(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172825
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/30 20060101AFI20241205BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F1/30
H01L27/04 D
H01L27/04 U
H01L27/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090822
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
【テーマコード(参考)】
5B011
5F038
【Fターム(参考)】
5B011DA01
5B011DC06
5B011EA02
5B011EA09
5B011GG03
5B011JA03
5B011LL01
5F038BE07
5F038BE09
5F038CD02
5F038CD16
5F038DF03
5F038DF04
5F038DF05
5F038DF08
5F038DF12
5F038EZ07
5F038EZ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リテンションフリップフロップ回路を有する半導体装置において電源供給の遮断時に派生するリーク電流の低減する。
【解決手段】半導体装置100は、配線幅が大きい第1のプロセスで製造された第1のダイ及び配線幅が小さい第2のプロセスで製造された第2のダイを備え、第1の電圧入力端子に入力された電源電圧をオン状態時に第1の電圧出力端子から出力し、オフ状態時に出力を停止する第1のスイッチ21、第2の電圧入力端子に第1のスイッチの第1の電圧出力端子から出力され第2の電圧入力端子に入力された電源電圧をオン状態時に第2の電圧出力端子から出力し、オフ状態時に出力を停止する第2のスイッチ22及び第1の電源端子VD1と第2の電源端VD2を備え、第2の電源端子に電源電圧が供給され且つ第1の電源端子への電源電圧の供給が遮断された状態においてデータを保持する1以上のリテンションフリップフロップ23を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線幅が大きい第1のプロセスで製造された第1のダイと、配線幅が小さい第2のプロセスで製造された第2のダイと、から構成される半導体装置であって、
第1の電圧入力端子及び第1の電圧出力端子を備え、前記第1の電圧入力端子に電源電圧の入力を受け、当該入力された電源電圧をオン状態時に前記第1の電圧出力端子から出力する一方、オフ状態時には前記第1の電圧出力端子からの出力を停止する第1のスイッチと、
第2の電圧入力端子及び第2の電圧出力端子を備え、前記第2の電圧入力端子に前記第1のスイッチの前記第1の電圧出力端子から出力された前記電源電圧の入力を受け、当該入力された前記電源電圧をオン状態時に前記第2の電圧出力端子から出力する一方、オフ状態時には前記第2の電圧出力端子からの出力を停止する第2のスイッチと、
前記第2のスイッチの前記第2の電圧出力端子に接続された第1の電源端子と、前記第1のスイッチの前記第1の電圧出力端子に接続された第2の電源端子と、を備え、前記第2の電源端子に前記電源電圧が供給され且つ前記第1の電源端子への前記電源電圧の供給が遮断された状態においてデータを保持する少なくとも1のリテンションフリップフロップと、
を有し、
前記第1のスイッチは、前記第1のダイに形成され、
前記第2のスイッチ及び前記少なくとも1のリテンションフリップフロップは、前記第2のダイに形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記少なくとも1のリテンションフリップフロップは、SRPG(State Retention Power Gating)セルによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記少なくとも1のリテンションフリップフロップは、CPUのレジスタに用いられるフリップフロップ回路であり、
前記第2のダイには、前記第2のスイッチ及び前記少なくとも1のリテンションフリップフロップとともに、前記CPUの処理制御を担うロジック回路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のダイには、前記第1のスイッチとともに、アナログ回路が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特にリテンションフリップフロップ回路を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CPUのレジスタ等において、電源供給の遮断時に前の状態を保持可能なリテンションフリップフロップ回路が用いられている。リテンションフリップ回路を用いることにより、スリープ状態等の一時的に電源供給が遮断されている状態から迅速に復帰することが可能となる。
【0003】
