンレース不織布28と台紙29に覆われていた。このサンプルの厚みは、3.9mmであった。なお、
図5に示す生理用物品21は、指挿入部材30を有しているが、指挿入部材30を取り外した状態で以下の評価を行った。
【0083】
[参考例]
参考例として、市販の生理用ナプキン(花王株式会社製「ロリエ しあわせ素肌 35cm」)を準備した。このサンプルの厚みは、8.0mmであった。
【0084】
[装着圧の評価]
女性の下半身を模したモデルの陰唇内壁に、装着圧計(株式会社テック技販製 「Handy Data Logger HDL-30A」)の3軸力覚センサを両面テープによって取り付けた。続いて、当該モデルの陰唇間に各サンプルを挟み込み、下着を装着させた。なお、参考例のサンプルは、陰唇間に挟み込ませず、通常の生理用ナプキンと同様に下着に固定して装着させた。続いて、Fzの荷重を測定した。測定値の取り込み間隔は0.01秒とした。測定開始後3~8秒の間の測定値の平均値を、装着圧として算出した。その結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
表1に示すように、実施例1~4のサンプルの装着圧は、いずれも2.4N以上であり、比較例1及び2のサンプルの装着圧よりも高かった。これにより、実施例1~4のサンプルは、陰唇内壁へのフィット性を向上できることがわかった。
【0087】
[圧縮仕事量(WC)の評価]
各サンプルのふんわりとした柔軟さを測定するため、吸液前後におけるサンプルの圧縮仕事量(WC)を測定した。ここで、圧縮仕事量(WC)は、下記の式(1)で算出され、その値の単位は「mN・cm/cm
2」である。下記式(1)中、T
mは最大荷重時のサンプル厚みを示し、T
0は最小荷重時のサンプル厚みを示し、P
aは測定時(圧縮過程)の荷重(mN/cm
2)を示す。圧縮仕事量(WC)の値が大きいほど、ふんわり感を知覚できることが知られている。
【数1】
【0088】
吸液前には、各サンプルを平坦面に配置し、測定者が把持した測定器を表面シート上に押し当て、圧縮仕事量(WC)を測定した。測定には、カトーテック株式会社製の圧縮試験機(HFT03C)を用いた。最大荷重は0.1N、圧縮速度は1.0mm/秒とした。5回の測定値の平均値を、各サンプルの吸液前の圧縮仕事量(WC)とした。
【0089】
続いて、各サンプルの表面シート上に、楕円形の開口を有するプレートを配置し、当該開口を介して試験溶液(擬似血液)を6g注入した。試験溶液を5g注入したときの液透過時間をそれぞれ調べた。試験溶液(擬似血液)には、下記の調整を行った溶液を使用した。2Lのビーカーにイオン交換水1500gを入れ、マグネティックスターラーで撹拌しながら、カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学株式会社製、CMC-Na)5.3gを入れた(この溶液を「A」とする。)。次に、1Lのビーカーにイオン交換水556gを入れ、スターラーで撹拌しながら塩化ナトリウム(関東化学株式会社製)27.0g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、関東化学株式会社製)12gを入れ、完全に溶解させた(この溶液を「B」とする。)。更に、3Lのビーカーにグリセリンを900g量り取り、上記(A)及び(B)を加えて撹拌した。更に、ノニオン系の界面活性剤としてノニルフェノールのポリオキシエチレン35モル付加物(HLB17.5)の濃度(界面活性剤/水)=1g/Lの水溶液15mlと、食用赤色2号(保土谷化学工業株式会社より入手)0.3gを加え、撹拌した。このようにして得られた溶液を、ガラス濾過器を用いて吸引濾過し、その濾液を擬似血液とした。なお、擬似血液の調整の際には、上述した界面活性剤に代えて、他のノニオン系の界面活性剤を用いることもでき、この場合も同様の結果を得ることができる。2分間静置した後、吸液前と同様に、表面シート上に測定者が把持した測定器を押し当て、吸液後の圧縮仕事量(WC)を測定した。5回の測定値の平均値を、各サンプルの吸液後の圧縮仕事量(WC)とした。表1に、測定結果を示す。
【0090】
表1に示すように、実施例1~4のサンプルは、比較例2のサンプルよりも圧縮仕事量(WC)が高かった。さらに、吸液後において、実施例1~5のサンプルは、比較例1及び2のサンプルよりも圧縮仕事量(WC)が高く、吸液前と比較して圧縮仕事量(WC)が低下しにくかった。これにより、実施例1~5のサンプルは、ふんわり感が高く、特に吸液後においてもふんわり感が持続することがわかった。
【0091】
さらに、実施例のうち、中空繊維を使用した実施例2~4のサンプルは、特に吸液前の圧縮仕事量(WC)が高かった。これにより、非吸水性繊維として繊度の高い中空繊維を用いることで、ふんわり感が高まることがわかった。
【0092】
[吸収速度の評価]
各サンプルの吸液速度を評価した。以下、吸収速度の測定方法について説明する。測定サンプルの上に試験溶液を注入可能な注入口を備えた注入プレート(10cm×20cm、注入口の外径22mm、内径10mm、重さ600g)をのせ、1回目として人工血液を3g注入し、注入完了1分後に再度人工血液3gを注入し、合計6gの人工血液を注入した。2回目の液注入後、人工血液が注入した表面から消失する(目視)までの時間を吸収速度とした。人工血液は、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB-10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、25℃、60秒間)を用いて測定した粘度が8mPa・sになるように、脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製)の血球・血漿比率を調製したものである。
【0093】
表1に示すように、実施例1~4のサンプルは、比較例1及び2のサンプルよりも吸収速度が速かった。これにより、実施例1~4のサンプルは、比較例1及び2のサンプルと比較して、素早く経血を吸収し、表面の濡れ感を抑制できることがわかった。
【0094】
[総括]
以上より、実施例1~4のサンプルは、比較例1及び2のサンプルと比較して、陰唇内壁へのフィット性が高く、かつ、吸液前後のふんわり感が高いことがわかった。さらに、表面の濡れ感も抑制できることもわかった。
【0095】
[他の実験例]
第2シート材に親水化処理を行わなかった点以外は、実施例1と同様にして生理用物品サンプルを作製した。このサンプルの厚みは、5.1mmであった。当該サンプルの装着圧は2.5N、圧縮仕事量(WC)は、吸液前で0.9mN・cm/cm2、吸液後で1.1mN・cm/cm2と、実施例1~4と同様に、ふんわり感が高く、特に吸液後においてもふんわり感が持続することがわかった。なお、注入2回目の吸収速度は120秒未満であった。