リテンションフリップフロップ回路は、例えば第1のスイッチを介して電源電圧の供給を受ける第1の電源端子と、第2のスイッチを介して電源電圧の供給を受ける第2の電源端子と、を有する(例えば、特許文献1)。第2のスイッチがオフ状態となり第2の電源端子への電源電圧の供給が遮断された状態でも、第1のスイッチを介して第1の電源端子に電源電圧が供給されているため、セルの状態を保持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のような構成のリテンションフリップ回路は、第1のスイッチ及び第2のスイッチの各々を介して電源電圧の供給を受ける。このため、電源電圧の供給を遮断した際に、スイッチ2つ分のリーク電流が発生してしまうという問題があった。特に2つのスイッチがともに配線幅の小さい微細化プロセスで形成されたダイに搭載されている場合、発生するリーク電流が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、リテンションフリップフロップ回路を有する半導体装置において、電源供給の遮断時に発生するリーク電流を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体装置は、配線幅が大きい第1のプロセスで製造された第1のダイと、配線幅が小さい第2のプロセスで製造された第2のダイと、から構成される半導体装置であって、第1の電圧入力端子及び第1の電圧出力端子を備え、前記第1の電圧入力端子に電源電圧の入力を受け、当該入力された電源電圧をオン状態時に前記第1の電圧出力端子から出力する一方、オフ状態時には前記第1の電圧出力端子からの出力を停止する第1のスイッチと、第2の電圧入力端子及び第2の電圧出力端子を備え、前記第2の電圧入力端子に前記第1のスイッチの前記第1の電圧出力端子から出力された前記電源電圧の入力を受け、当該入力された前記電源電圧をオン状態時に前記第2の電圧出力端子から出力する一方、オフ状態時には前記第2の電圧出力端子からの出力を停止する第2のスイッチと、前記第2のスイッチの前記第2の電圧出力端子に接続された第1の電源端子と、前記第1のスイッチの前記第1の電圧出力端子に接続された第2の電源端子と、を備え、前記第2の電源端子に前記電源電圧が供給され且つ前記第1の電源端子への前記電源電圧の供給が遮断された状態においてデータを保持する少なくとも1のリテンションフリップフロップと、を有し、前記第1のスイッチは、前記第1のダイに形成され、前記第2のスイッチ及び前記少なくとも1のリテンションフリップフロップは、前記第2のダイに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体装置によれば、リテンションフリップフロップ回路を有する半導体装置において電源供給の遮断時に派生するリーク電流を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る半導体装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】比較例の半導体装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0011】
図1は、本発明の半導体装置100の構成を示すブロック図である。半導体装置100は、例えばCPU(Central Processing Unit)のレジスタに用いられる記憶装置である。半導体装置100は、第1のダイ11及び第2のダイ12から構成されている。
【0012】
第1のダイ11は、配線幅が大きいプロセス(所謂レガシープロセス)である第1のプロセスで製造された半導体チップである。第1のダイ11は、第1のスイッチ21(
図1では、第1のSW21として示す)を含む。なお、第1のダイ11には、第1のスイッチ21の他、ADコンバータ、DAコンバータ、PLL(Phase Locked Loop)、レギュレータ等のアナログ回路が形成されている。
【0013】
第1のスイッチ21は、電圧入力端子VT1、電圧出力端子EVT1及びグランド端子VSSを有する。電圧入力端子VT1は、電源電圧の入力端子であり、VDD電源に接続されている。電圧出力端子EVT1は、電源電圧の出力端子であり、電圧入力端子VT1に入力された電源電圧が電圧出力端子EVT1から出力される。グランド端子VSSは、接地電位の供給を受ける端子であり、GND(グランド)に接続されている。
【0014】
第1のスイッチ21は、オン及びオフに制御されることにより、電源電圧を出力する出力状態及び電源電圧の出力を停止する出力停止状態に、状態を切り替える。すなわち、第1のスイッチ21は、オン状態において、電圧入力端子VT1に入力された電源電圧を電圧出力端子EVT1から出力する。一方、第1のスイッチ21は、オフ状態において、電圧出力端子EVT1からの電源電圧の出力を停止する。
【0015】
第2のダイ12は、配線幅が小さいプロセス(所謂微細化プロセス)である第2のプロセスで製造された半導体チップである。第2のダイ12は、第2のスイッチ22(
図1では、第2のSW22として示す)及びSRPG(State Retention Power Gating)セル23-1~23-n(nは、2以上の整数)を有する。なお、
図1では、SRPGセル23-1~23-nのうちSRPGセル23-1、23-2及び23-3のみを抽出して示している。また、第2のダイ12には、これらのスイッチ及びSRPGセルの他、CPUの処理制御を担う制御系のロジック回路が形成されている。
【0016】
第2のスイッチ22は、電圧入力端子VT2、電圧出力端子EVT2及びグランド端子VSSを有する。電圧入力端子VT2は、電源電圧の入力端子であり、第1のスイッチ21の電圧出力端子EVT1に接続されている。電圧出力端子EVT2は、電源電圧の出力端子であり、電圧入力端子VT2に入力された電源電圧が電圧出力端子EVT2から出力される。グランド端子VSSは、接地電位の供給を受ける端子であり、GND(グランド)に接続されている。
【0017】
第2のスイッチ22は、オン及びオフに制御されることにより、電源電圧を出力する出力状態及び電源電圧の出力を停止する出力停止状態に、状態を切り替える。すなわち、第2のスイッチ22は、オン状態において、電圧入力端子VT2に入力された電源電圧を電圧出力端子EVT2から出力する。一方、第2のスイッチ22は、オフ状態において、電圧出力端子EVT2からの電源電圧の出力を停止する。
【0018】
SRPGセル23-1~23-nは、電源遮断時にデータを保持すること(以下、リテンションと称する)が可能に構成されたリテンションフリップフロップであり、例えばCPUのフリップフロップを構成している。SRPGセル23-1~23-nの各々は、第1の電源端子VD1、第2の電源端子VD2及びグランド端子VSSを有する。
【0019】
第1の電源端子VD1は、電源電圧の供給を受ける第1の電源端子であり、第2のスイッチ22の電圧出力端子EVT2に接続されている。第2の電源端子VD2は、電源電圧の供給を受ける第2の電源端子であり、第1のスイッチ21の電圧出力端子EVT1に接続されている。グランド端子VSSは、接地電位の供給を受ける端子であり、GND(グランド)に接続されている。
【0020】
本実施例の半導体装置100では、第1のスイッチ21及び第2のスイッチ22のオン及びオフを制御することにより、SRPG23-1~23-nの状態を変化させる。
【0021】
SRPG23-1~23-nはリテンション状態にする場合、第1のスイッチ21をオン、第2のスイッチ22をオフに制御する。第2のスイッチ22がオフとなることにより、第1の電源端子VD1への電源電圧の供給が遮断される一方、第1のスイッチ21はオンであるため、第2の電源端子でVD2には継続して電源電圧が供給される。これにより、SRPG23-1~23-nは、データを保持した状態、すなわちリテンション状態となる。
【0022】
一方、第1のスイッチ21をオフ状態にすると、第1の電源端子VD1及び第2の電源端子VD2の双方への電源電圧の供給が遮断される。これにより、SRPG23-1~23-nは、電源オフの状態となる。
【0023】
このように第1のスイッチ21及び第2のスイッチ22がそれぞれオフの状態において、半導体装置100には、リーク電流が発生する。第1のスイッチ21及び第2のスイッチ22が直列接続されているため、スイッチ2段分のリーク電流が発生する。
【0024】
本実施例では、第1のスイッチ21は、配線幅が大きい第1のプロセスで生成された第1のダイ11に設けられている。一方、第2のスイッチ22は、配線幅が小さい第2のプロセスで生成された第2のダイ12に設けられている。配線幅が小さいプロセスで製造されたダイは、高性能な機能を実現させることが可能な反面、配線幅が大きいプロセスで製造されたダイと比べて、発生するリーク電流が大きい。
【0025】
換言すると、第1のプロセスにより製造されたダイは、第2のプロセスで製造されたダイよりも、発生するリーク電流が小さい(以下、低リークと称する)という性質を有する。このため、本実施例の半導体装置100では、第1のスイッチ21により発生するリーク電流は、第2のスイッチ22により発生するリーク電流よりも小さい。
【0026】
図2は、本実施例とは異なり、第1のスイッチ31が第2のスイッチ32と共通のダイに設けられている比較例の半導体装置200の構成を示すブロック図である。半導体装置200は、第1のスイッチ31、第2のスイッチ32、及びSRPGセル33-1~33-nを有する。
【0027】
比較例の半導体装置200では、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32が、配線幅が小さいプロセスで製造されたダイ13に設けられている。上記の通り、配線幅が小さいプロセスで製造されたダイは配線幅が大きいプロセスで製造されたダイよりも高リークであるため、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32の各々により発生するリーク電流は、配線幅が大きいプロセスで製造されたダイに設けられたスイッチにより発生するリーク電流よりも大きい。
【0028】
これに対し、
図1に示す本実施例の半導体装置100では、第1のスイッチ21が比較的リーク電流の少ない第1のプロセスで製造された第1のダイ11に形成されている。このため、本実施例の半導体装置100における第1のスイッチ21で発生するリーク電流は、比較例の半導体装置200における第1のスイッチ31で発生するリーク電流よりも小さい。したがって、第1のスイッチ及び第2のスイッチからなる2段のスイッチで発生するリーク電流は、本実施例の半導体装置100の方が比較例の半導体装置200よりも小さい。
【0029】
以上のように、本実施例の半導体装置100の構成によれば、配線幅が小さいプロセスで製造されたダイに2つのスイッチがともに形成されている場合と比べて、装置全体としてのリーク電流を低減することができる。
【0030】
したがって、本実施例の半導体装置100によれば、リテンションフリップフロップ回路を有する半導体装置において、電源供給の遮断時に発生するリーク電流を低減することが可能となる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、SRPGセル23-1~23-nがCPUのフリップフロップに用いられている場合を例として説明した。しかし、これに限られず、別の回路や第2のダイ12内の全フリップフロップをSRPGセルによって構成してもよい。
【0032】
また、上記実施例では、第2のダイ12に制御系のロジック回路が形成されている場合を例として説明したが、これに限られず、RAM、ROM、FLASH等のマイコンに一般的に必要な回路ブロックが形成されていても良い。
【0033】
また、上記実施例では、第2のダイ12に複数個のSRPGセル(23-1~23-n)が形成されている場合を例として説明したが、SRPGセルの個数はこれに限られず、少なくとも1個のSRPGセルが形成されていればよい。
【符号の説明】
【0034】
100 半導体装置
11 第1のダイ
12 第2のダイ
21 第1のスイッチ
22 第2のスイッチ
23-1~n SPRGフリップフロップ